特許第5795663号(P5795663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティドの特許一覧

特許5795663電気機器及び/又は電子機器のための装置及びコイル、及び、そのコイルを形成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795663
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】電気機器及び/又は電子機器のための装置及びコイル、及び、そのコイルを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20150928BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20150928BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20150928BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20150928BHJP
   H01F 30/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H01F27/28 L
   H01F5/00 F
   H01F27/30
   H01F17/04 A
   H01F31/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-106989(P2014-106989)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-229909(P2014-229909A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年2月24日
(31)【優先権主張番号】13/902,121
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】野村 壮史
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ スン
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 カヨコ
【審査官】 堀 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−274030(JP,A)
【文献】 特開平03−061313(JP,A)
【文献】 特開2007−318011(JP,A)
【文献】 特開昭61−166013(JP,A)
【文献】 特開2008−153513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
H01F 5/00
H01F 17/04
H01F 27/30
H01F 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気装置及び/又は電子装置のためのコイルであって、
螺旋状のコイル構成で複数の導体対に配置された導電体であってそれぞれが線形を有する、複数の、垂直に積み重ねられた導電体を具備し、
それぞれの導体対が、第1の導体と、1つの主面において電気的絶縁材料層を備えた第2の導体と、を有し、
前記第1の導体及び前記第2の導体が、それぞれ、長い脚部と、前記長い脚部の端部から延び、角度を有して配置された短い脚部と、を有し、
前記第1の導体及び前記第2の導体が、
それぞれ互いに反転することによって、且つ、
前記第2の導体の前記電気的絶縁材料層が外側表面となり且つ前記短い脚部が重ね合わせられない露出部を有するようにそれぞれの前記長い脚部を重ね合わせることによって、
前記導体対を形成し、
対になる一方の導体対が、部分的に、横方向に、他方の導体対の前記長い脚部から前記長い脚部をオフセットさせ、且つ、前記一方の導体対の前記露出部を、隣接する前記他方の導体対の前記露出部と接触させて横方向て、螺旋巻を形成
当該コイルが、2組の非導電性の柱部を更に具備し、前記導体対が、2組の前記柱部に亘り取り付けられた、コイル。
【請求項2】
前記コイルにおいて、少なくとも1つの螺旋巻を形成するため、導体の積み重ねられた構成を電気接触させるための接続部であって前記柱部に取り付け可能な接続部を更に具備する請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記第1の導体及び前記第2の導体が、それぞれ、
長い脚部及び短い脚部を有するL形のプレートを具備し、
前記短い脚部が、前記長い脚部の一方の端部から垂直に延びる請求項1に記載のコイル。
【請求項4】
