【実施例】
【0050】
(合成)
式Iの化合物は、以下の実施例、反応スキーム、及びそれらの記載、並びに当業者によって使用することができる関連文献の製法中に示された通りに製造した。これらの反応のための典型的な試薬及び製法を以下に表示する。
【0051】
工程1:tert−ブチル 3−メチル−4−オキソピペリジン−1−カルボキシレート
【化2】
【0052】
エタノール(100mL)中の1−ベンジル−3−メチルピペリジン−4−オン(11.4g、56.1mmol)、Boc−無水物(14.32ml、61.7mmol)および10%パラジウム/炭素(0.597g、5.61mmol)の混合物を真空および窒素下で脱気し、次いで室温で50psiで4時間水素化した。該触媒をろ過によって除去し、メタノールですすぎ、そして該ろ液およびすすぎ液をあわせて真空下で濃縮した。該残渣を330gシリカゲルカラム(酢酸エチル/ヘキサン勾配を用いて100mL/分で溶出)で精製して、油状物のtert−ブチル 3−メチル−4−オキソピペリジン−1−カルボキシレート(11.66g、54.7mmol、97%収率)を得て、このものは放置すると固化した。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 4.15 (m, 2H), 3.22 (m, 1H), 2.79 (br m, 1H), 2.52-2.38 (m, 3H), 1.46 (s, 9H), 1.01 (d, J=6.8 Hz, 3H);m/z = 158.2 (M-tBu)
+。
【0053】
工程2:tert−ブチル 4−(4−クロロフェニル)−3−メチル−5,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボキシレート
【化3】
【0054】
1−ブロモ−4−クロロベンゼン(21.87g、114mmol)の無水THF(250mL)溶液を−78℃まで冷却し、そしてn−ブチルリチウム(43.5mL、109mmol、ヘキサン中1.6M)を用いて滴下処理した。該混合物を−78℃で45分間撹拌し、その間沈殿物が観察され、次いで該スラリーを、tert−ブチル 3−メチル−4−オキソピペリジン−1−カルボキシレート(11.6g、54.4mmol)の無水THF(50mL)の溶液を用いて滴下処理した。該反応液を−78℃で2時間撹拌し、次いで−20℃までゆっくりと昇温させ、そして飽和塩化アンモニウムを用いてクエンチした。層分離し、そして該有機層を真空下で濃縮した。該水層を酢酸エチル(300mL)を用いて1回抽出し、そして該有機層を最初の有機層由来の残渣と合わせた。該混合物を水で3回および食塩水で1回洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥し、そして真空下で濃縮した。該残渣を沸騰へキサン(200mL)中で1時間処理(digest)し、次いで該混合物を室温まで冷却した。該固体をろ過によって集め、少量の熱ヘキサンですすぎ、そして真空下で乾燥して、粉末状のtert−ブチル 4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−3−メチルピペリジン−1−カルボキシレート(13.96g、42.8mmol、79%収率)を得た。m/z = 252.2 (M-tBuO)
+。
【0055】
250mLの丸底フラスコ中で、tert−ブチル 4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−3−メチルピペリジン−1−カルボキシレート(4.3g、13.2mmol)を濃HCl(25mL、300mmol)を用いて処理した。激しい発泡が止まり、不均一で自由な撹拌の混合物が観察されるまで、該混合物を室温で撹拌した。該混合物を19時間加熱還流し、その間に透明溶液が観察された。
【0056】
該反応混合物を真空下で濃縮し、そして該残渣をトルエンから2回濃縮して、残留HClを除去した。該残渣をTHF(50mL)中に懸濁し、そしてBoc−無水物(3.00mL、12.9mmol)、続いてトリエチルアミン(5.52mL、40mmol)を加えた。該反応液を室温で2時間撹拌した。次いで、該混合物を真空下で濃縮し、そして該残渣を酢酸エチル(150mL)中に溶かした。該不均一な混合物を1N HCl(3×)、水(×1)および食塩水(×1)で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥し、そして真空下で濃縮して油状物のtert−ブチル 4−(4−クロロフェニル)−3−メチル−5,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボキシレート(4.3g)を得た。
1H NMR (400 MHz, MeOD
4) δ 7.34 (m, 2H), 7.14 (d, J=8.3 Hz, 2H), 3.87 (br s, 2H), 3.58 (br s, 2H), 2.33 (m, 2H), (1.58 (s, 3H), 1.48 (s, 9H); m/z (ESI
+) = 252.1 (M - tert-Bu)
+。
【0057】
工程3:(3S,4S)−tert−ブチル 4−(4−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロキシ−3−メチルピペリジン−1−カルボキシレート
【化4】
【0058】
tert−ブチル 4−(4−クロロフェニル)−3−メチル−5,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボキシレート(2.2g、7.15mmol)の50%tert−ブタノール/水(50mL)の溶液を5℃まで冷却し、そしてメタンスルホンアミド(0.680g、7.15mmol)およびAD−Mixアルファ(11g、7.15mmol)を用いて処理した。該得られた懸濁液を5℃で4時間撹拌し、次いでこのものを室温までゆっくりと昇温させ、そして3日間撹拌した。次いで、該混合物を5℃まで冷却し、そして亜硫酸ナトリウムの固体を用いて処理し、そして該混合物を1時間撹拌し、その間透明溶液が観察された。該混合物を酢酸エチル(3×)で抽出し、次いで合わせた有機層を水で2回、および食塩水で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして真空下で濃縮した。該残渣を120gのシリカゲルカラムを用いるMPLC(25%、30%、次いで35%の酢酸エチル/ヘキサンを用いて85mL/分で溶出する)によって精製して、油状物の(3S,4S)−tert−ブチル 4−(4−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロキシ−3−メチルピペリジン−1−カルボキシレート(2.1g、5.53mmol、77%収率)を得た。
1H NMR (400 MHz, MeOD
4) δ 7.53 (d, J=8.8 Hz, 2H), 7.30 (d, J=8.8 Hz, 2H), 4.05 (br d, 1H), 3.73 (m, 1H), 3.26 (m, 2H), 2.48 (ddd, J=12.7, 4.8 Hz, 1H), 1.65 (d, J=14.1 Hz, 1H), 1.47 (s, 9H), 0.92 (s, 3H); m/z (ESI
+) = 342.1 (M + H)
+, 286.1(M - tert-Bu)
+。
【0059】
工程4:(3S,4S)−4−(4−クロロフェニル)−3−メチルピペリジン−3,4−ジオール塩酸塩
【化5】
【0060】
4M HCl/ジオキサン(30.4mL、122mmol)中の(3S,4S)−tert−ブチル 4−(4−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロキシ−3−メチルピペリジン−1−カルボキシレート(2.08g、6.08mmol)の溶液を室温で45分間撹拌した。該混合物を真空下で濃縮し、次いで塩化メチレン(3×)から濃縮して残留HClを除去して、粉末の(3S,4S)−4−(4−クロロフェニル)−3−メチルピペリジン−3,4−ジオール塩酸塩(1.7g、6.11mmol、100%収率)を得た。
1H NMR (400 MHz, MeOD
