【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下を含む、エマルション及び/又は分散液の連続製造のための乳化装置によって、前記目的が達成される。
a)少なくとも1つの混合装置であって、
− すべての面において気密に封止された回転対称チャンバと、
− 自由流動成分の導入のための少なくとも1つの流入ラインと、
− 混合された自由流動成分の排出のための少なくとも1つの流出ラインと、
− 層流を確保し、攪拌シャフトに固着された攪拌要素を含む攪拌ユニットであって、その回転軸が前記チャンバの対称軸に沿って伸びており、その攪拌シャフトが少なくとも1つの面に案内されている、攪拌ユニットと、
を含み、
前記少なくとも1つの流入ラインは、前記少なくとも1つの流出ラインの上流又はその流出ラインよりも下部に配置されており、
前記流入ライン流出ライン間の距離と、前記チャンバの直径との比は、≧2:1であり、
前記流入ライン流出ライン間の距離と、前記攪拌要素の攪拌アームの長さとの比は、3:1から50:1までであり、
前記チャンバの内径に基づく前記攪拌シャフトの直径の比率は、該チャンバの内径の0.25〜0.75倍であり、
結果として、前記少なくとも1つの流入ラインを介して前記混合装置に導入される成分は、攪拌され、且つ
前記攪拌ユニットによって加えられるせん断力によって成分が乱流混合される、前記流入口側の乱流混合領域と、
成分がさらに混合され乱流が減少する、下流の浸透混合領域と、
成分の混合物中にリオトロピック液晶相が構築される、流出口側の層流混合領域と、
によって、流出ラインの方向に連続輸送される、
混合装置、
b)前記攪拌ユニットのための少なくとも1つの駆動装置、及び
c)成分又は成分混合物につき少なくとも1つの輸送装置。
【0008】
前記浸透混合領域は、混合物が乱流から層流へと変化する遷移領域である。乱流混合に続く浸透領域において、液滴の連続的な粉砕又は液晶相の形成によって粘度が増大し、乱流は減少する。臨界レイノルズ数に達した後、混合物は層流混合領域へと移行する。混合プロセス中又は液晶相の形成中の制御されたエネルギー効率のよい液滴の切断が、次いで層流混合領域内で延伸流の条件下で起こる。
【0009】
前記少なくとも1つの混合装置のチャンバは、回転対称であり、好ましくは中空円筒形状である。しかしながら、チャンバは、切頂円錐形、漏斗形、切頂ドーム型、又はこれらの幾何学形状から構成される形状を有していてもよく、この際、チャンバの直径は流入ラインから流出ラインまで一定に保たれるか、又は減少する。攪拌ユニットはこの回転対称チャンバの形状に適合される。
【0010】
チャンバの内径d
kに対する攪拌シャフトの直径d
ssは、好ましくは0.25〜0.75×d
kの範囲内にあり、流入ライン流出ライン間の距離と攪拌要素のアームの長さとの比は、好ましくは3:1〜50:1の範囲内にあり、特に好ましくは5:1〜10:1の範囲内にあり、とりわけ6:1〜8:1の範囲内にある。チャンバ直径に対して攪拌シャフトの直径が通常よりも大きいことは、さらに、次のような結果をもたらす。即ち、攪拌シャフトとチャンバ壁との距離(当業者により「流体直径」と表わされる)が常に小さくなるため、血栓様の流れが生ずる恐れなく、層流が確保される。
【0011】
前記少なくとも1つの混合装置の、流入ライン流出ライン間の距離と底部におけるチャンバ直径との比は、≧2:1である。中空円筒から外れる回転対称チャンバの一形体においては、流入ライン流出ライン間の距離とチャンバ直径との比は、少なくとも1つの混合装置の流入ラインの領域においても同様に、≧2:1である。
【0012】
混合装置は、すべての面において密封されており、空気を排除した状態で運転される。混合されるべき成分は、混合装置のチャンバ内に流体流として導入され、混合された成分が流出ラインに到達するまで攪拌ユニットによって混合され、混合装置のチャンバ内に空気が侵入しないようにして取り出される。混合装置は、ここではできる限りデットスペースが存在しないような設計となされている。混合装置の運転が開始される際に、その中に含まれる空気は流入成分によって短時間で完全に置換されるため、真空の適用が不要であり、有利である。
【0013】
