【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、降温用噴霧装置を温室等の太陽光が差し込む施設内(以下、施設を単に「温室」ということがある)で使用したときに生じる、本発明者が今回新たに見出した上記の課題を解決すべくなされたものであり、その第1の局面は次のように規定される。
太陽光が入射する施設内に配置される降温用噴霧装置の制御方法であって、前記施設内の気温又は気温及び湿度、並びに前記施設内に入射する太陽光の強さに応じて前記噴霧装置から噴霧されるミストの量を制御する、降温用噴霧装置の制御方法。
このように規定される第1の局面の降温用噴霧装置の制御方法によれば、施設内の気温又は気温及び湿度のみならず、施設内へ入射する太陽光の強さに応じてミストの噴霧量を調整するので、施設内の気温の制御が正確かつ容易になる。
ここで施設とは、壁、屋根、床、窓及びドア等で外界と区画された空間を有する建築物であって、その一部又は全部が透光性の材料で形成され、該透光性材料部分を太陽光が透過し、その内部空間の気温に影響を与えるものを指す。この施設の代表例が温室である。
太陽光の強さは、日射量(熱量)、日照量(光量)などで評価することができる。また、ソーラパネルを介して太陽光を電力に変換し、当該電力に基づき太陽光の強さを評価することもできる。この発明において評価されるべき太陽光の強弱は施設内の気温に影響を与えるか否かである。施設内の気温を上昇させる太陽光の強さを、その強弱を評価するための、基準とすることができる。勿論、太陽光の入射時間長さも施設内の気温上昇又は降下に影響するので、太陽光の強さの基準を入射時間長さと関連付けて定めることもできる。
ミストとは例えば平均粒径が40μm以下の水滴を指し、特許文献1に記載の装置で噴霧されるもの(いわゆるドライミスト(登録商標))を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0007】
既述のように、噴霧装置は2MPa〜10MPaという高圧の水(以下、「加圧水」ということがある)を噴霧ノズルに適した一定圧力で供給し、これから噴出させてミストとする。そのため、加圧ポンプの出力(吐出圧力)は一定となり、その結果、加圧ポンプから吐出される水量を制御することは困難である。他方、加圧ポンプと噴霧ノズルの間に配置される制水弁により噴霧ノズルに供給される加圧水の量を制御することが考えられるが、2MPa〜10MPaという高圧の加圧水の水量を制御する弁は高価なものとなる。
つまり、実用的な噴霧装置によれば、ミストの噴霧量の制御は加圧ポンプのオン・オフに拠らざるをえない。しかしながら、既述のように温室では日射状態の如何に応じてその内部気温が変化する。従って、当該内部気温変化に対応してミスト噴霧量を変化させる必要があるが、加圧ポンプのオン・オフ制御、即ち2段階制御だけではミスト噴霧量の調整に限界がある。
そこで本発明者は、加圧水を供給する加圧給水部と噴霧ノズルとを備える噴霧装置を少なくとも2セット配置して、それぞれを独立して制御することに気がついた。これにより、少なくとも1セットの噴霧装置のオン・オフ制御(即ち、二段階制御)に比べてミスト噴霧量を細かく制御できる。即ち、第1の噴霧装置からのミスト噴出量をA、第2の噴霧装置からのミスト噴霧量をBとすると、温室内へのミスト噴出量は最大で4段階(0、A、B、A+B)に調節できる。同様に、噴霧装置をnセット準備すれば、最大で2
n段階に調節できることがわかる。
【0008】
上記のように複数の噴霧装置の配置を前提に、第2の局面の発明は次のように規定される。
第1の局面に規定の降温用噴霧装置の制御方法において、前記降温用噴霧装置は、加圧給水部と、該加圧給水部から供給される定圧の加圧水を噴出してミストを形成する噴霧ノズルと、を備えてなり、
該降温用噴霧装置を施設内に少なくとも2セット配置してマルチ降温システムを構成し、
第1の前記降温用噴霧装置の稼働を前記施設内の気温、又は前記施設内の気温及び湿度に基づき制御し、
第2の前記降温用噴霧装置の稼働を前記施設内に入射する前記太陽光の強さに基づき制御する。
