【実施例1】
【0023】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、熱交換器10は、基体11と、この基体11に支持され排気ガス又は水が流される複数のケース(詳細は後述)とからなる。
基体11に排気ガスを導入するための排気ガス導入口12が形成されている。この排気ガス導入口12に、熱交換器10を取り付けるためのフランジ13が接合されている。
熱交換器10の詳細を次図で説明する。
【0024】
図2に示すように、熱交換器10は、基体11と、この基体11に支持され排気ガスを浄化する円筒状の触媒担体15と、この触媒担体15を囲うと共に保持する触媒ケース16と、この触媒ケース16を囲う第1のケース17と、この第1のケース17を囲うと共に基体11の下面に支持される第2のケース18と、この第2のケース18を囲うと共に基体11の側面に支持される第3のケース19と、この第3のケース19の底面端部に接続され排気ガスを排出する排気ガス排出管22と、第2のケース18の底面中央に向かって貫通され水を導入する水導入管23と、第2のケース18の側面上端に接合され水を排出する水排出管24とからなる。
【0025】
基体11は、触媒ケース16が下面に接合されている第1の部材26と、この第1の部材26に接合される第2の部材27とからなる。基体11は、これらの第1の部材26と第2の部材27とを重ね合わせることで中空状に形成されている。中空状に形成することで、基体11の内部に排気ガスを流すことができる。
【0026】
第2の部材27に接合されている第1のケース17は、触媒ケース16を囲う円筒形状の第1筒体28と、この第1筒体28の下端部に接合され触媒担体15の下端部を被う第1底部29とからなる。プレス成形により成形された鋼製の第1筒体28及び第1底部29を溶接することで、第1のケース17を製造することができる。
【0027】
第2のケース18は、第2の部材27の下面に溶接され第1筒体28を囲う第2筒体31と、この第2筒体31の下端に一体的に形成され第2筒体31の下端を塞ぐ第2底部32とからなる。
【0028】
第3のケース19は、第2の部材27の側面に接合され第2筒体31を囲う第3筒体33と、この第3筒体33の下端に一体的に形成され第3筒体33の下端を塞ぐ第3底部34とからなる。
【0029】
基体11を構成する第1の部材26は、底36と、この底36の周縁から第2の部材27に向かって延びる壁部37とからなる。底36の中央に形成されている開口から、排気ガスを導入する排気ガス導入口12が形成される。排気ガス導入口12は、第1の部材26に一体的に形成されている。
【0030】
第2の部材27は、底38と、この底38の周縁から第1の部材26に向かって立ち上げられる壁部39とからなる。底38の中央に開口が形成され、この開口に第1筒体28が接合されている。さらに、底38の第2筒体31よりも周方向外側の部位に、基体11内部と第3筒体33内とを連通する連通孔42a,42eが複数形成されている。
【0031】
なお、第1の部材及び第2の部材は、共に底及び壁部からなる構造の他、底のみからなる部材に底及び壁部からなる部材を重ね合わせる構造等も採用することができる。即ち、中空状になるものであれば、任意の形状を採用することができる。また、互いの壁部を外周方向に向かって延ばした上で溶接する等、容易に溶接するために適宜形状を変更することや、互いの壁部同士を突き合せて突き合せ溶接を行うこともできる。
【0032】
第1筒体28から触媒ケース16に向かって突出すると共に、先端が触媒ケース16に接触することで排気ガスの流路を規制する排気ガス規制部28aが形成されている。即ち、排気ガスは、この排気ガス規制部28aの形成されている部分を避けるようにして、蛇行して流れる。詳細は後述する。
第1底部29の中央に、触媒担体15に向かって膨出する膨出部29aが形成されている。
【0033】
第2筒体31は、下端が第2底部32で塞がれる一般部31aと、この一般部31aから拡径し水排出管24が接合される拡径部31bとからなる。拡径部31bに水排出管24が接合される水排出口31cが形成されている。
第2底部32は、中央に水が導入される水導入口32aが形成されている。この水導入口32aに、水導入管23が接続される。
【0034】