システムは空気を排除した状態で稼働し、乳化される成分が混合装置内に連続的に導入されるため、混合装置内に存在する成分は、流出ラインの方向に連続的に輸送される。混合された成分は、流入口から出発して流出口まで混合装置中を通って徐々に流動する。
【0014】
本発明による混合装置においては、流入ラインを介して供給される成分はチャンバに入った後、最初に乱流混合領域を通って移動し、この領域内でまず攪拌ユニットによって加えられるせん断力によって乱流混合される。この際、混合生成物の粘度は既にかなり増大している。さらに混合物は次に流出ラインの方向に「浸透領域」を通って移動し、この領域内で、さらに激しい混合によって混合物の粘度はさらに増大し、この系は徐々に自己組織化系へと転換する。混合物に浸透する流動の乱れは、浸透領域への到達に伴い徐々に減少し、流出ラインの方向において流量比は次第に層流となる。それによって流出ラインに向かう混合物においてリオトロピック液晶相が生ずる。
【0015】
有利なことに、本発明による乳化装置の総エネルギー消費量は極めて低い。このように総エネルギー消費量が低いのは、従来の混合プロセスと比較して、混合装置中で混合し温度制御しなければならない量が、常にごく少量であることによるものである。特に、コストが大きく非常にエネルギ−消費の大きな加熱プロセス及び冷却プロセスがこうして最低限に抑えられ、このことが決定的に総エネルギー消費量の低減に貢献している。また、混合チャンバ内の混合物の滞留時間も非常に短い。1000kg/hの製造能力では、滞留時間は平均して0.5〜10秒である。これにより、流入ライン及びポンプもまた顕著に小さな寸法とすることができ、従ってポンプの駆動装置のエネルギー消費もまた顕著に少なくなる。
【0016】
流入ライン流出ライン間の距離と攪拌要素のアーム長さとの好適な比は、好ましくは3:1〜50:1の範囲であり、特に好ましくは5:1〜10:1の範囲であり、特には6:1〜8:1の範囲であるが、この比は有利なことに、特別の配管と相まって、特に効果的なトルクモーメントの利用が保証され、従って同時にモーターのエネルギー消費を最小限に抑えながら完全混合が達成されるという事実に貢献している。
【0017】
さらに、チャンバ直径に対するシャフト直径が通常よりも大きいことが、攪拌シャフト自体を生成物の温度制御のために利用できるようにし、このことが一方では、本発明による乳化装置の総エネルギー消費の低減化に貢献している。
【0018】
チャンバの高さに対する直径の比率が好適であること、及び層流の維持のために攪拌ユニットが最適化されていることの結果として、攪拌モーターの電力消費は、著しく低減化され、このことが本発明による装置の総エネルギー消費の低減に決定的に貢献している。このように構成部品の寸法を全体として小さくし得ることの結果として得られる非常にコンパクトで省スペースな構成が、本発明の混合装置の特徴である。
【0019】
磁気結合の使用も同様に、総エネルギ−消費の低減化に貢献する。モーターからモーターシャフトへの力の移動が、この場合永久磁石によって起こり、モーターは、外部ロータの回転に必要なエネルギーのみを印加すればよい。固定攪拌シャフトを有する内部ロータは、磁力によって動かされる。更なる利点は、滑り軸受と相まって気密な混合チャンバーの構築が可能であるということである。
【0020】
最適な乳化結果を得るため及びデッドスペースを回避するために、本発明の混合装置においては回転対称形状を有するチャンバが採用される。このような回転対称形状は、好ましくは中空円筒形(
図2A)であるが、切頂円錐形(
図2B)、漏斗形(
図2D)、切頂ドーム形(
図2F)、又は、例えば、切頂円錐状領域が中空円筒状領域に連結しているもののような、これらから構成される形状(
図2C、E)であってもよい。この際、混合装置の直径は、入口側端部から出口側端部まで一定に保たれてもよく(
図2A)、又は減少してもよい(
図2B〜F)。
【0021】
特に好ましくは、本発明による混合装置においては、中空円筒形状若しくは切頂円錐形状を有するチャンバ、又は中空円筒状領域と切頂円錐状領域を組み合わせた形状を有するチャンバが採用される。中空円筒の直径が回転軸に関して一定であるのに対し、切頂円錐は、入口側端部の直径から出口側端部の直径までが連続的に減少するという点で有利に区別される。
【0022】
有利には、混合装置のチャンバ並びに/又は流入ライン及び流出ラインは、共に、又は個々に、温度制御可能である。
