(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軟弱土層をシールド機で掘削する場合には、その軟弱な地山からローラカッタに作用する偶力が小さいこと等に起因してローラカッタの回転不良が発生することが考えられる。この場合、ローラカッタに偏磨耗が発生したり、それに伴うシールド機の掘削能力の低下が発生したりするという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ローラカッタの回転不良を抑制することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るローラカッタは、回転するカッタ本体の外周部に刃が設けられてなり、シールド型地山掘削機のカッタヘッドに設けられるローラカッタであって、前記カッタ本体の外周部には、前記カッタ本体から、刃先よりも前記カッタ本体の内径側の位置まで突出した複数の凸部が、前記カッタ本体の回転方向に間隔を空けて設けられて
、前記カッタヘッドが回転した際に地山から偶力を受けることを特徴とする。
【0008】
前記ローラカッタは、前記カッタ本体を前記カッタヘッドに支持するホルダと、前記ホルダに設けられ、前記カッタ本体の外周部に付着した付着物を掻き落とすスクレーパと、を備えてもよい。
【0009】
また、本発明に係るシールド型地山掘削機は、上記ローラカッタをカッタヘッドに備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ローラカッタに偶力を作用させることにより、ローラカッタの回転不良を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係るローラカッタ10を備えるシールド掘削機100を示す側断面図である。この図に示すように、シールド掘削機100は、シールドトンネルの施工に用いられる泥土圧式のシールド掘削機である。このシールド掘削機100は、カッタヘッド110を掘進方向の先頭部に備える円筒状の前胴部120と、中折れジャッキ132を介して前胴部120の後部に連結された円筒状の後胴部130とを備えている。中折れジャッキ132は、伸縮することにより、前胴部120を後胴部130に対して屈曲させる。
【0013】
後胴部130には、エレクタ134とシールドジャッキ136とが設けられている。エレクタ134は、セグメント1をシールドジャッキ136の後方に設置する。また、シールドジャッキ136は、主推進ジャッキであり、設置済みのセグメント1に反力をとってシールド掘削機100に推力を与える。
【0014】
前胴部120には、カッタヘッド110が設けられたチャンバ122とシールド機内とを仕切る隔壁124が設けられている。この隔壁124には、注入口125が形成されており、この注入口125からチャンバ122に加泥材が注入される。
【0015】
図2は、シールド掘削機100の前面を示す正面図である。この図に示すように、カッタヘッド110は、120度間隔で配された3本のカッタスポーク112と、カッタスポーク112等に配された複数のカッタビット114と、カッタスポーク112間に配された複数のローラカッタ10、111とを備えている。
【0016】
各カッタスポーク112には、その長手方向に沿って複数のカッタビット114が配されている。カッタスポーク112間には、扇形状の面板部116A、116B、116Cが設けられており、この面板部116A〜Cの周縁部に複数のカッタビット114が配されている。また、面板部116Aには、夫々1個のローラカッタ10、111が配され、面板部116Bには、1個のローラカッタ10が配され、面板部116Cには、1個のローラカッタ111が配されている。ローラカッタ10は、外周部に刃が断続的に設けられたカッタであり、ローラカッタ111は、外周部に刃が連続的に設けられたディスクカッタである。
【0017】
ローラカッタ10は、カッタヘッド110の径方向に対して平行な回転軸の周りに回転可能に、周方向の一部が面板部116A、116Bから掘進方向に突出するように配されている。また、ローラカッタ111は、カッタヘッド110の径方向に対して掘進方向に傾斜した回転軸の周りに回転可能に、周方向の一部が面板部116A、116Cから掘進方向に突出するように配されている。
【0018】
即ち、複数のローラカッタ10、111は、その一部が地山に接触するように配されており、かつ、回転軸がカッタヘッド110の接線方向に対して直交している。このため、カッタヘッド110が回転すると、ローラカッタ10、111が地山から受ける偶力により回転し、地山を掘削する。また、ローラカッタ10は、鉄筋や杭や矢板等の障害物が存する場合には該障害物を切断・圧壊する。
【0019】
図3は、ローラカッタ10を拡大して示す立面図であり、
図4は、