2組の、積み重ねられ、部分的に重なり、且つ、部分的に横方向にオフセットする導体対であって、積み重ねられた当該導体対間において、中央に配置された開口部を有する1つの螺旋巻を形成する導体対を更に具備する請求項1に記載のコイル。
【請求項5】
電気装置及び/又は電子装置のためのコイルであって、
螺旋状のコイル構成で複数の導体対に配置された導電体であってそれぞれが線形を有する、複数の、垂直に積み重ねられた導電体を具備し、
それぞれの導体対が、第1の導体と、1つの主面において電気的絶縁材料層を備えた第2の導体と、を有し、前記第1の導体及び前記第2の導体が、それぞれ、第1の領域と、前記第1の領域の端部から延び、角度を有して配置された第2の領域と、を有し、
前記第1の導体及び前記第2の導体が、
それぞれ互いに反転することによって、且つ、
前記第2の導体の前記電気的絶縁材料層が外側表面となり且つ前記第2の領域が重ね合わせられない露出部を有するようにそれぞれの前記第1の領域を重ね合わせることによって、
前記導体対を形成し、
対になる一方の導体対が、部分的に、横方向に、他方の導体対の前記第1の領域から前記第1の領域をオフセットさせ、且つ、前記一方の導体対の前記露出部を、隣接する前記他方の導体対の前記露出部と接触させて横方向に重ねて、螺旋巻を形成し
当該コイルが、2組の非導電性の柱部を更に具備し、前記導体対が、2組の前記柱部に亘り取り付けられた、コイル。
【請求項6】
電気装置及び/又は電子装置のためのコイルであって、複数の螺旋巻を具備し、
それぞれの螺旋巻は、
導電性材料で構成され、且つ、
第1の平面と
該第1の平面の反対側にある第2の平面と
第1の略長手方向部と
第1の略横方向部であって該第1の略長手方向部及び当該第1の略横方向部が共に約90°の横方向の角度を成すように配置された第1の略横方向部とによって特徴づけられる形状を備えた、
第1の平面導体と、
前記導電性材料で構成され且つ
前記第1の平面と幾何学的に同一の第3の平面と
該第3の平面の反対側にあり、前記第2の平面と幾何学的に同一の第4の平面と
前記第1の略長手方向部と幾何学的に同一の第2の略長手方向部と
前記第1の略横方向部と幾何学的に同一の第2の略横方向部とによって特徴づけられる形状を備えた、
第2の平面導体と、
前記第4の平面に接する電気的絶縁コーティングと、
を有する第1の導体対であって、前記第1の平面導体及び前記第2の平面導体が、相互に反転された方向で配置され、且つ、前記第2の平面及び前記第3の平面が互いに接触して重ね合わせられた対を形成するように互いに重ね合わせられ、前記第1の略横方向部及び前記第2の略横方向部が、前記重ね合わせられた対の、対向する2つの長手方向端部に配置され、前記第1の略横方向部及び前記第2の略横方向部が、共に前記重ね合わせられた対から第1の横方向に延びた、第1の導体対と、
第2の導体対であって、前記第1の導体対と同一であり、且つ、当該第2の導体対の前記第1の略横方向部及び前記第2の略横方向部が、前記第1の横方向の反対方向の第2の横方向に延びるように前記第1の導体対に対して回転させられた第2の導体対と、を有し、
前記第1の導体対及び前記第2の導体対は、前記第1の導体対の前記第1の略横方向部が前記第2の導体対の前記第2の略横方向部に重なり、前記第1の導体対の前記第2の略横方向部が前記第2の導体対の前記第1の略横方向部に重なり、前記第1の導体対及び前記第2の導体対の前記第4の平面が同じ方向に面するように配置され、
当該コイルが、2組の非導電性の柱部を更に具備し、前記導体対が、2組の前記柱部に亘り取り付けられた、コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る複数巻高密度コイル及び製造方法は、インダクタ及び変圧器などの電気機器及び電子機器に使用されるコイル、特に、相互接続された導体の積み重ねられた層で形成された電気機器及び電子機器に使用されるコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタ又は変圧器のためのコイルを形成する巻線は、電気機器及び電子機器に使用される。こうして機器は、概して体積制限された空間要件を有し、これによって、こうしたコイル又は巻線は、薄型(low profile)である必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうしたコイルのための薄型及び最小の空間要件を実現するため、導体を流れる最小電流量が所定の空間を完全に満たす(fill)ようにコイルの巻線の充填率(fill factor)が最大化される必要がある。
【0004】
