特許第5795850号(P5795850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795850
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】画像データ処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20150928BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20150928BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20150928BHJP
   G01N 21/954 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
   G01N25/72 K
   G06T3/00 730
   G06T3/00 735
   G01B11/02 H
   !G01N21/954 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-246410(P2010-246410)
(22)【出願日】2010年11月2日
(65)【公開番号】特開2012-98170(P2012-98170A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2013年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510291574
【氏名又は名称】株式会社保全工学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100095980
【弁理士】
【氏名又は名称】菅井 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100097777
【弁理士】
【氏名又は名称】韮澤 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100091971
【弁理士】
【氏名又は名称】米澤 明
(74)【代理人】
【識別番号】100109748
【弁理士】
【氏名又は名称】飯高 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 昌史
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏也
(72)【発明者】
【氏名】ファンウォック
(72)【発明者】
【氏名】天野 勲
(72)【発明者】
【氏名】中山 聡子
(72)【発明者】
【氏名】安信 均
(72)【発明者】
【氏名】二村 孝房
【審査官】 大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−016991(JP,A)
【文献】 特開2006−234383(JP,A)
【文献】 特開2009−192453(JP,A)
【文献】 特開2005−338359(JP,A)
【文献】 特開昭61−139751(JP,A)
【文献】 特開2010−146094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00−25/72
G01B 11/02
G06T 3/00
G01N 21/954
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台に搭載された可視画像撮影用カメラと、
前記架台に搭載されるとともに前記可視画像撮影用カメラの撮影方向と同方向を撮影することが可能な赤外線カメラと、
前記可視画像撮影用カメラと前記赤外線カメラとの撮影を制御し、前記可視画像撮影用カメラで撮影された可視画像データ及び前記赤外線カメラで撮影された赤外線画像データのデータ処理を行う情報処理装置と、
からなる画像データ処理システムにおいて、
前記可視画像撮影用カメラと前記赤外線カメラとによって同一対象物を撮影することで、可視画像データ及び赤外線画像データを取得し、
前記可視画像データ及び赤外線画像データ上に撮影される対象物上に予め写り込むように複数の基準点を設定し、
前記可視画像データ及び赤外線画像データのそれぞれの画像データに写し込まれている対象物上の前記複数の基準点に基づいて、前記可視画像データ及び赤外線画像データの画像補正値及び位置関係を求め、
前記画像補正値に基づいて可視画像データ及び赤外線画像データに対して画像変形補正処理及び必要に応じ画像縮尺補正を施して同一サイズの規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データとし、
前記規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データを、前記位置関係に基づいて重畳して重畳データとする、ことを特徴とする画像データ処理システム。
【請求項2】
架台に搭載された可視画像撮影用カメラと、
前記架台に搭載されるとともに前記可視画像撮影用カメラの撮影方向と同方向を撮影することが可能な赤外線カメラと、
前記可視画像撮影用カメラと前記赤外線カメラとの撮影を制御し、前記可視画像撮影用カメラで撮影された可視画像データ及び前記赤外線カメラで撮影された赤外線画像データのデータ処理を行う情報処理装置と、
からなる画像データ処理システムにおいて、
