特許第5795672号(P5795672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795672
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】イヤピース位置決めおよび保持構造体
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   H04R1/10 104A
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-165091(P2014-165091)
(22)【出願日】2014年8月14日
(62)【分割の表示】特願2013-524913(P2013-524913)の分割
【原出願日】2011年8月15日
(65)【公開番号】特開2014-209804(P2014-209804A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年8月14日
(31)【優先権主張番号】12/860,531
(32)【優先日】2010年8月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/374,107
(32)【優先日】2010年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・シー・シルヴェストリ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・エム・ウォレス
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ピー・アヌンツィアート
(72)【発明者】
【氏名】イアン・エム・コリアー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・モナハン
【審査官】 千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/040350(WO,A1)
【文献】 特開2008−017473(JP,A)
【文献】 特開2008−092356(JP,A)
【文献】 特表2009−542056(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0116309(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0174853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インイヤ型ヘッドフォンのためのイヤーインターフェースであって、該イヤーインターフェースが、
着用者によって装着された場合に、耳珠および対珠の下にフィットし、かつ前記着用者の耳の耳甲介の略全体を占める本体部と、
前記着用者によって装着された場合に、少なくとも前記着用者の外耳道の入口内へ延在する迎合性のある出口部と、
前記本体部から延在し、かつ末端にて終端する迎合性のある保持部材と、
を備え、
前記着用者の耳にイヤーインターフェースがフィットした場合に、前記保持部材は、前記保持部材の外縁の略全長に沿って前記着用者の耳の対輪へ圧力を加え、かつ
前記保持部材の前記末端は、前記着用者の耳の耳輪の基部の下の前記対輪の端部に着座し、
装着されていない場合には前記保持部材が平面内で略湾曲し、かつ前記湾曲を増そうとする方向よりも、前記保持部材を真っ直ぐにしようとする方向において、より大きい剛性を有する、イヤーインターフェース。
【請求項2】
前記保持部材が、前記対輪との接触面に垂直な寸法より前記対輪との接触面と平行な寸法の方が大きい楕円形の断面を有する、請求項1に記載のイヤーインターフェース。
【請求項3】
前記保持部材が前記保持部材の前記外縁に沿った第1の脚と、前記本体部から延在し、かつ前記本体部から離れた点で前記第1の脚を支持する第2の脚とを備える、請求項1に記載のイヤーインターフェース。
【請求項4】
前記本体部、前記出口部、および前記保持部材が単一の一体構造を構成する、請求項1に記載のイヤーインターフェース。
【請求項5】
前記保持部材の前記外縁が長さに沿って異なる曲率半径を有し、前記外縁が、前記本体部近くではより鋭利に湾曲し、かつ前記末端近くではゆるやかに湾曲するように、前記外縁は、第1曲率半径を有する前記本体部から始まる第1部分と、前記第1曲率半径より大きい第2曲率半径を有する前記末端近くの第2部分とを含む、請求項1に記載のイヤーインターフェース。
【請求項6】
イヤフォンであって、
適用されたオーディオ信号を音響エネルギーに変換する音響ドライバと、
前記音響ドライバを含むハウジングであって、前記ハウジングは、前記音響ドライバに音響的に連結された前部空洞を含み、前記ハウジングは、前記イヤフォンが装着された場合に、前記前部空洞を着用者の外耳道へ延ばすノズルを含む、ハウジングと、
イヤーインターフェースであって、
着用者によって装着された場合に、耳珠および対珠の下にフィットし、かつ前記着用者の耳甲介下部の略全体を占める本体部と、
前記着用者によって装着された場合に、少なくとも前記着用者の外耳道の入口内へ延在する迎合性のある出口部と、
前記本体部から延在し、かつ末端にて終端する迎合性のある保持部材と、
を備え、
前記着用者の耳にイヤーインターフェースがフィットした場合に、前記保持部材は、前記保持部材の外縁の略全長に沿って前記着用者の耳の対輪へ圧力を加え、かつ
前記保持部材の前記末端は、前記着用者の耳の耳輪の基部の下の前記対輪の端部に着座する、
イヤーインターフェースと、
を備え
装着されていない場合には前記保持部材が平面内で略湾曲し、かつ前記湾曲を増そうとする方向よりも、前記保持部材を真っ直ぐにしようとする方向において、より大きい剛性を有する、イヤフォン。
【請求項7】
前記音響ドライバが、第1軸に沿って移動する音響放射面を備え、
前記ノズルが前記第1軸と非平行な第2軸に沿って前記着用者の外耳道へ前記前部空洞を延ばす、請求項に記載のイヤフォン。
【請求項8】
前記保持部材が、前記対輪との接触面に垂直な寸法より前記対輪との接触面と平行な寸法の方が大きい楕円形の断面を有する、請求項に記載のイヤフォン。