図3の4−4断面図である。これらの図に示すように、ローラカッタ10は、カッタヘッド110に固定される固定部20と、固定部20の周りに回転可能に配された回転部30とを備えている。固定部20は、軸部22と、この軸部22に取付けられた軸受24と、軸部22と軸受24とが固定される一対の外装部26とを備えている。
【0020】
軸受24の中心には孔25が空けられており、この孔25に軸部22が挿入されて嵌合している。また、軸受24にはフローティングシール24Aが設けられており、軸受24内への土砂や液体の浸入が防止されている。一対の外装部26は、軸部22の軸方向に離れて配されており、軸部22の軸方向端部が固定される外形が直方体状の軸固定部26Aと、軸固定部26Aから軸部22の周方向へ広がる円盤状の軸受固定部26Bとを備えている。
【0021】
回転部30は、軸受24を介して軸部22に回転可能に支持されたホイール部32と、ホイール部32の外周面に、その周方向に沿って所定間隔おきに配された複数のビット34とを備えている。ホイール部32は、その全体形状が円環状の回転体であり、軸心の周りに回転する。また、ホイール部32の内周部と外装部26の軸受固定部26Bとの間には、ラビリンスシール27が設けられており、ホイール部32と外装部26との隙間から軸受24へ土砂が侵入することが防止されている。
【0022】
ホイール部32の外周面の幅方向中央部には、その両側と比して外周側へ突出した突出部32Bが形成されており、その突出部32Bに形成された孔32Aにビット34が圧入されている。このビット34は、超硬合金や焼結タングステンカーバイド等の強靭な素材で形成されている。
【0023】
図4に示すように、ビット34の刃部をローラカッタ10の周方向に見た場合には、その先端形状は二等辺三角形状である。一方で、
図3に示すように、ビット34の刃部をローラカッタ10の回転軸の方向に見た場合には、その先端形状は、矩形状である。
【0024】
ホイール部32の外周面32Cには、複数のフィン36が、周方向に所定間隔(例えば、図示するように45度間隔)で配されている。このフィン36は、突出部32Bを挟むように外周面32Cの幅方向両側に設けられたリブ(板状の突出体)であり、その表面には、耐摩耗性の金属層(例えば、タングステンの合金)が、硬化肉盛溶接又は硬化肉盛溶射により形成されている。
【0025】
フィン36は、外周面32Cからホイール部32の外径方向に突出している。また、フィン36の長手方向とホイール部32の接線方向とは直交しており、フィン36の長手方向一端部は、突出部32Bに結合されている。また、フィン36の長手方向他端部は、端に行くにつれて高さが低くなるように傾斜している。また、フィン36は、外周面32Cから突出部32Bの先端よりもホイール部32の内径側の位置まで突出している。即ち、フィン36は、ビット34よりもホイール部32の外径側に突出しないように設けられている。
【0026】
図5は比較例に係るローラカッタの作用を示す図であり、
図6は、本実施形態に係るローラカッタ10の作用を示す図である。
図5に示すように、比較例に係るローラカッタは、フィン36が設けられていない以外は、本実施形態に係るローラカッタ10と同様の構成である。
【0027】
ここで、カッタヘッド110が図中矢印A方向に回転した際に、地山からローラカッタに偶力が作用することで、ローラカッタが回転して地山の掘削や障害物の切断・圧壊を行うが、掘削対象が軟弱土層の場合には、地山からローラカッタに作用する偶力が小さいことから、ローラカッタに回転不良が発生する場合がある。この場合、掘削能力が低下すると共に、ローラカッタの特定位置が地山に擦られることでローラカッタに偏磨耗が生じ、ローラカッタの真円度が低下する。これにより、より一層回転し難くなって、ローラカッタの掘削能力や障害物の切断・圧壊能力がさらに低下する。
【0028】
これに対して、本実施形態に係るローラカッタ10では、ホイール部32の外周部に、外径側に突出する抵抗体たる複数のフィン36が、周方向に間隔を空けて配されており、カッタヘッド110の回転に対して抵抗となる。このため、カッタヘッド110が図中矢印A方向に回転した際に、地山からビット34のみならずフィン36にも偶力Pが作用することから、上記比較例と比して、ローラカッタ10が図中矢印B方向へ回転し易くなる。従って、ローラカッタ10の回転不良を抑制でき、ローラカッタ10の掘削能力や障害物の切断・圧壊能力を確保できる。
【0029】
また、本実施形態に係るローラカッタ10では、フィン36が、ビット34よりも内径側に配されていることから、フィン36によりローラカッタ10の掘削が阻害されることを防止できる。
【0030】
図7は、他の実施形態に係るローラカッタ200を示す立断面図である。この図に示すように、ローラカッタ200は、固定部20が取付けられるホルダ202と、ホルダ202に固定された金属製の板材であるスクレーパ204とを備えている。ホルダ202は、コ字状に構成されており、基板202Aと、基板202に立設された一対の側板202Bとを備えている。
【0031】