4) δ 7.55 (d, J=8.8 Hz, 2H), 7.36 (d, J=8.8 Hz, 2H), 3.42 (m, 1H), 3.29 (m, 1H), 3.05 (d, J=13.2 Hz, 1H), 2.71 (ddd, J=13.2 , 4.8 Hz, 1H), 1.97 (dt, J=14.5, 3.1 Hz, 1H), 1.08 (s, 3H); m/z (ES
+) = 242.1 (M+H)
+。
【0061】
工程5:tert−ブチル (R)−1−((3S,4S)−4−(4−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロキシ−3−メチルピペリジン−1−イル)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イルカルバメート
【化6】
CH
2Cl
2(800mL)及びDMF(80mL)中の(3S,4S)−4−(4−クロロフェニル)−3−メチルピペリジン−3,4−ジオール(91g、376mmol)、Boc−D−バリン(83.1g、382mmol)、HOBt(69.2g、452mmol)、EDC(87g、452mmol)の混合物に、室温でDIPEA(132mL、753mmol)を加えた。該混合物を室温で終夜撹拌した。該反応液を濃縮し、そして該残渣をEtOAc及び水の間で分配した。該EtOAc層を1N HCl、飽和NaHCO
3水溶液及び食塩水で洗浄して、粗生成物(180g、〜80%純度)を得て、このものを次の変換において直接に使用した。
【0062】
工程6:(3S,4S)−4−(4−クロロフェニル)−3−メチル−1−D−バリル−3,4−ピペリジンジオール
【化7】
【0063】
EtOH(18mL)中のtert−ブチル (R)−1−((3S,4S)−4−(4−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロキシ−3−メチルピペリジン−1−イル)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イルカルバメート(0.150kg、0.34mol)及びHCl(408mL、1.02mol、2.5M)の溶液を60℃で2時間撹拌した。次いで、該溶媒を除去して油状物を得て、このものにEtOAc(1L)、水(1L)及びTEA(2mol)を加えた。該二層溶液を室温で2時間撹拌し、そして該生成物が固体として沈降した(70g、98%純度)。MeOHから更に再結晶することにより、純度を99.8%まで増大させた。更なる11gを母液から回収して、固体の(3S,4S)−4−(4−クロロフェニル)−3−メチル−1−D−バリル−3,4−ピペリジンジオール(81g、70%収率)を得た。
1H NMR (400 MHz, MeOD
4, 回転異性体) δ 7.54 (n, 2H), 7.31 (m, 2H), 4.53 (m, 0.5H), 4.27 (dd, J=12.4, 1.2 Hz, 0.5H), 3.93 (br d, 0.5H), 3.70 (t, J=5.2 Hz, 1H), 3.69 (m, 1.5H), 3.14 (m, 1H), 2.49 (ddd, J=13.9, 4.8 Hz, 1H), 1.96-1.71 (m, 2H), 1.07-0.89 (m, 9H); m/z = 341.12 (M+H)
+。
【0064】
工程7:(R)−ベンジル 3,3−ジフルオロシクロペンタンカルボキシレート
【化8】
【0065】
(R)−ベンジル 3−オキソシクロペンタンカルボキシレート(62.8g、288mmol)をジクロロエタン(220mL)中に溶解し、そして氷浴を用いて10℃まで冷却した。この混合物に、(ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリド(86mL、647mmol)を加え、そして該反応混合物を添加の間、rt以下に保った。室温まで昇温後に、該溶液を40℃で12時間加熱し、次いで室温で12時間撹拌して黒色溶液を得た。得られた溶液をドライアイス/MeOHを用いて冷却し、そしてMeOH(30mL)でクエンチした。次いで、該混合物をドライアイス/MeOHを用いて冷却した4Lビーカー中にそそぎ、そしてNaHCO
3及びNa
2CO
3水溶液をゆっくりと加えて、pH5〜7に調節した。該生成物をDCMを用いて抽出し、そして該有機層を濃縮して液体(>80g)を得た。該粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン(0〜10%勾配、15分)によって精製して、液体の(R)−ベンジル 3,3−ジフルオロシクロペンタンカルボキシレート(44g)を仕上げた。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 7.23 (m, 5H), 3.05 (m, 1H), 2.34-2.45 (m, 2H), 2.01-2.16 (m, 4H)。m/z = 263.2 (M+Na)
+。
【0066】
工程8:(R)−3,3−ジフルオロシクロペンタンカルボン酸
【化9】
【0067】
(R)−ベンジル 3,3−ジフルオロシクロペンタンカルボキシレート(13g、54.1mmol)を室温で撹拌しながらMeOH(200mL)中に溶解し、次いで0.5M LiOH(216mL、108mmol)を加えた。2時間撹拌後に、水を該反応混合物に加え、そして濃縮して揮発性溶媒を除去した。該水層をEt
2O(2×)ですすぎ、次いで1N HClでpH3まで酸性化した。該水層を塩化メチレン(2×)で抽出し、そして該有機層をあわせて、乾燥し(Na
2SO
4)、そして濃縮して油状物の(R)−3,3−ジフルオロシクロペンタンカルボン酸(6.58g、43.8mmol、81%収率)を得た。
1H NMR (MeOD
3, 400 MHz) δ 3.03 (m, 1H), 2.33 (m, 2H), 1.95-2.20 (m, 4H); m/z = 149.2 (M-H)。
【0068】
工程9:(R)−N−((R)−1−((3S,4S)−4−(4−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロキシ−3−メチルピペリジン−1−イル)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−3,3−ジフルオロシクロペンタンカルボキサミド
【化10】
【0069】
CH
2Cl
2(300mL)及びDMF(75mL)中の(R)−2−アミノ−1−((3S,4S)−4−(4−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロキシ−3−メチルピペリジン−1−イル)−3−メチルブタン−1−オン(22.49g、66.0mmol)、(R)−3,3−ジフルオロシクロペンタンカルボン酸(10.21g、68.0mmol)の混合物に、HOBT(12.50g、82mmol)、EDC(15.65g、82mmol)及びヒューニッヒ塩基(23.76mL、136mmol)を加えた。該反応液をrtで20時間撹拌し、次いで濃縮して該CH
2Cl
2を除去した。酢酸エチルを加え、そして該有機層を1N HClで2回、飽和炭酸ナトリウムで2回及び水で3回洗浄した。該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして濃縮してガラス固体を得て、このものをCH
3CNから結晶化して、(R)−N−((R)−1−((3S,4S)−4−(4−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロキシ−3−メチルピペリジン−1−イル)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−3,3−ジフルオロシクロペンタンカルボキサミド(31.03g、65.6mmol、99%収率)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6, 回転異性体) δ 8.11 (m 1H), 7.55 (m, 2H), 7.34 (app t, 2H), 5.29 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 4.76 (m, 0.5H), 4.68-4.58 (m, 1.5H), 4.43 (br m, 0.5H), 4.09 (br d, 0.5H), 3.97 (br d, 0.5H), 3.50 (m, 1H), 3.35 (m, 3H), 3.00 (m, 2H), 2.31 (m, 0.5H), 2.32-1.94 (m, 6.5H), 1.77 (m, 1H), 1.65 (m, 1H), 0.92-0.83 (m, 6H), 0.74 (m, 3H); m/z = 473.2 (M+H)。
