【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の最大設定可能な用量設定機構は、多重用量を送達するために設計されるいかなる薬物送達デバイスにも事実上使用可能である。送達デバイスの特に好ましい型は、使用者が、各々の注射の前に用量設定部材の回転又は直線運動を発生させることにより、用量を設定することができるペン型注射器である。用量設定部材の具体的デザインは、ある手法におけるこの部品が初めに発明のロックバンドを、初期設定用量又は所望の最大設定可能な用量を表すデバイス内の位置へ移動させるために提供される発明に対しては重要ではない。ロックバンドがこの位置に達したとき、その後、用量設定機構の運動の逆転(回転又は直線)は、ロックバンドをロック解除構成からロック構成に移行させる。
【0006】
発明の一実施態様において、最大用量設定機構は可動の用量設定部材及びロックバンドの組合せを含み、ここで、バンドは後続の用量設定中、用量設定部材との回転又は直線的係合におけるロック解除的な構成、及び用量設定部材のための恒久的停止部を提供する固定的な構成を有する。第一の用量後の、ロック解除からロック構成へのロックバンドの移行は、用量設定部材の運動が逆転するとき設定される。更なる実施態様において、使用者がセットピン、ボタン、引きひも、ラッチ、又は同等のトリガなどのトリガを作動させるとき、ロックバンドはロック構成に移行する。ロックバンドの好ましい構成は、円形又は長方形のスリーブ状構造である。好ましくは、それはデバイスの静止部分上に位置し、そして、用量設定部材が、第一の用量の設定中移動するとき、その静止部分に対して直線的に、又は回転的に移動できる。ロック解除構成において、バンドは拡張された状態にあり、例えば、バンドは、それが位置するデバイスの静止部分と摩擦による係合を行わないために大きい直径を有する。ロック構成において、 バンドが静止部分と摩擦による係合をおこない、そして、用量設定部材に対する移動を阻止するために収縮する。
【0007】
ロックバンドが初期にロック解除構成にあることを確実にするための様々な方法及びデザインは可能である。好ましいデザインは、ロックバンドがスプリングフィンガ、リーディングエッジ、及びトレーリングエッジを有する場所である。スプリングフィンガは、ロックバンドが第一のロック解除構成にあるとき、リーディングエッジを内部本体から付勢して離す。ロックバンドのトレーリングエッジが、ロックバンドが第二のロック構成にあるとき内部本体を保持する。あるいは、バンドが拡張された、又はロック解除構成において、シム、スペーサ、ブランク、ピン、又は使用者がトリガを作動するとき、バンドがロック構成に移動するようにトリガに直接的に又は間接的に連結される付勢部分などのその他部品により付勢できる。好ましい付勢部分は、第一の又は最大用量が設定された後、使用者がデバイスから引く、引張リングに連結したスペーサ又はピンである。
【0008】
更に、発明の別の実施態様は、遠位端、近位端、及び近位端から遠位端までその軸に沿って配置されるラセン溝、及び回転可能なナンバースリーブを組合せで含む薬物送達デバイス用の投与機構の最大用量を設定するための不可逆的固定機構である。ネジ付きカラー(threaded collar)は、内部本体のラセン溝の周囲をナンバースリーブと共に回転するナンバースリーブに装着される。ロックバンドは、第一のロック解除構成及び第二のロック構成を有する内部本体上に位置する。ロックバンドは、第一の用量が設定された後、第一から第二の構成へ移行する。
【0009】
発明は、また、薬物送達デバイスにおいて、最大用量設定、好ましくは、恒久的な最大設定可能な用量設定のための方法を含む。方法は、第一の初期用量を設定するため用量設定部材を回転すること、及び/又は、引張ることを含み、それは、その後、今後の全ての注射に対する最大設定可能な用量に対応する。用量設定部材が第一の用量を設定するために移動するとき、そのロック解除位置にあるロックバンドは、また、この第一の又は最大用量に対応する位置まで移動させられる。用量設定部材のように、バンドはその用量設定部材との係合のため、直線又は回転運動に移動することができる。初期用量が設定されるとき、使用者は用量設定部材の回転又は直線運動を停止し、そして、ロックバンドをロック解除からロック構成に移行させるため用量設定部材の運動を反転させる。あるいは、初期用量を設定した後、使用者は、ロックバンドをロック解除構成からロック構成に移行させるためトリガを作動させることができる。 ロックバンドは、今、使用者が第一の初期用量の設定値より大きい後続の用量を設定することを阻止するため回転又は直線停止部として機能する。
【0010】
本発明に基づく、用語「薬物送達デバイス」は、選択された医薬品の用量を投与するために、特に、例えば、インスリン、成長ホルモン、低分子量ヘパリン、及びその同族体、及び/又は、その誘導体などの選択された多重用量を投与するために設計された多重用量の、使い捨て、又は再使用可能デバイスを意味するものとする。上記デバイスは、いかなる形であっても、例えば、コンパクト又はペン型であってもよい。用量の送達は、機械的(場合により手動で)、又は電気的投与機構を通じて、又はスプリングなどの貯蔵エネルギ投与機構を通じて提供できる。用量の選択は、本発明で記載した機械部分を含む手動機構又は電子機構を通して提供できる。更に、上記デバイスは、血糖値レベルなどの生理学的特性を監視するために設計された部品を含むこともできる。更にその上、上記デバイスは針を含んでもよく、又は針なしでもよい。特に、用語「薬物送達デバイス」は、患者のような正式に医学的訓練を受けていない人々による規則的な使用を対象に設計された、機械的及び手動による用量送達及び用量選択機構を有する使い捨ての多重用量ペン型デバイスを意味するものとする。好ましくは、薬物送達デバイスは、注射型である。
【0011】
