(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795780
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】ハイブリッド自動再送要求エンティティの操作方法
(51)【国際特許分類】
H04L 1/16 20060101AFI20150928BHJP
H04W 28/04 20090101ALI20150928BHJP
【FI】
H04L1/16
H04W28/04 110
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-85032(P2013-85032)
(22)【出願日】2013年4月15日
(62)【分割の表示】特願2011-123690(P2011-123690)の分割
【原出願日】2011年6月1日
(65)【公開番号】特開2013-192232(P2013-192232A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2013年4月15日
(31)【優先権主張番号】61/350,035
(32)【優先日】2010年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/357,109
(32)【優先日】2010年6月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/116,025
(32)【優先日】2011年5月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502160992
【氏名又は名称】宏達國際電子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】呉志祥
【審査官】
谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/139319(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/117797(WO,A2)
【文献】
Ericsson, ST-Ericsson,Summary of the email discussion [68#23] LTE: CC activation / deactivation[online], 3GPP TSG-RAN WG2♯68bis R2-100079,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_68bis/Docs/R2-100079.zip>,2010年 1月
【文献】
CATT,CC management in CA[online], 3GPP TSG-RAN WG2♯68bis R2-100061,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_68bis/Docs/R2-100061.zip>,2010年 1月
【文献】
ZTE,DRX and activation/deactivation,GPP TSG RAN WG2 #69bis Beijing China,2010年 4月,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_69bis/Docs/R2-102177.zip
【文献】
Samsung,Reusing REL-8 handover procedure for special cell change[online], 3GPP TSG-RAN WG2♯68bis R2-100489,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_68bis/Docs/R2-100489.zip>,2010年 1月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/16
H04W 28/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおいて、複数の周波数ブロックによる送受信が可能な通信装置のためのハイブリッド自動再送要求(HARQ)エンティティの操作方法であって、
前記複数の周波数ブロックのうちの、ある周波数ブロックに関連するHARQエンティティのコンテキストを、前記周波数ブロックが削除され、または動作不可能にされたときに維持するステップと、
継続中のランダムアクセス処理、始動させられたスケジューリング要求処理、始動させられたバッファ状態報告処理、および始動させられた電力ヘッドルーム報告処理のうち少なくとも1つを、前記周波数ブロックが削除され、または動作不可能にされたとき維持するステップであって、
(1)前記継続中のランダムアクセス処理が前記周波数ブロックにおいて実行されないとき、前記継続中のランダムアクセス処理を維持するステップ、
(2)前記始動させられた電力ヘッドルーム報告処理が前記周波数ブロックにおいて実行されないとき、前記始動させられた電力ヘッドルーム報告処理を維持するステップ、
(3)前記始動させられたスケジューリング要求処理が前記周波数ブロックにおいて実行されないとき、前記始動させられたスケジューリング要求処理を維持するステップ、
