(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
知られている噴射装置制御方法を用いた場合には、加圧燃料が燃焼空間に供給される速度に対しては、最小の制御しか得られないことが分かっている。たとえば、噴射ノズルが開く速度を遅くすることは、一部のエンジン状態では排気物質および燃焼騒音の点から有益であるので、望ましい場合があり得る。しかし、知られている制御技法を用いると、これは排気からの粒子排出の増加という犠牲を伴うことになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この背景に対して、本発明は、第1の態様において、噴射装置からの燃料の噴射率を制御するために燃料噴射装置内で用いるように適合された圧電アクチュエータの積層体の変位を制御する方法を提供し、この方法は、第1の開弁段階および第2の開弁段階を含む開
弁フェーズ中に、積層体を通して変化電流を駆動する(すなわち、積層体に電荷を追加する、または積層体から電荷を除去する)ステップを含む。この方法は、第1の開弁段階中に、第1の期間の間、第1の電流レベルで積層体を駆動するステップと、第2の開弁段階中に、第2の期間の間、第2の電流レベルで積層体を駆動するステップとをさらに含む。第2の電流レベルは、第1の電流レベルより小さく、各電流レベルは、開弁フェーズ内の噴射率が、第2の開弁段階に対応する第2の部分より急な勾配を有する、第1の開弁段階に対応する第1の部分を含むように選択される。
【0009】
本発明は、2つの活動化電流レベルが使用されるので、アクチュエータには、動作の第1の段階中の高い電流レベルと、それに続く動作の第2の段階の間の比較的低い電流とを印加できるという利点を実現する。したがってアクチュエータに、第1の開弁段階中に、その関連する弁ニードルに対して大きな初期力を加えさせ、これにより弁ニードルをその弁座から急速に引き上げさせる。これに続いて、アクチュエータは、第2の開弁段階中には低減された力を弁ニードルに印加し、それによりニードルが開くのを遅くする。したがって、噴射率は、高い初期噴射率(開弁)と、それに続く遅い噴射率とを有する。大きな初期力は、弁ニードルが速やかに引き上げられ、それによって噴射開始遅延が最小になるので重要である。しかし、本発明により、弁ニードルの短い初期の動きに続いて、一部のエンジン動作状態の間に、弁ニードルの動きを大幅に遅くすることが有益となり得ることが認識される。したがって、第2の段階中に、アクチュエータを通して低い電流を駆動することによって、噴射装置の噴射率を、排気物質および騒音に対して燃焼プロセスを最適にするために、所望の形にすることができる。
【0010】
本発明は、第1の閉弁段階および第2の閉弁段階を含む、噴射装置の閉弁フェーズにも同様に適用され、積層体は、第1の閉弁段階中に、第1の期間の間、第1の電流レベルで駆動され、第2の閉弁段階中に、第2の期間の間、第2の電流レベルで駆動される。閉弁フェーズでは、第2の電流レベルは、第1の電流レベルより大きく、各電流レベルは、閉弁フェーズ内の噴射率が、第2の閉弁段階に対応する第2の部分より急峻さの小さい勾配を有する、第1の閉弁段階に対応する第1の部分を含むように選択される。
【0011】
主な実施形態では、第1の開弁段階の終わりの後に、直ちに第2の開弁段階の開始が続くが、これはそうでなくてもよく、もう1つの実施形態では、第1と第2の段階の間に遅延が存在する。同様に、第1の閉弁段階の終わりと第2の閉弁段階の開始の間に導入された遅延があってもよい。
【0012】
一実施形態では、等しい期間とするのではなく、第2の開弁期間は、第1の開弁期間より長くなるように構成される。第2の開弁期間をこのように構成することにより、大きな駆動電流は、比較的小さな駆動電流に切り換わる前の比較的短い時間に使用されるだけなので、積層体の電力消費の点から、追加の効率上の利益がもたらされる。
【0013】
本発明は、噴射するために放電する燃料噴射装置内での使用を考えているが、本発明は、噴射するために充電する噴射装置内での使用にも適している。