平面磁気(planar magnetics)、すなわち、インダクタ又は変圧器は、近年、性能、空間利用及び製造効率により関心を集めている。平面磁気のため、コイル巻線を形成する3つの一般的方法がある。第1の方法は、平打巻(edgewise winding)を用いて平面コイルを製造するのに使用され得る、従来のワイヤ巻付け法である。しかしながら、この方法は、端部構造の形状又は構成に制限がある。コイルが太い銅線から加工されるので、コイル又は幅の広い水平コイルを特に平打巻により強固に巻き付けることは更に困難である。
【0005】
第2の平面磁気の巻付け法は、PCB又は半導体製造方法を用いることである。巻線構造は、金属蒸着又はメッキ及びエッチング処理を用いて形成される。この製造方法は、金属の厚さが制限されるため、DCの性能を最大にするために重要な、導体充填率に制限がある。さらに、スルーホールなどの付加的な金属化又は側面の金属化を用いて、内部層の接続部を設け、巻き数の多いコイルを形成する必要がある。かかる付加的な工程は、通常、複雑であり、不十分な導電性を示す。
【0006】
第3の巻線製造方法は、厚い銅板から機械加工され、溶接若しくは半田付けによってコイル構造体に組み込まれている、単一又は複数の巻線構造体にバスバーを使用する。バスバー型構造の課題は、機械加工だけでなく、曲げ、溶接又は半田付けも必要とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電気機器及び/又は電子機器のためのコイルは、それぞれが線形を有し且つ複数の導体対で構成された、複数の、垂直に積み重ねられた導体によって形成された螺旋巻導電体コイル(spiral wound electrical conductors coil)を有する。それぞれの導体対には、第1の露出した導体と、一方の主面上に電気的絶縁材料層を有する第2の導体とが含まれている。導体は、導体対の露出部(bare exposed portion)をそれぞれの導体対から外方に延ばして、それぞれの導体対を形成するために互いに対して反転される(inverted)。部分的に、横方向にオフセットし、且つ、横方向に重なる別の導体対は、それぞれの導体対の露出されて外方に延びる部分で、積み重ねられて露出された、隣接する導体対の導体部と接触してコイルにおいて螺旋巻(spiral turn)を形成する。
【0008】
コイルには、2組の非導電性柱部がある。導体は、柱部に(over the posts)取り付けられている。接続部は、少なくとも1つのコイルの螺旋巻を形成するため、導体の積み重ねられた構成を電気接触させるように柱部と係合可能である。
【0009】
一態様において、それぞれの導体は、長い脚部と、この長い脚部の端部から延び、角度を有して配置された短い脚部とを有してもよい。
【0010】
それぞれの導体は、長い脚部及び短い脚部を有するL字状であってもよく、短い脚部は、長い脚部の一方の端部から垂直に延びている。
【0011】
積み重ねられ、部分的に重なり、部分的に横方向にオフセットされた2対の導体対は、積み重ねられた導体対の間において中央に配置された開口部を有する1つの螺旋巻を形成する。
【0012】
別の導体(alternating conductors)は、一方の主面に電気的絶縁材料層を有する。
【0013】
一態様において、別の導体は、隣接する積み重ねられた導体に対して再配置される(reoriented)。
【0014】
別の態様において、複数の平面導体は、それぞれの導体対のそれぞれの導体がそれぞれの導体対における別の導体に対向する方向に反転された(inverted in orientation relative to the other conductor)、積み重ねられた導体対で構成される。それぞれの導体対は、隣接する積み重ねられた導体対に対向する方向に反転される。
【0015】
電気/電子機器の位置決め(positioning)のためのコイルを形成する方法は、2組の柱部を設ける工程であって、それぞれの組が3つの同一線上の柱部を含み、2組の柱部が同一線上に平行に離れて配置される工程と、一方の主面において電気的絶縁層を有する別の第2の導体(alternating second conductors)と共に、1つの露出された導体を含む、同等に形状化された複数の平面導電体を設ける工程と、第1の露出された導体を柱部の組の選択された柱部周りに取り付ける工程と、第1の露出された導体に対して電気的絶縁面を有する(carrying)第2の導体を再配置し、且つ、取り付ける柱部の組の選択された柱部において第1の導体の上に(over the first conductor)第2の導体を取り付ける工程と、柱部の組の選択された柱部の上に、第1の導体対における第1の露出された導体の方向から再配置された第3の露出された導体を、部分的に重ねて、且つ、第1の導体対から部分的に横方向にオフセットして取り付ける工程と、一方の主面において電気的絶縁材料層を有する第4の導体であって第3の導体に対して再配置された第4の導体を、第3の導体の上に取り付ける工程と、コイルにおいて1つの螺旋巻を形成するために、第1の導体、第2の導体、第3の導体及び第4の導体から選択された導体の、露出された端部を電気接触させる工程と、を含む。
