特許第5795952号(P5795952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5795952エンボスキャリアテープ用導電シートおよびエンボスキャリアテープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795952
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】エンボスキャリアテープ用導電シートおよびエンボスキャリアテープ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20150928BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20150928BHJP
   B32B 27/24 20060101ALI20150928BHJP
   B65D 73/02 20060101ALI20150928BHJP
   B65D 85/86 20060101ALI20150928BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   B32B27/30 A
   B32B27/18 J
   B32B27/24
   B65D73/02 K
   B65D73/02 M
   B65D85/38 N
   B65D85/38 S
   H01B5/14 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-265949(P2011-265949)
(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公開番号】特開2013-116607(P2013-116607A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】平岩 重信
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−115112(JP,A)
【文献】 特開平8−12785(JP,A)
【文献】 特開2004−137343(JP,A)
【文献】 特開2000−263728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 73/00−73/02
B65D 85/00−85/90
H01B 5/00−5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファスポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材と、該基材の片面に設けられた導電層とを備え、
気圧0.1MPa(絶対圧力)のときの沸点が77℃以上の溶剤を50〜2000ppm含み、
前記導電層は、アクリル樹脂および導電性物質を含み、表面抵抗率が1×10〜1×1013Ωの層であることを特徴とするエンボスキャリアテープ用導電シート。
【請求項2】
前記溶剤は、温度25℃、気圧0.1MPa(絶対圧力)のときの蒸発速度が100以上のものであることを特徴とする請求項1に記載のエンボスキャリアテープ用導電シート。
【請求項3】
最表に、導電層を保護する保護層を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のエンボスキャリアテープ用導電シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンボスキャリアテープ用導電シートを加工したエンボスキャリアテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスキャリアテープを作製するための導電シートおよびエンボスキャリアテープに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等を実装機に搬送する際には、電子部品等を収納するための凹形状の部品収納部が設けられたキャリアテープが用いられている。
キャリアテープとしては、基材の一部を凹形状に加工して部品収納部(エンボス部)を形成したエンボスキャリアテープ、基材の一部を打抜き加工により取り除いた後、基材裏面にボトムテープを装着して部品収納部を設けたパンチドキャリアテープ、基材の一部を圧縮加工することによって部品収納部を設けたプレスキャリアテープ等が知られている。
これらのうち、エンボスキャリアテープは、ポリスチレンのシートをエンボス加工することにより作製されることが多い。しかし、エンボスの形状によっては高い伸長性が求められるため、引張伸び率が約100%で伸長性があまり高くないポリスチレンは適さないことがあった。そこで、引張伸び率が200〜300%で伸長性の高いアモルファスポリエチレンテレフタレート(以下、「APET」という。)を使用することもある。
【0003】
ところで、近年、電子部品の微細化が進み、例えば縦、横の寸法が、1.6×0.8mm(1608チップ)、1.0×0.5mm(1005チップ)、0.6×0.3mm(0603チップ)、0.4×0.2mm(0402チップ)等のものも使用されるようになってきた。
上記のような微細な電子部品を収納する場合には、静電気による電子部品のピックアップ性低下を防ぐために、キャリアテープに導電性を付与することがある。導電性を付与する方法としては、カーボンブラック等の導電性物質を練り込む方法、導電性物質とバインダ樹脂とを含む導電性塗料をコーティングして導電層を設ける方法が知られている。
エンボスキャリアテープの材料としてAPETを用いる場合、導電性物質の練り込みでは、機械的物性が低下することがあった。そのため、APETを用いたエンボスキャリアテープにおいては、通常、導電性塗料をコーティングして導電層を設ける方法により導電性を付与している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4590822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、導電性塗料をコーティングして設けた導電層は、APETフィルムに対する密着性が不充分なため、エンボス加工時にAPET製の基材から剥離することがあった。