【0070】
(有用性)
概して、式(I)の化合物はケモカイン受容体活性の調整薬であることが分かった。ケモカイン受容体活性の調整薬としての活性を示すことによって、式(I)の化合物はケモカインおよびそれらの同族受容体と関係するヒト疾患の処置において有用であると予想される。
【0071】
比較の薬理学的な特性
化合物1とUS2007/0208056A1(WO2007/092681に対応する)中に記載される化合物との薬理学的な及び生理学的な特性を比較するアッセイ及びデータを以下に提示する。
【0072】
本願発明の化合物(化合物1)を、CCR−1活性の有用なインヒビターであることが分かっている他の化合物と比較し、そして特に有益であることが分かった。例えば、該他の化合物を超える驚くべき利点を以下表1及び2中に示す。
【0073】
ヒトCCR−1 THP−1結合アッセイ
放射性リガンド競合研究について、最終的な濃度が1×10
5 THP−1単球白血病細胞を、40μLのアッセイ緩衝液(フェノールレッドなしのRPMI 1640、50mM HEPES、5mM MgCl
2、1mM CaCl
2、0.1% BSA)中で100μgのLS WGA PSビーズ(アマーシャム製、カタログ番号RPNQ 0260)とあわせる。該THP−1細胞/ビーズの混合物を、3倍連続希釈(最終濃度を8μM〜0.14nMの範囲とする)の被験化合物を含有する384ウェルアッセイプレート(パーキンエルマー社製、カタログ番号6007899)の各ウェルに加えた。20μLアッセイ緩衝液中での最終濃度0.1nM[
125I]−MIP−1α(パーキンエルマー社製、カタログ番号NEX298)を該反応液に加えた。非標識MIP−1αをいくつかのウェルに過剰量で加えて、非特異的結合を測定した。シールしたアッセイプレートを室温で12時間インキュベートし、次いでLEADシーカー(商標)によって分析した。
【0074】
濃度範囲での該被験化合物の競合的データを、被験化合物の不在下で特異的に結合した放射性リガンドの阻害パーセント(総シグナルのパーセント)としてプロットする。非特異的結合について校正後に、IC
50値を測定する。該IC
50値を、[
125I]−MIP−1α特異的結合を50%低下するのに必要とされる被験化合物の濃度として定義し、そしてこれを4個のパラメータロジスティック方程式を用いて計算し、正規化データにフィットさせる。チェン−プルソフ式を該IC
50値に適用することによって、Ki値を測定する(ここで、K
i=IC
50/(1+リガンド濃度/K
d))。THP−1細胞中での[
125I]−MIP−1αの該Kdは0.1nMである。各実験を2回行った。
【0075】
hERGパッチクランプアッセイ
ホールセルパッチクランプを用いて、該クローン化hERGカリウムチャンネルαサブユニットを安定に発現するHEK−293細胞中でhERGテール電流を直接的にに測定した。化合物の効果は、ピークテール電流の阻害を測定することによって算出した。実験を、pH7.4の水性緩衝液を用いて室温で実施した。該アッセイ緩衝液中にはタンパク質は存在しなかった。報告された試験濃度を正常な薬物なしレベルとする。データを、固定濃度での阻害パーセントとして報告する。
【0076】
ナトリウム及びL−タイプのカルシウムチャンネルアッセイ
ホールセルパッチ−クランプを用いて、ヒト心筋ナトリウムチャンネル、SCN5Aを発現するHEK−293細胞中での内部ナトリウム電流を直接的に測定する。薬物の存在下で定常状態効果に達成した後に、速度−依存性を1Hz及び4Hzの振動数での刺激によって評価した。実験を、pH7.4の水性緩衝液を用いて室温で実施した。該緩衝液中にはタンパク質は存在せず、そして報告された薬物濃度を正常な薬物なしレベルとする。被験物質を最大10μM(タンパク質なしの緩衝液)で評価した。阻害の速度−依存性を1Hz及び4Hzの振動数での刺激によって評価した。データを固定濃度での阻害パーセントとして報告する。
【0077】
L−タイプのカルシウムチャンネルとの相互作用のための潜在能力に加えて、ホールセルパッチ−クランプを用いて、クローン化ヒト心筋L−タイプCaチャンネル(α1C)及びそのβサブユニットを安定に発現するHEK−293細胞中での内部カルシウム電流を直接的に測定した。化合物の効果を、ピーク電流の阻害を測定することによって算出した。実験を、pH7.4の水性緩衝液を用いて室温で実施した。該緩衝液中にはタンパク質は存在せず、そして報告された薬物濃度を正常な薬物なしのレベルとする。データを固定濃度での阻害パーセントとして報告する。
【0078】
麻酔されたウサギでの心電図検査法
被験化合物の用量−応答研究を麻酔されたウサギにおいて実施して、該細胞イオンチャンネルアッセイにおいて確立されている心筋電気生理学的特徴を評価した。
【0079】
実験を、プロポフォール−フェンタニルで麻酔をかけた閉胸雄性ウサギにおいて実施した。体表面心電図(ECG)及び心腔内ヒス束心電図を連続して追跡し、そして研究の間、PoNeMahシステム及びPrucka電気生理学記録システムをそれぞれ用いて記録した。被験化合物を、PEG400:エタノール:水(1:1:1)のビヒクル中、研究日に投薬濃度を30mg/mLで調製した。被験化合物(n=3)又はビヒクル(n=3)を、3、10及び30mg/kgの漸増の用量で薬物注入ポンプを介して5分間かけて静脈内で与えた。投与間隔は10分間とし、 5分間の被験薬の注入及び5分間の休息期間とした。血液をベースライン(薬物注入前)で及び各注入の終り直後にサンプリングした。30mg/kgの用量の場合に、追加の血液試料を該注入の終りから10、20及び30分後に採取した。
【0080】
PR間隔、QRS期間、及びQT間隔を、血液サンプリングのときに1分間のECG記録期間から平均化した。QT間隔を、フリデリシア(Fridericia)(QTcf)式およびファンデルウォーター(QTcv)式の両方を用いて心拍効果について補正した。AH及びHVの間隔(これらはそれぞれ、房室結節(A-V node)伝導及びヒス−プルキンエ伝導の意味する)を、ヒス束電位図からマニュアル測定によって評価した。データを、PR、QRS、AH及びHVの間隔についての薬物前のベースラインからのパーセント変化(平均値±SEM)、並びにQTc間隔についての薬物前の注入ベースラインからのデルタ変化(平均値±SEM)として表現した。PR、QRS、及びAHの間隔の10%以上、及びHV間隔の20%、並びにQTc間隔の10msより大きい変化は、該モデルを用いた経験に基づいて有意とみなされる。
【0081】
下記表1中に示す通り、インビボデータは化合物Iの優れた安全性プロファイルを実証する。特に、他の化合物と比較したインビトロCCR1 K
iの低下を示す一方で、化合物Iはまた30mg/kgのウサギにおける無影響量(NOEL)を有した。実施例491の化合物は同様なNOELを有していたが、それはより高い絶対的なQT延長並びに化合物Iに対する循環薬物のより低い遊離分画を有していた。
【表1】
【表2】
【0082】
PXRトランス活性化アッセイ
使用した細胞培地はDMEMである。リポフェクタミン2000、PBS、加熱不活性化した胎児ウシ血清(FBS)、トリプシン−EDTA(0.25%)及びペニシリン−ストレプトマイシンをGIBCO/インビトロゲン社(カールズバッド、カリフォルニア州)から購入した。チャコール/デキストラン処理胎児ウシ血清(FBS)を、ハイクローン社(ローガン、ユタ州)から購入した。HepG2細胞をATCC社(マナサス、バージニア州)から得た。ヒトPXR−pcDNA3、及びCYP3A4プロモーターを含有するルシフェラーゼレポーター、CYP3A−Lucを、ブリストル−マイヤーズスクイブ社で作り出した。ホワイト組織培養(TC)−表面384ウェルプレートを、パーキンエルマー社(ボストン、マサチューセッツ州)から購入した。ルシフェラーゼ基質(ステデイーグロ)を、プロメガ社(マディソン、ウィスコンシン州)から購入した。コントロール化合物であるリファンピシン、ミフェプリストン、及びスルフィンピラゾンを、シグマ社(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。
