特許第5795804号(P5795804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795804
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/00 20060101AFI20150928BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20150928BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20150928BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150928BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C09D167/00
   C09D163/00
   C09D5/02
   C09D7/12
   C08G59/24
【請求項の数】21
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-531619(P2013-531619)
(86)(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公表番号】特表2013-543532(P2013-543532A)
(43)【公表日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】US2011051291
(87)【国際公開番号】WO2012044455
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年6月30日
(31)【優先権主張番号】61/388,077
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ジン,シン
(72)【発明者】
【氏名】ドラムライト,レイ イー.
(72)【発明者】
【氏名】カインズ,バーンハード
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,ジェリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘフナー,ロバート イー.
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−047336(JP,A)
【文献】 特開平02−047177(JP,A)
【文献】 特開平07−053897(JP,A)
【文献】 特表2013−539804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00〜 10/00
101/00〜201/10
C08G 59/00〜 59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学構造を有するエポキシ樹脂ポリマー組成物を含む硬化性コーティング組成物:
【化5】
[式中、nは、1〜3000の数であり;mは、それぞれ独立に、0または1の値を有し;Rは、それぞれ独立に、−Hまたは−CHであり;Rは、それぞれ独立に、−HまたはC〜Cアルキル基であり;R’〜R’は、独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基アラルキル基、ハロゲン化物基、シアノ基、ニトロ基、ブロックイソシアネート基、またはアルキルオキシ基であり;さらに、R’〜R’のいずれか2つは、独立して縮合環を形成していてもよく;Xは、シクロアルキレン基(置換シクロアルキレン基を含み、ここでの置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基アラルキル基、ニトロ基、ブロックイソシアネート基、またはアルキルオキシ基を含む)、シクロアルキレン基とアルキレン基との組合せおよび間に架橋部分を有するアルキレン基とシクロアルキレン基との組合せである]であって、
前記エポキシ樹脂ポリマー組成物は水分散性である、硬化性コーティング組成物
【請求項2】
硬化剤を含む、請求項1に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が、(a)少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物と、(b)少なくとも1つの芳香族ジオールとの反応生成物を含む、請求項1に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物が、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む、請求項3に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物が、cis−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルおよび/またはtrans−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む、請求項3に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物が、cis−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルおよび/またはtrans−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む、請求項3に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物が、cis−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、trans−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、cis−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、および/またはtrans−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む、請求項3に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物が、1,1’−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む、請求項3に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの芳香族ジオールが、以下の一般化学構造を有する少なくとも1つの芳香族ジオールを含む、請求項3に記載の硬化性コーティング組成物:
【化6】
[式中、R’〜R’は、独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基であるか;または、式中、R’〜R’基の少なくとも2つ以上が一緒に縮合している]。
【請求項10】
前記少なくとも1つの芳香族ジオールがカテコールを含む、請求項3に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が、300〜1,000,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が、ASTM D1708法によって測定した場合に、21℃で4パーセント〜10000パーセントの破断点伸びを有する、請求項1に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が、ASTM D1708法によって測定した場合に、21℃で0.05MPa〜500Mpaの引張靭性を有する、請求項1に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項14】
前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が、−50℃〜200℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項15】
前記エポキシ樹脂ポリマー組成物は、(i)水分散性アクリル樹脂との反応;(ii)水分散性ポリエステル樹脂との反応;(iii)フリーラジカル機序によって重合可能である二重結合を含有する少なくとも1種の酸モノマーとのグラフト化;(iv)フリーラジカル機序によって重合可能である二重結合を含有する少なくとも1種の酸モノマーおよび酸基を含有しないビニルモノマーとのグラフト化;または(v)前記改良されたエポキシ樹脂ポリマー組成物とリン酸および水との反応;ならびに(vi)塩基を用いた前記(i)〜(v)の反応生成物の少なくとも部分的な中和によって、水分散性にされた、請求項に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の架橋試薬、少なくとも1種の硬化触媒、少なくとも1種の溶媒、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の架橋試薬、硬化触媒、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の硬化性コーティング組成物が硬化したコーティング。
【請求項19】
金属包装材において使用される請求項18に記載のコーティング。
【請求項20】
缶に対する内部または外部保護コーティングに使用される、請求項18に記載のコーティング。
【請求項21】
(a)請求項1に記載の硬化性コーティング組成物を提供するステップと;(b)請求項1に記載の硬化性コーティング組成物を金属基材に適用するステップと;(c)0〜300℃の温度で、前記硬化性コーティング組成物および基材を熱硬化させるステップとを含む、コーティング物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、「COATING COMPOSITIONS」という表題で2010年9月30日に出願された米国仮特許出願第61/388,071号に基づく優先権を主張する非仮出願であり、この教示を、以下において完全に再現されているように参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、カテコールおよび脂環式ジグリシジルエーテル化合物を含む反応混合物から調製された改良されたエポキシ樹脂組成物から調製されるコーティング組成物に関する。該コーティング組成物は、例えば、缶および他の金属の食品および飲料包装コーティングのための内部および外部の保護コーティング組成物として有用である。
【背景技術】
【0003】
エポキシ樹脂は、化学薬品に対する優れた耐性、妥当な可撓性、加水分解、白化(blush)、腐食性食品および飲料に対する耐性、良好な熱安定性を有すること、ならびに味または匂いの変化に対して不活性であることの独特な特性の組合せを提供するため、食品および飲料容器の内側および外側表面のコーティング組成物中に広範に使用されている。様々な製造方法が、こうしたコーティングを基材に適用するために使用される。コーティングされたフラット金属シートが缶の形態に引き伸ばされる缶形成プロセス中、コーティングは無傷のままであるべきなので、可撓性および付着性が必要である。しかし、缶コーティング用途において通常使用されるビスフェノールA系の高分子量エポキシ樹脂は、室温において限られた可撓性および靭性を有する。室温におけるビスフェノールA系のエポキシ樹脂の破断点伸び(elongation to break)は乏しいことが知られている。靭性不足は、特定の用途、例えばコーティング前で形成後の適用における問題となる。一部の缶形成加工において、現エポキシ樹脂コーティングの比較的低い可撓性を補填するために、より高い温度が使用される。
【0004】
