(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795842
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】工作物を加熱成形する方法及び放熱を減少する手段
(51)【国際特許分類】
B21J 1/06 20060101AFI20150928BHJP
B21J 5/00 20060101ALI20150928BHJP
C22F 1/18 20060101ALN20150928BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
B21J1/06 A
B21J5/00 E
!C22F1/18 H
!C22F1/00 682
!C22F1/00 683
!C22F1/00 613
!C22F1/00 630K
!C22F1/00 650E
!C22F1/00 650F
!C22F1/00 691B
【請求項の数】17
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-138710(P2010-138710)
(22)【出願日】2010年6月2日
(65)【公開番号】特開2010-280003(P2010-280003A)
(43)【公開日】2010年12月16日
【審査請求日】2013年3月28日
(31)【優先権主張番号】A878/2009
(32)【優先日】2009年6月5日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】510170291
【氏名又は名称】ベーレル・シユミーデテヒニク・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(74)【代理人】
【識別番号】100062317
【弁理士】
【氏名又は名称】中平 治
(72)【発明者】
【氏名】カーリン・ロッケンシヤウプ
(72)【発明者】
【氏名】ヴイルフリート・マルケツツ
【審査官】
福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−140814(JP,A)
【文献】
特開昭57−091815(JP,A)
【文献】
特開昭57−091805(JP,A)
【文献】
特開平02−224841(JP,A)
【文献】
特開2007−131949(JP,A)
【文献】
特開平10−156473(JP,A)
【文献】
特開平05−177289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 1/00−13/14
B21J 17/00−19/04
B21K 1/00−31/00
B21B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属又は金属化合物から成る工作物又は原材料を、鍛造又は圧延のような変形により1000℃以上の温度で加熱成形する方法において、最初の段階において工作物の表面が、主成分としての、酸化ジルコニウムから形成された酸化物相と、添加物としての、メチルセルロース及び/又はミクロシリカから形成された1種類又は複数種類の添加剤と、珪酸ナトリウムガラスから形成された液状成分とから成る被覆手段で少なくとも部分的に覆われ、被覆が硬化され、それから後続段階において、変形温度まで工作物又は原材料の十分な加熱による加熱が行われ、それから工作物又は原材料が成形手段の所へ搬送され、成形手段により成形体又は圧延製品に加工されるか又は鍛造されるか又は圧延されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
工作物又は原材料の表面の被覆が100℃以上の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工作物又は原材料の表面の被覆が200℃の温度で行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工作物又は原材料の表面の被覆が、被覆手段への浸漬又は被覆手段の吹付けにより行われることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の方法。
【請求項5】
被覆が、0.1mmより大きい硬化した層厚を持つように行われることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の方法。
【請求項6】
被覆が、0.3〜3.0mmの硬化した層厚を持つように行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
主成分としての、酸化ジルコニウムから形成された酸化物相と、添加物としての、メチルセルロース及び/又はミクロシリカから形成された1種類又は複数種類の添加剤と、珪酸ナトリウムガラスから形成された液状成分から成る、請求項1〜6の1つに記載の方法のための、変形温度に加熱される工作物又は原材料の放熱を減少するための被覆手段。
【請求項8】
主成分又は酸化物相が、70重量%以上の割合を持つ酸化ジルコニウムから形成されている、請求項7に記載の手段。