【0023】
混合装置への成分の供給は、少なくとも1つの流入ラインにより行われ、この流入ラインの直径は各成分及びその粘度に対して適合され、各相による完全な充填を保証する。好ましくは、本発明による混合装置は、少なくとも2つの流入ラインを有する。しかしながら、混合装置内で予備混合を行う場合は、混合装置は、流入ラインを1つだけ有していてもよい。乳化又は分散すべき成分は、例えば、それらが混合装置に到達する前にY形状連結部を用いることによって、共通の流入ラインへと導入されてもよい。当業者には公知の、固定式予備混合器又は受動型混合装置を、任意でこの共通流入ライン内に設けてもよい。本発明の趣旨の範囲内の構成成分は、純粋な物質であってもよいが、種々の物質の混合物であってもよい。
【0024】
この際、流入ラインから混合装置への入口の角度は、混合装置の回転軸に対して0°〜180°の範囲であってよい。流入ラインは、チャンバー内に、ジャケット表面を貫通して横方向に、又は底面を貫通して下方から、延びていてもよい。
【0025】
流入ライン及び流出ラインは任意の所望の高さにおいて、ジャケット表面の任意の所望の周囲上で、チャンバに接続され得る。供給成分の最適な混合を保証し、同時に供給成分の最大の滞留時間を保証するために、且つデッドスペースを回避するために、流入ラインの入口高さは好ましくは、チャンバの高さに基づいて、チャンバの下3分の1、好ましくは下4分の1に配置される。流出ラインの出口高さは好ましくは、チャンバの高さに基づいてチャンバの上3分の1、好ましくは上4分の1に配置される。
【0026】
流出ラインの直径は、少なくとも1つの又は第1の混合装置における高い粘度に基づいて構築される圧力が最小限に抑えられるが、同時に、確実に流出ラインがそれぞれの場合に混合物で完全充填されるような寸法となされる。
【0027】
例えば、三相OWエマルション、液晶真珠光沢剤、及び自己組織化系のリオトロピック液晶相のような幾つかの製品は、流入ラインの入口高さよりも上部で且つ流出ラインの出口高さより下部に位置する、第1混合装置の浸透領域への成分の付加的な遅延添加を必要とし得る。したがって、付加的な入口ラインをこの領域に配置してもよい。
【0028】
混合装置は、攪拌ユニットの回転軸が水平から鉛直まで任意の所望の位置をとり得るように、所望に応じて配向され得る。但し、好ましくは混合装置は、チャンバの対称軸が鉛直に配置され且つここで流入ラインが流出ラインよりも上部に取り付けられるようには配置されない。混合装置は、チャンバの対称軸が鉛直に配置され且つここで流入ラインが流出ラインよりも下部に取り付けられるように配置されるのが極めて好ましい。この場合、駆動モータは攪拌ユニットを上方から駆動するのが好ましいが、同様に、下方からの駆動も可能である。
【0029】
驚くべきことに、混合装置の形状に関して、チャンバの内径d
kに対する攪拌シャフトの直径d
ss、及び流入ライン流出ライン間の距離と攪拌要素のアームの長さとの比率が、供給される相の最適な混合を確保するために極めて重要であることが分かった。これに関しては、チャンバの内径d
kに対する攪拌シャフトの直径d
ssの比率は、好ましくは0.25〜0.75×d
kの範囲であり、特に好ましくは0.3〜0.7×d
kの範囲であり、とりわけ0.4〜0.6×d
kの範囲であり、また流入ライン流出ライン間の距離と攪拌要素のアームの長さとの比は、好ましくは3:1〜50:1の範囲であり、特に好ましくは5:1〜10:1の範囲であり、とりわけ6:1〜8:1の範囲であることが分かった。
【0030】
チャンバ直径に対する攪拌シャフトの直径がこのように通常よりも大きいことにより、さらには、攪拌シャフトとチャンバ壁との距離(当業者には「流動直径(flow diameter)」とも言われる)が常に小さくなるため、血栓様の流れが発生せず、層流が保証される。
【0031】
さらに、混合装置の形状に関して、混合装置チャンバの直径と、混合される成分が流入口から流出口まで移動すべき距離との比が、供給相の最適な混合を保証するために極めて重要であるということ分かった。これに関しては、直径と流入口流出口間の距離との比は、好ましくは1:50〜1:2、好ましくは1:30〜1:3、とりわけ1:15〜1:5であることが分かった。本発明の趣旨におけるチャンバ直径とは、チャンバの底部における直径である。