耐レトルト性は、缶コーティング組成物に対する別の有益な特性である。缶に食品を充填する場合、内容物は大抵、食品内容物の性質に応じておよそ120〜130℃の温度まで約1時間〜2時間の間、密閉された缶を加熱することによって滅菌される。該コーティングは、それからかなりの期間(例えば何年もの間)食品内容物と直接接触する。滅菌中およびその後の貯蔵中、コーティングがその保全性を維持することで、金属缶の腐食を防止し、缶内容物への金属の移動およびコーティングの崩壊した分子の移動を防止する。コーティングの耐レトルト性を損なうことなくコーティングの可撓性を向上させる産業の動向は、これらの技術的課題に対処する代替コーティング組成物について開かれている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一実施形態は、以下の化学構造(I)を有する改良されたエポキシ樹脂ポリマー組成物を含む硬化性コーティング組成物に向けられている:
【0006】
【化1】

[式中、nは、1〜約3000の数であり;mは、それぞれ独立に、0または1の値を有し;Rは、それぞれ独立に、−Hまたは−CHであり;Rは、それぞれ独立に、−HまたはC〜Cアルキレン基(飽和二価脂肪族炭化水素基)であり;R’〜R’は、独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、または他の置換基、例えば、ハロゲン化物基、シアノ基、ニトロ基、ブロックイソシアネート基もしくはアルキルオキシ基であり;さらに、R’〜R’のいずれか2つは、独立して縮合環を形成していてもよく;Xは、シクロアルキレン基(置換シクロアルキレン基を含み、ここでの置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、または他の置換基、例えば、ニトロ基、ブロックイソシアネート基もしくはアルキルオキシ基を含む)、シクロアルキレン基とアルキレン基との組合せおよび間に架橋部分を有するアルキレン基とシクロアルキレン基との組合せである]。
【0007】
本発明の別の実施形態によれば、上記硬化性の改良されたエポキシ樹脂コーティング組成物は、(i)構造(I)の上記改良されたエポキシ樹脂、(ii)少なくとも1種の硬化剤、(iii)任意に、少なくとも1種の硬化触媒、(iv)任意に、少なくとも1種の溶媒、および(v)任意に、少なくとも1種の添加剤を含む。
【0008】
好ましい一実施形態において、脂環式ジグリシジルエーテル化合物およびカテコールをうまく使用することで、高いレベルの破断点伸びおよび高引張靭性を有し、有利には上記の硬化性組成物を調製する際に使用することができる実質的に直鎖状の高分子量エポキシ樹脂生成物を作ることができることが見出された。
【0009】
本発明のまた別の実施形態は、上記の硬化性コーティング組成物を硬化させることによって調製される硬化コーティングに向けられている。
【0010】
本発明は、金属の食品および飲料包装用途に有用な、著しく高い可撓性、レトルトプロセス前後の良好な耐レトルト性および優れた付着性、良好な耐有機溶媒性、ならびに良好な視覚的白化の出現(visual blush appearance)を有するコーティングおよびコーティングを調製するための方法を提供する。
【0011】
本発明のコーティングは、特に缶コーティングが金属の食品包装用途に使用される場合に高可撓性、良好な耐レトルト性、およびレトルトプロセス前後の金属に対する優れた付着性が所望される缶コーティングを作製するなどのための様々なコーティング用途において使用することができる。本発明は有利には、基材に対する付着性、耐溶媒性および耐レトルト性などの他のコーティング特性に負の影響を与えることなく可撓性が改善されたコーティング組成物を提供する。
【0012】
本発明の改良された高分子量エポキシ樹脂を含む硬化性コーティング組成物の可撓性は、ウェッジ曲げ可撓性測定(Wedge Bend Flixibility measurement)によって実証され、その耐溶媒性は、メチルエチルケトン(MEK)二重摩擦試験(Double Rubs Test)によって特徴づけられ、レトルトプロセス中のその耐レトルト性および安定した付着性は、乳酸溶液におけるレトルト測定によって特徴づけられる。ウェッジ曲げ可撓性の結果は、本発明の改良された高分子量エポキシ樹脂を含む硬化性コーティング組成物が、硬化したビスフェノールA系の高分子量9型エポキシ樹脂より可撓性であることを示している。MEK二重摩擦の結果および耐レトルト性測定は、本発明の改良された高分子量エポキシ樹脂を含む硬化性コーティング組成物が、ビスフェノールA系の高分子量エポキシ樹脂の硬化性コーティング組成物と同様の良好な耐化学溶媒性および耐レトルト性を提供することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の広い一実施形態は、脂環式ジグリシジルエーテルと芳香族ジオールとの反応生成物に基づく、新規な高分子量エポキシ樹脂を用いたコーティング組成物に関する。より詳細には、本発明のコーティング組成物には、コーティングプロセスおよびコーティング変形プロセス中およびその後のコーティング性能を向上させる高レベルの破断点伸びおよび高引張靭性を有する実質的に直鎖状の高分子量エポキシ樹脂が含まれる。例えば、本発明のコーティング組成物において有用なエポキシ樹脂は、(a)脂環式ジグリシジルエーテル(DGE)と、(b)カテコール、置換カテコールまたはその混合物などの芳香族ジオールとの反応生成物を含んでよい。
【0014】
硬化コーティングは、基材に対する付着性、ならびに耐溶媒性および耐レトルト性などの他のコーティング特性に負の影響を与えることなく、改善された可撓性を示す。
【0015】
本発明の硬化性コーティング組成物は、第1構成成分として、以下の化学構造(I)を有する改良されたエポキシ樹脂を含む:
【0016】
【化2】

[式中、nは、1〜約3000の数であり;mは、それぞれ独立に、0または1の値を有し;Rは、それぞれ独立に、−Hまたは−CHであり;Rは、それぞれ独立に、−HまたはC〜Cアルキレン基(飽和二価脂肪族炭化水素基)であり;R’〜R’は、独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、または他の置換基、例えば、ハロゲン化物基、シアノ基、ニトロ基、ブロックイソシアネート基もしくはアルキルオキシ基であり;さらに、R’〜R’のいずれか2つは、独立して縮合環を形成していてもよく;Xは、シクロアルキレン基(置換シクロアルキレン基を含み、ここでの置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、または他の置換基、例えば、ニトロ基、ブロックイソシアネート基またはアルキルオキシ基を含む)、シクロアルキレン基とアルキレン基との組合せおよび間に架橋部分を有するアルキレン基とシクロアルキレン基との組合せである]。
【0017】
一実施形態において、上記の構造Iに示されている繰り返し単位の平均数nは、好ましくは1〜約3000の数、より好ましくは2〜1500の数、より好ましくは約4〜約1000の数、より好ましくは約6〜約500の数、より好ましくは約8〜約100の数、および最も好ましくは約10〜約50の数である。
【0018】
別の実施形態において、第1構成成分である本発明の改良されたエポキシ樹脂の重量平均分子量は、約300より大きく、典型的には一般には約1000より大きく、より好ましくは約4000より大きく、より好ましくは約5000より大きく、および最も好ましくは約7000より大きくてよい。
【0019】
別の実施形態において、第1構成成分である本発明の改良されたエポキシ樹脂の重量平均分子量は、一般に約300〜約1,000,000の間、好ましくは約1,000〜約500,000、より好ましくは約2,000〜約100,000、いっそう好ましくは約4,000〜約50,000、またいっそう好ましくは約5,000〜約40,000、および最も好ましくは約7,000〜約30,000である。
【0020】
第1構成成分である本発明の改良されたエポキシ樹脂のガラス転移温度は、一般に約−50℃〜約200℃の間、好ましくは約0℃〜約150℃、より好ましくは約10℃〜約120℃、いっそう好ましくは約20℃〜約100℃、および最も好ましくは約25℃〜約90℃である。
【0021】
第1構成成分である本発明の改良されたエポキシ樹脂の破断点伸びは、一般に約4パーセント(%)〜約10000%の間、好ましくは約10%〜約5000%、より好ましくは約20%〜約2000%、いっそう好ましくは約30%〜約1500%、またいっそう好ましくは約40%〜約1200%、および最も好ましくは約50%〜約1100%である。
【0022】
第1構成成分である本発明の改良されたエポキシ樹脂の引張靭性は、一般に約0.05MPa〜約500MPaの間、好ましくは約0.05MPa〜約500MPa、より好ましくは約0.1MPa〜約100MPa、いっそう好ましくは約0.5MPa〜約50MPa、またいっそう好ましくは約0.8MPa〜約30MPa、および最も好ましくは約1MPa〜約20MPaである。
【0023】
該改良されたエポキシ樹脂組成物は、(a)エポキシ化プロセス中に形成される1,3および1,4cisおよびtransシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルの混合物などの脂環式ジグリシジルエーテル化合物、および(b)カテコール、置換カテコール、またはそれらの混合物の反応生成物を含むことができる。
【0024】
一実施形態において、例えば、該コーティング組成物において有用な上記の改良されたエポキシ樹脂の調製は、以下の反応スキーム(I)によって示されてよい:
【0025】
【化3】

[式中、nは、1〜約3000の数であり;R’〜R’は、独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、または他の置換基、例えば、ハロゲン化物基、シアノ基、ニトロ基、ブロックイソシアネート基もしくはアルキルオキシ基であり;さらに、R’〜R’のいずれか2つは、縮合した脂肪族または芳香族の環を独立して形成していてもよく;ジエポキシド化合物は、例えば、1,3−および1,4−cis−およびtrans−シクロヘキサンジメタノールのエポキシ化プロセス中に形成される1,3−および1,4−cis−およびtrans−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルを含む混合物、または1,4−cis−およびtrans−シクロヘキサンジメタノールのエポキシ化プロセス中に形成される1,4−cis−およびtrans−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルを含む混合物であってよい]。結果として生じる改良された高分子量エポキシ樹脂生成物は、エポキシ樹脂進行反応に特有のエーテル連結およびヒドロキシルプロピル主鎖基を含有する。上記に例示されている改良されたエポキシ樹脂は枝分れのない直鎖状の鎖であるが、少量の副反応がポリマー鎖に沿って枝分れおよび/または第1級ヒドロキシル基を生成する可能性がある。実質的に直鎖状の改良されたエポキシ樹脂は、適切なコーティング溶媒において、いずれかの明らかなゲル粒子および/または不溶性画分もない均一のコーティング溶液を形成する。
【0026】
新たな高分子量エポキシ樹脂を構成するために使用される本発明の脂環式ジグリシジルエーテルの好ましい一例は、UNOXOL(商標)ジオールDGEであり、これは、cis−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、trans−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、cis−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、およびtrans−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む製品混合物である。参照により本明細書に組み込まれるWO2009/142901は、こうした製品混合物を含むエポキシ樹脂組成物、およびそれからの高純度DGEの単離を記載している。[UNOXOL(商標)環式ジアルコールは、Union Carbide Corporationの登録商標である。]
【0027】