【請求項9】
主成分又は酸化物相が、80〜98重量%の割合を持つ酸化ジルコニウムから形成されている、請求項8に記載の手段。
【請求項10】
主成分又は酸化物相が、90〜97重量%の割合を持つ酸化ジルコニウムから形成されている、請求項9に記載の手段。
【請求項11】
添加剤が1.0〜10.0重量%の割合を持つメチルセルロース及び/又はミクロシリカから形成されている、請求項7〜10の1つに記載の手段。
【請求項12】
添加剤が2.0〜8.0重量%の割合を持つメチルセルロース及び/又はミクロシリカから形成されている、請求項11に記載の手段。
【請求項13】
液状成分として15〜65重量%の割合を持つ珪酸ナトリウムガラスが添加されている、請求項7〜12の1つに記載の手段。
【請求項14】
液状成分として20〜60重量%の割合を持つ珪酸ナトリウムガラスが添加されている、請求項13に記載の手段。
【請求項15】
1μm〜50μmの粒径を持つ酸化物相が形成されている、請求項7〜14の1つに記載の手段。
【請求項16】
酸化物相がd50=12.5μmの平均粒径を持っている、請求項15に記載の手段。
【請求項17】
請求項7〜16の1つに記載の放熱を減少するための被覆手段が使用される、γチタン−アルミニウム−母合金から成る工作物又は原材料を鍛造又は圧延のような変形により加熱成形する請求項1〜6の1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属又は金属間化合物から成る工作物又は原材料を、鍛造又は圧延のような
変形により加熱
成形する方法に関する。
【0002】
更に本発明は、変形温度に加熱される工作物又は原材料の放熱を減少するための被覆手段に関する。
【背景技術】
【0003】
鋳塊のように金属から成る工作物又は金属又は金属間化合物から成りかつ一次変形された原材料を鍛造部材に
加熱成形するため、悪い変形特性を持つ材料では、加熱から部材を変形手段から取出すまで正確な温度制御が必要である。
【0004】
工作物の材料の充分な変形能はしばしば狭い温度範囲においてのみ与えられる。なぜならば低い成形温度は脆性を生じ、高い温度も同様に脆性及び/又は材料の組織の粗粒を生じるからである。
【0005】
十分な変形能の限界は、場合によっては1000℃以上の高い温度の所にある。
【0006】
放射される熱エネルギは、一般に上昇する温度の4乗で増大するので、工作物表面温度が高い場合、表面範囲における単位時間当たりのエネルギ損失及び温度低下は大きい。
【0007】
従って高い変形温度が必要な場合、工作物の表面範囲においても、必要な時間にわたって、工作物の充分な変形能を持つ温度を確実に設定することは困難であり、かつ/又は費用がかかる。
【0008】
通常工作物は炉内で変形温度に加熱される。十分に加熱された部材は、続いて公知の手段で炉から取出されて、成形手段へ搬送され、ローラテーブル又は工具部分へ載せられ、工具により変形加工される。この時間中に工作物の表面は熱を放射し、かつ/又は熱が工具へ放出される。
【0009】
従って一般的な問題は、工作物の表面に近い区域の速い温度損失及びその結果生じる亀裂のような欠陥の出現である。
【0010】
この問題を解決するため、十分加熱された工作物の短時間搬送が提案された。しかし大抵の場合加熱装置と変形装置をすぐ近くに位置させることは不可能である。
【0011】
更に温度低下の場合にも工作物の表面区域がまだ材料の変形可能な温度範囲にあるように、工作物を高温に加熱することも既に試みられた。しかしこうしてミクロ組織の粗大化及び/又は悪化が生じる。
【0012】
工作物を箱に入れてこの中で加熱しかつ変形する方法も公知である。このような方法は、狭い温度範囲における変形に関して全く目標に適うが、高い費用を必要とする。
【0013】
方法技術的に工作物の等温鍛造も可能で目的に適うが、この方法では工具が変形温度に近い温度に加熱されている。しかしこのような方法は最高に費用がかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
さて本発明は、公知の方法の欠点を克服する工作物の新しい変形方法を提示することをねらっている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、最初にあげた方法において、最初の段階において工作物の表面が、
主成分としての、酸化ジルコニウムから形成された酸化物相
と、
添加物としての、メチルセルロース及び/又はミクロシリカから形成された1種類又は複数種類の添加剤
と、
珪酸ナトリウムガラスから形成された液状成分とから成る被覆手段で少なくとも部分的に覆われ、被覆が硬化され、それから後続段階において、変形温度まで工作物又は原材料の十分な加熱による加熱が行われ、それから工作物又は原材料が成形手段の所へ搬送され、成形手段により成形体又は圧延製品に加工されるか又は鍛造されるか又は圧延されることによって、達せられる。
【0016】
本発明により得られる利点は、大体において、特に成形手段への工作物の搬送中に、単位時間における放射従って温度損失が減少されることである。これは、工作物をロ−ラテーブル又は工具部分上へ載せる場合にも言える。当業者にとって驚くべきことに、被覆された工作物が炉内で加熱の際長い加熱時間を必要としないことがわかった。