【0032】
直径と流入口流出口間の距離との比は、混合装置内の流動を制御するために極めて重要な役割を果たす。乳化の成功は、混合物が、混合装置の下部領域、即ち成分供給の領域中に存在する初期の乱流から、「浸透領域」を経て、層流領域に来たときに始めて保証される。各領域間の移行は流動的であるので、個々の領域を正確に限定することはここでは不可能である。
【0033】
リオトロピック液晶相の形成に必要な時間の長さは成分により異なるため、混合装置の長さは生成物に応じて適合され得る。自己組織化系の形成は、以下の要因、すなわち、系内の温度、水分含有量、混合物の組成、流動プロファイル、せん断速度、及び滞留時間により影響を受ける。
【0034】
本発明による乳化装置システムに使用される混合装置は、層状延伸条件下での液滴破壊を保証する層流を保証する攪拌ユニットを装備している。本発明の有利な実施形態によれば、攪拌要素の少なくとも1つの構成部品は、チャンバの内壁から空間をおき離され且つその内壁と平行に配置されている。
【0035】
好ましい攪拌ユニットは、フルブレード若しくは部分ブレード攪拌器、又はフルワイヤ若しくは部分ワイヤ攪拌器、又はこれらの組み合わせである。
【0036】
層状延伸条件下での液滴破壊は、有利なことに、生成されるエマルションにおいて、平均液滴径を中心に極めて小さな粒径分布をもたらす。粒径分布のグラフは、大抵の場合、ガウス曲線に極めて類似した形状を有する。本発明による装置を用いて得られる粒径は、エマルション及び/又は分散液の組成に応じて、50〜20,000nmの範囲である。
【0037】
チャンバの内径d
kに基づく攪拌ユニットの直径d
sは好ましくは、0.99〜0.6×d
kである。但し、攪拌ユニットは、チャンバ壁から少なくとも0.5mm離される。好ましくは、攪拌ユニットの直径は、0.6〜0.7×d
kであり、特に好ましくは0.99〜0.8×d
kである。
【0038】
チャンバの内径d
kに基づく攪拌シャフトの直径d
ssは、好ましくは0.25〜0.75×d
kの範囲であり、特に好ましくは0.3〜0.7×d
kの範囲であり、とりわけ0.4〜0.6×d
kの範囲である。
【0039】
チャンバ直径に対して攪拌シャフトの直径がこのように大きいことにより、攪拌シャフトとチャンバ壁との距離(当業者には「流動直径」とも言われる)が常に小さくなり、結果として血栓様の流れが形成される恐れがなく、層流が保証される。
【0040】
本発明による装置で採用され得るワイヤ攪拌器は、ワイヤが攪拌シャフトに取り付けられている点で特徴的である。驚くべきことに、これらのワイヤを蹄鉄状に又は角の丸い矩形状に曲げ、それらの端部で攪拌シャフトに取り付けると、これらを用いて非常に良好な混合がもたらされ、エネルギー消費の最小化が達成されるということが分かった。
【0041】
シャフト上での配置もまた混合される製品によって異なり得る。蹄鉄状又は矩形状に曲げられた1本以上のワイヤを攪拌シャフト上に配置することができる。ここではフルワイヤ攪拌器又は部分ワイヤ攪拌器のどちらを使用してもよい。
【0042】
フルワイヤ攪拌器(
図3C)は、蹄鉄状の、又は丸みを帯びた矩形状に曲げられた少なくとも2本のワイヤからなり、それらのワイヤはシャフトに対して互いに反対側に取り付けられ、シャフトの上部及び下部領域においてシャフトに連結されていることを特徴とする。それらのワイヤはここでは好ましくは、中心軸に対して垂直に傾斜され及び/若しくは回転され、並びに/又は回転軸を基準として左又は右に0°〜90°、好ましくは0°〜45°、特に好ましくは0°〜25°の角度となされている。ワイヤの上方長さ及び下方長さは、同一の長さであっても異なる長さであってもよい。所望なだけ多くのワイヤをシャフトの周囲に配置できる。シャフトとワイヤとの間に生ずる空間には更なるワイヤ、又は任意所望の幾何学形状が存在していてよい。
【0043】
ワイヤ直径は好ましくは最大でシャフト直径の範囲にあり、最小で0.2mmを下回ることはなく、最大でもシャフト直径の15%、最小でも0.5mmのワイヤ直径が特に好ましく、とりわけシャフト直径の10%から最小でもシャフト直径の1%での範囲である。
【0044】
部分ワイヤ攪拌器(