同一対象物を連続して撮影することで、複数の可視画像データ及び複数の赤外線画像データを取得し、
最初の可視画像データ及び赤外線画像データに撮影される対象物上に予め写り込むように複数の基準点を設定し、
前記可視画像データ及び赤外線画像データのそれぞれの画像データに写し込まれている対象物上の前記複数の基準点に基づいて、前記最初の可視画像データ及び赤外線画像データの画像補正値及び位置関係を求め、
前記画像補正値に基づいて前記最初の可視画像データ及び赤外線画像データに対して画像変形処理及び必要に応じ縮尺補正を施して同一サイズの最初の規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データとし、
前記最初の規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データを、前記位置関係に基づいて重畳して最初の重畳データとし、
前記複数の可視画像データ及び赤外線画像データのうち、2番目以降の可視画像データ及び赤外線画像データに対して、前記最初の前記画像補正値を利用して画像変形処理及び必要に応じ縮尺補正を施して同一サイズの2番目以降の規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データとし、
前記2番目以降の規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データを、前記最初の位置関係に基づいて重畳して2番目以降の重畳データとし、
前記最初の重畳データと前記2番目以降の重畳データとを連結することを特徴とする画像データ処理システム。
【請求項3】
前記架台は移動式架台であり、前記複数の可視画像データ及び複数の赤外線画像データを取得するにあたっては、前記移動式架台を移動させて取得することを特徴とする請求項2に記載の画像データ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の診断情報の作製に好適な画像データ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物の診断方法としては、目視による診断、打音による診断などが広く行われてきたが、これらの診断方法では、高所のコンクリート構造物を診断するためには足場が必要となったり、また、経験を有する作業員が大人数必要であったりしたので、高所における診断作業に伴い危険が発生したり、或いは、診断のための費用が高くなるとともに診断のための時間も要すこととなったりしていた。
【0003】
また、従来のコンクリート構造物の診断では、基本的に作業員が診断の判定を行うので、個人差による診断結果のバラツキなどが発生していた。
【0004】
以上のような問題を解決するために、コンクリート構造物の画像を取得して、この画像に基づいてコンクリート構造物の診断を行う方法が提案されている。例えば、特許文献1(特開2010−197371号公報)には、赤外線サーモグラフィ装置によってコンクリート表層部の被調査面を撮影し、該撮影した被調査面の熱画像に基づいて前記コンクリート表層部の変状部を特定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2010−197371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の技術では、ひび割れは赤外線では把握しにくいので通常の可視光カメラ画像による調査診断となっていた。そのため、2つの画像での診断であり、非常に煩雑で診断効率の悪いものであった。
【0006】
そこで、発明者らは、これまで、通常のカメラと赤外線カメラの両方を利用することで、診断対象となるコンクリート構造物に係る可視画像データと赤外線画像データとを取得して、これらの画像データを重畳することでハイブリッド画像とし、このハイブリッド画像によってコンクリート構造物の診断する技術を開発した。なお、2つの画像データを重畳データとしハイブリッド画像にするとは、2つの画像データに写り込んでいる対象物上の全ての点が、双方の画像データでちょうど重ね合わせとなるようにすることである。
【0007】
上記のような画像データのハイブリッド画像化の技術によれば、長い距離にわたるコンクリート壁面などのコンクリート構造物でも可視画像と赤外線画像を連続的に撮影すれば、解析処理ソフトを用いて、コンクリート構造物の損傷個所であるコンクリート表面のひび割れやジャンカ、内部の空洞や浮き・剥離を抽出するとともに、その撮影画像を重畳することで一枚の画像での調査診断が可能となる。
【0008】
しかしながら、長い距離にわたるコンクリート構造物の可視画像データと赤外線画像データとを重畳し、ハイブリッド画像とするためには、オペレーターによるコンピューター操作が必要であったので、従来、長い距離にわたるコンクリート壁面の診断のためには、コストに加え時間もかかり診断効率が悪い、という問題があるが、本発明はさらにこの問題を解決するものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、架台に搭載された可視画像撮影用カメラと、前記架台に搭載されるとともに前記可視画像撮影用カメラの撮影方向と同方向を撮影することが可能な赤外線カメラと、前記可視画像撮影用カメラと前記赤外線カメラとの撮影を制御し、前記可視画像撮影用カメラで撮影された可視画像データ及び前記赤外線カメラで撮影された赤外線画像データのデータ処理を行う情報処理装置と、からなる画像データ処理システムにおいて、前