(4)前記始動させられたバッファ状態報告処理が前記周波数ブロックにおいて実行されないとき、前記始動させられたバッファ状態報告処理を維持するステップ、の少なくとも1つを含むステップと、を含むことを特徴とするHARQエンティティの操作方法。
【請求項2】
前記複数の周波数ブロックのうちの、前記周波数ブロックに関連するHARQエンティティのコンテキストを、前記周波数ブロックが削除され、または動作不可能にされたときに維持する前記ステップは、
前記周波数ブロックが削除され、または動作不可能にされたとき、HARQエンティティに対応するすべてのHARQプロセスのための記憶された新規のデータ指標を維持するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のHARQエンティティの操作方法。
【請求項3】
前記複数の周波数ブロックのうちの、前記周波数ブロックに関連するHARQエンティティのコンテキストを、前記周波数ブロックが削除され、または動作不可能にされたときに維持する前記ステップは、
前記周波数ブロックが削除され、または動作不可能にされたとき、HARQエンティティに対応するすべてのHARQプロセスのためのバッファを維持するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のHARQエンティティの操作方法。
【請求項4】
前記複数の周波数ブロックのうちの、前記周波数ブロックに関連するHARQエンティティのコンテキストを、前記周波数ブロックが削除され、または動作不可能にされたときに維持する前記ステップは、
前記周波数ブロックが削除され、または動作不可能にされたときに、動作中の前記周波数ブロックに使われる媒体アクセス制御(MAC)タイマを維持するステップ、または、
前記周波数ブロックが削除され、または動作不可能にされたときに、前記周波数ブロックに関連するMACカウンター値を維持するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のHARQエンティティの操作方法。
【請求項5】
前記周波数ブロックが削除され、または動作不可能にされたとき、動作中の時間アライメントタイマを維持するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のHARQエンティティの操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、無線通信システムおよびその通信装置に用いられる方法に関するものである。特に、無線通信システムおよび関連する通信装置におけるHARQエンティティの操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、「無線通信システムにおいてHARQエンティティをリセットするための方法および装置」と題されて2010年6月1日に出願された61/350,035号、および、「無線通信システムにおいてHARQエンティティをリセットするための方法および装置」と題されて2010年6月22日に出願された61/357,109号の、米国特許仮出願の利益を享受する。その全内容は、本明細書に組み込まれるものとする。
【0003】
〔背景技術〕
3Gモバイル遠隔通信システムにおいて確立された、アドバンスト高速無線通信システムの1つであるロング・ターム・エボリューション無線通信システム(LTEシステム)は、パケット交換伝送のみをサポートしている。このため、ノードB(NB)および無線ネットワーク制御装置(Radio Network Controller;RNC)のそれぞれにおいてではなく、単一のNBにおいてのように、単一の通信サイトにおいて、媒体アクセス制御(Medium Access Control;MAC)層および無線リンク制御(Radio Link Control;RLC)層の両方を実装する傾向があり、これによりシステム構造は単純になる。
【0004】
LTEシステムの無線インターフェースプロトコルの構造は、3つの層を含む。すなわち、物理層(レイヤー1)、データリンク層(レイヤー2)、およびネットワーク層(レイヤー3)である。ここで、レイヤー3の制御プレーンは、無線リソース制御(Radio Resource Control;RRC)層であり、レイヤー2はさらにパケットデータ収束プロトコル(Packet Data Convergence Protocol;PDCP)層、無線リンク制御(RLC)層、および媒体アクセス制御(MAC)層に分割される。
【0005】
伝送チャンネルを操作するためのユーザ機器(UE)のMAC層には、ブロードキャストチャンネル(BCH)、ダウンリンク共有チャンネル(DL−SCH)、呼び出しチャンネル(PCH)、アップリンク共有チャンネル(UL−SCH)、ランダムアクセスチャンネル(RACH)、およびマルチキャストチャンネル(MCH)などの、MACエンティティがある。これに加えて、上位層(例えばRRC層)によってMACエンティティのリセットが要求されると、UEはすべてのMACタイマを(動作していれば)停止させ、時間アライメントタイマが失効したとみなし、新たな伝送のためにすべてのアップリンクHARQプロセスの新たなデータ指標(NDIs)を初期値(例えば0)に設定し、進行中のランダムアクセス処理を停止し、始動させられたスケジューリング要求処理を取り消し、始動させられたバッファ状態報告処理を取り消し、始動させられた電力ヘッドルーム(power headroom)報告処理を取り消し、すべてのダウンリンクHARQプロセスのソフトバッファを消去(flush)し、各ダウンリンクHARQプロセスについて、伝送ブロック(TB)のために次回受信される伝送を本当に最初の伝送とみなして、一時的に移動局装置識別子(C−RNTI)を解放する。