図3D)は、U字型又は蹄鉄型に曲げられた少なくとも2本のワイヤからなり、その端部は任意所望の高さでシャフトに連結されていることを特徴とする。ワイヤはここでは、好ましくは中心軸に対して垂直であり並びに/又は回転軸を基準として左又は右に0°〜90°、好ましくは0°〜45°、特に好ましくは0°〜25°だけ傾斜及び/若しくは回転されている。攪拌シャフトから放射状に伸びるワイヤの上方及び下方長さは同一の長さであっても異なる長さであってもよい。所望なだけ多くのワイヤをシャフトの周囲に配置することができる。シャフトとワイヤの間に生ずる空間中には更なるワイヤ又は任意所望の幾何学形状が存在していてよい。
【0045】
ワイヤ直径は好ましくは最大でシャフト直径の範囲にあり、最小で0.2mmを下回ることはなく、最大でもシャフト直径の15%、最小で0.5mmのワイヤ直径が特に好ましく、とりわけシャフト直径の10%からシャフト直径の少なくとも1%の範囲である。
【0046】
有利なワイヤ攪拌器と組み合わせて、チャンバ直径と攪拌シャフト直径が好ましい比率を有する結果として、特に効果的なトルク利用が保証され、これにより攪拌ユニットが混合される成分に加える力が最小限に抑えられ、結果として良好な混合が達成されると同時に、モーターのエネルギー消費が最小限に抑えられる。
【0047】
さらに、チャンバ直径に対してシャフト直径が通常よりも大きいことにより、攪拌シャフト自体を生成物の温度制御に利用できるようになされている。
【0048】
加えて、フルブレード攪拌器及び部分ブレード攪拌器が特に好適であることが分かった。
【0049】
フルブレード攪拌器(
図3A)は、正方形、矩形、蹄鉄形、又は台形の少なくとも2枚の金属シートからなり、これらの金属シートは角が丸められて乱流の生成が防止され、その一辺がシャフトに連結されており、これらの金属シートは妨害されることなくシャフトの上部領域からシャフトの下部領域まで到達していることを特徴とする。この際、金属シートは好ましくは中心軸に対して垂直であり、並びに/又は中心軸の左又は右に0°〜90°、好ましくは0°〜45°、特に好ましくは0°〜25°の角度で傾斜及び/若しくは回転されている。金属シートの上縁部及び下縁部は、同一の長さであっても異なる長さであってもよい。所望なだけ多くの金属シートをシャフトの周囲に配置することができる。個々のブレードにはさらに、穴や打ち抜きなどの更なる幾何学的流路が設けられていてもよい。
【0050】
部分ブレード攪拌器(
図3B)は、正方形、矩形、蹄鉄形、又は台形の、少なくとも2枚の金属シートからなり、その一辺がシャフトに任意所望の高さで連結されていることを特徴とする。この際、これらの金属シートは、好ましくは中心軸に対して垂直であり、並びに/又は中心軸の左又は右に0°〜90°、好ましくは0°〜45°、特に好ましくは0°〜25°の角度で傾斜され、及び/若しくは回転されている。金属シートの上縁部及び下縁部は同一の長さであっても異なる長さであってもよい。所望なだけ多くの金属シートをシャフトの周囲に配置することができる。個々の金属シートには更なる幾何学的流路が設けられていてもよい。
【0051】
当業者に公知の更なる攪拌ユニット及びそれらの特別な設計(例えば、アンカー攪拌器、溶解機ディスク、インターミグ(inter MIG)等の設計)を、混合装置中での生成物の混合のために導入することができる。同様に、1本の攪拌シャフト上で、多様な攪拌設計を互いに組み合わせることも可能である。
【0052】
本発明による混合装置において使用される攪拌ユニットは、さらに各攪拌シャフトが、好ましくは混合装置の上部領域及び下部領域において、回転安定な態様で、案内されているという点で特徴的である。高速における攪拌ユニットの不均衡をこうして可能な限り規制し又は回避して、必要な層流の構築に悪影響を与えたり、さらにはそれを妨害することもある乱流が生成されないように企図されている。例えば玉軸受、リニア玉軸受、滑り軸受、リニア滑り軸受等を使用してシャフトを案内することができる。シャフトは更なる回転安定性のために均衡化されていることが有利である。
【0053】
混合装置自体及び上述の攪拌器設計(特に上述のフルブレード攪拌器、部分ブレード攪拌器、フルワイヤ攪拌器、部分ワイヤ攪拌器)の両方を製造するための材料は、乳化される成分及び得られるエマルションの化学特性に適合される。好ましくは、本発明による混合装置における攪拌ユニットは、例えばステンレス鋼などの鋼鉄からなるが、建築用鋼材、プラスチック、例えば、PEEK,PTFE,PVC,若しくはプレキシガラス等、又は鋼鉄とプラスチックとの複合材料若しくは組み合わせからなるものであってもよい。