さらなる態様では、燃料噴射率および体積を制御するために燃料噴射装置内で用いるように適合された、圧電アクチュエータの積層体の変位を制御する方法は、開弁フェーズおよび/または閉弁フェーズ中に、積層体を充電または放電するように積層体を通して、すなわちそれぞれ積層体内へまたは積層体から外へ変化電流を駆動するステップを含み、閉弁フェーズおよび/または開弁フェーズは、第1の段階および第2の段階を含む。この方法は、第1の段階中に、第1の期間の間、所定の噴射率閾値以下の第1の電流レベルで積層体を駆動するステップと、第2の段階中に、第2の期間の間、第2の電流レベルで積層体を駆動するステップとを、さらに含み、第2の電流レベルは、第1の電流レベルよりも小さい。
【0014】
一実施形態では、所定の噴射率閾値は、第1の段階中に到達する噴射率が噴射装置のピーク噴射率値の60%未満となるように選択される。好ましくは、噴射率閾値は30と60パーセントの間であり、より好ましくは、それぞれ45と55パーセントの間、および48と52パーセントの間である。最も好ましくは、所定の噴射率閾値は、噴射装置のピーク噴射率のほぼ50パーセントであるように選択され、なぜならこの値は、実際には特に有利であるとされているからである。
【0015】
別法として、所定の噴射率閾値は、たとえば、高圧力燃料アキュムレータの体積、または「レール」から噴射装置に供給される燃料の圧力の関数として選択してもよい。
オプションとしては、噴射イベントによって要求される燃料が、結果として噴射率閾値より低い最大燃料噴射率となる状況では、第2の期間は、ほぼゼロに等しくなる。
【0016】
本発明の他の態様では、本発明は、実行環境において実行されるとき、上記により定義された方法のいずれかを実施するように動作可能な、少なくとも1つのコンピュータプログラムソフトウェア部分を有する、コンピュータプログラム製品を提供する。
【0017】
本発明はまた、先に定義された前記または各ソフトウェア部分を有するデータ記憶媒体、および先に定義された記憶されたデータ記憶媒体を有するコントローラにもある。
本発明をより容易に理解するための、例のみとして、以下の図面を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、実効的に並列に接続された、容量性圧電素子4の積層体2を含む、圧電アクチュエータ1の概略図を示す。このアクチュエータは、アクチュエータ1によって動作可能な弁ニードルを有する、欧州特許第EP1174615号に記載されているタイプの燃料噴射装置での使用に適したタイプである。
【0020】
積層体2は、以下の式に従って、所与の時間tの間に積層体2内へまたは積層体2から外へ電流Iを駆動することによって、様々な付勢レベルに充電される。
電荷(Q)=電流(I)×時間(t)
図2(a)は、アクチュエータ1の電荷対時間の典型的なグラフを示し、アクチュエータ1は、閉じた無噴射位置から、開いた噴射位置に駆動され(すなわち、開弁/放電フェーズ6)、再び無噴射位置に戻される(すなわち、閉弁/充電フェーズ8)。開弁フェーズ6の間に、電荷は、t
openの時間にわたって、第1の電荷レベルQ1から第2の電荷レベルQ2に変化する。Q1とQ2の差は、電荷の変化ΔQに等しく、これは、
図1に示されるように、積層体2の長さが、相対的に長い長さL1から相対的に短い長さL2に変化することに対応する。積層体2の長さの変化は、噴射装置弁ニードルの動きを直接制御し、したがって燃料供給を制御する。
【0021】
圧電アクチュエータ1を制御する上述の方法は、「電荷制御」方法と呼ばれる。この方法を用いて、どれだけの電荷を積層体に印加しまたは積層体から除去するかを決定し、上記の式に従って必要な時間の間、適当な電流を積層体2に印加しまたは積層体から除去することによって、アクチュエータを動作させることが可能である。実際には、積層体を充電および放電するために、変化電流、すなわち2つの電流レベルの間を遷移する電流が用いられる。電流の平均値は「電流設定点」または「電流レベル」として知られており、以下ではそのように呼ぶ。また、
図2(b)は、
図2(a)に示される電荷波形を実現するために、積層体2に印加される変化電流の典型的な電流対時間のグラフを示す(平均値/設定点は、破線で示される)。
【0022】