【0083】
HepG2細胞の培養を、10%FBSを含有するDMEMを用いて、T175フラスコ中で行う。該トランスフェクション混合物は、1μg/mLのPXR−pcDNA3プラスミドDNA、20μg/mLのCyp3A−LucプラスミドDNA、90μL/mLのリポフェクタミン2000、及び血清なし培地を含む。室温で20分間インキュベート後に、該トランスフェクション混合物(フラスコ当たり1mL)を新しい培地(フラスコ当たり20mL)中の細胞に適用し、そしてフラスコを37℃(5%CO
2)で終夜インキュベートする。
【0084】
各フラスコ中の細胞をPBSで洗浄し、そして2mLのトリプシン−EDTA(0.25%)を加え、37℃、5%CO
2で5分間インキュベートする。次いで、該フラスコを激しくタップして、細胞凝集物を分散する。5%チャコール/デキストランで処理したFBSを含有する8mLのDMEMを加えた後、該混合物全てを円錐管に移す。次いで、細胞を1000rpmで5分間遠心分離する。細胞ペレットを凍結保存用培地(20%血清及び10%DMSOを含有するDMEM)中で最終計数が〜7×10
6細胞/mLにまで再懸濁する。該細胞懸濁液を15mLポリプロピレンチューブ中に、チューブ当たり5mLでアリコートする。細胞を、発泡スチロール断熱容器中、−80℃で終夜置くことによってゆっくりと凍結する。バイアルを、長期間保存のために24時間後に超冷(−140℃)冷凍庫に移す。
【0085】
凍結保存細胞のバイアルを、温水浴中5分間で急激に解凍する。細胞を貯蔵し、そして50mL円錐バイアル中、50mLまで希釈する。該解凍した細胞を1500rpmで5分間遠心分離して細胞を集め、そして該上清を廃棄する。次いで、細胞を新しい培地II(5%チャコール/デキストラン−処理したFBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、100μM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、及び2mMグルタミンを含有するDMEM)中に再懸濁し、グアバ(Guava)セルカウンターを用いてカウントし、そして該同一培地中で1.6×10
5細胞/mLまで希釈する。
【0086】
50マイクロリットルの細胞混合物を、100%DMSO中に溶解した0.25μLの被験化合物を含有するホワイト組織培養処理用384ウェルプレートのカラム1−23中のウェルに加える。50マイクロリットルの培地IIをカラム24のウェルに加える。該プレートを37℃(5%CO
2)で24時間インキュベートし、次いで5μLのアルマルブルー試薬(トレック診断社(Trek Diagnostics)製、カタログ番号00−100)を各ウェルに加える。次いで、プレートを37℃、5%CO
2で更に2時間、次いで室温で1時間インキュベートする。蛍光をEx525/Em598で読み取る。該蛍光を測定した後に、25μLのルシフェラーゼ基質(ステディー−グロ、プロメガ社)を各ウェルに加える。該プレートを室温で15分間インキュベートし、その後に該蛍光をフェラスター(PheraStar)(BMGラボテック社製)プレートリーダーを用いて読み取る。リファンピシン(10μM)、PXRのよく知られた作動薬を、内部標準及び正コントロールとして各プレート中に含める。次いで、該データをパーセントコントロール(%CTRL)として表現し、ここで該コントロールシグナルは該10μMリファンピシンからのシグナルであり、そして該ブランクシグナルは該DMSOビヒクルからのシグナルである。
%CTRL=((化合物シグナル−ブランクシグナル)/(コントロールシグナル−ブランクシグナル))×100
【0087】
化合物を10個の濃度(2.5nM〜50μM、1:3連続希釈)で試験する。アッセイ結果をEC
50として報告し、最大応答の50%での化合物の濃度を観察し、そしてYMAXOBSとして、該化合物について最大応答(最も高いパーセントのCTRL)を観察した。該EC
50を、4つのパラメータのロジスチック回帰モデルを用いて測定される、フィットさせた20ポイント曲線由来の最大応答の半分に相当する濃度として定義する。加えて、化合物をEC
20またはEC
60として報告することもできる。
【0088】
HepG2細胞毒性アッセイについてのデータ分析
化合物を10個の濃度(2.5nM−50μM、1:3の連続希釈)で試験する。アッセイの結果をIC
50として報告し、4個のパラメータロジスチック回帰モデルを用いて測定される、該フィットした20ポイント曲線由来の50%阻害に相当する濃度して定義する。
【0089】
インビトロ代謝アッセイ
アッセイ条件A:
被験化合物を、100%DMSO中の3.5mMストック溶液として与える。化合物を希釈して、1.4%DMSOを含有する50μMアセトニトリル(ACN)溶液を調製し、このものを次いでミクロソームとのインキュベートのために100×ストックとして使用する。各化合物を、代謝安定性−ヒト、ラット、及びマウスアッセイスイート中の3種の各々で、または該代謝安定性−イヌ若しくは代謝安定性−サルスイート中の個々の種として、別々に2組試験する。化合物であるNADPH及び肝臓ミクロソーム溶液を以下の3工程でのインキュベートのためにあわせる。100mM NaP
i、pH7.4、6.6mMのMgCl
2懸濁液中、1.1mg/mLのタンパク質の濃度である、152μLの肝臓ミクロソーム懸濁液を37℃で予め加温する。
1)1.7μLの50μM化合物(98.6%ACN、1.4%DMSO)を同一チューブに加え、そしてこのものを37℃で5分間予めインキュベートする。
2)該反応液を、100mM NaP
i、pH7.4中の予め加温した10mM NADPH溶液の17μLを加えることによって開始する。
3)反応成分を十分に混合し、そして75μLを150μLクエンチ/ストップ溶液中に直ちに(ゼロ時点、T
0)移す。反応液を37℃で10分間インキュベートし、次いで追加の75μLアリコートを150μLクエンチ溶液中に移す。100μM DMN(注入品質コントロールのためのUV標準物質)を含有するアセトニトリルを該クエンチ溶液として使用して、代謝反応を終結する。
4)クエンチした混合物を、アレグラ(Allegra)X−12遠心分離機、SX4750ローター(ベックマンカウンター社製、フラートン、カリフォルニア州)中、1500rpm(〜500×g)で15分間遠心分離して、ペレット変性ミクロソームを得る。次いで、親化合物及びその代謝産物の混合物を含有する容量90μLの上清抽出液を、UV−LC/MS−MS分析のために別個の96ウェルプレートに移して、該混合物中に残存する親化合物のパーセントを測定する。
【表3】
【0090】
アッセイ条件B:
被験化合物をDMSO中20mMとして与える。化合物を希釈して、1.5%DMSOを含有する300μMアセトニトリル(ACN)溶液を調製し、次いでこのものをミクロソームとのインキュベートのために100×ストックとして使用する。各化合物を、該代謝安定性−ヒト、ラット、マウスアッセイスイート中の3種の各々で、または該代謝安定性−イヌもしくは代謝安定性−サルのスイート中での個々の種として別々に2組で試験する。化合物であるNADPH及び肝臓ミクロソームの溶液を以下の3つの工程でのインキュベートのために合わせる。
1. 100mM NaP
i、pH7.4、6.6mMのMgCl
2懸濁液中、1.1mg/mLのタンパク質の濃度である、450μLの肝臓ミクロソーム懸濁液を37℃で予め加温する。
2. 5μLの300μM化合物(98.5%CAN、1.5%DMSO)を同一チューブに加える。
3. 該反応液を、100mM NaP
i、pH7.4中の予め加温した5mM NADPH溶液の50μLを加えることによって開始する。
【0091】
反応成分を十分に混合し、そしてゼロ−分時点について直ちにクエンチ/ストップ溶液のために150μLを取り出す。反応液を37℃で10分間インキュベートし、次いで更に150μLを該インキュベート溶液から取り出す。取り出したアリコートを300μM ACN(これは検出のためのUV標準物質として100μM DMNを含む)と合わせる。
【表4】
【0092】