第3筒体33は、下端が第3底部34で塞がれる一般部33aと、この一般部33aから拡径する拡径部33bとからなる。拡径部33bに、水排出管24が貫通される水排出開口部33cが形成されている。水排出開口部33cは、水排出口31cの形成される位置に合わせて形成される。
【0035】
第3底部34は、第2底部32に向かって突出し第2底部32の底部に接触する段差部34aが形成され、この段差部34aの中央に水導入管23を貫通させるための水導入開口部34bが形成される。さらに、第3底部34の端部に、排気ガスを排出する排気ガス排出口34cが形成され、この排気ガス排出口34cに排気ガス排出管22が接合されている。
【0036】
水導入開口部34bは、水導入口32aが形成される位置に合わせて形成される。段差部34aが第2底部32に接触することで、第2底部32の強度を高めることができる。この第2底部32の強度が高められた部位に水導入口32aを設け、水導入管23を支持するため、水導入管23を高い強度で支持することができる。
【0037】
触媒担体15の中心軸44に対して、第2筒体31の一般部31aの中心軸45が、水排出口31cから離れる方向にずらされている。
一方、触媒担体15の中心軸44に、排気ガス導入口12、第1筒体28及び第3筒体33の中心は一致している。第2筒体31の中心軸45がずらされている理由については後述する。
【0038】
触媒ケース16の外周面と第1筒体28の内周面との間は、図面上方に向かって排気ガスが流れる第1ガス流路46、第1筒体28の外周と第2筒体31の内周の間は、水が図面上方に向かって流れる水路47、第2筒体31の外周面と第3筒体33の内周面との間は、排気ガスが図面下方に向かって流れる第2ガス流路48、中空状に形成された基体11の内部は、第1ガス流路46と第2ガス流路48とを連通する連通路49である。
【0039】
即ち、第2ガス流路48は、水路47の上端部よりも基体11側に設けられる連通路49によって第1ガス流路46に連通されている。
中空状に形成された基体11の内周が、連通路49とされる。基体11の内周を連通路49とすることで、別途連通路を形成した場合に比べ、熱交換器10を小型化することができると共に、部品点数を削減することができる。
第1のケース17の詳細について次図で説明する。
【0040】
図3に示すように、第1筒体28に複数の排気ガス規制部28aが形成されている。円筒状の第1筒体28の一部に形成されることで、排気ガス規制部28aは、平面視で略C字状を呈する。これらの排気ガス規制部28aは、それぞれが同じ形状に形成されると共に、高さ方向で同じ高さに2箇所ずつ形成されている。同じ高さに形成された2つの排気ガス規制部28aを1段としたときに、このような排気ガス規制部28aが4段形成されている。
【0041】
なお、排気ガス規制部28aの段数は任意であるが、次図で説明するような配置のされ方であることが望ましい。第1筒体28について、さらに詳細に次図で説明する。
【0042】
図4は、第1筒体28を展開し内側から見た図であり、排気ガス規制部28aは、図面手前側に向かって突出している。同じ段(図面左右方向)の排気ガス規制部28a,28a間に形成され、排気ガスが通る規制部間通路28bの長さは、全てαである。
【0043】
同じ段に形成されている規制部間通路28b,28bの中点を、それぞれC1とする。2つの中点C1間の長さPは、第1筒体28の半周の長さに等しい。即ち、規制部間通路28bの中点C1と規制部間通路28bの中点C1とは、180°離して形成される。180°離して形成された排気ガス規制部28aは、第1筒体28の中心軸(
図1、符号44)を挟んで対称に形成されている。
【0044】
規制部間通路28bの中点C1は、隣り合う段(図面上下方向)の排気ガス規制部28aの中点C2に高さ方向で一致する。即ち、隣り合う段の排気ガス規制部28aに対して、90°位相をずらして配置されている。
【0045】
排気ガス規制部28aの長さβ、排気ガス規制部28aの一端から規制部間通路28bの中点C1までの長さ(1/2)α、排気ガス規制部28aの他端から規制部間通路28bの中点C1までの長さ(1/2)αとした場合に、これらを足した長さ、β+(1/2)α・2=Pを1ピッチとする。この場合、1ピッチは180°であると共に、排気ガス規制部28aは、隣り合う段の排気ガス規制部28aに対して、90°位相をずらして配置されているといえる。