【0054】
本混合装置では、それらが自然に対向する、乳化される成分からの逆圧が、ごくわずかであることが想定されている。特殊な曲げワイヤ攪拌器によって、混合プロセス中であっても、生ずる圧力構築をごく最小限に抑えるということが達成される。このため、本混合装置は本質的に、常圧/低圧システムであるということができる。
【0055】
このことを達成するために、流出ラインの断面は、混合された成分の製品の総量が妨害されずに流出され得るように選択されなければならない。これに関しては、特に混合装置1において、極端な粘度の増大が観察されるが、このことは高粘度のリオトロピック液晶ゲル相の構築をもたらす。例えば配管、熱交換器等の更なるプロセス技術要素の寸法については、継続的な低圧システムを保証するために、これらが対向するシステム全体の圧力低下が最小限となるように注意を払う必要がある。製品及び装置構成に応じて、システム全体で0.5bar未満の圧力低下を実現できる。
【0056】
本発明による乳化装置においては、混合装置並びに流入ライン及び流出ラインの温度制御が特に簡便に且つ効果的に実現され、有利である。容量が小さいことにより、また混合装置におけるチャンバの体積に対する表面積の比率が、チャンバの形状に起因して大きいことにより、本発明による装置においては、従来の乳化装置と比較して製品のより良好に制御された温度管理が保証される。
【0057】
混合装置の加熱に関しては、二重ジャケットが特に好適である。二重ジャケットは、例えば蒸気などの気体、又は、例えば水、加熱油等の液体による加熱が可能である。さらには、例えば加熱ワイヤ、加熱ケーブル、又は加熱カートリッジ等の電気的加熱もまた可能である。
【0058】
チャンバ中並びに流入ライン及び流出ライン中における乳化される成分の温度制御のためには、例えば冷却リブ等の受動的熱交換プロセス、例えば管束式熱交換器等の能動的プロセス、及び両方の方法の組み合わせを利用して、できるだけ均一且つ迅速な温度制御を保証することができる。
【0059】
乳化される成分の外側から内側までの温度制御のためには、混合装置は、混合装置の外側及び/又は内側に取り付けられ、例えばサーモスタットを用いて冷媒/加熱媒体を供給される、二重ジャケットやフルチューブ又はハーフチューブ冷却コイルを装備するのが好ましい。
【0060】
好ましくは、温度制御は、二重ジャケットの内部に邪魔板を追加することによって改善される。直径と、流入ライン流出ライン間の距離との比を最適化することによって、さらに、混合材料の流量を調節して最適な温度交換が達成されるようにすることが可能となる。
【0061】
本発明による装置は、基本的にはその処方における全成分を加熱する必要はなく、室温で十分に流動しない成分のみをそれらが流動するまで加熱すればよいという点で従来のバッチ法とは区別される。本発明による混合装置の実施形態、特に長さ/直径比は、熱制御に有利であり、攪拌により散逸するエネルギーを制御された熱供給に利用できる。
【0062】
更なる実施形態では、本発明による混合装置は、成分の層流を促進する邪魔板を装備している。
【0063】
有利な実施形態によれば、邪魔板及び/又は攪拌ユニットは温度制御されることができ、それにより混合物の温度制御が可能となる。
【0064】
好ましくは、前記少なくとも1つの混合装置は、乳化される成分が乱流領域と浸透領域とを通過することによってリオトロピック液晶相に転換される、回転対称なチャンバを含む。
【0065】
本発明の更なる実施形態では、前記少なくとも1つの混合装置は、直列に連結された複数の回転対称チャンバを含む。それにより、構造上の理由で前記少なくとも1つの混合装置の高さが制限される場合、混合プロセスを連続チャンバの数に分けることが可能となる。この際成分は、3つの異なる領域、乱流領域、浸透領域、及び層流領域を、単一のチャンバ内で通過するのではなく、複数のチャンバ内において通過する。
【0066】
本発明による乳化装置は、最も単純な場合には、前述の記載に対応する少なくとも1つの混合装置を含む。
【0067】