本発明における新たな高分子量エポキシ樹脂を構成するための脂環式ジグリシジルエーテルの別の好ましい例は、cis−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、trans−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、およびそれらの製品混合物を含む混合物である。
【0028】
一般に、本発明の進行反応(advancement reaction)において使用するためのジグリシジルエーテル反応体を調製するために使用される脂肪族または脂環式エポキシ樹脂(成分(a))は、(1)脂肪族または脂環式ヒドロキシル含有材料を、(2)エピハロヒドリンおよび(3)塩基性作用物質と、(4)触媒の存在下で反応させることを含む方法(例えば、エポキシ化反応)によって調製される。該方法は任意に、(5)用いられる反応体、形成される中間体、および生成されるエポキシ樹脂生成物との反応に実質的に不活性である溶媒を含むことができる。触媒は、好ましくは非ルイス酸触媒である。前記方法は典型的には、(a)エピハロヒドリンと脂肪族または脂環式ヒドロキシル含有材料とのカップリングのステップ、および(b)このように形成された中間体ハロヒドリンの脱ヒドロハロゲン化のステップを含む。該方法は、例えば、相間移動触媒エポキシ化プロセス、スラリーエポキシ化プロセス、または無水エポキシ化プロセスであってよい。脂肪族または脂環式エポキシ樹脂およびそれを調製するための方法の詳細な記述は、参照により本明細書に組み込まれるWO/2009/142901に提供されている。
【0029】
本発明のエポキシ化プロセスにおいて用いることができる脂肪族または脂環式ヒドロキシル含有材料(成分(1))には、例えば、以下のいずれか1つ以上が含まれる:(A)好ましいシクロヘキサンジアルカノールとしてのUNOXOL(商標)ジオール(cis−、trans−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール)などのシクロヘキサンジアルカノールおよびシクロヘキセンジアルカノール;(B)trans−2−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノールもしくは1−フェニル−cis−2−ヒドロキシメチル−r−1−シクロヘキサノールなどのシクロヘキサノールモノアルカノールおよびシクロヘキセノールモノアルカノール;(C)1,2−デカヒドロナフタレンジメタノールなどのデカヒドロナフタレンジアルカノール、オクタヒドロナフタレンジアルカノールおよび1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンジアルカノール;(D)ビシクロヘキサン−4,4’−ジメタノールなどのビシクロヘキサンジアルカノールもしくはビシクロヘキサノールモノアルカノール;(E)水素化ビスフェノールA(4,4’−イソプロピリデンジフェノール)などの架橋シクロヘキサノール;(F)シクロペンタン−1,3−ジオールなどの、他の脂環式および多脂環式のジオール、モノールモノアルカノールもしくはジアルカノール;または(G)アルコキシル化フェノール性反応体などの脂肪族ヒドロキシル含有材料;Xin Jinら(Attorney Docket第69256号)によって本明細書と同日付けで出願されている「ADVANCED EPOXY RESIN COMPOSITIONS」という名称の同時係属の米国特許出願番号第61/388,071号の、参照により本明細書に組み込む6ページから13ページに記載されている通り。
【0030】
本発明において有用なエピクロロヒドリン(成分(2))、塩基性作用物質(成分(3))、非ルイス酸触媒(成分(4))、および任意の溶媒(成分(5))は、参照により本明細書に組み込まれる、同時係属の米国特許出願番号第61/388,071号(Attorney Docket第69256号)の13ページから16ページに記載されているものと同じ成分から選択することができる。
【0031】
脂環式または多脂環式ジオールのエポキシ樹脂は、上記に記載の脂肪族または脂環式ヒドロキシル含有材料から調製されるエポキシ樹脂から選択される1つまたは複数のエポキシ樹脂との混合物において有益に用いることができ、本発明のさらなる改良された高分子量エポキシ樹脂組成物を提供することができる。他の種類のジオールのエポキシ樹脂も、上記に記載の脂肪族または脂環式ヒドロキシル含有材料のエポキシ樹脂から選択される1つ以上のエポキシ樹脂を含む混合物において有益に用いることができ、本発明のさらなる改良された高分子量エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0032】
非ルイス酸プロセスを使用する脂肪族および脂環式ジオールの反応から調製されるエポキシ樹脂は、典型的には、2より大きいエポキシド官能価を有するオリゴマー生成物を有意な量で含有する。1分子当たり2個のエポキシド基より高い官能価の存在により、過剰なこれらのオリゴマーは、望まれない枝分れ、過剰な粘度、未成熟な架橋またはゲル化を誘発する恐れがある。したがって、本発明の組成物を調製するために使用されるエポキシ樹脂は、前述の問題を有することなく進行反応を完了まで進行させる、一定量のジグリシジルエーテル成分を有するべきである。したがって、エポキシ樹脂におけるオリゴマー含有物の量は、一般に0wt%〜約10wt、好ましくは0.01wt%〜約5wt%、およびより好ましくは0wt%〜約0.5wt%である。
【0033】
モノグリシジルモノールエーテルは、本発明の組成物を調製するために使用されるエポキシ樹脂の構成成分を含んでもよい。モノグリシジルエーテル成分は一般に進行反応における連鎖停止剤として機能するので、それは、所望の程度の分子量構成および他のこうした特性を妨害することがない量で存在する。したがって、エポキシ樹脂におけるオリゴマーの含有量は、エポキシ樹脂の重量に対して、一般に0wt%〜約20wt%、好ましくは0.01wt%〜約10wt%、およびより好ましくは0.1wt%〜約5wt%である。
【0034】
本発明の改良されたエポキシ樹脂生成物を生成するための進行反応における成分(b)として有用なジフェノールは、以下の一般構造を有するオルト−ジフェノールを含んでよい:
【0035】
【化4】

[式中、R’〜R’は、独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、または他の置換基、例えば、例えば、ハロゲン化物基、シアノ基、ニトロ基、ブロックイソシアネート基もしくはアルキルオキシ基である。それらR’〜R’基のいずれか2つは、一緒に縮合されることで、新たな脂肪族または芳香族環を形成することができる]。
【0036】
本発明において有用なオルト−ジフェノール化合物は、オルト環位に2個のヒドロキシル基を有するいずれかの置換または非置換の芳香族構造を含むことができる。アリール構造は、例えばベンゼン、置換ベンゼンおよび縮環ベンゼン、またはアリールと脂肪族置換基との組合せを含むことができる。
【0037】
本発明において有用なジフェノールは、これらに限定されないが、カテコール、置換カテコール、オルト−ジヒドロキシナフタレン、置換オルト−ジヒドロキシナフタレン、およびオルト環位に2個のヒドロキシル基を有する任意の芳香族化合物を含むことができる。
【0038】
ジフェノールと、脂環式ジグリシジルエーテル化合物(例えば、1,3および1,4cisおよびtransシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルの混合物;例えば、UNOXOL(商標)ジオールDGE)との間のモノマーモル比は、約5:1〜約1:5、好ましくは約1:1.5〜約1.5:1、およびより好ましくは約1:1.1〜約1.1:1の様々であってよい。該モノマーモル比を使用することで、高分子量の改良されたエポキシ樹脂が得られる。参照により本明細書に組み込まれる、George OdianのPrinciples of Polymerization、第4版などのポリマーテキストに記載されている通り、ほぼ化学量論のモノマー比、例えば約1.1:1〜約1:1.1のジフェノールと脂環式ジグリシジルエーテルとの間のモル比を使用することで、実質的に直鎖状の高分子量エポキシ樹脂が調製される。化学量論のモノマー比からの著しい逸脱は、オリゴマーまたは低分子量エポキシ生成物をもたらすであろう。
【0039】
本発明の別の実施形態において、ジフェノールは、有益には、任意の環位置に2個のヒドロキシル基を有するいずれかの置換または非置換のアリール構造から選択されるオルト−ジフェノールおよび1種以上のジフェノールを含む混合物において有益に用いることができ、ここで、アリール構造は、例えばベンゼン、置換ベンゼンおよび縮環ベンゼン、またはアリールと脂肪族置換基との組合せを含み、本発明の追加の改良された高分子量エポキシ樹脂組成物を提供することができる。この方法は、有益には、異なる構造を該改良された高分子量エポキシ樹脂組成物中に取り込むこと、ならびにポリマー特性の制御およびコーティング性能の向上を可能にする。
【0040】
本発明の別の実施形態において、任意の環位置に2個のヒドロキシル基を有するいずれかの置換または非置換のアリール構造から選択されるジフェノールを含む混合物の使用は、インサイチュー(in situ)または別の反応で、反応性エポキシ末端オリゴマー生成物を提供するために用いることができ、これは、その後、オルト−ジフェノールとさらに反応させることで、本発明の高分子量エポキシ樹脂の前進生成物を与えることができる。本発明の別の実施形態において、オルト−ジフェノールの使用は、インサイチューまたは別の反応で反応性エポキシ末端オリゴマー生成物を提供することができ、これは、その後、任意の環位置に2個のヒドロキシル基を有するいずれかの置換または非置換のアリール構造から選択されるジフェノールを含む混合物とさらに反応させることで、本発明の高分子量エポキシ樹脂の改良生成物を与えることができる。
【0041】
本発明の別の実施形態において、エポキシド基に対して異なる反応性を持つ部分を有する反応体の使用は、インサイチューまたは別の反応のいずれかにおいて反応性オリゴマー生成物を提供するために用いることができ、これを次いでさらに反応させることで、本発明の進行反応生成物を与えることができる。次いでこの反応性オリゴマー生成物を、同じまたは異なる反応体とさらに反応させることで、本発明の改良されたエポキシ樹脂生成物を生成することができる。
【0042】
代表例として、モノフェノールモノカルボン酸は、実質的に未反応のフェノール性ヒドロキシル部分を脱離するカルボン酸部分の反応を実質的に支持する条件下で、エポキシ樹脂と反応させることができる。結果として生じるフェノール性ヒドロキシルを末端基とする生成物を次いで、さらなるエポキシ樹脂、またはさらなるエポキシ樹脂+オルト−ジフェノールを含むさらなる混合物と反応させることで、本発明の改良生成物を生成することができる。別の代表例として、芳香族ジカルボン酸をエポキシ樹脂と反応させることで、エポキシを末端基とするオリゴマー生成物を生成することができる。結果として生じるエポキシを末端基とするオリゴマー生成物は、次いで、さらなるオルト−ジフェノール、またはさらなるエポキシ樹脂プラスオルト−ジフェノールを含むさらなる混合物と反応させることで、本発明の前進高分子量エポキシ樹脂を生成することができる。この方法は、有益には、異なる構造を該生成物中に取り込むこと、ならびに該生成物内における様々な化学構造の位置の制御を可能にする。
【0043】
本発明の別の実施形態において、エポキシ樹脂のエポキシド末端基またはポリマー鎖に沿ったヒドロキシル基に対する反応性を持つ部分との反応体の使用を用いることで、高分子量エポキシ樹脂の化学構造を修飾することができる。フェノールおよびエポキシド以外の官能基を有する1つ以上のモノマーを直接エポキシ樹脂の合成に組み込むことで、エポキシ樹脂の化学構造を修飾することも可能であり得る。上記の態様における修飾エポキシ樹脂生成物は、それらから調製される缶コーティング樹脂などの様々な用途に有用な増強された物理的および/または機械的性質を持つことができる。したがって、金属基材に対する付着性、靭性、加工性などの特性、および他の改善された特性の修飾を達成することができる。
【0044】