また、導電性塗料のバインダ樹脂としては、溶解パラメーター(SP値)がAPETと近く、APETとの密着性に優れたポリエステルやポリウレタンが用いられていたが、これらの樹脂は加水分解しやすいため、エンボスキャリアテープの保管環境が高湿であると、劣化することがあった。
そこで、本発明は、APET製の基材と導電層との密着性が高く、しかも導電層に含まれるバインダ樹脂の加水分解が防止されたエンボスキャリアテープ用導電シートおよびエンボスキャリアテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、加水分解しにくく、安定性に優れているアクリル樹脂を導電層のバインダ樹脂として使用することを考えた。しかし、アクリル樹脂は、APETに対してSP値が1.0以上離れているため、APETフィルムに対する密着性が不充分であった。そこで、アクリル樹脂を含む導電層の、APETフィルムに対する密着性を向上させる検討を行ったところ、導電層に溶剤が含まれると、APETフィルムに対する密着性が低下しにくいことを見出した。そして、以下のエンボスキャリアテープ用導電シートおよびエンボスキャリアテープを発明した。
【0007】
[1]アモルファスポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材と、該基材の片面に設けられた導電層とを備え、気圧0.1MPa(絶対圧力)のときの沸点が77℃以上の溶剤を50〜2000ppm含み、前記導電層は、アクリル樹脂および導電性物質を含み、表面抵抗率が1×10〜1×1013Ωの層であることを特徴とするエンボスキャリアテープ用導電シート。
[2]前記溶剤は、温度25℃、気圧0.1MPa(絶対圧力)のときの蒸発速度が100以上のものであることを特徴とする[1]に記載のエンボスキャリアテープ用導電シート。
[3]最表に、導電層を保護する保護層を備えることを特徴とする[1]または[2]に記載のエンボスキャリアテープ用導電シート。
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載のエンボスキャリアテープ用導電シートを加工したエンボスキャリアテープ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエンボスキャリアテープ用導電シートおよびエンボスキャリアテープは、APET製の基材と導電層との密着性が高く、しかも導電層に含まれるバインダ樹脂の加水分解が防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のエンボスキャリアテープ用導電シートの一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明のエンボスキャリアテープの一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<導電シート>
本発明のエンボスキャリアテープ用導電シート(以下、「導電シート」と略す。)の一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の導電シートの断面図を示す。本実施形態の導電シート10は、基材11と、基材11の片面に設けられた導電層12と、導電層12の、基材11とは反対側の面に設けられた保護層13とを備える。
【0011】
また、導電シート10は、気圧0.1MPa(絶対圧力)のときの沸点が77℃以上の溶剤を50〜2000ppm、好ましくは100〜1000ppm、より好ましくは200〜800ppm含む。導電シート10中の溶剤含有量(単位:ppm)は、導電シート10の試験片を密閉容器中、150℃、30分間放置し、密閉容器中に揮発した溶剤の質量をガスクロマトグラフィにより測定し、[(揮発溶剤の質量)/(導電シートの質量)]×10の式より求めた値である。なお、通常、市販されているAPETフィルムには溶剤が殆ど含まれないため、溶剤含有量はほぼ導電層12に含まれるものである。
沸点77℃以上の溶剤の含有量が前記下限値未満であると、基材11に対する導電層12の密着性が低下し、前記上限値を超えると、リールに巻回されるテープにおいて要求される耐ブロッキング性が低下する。また、導電シート10に含まれる溶剤の沸点が77℃未満であると、溶剤含有量を50ppm以上にすることが困難になる。
溶剤の沸点は、溶剤含有量を容易に2000ppm以下にできる点では、156℃以下であることが好ましく、126℃以下であることがより好ましい。
溶剤の含有量を上記範囲に調整する方法としては、後述する製造方法において、導電性塗料塗布後の乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間、乾燥圧力)を適宜調整する方法が挙げられる。
【0012】
沸点77℃以上の溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、セルソルブアセテートなどを使用することができる。
また、溶剤は、温度25℃、気圧0.1MPa(絶対圧力)のときの蒸発速度が100以上のものであることが好ましく、150以上のものがより好ましく、200以上のものがさらに好ましい。溶剤の蒸発速度が前記下限値以上であれば、導電シート10中の溶剤量を容易に2000ppm以下にできる。ここで、蒸発速度は、ASTM D3539−87に従って測定した値であり、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした際の相対速度(無単位)である。
蒸発速度が100以上の溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、メチルエチルケトン、トルエンなどが挙げられる。