【請求項9】
前記保持部材が前記保持部材の前記外縁に沿った第1の脚と、前記本体部から延在し、かつ前記本体部から離れた点で前記第1の脚を支持する第2の脚とを備える、請求項に記載のイヤフォン。
【請求項10】
前記本体部、前記出口部、および前記保持部材が単一の一体構造としての前記イヤーインターフェースを構成する、請求項に記載のイヤフォン。
【請求項11】
通信電子機器を含み、かつ前記音響ドライバの前記ハウジングに連結された電子モジュールをさらに備え、
前記イヤフォンが着用者の耳に着座する場合、前記電子モジュールが前記音響ドライバの前記ハウジングによって前記着用者の頭から外向きに保持される、請求項に記載のイヤフォン。
【請求項12】
前記保持部材の前記外縁が長さに沿って異なる曲率半径を有し、前記外縁が、前記本体部近くではより鋭利に湾曲し、かつ前記末端近くではゆるやかに湾曲するように、前記外縁は、第1曲率半径を有する前記本体部から始まる第1部分と、前記第1曲率半径より大きい第2曲率半径を有する前記末端近くの第2部分とを含む、請求項に記載のイヤフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、イヤピース用の位置決めおよび保持構造体について記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許第6,831,984号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、イヤピースは、外部信号源から入力オーディオ信号を無線で受信する電子モジュールを備えている。電子モジュールは、音声を出力オーディオ信号に変換するマイクロフォンを備えている。電子モジュールは、出力オーディオ信号を無線で送信する回路をさらに備えている。イヤピースは、受信したオーディオ信号を音響エネルギーに変換する音響ドライバを備えたオーディオモジュールをさらに備えている。イヤピースは、インイヤ部をさらに備えている。インイヤ部は本体を備えている。本体は、使用者の外耳道入口の内側に嵌合するように寸法が決められかつ配置された出口部分と、オーディオモジュールから出口部分の開口部まで音響エネルギーを伝達する通路と、位置決めおよび保持構造体とを備えている。位置決めおよび保持構造体は、少なくとも外側脚および内側脚を備えている。外側脚および内側脚の各々は、取付端部において本体に取り付けられるとともに、接合端部において互いに取り付けられている。外側脚は、平面に位置している。位置決めおよび保持構造体は、力が端部に外側脚の平面において1つの回転方向に加えられる場合の方が、外側脚の平面の反対の回転方向に加えられる場合より実質的に堅固である。2つの脚のうちの一方は、その意図された位置において、耳甲介の後部において対輪と接触し、接合端部は対輪の下にあり、本体の平面部は耳甲介と接触し、本体の一部は対珠の下にある。外側脚の平面を、本体平面に対して傾斜させることができる。イヤピースを耳の中に挿入して、本体を右回りに回転させると、(1)耳輪の基部と接触する接合端部か、または(2)対輪の耳甲介舟(cymba concha)領域に押し込まれる(wedged)接合端部か、または(3)耳輪の基部と接触する内側脚部のうちの1つが、さらなる右方向回転を防止することができる。イヤピースが適所にある際、耳甲介の後部において対輪に対して外側脚を付勢する反作用力を加えることができる。本体は、出口部分および内側部分を備えることができ、内側部分は、出口部分より堅い材料を含むことができる。出口部分は、約16ショアAの硬度の材料を含むことができ、内側部分は、約70ショアAの材料を含むことができる。音響モジュールは、音波を出口部分に向けるノズルを備えることができる。ノズルを、ある方向で測定される外径によって特徴付けることができる。出口部分を、その方向で測定される直径によって特徴付けることができる。ノズルの外径は、出口部分の内径より小さくてもよい。出口部分およびノズルは概して楕円形であり得る。出口部分の短軸は約4.80mmであってもよく、ノズルの短軸は約4.05mmであってもよい。オーディオモジュールを、イヤピースが適所にある際にオーディオモジュールの一部が使用者の耳の耳甲介にあるように向けることができる。力が平面に対して垂直な方向に加えられる時の剛性は、0.01N/mm未満であり得る。
【0004】
別の態様では、イヤピースは、外部信号源から入力オーディオ信号を無線で受信する電子モジュールを備えている。電子モジュールは、音声を出力オーディオ信号に変換するマイクロフォンを備えている。電子モジュールは、出力オーディオ信号を無線で送信する回路をさらに備えている。イヤピースは、受信したオーディオ信号を音響エネルギーに変換する音響ドライバを備えたオーディオモジュールをさらに備えている。イヤピースは、インイヤ部をさらに備えている。インイヤ部は、使用者の外耳道の内側に嵌合するように寸法が決められかつ配置された外耳道部分と、オーディオモジュールから使用者の外耳道に音響エネルギーを伝達する通路とを備える本体を備えている。外側脚は平面に位置している。位置決めおよび保持構造体は、力が端部に、外側脚の面において1つの回転方向に加えられる場合の方が、外側脚の平面において反対の回転方向に加えられる場合より実質的に堅固であり得る。力が外側脚の平面に対して垂直な方向に加えられる場合の剛性は、力が外側脚の平面において右回り方向または左回り方向のいずれかに加えられる場合の剛性より小さい可能性がある。力が外側脚の平面に対して垂直な方向に加えられる場合の剛性は、力が外側脚の平面において右回り方向または左回り方向に加えられる場合の剛性の0.8未満であり得る。力が外側脚の平面に対して垂直な方向に加えられる時の剛性は、0.01N/mm未満であり得る。
【0005】
