特許第5795794号(P5795794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オー・ティー・シー ジー・エム・ビー・エイチの特許一覧

特許5795794エマルション及び/又は分散液の連続製造用乳化装置
<>
  • 特許5795794-エマルション及び/又は分散液の連続製造用乳化装置 図000007
  • 特許5795794-エマルション及び/又は分散液の連続製造用乳化装置 図000008
  • 特許5795794-エマルション及び/又は分散液の連続製造用乳化装置 図000009
  • 特許5795794-エマルション及び/又は分散液の連続製造用乳化装置 図000010
  • 特許5795794-エマルション及び/又は分散液の連続製造用乳化装置 図000011
  • 特許5795794-エマルション及び/又は分散液の連続製造用乳化装置 図000012
  • 特許5795794-エマルション及び/又は分散液の連続製造用乳化装置 図000013
  • 特許5795794-エマルション及び/又は分散液の連続製造用乳化装置 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795794
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】エマルション及び/又は分散液の連続製造用乳化装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 3/08 20060101AFI20150928BHJP
   B01F 3/12 20060101ALI20150928BHJP
   B01F 7/18 20060101ALI20150928BHJP
   B01F 15/06 20060101ALI20150928BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20150928BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   B01F3/08 A
   B01F3/12
   B01F7/18 B
   B01F7/18 C
   B01F15/06 Z
   B01J13/00 A
   B01J13/00 B
   A61K8/04
   A61Q5/02
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-508517(P2013-508517)
(86)(22)【出願日】2011年5月6日
(65)【公表番号】特表2013-532047(P2013-532047A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2011057315
(87)【国際公開番号】WO2011138438
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2013年12月2日
(31)【優先権主張番号】102010028774.1
(32)【優先日】2010年5月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512046877
【氏名又は名称】オー・ティー・シー ジー・エム・ビー・エイチ
【氏名又は名称原語表記】OTC GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダームス ジェード
(72)【発明者】
【氏名】ユング アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ドール ヘンドリック
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−187626(JP,U)
【文献】 特開2009−154121(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01964604(EP,A1)
【文献】 特表2007−508133(JP,A)
【文献】 特開2010−077114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 3/08
A61K 8/04
A61Q 5/02
B01F 3/12
B01F 7/18
B01F 15/06
B01J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルション及び/又は分散液の連続製造のための乳化装置であって、
a)少なくとも1つの混合装置であって、
− すべての面において気密に封止された回転対称なチャンバと、
− 自由流動成分を導入するための少なくも1つの流入ラインと、
− 混合された自由流動成分を排出するための少なくとも1つの流出ラインと、
− 層流を確保し、攪拌シャフト上に固着された攪拌要素を含む攪拌ユニットであって、その回転軸が前記チャンバの対称軸に沿って伸び、その攪拌シャフトが少なくとも1つの面上に案内されている、攪拌ユニットと、
を含み、
前記少なくとも1つの流入ラインは、前記少なくとも1つの流出ラインの上流に、又は該流出ラインよりも下部に配置されており、
前記流入ライン流出ライン間の距離と前記チャンバの直径との比は、≧2:1であり、
前記流入ライン流出ライン間の距離と前記攪拌要素の攪拌アームの長さとの比は、3:1〜50:1であり、
前記チャンバ内径に基づく前記攪拌シャフトの直径の比率は、該チャンバ内径の0.25〜0.75倍であり、
その結果、前記少なくとも1つの流入ラインを介して前記混合装置内に導入される成分は、攪拌され、且つ
成分が前記攪拌ユニットによって加えられるせん断力によって乱流混合される、流入口側の乱流混合領域と、
成分がさらに混合され、乱流が減少する、下流の浸透混合領域と、
成分の混合物中にリオトロピック液晶相が構築される、流出口側の層流混合領域と、
によって前記流出ラインの方向に連続的に輸送される、混合装置と、
b)前記攪拌ユニットのための少なくとも1つの駆動装置と、
c)成分又は成分混合物につき、少なくとも1つの輸送装置と、
を含む乳化装置。
【請求項2】
前記チャンバが中空円筒形状、切頂円錐形状、漏斗形状、切頂ドーム形状、又はこれらの幾何学形状から構成される形状を有し、チャンバの直径が流入ラインから流出ラインまで一定に保たれるか又は減少し、前記攪拌ユニットがチャンバの形状に適合されていることを特徴とする、請求項1に記載の乳化装置。
【請求項3】
チャンバ直径と流入ライン流出ライン間の距離との比が、1:50〜1:2の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の乳化装置。
【請求項4】
チャンバ内径dkに基づく攪拌シャフト直径の比率が、好ましくは0.3〜0.7×dkの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の乳化装置。
【請求項5】
前記攪拌要素の少なくとも1つの構成部品がチャンバの内壁と平行に且つ該内壁から空間をおき離されて配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の乳化装置。
【請求項6】
前記攪拌ユニットが、フルブレード若しくは部分ブレード攪拌器、又はフルワイヤ攪拌器若しくは部分ワイヤ攪拌器であるか、これらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の乳化装置。
【請求項7】