【0046】
1ピッチを120°とし、隣り合う排気ガス規制部に対して60°位相をずらす、1ピッチを90°とし、隣り合う排気ガス規制部に対して45°位相をずらすことも可能である。
連通孔は、圧損の影響を抑制するために、連通孔を抜ける際の排気ガス温度での体積流量を、連通孔の前後のガス流路の断面積に対して、抵抗にならないよう、開口面積の値が設定されている。
第2の部材(
図2、符号27)に開けられた連通孔(
図2、符号42a,42e)について詳細を次図で説明する。
【0047】
図5に示すように、第2の部材27の底38には、複数の種類の連通孔42a〜42eが開けられている。連通孔42a〜42eは、それぞれ大きさが異なり、最も小さな連通孔42aは、円形状を呈し、他の連通孔42b〜42eは、長円形状を呈する。連通孔42a〜42eの大きさは、aからeに向かってアルファベット順に大きくなっている。最小の連通孔42aに対して、最大の連通孔42eは、中心軸44を挟んで形成される。
【0048】
最小の連通孔42aは、排気ガス排出口(
図2、符号34c)の上方に配置される。仮に、連通孔の大きさが全て同じである場合には、排気ガス排出口の上方に配置される連通孔から多くの排気ガスが流れる。
【0049】
排気ガス排出口から遠ざかる部位になるほど、連通孔42a〜42eの大きさを大きくし、流路面積を大きくした。排気ガスが流れやすい部位では流路面積を狭く、排気ガスが流れ難い部位では流路面積を広くすることで、第2ガス流路(
図2、符号48)全体に排気ガスを流すことができる。全体に排気ガスを流すことで、より熱交換効率を高めることができる。
【0050】
なお、連通孔の形状は、任意でありこれらの組み合わせも適宜変更することができる。例えば、同じ大きさの孔を複数形成して、これらの穴の配置の仕方によって調整することもできる。
第2ガス流路(
図2、符号48)及び水路(
図2、符号47)の詳細を次図で説明する。
【0051】
図6に示すように、触媒担体15、触媒ケース16、第1筒体28、第3筒体33は、中心軸44を中心として同心円状に配置されている。一方、第2筒体31の中心軸45は、中心軸44に対して水排出口31cから離れる方向にずらして配置されている。中心軸44,45がtだけずらされていることで、水排出口31c側の水路47の流路面積を狭く(σ1)、水排出口31cから離れた部位の流路面積を広く(σ2)形成している。
【0052】
また、第3筒体33の中心軸44が、第2筒体31の中心軸45に対して、排気ガス排出管22(排気ガス排出口)から離れる方向にずらされている。このことにより、排気ガス排出管22側の第2ガス流路48の流路面積を狭く(σ3)、排気ガス排出管22から離れた部位の流路面積を広く(σ4)形成している。
【0053】
排気ガス排出管22(排気ガス排出口)が、水排出口31cに対して中心軸44を挟んで配置されている。中心軸44を挟んで配置されることで、σ1<σ2且つ、σ3<σ4とすることができる。
【0054】
図7の矢印(1)に示すように、排気ガス導入口12から導入された排気ガスは、まず、図面下側に向かって触媒担体15内を流れる。矢印(2)で示すように、触媒担体15内を流れることで、排気ガスは浄化される。触媒担体15内を流れた排気ガスは、触媒担体15の下端から第1ガス流路46に向かって流れる。
【0055】
第1底部29に膨出部29aが形成されていることで、排気ガスを触媒ケース16と第1筒体28との間に向かって円滑に流すことができる。即ち、膨出部29aは、排気ガスの流れを導くガイドの役割を果たす。
【0056】
図8に示すように、浄化された排気ガスは、第1ガス流路46を図面下から上に向かって通過する。排気ガスは排気ガス規制部28aを迂回して上方に向かって流れる。第1ガス流路46を通過した排気ガスは、基体11内に達する。
【0057】
基体11内に達した排気ガスは、連通路49を通過し、連通孔42a,42eから下方に向かって流れる。連通孔42a,42eを通過した排気ガスは、第2ガス流路48を図面下に向かって通過する。第2ガス流路48の下端まで流れた排気ガスは、排気ガス排出口34cから外部へ排出される。
【0058】
