【実施例】
【0009】
<1>全体の構成。
本発明の排水筒は、無孔底半筒1と有孔半筒2と、さらに場合によっては無孔蓋半筒4とより構成するものである。
【0010】
<2>無孔底半筒。
無孔底半筒1は、円筒状の無孔の鋼管を、中心軸に平行な線で切断した「樋」状の半筒である。
この無孔底半筒1が、排水筒の下半分を構成するものであり、無孔であるから下半分から水が漏出してしまうことがない。
【0011】
<3>有孔半筒。
有孔半筒2は、有孔の板を断面半円状態に形成した状態の半筒である。
有孔の板とは、例えばエキスパンドメタル、金網、孔を打ち抜いた鋼板、多数の孔を開口した合成樹脂板などである。
これらの孔が、地下水を排水筒に導入する水抜孔22として機能する。
有孔半筒2はそのような有孔板を、断面がほぼ半円である「樋」状に形成したものであり、有孔半筒2の両側には、中心軸と平行方向に形成した端縁21が形成できる。
なお、断面は半円形に限らず、中心を高くした二つ折の山形に形成しても使用することができる。
【0012】
<4>有孔半筒の半径。
有孔半筒2の半径と、前記の無孔底半筒1との間には一定の関係がある。
すなわち、無孔底半筒1の半径は、有孔半筒2の半径よりも大きく形成しておく。
すると、上向きの無孔底半筒1に、下向きの有孔半筒2を被せた場合に、有孔半筒2の中心軸に平行な有孔半筒2の端縁が、無孔底半筒1の内部に落ち込むことになる。
【0013】
<5>側面溝の形成。
有孔半筒2の中心軸と平行の端縁21が、無孔底半筒1の内部に落ち込むことによって、有孔半筒2の端縁21と、無孔底半筒1の内面との間に多少の隙間ができる。 この隙間を側面溝3として構成する。
この側面溝3は、有孔半筒2の端縁21と無孔底半筒1の接触する全延長に構成することができるので、そこからの水の導入が容易となる。
有孔半筒2を無孔底半筒1の内部に落とし込んだのちに、数か所の溶接部12で溶接して両者を一体化する。
【0014】
<6>無孔蓋半筒。
無孔底半筒1の全長にわたって有孔半筒2を落とし込み、その中心軸と平行方向の端縁21によって全長のわたる側面溝3を構成することができる。
しかし強度の確保が必要な場合には、無孔蓋半筒4を使用する。
この無孔蓋半筒4は、円筒状の無孔の鋼管を、中心軸に平行な線で切断した状態の半筒であり、無孔底半筒1の長さよりも短いものを使用する。
【0015】
<7>無孔蓋半筒の半径。
この無孔蓋半筒4の凹部を下向きにして、凹部を上向きにした無孔底半筒1に被せた場合には、無孔蓋半筒4の中心軸に平行な端縁41と、無孔底半筒1の中心軸に平行な端縁11の位置は一致して、完全な円筒を形成することができる。
この無孔蓋半筒4を、無孔底半筒1の全長にわたって被せてしまっては、単なる円筒を形成するだけであるから、あくまで補強のために一部に被せるだけであり、基本は広い範囲にわたって有孔半筒2を位置させることである。
【0016】
<8>排水筒の設置。
次に本発明の排水筒の実際の使用状態について説明する。
事前に斜面に対して削孔を行い、その孔内へ本願発明の排水筒を挿入し、その尾端だけを斜面の外部に露出させる。
本願発明の排水筒は動力を利用して水抜きを行うものではないから、設置に際しては排水筒が孔外に向けて徐々に低くなる状態で設置して地下水の自然流下を行わせる。
排水筒の挿入に際して、削孔後に壁面の土砂の多少の崩落があっても、本願発明の排水筒は水抜孔22が過剰に開口しておらず、その分を側面溝3で補充する構造であるから、叩き込むような乱雑な作業を行っても有孔半筒2が破損するようなことがなく、水抜孔22の存在が弱点にならない。
排水筒の挿入に際しては、有孔半筒2が削孔の上側に、無孔底半筒1が削孔の下側に位置する姿勢で行う。
【0017】
<9>地下水の導入。
地下水は2種類の開口部から導入する。
一つは、排水筒の上半分に位置する有孔半筒2に多数を開口した水抜孔22からである。
他の一つは、有孔半筒2の中心軸と平行な端縁21と、無孔底半筒1の内面との間に形成した側面溝3である。
特に側面溝3は、無孔底半筒1の中心軸と平行な端縁21のほぼ全長に沿って形成することができるから、きわめて効率よく大量の地下水を導入することができる。
【0018】
<10>排水。
排水筒に導入した水は、排水筒の下半分が無孔底半筒1であることから、途中で地下層へ漏出してしまうことがなく、全部の量を効率よく排水筒の尾端部から外部へ排出することができる。
【0019】
<11>他の用途。
以上は本願発明の排水筒を地下水の排水に使用した場合の機能の説明であった。
同様の機能は、本発明の排水筒を地表面に設置して地表面の水を排水する場合、あるいは構造物の屋根に樋として設置してその水を排水する場合にも同様の機能を果たすことができる。
その場合に、地表面の塵埃や、屋根に蓄積した落ち葉が排水筒の無孔底半筒1の内部に入りにくいから、排水機能を低下させ難いということができる。