クエンチした混合物を、アレグラX−12遠心分離器、SX4750ローター(ベックマンコールター社製、フラートン、カリフォルニア州)中、1500rpm(〜500×g)で15分間遠心分離し、変性ミクロソームをペレットする。次いで、親化合物及びその代謝産物を含有する、容量110μLの上清抽出液をUV−LC/MS−MS分析のために別個の96ウェルプレートに移して、該混合物中に残存する親化合物のパーセントを測定する。
【0093】
下記の表2に示す通り、化合物Iはまた、2つの臨界パラメータ、PXRトランス活性化及びヒト肝臓ミクロソーム安定性を通じて確実に峻別され得る。
【0094】
PXRトランス活性化は、潜在的な薬物−薬物相互作用を予測する。化合物がこの受容体を活性化する場合には、他の薬物は通常よりも速く代謝され得て、薬物レベルの低下及び力価の低下を招く。これは明らかに、開発について考慮される化合物における所望しない特性である。
【0095】
インビトロスクリーンは、化合物Iがリストの化合物の1つを除いて全てに対するこの受容体の有意な活性化因子ではないことを示す。
【0096】
最終的に、該化合物を、化合物のインビボクリアランスの良好な予測因子であるヒト肝臓ミクロソーム安定性アッセイ中で試験した。開発の目的のため、70%以下の化合物を更なる考察から外した。
【0097】
従って、PXRトランス活性化の低リスクとヒト肝臓ミクロソーム代謝アッセイ中に残存する化合物の100%との組み合わせは、他の公知で且つ構造的に類似するCCR−1拮抗薬と比較したとき、化合物Iが優れた薬理学的な特性を有することを示す。
【0098】
【表5】
【表6】
【0099】
ラットにおける1回用量薬物動態
雄性スプラーグドーリーラットに、化合物(N=3動物)の溶液を経口又はIV注射によって投与した。連続的な血液試料を、全ての研究について頚静脈から投与後の様々な時点で(例えば、0.17(または経口の場合には0.25)、0.5、0.75、1、2、4、6、8及び24時間)集めた。血漿試料をLC−MS/MSによって分析した。
【0100】
水性媒質中での結晶性薬物物質の懸濁液を評価するための別の研究を上記の通り行った。
【0101】
イヌにおける1回用量薬物動態
雄性ビーグルイヌに、化合物(N=3動物)の溶液を経口又はIV注射によって投与した。連続的な血液試料を、全ての研究について投与後の様々な時点で(例えば、0.17(または経口の場合には0.25)、0.5、0.75、1、2、4、6、8及び24時間)集めた。血漿試料をLC−MS/MSによって分析した。
【0102】
下記の表3に示す通り、該インビボ薬物動態プロファイルは、2つの異なる種での化合物Iの優位性を実証する。特に、ラットにおける溶液または水性結晶性懸濁液のいずれかは、該表中の他の化合物に対してより高レベルの曝露を実証した。このプロファイルの利点は、臨床における固体投与製剤の予測される優れたパフォーマンスである。加えて、イヌにおいては、化合物1はインビボクリアランス(CL)に関して優れたプロファイルを示す。該比較化合物に対して、8〜13倍の低下が実証される。該懸濁液製剤および低下したクリアランスの組み合わせた優れたパフォーマンスは化合物1を確実に峻別する。
【0103】
【表7】
【表8】
【0104】
哺乳動物ケモカイン受容体は、哺乳動物(例えば、ヒト)における免疫細胞機能を干渉しまたは促進するための標的を提供する。ケモカイン受容体の機能を阻害するかまたは促進する化合物は、治療目的のために免疫細胞機能を調整するのに特に有用である。
【0105】
加えて、本願発明は式(I)の化合物に関するものであって、該化合物は広範囲の炎症性、感染性、及び免疫調節性の障害及び疾患(例えば、喘息及びアレルギー性疾患、病原性微生物(定義に、ウイルスを含む)による感染症を含む)、並びに自己免疫性病変(例えば、関節リウマチ及び関節硬化症)の予防及び/又は治療において有用であると考えられる。
【0106】
例えば、哺乳動物ケモカイン受容体(例えば、ヒトケモカイン受容体)の1個以上の機能を阻害する本願発明の化合物を投与して、炎症性または感染性の疾患を阻害する(すなわち、減少するかまたは防止する)ことができる。結果として、1個以上の炎症性プロセス(例えば、白血球漏出、接着、走化性、エキソサイトーシス(例えば、酵素、ヒスタミンの)、または炎症性媒介因子の放出)を阻害する。
【0107】
同様に、哺乳動物ケモカイン受容体(例えば、ヒトケモカイン)の1個以上の機能を促進する本願発明の化合物を投与して、免疫性または炎症性の応答(例えば、白血球漏出、接着、走化性、エキソサイトーシス(例えば、酵素、ヒスタミンの)、または炎症性媒介因子の放出)を刺激し(誘発するかまたは増大する)、その結果炎症性プロセスの有益な刺激を生じる。例えば、好酸球が補充されて、寄生性感染症と闘うことができる。加えて、ケモカイン受容体の内在化の誘発または細胞の移動の誤った指示を招く様式での化合物の運搬により、細胞上での受容体発現の低下を引き起こすのに十分な化合物の運搬を考慮するならば、上記の炎症性、アレルギー性及び自己免疫疾患の処置もまた該哺乳動物ケモカイン受容体の1個以上の機能を促進する本願発明の化合物について考慮することができる。
【0108】
霊長類(例えば、ヒト)に加えて、様々な他の哺乳動物を本願発明の方法に従って処置することができる。例えば、哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラットまたは他のウシ科、ヒツジ科、ウマ科、イヌ科、ネコ科、げっ歯動物もしくはネズミ科の種類を含むが、これらに限定されない)を処置することができる。しかしながら、該方法はまた他の種類(例えば、鳥類)において実施することができる。上記方法において処置される対象は、ケモカイン受容体活性の調整が所望される、哺乳動物の雄性または雌性である。本明細書中で使用する「調整」とは、拮抗作用、作動作用、部分的拮抗作用及び/又は部分的作動作用を包含することを意図する。
【0109】
ケモカイン受容体機能のインヒビターを用いて処置することができるヒトまたは他の種類の疾患または病気は以下のものを含むが、これらに限定されない:炎症性またはアレルギー性の疾患及び病気(例えば、呼吸器系アレルギー性疾患(例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、好酸球性蜂巣炎(例えば、ウェルズ症候群)、好酸球性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎)、好酸球性筋膜炎(例えば、シュルマン症候群)、遅延型過敏症、間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性肺線維症、またはILD関連性の関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強直性せきつい炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎または皮膚筋炎);全身性のアナフィラキシーまたは過敏性の反応、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対する)、混入トリプトファンの摂取に起因する好酸球増加筋痛性症候群、昆虫刺傷アレルギー;自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、若年発症糖尿病;糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット症候群;移植片拒絶(例えば、移植術における)(例えば、同種移植拒絶反応または移植片対宿主疾患を含む);炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎);脊椎関節症;強皮症;乾癬(例えば、T細胞媒介性の乾癬を含む)および炎症性皮膚病(例えば、皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、じん麻疹;血管炎(例えば、壊死性、皮膚、および過敏性の血管炎);好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎;皮膚または臓器の白血球浸潤を伴なう癌。所望しない炎症性応答が阻害されるべき他の疾患または病気を処置することができ、例えば再灌流障害、関節硬化症、ある血液学的悪性腫瘍、サイトカイン誘発性毒性(例えば、敗血症性ショック、内毒素性ショック)、多発性筋炎、皮膚筋炎を含むが、これらに限定されない。ケモカイン受容体機能のインヒビターを用いて処置することができるヒトまたは他の種の感染性の疾患または病気は例えば、HIVを含むが、これに限定されない。