しかしながら通例では、本発明による乳化装置は少なくとも2つの混合装置を含み、それらは1つの後ろに他が直列に連結され、種々の成分が連続して又は同時に供給されて互いに混合される。この際、第1の混合装置中で生成される混合物の粘度は、常にそれ以降の混合装置中での粘度以上となる。この場合、少なくとも第1の混合装置は、構造及び機能の面で、前記少なくとも1つの混合装置に対応していなければならず、即ち、第1の混合装置においては、成分がまず乱流混合され、次いで浸透領域を通過することによってリオトロピック液晶状態に達するという特別な流動制御が保証されなければならない。
【0068】
WOエマルションのような従来の2相系だけでなく、ゲルネットワーク相を有さないOWエマルションの製造において、本発明による乳化装置では、第1混合装置中の内相(分散相)と外相(連続相)との比率は、常にそれ以降の混合装置中よりも大きくなる。
【0069】
本発明による乳化装置ではさらに、複数の混合装置を、1つを他の後ろに直列に連結するだけでなく、互いに上下に直列連結することも可能である。この場合、個々の混合装置をハウジング内に共に収容して、混合装置の分離が外側から見えないようにすることもできる。
【0070】
本発明による乳化装置における前記製品の製造の別の経路では、第1混合装置中の高粘度の内容物がそれ以降の混合装置に導かれる。この場合、それ以降の混合装置への供給口は、入口ラインの高さが混合装置の高さに基づき、好ましくは下3分の1、好ましくは下4分の1となるように配置される。
【0071】
第1混合装置の下流に連結された混合装置においては、連続相に対する内相の割合を大きくすることはもはや必要ではない。本発明による乳化装置の一実施形態では、第1混合装置中で、乳化される成分を層状の液晶相に転換して、第2混合装置中で外相を添加することにより所望の濃度に希釈する。
【0072】
本発明による乳化装置はまた、以下に示すような、適切な周辺部を有する。即ち、
少なくとも2つの成分のための貯蔵容器、
前記少なくとも1つの混合装置にそれらの成分を供給するための連結ライン、関連のポンプ及びバルブ、
成分の取出しのための連結ライン、
プロセス段階を管理制御するための制御装置、
プロセス変数を視覚化し入力するための操作部を有する表示装置、等を含む。
【0073】
混合装置及び連結ラインは温度制御可能である。
【0074】
混合装置及び連結ラインは、製品及びプロセス制御のためのセンサーを有することができる。さらに、個々の混合装置の流出ラインは、例えば直接又はバイパス中での連続粒径測定、温度測定、圧力測定、導電率測定、粘度測定等を可能にする更なるセンサーを有することができる。
【0075】
最終生成物の製品品質は、第1の攪拌段階における本発明による装置内で優先的に決定される。
【0076】
さらに、本発明による混合装置の流入ライン及び流出ラインにおいて、又は複数の混合装置において、本発明によるシステムの混合装置間に熱交換器を取り付けることができる。この場合、管束式熱交換器を製品流中の有孔邪魔板及び加熱及び冷却回路中の邪魔板と組み合わせて導入することが非常に有効である。生成物量が比較的少ないことに起因して、極めてコンパクトで効率的な熱交換器の構成が可能であり、有利である。これらの熱交換器は、連続的な構成法及び直列に連結された構成法の両方で採用され得る。他の熱交換器構成形体、例えば冷却コイル、管束式熱交換器、二重管式熱交換器、リブ管式熱交換機、螺旋帯式熱交換器、プレート式熱交換器、貯蔵式熱交換器、及び他の特殊な設計の導入も同様に可能である。
【0077】
冷媒としては、例えば窒素等の気体、例えば水又は加熱油等の液体の両方を使用することができる。
【0078】
上述の熱交換器を用いれば、冷却と、加熱もまた同様に可能である。この場合もまた、所望の製品のための好適な加熱/冷却は当業者によって選択され得る。
【0079】
乳化装置の用途に応じて、加熱ユニットと冷却ユニットを組み合わせることも任意で可能である。このこともまた、上述したように二重ジャケットと加熱/冷却コイル又は適切な熱交換器を使用することによって簡単且つ効果的に解決することができる。
【0080】