側板202Bには、外装部26の軸固定部26Aが固定されており、基板202A上には、スクレーパ204が固定されている。ここで、スクレーパ204は、基板202Aと一対の側板202Bと回転部30とにより囲まれた空間に配されている。そして、スクレーパ204の上部は、ビット34及びフィン36を形取った形状をしており、最下位を通過するビット34及びフィン36とスクレーパ204の上部との間に微小な隙間ができるように構成されている。
【0032】
以上のような構成のローラカッタ200では、回転部30の外周面に土砂が付着した場合、回転部30の下方に、ビット34及びフィン36に対して微小な隙間ができるように配されたスクレーパ204が、ビット34及びフィン36から土砂を掻き落とす。即ち、ビット34及びフィン36は、カッタヘッド110の裏側を通過している際に、付着している土砂をスクレーパ204で除去されてから、カッタヘッド110の前面側の掘削領域を通過する。
【0033】
従って、ビット34の掘削能力及び切断・圧壊能力を有効に発揮させることができる。また、フィン36は、土砂で覆われている状態では抵抗体として機能し得ないが、フィン36が土砂で覆われている状態で掘削領域を通過することを防止できるため、フィン36の抵抗作用を有効に発揮させることができ、以って、ローラカッタ200の回転不良を抑制することができる。
【0034】
図8は、他の実施形態に係るローラカッタ300を示す立面図であり、
図9は、
図8の9−9断面図である。これらの図に示すように、ローラカッタ300では、上述のフィン36に替えて、半球状の凸部336が、ホイール部32の外周面に設けられている。この凸部336は、突出部32Bを挟むように外周面32Cの幅方向両側に設けられており、その表面には、耐摩耗性の金属層(例えば、タングステンの合金)が、硬化肉盛溶接又は硬化肉盛溶射により形成されている。
【0035】
凸部336は、外周面32Cからホイール部32の外径方向に突出している。また、凸部336は、突出部32Bの先端よりもホイール部32の内径側に、即ち、ビット34よりもホイール部32の外径側に突出しないように配されている。
【0036】
以上のような構成のローラカッタ300では、凸部336がカッタヘッド110の回転に対して抵抗となり、地山から凸部336に偶力が作用する。これにより、凸部336を設けない場合と比して、ローラカッタ300が回転し易くなる。従って、ローラカッタ300の回転不良を抑制でき、ローラカッタ300の掘削能力や障害物の切断・圧壊能力を確保できる。
【0037】
図10は、他の実施形態に係るローラカッタ400を示す立面図であり、
図11は、
図10の11−11断面図である。これらの図に示すように、ローラカッタ400では、上述の半球状の凸部336に替えて、円板状の凸部436が、ホイール部32の外周面に設けられている。この凸部436は、突出部32Bを挟むように外周面32Cの幅方向両側に設けられており、その表面には、耐摩耗性の金属層(例えば、タングステンの合金)が、硬化肉盛溶接又は硬化肉盛溶射により形成されている。
【0038】
凸部436は、外周面32Cからホイール部32の外径方向に突出している。また、凸部436は、突出部32Bの先端よりもホイール部32の内径側に、即ち、ビット34よりもホイール部32の外径側に突出しないように配されている。
【0039】
以上のような構成のローラカッタ300では、凸部436がカッタヘッド110の回転に対して抵抗となり、地山から凸部436に偶力が作用する。これにより、凸部436を設けない場合と比して、ローラカッタ400が回転し易くなる。従って、ローラカッタ400の回転不良を抑制でき、ローラカッタ400の掘削能力や障害物の切断・圧壊能力を確保できる。
【0040】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、シールド型地山掘削機として、シールド掘削機を例に挙げて本発明を説明したが、本発明は、推進型のシールド機やシールド型のTBM(トンネルボーリングマシーン)等の他のシールド型地山掘削機にも適用できる。
【0041】
また、上述の実施形態では、外周部に刃が断続的に設けられたローラカッタに適用した例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、外周部に刃が連続的に設けられたディスク状のローラカッタにも適用できる。また、上述の実施形態では、カッタヘッド110に、刃が断続的に設けられたローラカッタ10と刃が連続的に設けられたディスク状のローラカッタ111とを設置したが、カッタヘッド110に設置するカッタの種類は、掘削する地山に合わせて適宜選択し、組み合わせればよく、例えば、全てをローラカッタ10にする等してもよい。また、ローラカッタ10には、ビット34を一列設けたが、ビット34を複数列設けてもよく、また、ローラカッタ10を複数重ねてカッタヘッド110に設置する等してもよい。さらに、ビット34を複数列設ける場合、フィン36の列数を3列以上にする等してもよい。