特許第5795859号(P5795859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795859
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】非水系インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20150928BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20150928BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20150928BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C09D11/36
   C09D11/38
   B41M5/00 E
   B41J2/01 501
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-28056(P2011-28056)
(22)【出願日】2011年2月14日
(65)【公開番号】特開2012-107174(P2012-107174A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2014年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2010-241112(P2010-241112)
(32)【優先日】2010年10月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】細谷 鉄男
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−255528(JP,A)
【文献】 特開2002−256168(JP,A)
【文献】 特開2009−123674(JP,A)
【文献】 特開2007−177160(JP,A)
【文献】 特開平05−345872(JP,A)
【文献】 特開2011−140598(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/034019(WO,A1)
【文献】 特開2002−302629(JP,A)
【文献】 特開2009−102480(JP,A)
【文献】 特開2006−045450(JP,A)
【文献】 特開2011−142052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料と有機溶剤とを含む非水系インクであって、前記有機溶剤中にC=O結合を有する五員複素環式化合物を50質量%以上含み、
該五員複素環式化合物がカーボネート化合物であり、
前記顔料が、酸化チタン、ベンガラ、コバルトブルー、群青、紺青、カーボンブラック、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、タルクまたはシリカのうち少なくとも1種の無機顔料、及び/または、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、縮合多環顔料または銅フタロシアニン顔料のうち少なくとも1種の有機顔料であり、
インク中のポリマー成分の含有量が前記顔料の20質量%以下であることを特徴とする非水系インク。
【請求項2】
前記カーボネート化合物がエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネートおよびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の非水系インク。
【請求項3】
インク中のポリマー成分の含有量が前記顔料の5質量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の非水系インク。
【請求項4】
前記五員複素環式化合物の含有量が、インク全量に対して60〜97質量%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の非水系インク。
【請求項5】
前記顔料が酸性処理されたカーボンブラックであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の非水系インク。
【請求項6】
インクジェット用インクであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の非水系インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録システムの使用に適した非水系インクであって、詳細には裏抜け抑制効果に優れ、印刷濃度の高い非水系インクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なヘッドノズルからインク粒子として噴射し、上記ノズルに対向して置かれた印刷紙に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、非水溶性溶剤に顔料を微分散させたいわゆる非水系インクが種々提案されている。
【0003】
例えば、出願人は特許文献1において、顔料と、有機溶剤としてエステル溶剤、高級アルコール溶剤、炭化水素溶剤などを含み、さらに溶解型のポリマー分散剤を含む非水系インクを提案している。このインクは機上安定性に優れ、インクジェット適性を有するとともに、PPC複写機やレーザープリンタで印刷された印刷面と重ね合わせた場合でも貼り付かない印字面を得ることができるという利点を有するものであり、トナー適性に優れたものである。また、特許文献2には、顔料と、有機溶剤としてエステル溶剤、炭化水素溶剤を含み、さらに分散型の高分子分散剤(NAD)を含む非水系インクが開示されている。
【0004】