図3を参照すると、駆動回路10は、それぞれが
図1に示されるようなアクチュエータを含む、それぞれ第1、第2、および第3の噴射装置16a、16b、16cを備える噴射装置バンク16を駆動するように構成される。駆動回路は、第1の電圧源V
S1、第2の電圧源V
S2、第1および第2のエネルギー蓄積コンデンサC1およびC2、電流検出および制御手段14、それぞれが噴射装置16a、16b、16cのそれぞれ1つに関連付けられた噴射装置選択スイッチS1、S2、S3、インダクタ18、充電スイッチQ1、放電スイッチQ2、およびマイクロプロセッサ20を含む。噴射装置選択スイッチS1、S2、S3のそれぞれは、典型的には、バイアス供給源入力にて電力供給されるゲート駆動回路に結合されたゲートを有する絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の形をとる。充電および放電スイッチQ1、Q2は、コレクタからエミッタへの電流の流れを制御するゲートを有する、nチャネルIGBTの形とることができる。
【0023】
第1の電圧供給源V
S1は、上部電圧レベルV
topにある上部電圧レール28と、積層体電圧レベルV
stackにあり双方向性の中央電流経路30として知られる中央電圧レールとに跨って接続される。第2の電圧供給源V
S2は、中央電圧レール30と、下部電圧レベルV
bottomにある下部電圧レール32とに跨って接続される。
【0024】
第1のエネルギー蓄積コンデンサC1は、上部電圧レール28と中央電流経路30の間に接続され、第2の蓄積コンデンサC2は、中央電流経路30と下部電圧レール32の間に接続される。電流検出および制御手段14は、中央電流経路30内で第1および第2の蓄積コンデンサC1、C2の間の接続点と噴射装置バンク16の間に接続される。
【0025】
噴射装置16a、16b、16cは、並列に接続され、各噴射装置16a、16b、16cは異なる並列枝路内に接続され、各枝路は、ダイオードD3、D4、D5がその両端に接続された噴射装置選択スイッチS1、S2、S3を含む。噴射装置16a、16b、16cは、駆動回路10から離れて取り付けられ、適当な接続リードを通じた駆動回路10への接続部xおよびyが設けられる。
【0026】
噴射装置16a、16b、16cのそれぞれの負電極は、それらのそれぞれの選択スイッチS1、S2、S3に接続される。噴射装置16a、16b、16cの正電極は互いに接続され、インダクタ18と直列に結合される。
【0027】
ダイオードD6は、インダクタ18の噴射装置側の中央電流経路30と、上部電圧レール28の間に設けられ、もう1つのダイオードD7は、下部電圧レール32と、やはりインダクタ18の噴射装置側の中央電流経路30との間に設けられる。ダイオードD6は、選択された噴射装置16a、16b、16cに対して、その充電フェーズ8の終わりに「電圧クランプ効果」をもたらし、噴射装置16a、16b、16cがV
C1より高い電圧に駆動されるのを防ぐ。ダイオードD7は、以下にさらに詳しく説明するように、動作の放電フェーズ6の間に、電流の流れに対する再循環経路を生ずる。
【0028】
充電スイッチQ1は、インダクタ18の噴射装置側ではない方の側と、上部電圧レール28の間に接続され、ダイオードD8がその両端に並列に接続される。同様に、放電スイッチQ2は、下部電圧レール32と、インダクタ18の噴射装置側ではない方の側との間に接続され、同じようにダイオードD9がその両端に並列に接続される。
【0029】
電流検出および制御手段14の出力I
Sは、マイクロプロセッサ20の入力に送られ、マイクロプロセッサ20は、電流検出および制御手段14、噴射装置選択スイッチS1、S2、S3、充電スイッチQ1、および放電スイッチQ2のための制御信号を供給する。放電および充電スイッチQ1、Q2のための制御信号は、それぞれ
図2(c)および2(d)に示されるように、それぞれ放電イネーブル信号34および充電イネーブル信号36と呼ばれる。
【0030】
噴射装置選択スイッチS1、S2、S3、充電スイッチQ1、および放電スイッチQ2を制御することにより、積層体2が充電/放電されそれに従って燃料供給が制御されるように、必要な時間の間、積層体2を通して変化電流を駆動することができる。
