(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795771
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】光源および波長変換構成要素を含む照明デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20150928BHJP
【FI】
H01L33/00 410
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-543986(P2012-543986)
(86)(22)【出願日】2010年12月17日
(65)【公表番号】特表2013-514656(P2013-514656A)
(43)【公表日】2013年4月25日
(86)【国際出願番号】IB2010055905
(87)【国際公開番号】WO2011073951
(87)【国際公開日】20110623
【審査請求日】2013年12月13日
(31)【優先権主張番号】09179553.4
(32)【優先日】2009年12月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10186925.3
(32)【優先日】2010年10月8日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】マイアー ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイラー フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ペーター ヨゼフ
【審査官】
金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−280471(JP,A)
【文献】
特表2008−527688(JP,A)
【文献】
特開2009−070892(JP,A)
【文献】
特開2010−251621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長で光を放射するように配置された光源と、
前記第1の波長の光の少なくとも一部を第2の波長の光に変換するように配置された波長変換構成要素であって、一部の禁制電子遷移によって励起される金属イオン付活剤を含有する蛍光体を含む前記構成要素と、
を含む照明デバイスであって、
前記蛍光体はポリマーと混合され、
前記蛍光体および前記ポリマーは、それらの屈折率の差が0.1未満であるように選択され、
前記蛍光体は、Mn(IV)活性フッ化物化合物を含み、前記ポリマー中の蛍光体の量は10体積%から20体積%の間であり、
前記ポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンの少なくとも2つを含むコポリマーである、照明デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の照明デバイスにおいて、
前記Mn(IV)活性フッ化物化合物は、K2SiF6:Mn(IV)およびNa3Li3Al2F12:Mn(IV)の少なくとも一つを含む照明デバイス。
【請求項3】
前記ポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンのコポリマーである、請求項1に記載の照明デバイス。
【請求項4】
前記デバイスは、少なくとも2つの光源を含み、前記波長変換構成要素は、前記光源から離れて配置される、請求項1に記載の照明デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の照明デバイスに使用するために適切な波長変換構成要素。
【請求項6】
前記波長変換構成要素の形状は光学レンズである、請求項5に記載の波長変換構成要素。
【請求項7】
前記構成要素の形状は光学板である、請求項5に記載の波長変換構成要素。
【請求項8】
請求項5に記載の波長変換構成要素を製造する方法であって、
前記蛍光体は、前記ポリマーと混合され、その後に、前記蛍光体と前記有機ポリマーとの混合物は前記構成要素の形状にされる、方法。
【請求項9】