前記チャンバが、層流を促進する少なくとも1つの邪魔板を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の乳化装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの混合装置が、直列に連結された複数の回転対称チャンバを有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の乳化装置。
【請求項9】
第1の混合装置としての混合装置が、下流に連結された少なくとも1つのさらなる混合装置を有し、前記第1の混合装置の下流の成分混合物中にリオトロピックな液晶相が存在し、前記下流の少なくとも1つのさらなる混合装置中の混合物の粘度が、前記第1の混合装置の下流粘度以下であることを特徴とする、請求項1に記載の乳化装置。
【請求項10】
少なくとも1つの流量センサが、前記ラインの少なくとも1つ中に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の乳化装置。
【請求項11】
成分、成分混合物、及び/又はエマルション若しくは分散液を冷却可能又は加熱可能であるように、前記ラインの少なくとも1つに温度制御のための少なくとも1つの装置が連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の乳化装置。
【請求項12】
前記駆動装置、前記輸送装置及び前記流量センサ、並びに前記温度制御用の装置が、混合装置の監視及び制御、成分、成分混合物、又はエマルション若しくは分散液の供給及び取出しの監視及び制御のために制御装置に接続され、該制御装置が、前記第1の混合装置中で得られる混合物の粘度が、常に前記下流の混合装置中の粘度以上であり、混合された成分の層流が確保されるようにシステムを制御することを特徴とする、請求項10および11に記載の乳化装置。
【請求項13】
前記制御装置が、遠隔管理モジュール及び/若しくは処方管理モジュールに接続されているか、又は接続され得ることを特徴とする、請求項12に記載の乳化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション及び/又は分散液の連続製造のための乳化装置に関する。本発明による乳化装置は、従来の標準的な二相エマルション、多相エマルション、例えば、多重エマルションや多重分散液等、並びに、分散油相に加えてさらに液晶ゲルネットワーク相を含む、三相エマルション(OW)の製造用だけでなく、液晶真珠光沢剤、液晶自己組織化系(OWエマルション中のゲルネットワーク相)、例えば、ヘアコンディショニング剤等、さらには皮膚及び毛髪洗浄剤、例えばシャンプー、シャワージェル、ワックス及びシリコーンエマルションやパーフルオロエーテルエマルション等の製造用にも使用することができる。本発明による乳化装置は、研磨剤及び洗浄剤産業、化粧品産業、医薬品、染料産業や塗料及びワニス産業のみならず、食品産業においても使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来技術により、通常バッチ式プロセスを行うために使用されるエマルション及び/又は分散液の製造のための装置が公知である。
【0003】
特許文献1には、空気を排除した状態でエマルション又は分散液を連続製造するための装置が開示されており、この装置は、すべての面において密封された混合装置を含み、この混合装置は流動性の物質又は物質混合物の導入及び排出のための供給パイプ及び取出しパイプと、さらにキャビテーション力を生成することなく、また高圧ホモジナイズを必要とせずに、エマルション又は分散液への攪拌しながらの導入を可能にする攪拌ユニットとを有する。
【0004】
特許文献2には、少なくとも2つの流体相の混合物を連続製造するための装置及びプロセスが開示されており、この装置及びプロセスは、すべての面において密封されその長手方向軸を中心として回転対称である混合容器と、各流体相を導入するために混合容器に通じる少なくとも2つの流入ラインと、これらの相から混合される混合物を排出するために混合容器から通じる少なくとも1つの流出ラインと、それらの相を攪拌するための羽つき回転攪拌器であって、その回転軸が混合容器の長手方向軸内にある攪拌器と、を使用している。特許文献2による装置を使用しても、制御された延伸流は得られず、乱流及びキャビテーション力を防止するための対策はとられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2004/082817 A1
【特許文献2】EP1,964,604 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液晶構造を有するエマルション、ナノエマルション、及び/又は分散液の連続製造を可能にする、乳化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下を含む、エマルション及び/又は分散液の連続製造のための乳化装置によって、前記目的が達成される。
a)少なくとも1つの混合装置であって、
− すべての面において気密に封止された回転対称チャンバと、
− 自由流動成分の導入のための少なくとも1つの流入ラインと、
− 混合された自由流動成分の排出のための少なくとも1つの流出ラインと、
− 層流を確保し、攪拌シャフトに固着された攪拌要素を含む攪拌ユニットであって、その回転軸が前記チャンバの対称軸に沿って伸びており、その攪拌シャフトが少なくとも1つの面に案内されている、攪拌ユニットと、
を含み、
前記少なくとも1つの流入ラインは、前記少なくとも1つの流出ラインの上流又はその流出ラインよりも下部に配置されており、
前記流入ライン流出ライン間の距離と、前記チャンバの直径との比は、≧2:1であり、
前記流入ライン流出ライン間の距離と、前記攪拌要素の攪拌アームの長さとの比は、3:1から50:1までであり、
前記チャンバの内径に基づく前記攪拌シャフトの直径の比率は、該チャンバの内径の0.25〜0.75倍であり、
結果として、前記少なくとも1つの流入ラインを介して前記混合装置に導入される成分は、攪拌され、且つ
前記攪拌ユニットによって加えられるせん断力によって成分が乱流混合される、前記流入口側の乱流混合領域と、
成分がさらに混合され乱流が減少する、下流の浸透混合領域と、
成分の混合物中にリオトロピック液晶相が構築される、流出口側の層流混合領域と、
によって、流出ラインの方向に連続輸送される、
混合装置、
b)前記攪拌ユニットのための少なくとも1つの駆動装置、及び
c)成分又は成分混合物につき少なくとも1つの輸送装置。
【0008】
前記浸透混合領域は、混合物が乱流から層流へと変化する遷移領域である。乱流混合に続く浸透領域において、液滴の連続的な粉砕又は液晶相の形成によって粘度が増大し、乱流は減少する。臨界レイノルズ数に達した後、混合物は層流混合領域へと移行する。混合プロセス中又は液晶相の形成中の制御されたエネルギー効率のよい液滴の切断が、次いで層流混合領域内で延伸流の条件下で起こる。
【0009】
前記少なくとも1つの混合装置のチャンバは、回転対称であり、好ましくは中空円筒形状である。しかしながら、チャンバは、切頂円錐形、漏斗形、切頂ドーム型、又はこれらの幾何学形状から構成される形状を有していてもよく、この際、チャンバの直径は流入ラインから流出ラインまで一定に保たれるか、又は減少する。攪拌ユニットはこの回転対称チャンバの形状に適合される。
【0010】
チャンバの内径dに対する攪拌シャフトの直径dssは、好ましくは0.25〜0.75×dの範囲内にあり、流入ライン流出ライン間の距離と攪拌要素のアームの長さとの比は、好ましくは3:1〜50:1の範囲内にあり、特に好ましくは5:1〜10:1の範囲内にあり、とりわけ6:1〜8:1の範囲内にある。チャンバ直径に対して攪拌シャフトの直径が通常よりも大きいことは、さらに、次のような結果をもたらす。即ち、攪拌シャフトとチャンバ壁との距離(当業者により「流体直径」と表わされる)が常に小さくなるため、血栓様の流れが生ずる恐れなく、層流が確保される。