【0009】
このように規定される第2の局面によれば、第1の噴霧装置と第2の噴霧装置がそれぞれ独立して、前者は温室内の気温、又はその気温及び湿度に基づきその稼働が制御され、後者は入射する太陽光の強さに基づき制御される。
太陽光の強さは温室の気温を制御する際の外乱要因であるので、当該太陽光の強さの変化に対して個別に制御を掛ける、即ちミスト噴霧量を制御することが好ましい。温室の気温、又は気温及び湿度はそもそもの制御対象であるので、太陽光の強さの如何にかかわらず、これはこれで制御する(即ち、ミスト噴霧量を制御する)。
換言すれば、温室内の気温、又は気温及び湿度は、太陽光の強さの如何により変化するもののその変動幅は比較的小さいのに対し、太陽光の強さは気象状態によって大きく変化する。よって、両者を峻別して測定して、それぞれをミスト噴霧量にフィードバックすることは制御の質の向上の見地から好ましい。
第1及び第2の噴霧装置の稼働制御は、加圧給水部に備えられた加圧ポンプのオン・オフによるものとすることにより、高価な制水弁等の使用を避けて、各噴霧装置を安価に提供可能となる(第3の局面)。
【0010】
第3の局面に規定の制御方法において、前記第1の降温用噴霧装置は前記施設内の気温、又は気温及び湿度が第1の基準条件であってかつ該第1の基準条件が第1の閾値時間以上継続したときにその加圧ポンプをオン又はオフとし、
前記第2の降温用噴霧装置は前記施設内に入射した太陽光の強さが第2の基準条件であってかつ該第2の基準条件が第2の閾値時間以上継続したときにその加圧ポンプをオン又はオフとする。(第4の局面)
第1の基準条件は、例えば、気温DTが32℃未満、又は相対湿度RHが70%超過のとき前記加圧ポンプをオフとし、それ以外の条件で前記加圧ポンプをオンとする。
太陽光の強さに関する第2の基準条件は日射量を用いることができる。日射量としては単位面積当たりの熱量(W/m
2)を用いることが、潜熱との対比の上から好ましい。そのため第2の基準条件は、例えば、日射量が300(W/m
2)以上のとき前記加圧ポンプをオンとし、それ以外の条件(300(W/m
2)未満)では前記加圧ポンプをオフとする。(第5の局面)
【0011】
また、第1の閾値時間及び第2の閾値時間は30秒とすることができる。即ち、第1の基準条件として例えば気温DTが32℃未満、又は相対湿度RHが70%超過の条件が30秒以上継続したときに加圧ポンプはオフされ、この条件に満たない条件が30秒以上継続したときに加圧ポンプをオンとする。同じく、第2の基準条件として、例えば、300(W/m
2)以上の日射量が30秒以上継続したときに加圧ポンプはオンされ、日射量が300(W/m
2)に満たない時間が30秒以上継続したときに加圧ポンプをオフとする。
なお、2MPa〜10MPaという加圧ポンプを短時間でオン・オフ制御するとその寿命が短くなるおそれがある。そこで、加圧ポンプのオフ時間及び/又はオン時間は、前記加圧ポンプの負荷を低減可能な第3の閾値時間以上とすることが好ましい(第6の局面)。
この第3の閾値時間は5分とすることができる。勿論、この第3の閾値時間は加圧ポンプに応じて任意に設定可能である。
【0012】
上記において、加圧ポンプをオンする基準とこれをオフする基準とに差を待たせることもできる。即ちこの発明の第7の局面は次のように規定される。
第4の局面に規定の制御方法において、前記第1の基準条件は、下記(A)及び(B)の条件をともに満足する、
(A)前記施設内の気温、又は気温及び湿度が第1−1の基準条件であってかつ第1−1の基準条件が第4の閾値時間以上継続したときにその加圧ポンプをオンとする、
(B)前記施設内の気温、又は気温及び湿度が第1−2の基準条件であってかつ第1−2の基準条件が第5の閾値時間以上継続したときに前記加圧ポンプをオフとする。
第1−1の基準条件は、例えば、気温DTが34℃以上、且つ相対湿度RHが60%以下のとき前記加圧ポンプをオンとし、第1−2の基準条件は、例えば、気温DTが32℃未満、又は相対湿度RHが70%超過のとき前記加圧ポンプをオフとすることができる。
