【実施例】
【0019】
以下、本発明による端子構造の実施例について詳細に説明する。
【0020】
[実施例1]
まず、厚さ0.3mmの純銅からなる平板状の導電性基材を2枚用意し、各々の導電性基材を負極として電解脱脂した後、水洗、酸洗、水洗し、次いで、Agストライクめっきを施した後、水洗し、次いで、Agめっきを施した後、水洗し、その後、硬質Auめっきを施して、Auめっき材を得た。なお、Agストライクめっきは、1.8g/LのAgを含むシアン浴を用いて電流密度2A/dm
2で行い、Agめっきは、60g/LのAgを含むシアン浴を用いて電流密度7A/dm
2で行い、硬質Auめっきは、10g/LのAuと0.2g/LのCoを含むシアン浴を用いて電流密度5A/dm
2で行った。また、各々のめっき皮膜の厚さは、めっき時間を変化させることにより調整し、一方のAuめっき材では、導電性基材上に厚さ0.5μmの下地Agめっき皮膜を介して厚さ0.03μmのAuめっき皮膜を形成し、他方のAuめっき材では、導電性基材上に厚さ5.0μmの下地Agめっき皮膜を介して厚さ2.0μmのAuめっき皮膜を形成した。
【0021】
このようにして得られた2枚のAuめっき材をそれぞれ適当な大きさの略矩形に切断した後、一方のAuめっき材(厚さ0.03μmの薄いAuめっき皮膜を形成したAuめっき材)をハンドプレスにより荷重100kgfでインデント加工(曲率半径R=1mmの半球状の打ち出し加工)して得られた試験片を突起部付き試験片(雌端子としての試験片)とし、他方のAuめっき材をそのまま平板状試験片(雄端子としての試験片)とした。
【0022】
次に、
図2A〜
図2Cに示すように、突起部付き試験片110の突起部110aを下にして突起部110aの両側の平板状部分を上方に折り曲げた後、
図3に示すように、摺動試験機200の試験片取付部に取り付けた突起部付き試験片110の突起部110aを、摺動試験機200のステージに固定した平板状試験片112の平坦部に接触させ、摺動試験機200の試験片取付部の上部に重量物200aを載置して荷重2Nで平板状試験片112の表面に押し付けながら、平板状試験片112を矢印A方向に摺動速度10mm/秒で摺動距離10mmの間を往復させる摺動試験を行った。
【0023】
この摺動試験後の平板状試験片112の平坦部または突起部付き試験片110の突起部110aで導電性基材が露出する摺動回数を摺動耐久回数とした。その結果、摺動耐久回数は3000回以上であった。
【0024】
また、摺動回数3000回後に突起部付き試験片110の突起部110aと平板状試験片112の平坦部のそれぞれの摺動前後の最表面のめっき皮膜(Auめっき皮膜)の厚さを蛍光X線膜厚計で測定し、その厚さの差を摩耗量とした。なお、摺動前のAuめっき皮膜の厚さは、平板状試験片112の平坦部と突起部付き試験片110の突起部110aのいずれも、それぞれ1点で測定した。また、摺動後のAuめっき皮膜の厚さについては、突起部付き試験片110の突起部110aでは、
図4Aに示すように、突起部110aの摺動痕の中心付近の5つの測定点120でAuめっき皮膜の厚さを測定して、その最小値を摺動後のAuめっき皮膜の厚さとし、平板状試験片112の平坦部では、
図4Bに示すように、平坦部の摺動痕に沿って5つの測定点122でAuめっき皮膜の厚さを測定して、その最小値を摺動後のAuめっき皮膜の厚さとした。その結果、摺動回数3000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、3回の試験でそれぞれ0.67μm、0.96μm、0.45μmであり、突起部付き試験片110の突起部110aでは、3回の試験でそれぞれ−2.79μm、−2.46μm、−2.57μmであった。なお、摩耗量の負の値は、平板状試験片112の平坦部の表面のAuが突起部付き試験片110の突起部110aの表面に凝着して、Auめっき皮膜の厚さが増加したことを示している。
【0025】
また、試験片を105℃で1000時間保持した後、その試験片に25℃で荷重1.0Nをかけた状態で接触電気抵抗値(耐熱接触抵抗)を測定した。その結果、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部では0.97mΩであった。
【0026】
[実施例2]
突起部付き試験片110のAuめっき皮膜の厚さを0.2μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数と、摺動回数1000回および3000回後のAuめっき皮膜の摩耗量を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0027】
その結果、摺動耐久回数は6500回であった。また、摺動回数1000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、3回の試験でそれぞれ0.39μm、0.36μm、0.31μm、突起部付き試験片110の突起部110aでは、3回の試験でそれぞれ−0.32μm、−0.41μm、−0.68μmであり、摺動回数3000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、3回の試験でそれぞれ0.53μm、0.53μm、0.50μm、突起部付き試験片110の突起部110aでは、3回の試験でそれぞれ−0.47μm、−1.32μm、−1.17μmであった。さらに、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部では0.97mΩであり、突起部付き試験片110の突起部110aでは0.51mΩあった。