【0011】
前記少なくとも1つの混合装置の、流入ライン流出ライン間の距離と底部におけるチャンバ直径との比は、≧2:1である。中空円筒から外れる回転対称チャンバの一形体においては、流入ライン流出ライン間の距離とチャンバ直径との比は、少なくとも1つの混合装置の流入ラインの領域においても同様に、≧2:1である。
【0012】
混合装置は、すべての面において密封されており、空気を排除した状態で運転される。混合されるべき成分は、混合装置のチャンバ内に流体流として導入され、混合された成分が流出ラインに到達するまで攪拌ユニットによって混合され、混合装置のチャンバ内に空気が侵入しないようにして取り出される。混合装置は、ここではできる限りデットスペースが存在しないような設計となされている。混合装置の運転が開始される際に、その中に含まれる空気は流入成分によって短時間で完全に置換されるため、真空の適用が不要であり、有利である。
【0013】
システムは空気を排除した状態で稼働し、乳化される成分が混合装置内に連続的に導入されるため、混合装置内に存在する成分は、流出ラインの方向に連続的に輸送される。混合された成分は、流入口から出発して流出口まで混合装置中を通って徐々に流動する。
【0014】
本発明による混合装置においては、流入ラインを介して供給される成分はチャンバに入った後、最初に乱流混合領域を通って移動し、この領域内でまず攪拌ユニットによって加えられるせん断力によって乱流混合される。この際、混合生成物の粘度は既にかなり増大している。さらに混合物は次に流出ラインの方向に「浸透領域」を通って移動し、この領域内で、さらに激しい混合によって混合物の粘度はさらに増大し、この系は徐々に自己組織化系へと転換する。混合物に浸透する流動の乱れは、浸透領域への到達に伴い徐々に減少し、流出ラインの方向において流量比は次第に層流となる。それによって流出ラインに向かう混合物においてリオトロピック液晶相が生ずる。
【0015】
有利なことに、本発明による乳化装置の総エネルギー消費量は極めて低い。このように総エネルギー消費量が低いのは、従来の混合プロセスと比較して、混合装置中で混合し温度制御しなければならない量が、常にごく少量であることによるものである。特に、コストが大きく非常にエネルギ−消費の大きな加熱プロセス及び冷却プロセスがこうして最低限に抑えられ、このことが決定的に総エネルギー消費量の低減に貢献している。また、混合チャンバ内の混合物の滞留時間も非常に短い。1000kg/hの製造能力では、滞留時間は平均して0.5〜10秒である。これにより、流入ライン及びポンプもまた顕著に小さな寸法とすることができ、従ってポンプの駆動装置のエネルギー消費もまた顕著に少なくなる。
【0016】
流入ライン流出ライン間の距離と攪拌要素のアーム長さとの好適な比は、好ましくは3:1〜50:1の範囲であり、特に好ましくは5:1〜10:1の範囲であり、特には6:1〜8:1の範囲であるが、この比は有利なことに、特別の配管と相まって、特に効果的なトルクモーメントの利用が保証され、従って同時にモーターのエネルギー消費を最小限に抑えながら完全混合が達成されるという事実に貢献している。
【0017】
さらに、チャンバ直径に対するシャフト直径が通常よりも大きいことが、攪拌シャフト自体を生成物の温度制御のために利用できるようにし、このことが一方では、本発明による乳化装置の総エネルギー消費の低減化に貢献している。
【0018】
チャンバの高さに対する直径の比率が好適であること、及び層流の維持のために攪拌ユニットが最適化されていることの結果として、攪拌モーターの電力消費は、著しく低減化され、このことが本発明による装置の総エネルギー消費の低減に決定的に貢献している。このように構成部品の寸法を全体として小さくし得ることの結果として得られる非常にコンパクトで省スペースな構成が、本発明の混合装置の特徴である。
【0019】
磁気結合の使用も同様に、総エネルギ−消費の低減化に貢献する。モーターからモーターシャフトへの力の移動が、この場合永久磁石によって起こり、モーターは、外部ロータの回転に必要なエネルギーのみを印加すればよい。固定攪拌シャフトを有する内部ロータは、磁力によって動かされる。更なる利点は、滑り軸受と相まって気密な混合チャンバーの構築が可能であるということである。
【0020】
最適な乳化結果を得るため及びデッドスペースを回避するために、本発明の混合装置においては回転対称形状を有するチャンバが採用される。このような回転対称形状は、好ましくは中空円筒形(図2A)であるが、切頂円錐形(図2B)、漏斗形(図2D)、切頂ドーム形(図2F)、又は、例えば、切頂円錐状領域が中空円筒状領域に連結しているもののような、これらから構成される形状(図2C、E)であってもよい。この際、混合装置の直径は、入口側端部から出口側端部まで一定に保たれてもよく(図2A)、又は減少してもよい(図2B〜F)。
【0021】
特に好ましくは、本発明による混合装置においては、中空円筒形状若しくは切頂円錐形状を有するチャンバ、又は中空円筒状領域と切頂円錐状領域を組み合わせた形状を有するチャンバが採用される。中空円筒の直径が回転軸に関して一定であるのに対し、切頂円錐は、入口側端部の直径から出口側端部の直径までが連続的に減少するという点で有利に区別される。
【0022】
有利には、混合装置のチャンバ並びに/又は流入ライン及び流出ラインは、共に、又は個々に、温度制御可能である。
【0023】
混合装置への成分の供給は、少なくとも1つの流入ラインにより行われ、この流入ラインの直径は各成分及びその粘度に対して適合され、各相による完全な充填を保証する。好ましくは、本発明による混合装置は、少なくとも2つの流入ラインを有する。しかしながら、混合装置内で予備混合を行う場合は、混合装置は、流入ラインを1つだけ有していてもよい。乳化又は分散すべき成分は、例えば、それらが混合装置に到達する前にY形状連結部を用いることによって、共通の流入ラインへと導入されてもよい。当業者には公知の、固定式予備混合器又は受動型混合装置を、任意でこの共通流入ライン内に設けてもよい。本発明の趣旨の範囲内の構成成分は、純粋な物質であってもよいが、種々の物質の混合物であってもよい。
【0024】
この際、流入ラインから混合装置への入口の角度は、混合装置の回転軸に対して0°〜180°の範囲であってよい。流入ラインは、チャンバー内に、ジャケット表面を貫通して横方向に、又は底面を貫通して下方から、延びていてもよい。
【0025】
流入ライン及び流出ラインは任意の所望の高さにおいて、ジャケット表面の任意の所望の周囲上で、チャンバに接続され得る。供給成分の最適な混合を保証し、同時に供給成分の最大の滞留時間を保証するために、且つデッドスペースを回避するために、流入ラインの入口高さは好ましくは、チャンバの高さに基づいて、チャンバの下3分の1、好ましくは下4分の1に配置される。流出ラインの出口高さは好ましくは、チャンバの高さに基づいてチャンバの上3分の1、好ましくは上4分の1に配置される。
【0026】
流出ラインの直径は、少なくとも1つの又は第1の混合装置における高い粘度に基づいて構築される圧力が最小限に抑えられるが、同時に、確実に流出ラインがそれぞれの場合に混合物で完全充填されるような寸法となされる。
【0027】
例えば、三相OWエマルション、液晶真珠光沢剤、及び自己組織化系のリオトロピック液晶相のような幾つかの製品は、流入ラインの入口高さよりも上部で且つ流出ラインの出口高さより下部に位置する、第1混合装置の浸透領域への成分の付加的な遅延添加を必要とし得る。したがって、付加的な入口ラインをこの領域に配置してもよい。
【0028】