別の態様では、イヤピースは、外部信号源から入力オーディオ信号を無線で受信する電子モジュールを備えている。電子モジュールは、音声を出力オーディオ信号に変換するマイクロフォンを備えている。電子モジュールは、出力オーディオ信号を無線で送信する回路をさらに備えている。イヤピースは、受信したオーディオ信号を音響エネルギーに変換する音響ドライバを備えたオーディオモジュールをさらに備えている。イヤピースは、本体を備えるインイヤ部をさらに備えている。本体は、使用者の外耳道の内側に嵌合するように寸法が決められかつ配置された出口部分と、オーディオモジュールから出口部分の開口部まで音響エネルギーを伝達する通路と、内側脚および外側脚を備える位置決め構造体とを備えている。内側脚および外側脚は、取付端部において本体に取り付けられるとともに、接合端部において互いに取り付けられている。位置決め構造体は、イヤピースの回転位置を越える右回り回転を防止する少なくとも3つのモードを提供する。それらモードは、先端が耳輪の基部に接触することと、先端が耳甲介舟領域において対輪の下に押し込まれることと、内側脚が耳輪の基部に接触することとを含む。保持構造体は、内側脚および外側脚を備えることができる。内側脚および外側脚を、取付端部において本体に取り付けるとともに、接合端部において互いに取り付けることができる。イヤピースがその意図された位置にある際、外側脚を、耳甲介の後部において対輪に対して付勢することができ、(1)先端が対輪の下にあり得るか、(2)本体および外側脚のうちの少なくとも一方の一部が対輪の下にあり得るか、または(3)本体が外耳道と係合することができることのうちの少なくとも1つである。
【0006】
別の態様では、イヤピースは、外部信号源から入力オーディオ信号を無線で受信する電子モジュールを備えている。電子モジュールは、音声を出力オーディオ信号に変換するマイクロフォンを備えている。電子モジュールは、出力オーディオ信号を無線で送信する回路をさらに備えている。イヤピースは、受信したオーディオ信号を音響エネルギーに変換する音響ドライバを備えたオーディオモジュールをさらに備えている。イヤピースは、使用者の外耳道の内側に嵌合するように寸法が決められかつ配置された出口部分を備えた本体をさらに備えている。その本体は、音響エネルギーをオーディオモジュールから出口部分の開口部まで伝達する通路をさらに備えている。本体は、内側脚および外側脚を備える保持構造体をさらに備えている。内側脚および外側脚を、取付端部において本体に取り付けるとともに、接合端部において互いに取り付けることができる。イヤピースがその意図された位置にある際、外側脚は、耳甲介の後部において対輪に対して付勢され、本体は外耳道に係合し、(1)先端が対輪の下にあり、(2)本体および外側脚のうちの少なくとも一方の一部が対珠の下にあるうちの少なくとも一方である。
【0007】
別の態様では、インイヤ型イヤピース用の位置決めおよび保持構造体は、取付端部において互いに取り付けられるとともに他方の端部においてイヤピースの本体に取り付けられた、外側脚および内側脚を備えている。外側脚は平面に位置している。位置決めおよび保持構造体は、力が取付端部に外側脚の平面において左回り方向に加えられる場合の方が、力が取付端部に外側脚の平面において右回り方向に加えられる場合より大きい剛性を有している。力が左回り方向に加えられる場合の剛性は、力が右回り方向に加えられる場合の剛性の3倍を超える可能性がある。力が外側脚の平面に対して垂直な方向に加えられる場合の剛性は、力が外側脚の平面において右回り方向または左回り方向のいずれかに加えられる場合より小さい可能性がある。力が外側脚の平面に対して垂直な方向に加えられる場合の剛性は、力が外側脚の平面において右回り方向または左回り方向のいずれかに加えられる場合の剛性の0.8未満であり得る。力が外側脚の平面に対して垂直な方向に加えられる場合の剛性は、0.01N/mm未満であり得る。
【0008】
別の態様では、インイヤ型イヤピース用の位置決め構造体は、取付端部において互いに取り付けられて先端を形成するとともに、他方の端部においてイヤピースの本体に取り付けられた、第1の脚および第2の脚を備えている。位置決め構造体は、回転位置を超えるイヤピースの右回り回転を防止する少なくとも3つのモードを提供する。それらのモードは、先端が耳輪の基部に接触することと、先端が耳甲介舟領域において対輪の下に押し込まれることと、内側脚が耳輪の基部に接触することとを含む。
【0009】
別の態様では、インイヤ型イヤピースの保持構造体は、内側脚および外側脚を備えている。内側脚および外側脚は、取付端部において本体に取り付けられるとともに、接合端部において互いに取り付けられている。イヤピースがその意図された位置にある際、外側脚は、耳甲介の後部において対輪に対して付勢され、本体は外耳道に係合し、(1)先端が対輪の下にあるか、または(2)本体および外側脚の少なくとも一方の一部が対珠の下にあるうちの少なくとも一方である。
【0010】
別の態様では、インイヤ型イヤピース用の位置決めおよび保持構造体は、取付端部において互いに取り付けられるとともに第2の端部においてイヤピース本体に取り付けられる、内側脚および外側脚を備えている。内側脚および外側脚は、イヤピースの右回り回転を防止する少なくとも3つのモードを提供するように構成されている。それらのモードは、先端が耳輪の基部に接触することと、先端が対輪の下に押し込まれることと、内側脚が耳輪の基部に接触することとを含む。内側脚および外側脚は、イヤピースがその意図された位置にある際、外側脚が耳甲介の後部において対輪に対して付勢され、本体が外耳道に係合し、(1)先端が対輪の下にあるか、または(2)本体および外側脚の少なくとも一方の一部が対珠の下にあるうちの少なくとも一方であるようにさらに構成されている。
【0011】
他の特徴、目的および利点は、以下の図面と関連して読む場合に以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】人の耳の側面図である。
図2】イヤピースのいくつかの図である。
図3】イヤピースの一部のいくつかの図である。
図4】イヤピースが適所にある場合の人の耳の図である。
図5】イヤピースの一部の等角図および断面図である。
図6】イヤピースの一部の概略断面図である。
図7A】イヤピースの一部の図である。
図7B】イヤピースの一部の図である。
図7C】イヤピースの一部の図である。
図7D】イヤピースの一部の図である。
図8】イヤピースの引伸ばし図である。
図9】イヤピースの一部の等角図および断面図である。