【0017】
本発明によれば、工作物の被覆が均一な層厚で行われ、加熱及びそれに続く成形手段への搬送の際層のひび割れが起こらないことが重要である。
被覆は、少なくとも最初の方法段階において、工作物から工具への熱伝達を少なくする。
【0018】
工作物又は原材料の表面の被覆が
100℃以上なるべく
200℃の温度で行われると、本発明による層の特に良好な付着が行われる。
【0019】
わかったように、工作物又は原材料の表面の被覆が、被覆手段への浸漬又は被覆手段の吹付けにより行われると、表面における十分均一な層厚が有利に得られる。
【0020】
表面からの熱エネルギの放射の減少及び良好な層付着の最適化と変形される工作物の望まれる高い表面品質を得るために、被覆が、0.1mmより大きいなるべく0.3〜3.0mmの硬化した層厚を持つように行われると、有利である。
【0021】
本発明の別の課題は、変形温度に加熱される工作物又は原材料の放熱を減少するための被覆手段を提供することであり、この手段は、容易に薄くかつ同じ層厚で工作物上へ加熱前に塗布可能であり、炉内の加熱過程中に剥離せず、工具への搬送の際最初の変形段階まで十分な付着を保ち、鍛造片の品質を改善する。
【0022】
この課題は、主成分としての
、酸化ジルコニウムから形成された酸化物相
と、添加物としての
、メチルセルロース及び/又はミクロシリカから形成された1種類又は複数種類の添加剤
と、珪酸ナトリウムガラスから形成された液状成分から成る手段によって解決される。
【0023】
本発明によれば、酸化物相は耐熱絶縁成分として作用し、1種類又は複数種類の添加
剤又は接着剤が僅かな割合の酸化物粒子を結合して、基板上に保持する
。液状成分は、相の均質化、及び工作物又は部材の表面への均等な塗布のため所望の粘度の設定に役立つ。
【0024】
主成分又は酸化物相が、70重量%以上なるべく80〜98特に90〜97重量%の割合を持つ酸化
ジルコニウムから形成されている手段は、放熱の著しい減少に関して特に有利なことがわかった
。
【0025】
さて酸化
ジルコニウムの割合が70重量%より大きいと、添加剤が
1.0〜10.0なるべく2.0〜8.0重量%の割合を持つメチルセルロース及び/又はミクロシリカから形成されている手段が、
TiAl合金の被覆のために特に有利に使用可能である。なぜならば、この合金形式及び被覆材料は、互いに僅か異なる膨張係数しか持っていないからである。
【0026】
液状成分として15〜65なるべく20〜60重量%の割合を持つ珪酸ナトリウムガラスが手段に添加されており、この添加物は添加剤を持つ酸化物相に関する。
【0027】
1μm〜50μmの粒径なるべくd
50=12.5μmの平均粒径を持つ酸化物相が形成されている手段が、特に均一に塗布可能に付着しかつ良好に熱絶縁作用することがわかった。
【0028】
熱膨張の際前述したように、工作物を
加熱成形する前記方法の使用、及びγチタン−アルミニウム−母合金から成る部材の
熱変形のため変形温度に加熱される工作物の放熱を
減少するため上述した方法の使用は、特に有利であることがわかったが、その際この合金の1280℃以上までの加熱を行うことができ、欠陥のない被覆が、工作物の表面に近い区域の単位時間における温度低下の著しい減少を行う。
【0029】
開発作業及び供試体における時間についての温度推移の比較実験からの結果に基いて、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】温度についてTiAl合金及び酸化
ジルコニウムの熱膨張を示す。
【
図3】被覆された棒及び裸の(被覆されない)棒の表面に近い範囲における時間についての冷却曲線を示す。
【
図4】被覆された棒及び裸の棒の棒芯における時間についての冷却曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、γチタン−アルミニウム−母合金及び
ジルコニウム被覆から成る基質の膨張を1000℃までの温度に関係して示す。図からわかるように、両方の物質の熱膨張は僅かな相違しか示さず、それが母材からの層の剥離の回避を根拠づける。
【0032】
図2には40mmの直径を持つ供試体が示され、熱電対用の表面に近い穴及び中心穴を持っている。
【0033】
実験は、被覆されない供試体及び被覆された供試体が熱電対を設けられ、約1290℃の温度に加熱されるように、行われた。十分な加熱後、供試体が不活性ガス炉から取出され、耐火性台上に置かれ、時間に関係して温度推移が測定された。
【0034】
図3は、被覆されない供試体及び被覆された供試体の表面に近い区域における温度低下を時間に関係して示す。供試体の取出しから約30秒後、被覆されない棒は表面範囲で約1165℃の温度を持ち、
ジルコニウム層を備えた供試体は約1215℃の温度を持っている。
【0035】
図4は、供試体の中心における温度低下を示す。
【0036】
図3及び
図4は、当業者に対してそれ以上の説明を必要とせず、γチタン−アルミニウム−母合金から成る供試体の酸化
ジルコニウムの放熱を減少する作用を明らかに示している。