記可視画像撮影用カメラと前記赤外線カメラとによって同一対象物を撮影することで、可視画像データ及び赤外線画像データを取得し、前記可視画像データ及び赤外線画像データ上に撮影される対象物上に予め写り込むように複数の基準点を設定し、前記可視画像データ及び赤外線画像データのそれぞれの画像データに写し込まれている対象物上の前記複数の基準点に基づいて、前記可視画像データ及び赤外線画像データの画像補正値及び位置関係を求め、前記画像補正値に基づいて可視画像データ及び赤外線画像データに対して画像変形補正処理及び必要に応じ画像縮尺補正を施して同一サイズの規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データとし、前記規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データを、前記位置関係に基づいて重畳して重畳データとする、ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、架台に搭載された可視画像撮影用カメラと、前記架台に搭載されるとともに前記可視画像撮影用カメラの撮影方向と同方向を撮影することが可能な赤外線カメラと、前記可視画像撮影用カメラと前記赤外線カメラとの撮影を制御し、前記可視画像撮影用カメラで撮影された可視画像データ及び前記赤外線カメラで撮影された赤外線画像データのデータ処理を行う情報処理装置と、からなる画像データ処理システムにおいて、同一対象物を連続して撮影することで、複数の可視画像データ及び複数の赤外線画像データを取得し、最初の可視画像データ及び赤外線画像データに撮影される対象物上に予め写り込むように複数の基準点を設定し、前記可視画像データ及び赤外線画像データのそれぞれの画像データに写し込まれている対象物上の前記複数の基準点に基づいて、前記最初の可視画像データ及び赤外線画像データの画像補正値及び位置関係を求め、前記画像補正値に基づいて前記最初の可視画像データ及び赤外線画像データに対して画像変形処理及び必要に応じ縮尺補正を施して同一サイズの最初の規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データとし、前記最初の規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データを、前記位置関係に基づいて重畳して最初の重畳データとし、前記複数の可視画像データ及び赤外線画像データのうち、2番目以降の可視画像データ及び赤外線画像データに対して、前記最初の前記画像補正値を利用して画像変形処理及び必要に応じ縮尺補正を施して同一サイズの2番目以降の規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データとし、前記2番目以降の規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データを、前記最初の位置関係に基づいて重畳して2番目以降の重畳データとし、前記最初の重畳データと前記2番目以降の重畳データとを連結することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の画像データ処理システムにおいて、前記架台は移動式架台であり、前記複数の可視画像データ及び複数の赤外線画像データを取得するにあたっては、前記移動式架台を移動させて取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る画像データ処理システムによれば、数の可視画像データ及び赤外線画像データは重畳データとされるので診断効率が向上する。さらに複数の重畳データ同士が結合される処理が実行されると、オペレーターによるコンピューター操作が不必要となり、長い距離にわたるコンクリート壁面のなどのコンクリート構造物の診断を、安価にしかも短時間で行うことができ、診断効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによって撮影画像データを取得する様子を説明する図である。
図2】本発明の実施形態に係る画像データ処理システムのシステム構成の概略を説明する図である。
図3】本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによって撮影画像データを取得するための準備工程を説明する図である。
図4】本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによって撮影画像データを取得する処理のフローチャートを示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによる撮影画像データのデータ処理のフローチャートを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによる撮影画像データのデータ処理を説明する図である。
図7】本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによる撮影画像データのデータ処理を説明する図である。
図8】本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによる撮影画像データのデータ処理を説明する図である。