より小さな乳化装置では、好ましくは優先制御によって監視及び運転される、加熱/冷却浴(サーモスタット)が、そのために特に好適である。さらには、これらのサーモスタットを使用すれば独立運転もまた可能となる。サーモスタットは一般に外部温度センサーの取り付けも可能であるので、生成物流に導入することができる。サーモスタットはこのとき必要とされる加熱又は冷却能力を独立に制御して、それにより最適な製品温度を提供する。混合装置の温度の調整をサーモスタットに任せることができるため、この方法の更なる利点は、制御を切り離すことができることである。
【0081】
混合装置中の成分供給の温度を最適化することによっても、製品温度の最適化を同様に達成することができる。これに関連して、貯蔵容器から混合装置への入口までの成分の流入経路もまた、最適化することができ、これを利用して、成分が乳化されるための最適な温度で成分流が混合装置に到達するようにすることができる。
【0082】
本発明による乳化装置は、以下を含む。
− 少なくとも1つの本発明による混合装置、
− 混合装置の攪拌ユニットのための、少なくとも1つのモーター、
− 乳化される相のための、少なくとも2つの貯蔵容器であって、流入ラインによって混合装置に連結され、ここから輸送装置を用いて成分が混合装置中に空気を含まずに供給される、貯蔵容器、
− 成分又は成分混合物につき、少なくとも1つの輸送装置、
− 任意で、入力流監視センサー及び/又は出力流監視センサーであって、これを用いて任意で自動品質制御を同時に行うことが可能であるセンサー、
− 任意で、乳化装置の温度制御、並びに成分及び成分混合物の供給及び取出しのためのラインシテムの温度制御のための、少なくとも1つの装置、
− 混合装置の監視制御、並びに成分及び成分混合物の供給及び取出しの監視制御のための制御装置、
− 任意で、データの視覚化及び入力のための操作パネルを有する表示装置。
【0083】
しかしながら、通例では乳化装置は、少なくとも2つの混合装置を含み、これらは1つの後ろに他が連結され、種々の成分が互いに逐次的に混合される。ここで、第1混合装置中で製造された混合物の粘度は常に、それ以降の混合装置中の粘度以上である。少なくとも第1混合装置は、ここでは前記少なくとも1つの混合装置に構造及び機能的に対応していなければならず、即ち、第1混合装置中で、成分がまず乱流混合され、次いで浸透領域を通る流路によってリオトロピック液晶状態に到達するという、特別な流動管理が保証されなければならない。
【0084】
WOエマルションのような従来の二相系だけでなく、ゲルネットワーク相をもたないOWエマルションの製造においても、本発明による乳化装置では、第1混合装置中の内相(分散相)と外相(連続相)との比率が常に、それ以降の混合装置中よりも大きくなる。
【0085】
本発明によるシステム全体は、記憶プログラム可能な制御によって制御される。これは、例えば、混合装置の回転数、個々の成分の流入量、ポンプの回転数、添加される個々の相の温度と圧力、及び運転に必要な他のすべてのパラメータを監視する。このプログラム制御は、質量又は流量メータと協働して、個々の成分の各混合装置への流入量を監視制御する。それは、光学的又は音声出力装置を用いて予め規定した警告及び障害を伝達することができる。この際、光学的及び視覚的出力装置は、例えば制御センター内といった、本発明による装置とは別の場所に置くことができる。
【0086】
他の制御法、例えばSPSソフトウェア又はPC制御もまた同様に、幾つかの制御法の組み合わせとして可能である。
【0087】
制御装置と一体化するか接続されたアナログ電話回線又はISDN回線接続用遠隔管理モジュールを用い、モバイル無線ネットワーク又はLAN若しくはWLANネットワークへのアクセスを用いて、本発明による装置の遠隔管理を行うことが可能であり、或いは、警告やエラーメッセージを送ったり、本発明によるシステム全体を制御したりすることが可能である。
【0088】
さらに、制御装置は、種々の製品のための1つ以上の処方が記憶される処方モジュールを有していてもよい。各処方はこの場合、複数のデータセットから構成されていてもよい。データセット中には、例えば、回転数、流量比等の運転に必要なパラメータが保持される。処方を呼び出したのち、データセットを時間制御により又は特定の事象のトリガー、例えば特定温度への到達後に実行する。これにより、製品を常に同じ品質で製造することが保証され得る。
【0089】
本発明を下記の図面及び実施例によってより詳しく例示するが、これらは本発明を限定するものではない。