【0006】
より高いピークデータ率でのデータ伝送などの、アドバンスト高速無線通信システムを目的として、LTEアドバンスト(LTE-Advanced)システムは、LTEシステムの強化版として第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)により標準化された。LTEアドバンストシステムは、電力状態間のより高速な切り替えを目標とし、セル端におけるパフォーマンスを改善するものであり、帯域幅の拡大、協調的な多地点送受信(COMP)、アップリンク多重入出力(MIMO)などの課題を含む。
【0007】
帯域幅の拡大に関して、より広い帯域へ拡張するために、周波数帯域統合(carrier aggregation)がLTEアドバンストシステムに導入される。すなわち、より広い伝送帯域(例えば100MHz以上)のサポートと、スペクトラム集約(spectrum aggregation)のために、複数の周波数ブロック(component carrier)が集約される。周波数帯域統合の能力に従って、複数の周波数ブロックが全体的なより広い帯域に統合される。ここで、UEは同時に送受信するための複数の周波数ブロックに対応する複数のリンクを確立できる。周波数帯域統合では、UEはネットワークと単一のRRC接続を有するに過ぎない。RRC接続の確立/再確立/ハンドオーバーにおいて、1つのサービング・セル(serving cell)がNAS移動体情報を提供する。また、RRC接続の再確立/ハンドオーバーにおいて、1つのサービング・セルがセキュリティ入力を提供する。このセルは、プライマリセル(PCell)として参照される。ダウンリンクにおいて、PCellに対応する周波数ブロックが、ダウンリンクプライマリ周波数ブロック(DL PCC)である。一方、アップリンクにおいては、アップリンクプライマリ周波数ブロック(UL PCC)である。さらに、アップリンクおよびダウンリンクの両方とも、各周波数ブロックはHARQエンティティを含む。HARQエンティティは、並行するHARQプロセスを維持する。これは、前回の伝送の受信が成功したか否かに応じたフィードバック(応答信号(ACK)または非応答信号(NACK))を待機しながら、伝送が連続的に発生することを可能にする。
【0008】
LTEシステムでは、単一の周波数ブロックをサポートするUEに対して、MACエンティティがリセットされたときは、HARQエンティティのNDIが初期値に設定される。LTEアドバンストシステムでは、複数の周波数ブロックをサポートするUEに対して、HARQエンティティリセットのための明確な仕様は存在しない。より具体的には、HARQエンティティのアップリンクHARQプロセスに対して、どのように新規のデータ指標を設定するかは定義されていない。UEの周波数ブロック設定が変更されたとき(例えば、周波数ブロックが、RRC層によって再設定された、追加された、もしくは削除された、またはMAC層によって動作可能にされた、もしくは動作不可能にされた)、UEは、MACエンティティリセットメカニズムに基づいて、複数の周波数ブロックにおいて、すべてのHARQエンティティをリセットしてもよい。これによりデータ伝送が失敗する。例えば、ある周波数ブロックだけが再設定され、追加され、削除され、動作可能にされ、または動作不可能にされるため、UEは、新たな伝送のためにすべてのHARQエンティティのすべてのHARQプロセスの新規のデータ指標を初期値(例えば0)に設定する。そして、他の周波数ブロックの新規のデータ指標は、UEとeNBとの間で異なる設定となる。したがって、UEは再送を行うが、実際にはeNBは新たな伝送としてスケジュールすることによりデータ伝送が失敗する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】3GPP TS 36.321 V9.2.0 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Medium Access Control (MAC) protocol specification (Release 9), 2010/03
【非特許文献2】3GPP TS 36.331 V9.2.0 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Radio Resource Control (RRC); Protocol specification (Release 9), 2010/03
【非特許文献3】3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #70 R2-103427 Stage 2 description of Carrier Aggregation, 2010/05