【0016】
コイルは、複数の導体の1つに接続された入力端子と、複数の導体の別の1つに接続された出力端子と、を更に含む。
【0017】
また、本方法は、磁気コアと磁気的関係にあるコイルを取り付けることによって変圧器を形成する工程も含む。
【0018】
本発明に係る複数巻コイルの種々の特徴、利点及び他の用途は、次に示す詳細な説明及び図面を参照することによって、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る製造方法に従って製造された複数巻コイルの斜視図である。
図2図1に示すコイルで使用される露出された導体の拡大斜視図である。
図3図1に示すコイルに使用される、一方の面上に電気的絶縁層を有した別の導体の拡大斜視図である。
図4図3に示す導体の側面図である。
図5A】複数の積み重ねられた分岐型の1つの螺旋巻コイルを示す、部分分解斜視図である。
図5B図5Aと類似するが、導体の別の構造(alternate construction)を示す分解側面図である。
図6A図5に示す1つの螺旋巻コイルを形成する順次的工程を示す。
図6B図5に示す1つの螺旋巻コイルを形成する順次的工程を示す。
図6C図5に示す1つの螺旋巻コイルを形成する順次的工程を示す。
図6D図5に示す1つの螺旋巻コイルを形成する順次的工程を示す。
図7】説明のため間隔を置いて配置された個々の螺旋巻を備える、図1に示す複数巻コイルの一部の部分分解図である。
図8A】コアを使用して電気変圧器を形成する本発明の方法に従って製造された、複数巻コイルの斜視図である。
図8B図8Aに示す変圧器の一次巻線及び二次巻線の入力端子及び出力端子を示す側面図である。
図9図8Bと類似するが、変圧器における別の入力端子及び出力端子の構成を示す側面図である。
図10A】入力端子及び出力端子がコイルの両端から延びている別のコイル構造体の斜視図である。
図10B】変圧器における図10Aに示すコイルの使用を示した側面図である。
図11図9と類似するが、更なる別の態様の変圧器の入力端子及び出力端子の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜11を参照すると、インダクタ又は変圧器として電気/電子機器に使用可能なコイル20が示されている。
【0021】
コイル20は、導電体の複数の螺旋巻から形成され、巻数と導電体の大きさ(長さ、幅及び厚さ)は、特定の電気/電子用途の特定の電流及び電圧要件に適合するように選択される。
【0022】
図2、3及び4に詳細に示すように、コイル20は、複数の同一の導電体22及び24の螺旋状に積み重ねられた配置で構成されている。導体22及び24は、形状及び大きさが実質的に同一であり、唯一の相違は、導体24が、一方の主面に施された電気的絶縁材料層57を有することである。
【0023】
一態様において、導体22及び24は、プレート又はバスバーの形態であるとして以下に説明するが、導体22及び24は、例えば、銅、銅合金などの導電性材料から形成されたストリップのような薄箔(thin foil like strips)の形態である。後述するように、導体22及び24の薄い厚さによって、接続部の力で、個々の導体22及び24の選択的な露出端部をともに、電気接触させることができる。
【0024】
また、導体22及び24は、図2及び3に示すL字状の導体を含む種々の形状を想定することもでき、これは、導体22及び24採用できる、考えられ得る多くの形状の例であることが理解される。導体22及び24は、打抜き、機械加工してか、又は、それ以外の方法で図示するL字状に形成することができる。
【0025】
このように、図1〜8に示す導体22及び24の態様において、導体22及び24はそれぞれ、長い脚部30と、概して垂直な角度で長い脚部30の一方の端部から突出した一体型の短い脚部32とを有する。開口部34は、長い脚部30の一方の端部に形成されている。1対の開口部36及び38は、長い脚部30及び短い脚部32の一方の端部において、導体22の対向する端部に形成されている。導体22は露出されており、すなわち、上面40及び底面42を含めた両主面に電気絶縁性がない(bare of electrical insulation)。
【0026】
他の導体24は、長い脚部50と、概して垂直な角度で長い脚部50の一方の端部から延びた短い脚部52とから同様に構成されている。第1の開口部54は、長い脚部50の一方の端部に形成されている。1対の開口部56及び58は、導体24の他方の端部に形成され、ひとつの開口部56は、長い脚部50の一方の端部に形成され、ひとつの開口部58は、短い脚部52に形成されている。