図10】本体の一部が取り除かれた、イヤピースの本体の等角図である。
図11】イヤピースの本体の等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本出願で使用する用語を特定する目的で、人の耳およびデカルト座標系を示す。続く説明では、「前方」または「前」は、X軸に沿った+方向を指し、「後方」または「後」は、X軸に沿った−方向を指し、「上方」または「上」は、Y軸に沿った+方向を指し、「下方」または「下」は、Y軸に沿った−方向を指し、「〜の上部に」または「外側」は、Z軸に沿った+方向(ページから出る)を指し、「〜の後部」または「〜の下」または「内側」は、Z軸に沿った−方向(ページに入る)を指す。
【0014】
続く説明は、右耳に嵌合するイヤピースに対するものである。左耳に嵌合するイヤピースの場合、定義のうちのいくつか、または「+」方向および「−」方向が逆となる場合もあり、「右回り」および「左回り」は、耳または他の要素に対して以下の説明で意味するものと異なる方向での回転を意味する可能性がある。多く音異なる耳のサイズおよび形状がある。耳によっては、図1に示さない追加の特徴があるものもある。耳によっては、図1に示す特徴のうちのいくつかがない場合もある。いくつかの特徴は、図1に示すものより顕著であるかまたは顕著でない可能性がある。
【0015】
図2は、インイヤ型イヤピース10のいくつかの図を示す。イヤピース10は、本体12と、任意選択的な電子モジュール16に機械的に結合され得る音響ドライバモジュール14とを備えている。本体12は、外耳道内に嵌合する出口部分15を有することができる。他の参照数字については後に特定する。イヤピースは無線であってもよく、すなわち、イヤピースをいずれかの他の装置に機械的にまたは電子的に結合するワイヤまたはケーブルがない場合がある。イヤピース10のいくつかの要素は、いくつかの図では見えていない場合がある。
【0016】
任意選択的な電子モジュール16は、電子モジュール16の一端11にマイクロフォンを備えることができる。任意選択的な電子モジュール16はまた、放射電子信号を無線で受信する電子回路と、音響ドライバにオーディオ信号を送信しかつ音響ドライバの動作を制御する電子回路と、バッテリと、他の回路とを有することができる。電子モジュールを、平面の壁を備えた実質的にボックス型のハウジングに封入することができる。
【0017】
インイヤ型イヤピース10を耳の中に、適切に向けられるように、安定する(すなわち耳の中にあり続ける)ように、かつ快適であるように配置することが望ましい。適切な方向付けは、存在する場合は電子モジュールが、マイクロフォンが使用者の口に向けられるように、かつ電子モジュール16の平面の面が、イヤピースの過度の動きを防止するように使用者の頭部の側部近くにまたはそれに接して位置決めされるように、仕向けられるように、本体を位置決めすることを含むことができる。存在する場合は電子モジュール16とイヤピースのあり得る無線特性とにより、イヤピースの方向付けおよび安定性が、ワイヤまたはケーブルを有し電子モジュールを有していないイヤピースより複雑となる。ワイヤは、ワイヤまたはケーブルが垂れ下がるようにイヤピースを方向向ける傾向があり、それにより、ワイヤまたはケーブルがないことにより、適切な方向付けを達成することがより困難となる。電子モジュールがない場合、適切な方向付けは、出口部分15が外耳道に対して適切に向けられるように本体を方向付けることを含むことができる。電子モジュール16は、イヤピースの他の構成部品に対して重量がある傾向があり、それにより、質量中心を外側にシフトさせる傾向があり、その場合、イヤピースと使用者の頭部との間に接触がなく、それによって、イヤピースがY軸に沿って下方に移動し、Z軸およびX軸を中心に回転する傾向がある。
【0018】
図3は、本体12の切取図を示す。本体12は、音響ドライバモジュールの音響ドライバによって放射される音波を外耳道に伝達する通路18を備えている。本体12は、一端において実質的に耳甲介に寄りかかる実質的に平面の面13を有している。本体12からは、位置決めおよび保持構造体20が延在しており、それは、本体12とともに、不安定である(耳から脱落する傾向がある)か、不快である(耳を押圧するため)か、または不適合である(耳に沿っていないため)可能性がある、イヤフック、またはいわゆる「クリックロック」先端を使用することなく、イヤピースを適所に保持する。位置決めおよび保持構造体20は、本体から延在する少なくとも外側脚22および内側脚24を有している。他の実施態様は、点線で示す脚23等の追加の脚を有することができる。2つの脚の各々は、それぞれ一端26および28において本体に接続されている。外側脚は、耳甲介の後部において対輪の湾曲に概して従うように湾曲している。脚の各々の第2端部は箇所30において接合されている。接合された内側脚および外側脚は、箇所30を越えて位置決めおよび保持構造体末端35まで延在することができる。一実施態様では、位置決めおよび保持構造体20は、16ショアAデュロメータのシリコーンから作製されている。外側脚22は平面に位置している。
【0019】
位置決めおよび保持構造体は、力が矢印37によって示すように左回り方向に(Z軸を中心に)末端35に加えられる場合の方が、力がZ軸を中心に矢印39によって示すように右回り方向に末端35に加えられる場合より実質的に堅固である(コンプライアンスが低い)。コンプライアンスの相違を、2つの脚22および24の形状、2つの脚22および24の材料によって、かつ脚22および24の一方または両方にプレストレスを与えることにより、または形状、材料およびプレストレスの組合せにより達成することができる。コンプライアンスを、脚22および24にさらなる脚を追加することによってさらに制御することができる。位置決めおよび保持構造体は、力が矢印33によって示す、Z軸に沿って末端に加えられる場合の方が、力が矢印37および39に示す、Z軸を中心として加えられる場合より実質的にコンプライアンスが高い。
【0020】