前記蛍光体および前記ポリマーは、押し出しおよび混練の1つによって混合される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物は、ホットプレスおよび射出成形の1つによって形成される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の波長で光を放射するように配置された光源、および第1の波長の光の少なくとも一部を第2の波長の光に変換するように配置された波長変換構成要素を含む照明デバイスに関し、構成要素は一部の禁制電子遷移によって励起される金属イオン付活剤を含む蛍光体を含み、前記蛍光体はポリマーと混合される。本発明は、該照明デバイスの使用に適切な波長変換構成要素だけではなく、波長変換構成要素の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭段落に記載されたタイプの照明デバイスは、米国特許公開第2010/0096974−A1号から既知である。この書類には、波長変換構成要素として動作するカプセル材を含む、LEDを含むデバイスが記載されている。前記カプセル材が適切なプラスチックまたはガラスのシェルとして形成され、その中で粒子形態の蛍光体または蛍光体混合物が分散する。前記蛍光体(混合物)は、電磁スペクトルの一部の放射エネルギーを吸収し、および電磁スペクトルの別の部分の放射エネルギーを放出するルミネッセント材料として動作する。このように、LEDによって放射された第1の波長を持つ光(の一部)が、別の(第2の)波長を持つ光に変換される。
【0003】
本発明者らは、一部の禁制吸収帯によって励起されるべき、金属イオン付活剤を持つ蛍光体が、適切な波長の光との相互作用を制限することを見い出した。特に、該禁制吸収帯は、ホスト格子に遷移金属イオン付活剤を持つ蛍光体で見い出された。これらの金属では、特定のd−d電子遷移が禁じられる。該蛍光体は、適切な波長を持つ光と相互作用すると、比較的低い吸光を示す。それにもかかわらず、変換構成要素によって、第1の波長を持つ光の比較的長い相互作用経路を使用することで、第1の波長で十分な光変換ができる。実際には、この解決手段は比較的厚い構成要素を伴う。しかしながら、長い相互作用経路は、ほとんどの場合に、好ましくない散乱損失を増加させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の課題および/または他の課題を軽減し、または少なくとも減少させることを目的とする。本発明は、特に、光源と、一部の禁制吸収によって励起される金属イオン付活剤を含む蛍光体を含む、効率的な波長変換構成要素を含む安価な照明デバイスを提供することを目的とする。特に変換構成要素の散乱損失は比較的小さい。本発明の別の目的は、照明デバイスに使用することに適切であるばかりではなく、該波長変換構成要素の製造に適切な、望ましいタイプの効率的な波長変換構成要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的および/または他の目的は、照明デバイスによって達成され、該照明デバイスは、1)第1の波長で光を放射するように配置された光源と、2)第1の波長の光の少なくとも一部を第2の波長の光に変換するように配置された波長変換構成要素を含み、該構成要素は一部の禁制電子遷移によって励起される金属イオン付活剤を含む蛍光体を含み、前記蛍光体はポリマーと混合され、蛍光体およびポリマーは、それらの屈折率の差が0.1未満であるように選択される。
【0006】
本発明は、蛍光体の1つと非常に良く一致する屈折率を持つポリマーに、蛍光体を混合することによって、変換構成要素の好ましくない散乱を著しく低減できるという、本発明者らによって得られた知見に基づく。実際には、屈折率の差を、0.1未満にすれば、散乱を著しく低減させることができる。好ましくは蛍光体の屈折率とポリマーの屈折率との差は、0.05未満であり、より好ましくは0.03未満である。所望のタイプの最善の照明デバイスの屈折率の差は0.02未満である。通常は、屈折率の差が小さくなるほど、波長変換構成要素の散乱損失が小さくなることを意味する。
【0007】
本発明に至る実験で、本発明者らは、さらに、望ましい蛍光体の単一の結晶、または十分に緻密なセラミックの使用は、特にそれらが立方−従って等方性の−構造である場合には、非常に有望であることを理解した。該材料は高透明なので、低散乱、またはまったく散乱しない。しかしながら、単一の結晶だけではなく、十分に緻密なセラミックを処理することも、温度の制約によって、非常に費用がかかり、すなわち単純に実現可能とは思われない。
【0008】
原理上は、本発明は、第1の波長を持つ光を放射する光源と、(部分的に)この光の波長を変換するための蛍光体とを含む、すべての種類の照明デバイス、例えばTL管などで機能する。しかしながら、実際には本発明は、光源として一つ以上のLEDを含む照明デバイスで有利に適用できることが示される。
【0009】
発明された照明デバイスの波長変換構成要素は、単一の蛍光体だけではなく、複数の蛍光体を含むことができる。2以上の蛍光体が使用される場合には、それらの少なくとも一つは、一部の禁制遷移によって励起される金属イオン付活剤を含むべきである。複数の蛍光体は、白色光を放出する照明デバイスを設計する場合に特に役に立つ。
【0010】