混合装置は、攪拌ユニットの回転軸が水平から鉛直まで任意の所望の位置をとり得るように、所望に応じて配向され得る。但し、好ましくは混合装置は、チャンバの対称軸が鉛直に配置され且つここで流入ラインが流出ラインよりも上部に取り付けられるようには配置されない。混合装置は、チャンバの対称軸が鉛直に配置され且つここで流入ラインが流出ラインよりも下部に取り付けられるように配置されるのが極めて好ましい。この場合、駆動モータは攪拌ユニットを上方から駆動するのが好ましいが、同様に、下方からの駆動も可能である。
【0029】
驚くべきことに、混合装置の形状に関して、チャンバの内径dに対する攪拌シャフトの直径dss、及び流入ライン流出ライン間の距離と攪拌要素のアームの長さとの比率が、供給される相の最適な混合を確保するために極めて重要であることが分かった。これに関しては、チャンバの内径dに対する攪拌シャフトの直径dssの比率は、好ましくは0.25〜0.75×dの範囲であり、特に好ましくは0.3〜0.7×dの範囲であり、とりわけ0.4〜0.6×dの範囲であり、また流入ライン流出ライン間の距離と攪拌要素のアームの長さとの比は、好ましくは3:1〜50:1の範囲であり、特に好ましくは5:1〜10:1の範囲であり、とりわけ6:1〜8:1の範囲であることが分かった。
【0030】
チャンバ直径に対する攪拌シャフトの直径がこのように通常よりも大きいことにより、さらには、攪拌シャフトとチャンバ壁との距離(当業者には「流動直径(flow diameter)」とも言われる)が常に小さくなるため、血栓様の流れが発生せず、層流が保証される。
【0031】
さらに、混合装置の形状に関して、混合装置チャンバの直径と、混合される成分が流入口から流出口まで移動すべき距離との比が、供給相の最適な混合を保証するために極めて重要であるということ分かった。これに関しては、直径と流入口流出口間の距離との比は、好ましくは1:50〜1:2、好ましくは1:30〜1:3、とりわけ1:15〜1:5であることが分かった。本発明の趣旨におけるチャンバ直径とは、チャンバの底部における直径である。
【0032】
直径と流入口流出口間の距離との比は、混合装置内の流動を制御するために極めて重要な役割を果たす。乳化の成功は、混合物が、混合装置の下部領域、即ち成分供給の領域中に存在する初期の乱流から、「浸透領域」を経て、層流領域に来たときに始めて保証される。各領域間の移行は流動的であるので、個々の領域を正確に限定することはここでは不可能である。
【0033】
リオトロピック液晶相の形成に必要な時間の長さは成分により異なるため、混合装置の長さは生成物に応じて適合され得る。自己組織化系の形成は、以下の要因、すなわち、系内の温度、水分含有量、混合物の組成、流動プロファイル、せん断速度、及び滞留時間により影響を受ける。
【0034】
本発明による乳化装置システムに使用される混合装置は、層状延伸条件下での液滴破壊を保証する層流を保証する攪拌ユニットを装備している。本発明の有利な実施形態によれば、攪拌要素の少なくとも1つの構成部品は、チャンバの内壁から空間をおき離され且つその内壁と平行に配置されている。
【0035】
好ましい攪拌ユニットは、フルブレード若しくは部分ブレード攪拌器、又はフルワイヤ若しくは部分ワイヤ攪拌器、又はこれらの組み合わせである。
【0036】
層状延伸条件下での液滴破壊は、有利なことに、生成されるエマルションにおいて、平均液滴径を中心に極めて小さな粒径分布をもたらす。粒径分布のグラフは、大抵の場合、ガウス曲線に極めて類似した形状を有する。本発明による装置を用いて得られる粒径は、エマルション及び/又は分散液の組成に応じて、50〜20,000nmの範囲である。
【0037】
チャンバの内径dに基づく攪拌ユニットの直径dは好ましくは、0.99〜0.6×dである。但し、攪拌ユニットは、チャンバ壁から少なくとも0.5mm離される。好ましくは、攪拌ユニットの直径は、0.6〜0.7×dであり、特に好ましくは0.99〜0.8×dである。
【0038】
チャンバの内径dに基づく攪拌シャフトの直径dssは、好ましくは0.25〜0.75×dの範囲であり、特に好ましくは0.3〜0.7×dの範囲であり、とりわけ0.4〜0.6×dの範囲である。
【0039】
チャンバ直径に対して攪拌シャフトの直径がこのように大きいことにより、攪拌シャフトとチャンバ壁との距離(当業者には「流動直径」とも言われる)が常に小さくなり、結果として血栓様の流れが形成される恐れがなく、層流が保証される。
【0040】
本発明による装置で採用され得るワイヤ攪拌器は、ワイヤが攪拌シャフトに取り付けられている点で特徴的である。驚くべきことに、これらのワイヤを蹄鉄状に又は角の丸い矩形状に曲げ、それらの端部で攪拌シャフトに取り付けると、これらを用いて非常に良好な混合がもたらされ、エネルギー消費の最小化が達成されるということが分かった。
【0041】
シャフト上での配置もまた混合される製品によって異なり得る。蹄鉄状又は矩形状に曲げられた1本以上のワイヤを攪拌シャフト上に配置することができる。ここではフルワイヤ攪拌器又は部分ワイヤ攪拌器のどちらを使用してもよい。
【0042】
フルワイヤ攪拌器(図3C)は、蹄鉄状の、又は丸みを帯びた矩形状に曲げられた少なくとも2本のワイヤからなり、それらのワイヤはシャフトに対して互いに反対側に取り付けられ、シャフトの上部及び下部領域においてシャフトに連結されていることを特徴とする。それらのワイヤはここでは好ましくは、中心軸に対して垂直に傾斜され及び/若しくは回転され、並びに/又は回転軸を基準として左又は右に0°〜90°、好ましくは0°〜45°、特に好ましくは0°〜25°の角度となされている。ワイヤの上方長さ及び下方長さは、同一の長さであっても異なる長さであってもよい。所望なだけ多くのワイヤをシャフトの周囲に配置できる。シャフトとワイヤとの間に生ずる空間には更なるワイヤ、又は任意所望の幾何学形状が存在していてよい。
【0043】
ワイヤ直径は好ましくは最大でシャフト直径の範囲にあり、最小で0.2mmを下回ることはなく、最大でもシャフト直径の15%、最小でも0.5mmのワイヤ直径が特に好ましく、とりわけシャフト直径の10%から最小でもシャフト直径の1%での範囲である。
【0044】
部分ワイヤ攪拌器(図3D)は、U字型又は蹄鉄型に曲げられた少なくとも2本のワイヤからなり、その端部は任意所望の高さでシャフトに連結されていることを特徴とする。ワイヤはここでは、好ましくは中心軸に対して垂直であり並びに/又は回転軸を基準として左又は右に0°〜90°、好ましくは0°〜45°、特に好ましくは0°〜25°だけ傾斜及び/若しくは回転されている。攪拌シャフトから放射状に伸びるワイヤの上方及び下方長さは同一の長さであっても異なる長さであってもよい。所望なだけ多くのワイヤをシャフトの周囲に配置することができる。シャフトとワイヤの間に生ずる空間中には更なるワイヤ又は任意所望の幾何学形状が存在していてよい。
【0045】
ワイヤ直径は好ましくは最大でシャフト直径の範囲にあり、最小で0.2mmを下回ることはなく、最大でもシャフト直径の15%、最小で0.5mmのワイヤ直径が特に好ましく、とりわけシャフト直径の10%からシャフト直径の少なくとも1%の範囲である。
【0046】
有利なワイヤ攪拌器と組み合わせて、チャンバ直径と攪拌シャフト直径が好ましい比率を有する結果として、特に効果的なトルク利用が保証され、これにより攪拌ユニットが混合される成分に加える力が最小限に抑えられ、結果として良好な混合が達成されると同時に、モーターのエネルギー消費が最小限に抑えられる。
【0047】
さらに、チャンバ直径に対してシャフト直径が通常よりも大きいことにより、攪拌シャフト自体を生成物の温度制御に利用できるようになされている。
【0048】
加えて、フルブレード攪拌器及び部分ブレード攪拌器が特に好適であることが分かった。
【0049】