従来、顔料分散型の非水系インクは、特許文献1や2に記載されているように樹脂やポリマー型分散剤(溶解型やNAD)を用いることにより、あるいは顔料表面に直接的にポリマーによる修飾(グラフト化やマイクロカプセル化)を行うことにより、顔料の分散安定性を確保してきた。これらの方法は、いずれの手法においても、ポリマーによる立体障害によって物理的に顔料の凝集を抑制させるものであり、換言すればインク中にポリマー成分を含有させることによってインクの顔料分散安定性を向上させようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−126564号公報
【特許文献2】特開2007−197500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、インク中にポリマー成分を含有させると、顔料とポリマー成分の親和性が高いために、あるいは顔料とポリマー成分が結合しているために、インクが印刷用紙に転移した後、顔料がポリマー成分に引きずられて用紙内部へ浸透しやすい。このため、印刷用紙表面の印刷濃度が低下したり裏抜けが生じたりする。すなわち、ポリマーによる顔料分散においては、顔料分散性を向上しようとすれば、印刷濃度の低下や裏抜けの発生を助長することになり、印刷濃度の向上や裏抜けの抑制を図ろうとすれば、顔料分散性が悪くなるという、一方を達成しようとすると、他方をある程度犠牲にしなければならないという関係がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、顔料分散安定性に優れるとともに、裏抜けを抑制することができ、高い印刷濃度を実現することが可能な非水系インクを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非水系インクは、少なくとも顔料と有機溶剤とを含む非水系インクであって、前記有機溶剤中にC=O結合を有する五員複素環式化合物を50質量%以上含み、インク中のポリマー成分の含有量が前記顔料の20質量%以下であることを特徴とするものである。
前記五員複素環式化合物は、カーボネート化合物、ラクトン化合物、イミダゾリジノン化合物、ピロリドン化合物から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0009】
前記カーボネート化合物はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネートおよびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
前記ラクトン化合物はγ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ペンタノ−4−ラクトンおよびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
前記イミダゾリジノン化合物は2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジブチル−2−イミダゾリジノンおよびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
前記ピロリドン化合物は2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドン(NMP)、1−エチル−2−ピロリドンおよびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0011】
インク中のポリマー成分の含有量は前記顔料の5質量%以下であることが好ましい。
より好ましくは、実質的にポリマー成分を含まないことが望ましい。
【0012】
前記環状化合物の含有量は、インク全量に対して60〜97質量%であることが好ましい。
前記顔料は酸性処理されたカーボンブラックであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の非水系インクは、有機溶剤中にC=O結合を有する五員複素環式化合物を50質量%以上含むので、顔料分散性の高いポリマー成分の含有量が顔料の20質量%以下であっても、顔料分散安定性と裏抜け抑制の両立を図ることが可能であり、裏抜け抑制向上によって印刷濃度の高い非水系インクとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の非水系インクは、少なくとも顔料と有機溶剤とを含む非水系インク(以下、単にインクともいう)であって、有機溶剤中にC=O結合を有する五員複素環式化合物(以下、単に五員複素環式化合物ともいう)を50質量%以上含み、インク中のポリマー成分の含有量が顔料の20質量%以下であることを特徴とする。
【0015】
五員複素環式化合物は液体であっても、固体であってもよく、固体の場合には有機溶剤に溶解するものであればよい。溶解させる有機溶剤としては後述する有機溶剤を使用することができる。五員複素環式化合物としては、カーボネート化合物、ラクトン化合物、イミダゾリジノン化合物、ピロリドン化合物を好ましく挙げることができる。
【0016】
カーボネート化合物としてはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネートおよびこれらの誘導体を好ましく挙げることができる。
ラクトン化合物としてはγ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ペンタノ−4−ラクトンおよびこれらの誘導体を好ましく挙げることができる。
【0017】
イミダゾリジノン化合物としては2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジブチル−2−イミダゾリジノンおよびこれらの誘導体を好ましく挙げることができる。
