特許第5795740号(P5795740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795740
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】端子構造
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/00 20060101AFI20150928BHJP
   C25D 5/10 20060101ALI20150928BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C25D7/00 H
   C25D5/10
   H01R13/03 D
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-8286(P2012-8286)
(22)【出願日】2012年1月18日
(65)【公開番号】特開2013-147696(P2013-147696A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】奥野 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】岸本 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 寛
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−195570(JP,A)
【文献】 特開平6−200395(JP,A)
【文献】 特開2006−252862(JP,A)
【文献】 特開平10−302864(JP,A)
【文献】 特開2000−277194(JP,A)
【文献】 特開2001−203021(JP,A)
【文献】 特開2005−353352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/03
C25D 5/00
C25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材からなる一対の端子の一方の端子の突起部が他方の端子の略平坦部に当接して接続される端子構造において、前記一方の端子の突起部の表面に厚さ0.01〜0.3μmのAuめっき皮膜が形成され、前記他方の端子の略平坦部の表面の前記一方の端子の突起部に当接する部分に厚さ1.0〜5.0μmのAuめっき皮膜が形成されていることを特徴とする、端子構造。
【請求項2】
前記一方の端子の突起部の表面に形成されたAuめっき皮膜の厚さが0.03〜0.2μmであることを特徴とする、請求項1に記載の端子構造。
【請求項3】
前記他方の端子の略平坦部の表面の前記一方の端子の突起部に当接する部分に形成されたAuめっき皮膜の厚さが1.5〜2.5μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の端子構造。
【請求項4】
前記導電性基材が銅または銅合金からなることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の端子構造。
【請求項5】
前記Auめっき皮膜の下地めっき皮膜として、Agめっき皮膜またはNiめっき皮膜が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の端子構造。
【請求項6】
前記一方の端子の突起部の表面の下地めっき皮膜の厚さが0.1〜0.6μmであり、前記他方の端子の略平坦部の表面の下地めっき皮膜の厚さが0.1〜6.0μmであることを特徴とする、請求項5に記載の端子構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の端子構造を備えたことを特徴とする、充電端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子構造に関し、特に、導電性基材からなる一対の端子の一方の端子が他方の端子に当接して接続される端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性基材からなる一対の端子の一方の端子が他方の端子に当接して接続される端子構造では、銅や銅合金などの導電性基材の表面にAgめっきを施したAgめっき材からなる端子が使用されている(例えば、特許文献1参照)。特に、Agめっき材は、表面接触抵抗が低く、耐熱性と耐摩耗性に優れていることから、自動車、情報通信機器、産業機器などに使用する様々な接続端子の材料として使用されている。
【0003】
このようなAgめっき材を、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)と外部供給電源とを電気的に接続する充電システム用接続端子などの材料として使用する場合、グリスレスで使用しても、高い耐摩耗性を維持する必要がある。そのため、接続端子を使用する際に一方の端子が他方の端子上を摺動する時にかかる荷重で要求される摺動耐久回数(耐久可能な繰り返し摺動回数)に応じて、導電性基材上に形成するAgめっき皮膜を厚くする必要がある。