本発明による照明デバイスの実施形態の1つでは、蛍光体は、Mn(IV)活性フッ化物化合物を含む。通常は結晶である、このタイプの蛍光体では、Mn(IV)遷移金属イオンが結晶のホスト格子の特定の配位サイトに位置する。ここでMn(IV)遷移金属イオンは、一部の禁制d−d遷移によって励起される付活剤として機能する。ほとんどの場合、フッ化物ベースのホスト格子を持つ蛍光体は、比較的小さい屈折率を示す。適切に選択されたポリマー材料の組み合わせでは、屈折率が良好に一致できるので、屈折率の差は比較的小さく、すなわち0.1未満である。Mn(IV)化合物は、電磁スペクトルの赤色領域に興味深い放射線パターン示し、および、さらにスペクトルの青色領域で比較的良好な励起性を持つので、Mn(IV)活性フッ化物化合物は、Cr(III)またはEu(III)活性結晶蛍光体化合物などの他の既知の蛍光体化合物を覆うことが好ましい。
【0011】
本発明の照明デバイスの別の実施形態では、Mn(IV)活性フッ化物化合物は、K
2SiF
6:Mn(IV)およびNa
3Li
3Al
2F
12:Mn(IV)の少なくとも一つを含む。当該技術分野における当業者であれば、これらの結晶の化合物中の少量の化学元素が、他の元素によって置換され得ることを理解できる。これは、開始材料中の不純物、またはこれらの化合物の特性を調整するための慎重な選択によって発生する。これらのタイプの化合物は、他の蛍光体化合物との組み合わせで、高演色(R
a8>80および正のR
9)で相関色温度<3000Kの温白色スペクトルを持つ、比較的安価な照明デバイスを製造できるので興味深い。他の蛍光体化合物は、電磁スペクトルの黄色から緑色を放出するべきである。Y
3Al
5O
12:CeまたはLu
3Al
5O
12:Ce(あるいはそれらの既知の変形形態)は、該他の蛍光体化合物としてよい候補である。
【0012】
発明された照明デバイスのさらに別の実施形態では、ポリマーは、フッ素含有ポリマーである。このタイプのポリマーは、一部の禁制電子遷移によって励起される、金属イオン付活剤を持つ蛍光体と混合すると非常に有利に使用できる。特に、K
2SiF
6:Mn(IV)およびNa
3Li
3Al
2F
12:Mn(IV)タイプの化合物などのMn(IV)活性フッ化物化合物を含む蛍光体は、照明デバイスの波長変換構成要素において非常に有利に適用できる。これらの蛍光体とポリマーの屈折率は非常によく一致する。上述された有機ポリマーと混合された、上述された蛍光体を含む波長変換構成要素は、きわめて透明なので、予想外に低い散乱を示す。
【0013】
発明された照明デバイスのさらなる実施形態では、ポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンの少なくとも2つを含むコポリマーである。説明されるように、2つのフッ素ポリマーを適切な組み合わせで使用することによって、結果として生じるコポリマーの屈折率は、所望の値、特にポリマーと混合されるべき蛍光体化合物の屈折率の値に、適切に調節できる。この観点からさらにより好ましくは、本発明の照明デバイスのポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンのコポリマーである。当業者であれば、いかなる独創的な活動をすることもなく、所望の屈折率を持つコポリマーを設計するために、これらの3つのフッ素ポリマー前駆体の適切な量を選択できる。
【0014】
本発明の照明デバイスのまたさらなる実施形態では、ポリマー中の蛍光体の量の範囲は10体積%〜20体積%である。実験によって、蛍光体の量が10体積%未満の場合には、十分な変換効率を得るために、変換構成要素は比較的厚く(>2mm)設計される必要があることが示された。ポリマー中の蛍光体の量が20体積%を超えると変換構成要素の厚さは0.1mm未満になり、構成要素のハンドリングが実際には困難になる。ポリマー中の蛍光体の最適量の範囲は13体積%〜17体積%である。これらの量を使用することによって、変換構成要素を、厚さと吸収効率の最適な組み合わせで製造できる。
【0015】
発明された照明デバイスの興味深い実施形態の特徴は、少なくとも2つの光源含むこと、および、波長変換構成要素が光源から離れて配置されることを示す。この実施形態の照明デバイスは、2つ以上の波長変換構成要素を含むことができる。一般的に、本発明は、波長変換構成要素が、通常はLEDである光源に隣接する照明デバイスに適用できる。該デバイスでは、波長変換構成要素はLEDと直接に接しており、および光学レンズを形成する形状である。しかしながら本発明は、波長変換構成要素が光源(LED)の周辺にある照明デバイスにも適用できる。該デバイスでは、変換構成要素は光学レンズの外側の層に存在でき、レンズはLEDと直接接している。しかしながら、本発明は、非常に有利に、複数のLEDを持つ照明デバイスに適用でき、ここでは変換構成要素はこれらのLEDから離れて配置される。この状態では、変換構成要素は、好ましくは板の形状であり、および光源から離れて位置する。
【0016】
本発明は、照明デバイスでの使用に適切な波長変換構成要素にも関する。より具体的には、本発明の該構成要素は、一部の禁制電子遷移によって励起される金属イオン付活剤を含む蛍光体を含み、前記蛍光体はポリマーと混合され、蛍光体とポリマーは、それらの屈折率の差が0.1未満であるように選択される。前記蛍光体は、好ましくはMn(IV)活性フッ化物化合物を含み、一層好ましくはK