【0031】
また、
図2(b)、2(c)、2(d)、および2(e)を参照すると、電流は、マイクロプロセッサ20に関連して電流検出および制御手段14の制御の下で、上側電流閾値レベルI
1と下側電流閾値レベルI
2の間で変化させられる。電流検出および制御手段14は、電流の流れを監視し、「検出された」電流I
Sに基づいてチョッピングされた信号38(
図2(e))を発生する。これは、以下にさらに詳しく説明する。チョッピングされた信号38は、論理ANDゲートを通じて放電イネーブル信号34(
図2(c))と組み合わされ、その結果の信号は放電スイッチQ2に印加される。チョッピングされた信号38はまた、論理ANDゲートを通じて充電イネーブル信号36(
図2(d))と組み合わされ、その結果の信号は充電スイッチQ1に印加される。放電スイッチQ2は、開路および閉路して放電フェーズ6における変化電流信号を発生する。充電フェーズ8では、充電スイッチQ1が変化電流の発生を制御する。
【0032】
第1の開弁電流設定点PO、第1の開弁時間POT、および第1の閉弁電流設定点PCの値は、マイクロプロセッサのメモリ内のルックアップテーブルに記憶される。マイクロプロセッサ20は、第1の開弁電流設定点PO、第1の開弁時間POT、および第1の閉弁時間設定点PCの値を、積層体圧力、積層体温度、および要求される噴射装置オン時間TON(これは燃料要求量から決定され、また燃料レール圧力の関数である)に応じて選択する。駆動回路10、したがって燃料供給は、エンジン制御モジュール(ECM)によって制御される。ECMは、トルク、エンジン速度、および動作温度を含む、現在のエンジン動作状態に基づいて、必要な燃料供給、および噴射パルスのタイミングを決定するための方針を統合する。噴射装置がいつ開弁し閉弁するかのタイミングは、ECMによって
決定され、本発明を理解するのに本質的ではない。ここで、マイクロプロセッサは、ECMとは別の構成要素でもよく、またはECMと一体でもよいことを理解されたい。
【0033】
放電フェーズ6の間に、第1の開弁電流設定点POの値は、マイクロプロセッサ20によって対応する上側電流閾値レベルI
1に変換される。マイクロプロセッサ20が、上側および下側電流閾値レベルI
1、I
2の両方を発生することは可能であるが、実際には、上側電流閾値レベルI
1だけを発生し、上側電流閾値レベルI
1に対する固定の比率として下側電流閾値レベルI
2を発生するように分圧器を用いる方が簡単である。同じように、充電フェーズ8の間に、マイクロプロセッサ20は、第1の閉弁電流設定点PCに対応する上側電流閾値レベルI
3を発生する。同様に、充電フェーズ用に、下側電流閾値I
4を発生するように分圧器が構成される。マイクロプロセッサ20は、一時には1つの上側電流閾値レベルI
1、I
3を出力する。
【0034】
必要な上側電流閾値レベルI
1は、ECMによる噴射タイミング、および選択された第1の開弁時間POTに応じて適当な時点で、マイクロプロセッサ20から電流検出および制御手段14に出力される。言い換えれば、第1の開弁時間POTの持続時間の間に、第1の開弁電流設定点POに対応する上側電流閾値レベルI
1がマイクロプロセッサ20から出力される。同様にして、充電フェーズ中には、第1の閉弁電流設定点PCに対応する上側電流閾値レベルI
3は、決定された第1の閉弁時間PCTの持続時間の間、マイクロプロセッサ20から出力される。第1の閉弁時間PCTは、ルックアップテーブルから導かれる第1の閉弁電流設定点PCに応じて、開弁/放電フェーズ6の間に除去される電荷量が、閉弁/充電フェーズ8の間に再印加されるように決定される。
【0035】
上側および下側電流閾値レベルI
1、I
2、I
3、I
4は、生成される平均電流が、第1の開弁電流設定点PO、および第1の閉弁電流設定点PCを満足するようなものである。平均電流に注目する方がより好都合であり、なぜなら、この電流とそれが印加される時間とが、アクチュエータに印加されるまたはアクチュエータから除去される電荷量を決定するからであることを理解されたい。分圧器によって生成される上側電流閾値レベルI
1、I
3および下側電流閾値レベルI
2、I