【0028】
[実施例3]
インデント加工により突起部を形成した後でめっきを施した以外は、実施例2と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数と、摺動回数3000回後のAuめっき皮膜の摩耗量を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0029】
その結果、摺動耐久回数は3000回以上であった。また、摺動回数3000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、2回の試験でそれぞれ1.05μm、0.93μmであり、突起部付き試験片110の突起部110aでは、2回の試験でそれぞれ−0.90μm、−0.25μmであった。さらに、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部では0.97mΩであった。
【0030】
[比較例1]
突起部付き試験片110の下地Agめっき皮膜の厚さを5.0μm、Auめっき皮膜の厚さを2.0μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数と、摺動回数1000回後のAuめっき皮膜の摩耗量を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0031】
その結果、摺動耐久回数は500回であった。また、摺動回数1000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、3回の試験でそれぞれ0.32μm、(摺動回数1000回後に導電性基材が露出していたため)測定不可、測定不可であり、突起部付き試験片110の突起部110aでは、3回の試験でそれぞれ0.70μm、測定不可、測定不可であった。さらに、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部と突起部付き試験片110の突起部110aのいずれも0.97mΩあった。
【0032】
[比較例2]
平板状試験片112の下地Agめっき皮膜の厚さを25μm、突起部付き試験片110の下地Agめっき皮膜の厚さを50μmとし、Auめっき皮膜を形成しなかった以外は、実施例3と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数と、摺動回数1000回後のAuめっき皮膜の摩耗量を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0033】
その結果、摺動耐久回数は2500回であった。また、摺動回数1000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、3回の試験でそれぞれ16.03μm、14.35μm、15.36μmであり、突起部付き試験片110の突起部110aでは、3回の試験でそれぞれ31.83μm、33.78μm、30.39μmであった。さらに、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部では2.03μmであった。
【0034】
[比較例3]
平板状試験片112の平坦部の下地Agめっき皮膜の厚さを0.5μm、Auめっき皮膜の厚さを0.2μmとした以外は、実施例2と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0035】
その結果、摺動耐久回数は200回であった。また、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部と突起部付き試験片110の突起部110aのいずれも0.51mΩあった。
【0036】
[比較例4]
突起部付き試験片110にAuめっき皮膜を形成しなかった以外は、比較例1と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0037】
その結果、摺動耐久回数は1000回であった。また、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部では0.97mΩであり、突起部付き試験片110の突起部110aでは、2.04mΩあった。
【0038】
[比較例5]
平板状試験片112の平坦部にAuめっき皮膜を形成しなかった以外は、比較例4と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0039】
その結果、摺動耐久回数は100回であった。また、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部と突起部付き試験片110の突起部110aのいずれも2.04mΩあった。
【0040】
これらの実施例および比較例において突起部付き試験片と平板状試験片の製造条件を表1に示し、それらの突起部付き試験片と平板状試験片の摺動耐久回数、Auめっき皮膜の摩耗量および耐熱接触抵抗を表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】