2SiF
6:Mn(IV)とNa
3Li
3Al
2F
12:Mn(IV)の少なくとも一つの化合物を含む。蛍光体は、蛍光体の安定性を増加させるために、コーティングを含んでもよい。好ましくは、コーティング材料は、フッ化カルシウムなどの、水への溶解度が低いフッ化物から実質的になる。前記ポリマーは、無機ポリマーであってもよいが、有機ポリマーが好ましい。フッ素含有ポリマー、特にテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンの少なくとも2つを含むコポリマーは非常に有用である。波長変換構成要素は、光学構成要素として、特にレンズまたは板としての形状にできる。
【0017】
さらに、本発明は、波長変換構成要素の製造方法に関する。この発明された方法の特徴は、蛍光体がポリマーと混合され、その後に、混合物が波長変換構成要素の形状にされることを含む。従来技術の方法に反して、蛍光体および(プレ)ポリマーは、混合後に「その場(in situ)」で硬化されない。本発明によれば、蛍光体とすでに硬化したポリマーの混合物は、好ましくは、押し出し、または混練によって調製される。変換構成要素の成形は、好ましくは、ホットプレスまたは射出成形によって実施される。この方法によって製造された構成要素は、照明デバイスにおいて非常に有益に適用できる。
【0018】
本発明のこれらのおよび他の態様は、本明細書に後述される実施形態を参照することによって、明らかになり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の照明デバイスの第1の実施形態の断面を示す。
【
図2】本発明の照明デバイスの第2の実施形態の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面は概略図であって、正確な縮尺ではないことを強調しておく。異なる図では、同一の構成要素は同一の参照番号で示される。
【0021】
図1は、本発明の照明デバイス1の第1の実施形態の断面を示す。前記照明デバイス1は、発光ダイオード(LED)によって具現される光源2を含む。異なるタイプのLEDを使用できるが、500nm以下の波長を持つ光を放射することができるLEDを採用することが好ましい。本発明のデバイスでは、GaInN型のLEDが使用され、これは最大波長450nmを持つ光を放射できる。前記光源2は、電源リード線4の部分3上に位置し、それは、さらに電源リード線5とともに、LEDに光放射をさせる電流を流すように配置される。この放射は、LEDから離れる方向を示す矢印によって示される。電源リード線4、5は、LEDに直接接続されている細い導線6を含む。
【0022】
光源2は、光学レンズの形状を持つ波長変換構成要素7によってカプセル化される。変換構成要素7は、主に有機ポリマーから構成される。蛍光体を、このポリマーと混合した。前記蛍光体は、一部の禁制電子遷移によって励起される、金属イオン付活剤を含む。この状態では、Mn(IV)活性フッ化物化合物、より具体的には化合物Na
3Li
3Al
2F
12:Mn(IV)が蛍光体として使用された。ポリマーを含むフッ素は、蛍光体のためのマトリックスとして使用された。より詳細には、使用されたポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデン(Dyneon(登録商標)221GZ)のコポリマーであった。
【0023】
蛍光体およびポリマーの両方の特定の選択によって、変換構成要素の両方の成分の屈折率の差は、0.03未満になった。より正確には、蛍光体材料の屈折率は1.340であると測定されたが、ポリマー材料の屈折率を1.363の値に適合させた。両方の成分の屈折率の小さな差(0.023)によって、構成要素が10mm(長さ)、5mm(断面)の比較的大きな寸法を有している場合であっても、変換構成要素の散乱がほとんど、または、まったく観察されない。このため、450nmの青色放射の効率的な吸収が可能になり、そしてそれは波長変換構成要素によって、最大波長650nmを持つ放射に変換される。
【0024】
本発明の照明デバイス1の説明される第1の実施形態では、波長変換構成要素が光源2(本明細書ではLED)の近端に位置する。実際、光源2は蛍光体材料によって直接囲まれている。代替形態として、光学レンズ形状の変換構成要素7を準備することも可能であり、その中では、蛍光体は、光源2に隣接していないが光源2の周辺に位置する。この状態では、蛍光体は光源1から少し離れた層8の中に集中する。この実施形態では、層8は、波長変換構成要素として機能する。発明された照明デバイスのこの代替実施形態では、レンズの他の部分(外側層8)には、実質的に蛍光体が無い。完全なレンズは、蛍光体と整合するポリマー材料からなり得る。実質的に蛍光体が存在しないレンズの一部を、本発明の範囲から逸脱することなく、別のポリマー材料から構成することも可能である。しかしながら、層8は、本発明によって定められた屈折率を持つポリマーを含むべきである。