図9】本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによる重畳データの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによって撮影画像データを取得する様子を説明する図である。図1に示す例では、本発明に係る画像データ処理システムによって、トンネルの内壁面を構成するコンクリート構造物の診断を行うために、撮影画像データを取得している状態を示している。このようなトンネル内壁面は比較的長い距離にわたって設けられるものであり、本発明に係る画像データ処理システムを適用するのに好適なコンクリート構造物の一例であるといえる。
【0015】
撮影画像データを取得するために、可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70の両方が用いられるが、これらのカメラを設置するために移動式架台10が用いられる。移動式架台10には移動手段として、例えば、車輪11が設けられており、このような移動手段により可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70を所定距離移動させつつ、トンネルの内壁面の撮影画像データを、トンネルの進行方向において連続するように撮影することができるようになっている。なお、移動式架台10は、モーターなどの動力源を採用し自走できるようにしてもよいし、或いは、オペレーターが押すことによって移動させるようにしてもよい。本実施形態においては、前者の場合を想定し説明する。
【0016】
なお、可視画像撮影用カメラ60は現在市販されているデジタル一眼レフレックスカメラを利用することできる。また、デジタルの赤外線カメラ70としては赤外線サーモグラフィ装置などを利用することができる。
【0017】
可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70の両方のカメラでトンネルの内壁面における同じエリアを撮影することができるよう同方向に向くように調整がなされている。図1の例では、可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70の両方のカメラで、a1
111からなる矩形のエリアを撮影することができるようにされている。すなわち、
可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70の画角が同一となるように、それぞれのカメラにおけるレンズ選定、或いは、カメラの設置等が調整される。
【0018】
なお、可視画像撮影用カメラと赤外線カメラとの画角は同一である必要はない。画角が同一であれば画像を重畳させるにあたっての縮尺補正等が簡略化若しくは省略が可能であるが、画角が同一でなくても基準点が写った可視光カメラと赤外線カメラの画像を対比して両方もしくは片方の画像の縮尺補正を行って双方の基準点を一致させればよい。
【0019】
本実施形態においては、簡単のために、可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70によって、両方のカメラが一度で撮影することが可能なコンクリート内壁面(a11
11からなる矩形のエリア)を撮影しつつ、トンネル進行方向に所定距離移動し、コンクリート内壁面を、両方のカメラそれぞれで隣り合う撮影画像は少しラップするように連続して撮影する例に基づいて説明するが、2台の可視画像撮影用カメラ及び2台の赤外線カメラを設けて、a1111からなる矩形のエリアに加え、さらに若干それにラップさせてe1111からなる矩形のエリアを撮影しつつ、コンクリート内壁面を連続して撮影するようにしてもよい。
【0020】
さらには、より多くのカメラを移動式架台10上に設置して、PQからP’Q’までの帯状のエリア全体を撮影しつつ、トンネル進行方向に所定距離移動し、コンクリート内壁面を連続して撮影するようにしてもよい。この際、PQからP’Q’までの帯状のエリアの撮影をカバーするために、複数台の可視画像撮影用カメラ60、及び、複数台の赤外線カメラ70を設けるようにしてもよいが、赤外線カメラは可視画像撮影用カメラに比べて高価であることを考慮して、可視画像撮影用カメラについては複数台のカメラを移動式架台10上に設置し、これらによってPQからP’Q’までの帯状のエリアの全体を一度に撮影し、赤外線カメラ70については、撮影方向を変更可能な雲台などを用いて1台のみ設置し、前記雲台によって撮影方向を変更しつつPQからP’Q’までの帯状のエリア全体を撮影するようにしてもよい。
【0021】
さて、移動式架台10上に設置された可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70の両方のカメラで、a1111からなる矩形のエリアを撮影することによって、当該エリアの可視画像データ、及び赤外線画像データを取得すると、次に、移動式架台10を距離D移動させて、次にa2222からなる矩形のエリアを撮影することによって、矩形a2222エリアの可視画像データ、及び赤外線画像データを取得する。本発明に係る画像データ処理システムでは、このような撮影画像データ取得作業を繰り返すことによって、コンクリート内壁面の連続撮影データを取得する。なお、隣り合う矩形a1111と矩形a2222とは少しラップしている。
【0022】
また、連続する撮影データの最初の撮影データとなるa1111からなる矩形のエリアには、位置合わせを行うための基準点(マーキング等)が写り込むようにされる。このような基準点としては、コンクリート構造物と温度差があり、視覚的に分かりやすいものが用いられる。
【0023】
