(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(低周波騒音低減装置100)
図1は低周波騒音低減装置100の概略的な構成を説明するための説明図である。特に、
図1(a)は、橋梁110の下部に配された低周波騒音低減装置100の橋梁110の側方から見た図を示し、
図1(b)は、低周波騒音低減装置100の鉛直上方からの上面図を示す。
【0015】
高架橋等の橋梁110において、トラック等の車両112が橋梁110を走行すると、騒音が発生する場合がある。この騒音の要因は、車両112全体の振動と、車両112のサスペンション等のばねより下の質量(以下、ばね下質量と称す)の振動と、が挙げられる。
【0016】
図2は、車両112の振動モデルを説明するための説明図である。ここでは、
図2に示すように、車両112の振動を2自由度系の振動モデルに置き換える。また、振動モデルにおける各部のパラメータは、表1に示す値を例に挙げる。
【表1】
【0017】
この場合、車両112全体は1.5Hz程度で振動し、ばね下質量は16Hz程度で振動することとなる。このうち、ばね下質量の振動は、橋梁110を強制振動させ、床板がスピーカのコーンの役割を果たして周囲の空気を振動させて、低周波騒音として付近に伝達され、実際の音としては認識され難いが人に不快感を与える、所謂低周波騒音の要因となる可能性がある。
【0018】
実際に橋梁付近の低周波騒音を測定すると、その周波数は、16Hzを含む範囲、例えば10Hz〜20Hz程度の値である。このように、低周波騒音の周波数に幅があるのは以下の理由による。
【0019】
橋梁110に進入してくる車両112は、様々な固有振動数を持ち、ランダムなタイミングで橋梁110に進入する。このように、複数の車両112が位相をずらして橋梁110に進入し、橋梁110に強制振動を発生させるため、位相がずれた複数の振動が重なり合い周波数に幅が生じていると推定できる。
【0020】
図1に示す、本実施形態の低周波騒音低減装置100は、橋梁110の鉛直下側の橋桁110aに固設され、橋梁110から発生する低周波騒音を低減するもので、ばね部120と、重錘130とを含んで構成される。
【0021】
図3は、
図1(a)のA矢視図である。本実施形態の橋梁110の橋桁110aは、
図3に示すように、例えば、H型鋼等で構成され、複数、本実施形態においては、鉛直方向および水平方向に2本ずつ、延伸方向が平行となるように計4本が配される。
【0022】
ばね部120は、複数の皿ばね122を連接してなり、鉛直方向に並んだ2本の橋桁110aの間に配され、橋梁110の振動を直接的に受けて、橋梁110の振動に連動して振動する。ここで、「直接的に受ける」は、例えば、てこの原理等を利用した機構を介さず、橋梁110の振動が、橋桁110aや橋脚110bを介して直接伝達されることを意味する。
【0023】
重錘130は、例えば、大きさによって質量が調整された2枚の金属板で構成される。2枚の金属板は、ボルトやナット等の固定具130aで重ね合わせた状態で固定される。そして、重錘130は、ばね部120の振動方向に連結される。
図3に示すように、重錘130の上下にはばね部120が配される。換言すれば、ばね部120は、ばね部120の振動方向に直列に、重錘130を挟んで対称的に複数配される。
【0024】
重錘130を挟んでばね部120を配することで、重錘130の上方への揺れも、下方への揺れも、確実にばね部120が吸収でき、重錘130の振動によって橋梁110の構成部材に与える負荷を抑制することが可能となる。
【0025】
(低周波騒音低減装置100の橋梁110への取り付け位置)
制振装置の計画にあたっては、スピーカのコーンに相当する平板が、10〜20Hzの範囲で振動している部位を特定し、振幅の大きい位置に制振装置を取り付ける必要がある。ここで想定する橋梁110をモデル化したモデル橋梁では、この10〜20Hzの範囲の振動は2次のねじり振動となる。
【0026】
図4は、モデル橋梁200および2次のねじり振動の概念図である。
図4では、モデル橋梁200のねじれの状態を理解し易くするため、モデル橋梁200の表面に破線のメッシュを示す。2次のねじり振動によって、モデル橋梁200は、
図4に矢印で示す部分の近傍が最もよく変動する。
【0027】
モデル橋梁200と同様に、橋梁110にもねじり振動が起きることから、本実施形態のように、低周波騒音低減装置100を、橋梁110における当該橋梁110の幅方向の外側、すなわち外桁近傍に配置することで、効果的に制振できる。
【0028】
図5は、低周波騒音低減装置100の設置位置を説明するための説明図であり、橋梁110の床板110cの上面視に、低周波騒音低減装置100の設置位置を破線の円で示す。
【0029】
図5に示すように、低周波騒音低減装置100は、上述したモデル橋梁200の矢印の位置に相当する、橋梁110における橋長方向の全長Lの1/4点と3/4点の部位の外桁内側に取り付けるものとする。
【0030】
(橋梁110の振幅の推定)
以下、橋梁110の振動の振幅について検討する。振動数fが16Hzの場合、円振動数ωは以下の数式1によって導出される。
【数1】
…(数式1)
したがって、橋梁110の振動の振幅Aが1cmであると仮定すると、加速度aは、以下の数式2によって導かれる。
【数2】
…(数式2)
この加速度aの値は、大凡重力加速度の10倍程度である。
【0031】
しかし、上記の数式2で導出された加速度aは、ねじりの2次モードとしては値が大きすぎる。加速度aが取り得る常識的な範囲を考慮すると、振幅Aは、1cmの10分の1である1mm程度と推定される。一般に、低音スピーカ等では、1mm程度の振幅で音を発することが可能である。このことから、この推定値である1mmは、騒音の要因となる振動の振幅として十分な大きさであると判断される。