【0004】
例えば、Agめっき材を接続端子の材料として使用する場合、Agめっき皮膜の厚さを5.0μm程度にすると、荷重0.5N程度では摺動耐久回数が1000回程度であるが、荷重2.0N程度の高い荷重では摺動耐久回数が100回程度に低下する。そのため、Agめっき材を、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の充電システム用接続端子などの材料として使用する場合には、導電性基材上に形成するAgめっき皮膜をさらに厚くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−2940号公報(段落番号0002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、Agめっき皮膜を厚くすると、めっきに要する時間が長くなって生産性が低下するという問題がある。また、Agめっき皮膜を厚くすると、Agめっき材の曲げ加工性が悪化するため、フープめっきを行うのが困難になり、Agめっき材を端子の形状に曲げ加工した後に個々にめっきを施すことが必要になるので、生産性が低下し、めっき面積が増加してコストが増加するという問題がある。一方、Agめっき皮膜が薄過ぎると、耐摩耗性が低下するという問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、導電性基材上に形成するめっき皮膜を薄くしても、低い表面接触抵抗と良好な耐熱性を維持しながら、耐摩耗性を向上させることができる、端子構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、導電性基材からなる一対の端子の一方の端子の突起部が他方の端子の略平坦部に当接して接続される端子構造において、一方の端子の突起部の表面に厚さ0.01〜0.3μmのAuめっき皮膜を形成し、他方の端子の略平坦部の表面の一方の端子の突起部に当接する部分に厚さ1.0〜5.0μmのAuめっき皮膜を形成することにより、導電性基材上に形成するめっき皮膜を薄くしても、低い表面接触抵抗と良好な耐熱性を維持しながら、耐摩耗性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明による端子構造は、導電性基材からなる一対の端子の一方の端子の突起部が他方の端子の略平坦部に当接して接続される端子構造において、一方の端子の突起部の表面に厚さ0.01〜0.3μmのAuめっき皮膜が形成され、他方の端子の略平坦部の表面の一方の端子の突起部に当接する部分に厚さ1.0〜5.0μmのAuめっき皮膜が形成されていることを特徴とする。この端子構造において、一方の端子の突起部の表面に形成されたAuめっき皮膜の厚さが0.03〜0.2μmであるのが好ましく、他方の端子の略平坦部の表面の一方の端子の突起部に当接する部分に形成されたAuめっき皮膜の厚さが1.5〜2.5μmであるのが好ましい。また、導電性基材が銅または銅合金からなるのが好ましい。さらに、Auめっき皮膜の下地めっき皮膜として、Agめっき皮膜またはNiめっき皮膜が形成されているのが好ましい。この場合、一方の端子の突起部の表面の下地めっき皮膜の厚さが0.1〜0.6μmであり、他方の端子の略平坦部の表面の下地めっき皮膜の厚さが0.1〜6.0μmであるのが好ましい。
【0010】
また、本発明による充電端子は、上記の端子構造を備えたことを特徴とする。
【0011】
なお、本明細著中において、「Auめっき皮膜」には、純Auからなるめっき皮膜の他、Au−Co合金などの硬質のAu合金からなるめっき皮膜も含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導電性基材からなる一対の端子の一方の端子の突起部が他方の端子の略平坦部に当接して接続される端子構造において、導電性基材上に形成するめっき皮膜を薄くしても、低い表面接触抵抗と良好な耐熱性を維持しながら、耐摩耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による端子構造の実施の形態を(箱型の)嵌合型接続端子に適用した例を説明する図である。
図2A】実施例および比較例で使用した突起部付き試験片の平面図である。
図2B図2Aの突起部付き試験片の側面図である。
図2C図2Aの突起部付き試験片を摺動試験機に取り付けるために折り曲げた状態を示す側面図である。
図3】実施例および比較例で使用した突起部付き試験片および平板状試験片を摺動試験機に取り付けた状態を示す図である。
図4A】実施例および比較例で使用した突起部付き試験片の摺動後のAuめっき皮膜の厚さの測定点を示す図である。
図4B】実施例および比較例で使用した平板状試験片の摺動後のAuめっき皮膜の厚さの測定点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による端子構造の実施の形態は、導電性基材からなる一対の端子の一方の端子の突起部が他方の端子の略平坦部に当接して(電気的に)接続される端子構造において、一方の端子の突起部の表面に厚さ0.01〜0.3μm、好ましくは0.03〜0.2μmのAuめっき皮膜が形成され、他方の端子の略平坦部の表面の一方の端子の突起部に当接する部分に厚さ1.0〜5.0μm、好ましくは1.5〜2.5μmのAuめっき皮膜が形成されている。