フルブレード攪拌器(図3A)は、正方形、矩形、蹄鉄形、又は台形の少なくとも2枚の金属シートからなり、これらの金属シートは角が丸められて乱流の生成が防止され、その一辺がシャフトに連結されており、これらの金属シートは妨害されることなくシャフトの上部領域からシャフトの下部領域まで到達していることを特徴とする。この際、金属シートは好ましくは中心軸に対して垂直であり、並びに/又は中心軸の左又は右に0°〜90°、好ましくは0°〜45°、特に好ましくは0°〜25°の角度で傾斜及び/若しくは回転されている。金属シートの上縁部及び下縁部は、同一の長さであっても異なる長さであってもよい。所望なだけ多くの金属シートをシャフトの周囲に配置することができる。個々のブレードにはさらに、穴や打ち抜きなどの更なる幾何学的流路が設けられていてもよい。
【0050】
部分ブレード攪拌器(図3B)は、正方形、矩形、蹄鉄形、又は台形の、少なくとも2枚の金属シートからなり、その一辺がシャフトに任意所望の高さで連結されていることを特徴とする。この際、これらの金属シートは、好ましくは中心軸に対して垂直であり、並びに/又は中心軸の左又は右に0°〜90°、好ましくは0°〜45°、特に好ましくは0°〜25°の角度で傾斜され、及び/若しくは回転されている。金属シートの上縁部及び下縁部は同一の長さであっても異なる長さであってもよい。所望なだけ多くの金属シートをシャフトの周囲に配置することができる。個々の金属シートには更なる幾何学的流路が設けられていてもよい。
【0051】
当業者に公知の更なる攪拌ユニット及びそれらの特別な設計(例えば、アンカー攪拌器、溶解機ディスク、インターミグ(inter MIG)等の設計)を、混合装置中での生成物の混合のために導入することができる。同様に、1本の攪拌シャフト上で、多様な攪拌設計を互いに組み合わせることも可能である。
【0052】
本発明による混合装置において使用される攪拌ユニットは、さらに各攪拌シャフトが、好ましくは混合装置の上部領域及び下部領域において、回転安定な態様で、案内されているという点で特徴的である。高速における攪拌ユニットの不均衡をこうして可能な限り規制し又は回避して、必要な層流の構築に悪影響を与えたり、さらにはそれを妨害することもある乱流が生成されないように企図されている。例えば玉軸受、リニア玉軸受、滑り軸受、リニア滑り軸受等を使用してシャフトを案内することができる。シャフトは更なる回転安定性のために均衡化されていることが有利である。
【0053】
混合装置自体及び上述の攪拌器設計(特に上述のフルブレード攪拌器、部分ブレード攪拌器、フルワイヤ攪拌器、部分ワイヤ攪拌器)の両方を製造するための材料は、乳化される成分及び得られるエマルションの化学特性に適合される。好ましくは、本発明による混合装置における攪拌ユニットは、例えばステンレス鋼などの鋼鉄からなるが、建築用鋼材、プラスチック、例えば、PEEK,PTFE,PVC,若しくはプレキシガラス等、又は鋼鉄とプラスチックとの複合材料若しくは組み合わせからなるものであってもよい。
【0054】
本混合装置では、それらが自然に対向する、乳化される成分からの逆圧が、ごくわずかであることが想定されている。特殊な曲げワイヤ攪拌器によって、混合プロセス中であっても、生ずる圧力構築をごく最小限に抑えるということが達成される。このため、本混合装置は本質的に、常圧/低圧システムであるということができる。
【0055】
このことを達成するために、流出ラインの断面は、混合された成分の製品の総量が妨害されずに流出され得るように選択されなければならない。これに関しては、特に混合装置1において、極端な粘度の増大が観察されるが、このことは高粘度のリオトロピック液晶ゲル相の構築をもたらす。例えば配管、熱交換器等の更なるプロセス技術要素の寸法については、継続的な低圧システムを保証するために、これらが対向するシステム全体の圧力低下が最小限となるように注意を払う必要がある。製品及び装置構成に応じて、システム全体で0.5bar未満の圧力低下を実現できる。
【0056】
本発明による乳化装置においては、混合装置並びに流入ライン及び流出ラインの温度制御が特に簡便に且つ効果的に実現され、有利である。容量が小さいことにより、また混合装置におけるチャンバの体積に対する表面積の比率が、チャンバの形状に起因して大きいことにより、本発明による装置においては、従来の乳化装置と比較して製品のより良好に制御された温度管理が保証される。
【0057】
混合装置の加熱に関しては、二重ジャケットが特に好適である。二重ジャケットは、例えば蒸気などの気体、又は、例えば水、加熱油等の液体による加熱が可能である。さらには、例えば加熱ワイヤ、加熱ケーブル、又は加熱カートリッジ等の電気的加熱もまた可能である。
【0058】
チャンバ中並びに流入ライン及び流出ライン中における乳化される成分の温度制御のためには、例えば冷却リブ等の受動的熱交換プロセス、例えば管束式熱交換器等の能動的プロセス、及び両方の方法の組み合わせを利用して、できるだけ均一且つ迅速な温度制御を保証することができる。
【0059】
乳化される成分の外側から内側までの温度制御のためには、混合装置は、混合装置の外側及び/又は内側に取り付けられ、例えばサーモスタットを用いて冷媒/加熱媒体を供給される、二重ジャケットやフルチューブ又はハーフチューブ冷却コイルを装備するのが好ましい。
【0060】
好ましくは、温度制御は、二重ジャケットの内部に邪魔板を追加することによって改善される。直径と、流入ライン流出ライン間の距離との比を最適化することによって、さらに、混合材料の流量を調節して最適な温度交換が達成されるようにすることが可能となる。
【0061】
本発明による装置は、基本的にはその処方における全成分を加熱する必要はなく、室温で十分に流動しない成分のみをそれらが流動するまで加熱すればよいという点で従来のバッチ法とは区別される。本発明による混合装置の実施形態、特に長さ/直径比は、熱制御に有利であり、攪拌により散逸するエネルギーを制御された熱供給に利用できる。
【0062】
更なる実施形態では、本発明による混合装置は、成分の層流を促進する邪魔板を装備している。
【0063】
有利な実施形態によれば、邪魔板及び/又は攪拌ユニットは温度制御されることができ、それにより混合物の温度制御が可能となる。
【0064】
好ましくは、前記少なくとも1つの混合装置は、乳化される成分が乱流領域と浸透領域とを通過することによってリオトロピック液晶相に転換される、回転対称なチャンバを含む。
【0065】
本発明の更なる実施形態では、前記少なくとも1つの混合装置は、直列に連結された複数の回転対称チャンバを含む。それにより、構造上の理由で前記少なくとも1つの混合装置の高さが制限される場合、混合プロセスを連続チャンバの数に分けることが可能となる。この際成分は、3つの異なる領域、乱流領域、浸透領域、及び層流領域を、単一のチャンバ内で通過するのではなく、複数のチャンバ内において通過する。
【0066】
本発明による乳化装置は、最も単純な場合には、前述の記載に対応する少なくとも1つの混合装置を含む。
【0067】
しかしながら通例では、本発明による乳化装置は少なくとも2つの混合装置を含み、それらは1つの後ろに他が直列に連結され、種々の成分が連続して又は同時に供給されて互いに混合される。この際、第1の混合装置中で生成される混合物の粘度は、常にそれ以降の混合装置中での粘度以上となる。この場合、少なくとも第1の混合装置は、構造及び機能の面で、前記少なくとも1つの混合装置に対応していなければならず、即ち、第1の混合装置においては、成分がまず乱流混合され、次いで浸透領域を通過することによってリオトロピック液晶状態に達するという特別な流動制御が保証されなければならない。
【0068】
WOエマルションのような従来の2相系だけでなく、ゲルネットワーク相を有さないOWエマルションの製造において、本発明による乳化装置では、第1混合装置中の内相(分散相)と外相(連続相)との比率は、常にそれ以降の混合装置中よりも大きくなる。
【0069】
本発明による乳化装置ではさらに、複数の混合装置を、1つを他の後ろに直列に連結するだけでなく、互いに上下に直列連結することも可能である。この場合、個々の混合装置をハウジング内に共に収容して、混合装置の分離が外側から見えないようにすることもできる。