この第7の局面の制御方法では、気温又は気温及び湿度に関する基準条件のみについて、加圧ポンプのオン条件とオフ条件に差を設けているが、同様に、太陽光の強さに関する基準条件においても加圧ポンプのオン条件とオフ条件に差を設けることができる。
上記において、第4の閾値時間及び第5の閾値時間は30秒とすることができる。
【0013】
その稼働がオン・オフ制御される噴霧装置を複数セット配置することにより、温室内の気温制御をより多段に実行できることは既述の通りであり、第2の局面では第1の噴霧装置を温室の気温、又は気温及び湿度に基づき制御し、第2の噴霧装置を太陽光の強さにより制御している。
温室内の気温をより精緻に制御する見地からすれば、第1及び第2の噴霧装置をそれぞれ異なる基準に基づき制御すればよい。
そこでこの発明の第8の局面は次のように規定される。
太陽光が入射する施設内に配置される降温用噴霧装置の制御方法であって、
加圧ポンプを備える加圧給水部と、該加圧給水部から供給される定圧の加圧水を噴出してミストを形成する噴霧ノズルと、を備えてなる降温用噴霧装置を施設内に少なくとも2セット配置してマルチ降温システムを構成し、
第1の前記降温用噴霧装置の前記加圧ポンプのオン・オフを前記施設内における第3の基準条件に基づき制御し、
第2の前記降温用噴霧装置の前記加圧ポンプのオン・オフを前記施設内における第4の基準条件に基づき制御する、降温用噴霧装置の制御方法。
【0014】
ここで第3の基準条件と第4の基準条件としてそれぞれ異なる気温及び湿度を用いることができ、下記の第9の局面のように規定できる。即ち、
第8の局面に規定の制御方法において、前記第3の基準条件として前記施設内の気温が第1の気温以上でありかつその湿度が第1の湿度以下のとき、前記加圧ポンプをオンとし(それ以外の条件でオフし)、
前記第4の基準条件として前記施設内の気温が第2の気温以上でありかつその湿度が第2の湿度以下のとき前記加圧ポンプをオンとする(それ以外の条件でオフとする)。
ここに、第1の気温は気温DT:32℃とし、第1の湿度は相対湿度RH:70%とし、第2の気温は気温DT:34℃とし、第2の湿度は相対湿度RH:60%とすることができる(第10の局面)。
【0015】
この発明の第11の局面は次のように規定される。
加圧給水部から供給される定圧の加圧水を噴霧ノズルから噴出してミストを形成するミスト形成部と、
降温対象空間の雰囲気の気温、又は気温及び湿度を検出する第1の検出部と、
太陽光の強さを検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部並びに第2の検出部の検出結果に基づき前記噴霧ノズルから噴出されるミストの量を調節するミスト量調整部と、を備えてなる降温用噴霧装置。
このように規定される第11の局面の降温用噴霧装置によれば、第1の局面で規定の制御方法が実行できる。
【0016】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
第1の加圧ポンプ及び第1の噴霧ノズルを備えてなる第1の降温用噴霧装置と、第2の加圧ポンプ及び第2の噴霧ノズルを備えてなる第2の降温用噴霧装置と、を組み合わせてなるマルチ降温システムであって、
降温対象空間の雰囲気の気温、又は気温及び湿度を検出する第1の検出部と、
太陽光の強さを検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部並びに第2の検出部の検出結果に基づき、前記第1及び/又は第2の加圧ポンプのオン・オフ制御をするミスト量調整部を備えるマルチ降温システム。
このように規定される第12の局面のマルチ降温システムによれば、降温用噴霧装置が2セット備えられるので、温室内に対するミスト噴出量をより細かく制御できる。また、このように規定される第12の局面のマルチ降温システムによれば、第3の局面で規定の制御方法を実行できる。
【0017】
この発明の第13の局面は次のように規定される。即ち、
第12の局面で規定のマルチ降温システムにおいて、前記ミスト量調整部は前記第1の検出部の検出結果に基づき前記第1の加圧ポンプのオン・オフを制御する第1の調整部と、前記第2の検出部の検出結果に基づき前記第2の加圧ポンプのオン・オフを制御する第2の調整部とを備える。