【0015】
この端子構造では、一方の端子の突起部が他方の端子の略平坦部に当接して接続される際に、一方の端子の突起部が他方の端子の略平坦部上を摺動することにより、他方の端子の略平坦部の表面のAuが一方の端子の突起部の表面に凝着して、一方の端子の突起部の表面に形成されたAuめっき皮膜が摩耗し難くなるので、導電性基材上に形成するめっき皮膜を薄くしても、低い表面接触抵抗と良好な耐熱性を維持しながら、耐摩耗性を向上させることができる。なお、他方の端子の略平坦部の表面のAuめっき皮膜の厚さに比例して耐摩耗性が低下するため、十分な耐摩耗性を得るためには、他方の端子の略平坦部の表面の一方の端子の突起部に当接する部分に形成するAuめっき皮膜の厚さを1.0μm以上にする必要がある。一方、そのAuめっき皮膜を5.0μmより厚くすると、コストが増大するため好ましくない。
【0016】
この端子構造において、導電性基材は導電性の材料からなるものであればよいが、銅または銅合金からなるのが好ましい。また、Auめっき皮膜の下地めっき皮膜として、Agめっき皮膜またはNiめっき皮膜が形成されているのが好ましい。この場合、一方の端子の突起部の表面の下地めっき皮膜の厚さが0.1〜0.6μmであり、他方の端子の略平坦部の表面の下地めっき皮膜の厚さが0.1〜6.0μmであるのが好ましい。このような下地めっき皮膜を形成すれば、Auめっき皮膜の表面に導電性基材の元素が拡散するのを抑えて耐熱性を向上させることができる。
【0017】
例えば、本発明による端子構造の実施の形態を図1に示す繰り返し挿抜可能な(箱型の)嵌合型接続端子に適用する場合、(一方の端子の突起部としての)雌端子10の弾性片10aに設けられたインデント(接触突起部)10bの表面に厚さ0.01〜0.3μm、好ましくは0.03〜0.2μmのAuめっき皮膜を形成し、この雌端子10の弾性片10aに対向する隆起部(打ち出し部)10cと弾性片10aのインデント(接触突起部)10bとの間に挿入されて嵌合する(他方の端子の略平坦部としての)略平板状の雄端子12の平坦部12aの表面に厚さ1.0〜5.0μm、好ましくは1.5〜2.5μmのAuめっき皮膜を形成すればよい。
【0018】
上述した実施の形態の端子構造は、銅や銅合金などの導電性材料からなる導電性基材を、一方の端子の突起部が他方の端子の略平坦部に当接して接続可能な形状に加工して一対の端子とした後、一方の端子の突起部の表面に厚さ0.01〜0.3μm、好ましくは0.03〜0.2μmのAuめっき皮膜を形成し、他方の端子の略平坦部の表面の一方の端子の突起部に当接する部分に厚さ1.0〜5.0μm、好ましくは1.5〜2.5μmのAuめっき皮膜を形成することによって製造することができる。あるいは、銅や銅合金などの導電性材料からなる導電性基材を、一方の端子の突起部が他方の端子の略平坦部に当接して接続可能な形状に加工して一対の端子とする前に、一方の端子の突起部に対応する部分の表面に厚さ0.01〜0.3μm、好ましくは0.03〜0.2μmのAuめっき皮膜を形成し、他方の端子の略平坦部に対応する部分の表面の一方の端子の突起部に当接する部分に厚さ1.0〜5.0μm、好ましくは1.5〜2.5μmのAuめっき皮膜を形成することによって製造することができる。この場合、一方の端子の形状に加工される導電性基材の表面(の略全面)に厚さ0.01〜0.3μm、好ましくは0.03〜0.2μmのAuめっき皮膜を形成し、他方の端子の形状に加工される導電性基材の表面(の略全面)に厚さ1.0〜5.0μm、好ましくは1.5〜2.5μmのAuめっき皮膜を形成してもよい。なお、それぞれのAuめっき皮膜は、同じAuめっき浴を使用して、電流密度やめっき時間を調整することによって形成することができる。また、Auめっき皮膜の下地めっき皮膜としてAgめっき皮膜またはNiめっき皮膜を形成してもよい。この場合、一方の端子の突起部(または突起部に対応する部分)の表面の下地めっき皮膜の厚さを0.1〜0.6μmにし、他方の端子の略平坦部(または略平坦部に対応する部分)の表面の下地めっき皮膜の厚さを0.1〜6.0μmにするのが好ましい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明による端子構造の実施例について詳細に説明する。
【0020】
[実施例1]
まず、厚さ0.3mmの純銅からなる平板状の導電性基材を2枚用意し、各々の導電性基材を負極として電解脱脂した後、水洗、酸洗、水洗し、次いで、Agストライクめっきを施した後、水洗し、次いで、Agめっきを施した後、水洗し、その後、硬質Auめっきを施して、Auめっき材を得た。なお、Agストライクめっきは、1.8g/LのAgを含むシアン浴を用いて電流密度2A/dmで行い、Agめっきは、60g/LのAgを含むシアン浴を用いて電流密度7A/dmで行い、硬質Auめっきは、10g/LのAuと0.2g/LのCoを含むシアン浴を用いて電流密度5A/dmで行った。また、各々のめっき皮膜の厚さは、めっき時間を変化させることにより調整し、一方のAuめっき材では、導電性基材上に厚さ0.5μmの下地Agめっき皮膜を介して厚さ0.03μmのAuめっき皮膜を形成し、他方のAuめっき材では、導電性基材上に厚さ5.0μmの下地Agめっき皮膜を介して厚さ2.0μmのAuめっき皮膜を形成した。