基準点の数としては最初の画像位置の中に二つ以上、より好ましくは四つ以上あることが好ましい。また基準点としては、形状は問わないが例えば四角や丸のアルミ箔をコンクリート面に張り付ける。例えば、アルミ箔であれば、赤外線画像にも写る。
【0024】
それから、基準点は、最初の画像位置だけにある。このようにしたのは、コンクリート内壁面とほぼ同じ距離を保って移動式架台を移動するようにしているためである。このようにすれば、最初の画像における後述の各種補正値を、後の複数番目の画像補正に利用できる。ただ確認のため、最初の画像位置だけでなく、その後の適宜の複数番目の画像位置にも基準点を設けるようにしてもよい。
【0025】
上記のような画像データ取得を管理するとともに、取得された画像データを処理するためのより具体的な構成について図2を参照して説明する。図2は本発明の実施形態に係る画像データ処理システムのシステム構成の概略を説明する図である。
【0026】
図2において、情報処理装置50としては現在普及している汎用のパーソナルコンピューターを用いることができる。この情報処理装置50は、可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70で画像データを取得する管理を行うと共に、可視画像撮影用カメラ60によって取得される可視画像データ、及び赤外線カメラ70によって取得される赤外線画
像データそれぞれを、インターフェイス手段(不図示)を介して取り込んで、これら画像データの処理を実行するようなプログラムが不図示の記憶部に記憶されている。
【0027】
また、可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70は、情報処理装置50からのトリガーに応じて、撮影を実行することができるようにもなっている。
【0028】
また、情報処理装置50には、移動式架台10の移動量を検出する移動量検出部20からのデータが入力されるようになっている。移動量検出部20は、例えば、車輪11と共に回転するロータリーエンコーダー(不図示)と、このロータリーエンコーダーの回転状況を検出する光学素子(不図示)とから構成することができる。このような構成により情報処理装置50側で、移動式架台10の移動量を把握することができるようになっている。
【0029】
また、移動式架台10にはモーター(不図示)が内蔵されており、このモーターによって、移動式架台10を自走させることができるようになっている。このモーターを制御するための構成が、架台駆動制御部30であり、この制御部によってモーターを制御し移動式架台10の移動量を自在にコントロールすることができるようになっている。また、架台駆動制御部30は、情報処理装置50からの指令に基づいて、モーターを制御するようになっている。
【0030】
次に、本発明に係る画像データ処理システムによって、撮影画像データを取得するために行うセッティングについて説明する。図3は本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによって撮影画像データを取得するための準備工程を説明する図である。
【0031】
図3において、ステップS100で、データ取得準備工程が開始されると、まず、ステップS101において、可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70を移動式架台10にセットする。このセットに伴い、可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70は情報処理装置50と結線される。
【0032】
次のステップS102においては、可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70の撮影画角が、撮影対象面に対して同画角となるように調整される。
【0033】
続くステップS103においては、移動式架台10撮影毎の移動量が情報処理装置50に入力される。図1の例では、情報処理装置50に入力される移動量はDである。
【0034】
次のステップS104においては、予定撮影範囲が情報処理装置50に入力される。この予定撮影範囲は、トンネル進行方向でいくつの画像データを取得するかで設定したり、トンネル進行方向で何m分の画像データを取得するかで設定したりする。ステップS105で、データ取得準備工程を終了する。
【0035】
次に、以上のようにセッティングされた本発明に係る画像データ処理システムによって、実際に撮影画像データを取得する際の処理について説明する。図4は本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによって撮影画像データを取得する処理のフローチャートを示す図である。このフローチャートは情報処理装置50のCPU(不図示)上で実行されるものである。
【0036】
ステップS200で、データ取得処理が開始されると、まず、ステップS201において、カウンタNに1がセットされる。
【0037】
次のステップS202においては、可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ70に
よって対象コンクリート面を撮影するように制御する。
【0038】
続く、ステップS203においては、可視画像撮影用カメラ60で撮影された可視画像データ及び赤外線カメラ70で撮影された赤外線画像データをそれぞれ第N番目の画像データとして保存する。
【0039】