ピロリドン化合物としては2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドンおよびこれらの誘導体を好ましく挙げることができる。
【0018】
上記誘導体としては、水素原子がフッ素原子または炭素数が1〜4のアルキル基で置換された化合物を例示することができる。
【0019】
五員複素環式化合物は単独であるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、2種以上を適宜組み合わせて用いる場合には、組み合わせて用いた五員複素環式化合物の全量が、全有機溶剤の50質量%以上であることを意味する。より好ましくは五員複素環式化合物の含有量は、インク全量に対して60〜97質量%であることが好ましい。
【0020】
通常のインクは顔料の分散性を図るために、分散剤や樹脂等のポリマー成分をインク全量に対して、0.5〜30質量%程度(顔料に対しては30〜200質量%程度)含有させる必要がある。しかし、本発明のインクは五員複素環式化合物によって顔料分散性を図ることができるため、ポリマー成分の含有量が顔料の20質量%以下であっても十分に顔料分散安定性を確保することが可能である。一方で、五員複素環式化合物はポリマーよりも顔料に対する親和性は弱いため、ポリマーのようにインクが印刷用紙に転移した後、顔料を引きずって用紙内部へ浸透するということがないため裏抜けが殆ど生じず、結果として高濃度の印刷を行うことができる。
【0021】
インク中のポリマー成分の含有量は顔料の20質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは実質的に含まないことが望ましい。ここで、実質的に含まないとはポリマー成分を全く含まない場合の他、例えばポリマー成分を不可避的不純物として含有する場合を意味する。
【0022】
上記ポリマー成分は、高分子分散剤や樹脂などのように意図的に含有させる場合の他、顔料にもともと含まれているポリマー成分も含まれる。ポリマー成分として高分子分散剤を含む場合には、例えば市販品として、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ(ソルスパース20000、27000、41000、41090、43000、44000)、BASFジャパン社製のジョンクリルシリーズ(ジョンクリル57、60、62、63、71、501)、第一工業製薬株式会社製のポリビニルピロリドンK−30、K−90等が挙げられる。
【0023】
ポリマー成分として樹脂を含む場合には、荒川化学工業株式会社製のマルキードNO.31、NO.32、NO.33、マルキードNO.32〜30WS等のマレイン酸樹脂、荒川化学工業株式会社製のタマノリ751、タマノルPA等のフェノール樹脂、BASFジャパン社製のジョンクリル682(商品名)等のスチレンアクリル系樹脂、立化成工業株式会社製のハイラック111、110H等のケトン樹脂、新日鐵化学株式会社製のエスクロンG90、V120等のクマロン樹脂、チッソ株式会社製のビニレックEタイプ、Kタイプ等のポリビニルホルマール樹脂、宇部興産株式会社製のナイロン6等のε−カプロラクタム共重合体、積水化学工業株式会社のエスレックBL−1、BL−2等のポリビニルブチラール樹脂、旭化成工業株式会社のスタイラック−AS767等のポリスチレン、ポリアクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸プロピル等のポリメタクリル酸エステル、塩素化ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、無水マレイン酸ポリマー等の付加重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン、DFK樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等の縮重合樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明のインクに含まれる有機溶剤はその全部が五員複素環式化合物であってもよいが、その他の有機溶剤を含んでいてもよい。五員複素環式化合物以外の有機溶剤としては、水溶性有機溶剤を挙げることができ、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、などのグリコール類、グリセリン、アセチン類、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコール誘導体、トリエタノールアミン、1−メチル−2−ピロリドン、β−チオグリコール、スルホランなどを用いることができる。これらの水溶性有機溶剤は単独で、または2種類以上組み合わせて使用することができる。
水溶性有機溶剤の含有量は顔料分散安定性と裏抜け抑制の観点から、インク全量中に40質量%以下であることが好ましい。
【0025】
本発明のインクには従来公知の無機顔料および有機顔料を適宜使用してもよい。例えば、無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、コバルトブルー、群青、紺青、カーボンブラック、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、タルク、シリカ等が挙げられる。有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、縮合多環顔料、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて使用することも可能である。顔料の添加量は、インク全量に対して0.5〜20質量%が好ましい。
【0026】