ポリマー修飾の例には、これらに限定されないが、放射線硬化用途、水性スプレーにおける使用のための水分散性樹脂の作製、および飲料缶および食品缶へのローラーコート用途のために、アクリル酸などの不飽和酸モノマーでエポキシ樹脂をキャップすることが含まれる。例えば樹脂は、以下の通り、(i)水分散性のアクリル樹脂またはポリエステル樹脂を添加することによって、(ii)水分散性のアクリル樹脂またはポリエステル樹脂を用いてエポキシ樹脂を連鎖延長することによって、(iii)(メタ)アクリル酸のようなフリーラジカル機序によって重合可能である二重結合を含有する酸官能性モノマーおよびアクリル酸エステルおよびスチレンのようななどの酸基を含有しないビニルモノマーと接合することによって、(iv)リン酸および水などと反応させることによって、または(v)ジメタノールアミンなどの塩基で上記の(i)〜(iv)の反応生成物を少なくとも部分的に中和させることによって水分散性にすることができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるEP17911、米国特許第6,306,934号およびWO2000039190は、水分散性エポキシ樹脂を形成すること、およびそれらを分散液にすることを記載している文献である。
【0045】
このように、本発明の樹脂は、いずれかの不飽和または芳香族部分の水素化などさらなるプロセスをさらに受けることで、完全飽和している樹脂を得ることができる。
【0046】
本発明の高分子量エポキシ樹脂の調製は、脂環式ジグリシジルエーテル、オルト−ジフェノール、任意に触媒、および任意に溶媒を反応器に添加すること、ならびに次いで、改良されたエポキシ樹脂を生成するための反応条件下で該成分を反応させることによって達成される。成分は、任意の順序で混合することができる。成分は、所望の程度の反応が達成されるまで加熱される。
【0047】
実質的に直鎖状の高分子量エポキシ樹脂を形成するための反応条件には、一般に約20℃〜約250℃、好ましくは約100℃〜約250℃、より好ましくは約125℃〜約225℃、および最も好ましくは約150℃〜約200℃の範囲の温度下で反応を実施することが含まれる。反応の圧力は、一般に約0.1バール〜約10バール、好ましくは約0.5バール〜約5バール、およびより好ましくは約0.9バール〜約1.1バールであってよい。
【0048】
好ましい実施形態において、1種以上の適切な反応触媒を本発明の実施に用いることができる。本発明の組成物を調製するために使用される触媒は、例えば、アルカリ金属塩などの金属塩、またはアルカリ土類金属塩、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩およびホスフィンなど、ならびにそれらの混合物の1種以上から選択することができる。好ましくは、本発明において使用される触媒は、テトラブチルホスホニウムアセテート−酢酸錯体、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート−酢酸錯体、またはそれらの混合物である。
【0049】
反応触媒は、一般に、使用されるモノマー化合物の合計重量に対して、約0.0010wt%〜約10wt%、約0.01wt%〜約10wt%、好ましくは約0.05wt%〜約5wt%、および最も好ましくは約0.1wt%〜約4wt%の量で用いられる。
【0050】
本発明の実質的に直鎖状の高分子量エポキシ樹脂を調製するための反応プロセスは、バッチまたは連続的であってよい。該プロセスにおいて使用される反応器は、当業者によく知られているいずれかの反応器および付属の装置であってよい。
【0051】
本発明の別の実施形態は、(i)構造(I)の上記改良されたエポキシ樹脂、(ii)少なくとも1種の硬化剤、(iii)任意に、少なくとも1種の硬化触媒、(iv)任意に、少なくとも1種の溶媒、および(v)任意に、少なくとも1種の添加剤を含む硬化性の改良されたエポキシ樹脂コーティング組成物に向けられている。
【0052】
硬化性の改良されたエポキシ樹脂コーティング組成物の第1成分(i)は、上記した通り改良されたエポキシ樹脂を含む。本発明の硬化性の改良されたエポキシ樹脂混合物中に使用される改良されたエポキシ樹脂の濃度は、一般に約99.9wt%〜約10wt%、好ましくは約99wt%〜約50wt%、より好ましくは約98wt%〜約75wt%、およびいっそう好ましくは約95wt%〜約85wt%の範囲であってよい。一般に、使用される改良されたエポキシ樹脂の量は、生じる硬化コーティング生成物の特性の所望のバランスに基づいて選択される。
【0053】
本発明の硬化性の改良されたエポキシ樹脂組成物に有用な硬化剤は、例えばエポキシ樹脂、フェノール性レゾール、アミノホルムアルデヒド樹脂、アミドホルムアルデヒド樹脂または無水樹脂などのエポキシ樹脂を硬化させるための当技術分野において知られている任意の従来の硬化剤を含むことができる。架橋剤は、他の反応性基、例えば、活性アルコール−OH基(例えばエチロール基または他のメチロール基などのアルキロール基)、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、アジリジニル基、オキサゾリン基、酸基および無水物基、i−ブトキシメチルアクリルアミド基、ならびにn−ブトキシメチルアクリルアミド基など、多価フェノール性化合物;ラジカル開始剤および/または放射線で硬化される不飽和基、ならびにそれらの混合物を有する架橋剤から選択することもできる。
【0054】
硬化性エポキシ樹脂組成物のエポキシ樹脂(成分(i))と架橋剤成分(ii)との間の比は、使用される架橋剤の型などの様々な因子に応じて様々であってよい。しかし、一般に、該重量比は、約0.1wt%〜約90wt%、好ましくは約1wt%〜約50wt%、より好ましくは約2wt%〜約25wt%、およびさらに好ましくは約5wt%〜約15wt%であってよい。硬化性の改良されたエポキシ樹脂組成物中に使用される硬化剤の量は、一般に、生じる硬化生成物の特性の所望のバランスに基づいて選択される。
【0055】
本発明の硬化性の改良されたエポキシ樹脂コーティング組成物を調製する際、少なくとも1種の硬化触媒を使用することで、改良されたエポキシ樹脂と少なくとも1種の硬化剤との硬化反応を容易にすることができる。本発明において有用な硬化触媒には、例えば、リン酸もしくは有機スルホン酸などの酸、または第3級アミンなどの塩基、またはスズ、ビスマス、亜鉛もしくはチタンの有機誘導体などの有機金属化合物、またはスズ、鉄もしくはマンガンの酸化物もしくはハロゲン化物などの無機化合物;およびそれらの混合物を含めることができる。
【0056】
該硬化触媒は、一般に、使用される改良されたエポキシ樹脂および硬化剤の合計重量に対して、約0.01wt%〜約10wt%、好ましくは約0.05wt%〜約5wt%、および最も好ましくは約0.1wt%〜約2wt%の量で用いられる。
【0057】
さらに、少なくとも1種の硬化剤を用いる改良されたエポキシ樹脂のコーティングの形成を容易にするために、溶媒を本発明の硬化性の改良されたエポキシ樹脂を調製する際に使用することができる。例えば、当技術分野においてよく知られている1種以上の有機溶媒を改良されたエポキシ樹脂組成物に添加することができる。例えば、キシレンなどの芳香族、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン、ならびにモノブチルエチレングリコールエーテルおよびジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)などのエーテル;ブタノールなどのアルコール、ならびにそれらの混合物を、本発明において使用することができる。
【0058】
本発明において使用される溶媒の濃度は、一般に0wt%〜約90wt%、好ましくは約0.01wt%〜約80wt%、より好ましくは約1wt%〜約70wt%、および最も好ましくは約10wt%〜約60wt%の範囲であってよい。粘度が大きいすぎるか、または上記の濃度範囲が使用されない場合には溶媒を利用しない。しかし、パワーコーティングにおける適用など、いかなる溶媒も用いずにコーティング組成物を配合することが可能である。
【0059】
改良されたエポキシ樹脂組成物の調製、貯蔵および硬化に有用であることが知られている添加剤、例えば、反応触媒、樹脂安定剤、消泡剤、湿潤剤、硬化触媒、顔料、染料および加工助剤を、任意のさらなる要素として使用することができる。添加剤の組合せが本発明の組成物に任意に添加されてよく、例えば触媒、溶媒、他の樹脂、安定剤、顔料および染料などの充填剤、または腐食防止剤、可塑剤、触媒不活性化剤、およびそれらの混合物を含む。
【0060】
本発明の硬化性組成物に添加することができる他の任意の添加剤には、例えば、湿潤剤、潤滑剤、消泡剤、充填剤、接着促進剤、滑剤、抗クレーター剤、可塑剤、触媒不活性化剤、酸官能性/非イオン性の界面活性剤との水中分散剤;およびそれらの混合物などが含まれてよい。
【0061】
コーティング配合物の一部となる他の追加成分には、アクリル樹脂またはポリエステル樹脂;ポリエステル、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリ酢酸ビニルなどの樹脂;およびそれらの混合物などのポリマー性共反応体が含まれてよい。
【0062】
一般に、本発明において使用される任意の添加剤成分の濃度は、0wt%〜約90wt%、好ましくは約0.01wt%〜約70wt%、より好ましくは約0.1wt%〜約50wt%、および最も好ましくは約0.5wt%〜約30wt%の範囲であってよい。他の実施形態において、任意の添加剤の濃度は、一般に約0.01wt%〜約10wt%、および好ましくは約1wt%〜約5wt%であってよい。
【0063】
本発明の硬化性コーティング組成物において使用される硬化性の改良されたエポキシ樹脂生成物は、好ましくは、一般に約300〜約1,000,000の間、好ましくは約1,000〜約500,000、より好ましくは約2,000〜約100,000、いっそう好ましくは約4,000〜約50,000、またいっそう好ましくは約5,000〜約40,000、および最も好ましくは約7,000〜約30,000の重量平均分子量を有するポリマーである。
【0064】
本発明の硬化性コーティング組成物において使用される硬化性の改良されたエポキシ樹脂生成物のガラス転移温度は、一般に約−50℃〜約200℃の間、好ましくは約0℃〜約150℃、より好ましくは約10℃〜約120℃、いっそう好ましくは約20℃〜約100℃、および最も好ましくは約25℃〜約90℃である。
【0065】
本発明の硬化性コーティング組成物において使用される硬化性の改良されたエポキシ樹脂生成物の破断点伸びは、一般に約4パーセント(%)〜約10,000%の間、好ましくは約10%〜約5000%、より好ましくは約20%〜約2000%、いっそう好ましくは約30%〜約1500%、さらに好ましくは約40%〜約1200%、および最も好ましくは約50%〜約1100%である。
【0066】
本発明の硬化性コーティング組成物において使用される硬化性の改良されたエポキシ樹脂生成物の引張靭性は、一般に約0.05MPa〜約500MPaの間、好ましくは約0.1MPa〜約100MPa、より好ましくは約0.5MPa〜約50MPa、いっそう好ましくは約0.8MPa〜約30MPa、および最も好ましくは約1MPa〜約20MPaである。
【0067】
本発明の硬化した改良されたエポキシ樹脂生成物を生成するための方法は、重力鋳造、真空鋳造、自動加圧ゲル化(APG)、真空圧力ゲル化(VPG)、注入、フィラメントワインディング、レイアップ射出、トランスファー成形、プリプレグ化、ならびにローラーコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティングおよびブラシコーティングなどのコーティングなどによって行うことができる。
【0068】
硬化反応条件には、例えば、一般に約0℃〜約300℃、好ましくは約20℃〜約250℃、およびより好ましくは約100℃〜約220℃の範囲における温度下で反応を実施することが含まれる。
【0069】
硬化反応の圧力は、例えば、一般に約0.01バール〜約1000バール、好ましくは約0.1バール〜約100バール、およびより好ましくは約0.5バール〜約10バールの圧力で実施することができる。