【0027】
図4に示すように、導体24には、その下にある露出された導体25であって、他の露出された導体22と同じ形状、大きさ及び厚さである露出された導体部分25とともに、導体24の一方の主面にコーティング又は接着接合された電気絶縁材料の層57とが含まれている。導体24の側縁部は、導体24の露出された導体部25の一方の面に施された電気的絶縁材料層によって被覆されている必要はない。
【0028】
導体22及び24は、他の形状、例えば、一方の端部が、C字状導体の反対側の端部よりも長い、より丸みを帯びたC字状などを採用することができる。
【0029】
螺旋配置されて積み重ねられた構成を形成するために、交互に配置された導体22及び24、平行し間隔を置いて配置された2組の非導電性支持体又は柱部60及び62は、図5A〜7に示すように設けられている。第1の柱部の組60には、第1、第2及び第3の柱部64、66及び68が含まれている。第2の柱部の組62には、柱部70、72及び74が含まれている。柱部の2つの組60及び62の柱部64、66、68、70、72及び74は、間隔を置いて、概して一列に配列され、それぞれの組60及び62内で同一線上に配置され、また、他の組62又は60対向するひとつの柱部と並んでいる。例えば、第1の柱部の組60の柱部64は、第2の柱部の組62の柱部70と同一線上にある。同様に、柱部66は、柱部72と同一線上にあり、柱部68は、柱部74と同一線上にある。第1の柱部の組60の個々の柱部64、66及び68は、相互に同一線上にある。同様に、第2の柱部の組62の柱部70、72及び74は、相互に同一線上にある。
【0030】
ここで、コイル20の1つの螺旋巻80の形成について、図5A、6A、6B、6C及び6Dとともに説明する。コイル20の1つの螺旋巻80の形成には、第1及び第2の導体22及び24を含む第1の導体対82が、第3及び第4の導体92及び94のような第2の導体対84とともに使用される。第1及び第2の導体対82及び84はそれぞれ、同様に形成され、また、第1及び第2の導体対82及び84は積み重ねられるが、第2の導体対84は、概して多角形を形成するように、第1の導体対82に対する方向が再配置又は逆転され(reoriented or reversed in orientation)、1つの螺旋巻は、図1、6D及び7に示す中央開口部86を備えている。
【0031】
図6A〜6Dに示すように、コイル20を形成する際の第1の工程は、柱部64、66及び70に、第1の導体対82の第1の導体22を取り付け、導体22の短い脚部32を配置し(oriented)、図6Aに示すように、開口部36及び38にそれぞれ、柱部66及び64を取り付ける。
【0032】
次に、第1の導体対82の第2の導体24を、第2の導体24の短い脚部32の位置を逆転させるか又は再配置(reorienting)させることによって、第1の導体22上に取り付け、第2の導体24の短い脚部32における開口部56及び58にそれぞれ、柱部70及び72を取り付け、図6Bに示すように、第2の導体24の長い脚部50の端部における開口部54に、柱部64を取り付ける。この配置において、第2の導体24上の電気絶縁層57は、その下にある第1の導体22から上方に向いている。
【0033】
第1の導体対82の導体22及び24、並びに第2の導体対84の第1及び第2の導体92及び94の位置を反転する、逆転する又は再配置するとは、第1の導体対82の第2の導体24が、第1の導体22と同一平面の配向に維持されるが、第1の導体22からの配向から180°回転して、第2の導体24の短い脚部52が、図6Bに示すように、第1の導体22の短い脚部32から長手方向に間隔を置いて配置されることを意味する。同様の反転、逆転又は再配置は、図6C及び6Dに示すように、第2の導体対84の第1及び第2の導体92及び94にも適用される。
【0034】
この配置(orientation)において、第1及び第2の導体22及び24の長い脚部30及び50が相互に重なっていることが図6Bで理解できる。第1の導体22の短い脚部32は、積み重ねられた第1の導体対82の一方の端部から横方向に外側へ延び、また、第2の導体24の短い脚部32は、積み重ねられた第1の導体対82の反対側の端部から横方向に外側へ延びている。
【0035】
次に、第1の導体22と同一である第3の導体92と、第2の導体24と同一で、電気的絶縁材料層57を有する第4の導体94とを含む、第2の導体対84は、個別に、図6Cに示すように、取付け柱部組60及び62に積み重ねられている。明確にするために、図6A及び6Bに示す、柱部64、66、70及び72にあらかじめ取り付けられた、下にある第1の導体対82が示されていないことに留意すべきであるが、第2の導体対84の下にあることが理解される。
【0036】