【0021】
このようにして得られた2枚のAuめっき材をそれぞれ適当な大きさの略矩形に切断した後、一方のAuめっき材(厚さ0.03μmの薄いAuめっき皮膜を形成したAuめっき材)をハンドプレスにより荷重100kgfでインデント加工(曲率半径R=1mmの半球状の打ち出し加工)して得られた試験片を突起部付き試験片(雌端子としての試験片)とし、他方のAuめっき材をそのまま平板状試験片(雄端子としての試験片)とした。
【0022】
次に、図2A図2Cに示すように、突起部付き試験片110の突起部110aを下にして突起部110aの両側の平板状部分を上方に折り曲げた後、図3に示すように、摺動試験機200の試験片取付部に取り付けた突起部付き試験片110の突起部110aを、摺動試験機200のステージに固定した平板状試験片112の平坦部に接触させ、摺動試験機200の試験片取付部の上部に重量物200aを載置して荷重2Nで平板状試験片112の表面に押し付けながら、平板状試験片112を矢印A方向に摺動速度10mm/秒で摺動距離10mmの間を往復させる摺動試験を行った。
【0023】
この摺動試験後の平板状試験片112の平坦部または突起部付き試験片110の突起部110aで導電性基材が露出する摺動回数を摺動耐久回数とした。その結果、摺動耐久回数は3000回以上であった。
【0024】
また、摺動回数3000回後に突起部付き試験片110の突起部110aと平板状試験片112の平坦部のそれぞれの摺動前後の最表面のめっき皮膜(Auめっき皮膜)の厚さを蛍光X線膜厚計で測定し、その厚さの差を摩耗量とした。なお、摺動前のAuめっき皮膜の厚さは、平板状試験片112の平坦部と突起部付き試験片110の突起部110aのいずれも、それぞれ1点で測定した。また、摺動後のAuめっき皮膜の厚さについては、突起部付き試験片110の突起部110aでは、図4Aに示すように、突起部110aの摺動痕の中心付近の5つの測定点120でAuめっき皮膜の厚さを測定して、その最小値を摺動後のAuめっき皮膜の厚さとし、平板状試験片112の平坦部では、図4Bに示すように、平坦部の摺動痕に沿って5つの測定点122でAuめっき皮膜の厚さを測定して、その最小値を摺動後のAuめっき皮膜の厚さとした。その結果、摺動回数3000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、3回の試験でそれぞれ0.67μm、0.96μm、0.45μmであり、突起部付き試験片110の突起部110aでは、3回の試験でそれぞれ−2.79μm、−2.46μm、−2.57μmであった。なお、摩耗量の負の値は、平板状試験片112の平坦部の表面のAuが突起部付き試験片110の突起部110aの表面に凝着して、Auめっき皮膜の厚さが増加したことを示している。
【0025】
また、試験片を105℃で1000時間保持した後、その試験片に25℃で荷重1.0Nをかけた状態で接触電気抵抗値(耐熱接触抵抗)を測定した。その結果、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部では0.97mΩであった。
【0026】
[実施例2]
突起部付き試験片110のAuめっき皮膜の厚さを0.2μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数と、摺動回数1000回および3000回後のAuめっき皮膜の摩耗量を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0027】
その結果、摺動耐久回数は6500回であった。また、摺動回数1000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、3回の試験でそれぞれ0.39μm、0.36μm、0.31μm、突起部付き試験片110の突起部110aでは、3回の試験でそれぞれ−0.32μm、−0.41μm、−0.68μmであり、摺動回数3000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、3回の試験でそれぞれ0.53μm、0.53μm、0.50μm、突起部付き試験片110の突起部110aでは、3回の試験でそれぞれ−0.47μm、−1.32μm、−1.17μmであった。さらに、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部では0.97mΩであり、突起部付き試験片110の突起部110aでは0.51mΩあった。
【0028】
[実施例3]
インデント加工により突起部を形成した後でめっきを施した以外は、実施例2と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数と、摺動回数3000回後のAuめっき皮膜の摩耗量を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0029】