【0110】
ケモカイン受容体機能のプロモーターを用いて処置することができるヒトまたは他の種類の疾患または病気は例えば以下のものを含むが、これらに限定されない:免疫抑制(免疫不全症候群(例えば、AIDSまたは他のウイルス感染症)を有する個体、あるいは放射線治療、化学療法、自己免疫疾患に対する治療、または薬物治療(例えば、コルチコステロイド治療)を受けている個体において、免疫抑制を引き起こす場合);受容体機能の先天性欠損または他の原因に起因する免疫抑制;及び、感染性疾患、を含むが、これらに限定されない。該感染性疾患としては、例えば寄生虫性疾患(例えば、寄生ぜん虫感染症を含むが、これらに限定されない)(例えば、線虫類(円虫類);(鞭虫症、ぎょう虫症、回虫症、鉤虫症、糞線虫症、旋毛虫症、フィラリア症);吸虫(血液吸虫)(住血吸虫症、肝吸虫症)、条虫(cestodes)(サナダムシ(tape worms))(包虫症、無鉤条虫症、のう虫症);内臓虫、臓器幼虫移行症(例えば、小回虫)、好酸球性胃腸炎(例えば、アニサキ種、フォカネマ種)、皮膚幼虫移行症(ブラジル鉤虫、犬鉤虫))が挙げられる。従って、本願発明の化合物は、広範囲の炎症性、感染性及び免疫調節性の障害及び疾患の予防及び治療において有用である。
【0111】
加えて、上記の炎症性、アレルギー性及び自己免疫の疾患の処置もまた、ケモカイン受容体の内在化の誘起または細胞の移動の誤った指示を招く様式での化合物の運搬による、細胞での受容体発現の低下を引き起こすのに十分な化合物の運搬を考慮するならば、ケモカイン受容体機能のプロモーターとして考慮することができる。
【0112】
別の態様において、本願発明を用いて、Gタンパク質共役受容体の推定上の具体的な作動薬または拮抗薬を評価することができる。本願発明は、ケモカイン受容体の活性を調整する化合物の製造およびスクリーニングアッセイの遂行における、式(I)の化合物の使用に関する。さらに、本願発明の化合物は、例えば競合的な阻害によってケモカイン受容体への他の化合物の結合部位を確立したり若しくは決定する際に、またはその公知の活性を未知の活性を有する化合物と比較するためのアッセイにおける基準物質として、有用である。新規なアッセイまたはプロトコールを開発する際に、本願発明の化合物を用いてそれらの効力を試験することができる。具体的には、該化合物を、例えば上記疾患が関与する薬学研究における使用のために市販のキットで提供することができる。本願発明の化合物はまた、該ケモカイン受容体の推定上の特異的な調整薬の評価のために有用である。加えて、結合しない化合物の例としてまたはこれらの受容体上で活性な化合物の構造的な変異体としてのいずれかで供することによって、ケモカイン受容体であるとは考えられないGタンパク質共役受容体の特異性を調べるのに、本願発明の化合物を利用することができ、これは相互作用の具体的な部位を定義するのに助けとなり得る。
【0113】
式(I)の化合物を用いて、以下の障害を治療するかまたは予防する。該障害としては、関節リウマチ、変形性股関節症、肺血症性ショック、関節硬化症、動脈瘤、発熱、心臓血管系作用、血行動態(haemodynamic)ショック、敗血症症候群、虚血再灌流障害、マラリア、クローン病、炎症性腸疾患、マイコバクテリア感染症、髄膜炎、乾癬、うっ血性心不全、線維症、悪液質、移植片拒絶、自己免疫疾患、皮膚炎症性疾患、多発性硬化症、放射線障害、高酸素症肺胞障害(hyperoxic alveolar injury)、HIV、HIV認知症、インスリン非依存型糖尿病、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、水疱性類天疱瘡、アレルギー性大腸炎、湿疹、結膜炎、移植、家族性好酸球増多症、好酸球性蜂巣炎、好酸球性肺炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、薬剤性過敏症症候群、嚢胞性線維症、チャーグ・ストラウス症候群、リンパ腫、ホジキン病、結腸癌、フェルティ症候群、サルコイドーシス、ブドウ膜炎、アルツハイマー疾患、糸球体腎炎、または全身性エリテマトーデスから選ばれる。
【0114】
別の態様において、式(I)の化合物を用いて、関節リウマチ、変形性股関節症、関節硬化症、動脈瘤、発熱、心臓血管系作用、クローン病、炎症性腸疾患、乾癬、うっ血性心不全、多発性硬化症、自己免疫疾患、または皮膚炎症性疾患から選ばれる炎症性障害を治療するかまたは予防する。
【0115】
別の態様において、該化合物を用いて、関節リウマチ、変形性股関節症、関節硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、または多発性硬化症から選ばれる炎症性障害を治療するかまたは予防する。
【0116】
炎症性、感染性および免疫調節性の疾患及び疾患(例えば、喘息およびアレルギー性疾患を含む)並びに自己免疫性病変(例えば、関節リウマチ及び関節硬化症)、及び上記のこれらの病状を予防するのにまたは治療するための併用治療は、本願発明の化合物及びそれらの有用性について知られる他の化合物との組み合わせによって例示される。例えば、炎症の治療または予防において、本願発明の化合物を、抗炎症性または鎮痛性の薬物、例えば鎮静作動薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、シクロオキシゲナーゼ2阻害薬、インターロイキン阻害薬(例えば、インターロイキン−1阻害薬)、腫瘍壊死因子阻害薬、NMDA拮抗薬、一酸化窒素の阻害薬もしくは一酸化窒素の合成の阻害薬、非ステロイド性抗炎症性薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、またはサイトカイン−抑制性抗炎症性薬(例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、コデイン、フェンタニル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、モルヒネ、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、ステロイド性鎮痛薬、スフェンタニル、スリンダク、インターフェロンアルファなどの化合物)と組み合わせて使用することができる。同様に、本願発明の化合物を、鎮痛薬;増強薬(例えば、カフェイン、H2−拮抗薬、シメチコン、水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウム);充血除去薬(例えば、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、偽エフェドリン、オキシメタゾリン、エピネフリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、またはレボデスオキシ−エフェドリン);および、鎮咳薬(例えば、コデイン、ヒドロコドン、カラミフェン、カルベタペンタン、またはデキストロメトルファン);利尿薬;および、鎮静性もしくは非鎮静性の抗ヒスタミン薬と一緒に投与することができる。同様に、式(I)の化合物を、本願発明の化合物が有用である疾患または病気の治療/予防/抑制若しくは軽減において使用される他の薬物と組み合わせて使用することができる。該他の薬物を、一般的に使用される経路によって及び量で、よって、本願発明の化合物と同時期にまたは連続的に投与することができる。式(I)の化合物を、1個以上の他の薬物と同時期に使用するとき、式(I)の化合物に加えて該他の薬物を含有する医薬組成物を使用することができる。従って、本願発明の医薬組成物は、式(I)の化合物に加えて、1個以上の他の有効成分をも含む組成物を包含する。
【0117】
別個にまたは同一医薬組成物中でのいずれかで投与される、本願発明の化合物と組み合わせることができる他の有効成分の例としては、例えば以下の物を含むが、これらに限定されない。