4は、電流変化の限界が決まる。
【0036】
特定の噴射装置16a、16b、または16cを用いて噴射するためには、その噴射装置用の選択スイッチS1、S2、S3がマイクロプロセッサ20によって活動化(閉路)される。たとえば、
図4を参照すると、第1の噴射装置16aを用いて噴射する必要がある場合は、選択スイッチS1が閉じられる。この時点ではバンクの他の2つの噴射装置選択スイッチS2、S3は、それらが関連する第2および第3の噴射装置16b、16cは噴射する必要がないので非活動化されたままとなる。
【0037】
さらに、放電イネーブル信号34は、論理ローから論理ハイになる。電流検出および制御手段14は、初めに論理ハイ信号を出力し、これとハイの放電イネーブル信号34とにより、放電スイッチQ2を閉路させる。電流は、第2のコンデンサC2の両端の電圧供給源V
S2から、電流検出および制御手段14を通り、選択されたスイッチ(この例ではS1)を通り、選択された噴射装置(この例では16a)の対応する負側に流れることができる。放電電流I
DISCHARGE(
図4では実線として示される)は、噴射装置16aから、インダクタ18を通って流れ、閉じられたスイッチQ2を通り、第2のコンデンサC2の負電極へ戻る。選択スイッチS2およびS3は開いたままであり、それらのそれぞれ関連するダイオードD4およびD5の方向により、実質上第2および第3の噴射装置16b、16cを通って電流が流れることはできない。
【0038】
電流検出および制御手段14は、中央電流経路30の電流の流れが増加するに従ってその電流の流れを監視し、上側電流閾値レベルI
1に達するとすぐに電流検出および制御手
段14の出力は、論理ハイから論理ローに切り換わり、それによって放電スイッチQ2を非活動化(開路)させる。この時点で、インダクタ18内に増加したエネルギーは、(開路された)充電スイッチQ1に関連するダイオードD8を通って再循環する。その結果として、インダクタ18、および噴射装置のうちの選択された1つの16aを通る電流の流れの方向は変化しない。これは、駆動回路10の動作の放電フェーズ6の「再循環フェーズ」である。再循環放電電流は、
図4で破線42として示される。
【0039】
再循環フェーズ中は、電流は、第1のコンデンサC1の両端の第1の電圧源V
S1の負側から、電流検出および制御手段14を通り、選択された噴射装置選択スイッチS1を通り、選択された噴射装置16aを通り、インダクタ18を通り、最後にダイオードD8を通って、第1のコンデンサC1の正側に流れる。したがってインダクタ18、および噴射装置のうちの選択された1つの16aのエネルギーは、エネルギー蓄積の目的のために、再循環フェーズ中に第1のコンデンサC1に移動される。電流検出および制御手段14は、再循環電流を監視し、それにより再循環電流が下側電流閾値レベル(すなわち再循環電流閾値)I
2よりも低下すると、電流検出および制御手段14は、放電スイッチQ2を再活動化する信号を発生して放電動作を継続する。
【0040】
変化電流は、第1の開弁時間POTが終了するまで、積層体2を通って駆動される。この放電フェーズ6では、第2のコンデンサC2はエネルギーを供給し、一方、第1のコンデンサC1は蓄積のためにエネルギーを受け取る。第1の開弁時間POTの終わりには、放電スイッチQ2、および噴射装置16aの選択スイッチS1は非活動化される。
【0041】
電流が減衰する速度はインダクタ18にのみ依存するので、放電スイッチQ2よりも前に、噴射装置選択スイッチS1が非活動化されることが望ましく、すなわち最初に噴射装置選択スイッチS1を選択解除しないと、電流はゆっくりと減衰し(その速度は積層体の電気的時定数に依存する)、その結果、意図するよりも多い電荷が積層体2から除去されることになる。最初に噴射装置選択スイッチS1を選択解除することにより、電流はより速やかにゼロにされ、追加的な電荷の除去は最小となる。放電スイッチQ2が、噴射装置選択スイッチS1とほぼ同時、またはそのすぐ後に非活動化される場合は、ダイオードD7は、放電フェーズ6の終わりに、充電スイッチQ1に関連するダイオードD8を通じて第1のコンデンサC1に再循環するために、インダクタ18内の残留エネルギーのための再循環経路を形成する。