【0070】
硬化性の改良されたエポキシ樹脂コーティング組成物の硬化は、例えば、組成物を硬化または部分硬化(B段階)するのに十分な所定の時間にわたって実施することができる。例えば、一般に硬化時間は、約2秒〜約24時間の間、好ましくは約5秒〜約2時間、より好ましくは約5秒〜約30分、およびいっそう好ましくは約8秒〜約15分で選択することができる。本発明のB段階の組成物は次いで、その後、前述の条件を使用して完全に硬化することができる。
【0071】
本発明の硬化方法はバッチ法であっても連続法であってもよい。該方法において使用される反応器は、当業者によく知られている任意の反応器および付属の装置であってよい。
【0072】
生じる硬化性コーティング組成物は、著しく高い可撓性、レトルトプロセス前後の良好な耐レトルト性および優れた付着性、良好な耐有機溶媒性、および金属食品包装用途に有用な良好な視覚的白化の出現などの優れた物理的−機械的性質を示す。
【0073】
硬化性コーティング組成物の可撓性は、ウェッジ曲げ可撓性によって測定した。生じる硬化性コーティング組成物のウェッジ曲げ可撓性によって測定される破損の百分率は、一般に約50%未満、好ましくは約25%未満、より好ましくは約15%未満、いっそう好ましくは約10%未満、さらにいっそう好ましくは約5%未満、さらにいっそう好ましくは約4%未満、さらにいっそう好ましくは約3%未満、なおよりいっそう好ましくは約2%未満、および最も好ましくは約1%未満である。
【0074】
硬化性コーティング組成物の耐化学溶媒性は、MEK二重摩擦によって測定した。生じる硬化性コーティング組成物のMEK二重摩擦によって測定される耐溶媒性は、一般に約25超、好ましくは約50超、より好ましくは約50〜約200の間、いっそう好ましくは約50〜約150の間、および最も好ましくは約50〜約125の間である。
【0075】
硬化性コーティング組成物のレトルトプロセス前後の耐レトルト性および付着性は、乳酸溶液における耐レトルト性測定によって特徴づけた。生じる硬化性コーティング組成物の耐レトルト性は、好ましくは、視覚的尺度基準格付けが5であり、これは、生じる硬化性コーティング組成物がレトルト処理後にいかなる裂け、白化、ふくれおよび/または付着不足も有していないことを示す。
【0076】
本発明の硬化性コーティング組成物の配合物または組成物は、従来の加工条件下にて硬化することで、フィルム、コーティングまたは固体を形成することができる。
【0077】
本発明の例示として、一般に、生じる硬化コーティングは、例えばカプセル化、鋳造、成形、注封、カプセル化、射出、樹脂トランスファー成形、複合材料などの用途において有用である。
【0078】
一実施形態において、該コーティングは、食品および飲料容器に有用である。該樹脂は、使用の前に、アクリル接合、およびポリマー鎖に沿った官能基の修飾など、さらに修飾することができる。それらから調製されるコーティング組成物は、金属基材に適用し、穏やかな加熱硬化条件下にて硬化することで、平滑および高可撓性のコーティングを提供することができる。該新規コーティング組成物は、著しく高い可撓性、レトルトプロセス前後の金属に対する優れた付着性、および金属の食品包装用途に有用な良好な視覚的白化の出現を示すコーティング組成物のための方法および組成を提供する。本発明は、特に、腐食保護ベースコートとしてまたは装飾用外部コーティング系におけるオーバープリントワニスとして、缶のための内部保護コーティング、ならびにウォッシュコート、イージーオープンエンドまたは溶接区域のスコーリング領域用リペアコートなど缶のための外部保護コーティングに有用である。
【実施例】
【0079】
以下の実施例および比較例はさらに本発明を詳しく示すが、その範囲を限定すると解釈するべきではない。
【0080】
例えば以下を含めて、様々な用語および名称が以下の実施例に使用される。
【0081】
UNOXOL(商標)ジオールは、The Dow Chemical Companyから得られるcis−、trans−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物である。cis−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、trans−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、cis−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、trans−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(UNOXOL(商標)ジオールDGE)の製品混合物を、参考例Aに提供されている方法に従って調製および精製した。
【0082】
同様に、cis−、trans−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(1,4−cis−、trans−CHDM DGE)の製品混合物を、参考例Aに提供されている方法を使用して調製および精製した。
【0083】
Methylon 75108は、Durez Corporationから得られるアリルエーテルフェノール系のフェノール樹脂架橋剤である。Byk−310は、Byk Chemieから得られるシリコーン添加剤である。DER(商標)669Eは、The Dow Chemical Companyから得られるビスフェノールA系の高分子量9型の改良されたエポキシ樹脂生成物である。触媒A2は、Deepwater Chemicalsから得られる、メタノール中の70%テトラブチルホスホニウムアセテート−酢酸錯体である。Erisys(商標)GE−20は、CVC Thermoset Specialtiesから得られるネオペンチルグリコールエポキシ樹脂である。精製ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(DGE)は、Erisys(商標)GE−20の真空蒸留から得た。全ての他の化学物質は、別段に注記されている場合を除いて、Sigma−Aldrichから入手し、受け取ったままで使用した。
【0084】
以下を含めて、標準的な分析用装置および方法が以下の実施例および比較例に使用される。
【0085】
分子量測定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することで、改良されたエポキシ樹脂の分子量および分子量分布を測定する。ポリマー試料を溶出液で約0.25重量%濃度まで希釈し、下記の条件を使用して分析した。カラム:Polymer Labs 5μm、50Å、100Å、1000Åおよび10,000Å単孔径カラム(4個直列);検出器:3重の検出系を有するViscotek TDA 302。示差屈折率(DRI)検出器を相対MW算出のために使用した。溶出液:テトラヒドロフラン;流量:1mL/min;温度:40℃;注入:100μL;較正:Polymer Laboratories PS−2直鎖状ポリスチレン(3次フィッティングを用いる)。
【0086】
ガラス転移温度の測定
示差走査熱量測定(DSC)を使用することで、熱硬化性の改良されたエポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)を特徴づける。使用される装置は、TA InstrumentsからのQ1000 DSCであり、試験条件は、−50℃〜250℃の間で10℃/minにて窒素下で2回加熱走査および1回冷却走査することである。報告されたTgを第2加熱走査から算出した。
【0087】
微小引張測定
引張試験は、靭性、伸び、および引張応力下における破損に耐える能力を特徴づけるために多年の間該産業において使用されている通常の測定である。改良されたエポキシ樹脂の応力−歪み挙動は、ASTM D 1708微小引張試験片を使用して測定する。この微小引張試験は、空気圧グリップを有する200 lbロードセルが備えられている21℃で20mm/minのInstron(商標)を用いて、材料の試料を、それが破断するまで引っ張ることからなる。試験される試験片は、矩形断面を有することがある。荷重および伸び履歴から、歪みがx軸上に、応力がy軸上にプロットされている応力−歪み曲線を得る。破断点伸びは、試験片が破断する歪みとして定義される。引張靭性は、破断点までの全応力−歪み曲線下の面積として定義される。引張靭性および破断点伸びは、5つの試験片の平均から報告される。
【0088】
コーティング厚さ測定
厚さ測定は、ASTM D 1186−93;コーティング厚さ測定器であるPERMASCOPE D−211Dを使用する「二価鉄ベースに適用される非磁性コーティングの乾燥フィルム厚の非破壊的測定」に従って行われる。いかなるコーティングも用いない試料パネルをゼロに設定し、次いで二価鉄材料用のプローブを使用してコーティングされたパネルを測定し、測定された厚さをミクロン[μm]で報告する。
【0089】
メチルエチルケトン(MEK)二重摩擦試験
MEK二重摩擦試験を、ASTM D 5402に従って行う。2ポンドの重量を有する半球状ハンマーの平端部を使用する。通常の寒冷紗の「VILEDA 3168」をハンマー端部に巻き付ける。それをMEKに浸漬する。ハンマーをコーティング上に持ってきて、コーティング全体の上を前後に動かし、1回の二重摩擦とする。ハンマー上にいかなる圧力もかからないように注意する。25回の二重摩擦後ごとに、薄布を再浸漬する。コーティングに引っ掻き傷ができるほどコーティングが擦り落とされるまで、これを反復する。この手順を、最大200回の摩擦に到達するまで実施する。
【0090】
ウェッジ曲げ可撓性試験
ウェッジ曲げ試験を以下の通りに実施する。パネルにおけるテーパ180度屈曲は、約0.5cmの半径で、コーティングを屈曲の外側にして、180°までそれを最初に屈曲させることによって形成する。次いで、屈曲の一方側を、40in・lbのインパクタを用いてほぼゼロの半径まで完全に平らにした。応力が加えられた表面をテープ引っ張りにかけ、次いで硫酸銅の溶液(硫酸銅10g、水90gおよび硫酸3gの混合物)で擦る。コーティングが裂けた箇所には全て、黒点が現れ、破損を示す。ウェッジ曲げの長さに沿った(mm単位の)コーティング破損の量は、100mmであり、「%破損」として記録される。
【0091】
乳酸溶液における耐レトルト性
耐乳酸レトルト性(LAR)試験は以下の通りに実施される。コーティングし、180回屈曲したパネルを、2%乳酸水溶液に浸漬した。該試料をオートクレーブに装填し、121℃で30分間レトルトした。次いでオートクレーブを、50℃未満に冷却した後に開いた。パネルをオートクレーブから除去し、5が最高であり0が最低である5〜0の視覚的尺度を使用してコーティングを評価した。視覚的尺度基準は以下である。5:屈曲区分または平らな区分に白化またはふくれなし、4:平らな区分に白化またはふくれなし、3:平らな区分に白化があるがふくれはなし、2:平らな区分に小さいふくれとともに白化あり、1:平らな区分に多数の大きなふくれとともに白化あり、および0:全体的コーティング破壊。
【0092】
付着性試験(耐レトルト性の後)
付着性試験を以下の通りに実施した。1枚のテープの中央を、2%乳酸溶液における耐レトルト性測定の後のコーティング領域上に置いた。適用の30±10秒以内に、自由端部をつかみ、できるだけ180度に近い角度で急速に引っ張ることによってテープを除去した。テープによるコーティングの除去の任意の徴候は付着不足を示す。
【0093】
参考例A−UNOXOL(商標)ジオールのエポキシ樹脂の合成
UNOXOL(商標)ジオールのエポキシ化を、水酸化ナトリウム水溶液添加と、40℃における後反応と、それに続く、分別真空蒸留によるエポキシ樹脂の構成物質を分離との3つの段階を使用して行った。
【0094】
エポキシ化反応