その結果、摺動耐久回数は3000回以上であった。また、摺動回数3000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、2回の試験でそれぞれ1.05μm、0.93μmであり、突起部付き試験片110の突起部110aでは、2回の試験でそれぞれ−0.90μm、−0.25μmであった。さらに、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部では0.97mΩであった。
【0030】
[比較例1]
突起部付き試験片110の下地Agめっき皮膜の厚さを5.0μm、Auめっき皮膜の厚さを2.0μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数と、摺動回数1000回後のAuめっき皮膜の摩耗量を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0031】
その結果、摺動耐久回数は500回であった。また、摺動回数1000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、3回の試験でそれぞれ0.32μm、(摺動回数1000回後に導電性基材が露出していたため)測定不可、測定不可であり、突起部付き試験片110の突起部110aでは、3回の試験でそれぞれ0.70μm、測定不可、測定不可であった。さらに、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部と突起部付き試験片110の突起部110aのいずれも0.97mΩあった。
【0032】
[比較例2]
平板状試験片112の下地Agめっき皮膜の厚さを25μm、突起部付き試験片110の下地Agめっき皮膜の厚さを50μmとし、Auめっき皮膜を形成しなかった以外は、実施例3と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数と、摺動回数1000回後のAuめっき皮膜の摩耗量を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0033】
その結果、摺動耐久回数は2500回であった。また、摺動回数1000回後のAuめっき皮膜の摩耗量は、平板状試験片112の平坦部では、3回の試験でそれぞれ16.03μm、14.35μm、15.36μmであり、突起部付き試験片110の突起部110aでは、3回の試験でそれぞれ31.83μm、33.78μm、30.39μmであった。さらに、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部では2.03μmであった。
【0034】
[比較例3]
平板状試験片112の平坦部の下地Agめっき皮膜の厚さを0.5μm、Auめっき皮膜の厚さを0.2μmとした以外は、実施例2と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0035】
その結果、摺動耐久回数は200回であった。また、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部と突起部付き試験片110の突起部110aのいずれも0.51mΩあった。
【0036】
[比較例4]
突起部付き試験片110にAuめっき皮膜を形成しなかった以外は、比較例1と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0037】
その結果、摺動耐久回数は1000回であった。また、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部では0.97mΩであり、突起部付き試験片110の突起部110aでは、2.04mΩあった。
【0038】
[比較例5]
平板状試験片112の平坦部にAuめっき皮膜を形成しなかった以外は、比較例4と同様の方法により、突起部付き試験片110と平板状試験片112を作製し、摺動耐久回数を求めるとともに、耐熱接触抵抗を測定した。
【0039】
その結果、摺動耐久回数は100回であった。また、耐熱接触抵抗は、平板状試験片112の平坦部と突起部付き試験片110の突起部110aのいずれも2.04mΩあった。
【0040】
これらの実施例および比較例において突起部付き試験片と平板状試験片の製造条件を表1に示し、それらの突起部付き試験片と平板状試験片の摺動耐久回数、Auめっき皮膜の摩耗量および耐熱接触抵抗を表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明による端子構造は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)と外部供給電源とを電気的に接続する充電システム用接続端子のような充電端子として利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 雌端子
10a 弾性片
10b インデント(接触突起部)
10c 隆起部(打ち出し部)
12 雄端子
12a 平坦部
110 突起部付き試験片
110a 突起部
112 平板状試験片
120、122 測定点
200 摺動試験機
200a 重量物
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B