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願は、前述した問題を解決するための無線通信システムにおけるHARQエンティティの操作方法、および関連する通信装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
無線通信システムにおいて、複数の周波数ブロックによる送受信が可能な通信装置のためのHARQエンティティの操作方法が開示される。当該方法は、前記複数の周波数ブロックにおいて、ある周波数ブロックに関連するHARQエンティティを、前記周波数ブロックと関連する周波数ブロック設定が変更されたときに、リセットするステップを含む。
【0012】
無線通信システムにおいて、複数の周波数ブロックによる送受信が可能な通信装置のためのHARQエンティティの操作方法が開示される。当該方法は、前記複数の周波数ブロックにおいて、ある周波数ブロックに関連するHARQエンティティのコンテキストを、前記周波数ブロックと関連する周波数ブロック設定が変更されたときに、維持するステップを含む。
【0013】
本発明のこれらおよび他の目的は、様々な図や表で示される望ましい実施形態についての以下の詳細な記述を読んだ後で、通常の当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】典型的な通信システムの通信プロトコル層の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、モバイル装置10と複数の基地局B1−Bnとの間のマルチ接続を特徴とする無線通信システムの概略図を示す。この無線通信システムは、LTEアドバンストシステム(すなわち、E−UTRAN:an evolved universal terrestrial radio access network)、または他の類似するネットワークシステムであってよい。モバイル装置10は、周波数帯域統合によって動作できる。
図1では、モバイル装置10は、無線リンクL
1−L
mを介して基地局B1−Bnと通信を行う。無線リンクL
1−L
mは、モバイル装置10において設定される周波数ブロックcc#1−cc#mにそれぞれ対応している。周波数ブロックcc#1−cc#mのそれぞれは、無線周波数(radio frequency:RF)チャンネルに対応しており、その帯域は異なる通信システムに応じて変化してよい。さらに、モバイル装置10はユーザ機器(user equipment:UE)または移動局(mobile station:MS)であり、携帯電話、コンピュータシステム等のような機器であってもよい。
【0016】
図2は、典型的な通信機器20の概略図を示す。通信機器20は、
図1に示すモバイル装置10であってもよいが、これに限らない。通信機器20は、マイクロプロセッサまたは特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)のような処理手段200、記憶ユニット210、および通信インターフェースユニット220を含む。記憶ユニット210はプログラムコード214を記憶することができ、処理手段200がアクセス可能な任意のデータ記憶装置であってよい。記憶ユニット210の例は、加入者識別モジュール(subscriber identity module:SIM)、ROM(read-only memory)、フラッシュメモリ、RAM(random-access memory)、CD−ROM、磁気テープ、ハードディスク、および光学データ記憶装置を含むが、これに限定されない。通信インターフェースユニット220は無線送受信機が望ましく、処理手段200の処理結果に従い、ネットワークを介して無線信号を交換できる。
【0017】
図3は、LTEシステムのための通信プロトコル層の概略図を示す。いくつかのこれらのプロトコル層の動作はプログラムコード214で規定されていてもよく、処理手段200によって実行されてもよい。これらのプロトコル層は、上から下の順に、無線リソース制御(RRC)層300、パケットデータ収束プロトコル(PDCP)層310、無線リンク制御(RLC)層320、媒体アクセス制御(MAC)層330、および物理(PHY)層340である。MAC層330の主な役割および機能には、HARQによるエラー補正、ランダムアクセス処理によるアップリンク同期、バッファ状態の報告、電力ヘッドルームの報告等を含む。バッファ状態の報告処理は、アップリンク送信のスケジューリングのために、UEのアップリンクバッファのデータの量についての情報をネットワーク(例えばeNB)に与えるために使用される。電力ヘッドルームの報告処理は、UE TX(Transmission:伝送)出力とUE TX最大出力との差についての情報をeNBに与えるために使用される。さらに、スケジューリング要求は、ネットワークに複数のアップリンクリソースを要求するためにMAC層330によって生成されてもよい。
【0018】
図4は、典型的な処理40のフローチャートを示す。処理40は、HARQエンティティのリセットのために、複数の周波数ブロックを通じてネットワークと通信可能な(
図1のモバイル装置10のような)UEにおいて利用される。処理40は、プログラムコード214にコンパイルすることが可能であり、以下のステップを含む。
【0020】