このように規定される第13の局面のマルチ降温システムによれば、第3の局面で規定の制御方法を実行できる。
【0018】
この発明の第14の局面は次のように規定される。即ち、
第12又は13の局面で規定のマルチ降温システムにおいて、前記第1の加圧ポンプと前記第2の加圧ポンプは同一の定格であり、並びに前記第1の噴霧ノズルと第2の噴霧ノズルも同一の定格である。
これにより、部品の共通化が図られて、製造コスト及びメンテナンスコストの低いマルチ降温システムの提供が可能となる。
【0019】
この発明の第15の局面は次のように規定される。即ち、
第12又は13の局面に規定のマルチ降温システムにおいて、前記第1の検出部の検出結果に基づき、前記降温対象空間の気温、又は気温及び湿度が前記第1の基準条件であってかつ該第1の基準条件が第1の閾値時間以上継続したときに前記ミスト量調整部は前記第1の加圧ポンプをオン又はオフとする信号を出力し、
前記第2の検出部の検出結果に基づき、前記降温対象空間へ入射した太陽光の強さが第2の基準条件であってかつ該第2の基準条件が第2の閾値時間以上継続したときに前記ミスト量調整部は前記第2の加圧ポンプをオン又はオフとする信号を出力する。
これにより、第4の局面と同様な作用及び効果がえられる。
【0020】
この発明の第16の局面は次のように規定される。即ち、
第12又は13の局面に規定のマルチ降温システムにおいて、前記ミスト量調整部には、前記第1の加圧ポンプ及び前記第2の加圧ポンプのオフ時間及び/又はオン時間を第3の閾値時間維持する加圧ポンプ制御装置が更に備えられている。
これにより、第6の局面と同様な作用及び効果が得られる。
【0021】
この発明の第17の局面は次のように規定される。即ち、
第15の局面に規定のマルチ降温システムにおいて、前記第1の基準条件は、下記(ア)及び(イ)の条件をともに満足する、
(ア)前記降温対象空間の気温、又は気温及び湿度が第1−1の基準条件であってかつ該第1−1の基準条件が第4の閾値時間以上継続したときに前記ミスト量調整部は前記第1の加圧ポンプをオンとする、
(イ)前記降温対象空間の気温、又は気温及び湿度が第1−2の基準条件であってかつ該第1−2の基準条件が第5の基準値時間以上継続したときに前記第1の加圧ポンプをオフとする。
これにより、第7の局面と同様な作用及び効果が得られる。
【0022】
この発明の第18の局面は次のように規定される。即ち、
第1の加圧ポンプ、第1の配水管及び該第1の配水管に取り付けられる複数の第1の噴霧ノズルを備えてなる第1の降温用噴霧装置と、第2の加圧ポンプ、第2の配水管及び該第2の配水管に取り付けられる複数の第2の噴霧ノズルを備えてなる第2の降温用噴霧装置とが施設内に配置され、
前記第1の噴霧ノズルと前記第2の噴霧ノズルとがそれぞれ前記施設内において均等に分布するように分配され、
前記第1の噴霧ノズルから噴霧されるミスト量は前記第1の加圧ポンプのオン・オフで制御され、
前記第2の噴霧ノズルから噴霧されるミスト量は前記第2の加圧ポンプのオン・オフで制御される、マルチ降温システム。
このように規定されるマルチ降温システムによれば、第1の降温用噴霧装置と第2の降温用噴霧装置の各噴霧ノズルを施設内に均等に分配しているので、第1及び第2の降温用噴霧装置をそれぞれ独立して稼働させることにより、施設内において均等にかつより多段にミスト量を調節できる。
制水弁等を使用して噴霧ノズルからのミスト噴霧量をリニアに制御できれば、施設内において第1の降温用噴霧装置の担当区域と第2の降温用噴霧装置の担当区域を仕分けることができる。この場合、各装置の噴霧ノズルは担当区域のみに設置されるので、配管の長さや設置コストの上昇を抑制できる。しかしながら、当該制水弁の使用は費用の見地から現実的ではなく、加圧ポンプのオン・オフによりミスト噴霧量を制御せざるを得ない。この場合、設置のためのコストアップに敢えて抗して、各降温用噴霧装置の配水管、ひいては噴霧ノズルをそれぞれ施設内に均等に分配することとなる。