(a)インテグリン拮抗薬(例えば、セレクチン、ICAM及びVAL−4に対する薬物);(b)ステロイド(例えば、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、およびヒドロコルチゾン);(c)免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン及び他のFK−506タイプの免疫抑制剤);(d)抗ヒスタミン薬(H1−ヒスタミン拮抗薬)(例えば、ブロムフェニラミン、クロルフェニルアミン、デキスクロルフェニルアミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリペレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミン、ピリラミン、アステミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジ、デスカルボエトキシロラタジンなど);(e)非ステロイド性抗喘息薬(例えば、b2−作動薬(テルブタリン、メタプロテレノール、フェノテロール、イソエタリン、アルブテロール(albuteral)、ビトルテロール、及びピルブテロール))、テオフィリン、クロモグリク酸ナトリウム、アトロピン、臭化イプラトロピウム)、ロイコトリエン拮抗薬(ザフィルルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、イラルカスト(iralukast)、ポビルカスト(pobilukast)、SKB−102、203), ロイコトリエン生合成阻害剤(ジレウトン、BAY−1005);(f)非ステロイド性抗炎症性薬(NSAIDs)(例えば、プロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキス酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、及びチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナック、フェンクロジック酸、フェンチアザック、フロフェナック、イブフェナック、イソキセパック、オキシピナック、スリンダク、チオピナック、トルメチン、ジドメタシン、及びゾメピラク)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸及びトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサル及びフルフェニサール)、オキシカム類(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム、及びテノキシカム)、サリチル酸誘導体(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)、およびピラゾロン類(アパゾン、ベズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン));(g)シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤;(h)IV型ホスホジエステラーゼ(PDE−IV)の阻害剤;(i)ケモカイン受容体の他の拮抗薬;(j)コレステロール降下薬(例えば、HMG−COA還元酵素阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン及びプラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、および他のスタチン)、金属イオン封鎖薬(コレスチラミンおよびコレスチポール)、ニコチン酸、フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブラート、およびベンザフィブラート)、およびプロブコール);(k)抗糖尿病薬(例えば、インスリン、スルホニルウレア、ビグアニド(メトホルミン)、α−グルコシダーゼ阻害薬(アカルボース)およびグリタゾン類(トログリタゾンおよびピオグリタゾン);(l)インターフェロンの製品(インターフェロンアルファ−2a、インターフェロン−2B、インターフェロンアルファ−N3、インターフェロンベータ−1a、インターフェロンベータ−1b、インタフェーロンガンマ−1b);(m)抗ウイルス化合物(例えば、エファビレンツ、ネビラピン、インジナビル、ガンシクロビル、ラミブジン、ファムシクロビル、およびザルシタビン);(n)他の化合物(例えば、5−アミノサリチル酸およびそのプロドラッグ、代謝拮抗薬(例えば、アザチオプリンおよび6−メルカプトプリン)および細胞毒性癌化学療法薬)。第2有効成分に対する式(I)の化合物の重量比は変えることができ、これは個々の有効成分の有効量に依存する。
【0118】
一般的には、個々の有効量を使用する。従って、例えば式(I)の化合物をNSAIDと組み合わせるとき、該NSAIDに対する本願発明の化合物の重量比は通常、約1000:1〜約1:1000の範囲か、或いは約200:1〜約1:200の範囲である。式(I)の化合物と他の有効成分との組み合わせは通常、上記の範囲内でもあるが、しかし個々の場合には個々の有効成分の有効量が使用されるべきである。
【0119】
該化合物を、治療学的に有効な量で哺乳動物に投与する。「治療学的に有効な量」とは、式(I)の化合物を単独でまたは別の治療薬と組み合わせて哺乳動物に投与するとき、該式(I)の化合物の量が血栓塞栓性病状または該疾患の進行を防止しまたは軽減するのに有効であることを意味する。
【0120】
用量および製剤化
本願発明の化合物を、経口用剤形(例えば、錠剤、カプセル剤(これらの各々は、徐放性または持効性の製剤を含む)、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁剤、シロップ剤及び乳剤)で投与することができる。そのものはまた、静脈内(ボーラスまたは注入)、腹腔内、皮下、または筋肉内の形態(これら全ては、医薬分野の当業者にとってよく知られる剤形を用いる)で投与することができる。そのものは単独で投与することができるが、しかし通常、投与の選ばれた経路及び標準的な薬務に基づいて選ばれた医薬的な担体と一緒に投与する。
【0121】
本願発明の化合物についての投薬計画は、当然に公知の因子(例えば、特定の薬物の薬力学的な性質、並びにその投与の様式及び経路;レシピエンの種類、年齢、性別、健康、医学的状態、及び体重;該症状の性質及び程度;併用療法の種類;処置の回数;投与の経路、患者の腎臓及び肝臓の機能;および、所望する効果)に基づいて変わる。医師または獣医師は、血栓塞栓性障害の進行を防止し、無効にし、または抑制するのに必要とされる薬物の有効量を決定しそして処方することができる。
【0122】
一般的な指針によって、各有効成分の1日経口用量は、示された効果のために使用するとき、1日当たり、約0.001〜1000mg/体重kgの間、または約0.01〜約100mg/体重kgの間、或いは約1.0〜20mg/kg/日の間、の範囲に及ぶ。静脈的に、該用量は、一定の速度の注入の間、約1〜約10mg/kg/分の範囲に及ぶ。本願発明の化合物を1日1回服用で投与することができるか、または1日用量の総量を1日2回、3回若しくは4回の分割投与で投与することができる。
【0123】
本願発明の化合物を、適当な鼻腔内用ビヒクルの局所的な使用による経鼻用形態で、または経皮皮膚パッチを用いる経皮経路によって投与することができる。経皮送達システムの形態で投与するとき、用量投与は当然に、該投薬計画の間、間欠的よりもむしろ連続的である。
【0124】
該化合物は典型的には、意図する投与の形態に関して適当に選ばれた適当な医薬的な希釈剤、賦形剤、または担体(本明細書中、医薬的な担体と総称する)、すなわち通常の薬務と調和する経口用錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などと一緒に投与する。
【0125】
例えば、錠剤またはカプセル剤の形態での経口投与の場合には、有効な薬物成分を、経口用の非毒性の医薬的に許容し得る不活性担体(例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなど)と組み合わせることができ;液体形態での経口投与の場合には、該経口薬物成分をいずれかの経口用の非毒性の医薬的に許容し得る不活性担体(例えば、エタノール、グリセロール、水など)と組み合わせることができる。その上、所望するかまたは必要とする場合には、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤をまた、該混合物中に含めることができる。適当な結合剤とは、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えば、グルコースまたはベータ−ラクトース)、コーンシロップ、天然及び合成のガム(例えば、アカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどを含む。これらの剤形中で使用する滑沢剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含むが、これらに限定されない。