【0042】
適当な時点で、選択された噴射装置16aの積層体2は、第1の閉弁電流設定点に応じて上側および下側閾値レベルI
3、I
4の間で充電電流を変化させることにより、噴射装置を閉じて燃料供給を停止させるために充電される。積層体の充電については、ここでは詳述せず、本出願人の同時係属の欧州特許第EP1860307号に見ることができる。
【0043】
変化電流は、第1の閉弁時間PCTが終了するまで、積層体2を通って駆動される。この充電フェーズ8では、第1のコンデンサC1はエネルギーを供給し、第2のコンデンサC2は蓄積のためにエネルギーを受け取る。第1の閉弁時間PCT(充電時間)の終わりには、充電スイッチQ1、および噴射装置16aの選択スイッチS1は非活動化される。
【0044】
一般に、充電フェーズ8の終わりでは、放電フェーズ6の終わりでもそうであるように、最初に噴射装置選択スイッチS1、S2、S3が選択解除されるか、充電スイッチQ1が選択解除されるかは決定的に重要ではない。これは、第1の閉弁時間PCTの終わりでは、積層体2は実効的にその初期電圧レベルまで充電されているからであり、したがってその結果、わずかな電流だけが流れ得る(積層体2は、その容量的な性質により、無期限に充電することはできない)。これは、意図するよりも多くの電荷を印加することはできず、積層体2が、後に続く放電の前に、分かっている状態まで再充電されることが確実に
なることを意味する。
【0045】
各噴射の間に積層体の両端の電圧を高い電圧レベルに保つように動作する、本発明の一部とはならない、閉ループシステムがある。したがって、どの放電フェーズの開始時においても、積層体は常に分かっている基準電圧にある。
【0046】
噴射装置16a、16b、16cを充電することができる、他の方法もあることを理解されたい。たとえば、噴射装置16a、16b、16cは、それらの噴射装置選択スイッチS1、S2、S3を活動化せずに充電することが可能であり、なぜなら、噴射装置選択スイッチS1、S2、S3の両端のダイオードD3、D4、およびD5は、充電スイッチQ1だけが活動化(閉路)されている場合に、積層体2を完全に充電する方向に電流が流れ得ることを確実にするからである。
【0047】
図6aは、上述の知られている圧電アクチュエータ活動化技法による、放電フェーズの間の典型的な電流対時間のグラフを示す。放電フェーズは、単一のほぼ一定な放電率を含み、放電電流は、上側および下側電流閾値レベルI
1、I
2の間で振動し、これらは第1の開弁時間POTの間、一定の電流設定点POによって指示される。
【0048】
図6bは、放電フェーズ中に積層体から外に出された電荷により、完全に充電されたレベルV0から放電されたレベルV1まで減少するのに従った、圧電積層体上に蓄積された電圧を示す。
【0049】
図6cは、噴射イベントの第1の開弁部分の間に、圧電式噴射装置から噴射される燃料の噴射率を示す。放電フェーズの開始の後に、噴射率は、短い遅延の後に初めて増加し始め、これは
図6cで「D」として示され、以降「噴射開始遅延」と呼ぶ。噴射開始遅延Dは、アクチュエータの動きが噴射装置の弁ニードルに伝達される有限の期間によって生ずる。噴射開始遅延Dの後に噴射率は、ほぼ一定の勾配でピーク値Q
PKまで上昇する。
【0050】
また
図6a、6bおよび6cに示されるように、所定の期間の後に、上述のように充電フェーズが開始され、これは圧電積層体に電荷を加え、したがって噴射率をゼロに減少させ、それによって噴射イベントを終了させることに留意されたい。充電フェーズ中には積層体は、第1の閉弁時間PCTの間、平均充電電流設定点PCを超えて振動する電流によって充電される。
【0051】
ニードル引き上げの間に燃料が噴射される率を減少させる1つの方法は、電流設定点POを減少させ、それによって積層体が放電される速度を減少させることであることが分かっている。噴射率の勾配の低減は、たとえば騒音または排気煙の排出を低減するためなど、燃焼プロセスのいくつかの側面を制御するために望ましい場合がある。しかし、本出願人は、圧電アクチュエータを放電するのに用いられる電流設定点を単に減少させることは、1つの噴射イベントと他の噴射イベントとで、噴射装置によって供給される燃料体積の変化が増加するので望ましくないことを見出した。またこれは、噴射装置の寿命にわたって噴射装置性能の変化が増加するという欠点を有する。