ステップ410:複数の周波数ブロックにおける、ある周波数ブロックに関連付けられた周波数ブロック設定が変更されたとき、その周波数ブロックに関連付けられたHARQエンティティをリセットする。
【0022】
処理40によれば、周波数ブロックが再設定され、追加され、削除され、動作可能にされ、または動作不可能にされたとき、UEはその周波数ブロックに関連付けられたHARQエンティティのみをリセットする。周波数ブロックは、ハンドオーバーを含まない(例えば、RRC接続の再確立(RRCConnectionReconfiguration)は移動体制御情報(mobilityControlInfo)を含まない)RRC処理を伴うRRC層300によって、再設定され(例えば、周波数ブロック設定のパラメータが変更される)、追加され、もしくは削除される。または、周波数ブロックは、MAC制御エレメントを伴うMAC層330によって動作可能とされ、もしくは動作不可能とされてもよい。これにより、UEは、再設定され、追加され、削除され、動作可能にされ、動作不可能にされた周波数ブロックのみに関連付けられたHARQエンティティをリセットする。
【0023】
処理40に基づく例を示す。
図1を再度参照すると、UEは周波数ブロックcc#1−cc#mで設定される。いかなる周波数ブロックcc#1−cc#m(例えば、周波数ブロックcc#2)も、再設定され、削除され、動作可能にされ、または動作不可能にされたとき、UEまたはeNBは、周波数ブロックcc#2のみに関連付けられたHARQエンティティをリセットする。より具体的には、例えばHARQ伝送または受信のためのバッファ消去、または、新たな伝送のために、すべてのHARQプロセスのための新規のデータ指標(NDI)を初期値(例えば0)に設定することによって、UEまたはeNBは、HARQエンティティに対応する各HARQプロセスのための次回伝送を、HARQエンティティをリセットした後の新たな伝送とみなす。バッファは、伝送ブロックを伝送するために使われるHARQプロセスのためのHARQバッファ、および伝送ブロックを受信するために使われるHARQプロセスのためのソフトバッファである。例えば、周波数ブロックcc#2がアップリンク周波数ブロックであるとき、バッファは、UEにおいてHARQエンティティに対応するすべてのアップリンクHARQプロセスのためのHARQバッファ、および、eNBにおいてHARQエンティティに対応するすべてのアップリンクHARQプロセスのためのソフトバッファである。周波数ブロックcc#2がダウンリンク周波数ブロックであるとき、バッファは、UEにおいてHARQエンティティに対応するすべてのダウンリンクHARQプロセスのためのソフトバッファ、および、eNBにおいてHARQエンティティに対応するすべてのダウンリンクHARQプロセスのためのHARQバッファである。したがって、UEまたはeNBは、伝送ブロックに対して次回に伝送された/受信された伝送を、UEまたはeNBにおいてHARQエンティティに対応する各HARQプロセスのための新たな伝送とみなす。
【0024】
なお、NDI値は、データ伝送が新たな伝送か伝送ブロックの再送かを決定するために使われる。さらに、UEまたはeNBは、それが新たな伝送である場合は、受信したデータとともに伝送ブロックのソフトバッファにあるデータを置換する。一方、それが再送である場合は、ソフトバッファにあるデータと受信したデータとを統合する。これらは技術的によく知られているため、ここでは詳述は省略する。
【0025】
また、UEまたはeNBは、周波数ブロック(例えば、周波数ブロックcc#2)に関連付けられたMACタイマを停止する。MACタイマは、HARQ RTTタイマまたは時間アライメントタイマであってよい。HARQ RTTタイマは、UEによるダウンリンクHARQ再送が予想される前に、最小のサブフレームを提供する。時間アライメントタイマは、アップリンクタイムが調整されたとUEがみなす長さを制御するために使われる。MACタイマは、セカンダリセル(SCell)が動作可能にされたとUEがみなす長さを制御するために使われる、sCellDeactivationTimerタイマであってよい。さらに、UEまたはeNBは、周波数キャリアcc#2に関連するMACカウンター(例えば、各HARQプロセスに対するCURRENT_TX_NB)に、初期値(例えば0)を設定する。各HARQプロセスは、状態変数CURRENT_TX_NBを維持する。これは、UEのバッファにおいてMAC PDUに対して発生した伝送の数を示す。
【0026】
一方で、周波数ブロックcc#2に対するHARQエンティティがリセットされたとき、UEは、動作中の時間アライメントタイマ、継続中のランダムアクセス処理、始動させられたスケジューリング要求処理、始動させられたバッファ状態報告処理、始動させられた電力ヘッドルーム報告処理、および一時的な移動局装置識別子(C−RNTI)を維持する。より具体的には、周波数ブロックcc#2に対する時間アライメントタイマが、他の周波数ブロック(例えば、周波数ブロックcc#1)と同様に用いられる場合、UEは時間アライメントタイマを失効していないものとみなす。一方で、時間アライメントタイマが周波数ブロックcc#2だけに用いられる場合、UEは時間アライメントタイマが失効しているものとみなす。さらに、周波数ブロックcc#2において、継続するランダムアクセス処理/始動させられたスケジューリング要求処理/始動させられた電力ヘッドルーム報告処理が実行されていない場合、UEは、継続するランダムアクセス処理/始動させられたスケジューリング要求処理/始動させられた電力ヘッドルーム報告処理を維持する。一方で、周波数ブロックcc#2において、継続するランダムアクセス処理/始動させられたスケジューリング要求処理/始動させられた電力ヘッドルーム報告処理が実行されている場合、UEは、継続するランダムアクセス処理/始動させられたスケジューリング要求処理/始動させられた電力ヘッドルーム報告処理を停止する、または取り消す。