【0070】
本発明による乳化装置における前記製品の製造の別の経路では、第1混合装置中の高粘度の内容物がそれ以降の混合装置に導かれる。この場合、それ以降の混合装置への供給口は、入口ラインの高さが混合装置の高さに基づき、好ましくは下3分の1、好ましくは下4分の1となるように配置される。
【0071】
第1混合装置の下流に連結された混合装置においては、連続相に対する内相の割合を大きくすることはもはや必要ではない。本発明による乳化装置の一実施形態では、第1混合装置中で、乳化される成分を層状の液晶相に転換して、第2混合装置中で外相を添加することにより所望の濃度に希釈する。
【0072】
本発明による乳化装置はまた、以下に示すような、適切な周辺部を有する。即ち、
少なくとも2つの成分のための貯蔵容器、
前記少なくとも1つの混合装置にそれらの成分を供給するための連結ライン、関連のポンプ及びバルブ、
成分の取出しのための連結ライン、
プロセス段階を管理制御するための制御装置、
プロセス変数を視覚化し入力するための操作部を有する表示装置、等を含む。
【0073】
混合装置及び連結ラインは温度制御可能である。
【0074】
混合装置及び連結ラインは、製品及びプロセス制御のためのセンサーを有することができる。さらに、個々の混合装置の流出ラインは、例えば直接又はバイパス中での連続粒径測定、温度測定、圧力測定、導電率測定、粘度測定等を可能にする更なるセンサーを有することができる。
【0075】
最終生成物の製品品質は、第1の攪拌段階における本発明による装置内で優先的に決定される。
【0076】
さらに、本発明による混合装置の流入ライン及び流出ラインにおいて、又は複数の混合装置において、本発明によるシステムの混合装置間に熱交換器を取り付けることができる。この場合、管束式熱交換器を製品流中の有孔邪魔板及び加熱及び冷却回路中の邪魔板と組み合わせて導入することが非常に有効である。生成物量が比較的少ないことに起因して、極めてコンパクトで効率的な熱交換器の構成が可能であり、有利である。これらの熱交換器は、連続的な構成法及び直列に連結された構成法の両方で採用され得る。他の熱交換器構成形体、例えば冷却コイル、管束式熱交換器、二重管式熱交換器、リブ管式熱交換機、螺旋帯式熱交換器、プレート式熱交換器、貯蔵式熱交換器、及び他の特殊な設計の導入も同様に可能である。
【0077】
冷媒としては、例えば窒素等の気体、例えば水又は加熱油等の液体の両方を使用することができる。
【0078】
上述の熱交換器を用いれば、冷却と、加熱もまた同様に可能である。この場合もまた、所望の製品のための好適な加熱/冷却は当業者によって選択され得る。
【0079】
乳化装置の用途に応じて、加熱ユニットと冷却ユニットを組み合わせることも任意で可能である。このこともまた、上述したように二重ジャケットと加熱/冷却コイル又は適切な熱交換器を使用することによって簡単且つ効果的に解決することができる。
【0080】
より小さな乳化装置では、好ましくは優先制御によって監視及び運転される、加熱/冷却浴(サーモスタット)が、そのために特に好適である。さらには、これらのサーモスタットを使用すれば独立運転もまた可能となる。サーモスタットは一般に外部温度センサーの取り付けも可能であるので、生成物流に導入することができる。サーモスタットはこのとき必要とされる加熱又は冷却能力を独立に制御して、それにより最適な製品温度を提供する。混合装置の温度の調整をサーモスタットに任せることができるため、この方法の更なる利点は、制御を切り離すことができることである。
【0081】
混合装置中の成分供給の温度を最適化することによっても、製品温度の最適化を同様に達成することができる。これに関連して、貯蔵容器から混合装置への入口までの成分の流入経路もまた、最適化することができ、これを利用して、成分が乳化されるための最適な温度で成分流が混合装置に到達するようにすることができる。
【0082】
本発明による乳化装置は、以下を含む。
− 少なくとも1つの本発明による混合装置、
− 混合装置の攪拌ユニットのための、少なくとも1つのモーター、
− 乳化される相のための、少なくとも2つの貯蔵容器であって、流入ラインによって混合装置に連結され、ここから輸送装置を用いて成分が混合装置中に空気を含まずに供給される、貯蔵容器、
− 成分又は成分混合物につき、少なくとも1つの輸送装置、
− 任意で、入力流監視センサー及び/又は出力流監視センサーであって、これを用いて任意で自動品質制御を同時に行うことが可能であるセンサー、
− 任意で、乳化装置の温度制御、並びに成分及び成分混合物の供給及び取出しのためのラインシテムの温度制御のための、少なくとも1つの装置、
− 混合装置の監視制御、並びに成分及び成分混合物の供給及び取出しの監視制御のための制御装置、
− 任意で、データの視覚化及び入力のための操作パネルを有する表示装置。
【0083】
しかしながら、通例では乳化装置は、少なくとも2つの混合装置を含み、これらは1つの後ろに他が連結され、種々の成分が互いに逐次的に混合される。ここで、第1混合装置中で製造された混合物の粘度は常に、それ以降の混合装置中の粘度以上である。少なくとも第1混合装置は、ここでは前記少なくとも1つの混合装置に構造及び機能的に対応していなければならず、即ち、第1混合装置中で、成分がまず乱流混合され、次いで浸透領域を通る流路によってリオトロピック液晶状態に到達するという、特別な流動管理が保証されなければならない。
【0084】
WOエマルションのような従来の二相系だけでなく、ゲルネットワーク相をもたないOWエマルションの製造においても、本発明による乳化装置では、第1混合装置中の内相(分散相)と外相(連続相)との比率が常に、それ以降の混合装置中よりも大きくなる。
【0085】
本発明によるシステム全体は、記憶プログラム可能な制御によって制御される。これは、例えば、混合装置の回転数、個々の成分の流入量、ポンプの回転数、添加される個々の相の温度と圧力、及び運転に必要な他のすべてのパラメータを監視する。このプログラム制御は、質量又は流量メータと協働して、個々の成分の各混合装置への流入量を監視制御する。それは、光学的又は音声出力装置を用いて予め規定した警告及び障害を伝達することができる。この際、光学的及び視覚的出力装置は、例えば制御センター内といった、本発明による装置とは別の場所に置くことができる。
【0086】
他の制御法、例えばSPSソフトウェア又はPC制御もまた同様に、幾つかの制御法の組み合わせとして可能である。
【0087】
制御装置と一体化するか接続されたアナログ電話回線又はISDN回線接続用遠隔管理モジュールを用い、モバイル無線ネットワーク又はLAN若しくはWLANネットワークへのアクセスを用いて、本発明による装置の遠隔管理を行うことが可能であり、或いは、警告やエラーメッセージを送ったり、本発明によるシステム全体を制御したりすることが可能である。
【0088】
さらに、制御装置は、種々の製品のための1つ以上の処方が記憶される処方モジュールを有していてもよい。各処方はこの場合、複数のデータセットから構成されていてもよい。データセット中には、例えば、回転数、流量比等の運転に必要なパラメータが保持される。処方を呼び出したのち、データセットを時間制御により又は特定の事象のトリガー、例えば特定温度への到達後に実行する。これにより、製品を常に同じ品質で製造することが保証され得る。
【0089】
本発明を下記の図面及び実施例によってより詳しく例示するが、これらは本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】混合装置を含む乳化装置である。
図2】種々の混合装置形状である。
図3】種々の攪拌ユニットである。
図4】浸透領域に更なる供給ラインを有する混合装置を含む乳化装置である。
図5】2つの混合装置を含む乳化装置である。