【0052】
上記の問題に対処する一実施形態は、
図7a、7b、および7cに示され、
図2から5に関連して上述した制御回路10を用いて実施される。
図7aは、2つの互いに異なる段階、段階1および段階2を含む放電フェーズの間の、電流対時間のグラフを示す。各段階は異なる放電速度を有し、すなわち異なる電流設定点を有する。段階3および段階4を含む充電フェーズも示され、やはり各段階は異なる充電速度を有する。
【0053】
段階1中には、圧電アクチュエータは、上述のように第1の開弁時間POTの間、第1
の開弁電流設定点POで駆動される。段階1に直ちに後続する段階2中には、アクチュエータは第2の開弁時間SOTの間、第2の開弁電流設定点SOで駆動される。第2の開弁電流設定点SOおよび第2の開弁時間SOTは、詳しく上述した第1の開弁電流設定点POおよび第1の開弁時間POTと同様にして導かれる。ECMは、トルク、エンジン速度、および動作温度を含む、現在のエンジン動作状態に基づいて必要な燃料供給、および噴射パルスのタイミングを決定し、マイクロプロセッサ20に必要な値を入力する。次いでマイクロプロセッサ20は、ECMによって指示される要求される燃料供給を発生するために、適当な各期間の間に第1の開弁電流設定点POおよび第2の開弁電流設定点SOの適当な値を適用するために、そのメモリ内に記憶されたルックアップテーブルを参照する。
【0054】
段階1は、弁ニードルに比較的大きな初期引き上げ力を付与するために、アクチュエータが大きな電流で放電される初期駆動段階である。これは、噴射開始遅延Dを許容し得るレベルに保ち、1つの噴射イベントと他の噴射イベントとで、および噴射装置の寿命にわたって、ほぼ一貫したものに保つ効果を有する。段階1中には、放電電流(第1の開弁電流設定点POと、上側および下側閾値I
1およびI
2に対応する)は、第1の開弁時間POTの間、積層体2を通して駆動される。これは積層体電圧をV0からV1に減少させ、それに従って弁ニードルを引き上げさせる。
【0055】
段階1の直後に段階2が開始し、段階2中にはマイクロプロセッサ20は、低減された第2の電流設定点SOにて(上側および下側閾値I
5およびI
6に対応する)、積層体2から外へ電流を駆動し、それにより積層体2の電荷をさらにV1からV2に減少させるが、段階1中よりも低減された速度で減少させる。積層体2の電圧は、V1からV2に減少するので、それに従って弁ニードルはその弁座からさらに引き上げられる。したがって段階2中には、積層体2は、段階1中より低い速度で放電されるが、段階1よりもゆっくりと噴射率を増加させるように弁ニードルの動きを生ずるのには依然として十分な速度で放電される。
【0056】
図7a、7b、および7cの実施形態では、ECMが第1の開弁電流設定点POと第2の開弁電流設定点SOの間で切り換える時点は、噴射率がそのピーク値の約50%に達した時点で発生し、これは
図7cではQ
switchとして示される。この噴射率閾値は、T
switchとしてラベルが付された第1の開弁時間値に対応する。具体的なタイミングは、システム試験時に実験的に決定され、上述のマイクロプロセッサ20内のルックアップテーブルに記憶される。したがって、第1の開弁電流設定点PO、第1の開弁時間POT、および第1の閉弁電流設定点PCを記憶するのに加えて、マイクロプロセッサ20のメモリはまた、第2の開弁電流設定点SOおよび第2の開弁時間SOTに対応する値を有するルックアップテーブルを記憶する。
【0057】
マイクロプロセッサ20が、第1の開弁電流設定点POだけ、または第1の開弁電流設定点POと第2の開弁電流設定点SOの両方を用いて積層体を放電する必要があるかどうかは、噴射イベントに対して要求される燃料供給体積に依存することを理解されたい。第1の開弁時間POTの最大持続時間は、燃料噴射率がピーク噴射率の50パーセントに達する期間に制限される。したがって、噴射率がピーク噴射率の50パーセントQ