ステップS204では、全ての予定していた撮影が終了したか否かが判定される。当該判定の結果がYESであればステップS209に進み、データ取得処理を終了する。一方、当該判定の結果がNOであればステップS205に進む。
【0040】
ステップS205では、架台駆動制御部30を制御することで移動式架台10を移動させる。また、ステップS206では、移動量検出部20からの検出データが参照され、移動式架台10の移動量が規定量に達したか否かが判定される。図1の例では、この規定量はDである。
【0041】
ステップS206では、移動式架台10の移動量が規定量に達した場合には、ステップS207に進み、移動式架台10を停止する。ステップS207に続く、ステップS208では、カウンタNを1インクリメントして、次の撮影に備える。
【0042】
なお、本実施形態においては、移動式架台10はモーターなどの動力源によって自走できるようにした構成に基づいて説明したが、オペレーターが押すことによって移動式架台10を移動させる場合には、移動量検出部20が規定移動量を検出したら、オペレーターにこれを報知するように構成するとよい。
【0043】
次に、以上のように取得された可視画像データ及び赤外線画像データをデータ処理する方法について説明する。図5は本発明の実施形態に係る画像データ処理システムによる撮影画像データのデータ処理のフローチャートを示す図である。このフローチャートは情報処理装置50のCPU(不図示)上で実行されるものである。本発明に係る画像データ処理システムにおける撮影画像データのデータ処理は、可視画像データ及び赤外線画像データのデータを重畳し、さらに重畳されたデータを連結していく処理が基本となるので、以下、図5のフローチャートによる処理を、画像データ重畳・結合処理と称する。
【0044】
図5において、ステップS300で、画像データ重畳・結合処理が開始されると、続く、ステップS301においては、カウンタNに1がセットされる。
【0045】
ステップS302では、可視画像データ及び赤外線画像データの第N番目の画像データが取得される。先のカウンタには1がセットされているので、このステップでは第1番目に撮影された可視画像データ及び赤外線画像データが取得される。
【0046】
続く、ステップS303においては、第1番目に撮影された可視画像データ及び赤外線画像データに写し込まれている基準点に基づき、可視画像データ及び赤外線画像データにおける位置関係を求める。この位置関係は、それぞれの画像データで2つの基準点から相似変換(回転方向、スケール、移動量)により求めることができる。また3つの基準点からアフィン変換により赤外画像を可視画像に重畳させることができる。また4つの基準点から射影変換や双一次変換等によりそれぞれの画像を重畳させることができる。他にもいろいろな画像変形処理を利用することが考えられる。よって、2次元方向でどの程度ずれ
ているかを前記の画像変形処理を利用して求めることができる。
【0047】
図6は第1番目に撮影された可視画像データ及び赤外線画像データそれぞれを模式的に示した図である。図6に示されるように、可視画像撮影用カメラ60及び赤外線カメラ7
0で撮影された可視画像データ及び赤外線画像データは、それぞれサイズが異なるものである。このようにサイズが異なるデータ間であっても、基準点を参照することで、画像データ間の位置関係を把握することが可能である。
【0048】
ステップS304では、第1番目に撮影された可視画像データ及び赤外線画像データそれぞれのデータに対して、各種画像変形処理(一次変換、アフィン変換、射影変換、双一次変換等々)補正を施す。例えば、画像変形処理の一種である、矩形あおり補正では斜影変換補正処理を施し、曲線あおり補正では領域を小分割してから斜影変換補正処理を施す。なお、これらのあおり補正のためには従来周知のアルゴリズムを適宜採用することができる。例えば倉敷紡績(株)が開発した解析ソフト「Kuraves−Actis」は上記あおり補正機能や隣り合う画像をつなぎ合わせる機能が備わっているので、このソフトを利用することができる。
【0049】
また、ステップS305においては、第1番目に撮影された可視画像データ及び赤外線画像データの両方、可視画像データ又は赤外線画像データのいずれかに縮尺補正を行う。このような縮尺補正を行うことで、可視画像データ及び赤外線画像データの画像としてのサイズを同じに揃えるようにする。なお、以下、縮尺補正がなされて同一サイズとなったデータについては「規格化」されたデータと称するものとする。
【0050】
次の、ステップS306においては、前記位置関係に基づいて、補正処理された規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データの重畳を行い、重畳データとする。図7は、規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データの重畳データ化を模式的に示している。
【0051】
なお、規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データが重畳データ化されるとは、2つの画像データに写り込んでいる対象物上の全ての点が、双方の画像データでちょうど重ね合わせることができるようにすることである。
【0052】
以上のように処理された重畳データは、ステップS307において、第N番目、すなわち第1番目の重畳データとして保存される。
【0053】