図6】2つの混合装置と熱交換器とを含む乳化装置である。
図7】システムスキームである。
図8】エネルギー図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
図1は、すべての面において密封された中空円筒形の形体の回転対称チャンバ2を有する混合装置1を含む乳化装置を断面で示している。チャンバ内には、攪拌シャフト10が突出し、該攪拌シャフトには、図3Dに示すような攪拌ワイヤ11が配置されている。攪拌シャフト10は、モーター12によって駆動され、軸受及び封止具8によって案内されている。また、攪拌シャフト10はさらに、チャンバ2の底部において軸受9中に案内されている。チャンバ2はその下部に、乳化される成分A及びBの空気を含まない供給のための流入ライン5または6を有する。チャンバ2の上部には、流出ライン7が配置されている。流入ライン及び流出ラインは、同様に温度制御され、対応する供給ポンプ(図1に図示せず)を有している。
【0092】
流入ライン5、6と流出ライン7の間の距離と、チャンバ2の直径との比率は、およそ3.5である。
【0093】
流入ライン5,6と流出ライン7の間の距離と、ワイヤ攪拌器の攪拌アームの長さとの比は、およそ15:1である。
【0094】
チャンバ2はサーモスタットジャケット3によって包囲されており、サーモスタット4と組み合わされて、混合物の温度制御を可能にしている。チャンバ直径と比較して流入口流出口間の距離が大きいことにより、混合物を制御された態様で加熱することができ、その結果、攪拌器により生ずるエネルギーの入力による混合物の不安定化が起こらない。
【0095】
図1による乳化装置は、例えば、1時間当たり100kgのラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)の希釈において、以下に示すように使用され得る。
【0096】
混合装置1内に、相Aのポンプを用いて41.4kg/hの70%SLESを流入ライン5を介して連続的に導入し、相Bのポンプを用いて58.6kg/hの水を流入ライン6を介して連続的に導入し、毎分3000回転で混合する。
【0097】
混合装置1はすべての面において密封されており、空気を排除した状態で稼働される。混合される成分A及びBは流動可能な流れとして混合装置1のチャンバ2へと導入され、攪拌ワイヤ11を含む攪拌ユニット10によって、混合された成分が流出ライン7に到達するまで混合されて、混合装置1のチャンバ2内に空気が侵入しないようにして排出される。
【0098】
混合装置を稼働させる際、そこに含まれている空気は、流入成分A及びBによって短時間で完全に置換されるため、真空を適用する必要がなく、有利である。
【0099】
混合された成分A及びBは、混合装置1のチャンバ2内を流入口5、6から出発し流出口7まで徐々に通過する。流入ライン5、6を介してチャンバ2に導入された成分A及びBはまず、流入口側の乱流混合領域を通って移動し、攪拌ワイヤ11によって加えられるせん断力によって乱流混合される。その上部に繋がる浸透混合領域において、それらの成分はさらに混合され、乱流は減少し、流出口側の層流混合領域においてリオトロピックな層状液晶相が構築されるまで粘度が上昇する。混合物の温度は、サーモスタットジャケット3によって一定に保たれる。
【0100】
攪拌段階の出口において、濃度28%のSLESが得られる。
【0101】
図4は、一段階乳化装置を断面で示しており、この装置は、図1と同様の構成及び寸法となされているが、さらに成分Cのための流入ライン13を有する。流入ライン及び流出ラインは温度制御され、ポンプ(図4には図示せず)に動作可能に連結されている。
【0102】
図4による乳化装置は、単純なO/W噴霧液の製造のために以下のように利用され得る。
【0103】
成分A:水性乳化剤相
成分B:油相
成分C:水相
【0104】
混合装置1のチャンバ2中に、成分Aを流入ライン5を介して8.1kg/hで、また成分Bを流入ライン6を介して22.5kg/hで、空気を含まないように連続的に導入し、およそ毎分3000回転で混合する。成分A及びBは、攪拌ワイヤ11を有する攪拌ユニット10によって混合される。混合物がチャンバ長さのおよそ60%を通過した後、成分Cを流入ライン13を介して69.4kg/hで混合チャンバ内に計り入れ、混合された成分が流出ライン7に到達するまで混合する。混合装置1を稼働する際、その中に含まれている空気は、流入成分によって短時間で完全に置換されるため、真空を適用する必要がなく有利である。
【0105】
混合される成分A及びBは、流入口5、6から出発して流出口7まで混合装置1内を徐々に通過する。流入ライン5、6を介してチャンバ2に導入された成分A及びBはまず、流入口側の乱流混合領域を通過し、ここで攪拌ワイヤ11によって加えられるせん断力によって乱流混合される。その上部に繋がる浸透混合領域において、成分A及びBはさらに混合され、乱流は減少し、流出口側の層流混合領域においてリオトロピック液晶相が構築されるまで粘度が上昇するが、ここで成分Cを流入ライン13を介して供給する。混合物の温度は、サーモスタットジャケット3によって一定に保たれる。
【0106】
図5は、2つの混合装置1及び1’を含む乳化装置を断面で示している。
【0107】
図5による乳化装置は、直列に連結された2つの混合装置1及び1’、後に続く混合装置1’の流入ラインと連結されている第1混合装置1の流出ライン7からなる点において特徴的である。各混合装置1及び1’はサーモスタットジャケット3又は3’を有し、所望に応じてサーモスタット4又は4’を用いて個別に温度制御される。攪拌要素は、図3Dの例示に従って攪拌シャフトに固着されたワイヤ攪拌器である。
【0108】
混合装置1の、流入ライン5及び6と流出ライン7の間の距離とチャンバ2の直径との比率は、およそ2.0である。
【0109】
流入ライン5及び6と流出ライン7の間の距離と、ワイヤ攪拌器の攪拌アームの長さとの比は、8:1である。
【0110】
混合装置1’のチャンバ2’は、構成及び寸法において混合装置1のチャンバ2に対応している。
【0111】
混合装置1及び1’は、粘度センサー、圧力センサー及び温度センサーを装備している(ここでは図示せず)。混合装置1及び1’は、すべての面において密封されている。
【0112】
図5による乳化装置は、単純なOWエマルションの製造(120kg/h)のために以下のように利用され得る。
【0113】
成分A:増粘剤の中和のための塩基を添加された乳化剤
成分B:油相
成分C:増粘剤を有する水相。
【0114】
混合装置1のチャンバ2中に、成分Aを流入ライン5を介して5.65kg/hで、また成分Bを流入ライン6を介して21.93kg/hで、連続的に導入し、およそ毎分3000回転で混合する。成分A及びBは、攪拌ワイヤ11を有する攪拌ユニット10によって、混合された成分が流出ライン7に到達するまで混合され、混合装置1のチャンバ2内に空気が侵入しないようにして混合装置1’のチャンバ2’へと導出される。混合装置1及び1’を稼働する際、その中に含まれている空気は、流入成分によって短時間で完全に置換されるため、真空を適用する必要がなく有利である。
【0115】
混合される成分A及びBは、流入口5、6から出発して流出口7まで混合装置1内を徐々に通過する。流入ライン5、6を介してチャンバ2に導入された成分A及びBはまず、流入口側の乱流混合領域を通過し、ここで攪拌ワイヤ11によって加えられるせん断力によって乱流混合される。その上部に繋がる浸透混合領域において、成分A及びBはさらに混合され、乱流は減少し、流出口側の層流混合領域においてリオトロピックな層状液晶相が構築されるまで粘度が上昇する。混合物の温度は、サーモスタットジャケット3によって一定に保たれる。
【0116】