5Lの4つ口ガラス丸底反応器に、UNOXOL(商標)ジオール(432.63g、3.0モル、6.0のヒドロキシル当量)、エピクロロヒドリン(1110.24g、12.0モル、エピクロロヒドリン:UNOXOL(商標)ジオールヒドロキシル当量比2:1)、トルエン(2.5L)、およびベンジルトリエチル塩化アンモニウム(43.62g、0.1915モル)を、示されている順序で投入した。反応器には、凝縮器(0℃に保持される)、温度計、Claisenアダプタ、オーバーヘッド窒素導入口(1LPM N使用)およびスターラー機構(Teflon(商標)パドル、ガラスシャフト、可変速モーター)がさらに備わっていた。[Teflon(商標)フッ化炭素樹脂は、E.I.duPont de Nemoursの商標である。]制御器が反応器内の温度計に記録される温度をモニタリングし、反応器下に位置する加熱マントルを介して加熱を、および反応器外部に位置する1対のファンによって送達される冷却を得た。初期の添加のための、DI水(360g)中に溶解された水酸化ナトリウム(360.0g、9.0モル)を、側管ベント付きの添加漏斗に添加し、すりガラス栓で密閉し、次いで反応器に取り付けた。撹拌の開始により、22.5℃の混合物が生じ、続いて水酸化ナトリウム水溶液の滴加を開始した。反応混合物を、水酸化ナトリウム水溶液の添加時間中に40℃に自己発熱させ、次いで、必要に応じ、ファンによる冷却によって同温度に保持した。こうして、196分後に反応温度は最初に40℃に到達し、その後、残りの水酸化ナトリウム水溶液の添加中は39〜40℃のままであった。水酸化ナトリウム水溶液の添加は、合計233分かかった。水酸化ナトリウム水溶液の添加完了の14分後に、加熱が開始され、反応物が40℃に保持された。40℃における16.2時間の後反応後に、撹拌を止め、反応器の内容物を沈降させた。有機層を反応器からデカントし、続いてDI水1.5Lを該塩に添加し、残留トルエンを反応器内に残置した。2Lの分液漏斗中への添加および沈降後に、塩水溶液から分離したトルエン層を回収し、デカントされた有機層に戻して合わせた。水層を廃棄物として処分した。溶媒(アセトニトリルおよびトルエン)および未反応のエピクロロヒドリンを除去するための標準化後のGC分析は、軽質構成成分2.21面積%、未反応のcis−、trans−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール1.27面積%;モノグリシジルエーテル43.13面積%、ジグリシジルエーテルピークに関連する1対の構成成分0.25面積%、ジグリシジルエーテル50.20面積%、およびGC分析の条件下で揮発性であるオリゴマー2.94面積%の存在を明らかにした。
【0095】
有機層を新鮮なベンジルトリエチル塩化アンモニウム(21.81g、0.0958モル)と一緒に反応器内に再充填した。DI水(180g)中に溶解された水酸化ナトリウム(180g、4.5モル)を、側管ベント付きの添加漏斗に添加し、すりガラス栓で密閉し、次いで反応器に取り付けた。撹拌の開始により、23.5℃の混合物が生じ、続いて水酸化ナトリウム水溶液の滴加を開始した。反応混合物を、水酸化ナトリウム水溶液の添加時間中に自己発熱させた。こうして、119分後に水酸化ナトリウム水溶液が100%添加され、反応温度が最大30.5℃に達した。水酸化ナトリウム水溶液の添加完了の3分後に、加熱が開始され、11分の加熱後に反応物は40℃になった。40℃における15.8時間の後反応後に、撹拌を止め、反応器の内容物を沈降させた。有機層を反応器からデカントし、続いてDI水1.0Lを該塩に添加し、残留トルエンを反応器内に残置した。2Lの分液漏斗中への添加および沈降後に、塩水溶液から分離したトルエン層を回収し、デカントされた有機層に戻して合わせた。水層を廃棄物として処分した。溶媒(アセトニトリルおよびトルエン)および未反応のエピクロロヒドリンを除去するための標準化後のGC分析は、軽質構成成分5.62面積%の存在、検出可能な未反応のcis−、trans−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの不存在;モノグリシジルエーテル12.63面積%、ジグリシジルエーテルピークに関連する1対の構成成分0.64面積%、ジグリシジルエーテル76.30面積%、およびGC分析の条件下で揮発性であるオリゴマー4.81面積%の存在を明らかにした。
【0096】
有機層を新鮮なベンジルトリエチル塩化アンモニウム(10.91g、0.0479モル)と一緒に反応器内に再充填した。DI水(90g)中に溶解された水酸化ナトリウム(90g、2.25モル)を、側管ベント付きの添加漏斗に添加し、すりガラス栓で密閉し、次いで反応器に取り付けた。撹拌の開始により、23℃の混合物が生じ、続いて水酸化ナトリウム水溶液の滴加を開始した。反応混合物を、水酸化ナトリウム水溶液の添加時間中に自己発熱させた。こうして、50分後に水酸化ナトリウム水溶液の66.67%が添加され、反応温度が最大24.5℃に達した。残りの水酸化ナトリウム水溶液の添加中は同温度に保持された。水酸化ナトリウム水溶液の添加には合計61分かかった。水酸化ナトリウム水溶液の添加完了直後に、加熱が開始され、22分の加熱後に反応物が40℃となった。40℃における16.7時間の後反応後に、撹拌を止め、反応器の内容物を沈降させた。有機層を反応器からデカントし、続いてDI水1.0Lを該塩に添加し、残留トルエンを反応器内に残置した。2Lの分液漏斗中への添加および沈降後に、塩水溶液から分離したトルエン層を回収し、デカントされた有機層に戻して合わせた。水層を廃棄物として処分した。溶媒(アセトニトリルおよびトルエン)および未反応のエピクロロヒドリンを除去するための標準化後のGC分析は、軽質構成成分8.62面積%の存在、検出可能な未反応のcis−、trans−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの不存在;モノグリシジルエーテル9.91面積%、ジグリシジルエーテルピークに関連する1対の構成成分0.46面積%、ジグリシジルエーテル75.29面積%、およびGC分析の条件下で揮発性であるオリゴマー5.72面積%の存在を明らかにした。
【0097】
エポキシ樹脂生成物単離
第3水酸化ナトリウム水溶液添加との反応物から水層を除去した後、有機層を1対の分液漏斗の間に均等に分割し、次に各分液漏斗の内容物を激しく振盪することによってDI水(400mL)で洗浄した。洗浄した生成物を2時間沈降させておき、次いで水層を除去し、廃棄物として処理した。前述の方法を使用して第2洗浄を完了させ、有機層および水層を完全に分解させるように終夜(20時間)沈降させた。合わせた濁った有機溶液を、600mLのフリットガラス漏斗中の無水の粒状硫酸ナトリウム床に通して濾過し、透明な濾液を得た。
【0098】
Hg2.4mmの最終真空まで100℃の最大油浴温度を使用する濾液の回転蒸発で、揮発分のバルクを除去した。回転蒸発の完了後に、合計712.20gの淡黄色の透明な液を回収した。溶媒(アセトニトリル)を除去するための標準化後のGC分析は、モノグリシジルエーテル9.76面積%、ジグリシジルエーテルピークに関連する1対の構成成分0.38面積%、ジグリシジルエーテル82.39面積%、およびGC分析の条件下で揮発性であるオリゴマー7.47面積%の存在を明らかにした。したがって、GC分析は、残留のエピクロロヒドリンを含めて基本的には全ての低沸点構成成分が除去されたことを明らかにした。
【0099】
分別真空蒸留
回転蒸発からの生成物の一部(699.19g)を、電磁攪拌、およびかま温度をモニタリングするための温度計が備えられている1Lの3つ口ガラス丸底反応器に添加した。蒸留ヘッドを有する一体統合型真空ジャケット付きのVigreux蒸留カラムを使用した。蒸留カラムは操作モードに応じて、名目上9〜18の理論段数を提供した。ジャケット付きのVigreuxカラムの第2区分を、ヘッドを有する一体統合型真空ジャケット付きのVigreux蒸留カラムと反応器との間に加えることで、追加の9〜18の理論段数を提供した。蒸留ヘッドにはオーバーヘッド温度計、空冷凝縮器、受器および真空取出口が備えられていた。真空ポンプを液体窒素トラップおよびインラインデジタル熱伝導率真空計と一緒に用いた。撹拌が始まり、続いて完全真空を適用し、次いでサーモスタット制御の加熱マントルを使用して徐々に加熱を増加させた。清潔な受器を使用して各蒸留カットを回収した。蒸留中に、初期の蒸留カットを取ることで、シクロヘキサンジメタノールの下で沸騰している全ての構成成分、全ての未反応のシクロヘキサンジメタノール、およびモノグリシジルエーテルのバルクを順次除去した。中間のカットにより、モノグリシジルエーテルおよびジグリシジルエーテルの様々な混合物が除去された。最終蒸留カットはジグリシジルエーテルの選択的除去を目指し、最終カット(270.5g)は、モノグリシジルエーテル0.11面積%、ジグリシジルエーテルピークに関連する1対の構成成分0.48面積%、ジグリシジルエーテル99.41面積%を含むが、検出可能なオリゴマーを含まない混合物を提供した。オリゴマー生成物(279.39g)は蒸留かま内に残った。
【0100】
合成例1−UNOXOL(商標)ジオールDGEおよびカテコールを含むエポキシ樹脂の調製
カテコール28.2g、UNOXOL(商標)ジオールDGE70.9gおよびジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)303.8gの混合物を、凝縮器および窒素パージ付きの500mLの3つ口フラスコ中で撹拌し、140℃に加熱した。140℃で、2.1gの触媒A2をフラスコに投入した。生じた混合物を163℃にさらに加熱した。反応混合物の重合を、反応混合物における残留エポキシ基の滴定によってモニタリングした。3.5時間後に反応を止め、この時エポキシドの96%が反応していた。結果として生じるポリマー溶液を、ブレンダー内の氷およびメタノールの混合物1500mL中に沈殿させた。生じたポリマーを回収し、メタノールで3回洗浄し、真空オーブンを使用して70℃で24時間乾燥させた。生じたポリマー生成物は淡黄色の明澄な固体であった。ポリマー生成物のガラス転移温度は27℃であり、該生成物の重量平均分子量は15,350である。
【0101】
合成例2−1,4−CHDM DGEおよびカテコールを含むエポキシ樹脂の調製
カテコール12.2g、1,4−CHDM DGE(エポキシ等量(EEW)=128.6、ガスクロマトグラフィーにより、純度=99.0面積%)30.0gおよびジグリム129.3gの混合物を、凝縮器および窒素パージ付きの250mLの3つ口フラスコ中で撹拌し、140℃に加熱した。140℃で、0.9gの触媒A2をフラスコに投入した。生じた混合物を163℃にさらに加熱した。反応混合物の重合を、反応混合物における残留エポキシ基の滴定によってモニタリングした。13時間後に反応を止め、この時エポキシドの98.9%が反応していた。結果として生じるポリマー溶液を、ブレンダー内の氷およびメタノールの混合物750mL中に沈殿させた。生じたポリマーを回収し、メタノールで3回洗浄し、真空オーブンを使用して70℃で24時間乾燥させた。生じたポリマー生成物は淡黄色の明澄な固体であった。ポリマー生成物のガラス転移温度は31℃であり、重量平均分子量は27,590である。
【0102】
合成例3−UNOXOL(商標)ジオールDGE、蒸留ネオペンチルグリコールDGEおよびカテコールを含むエポキシ樹脂の調製
カテコール15.00g、UNOXOL(商標)ジオールDGE29.65g、真空蒸留ネオペンチルグリコールDGE(ガスクロマトグラフィーにより、EEW=108.7、純度=99.31面積%)6.24gおよびジグリム156.0gの混合物を、凝縮器および窒素パージ付きの250mLの3つ口フラスコ中で撹拌し、140℃に加熱した。140℃で、1.09gの触媒A2をフラスコに投入した。生じた混合物を163℃にさらに加熱した。反応混合物の重合を、反応混合物における残留エポキシ基の滴定によってモニタリングした。4時間後に反応を止め、この時エポキシドの96.9%が反応していた。結果として生じるポリマー溶液を、ブレンダー内の氷およびメタノールの混合物750mL中に沈殿させた。生じたポリマーを回収し、メタノールで3回洗浄し、真空オーブンを使用して70℃で24時間乾燥させた。生じたポリマー生成物は淡黄色の透明な固体であった。ポリマー生成物のガラス転移温度は30℃であり、重量平均分子量は26689である。
【0103】
比較合成例A−UNOXOL(商標)ジオールDGEおよびレゾルシノールを含むエポキシ樹脂の調製