続く、ステップS308では、カウンタNが1インクリメントされる。ステップS309においては、可視画像データ及び赤外線画像データの第N番目の画像データが取得される。
【0054】
ステップS310では、第1番目に撮影された可視画像データ及び赤外線画像データそれぞれのデータに対して、前記画像変形補正処理を施す。
【0055】
続く、ステップS311においては、可視画像データ及び赤外線画像データの両方、可視画像データ又は赤外線画像データのいずれかに縮尺補正を行う。このような縮尺補正によって、可視画像データ及び赤外線画像データのいずれのデータも、前記のサイズと同じものとし、規格化する。なお、前記画像変形補正処理、画像縮尺補正の補正値は、移動に伴うコンクリート内壁面との撮影距離がほぼ同じ距離を保っている場合は、前の番号の画像データの補正値を利用すればよい。
【0056】
ステップS312においては、前記位置関係に基づいて、補正処理された規格化可視画像データ及び規格化赤外線画像データの重畳を行い、重畳データとする。
【0057】
次のステップS313においては、以上のような処理データを、第N番目の重畳データとして保存する。
【0058】
次のステップS314においては、第(N−1)番目までの重畳(・連結)データと第N番目の重畳データとを結合して連結する。図8は、第3番目の重畳データを、第2番目までのデータと結合したものを模式的に示している。なお、2つの画像データを結合して連結された1つの画像データとすることは、当該2つの画像データ上に写り込んでいる画像同士が、隙間なくつなぎ合わされるようにした新たな画像データを作成することに相当する。
【0059】
ここで、コンクリート内壁面から一定距離を保ち、かつコンクリート内壁面の長さ方向に一定距離D毎に移動式架台を移動させつつコンクリート内壁面を撮影する場合についての複数の画像データの連結処理について記す。
【0060】
基準点は最初の画像位置だけに設けられていて、例えば二つの基準点を見た場合その間の距離は既知L (mm)である。この基準点を撮影したときの補正後画像(画面)上の寸法はl(pixel)となる。そして、このときの画像(画面)の幅寸法をw(pixel)である。そうすると、実際に撮影された幅W(mm)はW=L(mm)×w(pixel)/l(pixel)となる。移動量Dは、D<Wとなるようにしているので撮影範囲はラップしている。このDは一定であるから、画像上のラップ長rは、r=w×(W−D)/Wとなる。このラップ長の算出は、情報処理装置が行い、LとDが情報処理装置に入力され、情報処理装置がwとlを取得すると上記の演算処理をしてラップ長rを算出する。そして、情報処理装置の、隣り合う最初の画像と2番目の画像データを結合して連結する処理としては、r長さだけ重ねながら結合・連結するか、どちらかの画像の結合側をr長さだけカットして結合・連結するかいずれかで行う。以降、情報処理装置は、2番目と3番目の画像、…、N−1番目の画像とN番目の画像まで順次rのラップ長を確保しながら連結処理を行う。
【0061】
ステップS315では、第N番目までの重畳・連結データとして保存を行い、ステップS316では、全ての画像データの処理が終了したかが判定される。この判定結果がNOであるときにはステップS308に戻り、YESであるときにはステップS317に進み、画像データ重畳・連結処理を終了する。
【0062】
ところで、本発明は、コンクリート構造物の表面のひび割れやジャンカ、内部の空洞や浮き・剥離を抽出できるものである。そこで、これについて具体的に記す。
【0063】
可視画像データからは、コンクリート表面のひび割れやジャンカが抽出できる。これの抽出については、例えば倉敷紡績(株)が開発した解析ソフト「Kuraves−Actis」を利用すると自動的にひび割れの長さや幅が色分け等で抽出できる。赤外線画像データからは内部の空洞や浮き・剥離が画像の濃淡で抽出できる。温度差が小さいと、そのままの画像では濃淡が明瞭にならない場合もあるが、既存の画像解析処理ソフトを用いて濃淡を強調もしくは色分けすることが可能である。
【0064】
なお、これらひび割れ等の抽出処理は、画像データを重畳する前に行っておく。
【0065】
図9において、コンクリート表面の可視画像データを用いてひび割れやジャンカを抽出した画像、赤外線画像データを用いてコンクリート内部の空洞や浮きを抽出した画像、それらを重畳した画像、の模式図を示す。
【0066】
なお上記の本発明においては、複数の連結された重畳データを取得するのに、一つの可視画像データ及び一つの赤外線画像データ毎に重畳して1つの重畳データを得てから、これを連結するようにしているが、複数の可視画像データ及び複数の赤外線画像データをそ
れぞれ連結処理してから、それらを重畳して複数の連結された重畳データとすることも可能である。
【0067】
以上のように本発明に係る画像データ処理システムは、可視画像データと赤外線画像データとを重畳データとするので、コンクリート構造物の診断効率が向上するものであり、さらには上記重畳データ同士を結合して連結する処理が実行されるので、長い距離にわたるコンクリート壁面などの構造物診断を安価にしかも短時間で行うことができるという、コンクリート構造物の損傷診断支援装置でもある。
【符号の説明】
【0068】
10・・・移動式架台
11・・・車輪
20・・・移動量検出部
30・・・架台駆動制御部
50・・・情報処理装置(パーソナルコンピューター)
60・・・可視画像撮影用カメラ
70・・・赤外線カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9