相Cは、成分A及びBの高粘度の混合物と一緒に、流入ライン13を介してチャンバ2’に72.42kg/hで導入される。攪拌ユニット10及び攪拌ワイヤ11によって、それらの成分は、流出ライン7’に到達するまで混合され、チャンバ2’に空気が侵入しないようにして排出される。
【0117】
チャンバ2’中では、成分A及びBの高粘度の混合物が成分Cの水相により希釈されて、粒径400nm及び粘度15000mPasの流動性エマルションを生ずる。ここでの粘度はエマルションの安定化に役立ち、皮膚感覚に好影響をもたらす。
【0118】
図6は、2つの混合装置1及び1’と、中間部に連結されたプレート式熱交換機15とを含む乳化装置を断面で示している。図6による乳化装置は、図5による乳化装置と構成及び寸法において類似している。成分Cのための追加の流入ライン13及びチャンバ2への流入口までの流出ライン7におけるプレート式熱交換器15が異なっている。
【0119】
図6による乳化装置は、真珠光沢剤の製造(100kg/h)のために以下のように使用され得る。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
混合装置1のチャンバ2内に、成分Aは、22kg/h及び室温で流入ライン5を介して連続導入され、成分Bは、24kg/h及び温度80℃で流入ライン6を介して導入され、およそ毎分3000回転で混合される。流入ライン6は、成分Bが加熱されるように温度制御されて、温度80℃でチャンバ2へと導入される。
【0125】
攪拌ワイヤ11を有する攪拌ユニット10によって混合された成分A及びBが流入ライン13の領域に到達したとき、成分Cが、21kg/h及び温度65℃で、流入ライン13を介して混合物に供給される。チャンバ2’のサーモスタットジャケット3がサーモスタット4によって65℃に温度制御され、成分A、B、及びCは65℃で混合される。
【0126】
成分Cの供給後、混合物は、流出ライン7の領域においてリオトロピック液晶状態に到達するまで、浸透領域を通って移動する。
【0127】
流出ライン7を介して取り出されたリオトロピック液晶混合物がチャンバ2’へと供給される前に、この混合物は、ライン7’に連結されたプレート式熱交換器15によって40℃に冷却される。この冷却は、混合装置1中で調製される液晶前駆体が温度の影響を受けやすいため、必要とされる。液晶前駆体は次いで、加熱/冷却ジャケットによって温度5℃で向流冷却されながら第2混合装置1’内で相Dにより希釈される。製品品質はこの温度プロファイルを維持することによってのみ達成できる。冷却相Dによる希釈が、40℃超で行われた場合には、製品への品質要件は満足されない恐れがある。製品が希釈前に冷却されすぎると、同様に品質需要を満たす製品が得られない。このことは、液晶前駆体が温度によって異なる液晶構造を取り、それによって、希釈時に異なる最終状態が得られるという事実に起因する。
【0128】
図7には、シャンプーの製造のための完全な乳化システムの概要が示されている。乳化システムは、3つの混合装置1、1’及び1’’と、混合される成分A〜Dのための貯蔵容器A〜Dと、成分A〜Dを適切な混合装置に供給するための、関連ポンプE、E’、E’’、E’’’及びバルブを有する連結ラインと、成分の取り出しのための連結ラインと、混合装置1、1’、及び1’’の温度制御のためのサーモスタット4、4’、及び4’’と、すべてのプロセス段階を監視し制御する制御装置(図7には図示せず)と、プロセス変数の視覚化及び入力のための操作部を有する表示装置(図7には図示せず)と、を含む。
【0129】
混合装置1と1’の間、さらには1’と1’’の間の連結ラインは、混合チャンバの温度制御のための温度センサーTを装備している。
【0130】
混合装置及び連結ラインは、製品及びプロセス制御のためのセンサーを有している(図7には図示せず)。
【0131】
また、個々の混合装置の流出ラインはさらに、例えば、直接又はバイパス中での粒径の連続測定、温度測定、圧力測定等を可能にするセンサーを有していてもよい。
【0132】
図7によるシステムについて、シャンプーの製造の乳化例を用いて説明する。
【0133】
以下の成分が貯蔵タンクに貯蔵されている。
成分A:ラウレス硫酸ナトリウム(SLES)70%
成分B:水、防腐剤、共界面活性剤
成分C:真珠光沢剤
成分D:水、塩、着色剤
【0134】
サーモスタットジャケットをそれぞれ有しそれら自体の加熱/冷却回路を有する3つの混合装置1、1’、1’’が、中心的な構成要素を形成する。混合装置1中では、個々の成分(成分A、成分B,成分C)から高粘度ゲル相が生成される。混合装置1’は、それに続くゲル相の攪拌のために機能し、ゲル相は次いで混合装置1’’に導かれ、そこで成分Dにより希釈される。
【0135】
成分A、成分B,及び成分Cは、偏心のスパイラルポンプE、E’、E’’を用いて吸引され、第1混合装置1’に、1:3.71:0.36の比率で供給される。成分Dは、ポンプE’’’を用いて、成分Aに対して2.21の比率で混合装置1’’に供給される。ポンプは、それらが均一でパルス化しない成分流を供給するように選択される。各ポンプは、100kg〜300kg/hの総生成物量を生ずるのに十分な最低限の安定供給流を供給しなければならない。偏心スパイラルポンプは、変化する粘度に関して影響を受けにくいので、図示のスキームにおいては極めて好適である。
【0136】
図7に概略的に示したシステムにおいては、個々の生成物流に対する流量計が存在しないという事実を考慮すると、直線的な輸送特性線を持つポンプを選択するのが有利である。したがって、輸送速度の変化は、単純に計算できる。流量計(体積又は質量)を有するシステムでは、非線形ポンプ、例えば歯車ポンプもまた問題なく使用できる。
【0137】
ポンプEは5barまでの逆圧に対して設計されている。成分A〜成分Dの出口を用いて、各ポンプの輸送量を、設定された回転速度において単純に決定できる。100rpmにおける輸送量の決定についてここで示す。対応する輸送流を予め風袋の重さを測定してある容器中に1分間の間捕捉し計量する。このプロセスを3回繰り返し、3度の輸送流のすべてから平均値を求める。こうして平均されたポンプの輸送流を、今度は3つの設定値を用いて処方に必要な所望の輸送流に変換する。
【0138】
こうして決定された速度を用いて、ポンプ及び攪拌ユニットのモーターを起動する。ポンプは、最終製品を得るために、個々の成分の必要とされる量のみを混合装置に輸送する。内蔵の圧力センサーPにより、生ずる圧力を制御し、配管又は混合装置中で圧力が高くなりすぎた場合には、制御装置がそれに呼応して警告を発し、システムを停止し、又は同様の対策を講じることができる。個々の混合装置の流出ラインに内蔵された温度センサーにより、製品温度を測定して二重ジャケットの温度制御装置を制御するために利用したり、他の態様で制御装置又は周辺機器において処理することができる。
【0139】
前記シャンプーの製造において、完全なシステムの全体的な効率を、総流量の関数として測定した。
【0140】
総電力消費を、処理量100kg/h、150kg/h、200kg/h、250kg/h、300kg/h、及び400kg/hにおいて測定した。測定結果を、XYグラフにプロットした(図8)。
【0141】
条件:
3つの混合チャンバを有する乳化システム
チャンバ直径:50mm
攪拌ツール:部分ワイヤ攪拌器
【0142】
【0143】
値を統計プログラムを用いて外挿すると、処理量10000kg/hでも、総エネルギー必要量は2kWを超えない。
【符号の説明】
【0144】
1 混合装置
2 チャンバ
3 サーモスタットジャケット
4 サーモスタット
5 流入ライン
6 流入ライン
7 流出ライン
8 軸受及び封止具
9 軸受
10 攪拌シャフト
11 攪拌ワイヤ
12 モーター
13 流入ライン
15 プレート式熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8