一測定値では、力が左回り方向(矢印37によって示す)に加えられる場合の剛性を、本体12を固定して保持し、−X方向においてX軸に沿って末端35に力を加え、−X方向における変位を測定することによって概算し、力が右回り方向(矢印39によって示す)に加えられる場合の剛性を、本体12を固定して保持し、−Y方向においてY軸に沿って末端35を引っ張ることによって概算した。左回り方向における剛性は、本体12ならびに位置決めおよび保持構造体20のサイズに応じて、0.03N/mm(ニュートン/ミリメートル)から0.06N/mmの範囲であった。右回り方向における剛性は、同様に本体12ならびに位置決めおよび保持構造体20のサイズに応じて、0.010N/mmから0.016N/mmの範囲であった。等価なサイズの本体ならびに位置決めおよび保持構造体の場合、左回り方向における剛性は、右回り方向における剛性の3.0倍から4.3倍の範囲であった。一測定値では、力をZ軸に沿って加えた。剛性は、本体12ならびに位置決めおよび保持構造体20のサイズに応じて、0.005N/mmから0.008N/mmの範囲であり、剛性の典型的な範囲は、0.001N/mmから0.01N/mmである可能性がある。等価のサイズの本体ならびに位置決めおよび保持構造体の場合、力がZ軸に沿って加えられた場合の剛性は、力が左回り方向に加えられた場合の剛性の0.43から0.80の範囲であった。
【0021】
ここで図4を参照すると、イヤピースを耳の中に配置するために、本体を、耳の中に配置し、矢印43によって示すように、緩やかに内側に押し込み好ましくは左回りに回転させる。本体を耳の中に押し込むことにより、本体12および外側脚22は、対珠の下の適所に着座し、本体12の出口部分15は外耳道に入る。本体を適切に左回りに回転させることにより、続くステップのために外側脚22がZ方向において方向付けられる。
【0022】
そして、本体を、それ以上回転することができないような状態になるまで、矢印41に示すように右回りに回転させる。上記状態は、以下を含む可能性がある。すなわち、末端35が耳輪の基部に接触する可能性があり、脚24が耳輪の基部に接触する可能性があり、または末端35が耳甲介舟領域において対輪の後部で押し込まれる可能性がある。位置決めおよび保持構造体が、3つのすべての状態(以降、「モード」と呼ぶ)を提供するが、すべての使用者に対して3つの状態がすべて発生するとは限らず、大部分の使用者にはモードのうちの少なくとも1つが発生する。いずれの状態が発生するかは、使用者の耳のサイズおよび形状によって決まる。
【0023】
イヤピースを位置決めするために2つ以上のモードを提供することは、いずれの1つの位置決めモードもすべての耳に対して適切に作用するものではないため有利である。2つ以上の位置決めのモードを提供することにより、位置決めシステムが広範囲の耳サイズおよび形状に対して適切に作用する可能性が高くなる。
【0024】
本体12を右回りに回転させることによってまた、末端および外側脚が耳甲介舟領域に係合し対輪の真下に着座する。本体ならびに位置決めおよび保持構造体20が適所にある際、位置決めおよび保持構造体ならびに/または本体は、いくつかの方法のうちの少なくとも2つ、多くの人の場合はよりそれより多くの方法で、大部分の人の耳と接触し、すなわち、外側脚22の長さ40が耳甲介の後部において対輪と接触し、位置決めおよび保持構造体20の末端35が対輪42の下にあり、外側脚22もしくは本体12または両方の一部が対珠44の下にあり、本体12が出口において耳珠の下で外耳道に接触する。2つ以上の接触点が、イヤピースを適所に保持し、より優れた安定性を提供する。力の分散と、耳と接触する本体および外側脚の一部のコンプライアンスとにより、耳に対する圧力が低下し、快適さが提供される。
【0025】
ここでまた図2図Eおよび図3図B、CおよびDを参照すると、本体12は、耳甲介に寄りかかるわずかに湾曲した面13を有することができる。わずかに湾曲した面の周辺は、以降本体面と呼ぶ平面に位置することができる。一実施態様では、Y−Z平面上の位置決めおよび保持構造体20の外側脚22の突出を、線97(脚22の中心線)および線99(本体面に対して平行)に示すように、本体面13およびY−Z平面の交差部分に対して角度を付けることができる。適所にある際、本体面13はX−Y平面に対して実質的に平行である。言い換えれば、外側脚22はわずかに外側に角度が付けられている。
【0026】
位置決めおよび保持構造体20に角度を付けることにはいくつかの特徴がある。この構造により、末端が耳のサイズおよび形状の変動にも関らず対輪の下に着座する可能性が高くなる。外側の傾斜が耳により一致する。位置決めおよび保持構造体は内側に付勢され、それにより、内側方向における移動に抵抗するよりも外側方向における移動に対して抵抗する力がもたらされる。これらの特性により、耳甲介と接触する面の平面に対して角度が付けられていない位置決めおよび保持構造体を有するイヤピースに比較して、快適さ、フィット性および安定性が著しく向上ずる。
【0027】
位置決めおよび保持構造体を角度付けすることにより、末端が対輪の後部に着座しない場合、Z方向における末端のコンプライアンスによって、使用者は、対輪の後部に着座するように末端を内側に押圧することができる。
【0028】
本体の過回転を防止する特徴を提供することにより、耳のサイズおよび形状にも関らず、使用者間で方向付けが比較的均一となる。これは、イヤピースの適切かつ均一な方向付けにより、使用者の口に対してマイクロフォンの方向付けが適切かつ均一となるため有利である。
【0029】
図5は、断面A−Aに沿って取り出された本体12ならびに位置決めおよび保持構造体20の断面図を示す。断面は楕円形または「レーストラック」形状であり、実質的にZ軸に平行な方向Z’における寸法は、実質的にX軸に平行な方向X’における寸法の2.0倍〜1.0倍であり、好ましくは2.0より1.0に近く、一例では、X’方向における寸法の1.15倍である。いくつかの例では、Z’方向における寸法は、X’方向における寸法の0.8倍程度であり得る。この断面により、外側脚のより多くが耳甲介の後部において対輪と接触することができ、より優れた安定性および快適さが提供される。さらに、耳と接触する脚の部分に角または鋭利な縁がなく、不快の原因がなくなる。
【0030】