本明細書で使用する用語「薬物(drug)」又は「医薬品」」又は「薬物(medicament)」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで一実施態様において、薬学的に活性な化合物は、最大で1500Daまでの分子量を有し、及び/又は、ペプチド、蛋白質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、抗体、酵素、抗体、ホルモン若しくはオリゴヌクレオチド、又は上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症、及び/又は、関節リウマチの処置、及び/又は、予防に有用であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置、及び/又は、予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、又はその類似体若しくは誘導体、又はエキセジン−3又はエキセジン−4、若しくはエキセジン−3又はエキセジン−4の類似体若しくは誘導体を含む。
【0012】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで代替され、そして、B29位において、Lysは、Proで代替されてもよく;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0013】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0014】
エキセンジン−4は、例えば、エキセンジン−4(1−39)、配列H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH
2のペプチドを意味する。
【0015】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);又は
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
ここで、基−Lys6−NH
2は、エキセンジン−4誘導体のC−末端と結合してもよく;
【0016】
又は以下の配列のエキセンジン−4誘導体;
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH
2、
desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH
2、
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH
2、
desMet(O)14,Asp28,Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−Asn−(Glu)5,desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25, Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH
2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2;
又は前述のエキセンジン−4誘導体のいずれか1つの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物;
から選択される。
【0017】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に表示されているような脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は規制活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストである。
【0018】
多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、又は超低分子量ヘパリン、若しくはそれらの誘導体などのグルコアミノグリカン、又は上述の多糖類のスルホン化された、例えば、ポリスルホン化形態、及び/又は、薬学的に許容可能なそれらの塩がある。ポリスルホン化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウム塩がある。
【0019】
薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩及び塩基塩がある。酸付加塩としては、例えば、HCl又はHBr塩がある。塩基塩は、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、Na
+、又は、K
+、又は、Ca
2+から選択されるカチオン、又は、アンモニウムイオンN
+(R1)(R2)(R3)(R4)を有する塩であり、ここで、R1〜R4は互いに独立に、水素;場合により置換されたC1−C6アルキル基;場合により置換されたC2−C6アルケニル基;場合により置換されたC6−C10アリール基、又は場合により置換されたC6−C10ヘテロアリール基である。薬学的に許容される塩の更なる例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences”17編、Alfonso R.Gennaro(編集),Mark
Publishing社,Easton, Pa., U.S.A.,1985 及び Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0020】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、例えば、水和物である。
【0021】
本発明に基づく用語「係合された」は、駆動機構/薬物送達デバイスの2つ又はそれ以上の部品、例えば、スプライン、ネジ山、又はメッシュ歯連結などのインターロッキング、好ましくは、部品のラセン溝又はネジ山のインターロッキング(「回転係合」又は「ネジ山係合」)を、特に意味するものとする。
【0022】
本発明に基づく用語「第一の端」は、近位端を意味するものとする。デバイス又はデバイスの部品の近位端は、デバイスの投与端から最も近い端部を意味するものとする。本発明に基づく用語「第二の端」は、遠位端を意味するものとする。デバイス又はデバイスの部品の遠位端は、デバイスの投与端から最も遠く離れた端部を意味するものとする。