【0126】
本願発明の化合物はまた、リポソーム送達システムの形態(例えば、小単一ラメラ小胞、大単一ラメラ小胞、及び多重ラメラ小胞)で投与することができる。リポソームを、様々なリン脂質(例えば、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリン)から形成することができる。
【0127】
本願発明の化合物はまた、標的となり得る薬物担体として可溶性の高分子と結合することができる。該高分子は、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミド−フェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリシンを含み得る。その上、本願発明の化合物を、薬物の徐放性を達成するのに有用な生分解性高分子のクラス(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグルコール酸との共重合体、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリル酸、及びハイドロゲルの架橋若しくは両親媒性のブロック共重合体)と結合することができる。
【0128】
投与に適当な剤形(医薬組成物)は、用量単位当たり有効成分の約1ミリグラム〜約100ミリグラムを含み得る。これらの医薬組成物において、該有効成分は通常、該組成物の総重量基準で約0.5〜95重量%の量で存在する。
【0129】
ゼラチンカプセル剤は、有効成分及び粉末担体(例えば、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸など)を含み得る。同様な希釈剤を、圧縮錠を製造するのに使用することができる。錠剤及びカプセル剤の両方を、一定時間にわたる連続的な放出の薬物治療を提供するために徐放性製品として製造することができる。圧縮錠剤を、なんらかの所望しない味覚をマスクし及び該錠剤を空気から防止するのに糖衣するかまたはフィルムコートし、あるいは胃腸管中での選択的な崩壊のために腸溶性とすることができる。
【0130】
経口投与のための液体剤形は患者の受け入れを増大するために、着色剤及び芳香剤を含み得る。
【0131】
通常、水、適当な油、生理食塩水、水性デキストロース(グルコース)、及び関連糖類の溶液及びグリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)は、非経口用溶液のための適当な担体である。非経口投与のための溶液は、有効成分の水溶性塩、適当な安定化剤、及び必要ならば緩衝物質を含み得る。抗酸化剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリム、もしくはアスコルビン酸のいずれか単独またはそれらの組み合わせ)は適当な安定化剤である。クエン酸およびその塩、並びにEDTAナトリウムもまた使用される。加えて、非経口溶液は、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、メチル−若しくはプロピル−パラベン、及びクロロブタノール)を含み得る。
【0132】
適当な医薬的な担体は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company(本分野の標準的な教科書である)中に記載されている。
【0133】
本願発明の化合物のための有用な医薬的剤形の代表例は以下に示すことができる。
【0134】
カプセル剤
多数のユニットカプセル剤は、標準的な2個の硬ゼラチンカプセル剤に各々100ミリグラムの粉末有効成分、150mgのラクトース、50ミリグラムのセルロース、及び6ミリグラムのステアリン酸マグネシウムを充填することによって製造することができる。
【0135】
軟ゼラチンカプセル剤
消化性油(digestible oil)(例えば、大豆油、綿実油、またはオリーブ油)中の有効成分の混合物は、ゼラチン中への容積移送式真空ポンプによって製造し及び注入して、100ミリグラムの有効成分を含有する軟ゼラチンカプセル剤を形成することができる。該カプセル剤は洗浄しそして乾燥する。
【0136】
錠剤
錠剤は、該用量単位が100ミリグラムの有効成分、0.2ミリグラムのコロイド状の二酸化ケイ素、5ミリグラムのステアリン酸マグネシウム、275ミリグラムの微結晶性セルロース、及び11ミリグラムのデンプン、及び98.8ミリグラムのラクトースとなるように通常の製法によって製造する。適当なコーティングを塗布して、おいしさを増大したりまたは吸収を遅らせることができる。
【0137】
注射剤
注射による投与に適当な非経口組成物は、10容量%のプロピレングリコール及び水中で1.5重量%の有効成分を撹拌することによって製造することができる。該溶液を塩化ナトリウムで等張性としそして滅菌する。
【0138】
懸濁剤
水性懸濁剤は、各5mLが100mgの微粉化した有効成分、200mgのカルボキシメチルセルロースナトリウム、5mgの安息香酸ナトリウム、1.0gのソルビトール溶液(米国薬局方)及び0.025mLのバニリンを含むように、経口投与のために製造することができる。
【0139】
本願発明の化合物を他の抗凝固薬と組み合わせるとき、例えば1日用量は、患者の体重のキログラム当たり約0.1〜100ミリグラムの式Iの化合物、及び約1〜7.5ミリグラムの第2抗凝固薬であり得る。錠剤剤形の場合には、本願発明の化合物は一般的に、用量単位当たり約5〜10ミリグラムの量で、及び該第2抗凝固薬は用量単位当たり約1〜5ミリグラムの量で存在し得る。
【0140】
2個以上の上記第2治療薬を式Iの化合物と一緒に投与する場合には、通常典型的な1日用量及び典型的な剤形中での各成分の量を、組み合わせて投与するとき、該治療薬の相加または相乗効果の観点から、単独で投与するときの該薬物の通常の用量と比べて減少することができる。特に単一投与単位として供する場合には、該組み合わせる有効成分の間での化学的相互作用の可能性が存在する。この理由のため、式Iの化合物及び第2治療薬を単一投与単位中で組み合わせるとき、それらは、該有効成分を単一投与単位中で組み合わせるが、該有効成分の間での物理的接触が最小となる(すなわち、低下する)ように、製剤化する。例えば、1有効成分を腸溶性とし得る。該有効成分の1つを腸溶性とすることによって、該組み合わせる有効成分の間での接触を最小とすることが可能であるだけでなく、該胃腸管中でのこれらの成分の1つの放出を制御し、その結果これらの成分の1つを胃中で放出されるのではなく、むしろ腸中で放出することが可能となる。該有効成分の1つはまた、胃腸管を通しての徐放性を有効とする物質を用いてコーティングし、そして該組み合わせた有効成分の間での物理的接触を最小とするように機能させることもできる。その上、該徐放性成分を更に腸溶性として、その結果この成分の放出が腸中でのみ起こるようにすることもできる。更に別の方法としては、該1成分を徐放性及び/又は腸溶放出性の高分子でコーティングし、他方の成分をまた、該有効成分を更に分離するために低粘性グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)または当該分野で知られる他の適当な物質でコーティングする、組み合わせ製品の製剤化を含む。該高分子コーティングは、他の成分との相互作用への追加的なバリヤーを形成するのに役立つ。
【0141】
これらのこと、並びに本願発明の組み合わせ製品の成分間での接触を最小とする他の方法は、単一剤形で投与するかまたは別個の形態で投与する(しかし、同一様式によって同時期に投与する)かのいずれかであっても、当業者にとって容易に明白であろう。
【0142】
本願発明を詳細に且つ具体的な実施態様を引用して記載してきたが、様々な改変及び修飾を本願発明の精神および範囲から逸脱することなく、その範囲内で行うことができることは当業者にとって明白であろう。