図2図BおよびEに最もよく示すように、音響ドライバモジュールは、本体12の平面に対して内側にかつ前方にわずかに傾斜している。内側の傾斜により、位置決めおよび保持構造体20もしくは電子モジュール12または両方に対して実質的に平行な音響ドライバモジュールに対して、重心がシフトする。前方の傾斜を内側の傾斜と組み合わせることにより、音響ドライバモジュールのより多くが耳の耳甲介の内側に嵌合することができ、イヤピースの安定性が向上する。
【0031】
図6は、音響ドライバモジュール14および本体12の概略断面を示す。イヤピース10の第1の領域102は、音響ドライバ116の両側においてそれぞれシェル113および115によって画定される後部空洞112および前部空洞114を備えている。いくつかの例では、15mm呼び径ドライバが使用される。ノズル126が、前部空洞114から本体12を通って外耳道への入口内に、いくつかの実施形態では外耳道内に延在しており、任意選択的な音響抵抗要素118において終端することができる。いくつかの例では、任意選択的な抵抗要素118は、図示するように、端部ではなくノズル126に位置している。存在する場合、音響抵抗要素は、それに突き当るかまたはそれを通過するある比率の音響エネルギーを放散させる。いくつかの例では、前部空洞114は、均圧(PEQ)穴120を備えている。PEQ穴120は、イヤピース10が耳の中に挿入された時に本体12および前部空洞114内に蓄積される可能性がある空気圧を軽減する役割を果たす。後部空洞112は、シェル113によって音響ドライバ116の後側の周囲で封止される。いくつかの例では、後部空洞112は、ポート(マスポート(mass port)とも呼ばれる)122等のリアクタンス性要素と、ポート124として形成されることも可能である抵抗性要素とを備えている。米国特許第6,831,984号は、ヘッドフォン装置における並列なリアクタンス性ポートおよび抵抗性ポートの使用を記載しており、参照により全体として本明細書に組み込まれている。ポートは、リアクタンス性または抵抗性として呼ばれることが多いが、実際には、いかなるポートもリアクタンス性効果および抵抗性効果の両方を有する。所与のポートについて説明するために使用される用語は、いずれの効果が主要であるかを示す。図6の例では、リアクタンス性ポートは、シェル113内の空間として定義されている。ポート122のようなリアクタンス性ポートは、たとえば、本来は封止された音響空洞であり得るもの、この場合は後部空洞112における管状開口部である。ポート124のような抵抗性ポートは、たとえば、幾分かの空気および音響エネルギーが空洞の壁を通過するのを可能にする、音響抵抗を提供する材料、たとえばワイヤまたは繊維スクリーンによって覆われた音響空洞の壁における小さい開口部である。マスポート122およびリアクタンス性ポート124は、後部空洞112を周囲環境と音響的に結合する。マスポート122およびリアクタンス性ポート124を概略的に示す。マスポート122およびリアクタンス性ポート124の実際の位置を、後に図に示し、本明細書においてサイズを指定する。同様に、均圧穴120の実際の位置およびサイズを後に示し、本明細書においてサイズを指定する。
【0032】
本体12、空洞112および114、ドライバ116、ダンパ118、穴120ならびにポート122および124の各々は、イヤピース10の性能に影響を与える可能性がある音響特性を有している。これらの特性を、イヤフォンに対する所望の周波数応答を達成するように調整することができる。能動等価回路または受動等価回路等の追加の要素を使用して、周波数応答を調整することも可能である。
【0033】
低周波数応答および感度を増大させるために、ノズル126が、前部空洞114を外耳道内に拡大することができ、本体12と外耳道との間のシールの形成を容易にする。前部空洞114を外耳道に封止することにより、ポート122および124を含む小さい空洞112によってトランスデューサ116の後部を囲むことで行われるように、低周波数カットオフを低減する。クッションの下部110とともに、ノズル126は、個々の使用者の耳に対するより一貫した結合と同様に、単に耳甲介内に載っているイヤフォンより、外耳道に対して優れたシールを提供する。クッションの先細り形状および柔軟性により、クッションは、種々の形状およびサイズの耳の中にシールを形成することができる。いくつかの例では、後部空洞112は、体積がドライバ116の体積を含む0.26cmである。ドライバを除き、後部空洞112は体積が0.05cmである。
【0034】
リアクタンス性ポート122は、後部空洞体積によって共鳴する。いくつかの例では、リアクタンス性ポート122は、直径が約0.5mmから2.0mmの範囲、たとえば1.2mmであり、長さが約0.8mmから10.0mmの範囲、たとえば2.5mmである。いくつかの実施形態では、リアクタンス性ポートは、イヤフォンの低周波数カットオフの周囲で空洞体積によって共鳴するように同調される。いくつかの実施形態では、低周波数カットオフは約100Hzであり、耳の形状に応じて個人によって変化する可能性がある。いくつかの例では、リアクタンス性ポート122および抵抗性ポート124は、音響リアクタンスおよび音響抵抗を並列に提供し、それは、それらが後部空洞112を自由空間に独立して結合することを意味する。対照的に、リアクタンスおよび抵抗を、たとえばリアクタンス性ポートの管の内部にワイヤメッシュスクリーン等のリアクタンス性要素を配置することにより、単一通路において直列に提供することができる。いくつかの例では、並列抵抗性ポートは、たとえば、Cleveland、OHのCleveland Wireから入手可能な70×800Dutch綾織ワイヤクロスによって覆われている。並列のリアクタンス性ポートおよび抵抗性ポートとして具現化される並列のリアクタンス性要素および抵抗性要素は、直列のリアクタンス性要素および抵抗性要素を用いる実施形態と比較して低周波数応答を増大させることができる。並列抵抗は、低周波数出力を実質的に減衰させないが、直列抵抗は減衰させる。並列ポートを備えた小さい後部空洞を用いることにより、イヤフォンは、改善された低周波数出力と、低周波数出力と高周波数出力との間の所望のバランスとを有することができる。
【0035】