【0027】
処理40に基づき、UEまたはeNBは、複数の周波数ブロックシステム(例えば、LTEアドバンストシステム)においてHARQエンティティをリセットする方法を知っている。UEまたはeNBは、動作可能にされた、動作不可能にされた、追加された、削除された、または再設定された周波数ブロックにおいてのみ、HARQエンティティをリセットする。
【0028】
図5は、典型的な処理50のフローチャートである。複数の周波数ブロックを通してネットワークと通信可能なUE(
図1のモバイル装置10)において、HARQエンティティをリセットするために、処理50は用いられる。処理50は、プログラムコード214にコンパイルすることが可能であり、以下のステップを含む:
ステップ500:開始。
【0029】
ステップ510:複数の周波数ブロックにおける、ある周波数ブロックに関連付けられた周波数ブロック設定が変更されたとき、その周波数ブロックに関連付けられたHARQエンティティのコンテキストを維持する。
【0031】
処理50によれば、RRC処理を伴うRRC層300によって周波数ブロックが再設定される、追加される、または削除されるとき、または、MAC制御エレメントを伴うMAC層330によって動作可能とされる、または動作不可能とされるとき、UEは周波数ブロックと関連付けられたHARQエンティティのコンテキストを維持する。言い換えれば、UEは周波数ブロックにおけるHARQエンティティのコンテキストを変化させない。これは、HARQエンティティのコンテキストが、UEとネットワーク(すなわちeNB)との間で異なるように設定されることを避けるためである。HARQエンティティのコンテキストは、記憶されたNDI値と、HARQバッファまたはHARQエンティティにおける各HARQプロセスのためのソフトバッファにおけるデータとを含む。
【0032】
処理50に基づく例を示す。
図1を再度参照すると、UEは周波数ブロックcc#1−cc#mで設定される。いかなる周波数ブロックcc#1−cc#m(例えば、周波数ブロックcc#2)も、再設定され、追加され、削除され、動作可能にされ、または動作不可能にされたとき、UEまたはeNBは、周波数ブロックcc#2のHARQエンティティのコンテキストを維持する。より具体的には、UEまたはeNBは、HARQエンティティに対応するすべてのHARQプロセスに対するNDIを維持する、および/または、HARQエンティティに対応するすべてのHARQプロセスに対するバッファを維持する。
【0033】
また、UEまたはeNBは、周波数ブロックcc#2に関連するMACタイマを維持する。このMACタイマは、HARQ RTTタイマ、時間アライメントタイマ、またはsCellDeactivationTimerタイマであってよい。さらに、UEまたはeNBは、周波数ブロックcc#2に関連付けられたMACカウンター(例えば、各HARQプロセスのためのCURRENT_TX_NB)を、初期値(例えば0)に維持する。一方、周波数ブロックcc#2のHARQエンティティが
維持されるとき、UEは、継続中のランダムアクセス処理、始動させられたスケジューリング要求処理、始動させられたバッファ状態報告処理、始動させられた電力ヘッドルーム報告処理、あるいは一時的なC−RNTIを維持する。より具体的には、時間アライメントタイマ、継続中のランダムアクセス処理、始動させられたスケジューリング要求処理、始動させられたバッファ状態報告処理、始動させられた電力ヘッドルーム報告処理、あるいは一時的なC−RNTIが、周波数ブロックcc#2のみに関連付けられているかどうかに基づいて、UEは動作中の時間アライメントタイマ、継続中のランダムアクセス処理、始動させられたスケジューリング要求処理、始動させられたバッファ状態報告処理、始動させられた電力ヘッドルーム報告処理、あるいは一時的なC−RNTIを維持する。詳細な説明は上述の通りであるため、ここでは省略する。
【0034】
処理50に基づけば、複数の周波数ブロックシステムにおいてHARQエンティティをリセットする方法が、明確に定義される。UEまたはeNBは、動作可能にされ、動作不可能にされ、追加され、削除され、または再設定された周波数ブロックにおいて、HARQエンティティのコンテキストを維持する。
【0035】
結果として、本発明はHARQエンティティリセットを操作するための方法および装置を提供する。これにより、複数の周波数ブロックシステムにおける周波数ブロックのHARQエンティティを効率的かつ適切にリセットできる。
【0036】
当業者には、本発明の開示を元に、本装置および方法の多くの変形例および変更例が可能であることが、容易に分かるであろう。よって、上記開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものと解釈しなければならない。