【0025】
第1の実施形態の別の代替形態では、波長変換構成要素7は、好ましくは、電磁スペクトルの黄色から緑色で放射する追加の蛍光体を含むことができる。Y
3Al
5O
12:Ce(III)またはLu
3Al
5O
12:Ce(III)(あるいはこれらの既知の変形形態)は、該追加の蛍光体化合物としてよい候補である。これらのタイプの蛍光体混合物を持つ波長変換構成要素は、高演色(R
a8>80および正のR
9)で相関色温度<3000Kの温白色スペクトルを持つ比較的安価な照明デバイスを、該混合物で製造できるので興味深い。
【0026】
図2は、本発明の照明デバイス1の第2の実施形態の断面を示す。デバイス1は、複数の光源2(さらにLEDで具現される)を含み、断面には五つだけが示されている。これらのLEDは同一または異なる波長を放射できる。放射の方向は、小さい矢印によって示される。電源リード線および/または接続線(図示せず)を介して光源2が活性化されると、放射光は、本明細書では板部として形成される、変換構成要素7を通って照明デバイス1を出る。板状の変換構成要素7を通過する間に、入射放射線(の一部)は異なる波長を持つ放射に変化する。このデバイスでは、前記光学板は(変換される)放射に対して透明である基板9に取り付けられる。側壁部10および底壁部11は反射手段を備えるので、大部分の生成された放射は、波長変換構成要素7を介して照明デバイス1を出る。異なる波長の放射線を放出するLEDが使用される場合には、照明デバイス1内で色混合ができる。該デバイスでは、波長変換構成要素7を積み重ねて適用することが有用であり、該個々の構成要素は、異なるLEDで放出される異なる波長に対して選択される。
【0027】
波長変換構成要素7は、ポリマーおよび一部の禁制電子遷移によって励起される金属イオン付活剤を含む蛍光体を含む。より正確には、蛍光体は、Mn(IV)活性フッ化物化合物、より詳細には化合物K
2SiF
6:Mn(IV)を含む。ポリマーは、有機ポリマーのクラスから選択されたフッ素含有ポリマーである。より正確には、ポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデン(Dyneon(登録商標)THV2030GZ)の少なくとも2つを含むコポリマーである。前述された蛍光体は、コポリマーに約15体積%の蛍光体で開始して、示されたポリマーと混合された。蛍光体とポリマー材料は、それらの屈折率の差が0.1未満であるように選択された。より正確には、蛍光体材料の屈折率は1.340に決定され、ポリマー材料の屈折率は1.350値に合致させた。両方の成分の屈折率の差が小さい(0.010)ので、板状の構成要素が比較的厚い(約2mm)場合であっても、変換構成要素では散乱がほとんど、または、まったく観察されない。
【0028】
本発明の波長変換構成要素は、発明された方法にしたがって、製造され、成形される。第1に、蛍光体とポリマーとの良好な組み合わせが決定された。これは、特に、両方の物質間の屈折率の差が小さい(0.1未満、好ましくは0.05未満、および一層好ましくは0.02未満)であることを意味する。その後に特定の容量の蛍光体材料とポリマー材料を混合し、および、200℃未満の温度で押し出し、または、混練する。この温度よりも高いと、蛍光体材料が分解する可能性がある。ポリマー中の蛍光体の量は、10体積%から20体積%の範囲である。両方の成分を混合後に、ホットプレスまたは射出成形によって、波長変換構成要素を光学レンズまたは光学板として成形する。構成要素の寸法は、その用途によって異なる。
【0029】
本発明は、図面および前述の記載を参照して、詳細に図示され、説明されたが、該図面および記載は、説明の便宜のためであり、すなわち例示的であり、制限的ではない。本発明は、開示された実施形態に限定されるわけではない。開示された実施形態に対する他の変形形態は、図面、明細書、および添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求の範囲に記載されている発明を実施できる当該技術分野における当業者によって、理解され、実施できる。
【0030】
特許請求の範囲では、用語「を含む(comprising)」は他の構成要素または工程を排除せず、および不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除しない。特定の手段が、相互に異なる従属請求項に記載されていることによって、これらの手段の組み合わせが、有利な点を有するために使用することができないことを意味しない。特許請求の範囲に記載されている、いかなる参照記号も本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。