【0032】
続いて、上述した低周波騒音低減装置100の設計例を以下に示す。かかる設計例は一例であって、低周波騒音低減装置100は、設計例として以下に記載した数値に限定されない。
【0033】
(重錘130の質量)
ねじりの2次モードの場合、振動に寄与する質量の橋梁110全体の質量に対する割合(以下、寄与割合と称す)は1/8程度と考えられる。ここで、寄与割合を1/8としたのは以下の根拠による。すなわち、ねじり振動であることから橋梁110の幅方向の中心付近は振動しないため、橋梁110全体の質量の1/2程度は振動に寄与しない。また、低周波騒音低減装置100は橋梁110と4点で接続されていることから、負荷が分散されるため、各点ではそれぞれ1/4の質量を受ける。そのため、寄与割合は1/2と1/4を掛け合わせた1/8となる。
【0034】
また、寄与割合のより詳細な計算手段として、例えば、橋梁110の全面積のモード鉛直成分の二乗和を、低周波騒音低減装置100を接続する4点の位置のモード鉛直成分の二乗和で除算した値を、寄与割合としてもよい。
【0035】
橋梁110の鉛直方向の単位面積当たりの重量を1トン、橋長を30m、総幅8m20cmと仮定すると、橋梁110全体の質量は246トンとなる。そのため、振動に寄与する質量は1/8の約30トンとなる。
【0036】
ここでは、重錘130の質量Mを、この橋梁110の振動に寄与する質量30トンの2%、すなわち、約600kgとする。
【0037】
(ばね部120の設計)
重錘130の質量Mが600kg、制振の対象とする振動の固有振動数ωが16Hzとすると、ばね部120のばね定数Kは、以下の数式3によって導かれる。
【数3】
…(数式3)
【0038】
ここでは、ばね部120の片振幅を2cm程度、すなわち、橋梁110の振幅とばね部120の振幅の比Bを20倍と設定する。すると、ばね部120の反力Pは、以下の数式4によって導かれる。
【数4】
…(数式4)
【0039】
重錘130は4点支持とする。この場合、各点に配される4つのばね部120それぞれのばね定数は1/4、すなわち、1.53kN/mmとなる。
【0040】
図6は、ばね部120を説明するための説明図である。特に、
図6(a)は、皿ばね122を示し、
図6(b)は、棒部材124を示し、
図6(c)は、皿ばね122と棒部材124とを組み合わせたばね部120を示す。
【0041】
例えば、ばね部120のばねには皿ばね122を使用する。この皿ばね122は、例えば、軽荷重用で、変形能の最大値(
図6(a)に示すh)が3.2mm、変形量が1.6mm(変形能の最大値の50%)のときの反力P
δ0.5は13.72kN、変形量が2.4mm(変形能の最大値の75%)のときの反力P
δ0.75は18.25kNとする。
【0042】
また、ばね部120としては、皿ばね122を向かい合わせとなるように2枚重ねにしたものを1組として(
図6(a)参照)、複数組、ここでは11組で構成される。ただし、理解を容易とするため、
図1(a)、
図3、
図6(c)においては数を減らして示す。
【0043】
皿ばね122を向かい合わせに組み合わせることで、皿ばね122が変形したときに皿ばね122同士の摩擦を効率的に減衰として作用させることが可能となる。
【0044】
図6(c)に示すように、ばね部120および重錘130には、それぞれ貫通孔120a、130bが設けられており、その貫通孔に棒部材124が挿通され、両端の皿ばね122の外側からワッシャー126aを介してナット126bで締め付けられている。
【0045】
1つの皿ばね122の変形量が仮に1.6mmであった場合、1つのばね部120(皿ばね×2枚重ね×11組)のばね定数K1は、以下の数式5によって導出できる。
【数5】
…(数式5)
【0046】
ばね部120は、橋梁110の橋長の1/4点、3/4点にそれぞれ8つずつ、すなわち、全部で16個が配される。この16個のばね部120全体のばね定数は、K1の16倍、すなわち、6.24kN/mmとなる。
【0047】
同様に、1つの皿ばね122の変形量が仮に2.4mmであった場合、1つのばね部120のばね定数K1は、以下の数式6によって導出できる。
【数6】
…(数式6)
【0048】
そして、16のばね部120全体のばね定数は、K1の16倍、すなわち、5.53kN/mmとなる。
【0049】
また、1つのばね部120の最大変形量は、3.2×22=70.42mmである。仮に、初期プレ圧縮量を25mmとすると、振幅20mmの振動によって、ばね部120は、圧縮量5mm〜45mmの範囲で振動する。この設計例において、ばね部120は、最も変形したときで、ばね部120の変形能の最大値の64.0%程度の幅で変形をしていることとなる。
【0050】
以上、低周波騒音低減装置100の設計例を示したが、低周波騒音低減装置100は、このような設計によって、ばね部120および重錘130によって構成される振動系の共振周波数が、10〜20Hzの範囲に含まれる周波数に調整されている。
【0051】
そして、低周波騒音低減装置100は、ばねとして皿ばね122を用いたTMD(Tuned Mass Damper)であるため、ばね定数がコイルばねに比べて高く、例えば、1mm程度の小さな振幅しか生じない振動も抑制できる。そのため、低周波騒音低減装置100は、1mm程度の小さな振幅の振動による低周波騒音の発生を確実に抑制可能となる。
【0052】
また、低周波騒音低減装置100は、構造が単純であり、かつ、皿ばね122を使っているためコイルばねを使う場合に比べ小型化が可能となり、製造コストを抑制できる上、既存の橋梁110に対して、橋梁110の補強などをほとんど行わずとも容易に取り付けることができる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。