露出した第3の導体92は、長い脚部30の開口部34に、第1の柱部組60の柱部68が係合されて配置されるように方向付けされており、その結果、第3の導体92の短い脚部32によって形成された露出部分は、第1の導体対82における第1の露出された導体22の短い脚部32によって形成された露出部分から間隔をおいて配置されている。第4の導体94は、第3の導体92の位置から再配置又は反転された位置にあり、短い脚部52の開口部56及び58は、第1の柱部の組62における柱部66及び68を取り付け可能に配置されている。第4の導体94の長い脚部50の端部における開口部54は、第2の柱部の組62の第3の柱部72の上に取り付けられる。
【0037】
第3及び第4の導体92及び94の位置を「逆転する、反転する又は再配置する」という用語は、第1の導体対82の導体22及び24に適用されるものと同じである。さらに、第2の導体対84も、第3の導体92の短い脚部32が、第1の導体22の短い脚部32から長手方向に間隔をおいて配置されるように、第1の導体対82に対して反転、逆転又は再配置されている。同様に、第4の導体94の短い脚部52も、第2の導体24の短い脚部52から長手方向に間隔をおいて配置されている。
【0038】
図6A及び6Bの比較において、コイル20の1つの螺旋巻のそれぞれの半分が、導体対82及び84の一方の端部で、第1又は第3の導体22又は92の短い脚部32により形成された露出部分を有することに留意すべきである。導体22及び92の短い脚部32の露出部分は、それぞれ、2つの取付け柱部の組60及び62の第2の柱部66及び72における導体の短い脚部の柱部の軸方向配置により、第2又は第4の導体24及び94の下にある露出面に嵌め合わされるように配置されている。
【0039】
図6Dは、コイル20の完全な1つの螺旋巻80を示し、2つの導体対82及び84は、積み重ねられた導体対の構成で配置され、取付け柱部の組60及び62において、相互に、部分的に重なり、部分的に横方向にオフセットされている。
【0040】
5Aに示すように、薄箔ストリップ又はタブなどの入力端子110は、溶接、半田付け、導電性接着剤などによって、第1の導体対82の第2の導体24の短い脚部52の露出した下側に形成されるか又は連結することができる。
【0041】
5Aの参照符号102により表す破線は、コイル20の1つの螺旋巻80を通る電流経路を示す。入力端子110に印加される電流は、第1及び第2の導体22及び24の長い脚部30及び50の導電部分と、第1の導体22の短い脚部32の接触を介して、絶縁層57の下にある第2の導体24の短い脚部52の導電部分に沿って流れる。
【0042】
導体22、24、92及び94が、後述するように、また、図1及び7に示すように、柱部の組60及び62に取り付けられている場合、第1の導体22の短い脚部32の露出部分は、軸方向に下にあり、第3の導体92の短い脚部52の導電部分と重なると、第1の導体22の露出部分は、第の導体94の短い脚部52の導電部分と接し、これによって、第1の導体対82と第2の導体84との間に電流経路が形成される。そして、電流経路は、第3及び第4の導体92及び94の長い脚部30及び50と重なり、接することによって、第3の導体92の短い脚部32の露出部分に達するまで、第の導体94に沿って進行する。出力端子は、第3の導体92の露出部分又は短い脚部32に接続することができるか、又は、図1及び図7に示すように、第3の導体92の短い脚部32は、コイル20の更なる積み重ねられた螺旋巻80との接触点として使用することができる。
【0043】
図7に示すように、相互接続された複数の螺旋巻80は、コイル20に設けられ、例として、3つの螺旋巻80を示している。それぞれの螺旋巻には、部分的に重なり、部分的に横方向にオフセットされた導体対82及び84の軸方向の積み重ねられた構成が含まれている。
【0044】
図7において、ナットなどの接続部120は、柱部64、66、68、70、72及び74の両端のねじ付き端部に取り付けられている。接続部120が締められると、導体対82及び84の露出部分は、電気接触され、それぞれの螺旋巻80の層の間、及び複数の螺旋巻80のそれぞれの間に電気接触面を形成する。
【0045】
図5Bは、導体22、24、92及び94の別の態様を示す。この態様において、いずれかの主面上で露出しているか又は電気的絶縁性を欠いていると先に説明した、導体22及び92は、導体22’及び92’について示すように、導体24及び94上に設けられた絶縁層57と同一の絶縁層27を主面上に設けることができる。これによって、導体22’、24、92’及び94のすべてを同一とさせ、製造が簡素化され、製造コストが低減する。図5Bに示すように、導体22及び92について上述したものと同様に、導体22’、24’、92’及び94の配置によって、隣接する導体24上の絶縁層57と接して、導電体92’上に絶縁層27が配置される。