顔料は好ましくは酸性のものが好ましい。換言すれば顔料はその表面にカルボン酸基、スルフォン酸基、水酸基のような極性官能基を多く持つものが好ましい。このような顔料はより分散安定性を確保しやすい。例えば、カーボンブラックにおいては酸性カーボンブラックあるいは中性カーボンブラックを酸性処理したものであって、顔料洗浄水のpHが4.0以下であるものが好ましい。顔料洗浄水のpHはJIS規格のK5101−17−1に従って測定されるものである。酸性の顔料として具体的には、カーボンブラックMA100、MA11、MA8、MA7(三菱化学)、ラーベン1040、ラーベン1255(コロンビヤン)、リーガル400(キャボット)、シアニンブルーKRG、シアニンブルー4044(山陽色素)、ブリリアントカーミン6B−321、スーパーレッドBN(DIC)、エローAP22(大日精化)、トナーイエローHG(クラリアント)、ファストイエロー4190、BY2000GT(DIC)等を好ましく挙げることができる。
【0027】
上記各成分に加えて、本発明のインクには慣用の添加剤が含まれていてよい。添加剤としては、界面活性剤、例えばアニオン性、カチオン性、両性、もしくはノニオン性の界面活性剤、酸化防止剤、例えばジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、及びノルジヒドログアヤレチック酸等、が挙げられる。
【0028】
本発明のインクは、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。
以下に本発明の非水系インクの実施例を示す。
【実施例】
【0029】
(カーボンブラック試作1の準備)
カーボンブラック(MA600、粒子径20nm、比表面積140m2/g(JISK6217)、pH=7、三菱化学(株)製)10gと、表面処理剤としてKPS(K228で示される過硫酸カリウム、和光純薬(株)製)1gと、顔料分散剤としてデモールNL(β‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、花王(株)製)2gと、溶媒として水100gを、攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を取り付けたフラスコ中に入れた。
【0030】
次いで、上記フラスコにジルコニアビーズ(2.0mmφ、450g/反応混合物100g)を入れた後、攪拌しながら窒素ガスを吹き込み、フラスコ内を置換した。105℃に設定したオイルバスにフラスコをセットし、窒素ガス雰囲気下、100rpmで攪拌しながら6時間反応に付した。得られた反応混合物から、ろ過によりビーズを除去した後、残った反応混合物に等質量のブチセノール(テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、協和発酵ケミカル製)を加えて攪拌した後、フラスコの内容物を遠心分離にかけ、固形物と液状物を分離した。
【0031】
分離した固形物を水中に分散し、70℃で12時間攪拌して、未反応表面処理剤を水中に溶かし出した後、フィルターを用いてろ過してカーボンブラックを単離した。得られたカーボンブラックを100℃で12時間乾燥した。得られたカーボンブラックを、FT−IRを用いて分析したところ、COOH基とSO3K基の存在が確認された。また、JIS規格のK5101−17−1に従い顔料洗浄水のPHを測定したところ、PHは2.3であった。
【0032】
(インクの調製)
下記表1〜3に示す配合(表1〜3に示す数値は質量部である)で原材料をプレミックスした後、滞留時間約12分間で分散させて実施例および比較例のインクを調製した。なお、実施例において粘度が最も高くなると考えられる実施例5は、23℃における30Paでの粘度が10.8mPa・sであり、実施例のインクはインクジェット用インクとして好適に使用することが可能である。
【0033】
(評価)
(貯蔵安定性)
実施例および比較例のインクをそれぞれガラス瓶に入れて密閉し室温で1ヶ月放置したのち、目視で観察して以下の基準で評価した。
○:顔料の凝集・沈降が観察されない
×:顔料の凝集・沈降が観察される
【0034】
(裏抜け)
実施例および比較例のインクについて、上記の貯蔵安定性試験を終了したインクを理想用紙薄口にバーコーターで転写し、用紙の裏側を目視で観察して以下の基準で評価した。なお、上記の貯蔵安定性において×であったインクについては実施しなかった。
◎:裏抜けが殆ど認められない
○:裏抜けが少ない
△:裏抜けが若干認められるが許容できる範囲である
×:裏抜けが非常に多い
各インクの処方と評価の結果を表1〜3に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
表1は五員複素環式化合物としてカーボネート化合物を用いた場合、表2は五員複素環式化合物としてラクトン化合物、ピロリドン化合物、イミダゾリン化合物並びにこれらとカーボネート化合物とを組み合わせて用いた場合、表3は比較例である。表1および表2に示すように、本発明のインクは従来のインクに比べてポリマー含有量が圧倒的に少ないにもかかわらず、顔料の凝集・沈降が観察されず、貯蔵安定性に優れていた。なお、カーボネート化合物は、ラクトン化合物、ピロリドン化合物、イミダゾリン化合物に比べると裏抜けの抑制効果がより高かった。
【0039】
比較例1、2および4は顔料を分散剤によって分散させる従来の顔料分散型の非水系インクであるが、この場合には顔料分散性はよかったものの、裏抜けが顕著であり印刷濃度も低いものであった。また、顔料分散剤を含まないインクの比較例3は顔料の沈降が観察され、貯蔵安定が悪かった。一方で、本発明のインクでは、顔料に対するポリマー含有量が20質量%と一番多い実施例8でも、裏抜けは許容できる範囲であり、よって印刷濃度も高いものとすることができた。比較例5〜8の溶剤は非環状化合物であるが、この場合には顔料の沈降が観察され、貯蔵安定が悪かった。
【0040】
以上のように、本発明のインクによれば、ポリマーによる顔料分散において両立することができなかった顔料分散安定性と、裏抜け抑制(結果として高い印刷濃度の実現)という2つの相反する効果を同時に享受することが可能である。