switchを超えない、比較的小さな噴射イベントの場合は、マイクロプロセッサ20は、第1の開弁電流設定点POの値および第1の開弁時間POTの値のみを決定し、駆動回路10を制御するために適当な上側および下側電流閾値を電流検出および制御手段14に出力することになる。段階1の放電フェーズだけは必要であるが段階2は無くてもよいこのような噴射イベントは、パイロット噴射イベント、およびエンジンのアイドル動作状態時のメイン噴射イベントなどの小体積の噴射である。
【0058】
しかし、噴射率がピーク噴射率の50パーセントQ
switchを超えるような、燃料要求量が比較的大きい場合は、マイクロプロセッサ20はまた、駆動回路10を駆動するために電流検出および制御手段14に、第2の電流設定点SOおよび第2の開弁時間SOTを出力する。
【0059】
図7aはまた閉弁フェーズを示し、閉弁フェーズ中には噴射装置は、第1の閉弁時間PCT(段階3)の間、第1の閉弁電流PCで駆動され、それに続いて第2の閉弁時間SCT(段階4)の間、より大きな第2の閉弁電流SCで駆動される。閉弁フェーズの間は、積層体2の電荷は、段階3の間にV2からV1に増加し、段階4の間に再びV1からV0に増加するが、電荷の増加の速度は、段階4の間の方が段階3の間より大きい。その結果として、
図7cに示されるように、噴射率
の勾配の大きさは、初期の閉弁段階中の方が後半の閉弁段階中よりも低い。
【0060】
添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念から逸脱せずに、上記に対する変形形態が可能である。たとえば、上述の燃料供給システムは、特に「噴射するために放電する」タイプの噴射装置に関して説明してきたが、同じ原理が「噴射するために充電する」噴射装置にも当てはまることを理解されたい。
【0061】
さらに、本出願人は、第1の開弁時間POTおよび第1の開弁電流設定点POの値を、噴射率をピーク噴射率の50パーセントだけにまで増加させるように制限することを見出したが、他の値も適用できることを理解されたい。たとえば、噴射率閾値が、60パーセント未満、好ましくは30と60パーセントの間である場合も利点が得られる。噴射率閾値は、より好ましくは45と55パーセントの間に、さらにより好ましくは48と52パーセントの間となるように選択される。
【0062】
他の実施形態では、噴射率閾値は、たとえばコモンレールの燃料容積から、噴射装置に供給される燃料の圧力に応答し、かつその関数として選択される。このような場合は、燃料圧力の範囲に対応する噴射率閾値は実験的に決定することができ、マイクロプロセッサ20のメモリ内のデータマップに記憶することができることを理解されたい。別法として、噴射率閾値は、所定のモデルに基づいてリアルタイムに計算することもできる。
【0063】
図7a、7b、および7cに関連して説明した実施形態においては、第2の開弁時間SOTは、第1の開弁時間POTよりも大きいことに留意されたい。この特徴の利点は、第1の開弁段階中に弁ニードルに加えられる初期の大きな開弁力の後に弁ニードルは、第2の開弁フェーズ中には、より長い持続時間の間、比較的小さな引き上げ力を受けることである。これは、ニードルの引き上げ速度を低減し、燃焼を最適化するように供給率特性の形を整えるのに有益な効果がある。
【0064】
第2の開弁時間を第1の開弁時間よりも大幅に大きくすると、燃焼効率の利点が得られることに留意されたい。比較的短い第1の開弁時間を利用するために、年数を経た噴射装置性能を維持するように、第2の開弁フェーズを比較的長くして弁ニードルを完全に引き上げられた状態にし、したがって安定なやり方で最大限の噴射率にすることができる。図中には明示されていないが、第2の開弁フェーズと第1の開弁フェーズの比は、レール圧力に応じて、約4:1と6:1の間の範囲である場合に、最も大きな効率向上が得られることが予測される。
【0065】
上記の説明では、段階2は段階1の直後に続くが、他の実施形態(図中には示されない)では、段階1と段階2の放電ステップの間に一時的な遅延が導入される。このような遅延を導入することは、燃焼騒音の低減の点から利点をもたらし得る。同じことは、噴射の閉弁フェーズにも当てはまり、したがって段階4は必ずしも段階3の直後に続く必要はな
い。