【0046】
図1〜7に示すコイル20は、インダクタとして電気/電子機器に使用することができる。または、図8A及び8Bに示すように、2つのコイル20及び20’は、コア142を含む変圧器140の一部として利用することができる。コア142は、例に示すE字状プレート及び端部線状プレートの積層配置から形成されたEコア142を備えた、いずれかの構成で形成することができる。個別の入力端子及び出力端子又はタブ110及び112は、2つの組のコイル20及び20’の螺旋巻80の選択部分に取り付けられ、変圧器140の一次巻線及び二次巻線を形成している。変圧器140において、一次巻線の螺旋巻80は、二次巻線の螺旋巻80から絶縁されている。
【0047】
一方のコイル20は、変圧器140において一次巻線として機能することができ、隣接するコイル20’は、変圧器140において二次巻線として機能することができる。コイル20と20’との間の空間に、付加的な電気的絶縁材料層141を充填させる(filled)ことができ、この電気絶縁材料層は、コイル20及び20’の対向面の間、さらに、コイル20及び20’の入力端子及び出力端子110及び112の対向面の間に延びている。
【0048】
図8A及び8Bに示す変圧器140の構成が、一次巻線及び二次巻線又はコイル20及び20’の入力端子及び出力端子110及び112をそれぞれ有し、コイル20及び20’の同じ側に沿ってコイル20及び20’から外側に延びるように配置されていることに留意すべきである。
【0049】
図9は、変圧器140におけるコイル20及び20’の別の構成を示す。この構成において、最下部のコイル20のようなコイル20及び20’のうちの一方は、隣接するコイル20の配置から180°回転している。これによって、コイル20及び20’のそれぞれの入力端子及び出力端子110及び112は、変圧器140の両側から外側に突出する。
【0050】
図10A及び図10Bは、変圧器140における別のコイルの構造を示し、入力端子及び出力端子110及び112は、コイル20及び20’の対向面又は両端部から外側に突出している。これは、コイル巻線の半分のターンを構成する2つの導体22及び24を除去することによって実現することができる。これは、最下部の導体対22及び24の露出部分を露出させ、これによって、入力端子110がコイル20に取り付けられ、コイル20、そして出力端子112の対向面又は端部から外側に延びる。
【0051】
図11は、更なる別の態様の変圧器140を示し、両コイル20及び20’は、例えば入力端子110のような入力端子及び出力端子のうちのいずれかを有し、コイル20及び20’、そしてそれぞれの出力端子112の対向する端部から延びている。これは、先に記載したように、コイル20の底部及びコイル20の上部から半分のターンを除去し、コイル20又は20’のそれぞれにおける導体の露出部分に入力端子110を取り付けることによって、実現することができる。絶縁層は、二次巻線コイル20’から一次巻線コイル20を分離するように、隣接する入力端子110との間に設けることができる。
【0052】
上述したように、また、図6A〜6Dに示すように、コイル20の1つの螺旋巻を形成するための製造方法が一例であることが理解される。個々の導体22、24、92及び94は、対向する方向にコイル20の1つの螺旋巻80を形成するように積み重ねることもでき、第1の導体22は、開口部36及び38に、第2の柱部の組62の柱部72及び74が嵌め込まれるように、図6Aに示す配置から再配置されている。さらに、図10Aは、導体22及び24の別の交互配置(interleaving)又は積み重ね順序を示す。この別の積み重ね方法において、第1又は最下部の導体22は、図5に示す最下層の導体22の位置から180°に配置されている。また、コイル20を形成する他の導体24及び22も、コイル20について上述したものと同様の順序で180°に再配置されている。
【0053】
また、図10Aは、導体22及び24の別の交互配置又は積み重ね順序を示す。この別の積み重ね方法において、第1又は最下部の導体22は、図5に示す最下層の導体22の位置から180°に配置されている。また、コイル20を形成する他の導体24及び22も、コイル20について上述したものと同様の順序で180°に再配置されている。
【符号の説明】
【0054】
20 コイル
22 第1の導体
30 長い脚部
32 短い脚部
34 開口部
36 開口部
38 開口部
40 上面
42 底面
64 柱部
66 柱部
68 柱部
70 柱部
72 柱部
82 第1の導体対
84 第2の導体対
86 中央開口部
110 タブ
112 タブ
120 接続部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11