一方、水導入口32aから導入された水は、水路47を図面上方に向かって通過する。上方に向かって流れた水は、水排出口31cから外部へ排出される。水は、触媒担体15から下方に向かって排出された排気ガスの熱で第1底部29を介して温められ、第1ガス流路46を通過する排気ガスの熱で第1筒体28を介して温められ、連通路49を通過する排気ガスの熱で第2の部材27を介して温められ、第2ガス流路48を通過する排気ガスの熱で第2筒体31を介して温められる。
【0059】
第2筒体31を第3筒体33で囲い、この間を排気ガスの流路(第2ガス流路48)とするため、第2筒体31の外周面の全体に排気ガスを流すことができる。第2筒体31の外周面の全体に排気ガスを流すため、大きな伝熱面積を確保することができる。伝熱面積が大きいことで、効率よく熱交換を行うことができる。
【0060】
一方、第2筒体31を囲う第3筒体33は、1つの部材である。第2筒体31を第3筒体33で囲った上で、第3筒体33を接合する。複数の排気ガス通過管を接合する場合に比べ、工数を削減することができ、組立て作業が容易になる。
【0061】
第1底部29に膨出部29aが形成されている。膨出部29aが形成されることで、噴流で流すことができ、また、水の流路面積を大きく取ることができる。水の流路面積を大きくすることで、水の流量を増やすことができる。水の流量が多いことで水温の急激な上昇を防ぎ、水が沸騰することを防ぐことができる。水の沸騰を防ぐことで、水を円滑に流し、効率よく熱交換を行うことができる。
【0062】
加えて、膨出部29aの下方に水導入口32aを形成し、膨出部29aに向かって水を導入する。即ち、排気ガスによって温められる前の水を膨出部29aに向かって流す。膨出部29a近傍には、触媒担体15を通過したばかりの温度の高い排気ガスが流れるため、効率よく熱を回収することができると共に、より確実に沸騰の発生を防ぐことができる。
【0063】
さらに、水排出口31c側の流路面積を狭く、水排出口31cから離れた部位の流路面積を広くした(併せて
図6も参照)。水導入口32aから水排出口31cまでの最短距離を通過する流路(図面左側)の面積を狭めることで、最短距離を通過する水の流量を減少させる。一方、水排出口31cから遠く、水の流れにくい部位(図面右側)の流路面積を広げ、水の流量を増加させる。これにより、第1筒体28と第2筒体31との間の全周にわたってより均一に水を流すことができる。より均一に水を流すことで、水を円滑に流すことができ、熱交換の効率を高めることができる。
【0064】
加えて、中心軸(
図2、符号44,45)がずらされていることで、第2筒体31と第3筒体33との間に形成される第2ガス流路48の流路面積を、排気ガス排出管22側(排気ガス排出口34c側)で狭く、排気ガス排出管22から離れた部位(図面左側)で広くすることができる。排気ガス排出管22までの最短距離を通過する流路の面積を狭めることで、最短距離を通過する排気ガスの流量を減少させる。一方、排気ガス排出管22から遠く、排気ガスの流れにくい部位の流路面積を広げ、排気ガスの流量を増加させる。これにより、第2筒体31と第3筒体33との間の全周にわたってより均一に排気ガスを流すことができる。より均一に排気ガスを流すことで、排気ガスを円滑に流すことができ、熱交換の効率を高めることができる。
【0065】
図9(a)の比較例に示すように、熱交換器210は、ガス流路211を通過する排気ガス及び水路212内に配置された排気ガス通過管213を通過する排気ガスによって水が温められる。熱交換器210の直径D1は、排気ガス通過管213の直径D2を考慮した上で、水を円滑に流すことのできる大きさに設定される。即ち、水路212の幅は、最低でもD2よりも大きく設定される。
【0066】
一方、
図9(b)の実施例に示すように、本発明に係る熱交換器10は、第1及び第2ガス流路46,48を通過する排気ガスによって水が温められる。熱交換器10の水路47の幅は、水を円滑に流すことができる幅に設定される。また、第2ガス流路48の幅は、排気ガスを円滑に流すことができる幅に設定される。第2ガス流路48は、水路47の全周を囲っているため、小さな幅であっても大きな流路面積を確保することができる。即ち、第2ガス流路48は、幅が小さくても十分に円滑に排気ガスを流すことができる。このため、熱交換器10の直径D3は、比較例に係る熱交換器210の直径D1よりも小さくすることができる。即ち、排気ガス通過管213を用いた場合に比べ、熱交換器10を小型化することができる。
別実施例について次図以降で詳細に説明する。