PEQ穴120は、使用時に閉塞されないように位置している。たとえば、PEQ穴120は、耳と直接接触する本体12の部分には位置しておらず、前部空洞114内で耳から離れて位置している。穴の主な目的は、イヤピース10が使用者の耳の中に挿入された時に過圧状態を回避することである。さらに、穴を用いて、存在する可能性がある他の漏れと並行して作用する固定量の漏れを提供することができる。これは、個々人にわたって応答を標準化するのに役立つ。いくつかの例では、PEQ穴120は直径が約0.50mmである。前部空洞114の体積およびイヤフォンの所望の周波数応答等の要素に応じて、他のサイズを使用することができる。PEQ穴を追加することにより、低周波数出力の幾分かの損失とより繰返し可能な全体的な性能との間でトレードオフがもたらされる。
【0036】
本体12は、イヤフォンの音響素子を着用者の耳の物理的構造に快適に結合するように設計されている。図7A図7Dに示すように、本体12は、上述したように、耳の耳珠および対珠と接触するように成形された上部802と、外耳道に入るように成形された下部110とを有している。いくつかの例では、下部110は、外耳道内に嵌合するがその肉に対して著しい圧力を加えないように成形されている。下部110は、耳の中のイヤフォンの保持を可能にするように依存されるものではなく、イヤフォンを最小圧力で外耳道に封止することができるようにする。上部802の空隙806が、イヤフォン(図示せず)の音響素子を受け入れ、ノズル126(図6)が下部110の空隙808内に延在している。いくつかの例では、本体12はイヤピース10から取外し可能であり、たとえば、本体12は、領域810および812によって示すように、硬度の異なる材料から形成される。外側領域810は、軟質材料、たとえば、軟らかさのために優れた快適さを提供する。デュロメータが16ショアAのものから形成される。この部分に対する典型的なデュロメータ範囲は、2ショアAから30ショアAである。内側領域812は、より硬質な材料、たとえばデュロメータが70ショアAであるものから形成される。この部分は、クッションを適所に保持するために必要な剛性を提供する。この部分に対する典型的なデュロメータ範囲は、30ショアAから90ショアAである。いくつかの例では、内側部分812は、クッションを音響コンポーネントの上に保持するOリング型保持カラー809を備えている。このより剛性の内側部分812はまた、その部分の剛性を増大させるように外側部分内に延在することも可能である。いくつかの例では、単一材料に可変の硬度を配置することができる。
【0037】
いくつかの例では、クッションの両領域はシリコーンから形成される。シリコーンを、単一部品において軟質および硬質の両方で製造することができる。二段製造プロセスでは、2つの部分は、それらの間に強固な結合剤を用いて合わせて生成される。シリコーンには、広い温度範囲にわたってその特性を維持するという利点があり、シリコーンは、人の皮膚と接触したままである用途においてうまく使用されることが知られている。シリコーンを、たとえば種々のサイズのクッションを識別するために種々の色で、またはカスタマイズを可能にするように製造することも可能である。いくつかの例では、熱可塑性エラストマー(TPE)等の他の材料を使用してもよい。TPEは、シリコーンに類似しており、より安価であり得るが、耐熱性が低い。軟質シリコーンまたはTPE外側部分812と、ABS、ポリカーボネートまたはナイロン等の材料から作製された硬質な内側部分810とにより、材料の組合せを使用してもよい。いくつかの例では、クッション全体を、単一硬度のシリコーンまたはTPEから製造してもよく、それは、外側部分812に望まれる柔らかさと内側部分810に対して必要な硬さとの妥協を表す。
【0038】
図8は、電子モジュール16、音響ドライバモジュール14および本体12の引伸ばし図を示す。電子モジュールは、オーディオ信号を無線で受信する電子回路(図示せず)を封入する(多部品であり得る)プラスチック筐体402を備えている。音響ドライバモジュール14は、シェル113、音響ドライバ116およびシェル115を備えている。シェル113内のマスポート122およびリアクタンス性ポート124の位置が示されている。シェル115におけるPEQ穴120の位置もまた示されている。イヤピース10が組み立てられると、ノズル126は本体12の出口部分15の内側に嵌合する。再び図6を参照すると、ノズル126の外径は、矢印702および704に示すように、出口部分15の内側寸法とおよそ同じであり得る。
【0039】
図9は、図6のアセンブリの変形を示す。図9の実施態様は、図6の実施態様の鏡像であり、イヤピースを両耳用に構成することができることを示す。図9の実施態様では、ノズルの外部寸法は、矢印702’および704’によって示すように、出口部分15の対応する内部寸法より小さい。寸法の差により、ノズルと本体12の出口部分15との間に空間706が提供される。この空間により、本体12の下部が外耳道に対してよりよく一致することができ、追加の快適さおよび安定性が提供される。ノズルの剛性により、外耳道への通路の形状または体積を実質的に変更することなく、出口部分が外耳道に一致することができるようになり、そのため、イヤピースの音響性能は、耳のサイズまたは形状の変化によって相当に影響受けることはない。ノズルの寸法が小さいほど、高周波数(たとえば約3kHz)に悪影響を与える可能性がある。しかしながら、電子モジュール16に封入された、オーディオ信号を無線で受信する回路を、最大約3kHzのみのオーディオ信号を受信するように限定することができ、そのため、悪影響を受ける高周波数性能は、イヤピースの全体的な性能に対して有害ではない。イヤピースがより大音響で再生することができる1つの方法は、音響ドライバを過励振することである。音響ドライバを過励振することにより、歪みがもたらされる傾向があり、帯域幅に悪影響が与えられる。
【0040】
図10は、出口部分15およびノズル126の一部が取り除かれた本体12を示す。出口部分15の内側およびノズル126の外側はともに楕円形である。線702によって表されるノズルの外側の短軸は、4.05mmである。線704’によって表される出口部分15の内側の短軸は、4.80mmである。空間706のその最も広い箇所における幅は0.75mmである。