レゾルシノール16.0g、UNOXOL(商標)ジオールDGE41.1gおよびジグリム173.7gの混合物を、凝縮器および窒素パージ付きの250mLの3つ口フラスコ中で撹拌し、140℃に加熱した。140℃で、1.2gの触媒A2をフラスコに投入した。生じた混合物を163℃にさらに加熱した。反応混合物の重合を、反応混合物における残留エポキシ基の滴定によってモニタリングした。3.6時間後に反応を止め、この時エポキシドの94.6%が反応していた。結果として生じるポリマー溶液を、ブレンダー内の氷およびメタノールの混合物1500mL中に沈殿させた。生じたポリマーを回収し、メタノールで3回洗浄し、真空オーブンを使用して70℃で24時間乾燥させた。生じたポリマー生成物は淡黄色の明澄な固体であった。ポリマー生成物のガラス転移温度は25.8℃であり、その重量平均分子量は21,650であると測定された。
【0104】
比較合成例B−UNOXOL(商標)ジオールDGEおよびハイドロキノンを含むエポキシ樹脂の調製
ハイドロキノン28.2g、UNOXOL(商標)ジオールDGE70.9gおよびジグリム303.8gの混合物を、凝縮器および窒素パージ付きの500mLの3つ口フラスコ中で撹拌し、140℃に加熱した。140℃で、2.1gの触媒A2をフラスコに投入した。生じた混合物を163℃にさらに加熱した。反応混合物の重合を、反応混合物における残留エポキシ基の滴定によってモニタリングした。2時間後に反応を止め、この時エポキシドの97.3%が反応していた。結果として生じるポリマー溶液を、ブレンダー内の氷およびメタノールの混合物1500mL中に沈殿させた。生じたポリマーを回収し、メタノールで3回洗浄し、真空オーブンを使用して70℃で24時間乾燥させた。生じたポリマー生成物は淡黄色の明澄な固体であった。ポリマー生成物のガラス転移温度は32.8℃であり、その重量平均分子量は25,850であると測定された。
【0105】
比較合成例C−UNOXOL(商標)ジオールDGEおよびビスフェノールAを含むエポキシ樹脂の調製
ビスフェノールA20.0g、UNOXOL(商標)ジオールDGE24.4gおよびジグリム136.2gの混合物を、凝縮器および窒素パージ付きの250mLの3つ口フラスコ中で撹拌し、140℃に加熱した。140℃で、0.95gの触媒A2をフラスコに投入した。生じた混合物を163℃にさらに加熱した。反応混合物の重合を、反応混合物における残留エポキシ基の滴定によってモニタリングした。2.6時間後に反応を止め、この時エポキシドの96.1%が反応していた。結果として生じるポリマー溶液を、ブレンダー内の氷およびメタノールの混合物750mL中に沈殿させた。生じたポリマーを回収し、メタノールで3回洗浄し、真空オーブンを使用して70℃で24時間乾燥させた。生じたポリマー生成物は淡黄色の明澄な固体であった。ポリマー生成物のガラス転移温度は44.2℃であり、その重量平均分子量は22,850であると測定された。
【0106】
比較例D−市販の樹脂
比較のため、市販で入手可能な実質的に直鎖状の高分子量エポキシ樹脂、DER(商標)669Eを、DSCおよびGPCによってそのTgおよび分子量に関して測定した。このビスフェノールA系の9型エポキシ樹脂のガラス転移温度は88.3℃であり、その重量平均分子量は17,450である。結果は、我々の新たなエポキシ樹脂である実施例1、2および比較例A〜Cが、市販で入手可能な高分子量エポキシ樹脂のビスフェノールA系のDER(商標)669Eと同様の重量平均分子量を有することを示している。
【0107】
該材料の可撓性および靭性を、ASTM D 1708に従った微小引張測定下での応力−歪み挙動によって特徴づけた。破断点伸びはポリマー性材料の可撓性を測定するパラメータであり、引張靭性は引張変形におけるエネルギーを吸収する材料能力の尺度である。新たなエポキシ樹脂である実施例1、2および比較例A〜Cの微小引張結果を、比較例D:ビスフェノールA系の9型高分子量エポキシ樹脂のDER(商標)669Eと比較して表Iに示す。本発明のエポキシ樹脂の破断点伸びはDER(商標)669Eより約80倍〜1000倍を超えて高く、それらの引張靭性はDER(商標)669Eより100倍を超えて強い。表Iにおけるデータは、重量平均分子量が同様の範囲内であっても、本発明の高分子量エポキシ樹脂は9型のビスフェノールA系のエポキシ樹脂より可撓および強靱であることを示している。
【0108】
【表1】
【0109】
実施例4−合成例1のエポキシ樹脂から作製される硬化性組成物およびコーティング
実施例1からのエポキシ樹脂10.000g、フェノール性の架橋剤(Methylon 75108)1.111g、触媒(85%リン酸)0.016g、添加剤(BYK−310)0.013g、モノブチルエチレングリコールエーテル26.666gおよびシクロヘキサノン6.667gの混合物を16時間かき混ぜて、明澄な溶液を形成した。明澄な溶液を1ミクロンのシリンジフィルターに通して濾過し、次いでスズフリーの鋼(TFS)パネル上に、20番のドローダウンバーを用いてコーティングした。コーティング付きパネルを炉内にて205℃で15分間乾燥および硬化させた。硬化コーティングの厚さは5.0ミクロンである。
【0110】
実施例5−合成例2のエポキシ樹脂から作製される硬化性組成物およびコーティング
実施例2からのエポキシ樹脂10.000g、フェノール性の架橋剤(Methylon 75108)1.111g、触媒(85%リン酸)0.028g、添加剤(BYK−310)0.013g、モノブチルエチレングリコールエーテル26.666gおよびシクロヘキサノン6.667gの混合物を16時間かき混ぜた。明澄な溶液を1ミクロンのシリンジフィルターに通して濾過し、次いでスズフリーの鋼(TFS)パネル上に、20番のドローダウンバーを用いてコーティングした。コーティング付きパネルを炉内にて205℃で10分間乾燥および硬化させた。硬化コーティングの厚さは5.2ミクロンである。
【0111】
実施例6−合成例3のエポキシ樹脂から作製される硬化性組成物およびコーティング
実施例3からのエポキシ樹脂10.000g、フェノール性の架橋剤(Methylon 75108)1.111g、触媒(85%リン酸)0.028g、添加剤(BYK−310)0.013g、モノブチルエチレングリコールエーテル26.666gおよびシクロヘキサノン6.667gの混合物を16時間かき混ぜた。明澄な溶液を1ミクロンのシリンジフィルターに通して濾過し、次いでスズフリーの鋼(TFS)パネル上に、20番のドローダウンバーを用いてコーティングした。コーティング付きパネルを炉内にて205℃で15分間乾燥および硬化させた。硬化コーティングの厚さは5.3ミクロンである。
【0112】
比較例E−比較合成例Aのエポキシ樹脂から作製される硬化性組成物およびコーティング
比較例Aからのエポキシ樹脂10.000g、フェノール系の架橋剤(Methylon 75108)1.111g、触媒(85%リン酸)0.016g、添加剤(BYK−310)0.013g、モノブチルエチレングリコールエーテル26.666gおよびシクロヘキサノン6.667gの混合物を16時間かき混ぜた。該清澄な溶液を1ミクロンのシリンジフィルターに通して濾過し、次いでスズフリーの鋼(TFS)パネル上に20番のドローダウンバーを用いてコーティングした。コーティング付きのパネルを炉内にて205℃で15分間乾燥および硬化させた。硬化コーティングの厚さは4.8ミクロンである。
【0113】
比較例F−比較合成例Bのエポキシ樹脂から作製される硬化性組成物およびコーティング
比較例Bからのエポキシ樹脂10.000g、フェノール性の架橋剤(Methylon 75108)1.111g、触媒(85%リン酸)0.016g、添加剤(BYK−310)0.013g、モノブチルエチレングリコールエーテル26.666gおよびシクロヘキサノン6.667gの混合物を16時間かき混ぜた。明澄な溶液を1ミクロンのシリンジフィルターに通して濾過し、次いでスズフリーの鋼(TFS)パネル上に、20番のドローダウンバーを用いてコーティングした。コーティング付きパネルを炉内にて205℃で10分間乾燥および硬化させた。硬化コーティングの厚さは4.6ミクロンである。
【0114】
比較例G−比較合成例Cのエポキシ樹脂から作製される硬化性組成物およびコーティング
比較例Cからのエポキシ樹脂10.000g、フェノール性の架橋剤(Methylon 75108)1.111g、触媒(85%リン酸)0.016g、添加剤(BYK−310)0.013g、モノブチルエチレングリコールエーテル26.666gおよびシクロヘキサノン6.667gの混合物を16時間かき混ぜた。明澄な溶液を1ミクロンのシリンジフィルターに通して濾過し、次いでスズフリーの鋼(TFS)パネル上に、20番のドローダウンバーを用いてコーティングした。コーティング付きパネルを炉内にて205℃で10分間乾燥および硬化させた。硬化コーティングの厚さは4.6ミクロンである。
【0115】
比較例H−DER(商標)669Eから作製される硬化性組成物およびコーティング
DER(商標)669E 10.000g、フェノール性の架橋剤(Methylon 75108)1.111g、触媒(85%リン酸)0.016g、界面活性剤(BYK−310)0.013g、モノブチルエチレングリコールエーテル26.666gおよびシクロヘキサノン6.667gの混合物を16時間かき混ぜた。明澄な溶液を1ミクロンのシリンジフィルターに通して濾過し、次いでスズフリーの鋼(TFS)パネル上に、20番のドローダウンバーを用いてコーティングした。コーティング付きパネルを炉内にて205℃で15分間乾燥および硬化させた。硬化コーティングの厚さは5.0ミクロンである。
【0116】
実施例3〜4および比較例E〜Hの全てのエポキシコーティングは、異なるエポキシ樹脂を使用したことを除いて同様のコーティング配合物に基づく。全ての硬化コーティングは、目に見える白化がなく平滑および均一である。硬化コーティングの可撓性をウェッジ曲げ測定によって評価し、コーティングの耐化学性をMEK二重摩擦試験によって試験した。耐レトルト性およびコーティング付着性もまた評価した。全ての硬化エポキシコーティングのコーティング評価結果を表IIに示す。
【0117】
【表2】
【0118】
ウェッジ曲げ可撓性の結果は、本発明のエポキシ樹脂(実施例4、5および6)に基づくコーティングからの応力が加えられたコーティング表面に、いかなる裂けおよび破損もなかったことを示している。同じく脂環式エポキシから誘導された改良された樹脂に基づいている比較例E〜Gも同様であるが、9型高分子量DER(商標)669Eエポキシ樹脂に基づく比較例Hは同様ではなく、25%の破損を示した。しかし、脂環式ジグリシジルエーテルからの高分子量エポキシ樹脂に基づくコーティングが全て金属基材に対して良好な耐レトルト性および付着性をもたらすわけではない。実施例3および4は、カテコール(オルト−ジフェノール)およびシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、例えば、UNOXOL(商標)ジオールDGEおよび1,4−CHDM DGEから調製される高分子量エポキシ樹脂を含む硬化コーティングが、優れた耐レトルト性を有し、テープ付着性測定の後にそれらの保全性を維持することを示している。さらに、実施例5は、高純度のネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルおよびシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、例えば、UNOXOL(商標)ジオールDGEおよび1,4−CHDM DGEを含むカテコール(オルト−ジフェノール)およびジグリシジルエーテル混合物から調製される高分子量エポキシ樹脂を含む硬化コーティングも、優れた耐レトルト性を有し、テープ付着性測定の後にそれらの保全性を維持することを示している。比較すると、それぞれUNOXOL(商標)ジオールDGEおよびレゾルシノール(1,3−ジフェノール)、ハイドロキノン(1,4−ジフェノール)、ならびにビスフェノールAから調製される高分子量エポキシ樹脂に基づくコーティングである比較例E〜Gは、乏しい耐レトルト性をもたらす。さらに、それぞれUNOXOL(商標)ジオールDGEおよびレゾルシノール(1,3−ジフェノール)またはハイドロキノン(1,4−ジフェノール)(比較例E〜F)から調製される高分子量エポキシ樹脂に基づくコーティングは、テープ付着性測定において損傷し、テープ付着性測定に不合格であった。そして、MEK二重摩擦の結果は、本発明のエポキシ樹脂に基づく硬化コーティングが、従来の高分子量エポキシ樹脂に基づくコーティングと同様の耐溶媒性をもたらすことを示している。
【0119】
合成例7−1,4−CHDM DGEおよび2,3−ジヒドロキシナフタレンを含むエポキシ樹脂の調製
2,3−ジヒドロキシナフタレン55.0g、1,4−CHDM DGE(ガスクロマトグラフィーにより、純度=99.6面積%)94.68gおよびジグリム150.96gの混合物を、凝縮器および窒素パージおよび機械スターラー付きの500mLの4つ口フラスコ中で撹拌し、130℃に加熱した。131℃で、1.28gの触媒ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウムをフラスコに投入した。生じた混合物を165℃にさらに加熱した。反応混合物の重合を、反応混合物における残留エポキシ基の滴定によってモニタリングした。4.5時間後に反応を止め、この時エポキシドの96.7%が反応していた。結果として生じるポリマー溶液を、ブレンダーに含有されているメタノール500mL中に沈殿させた。生じたポリマーを回収し、メタノールで3回洗浄し、真空オーブンを使用して60℃で24時間乾燥させた。生じたポリマー生成物は白色の明澄な固体であった。ポリマー生成物のガラス転移温度は64℃であり、重量平均分子量は17381であり、OH数は260mgKOH/gであり、150℃での溶融粘度は32888cpsである。
【0120】
合成例8−UNOXOL(商標)DGEおよびカテコールを含むエポキシ樹脂の調製(溶融プロセス)
カテコール40g、UNOXOL(商標)DGE100.16gの混合物を、凝縮器および窒素パージおよび機械スターラー付きのフランジを含有する4つ口付きの500mLのジャケット付き円筒フラスコ中で撹拌し、100℃に加熱した。100℃で、0.30gの触媒エチルトリフェニルホスホニウムアセテート(約1%酢酸および1%の酢酸メチルを含有するメタノール中の70%溶液)を、フラスコに投入した。生じた混合物を20分の間125℃に、次いで15分の間145℃に、および最終的に10分の間155℃にさらに加熱した。反応物を155℃で1時間保持して止め、この時エポキシドの94.7%が反応していた。反応混合物の重合を、反応混合物における残留エポキシ基の滴定によってモニタリングした。結果として生じるポリマーを注ぎ出し、回収した。生じたポリマー生成物は淡黄色の透明な固体であった。ポリマー生成物のガラス転移温度は28.5℃であり、重量平均分子量は44046であり、OH#は242mgKOH/gであり、150℃での溶融粘度は659902cpsである。
【0121】
実施例9−実施例7からのエポキシ樹脂のコーティング
実施例4からのエポキシ樹脂3.97g、フェノール架橋剤(Methylon 75108)0.5g、触媒(10%リン酸水溶液)0.189g、添加剤(BYK−310)0.045g、モノブチルエチレングリコールエーテルおよびシクロヘキサノン混合物(80/20重量比)15.4gの混合物を終夜かき混ぜることで、明澄な溶液を形成した。明澄な溶液を1μmのシリンジフィルターに通して濾過し、次いで電解でスズをメッキした鋼(ETP)パネル上に、22番の巻線ロッドドローダウンバーを用いてコーティングした。コーティングしたパネルを炉内にて205℃で10分間乾燥および硬化させた。硬化コーティングの厚さは6.4μmである。
【0122】
実施例10−実施例8からのエポキシ樹脂のコーティング
実施例5からのエポキシ樹脂3.97g、フェノール架橋剤(Methylon 75108)0.5g、触媒(10%リン酸水溶液)0.225g、添加剤(BYK−310)0.022g、モノブチルエチレングリコールエーテルおよびシクロヘキサノン混合物(80/20重量比)15.28gの混合物を終夜かき混ぜることで、明澄な溶液を形成した。明澄な溶液を1μmのシリンジフィルターに通して濾過し、次いで電解でスズをメッキした鋼(ETP)パネル上に、22番の巻線ロッドドローダウンバーを用いてコーティングした。コーティングしたパネルを炉内にて205℃で10分間乾燥および硬化させた。硬化コーティングの厚さは4.3μmである。
【0123】
コーティングに関する特性を下記の表に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
コーティング性能の結果は、脂環式ジグリシジルエーテル化合物およびカテコールが、高いレベルの破断点伸びおよび高引張靭性を有する、実質的に直鎖状の高分子量エポキシ樹脂生成物を製造するために首尾よく使用され得ること、ならびに著しく高い可撓性、良好な耐レトルト性、レトルトプロセス前後の金属に対する優れた付着性、および金属の食品包装用途に有用な良好な視覚的白化の出現を示す缶コーティングの製造のためなど様々なコーティング用途において有利に使用されることが見出されたことを示している。
なお、本発明には以下の態様も含まれる。
[1]以下の化学構造を有するエポキシ樹脂ポリマー組成物を含む硬化性コーティング組成物:
【化5】

[式中、nは、1〜約3000の数であり;mは、それぞれ独立に、0または1の値を有し;Rは、それぞれ独立に、−Hまたは−CHであり;Rは、それぞれ独立に、−HまたはC〜Cアルキレン基(飽和二価脂肪族炭化水素基)であり;R’〜R’は、独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、または他の置換基、例えば、ハロゲン化物基、シアノ基、ニトロ基、ブロックイソシアネート基もしくはアルキルオキシ基であり;さらに、R’〜R’のいずれか2つは、独立して縮合環を形成していてもよく;Xは、シクロアルキレン基(置換シクロアルキレン基を含み、ここでの置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、または他の置換基、例えば、ニトロ基、ブロックイソシアネート基もしくはアルキルオキシ基を含む)、シクロアルキレン基とアルキレン基との組合せおよび間に架橋部分を有するアルキレン基とシクロアルキレン基との組合せである]。
[2]硬化剤を含む、上記[1]に記載の硬化性コーティング組成物。
[3]前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が、(a)少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物と、(b)少なくとも1つの芳香族ジオールとの反応生成物を含む、上記[1]に記載の硬化性コーティング組成物。
[4]前記少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物が、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む、上記[3]に記載の硬化性コーティング組成物。
[5]前記少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物が、cis−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルおよび/またはtrans−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む、上記[3]に記載の硬化性コーティング組成物。
[6]前記少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物が、cis−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルおよび/またはtrans−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む、上記[3]に記載の硬化性コーティング組成物。
[7]前記少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物が、cis−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、trans−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、cis−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、および/またはtrans−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む、上記[3]に記載の硬化性コーティング組成物。
[8]前記少なくとも1つの脂環式ジグリシジルエーテル化合物が、1,1’−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含む、上記[3]に記載の硬化性コーティング組成物。
[9]前記少なくとも1つの芳香族ジオールが、以下の一般化学構造を有する少なくとも1つの芳香族ジオールを含む、上記[3]に記載の硬化性コーティング組成物:
【化6】

[式中、R’〜R’は、独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基または他の置換基であるか;または、式中、R’〜R’基の少なくとも2つ以上が一緒に縮合している]。
[10]前記少なくとも1つの芳香族ジオールがカテコールを含む、上記[3]に記載の硬化性コーティング組成物。
[11]前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が、約300〜約1,000,000の重量平均分子量を有する、上記[1]に記載の硬化性コーティング組成物。
[12]前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が、ASTM D1708法によって測定した場合に、約21℃で約4パーセント〜約10000パーセントの破断点伸びを有する、上記[1]に記載の硬化性コーティング組成物。
[13]前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が、ASTM D1708法によって測定した場合に、約21℃で約0.05MPa〜約500Mpaの引張靭性を有する、上記[1]に記載の硬化性コーティング組成物。
[14]前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が、約−50℃〜約200℃のガラス転移温度を有する、上記[1]に記載の硬化性コーティング組成物。
[15]前記エポキシ樹脂ポリマー組成物が水分散性である、上記[1]に記載の硬化性コーティング組成物。
[16]前記エポキシ樹脂ポリマー組成物は、(i)水分散性アクリル樹脂との反応;(ii)水分散性ポリエステル樹脂との反応;(iii)フリーラジカル機序によって重合可能である二重結合を含有する少なくとも1種の酸モノマーとの接合;(iv)フリーラジカル機序によって重合可能である二重結合を含有する少なくとも1種の酸モノマーおよび酸基を含有しないビニルモノマーとの接合;または(v)前記改良されたエポキシ樹脂ポリマー組成物とリン酸および水との反応;ならびに(vi)塩基を用いた前記(i)〜(v)の反応生成物の少なくとも部分的な中和によって、水分散性にされた、上記[15]に記載の硬化性コーティング組成物。
[17]少なくとも1種の架橋試薬、少なくとも1種の硬化触媒、少なくとも1種の溶媒、またはそれらの混合物を含む上記[1]または[15]に記載の硬化性コーティング組成物。
[18]少なくとも1種の架橋試薬、硬化触媒、またはそれらの混合物を含む、上記[1]に記載の硬化性コーティング組成物。
[19]上記[1]に記載の硬化性コーティング組成物を含む硬化コーティング。
[20]金属包装材において使用される上記[19]に記載のコーティング。
[21]缶に対する内部または外部保護コーティングに使用される、上記[19]に記載のコーティング。
[22](a)上記[1]に記載の組成物を提供するステップと;(b)上記[1]に記載の組成物を金属基材に適用するステップと;(c)約0℃〜約300℃の温度で、前記組成物および基材を熱硬化させるステップとを含む、コーティング物品の製造方法。
[23]上記[1]に記載の組成物から作られた物品。