【0041】
優れた音響性能を達成する1つの方法は、より大きいドライバを使用することである。より大きい音響ドライバ、たとえば15mm呼び径音響ドライバは、従来のより小さい音響ドライバより少ない歪みでかつより優れた帯域幅および了解度でより大音響を再生することができる。しかしながら、より大きい音響ドライバの使用にはいくつつかの不都合がある。直径(呼び径+ハウジング)が11mmを超える音響ドライバは、多くの人の耳甲介に適合しない。音響ドライバが耳甲介の外側に配置される場合、質量中心はかなり耳の外側にある可能性があり、それにより、イヤピースが不安定であり耳から落ちる傾向がある。この問題は、イヤピースの他の構成部品に対して重量がある可能性があり、かつ質量中心を頭部の側部からさらに離れて移動させる電子モジュール12が存在することによってより悪化する。
【0042】
図2図BおよびEに最もよく示すように、音響ドライバモジュールは、位置決めおよび保持構造体20の平面および電子モジュール12の平面に対して内側にかつ前方に傾斜している。内側の傾斜により、位置決めおよび保持構造体20もしくは電子モジュール12または両方に対して実質的に平行である音響ドライバモジュールに対して、重心がシフトする。前方の傾斜が内側の傾斜と組み合わされることにより、音響ドライバモジュールのより多くの部分が耳の耳甲介の内側に嵌合することができ、イヤピースの安定性が向上する。
【0043】
人の耳はサイズおよび形状の大きい変動を示すが、本発明者らは、わずかな数の事前定義されたサイズであって、それらサイズが保持構造体20の寸法の間に特定の関係を維持する限り、そうしたサイズを提供するイヤピースのセットを提供することにより、人口の大部分に対応することができることが分かった。図11は、位置決めおよび保持構造体20の形状およびサイズを特徴付ける寸法を示す。特に重要なことは、脚22および24のそれぞれの外縁222および224の半径および長さ、すなわち、耳に接触する部分の外周の形状である。
【0044】
対輪に適合するために、外側脚22の外縁222は、本体12の近くでより鋭利に湾曲し本体12から遠い位置で平坦になる、可変の曲率半径を有している。いくつかの例では、図11に示すように、脚は、2つの切片22aおよび22bによって画定されており、各々がその切片内で一定である異なる半径RoaおよびRobを有している。いくつかの例では、3つの異なる半径が使用され、中間半径が、外側のより平坦な部分と内側のより湾曲した部分との間の遷移を平滑にする。他の例では、半径の異なる多くの切片があってもよく、または、脚全体が連続的に可変の曲率半径を有していてもよい。半径が測定される開始点となる中心点は、異なる切片に対して必ずしも同じであるとは限らず、すなわち、半径の値は、単に種々の箇所における湾曲の特徴付けであり、共通の中心の周囲の湾曲に対する言及ではない。外縁222は、脚が本体12を接合する箇所226と脚が末端35において平坦な先端と接触する端部箇所228との間で測定される全長Lを有している。
【0045】
同様に、図11における内側脚24の外縁224もまた2つの切片24aおよび24bを有しており、それらは異なる半径RiaおよびRibと、箇所230と232との間で測定される全長Lとを備えている。外側脚とは異なり内側脚に3つ以上の切片を有する例では、半径は単調な進行を有していない可能性がある。特に、中間セグメントは、最短半径を有することができ、両端における比較的直線状の部分の間に比較的鋭利な屈曲をもたらす。外側脚と同様に、内側脚は、3つ以上の異なる半径、図示するように3つの半径を有することができ、またはより多くの、最大連続的に変動する半径を有することができる。
【0046】
内側脚および外側脚の半径および長さは相互に関連している。2つの脚が一端で接合されているため、内側脚に対して対応する増大なしに外側脚を大きくすることにより、半径が低減し(湾曲がより極端になる)、かつその逆である。同様に、半径のいずれかを変更するには、脚の一方または他方の長さを変更する必要がある。異なるサイズの耳に適合するように、保持機構をより小さいかまたは大きくすると、異なる切片間の関係が変化するかまたは同じに維持される可能性がある。相対的な長さおよび湾曲の特定の組を使用することにより、単一の保持機能設計が、より少ない数の一意の部品によって広範囲の個人に適合することができる。
【0047】
Table1(表1)は、共通の相対寸法(すべてmmで示す)の3つのサイズを有する保持機構設計の一実施形態に対する一組の値を示す。Table2(表2)は、さまざまな寸法の比を示し、平均と3つのサイズにわたるそれらの比の平均からのパーセント変動とを含む。Roa対Robの比、すなわち外側脚の外縁の2つの半径の比、およびL対Lの比、すなわち2つの脚の外縁の長さの比は、3つのサイズすべてにわたって非常に類似しており、平均から最も離れている比が依然として平均比の10%内である。内側脚の半径を含む比のうちの2つは、それよりそれらの平均からさらに離れて変化するが、外側脚の端部半径対内側脚の端部半径の比は、3つのサイズにわたって非常に一貫しており、平均から6%しか変化しない。内側脚の湾曲は、外側脚の湾曲および2つの脚の相対的な長さによって大きく決まるため、最も重要になるのはRoa/RobおよびL/L測定値である。概して、上述した形状であり、外縁222が、0.70の10%内の比を有する2つの半径RoaおよびRobと、対向する縁224の長さLの2.6倍の10%内である外縁の全長Lとによって画定され、最短の外側脚長に対する約30mmと最長の外側脚長に対する45mmとの間の適切な範囲の絶対サイズをカバーする、3つのイヤチップが人口のかなりの部分に適合する。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【符号の説明】
【0050】
10 イヤピース
12 本体
13 本体面
14 音響ドライバモジュール
15 出口部分
18 通路
20 位置決めおよび保持構造体
22 外側脚
24 内側脚
35 末端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11