また、溶剤の蒸発速度は、導電シート10中の溶剤量を容易に50ppm以上にできる点では、615以下であることが好ましく、572以下であることがより好ましい。
【0013】
(基材)
基材11は、APETフィルムからなる。ここで、APETとは、結晶化度が10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下のポリエチレンテレフタレートのことである。結晶化度は、X線回折、または、示差熱分析(DSC)等の熱分析により求めることができる。
基材11の厚さは100〜500μmであることが好ましく、200〜400μmであることがより好ましい。基材11の厚さが前記上限値以上であれば、引張強度等の機械的強度を充分に確保でき、前記上限値以下であれば、導電シート10の厚肉化による可撓性や加工性の低下を防止できる。
【0014】
(導電層)
導電層12は、アクリル樹脂および導電性物質を含み、表面抵抗率が1×10〜1×1013Ωの層である。ここで、表面抵抗率は、三菱化学社製ハイレスタIP MCP−HT260で測定した値である。導電層12の表面抵抗率を前記下限値未満とすることは、樹脂に導電性物質を含有させる方法では実現困難であり、前記上限値を超えると、導電性が不充分となる。
また、導電層12の表面抵抗率は10〜10Ωであることが好ましく、10〜10Ωであることが好ましい。
【0015】
アクリル樹脂は、アクリル単量体を重合または共重合した重合体である。アクリル単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらアクリル樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記アクリル樹脂の中でも、基材11に対する導電層12の密着性がより高くなる点では、メチルメタクリレートをベースにメチルメタクリレート以外の他の上記単量体の1種以上を共重合したものが好ましい。
【0016】
導電性物質としては、例えば、ファーネスブラックやアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノファイバ、銀や銅等の金属の粒子、酸化スズや酸化チタン等の導電性金属酸化物の粒子、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することができる。これら導電性物質は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。導電性物質の中でも、導電性が高く且つ安価であることから、カーボンブラックが好ましい。
導電層12における導電性物質の含有量は、アクリル樹脂100質量部に対して10〜40質量部であることが好ましく、20〜30質量部であることがより好ましい。導電性物質の含有量が前記下限値以上であれば、充分な導電性を得ることができ、前記上限値以下であれば、基材11に対する導電層12の密着性をより高くすることができる。
【0017】
導電層12の厚さは0.05〜2.0μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。導電層12の厚さが前記下限値以上であれば、充分な導電性を得ることができ、前記上限値以下であれば、容易に導電層12を形成できる。
【0018】
(保護層)
保護層13は、導電層12を保護する樹脂層である。保護層13は、導電層12との密着性が高いものであれば特に制限されないが、導電層12はアクリル樹脂を含む層であるから、保護層13もアクリル樹脂を含む層であることが好ましい。
また、保護層13は導電性を要しないため、導電性物質が含まれていなくてもよい。
【0019】
保護層13の厚さは0.01〜1.0μmであることが好ましく、0.05〜0.5μmであることがより好ましい。保護層13の厚さが前記下限値以上であれば、充分に導電層12を保護でき、前記上限値以下であれば、導電シート10の厚肉化による可撓性や加工性の低下を防止できる。
【0020】
(導電シートの製造方法)
本実施形態の導電シートは、基材11の片面に、導電性物質とアクリル樹脂と溶剤とを含有する導電性塗料を塗布し、乾燥させて導電層12を形成し、その導電層12の表面に、保護層形成用塗料を塗布し、乾燥させて保護層13を形成することにより製造される。
導電性塗料を塗布する方法としては、例えば、ロールコート法、コンマコート法、グラビアコート法等の公知の塗布方法を適用することができる。
塗布後の乾燥においては、上記の溶剤含有量となるように乾燥条件、具体的には乾燥温度、乾燥時間、乾燥圧力を適宜設定する。
保護層形成用塗料は、保護層13を形成する樹脂と分散媒とを含有するものである。分散媒は、上述した導電性塗料の溶剤と同様でもよいし、異なるものでもよいし、水でも構わない。保護層形成用塗料の塗布方法は、導電性塗料の塗布方法と同様の方法を適用することができる。
【0021】
(作用効果)
本発明者が調べた結果、導電層12に含まれる溶剤は基材11を膨潤させることができ、膨潤した基材11に対しては導電層12の密着性が向上することが分かった。特に、溶剤含有量が前記下限値以上であることにより、充分な密着性が得られる。したがって、上記導電シート10は、エンボス加工後の剥離を防止することができる。
また、アクリル樹脂は加水分解しにくいため、該導電シート10から得られるエンボスキャリアテープの保管環境が高湿であっても劣化しにくい。
【0022】
<エンボスキャリアテープ>
上記実施形態の導電シート10を用いたエンボスキャリアテープについて図2を参照して説明する。
本実施形態のエンボスキャリアテープ1は、上記導電シート10をエンボス加工して、エンボス部Eを一定間隔で形成したものである。本実施形態におけるエンボス部Eの形状は、開口部が平面視略矩形の有底四角筒状とされている。
エンボス加工の方法としては、例えば、プレス成形法、圧空成形法、真空成形法、あるいはこれらを組みあわせた成形方法を適用することができる。
【0023】
また、エンボスキャリアテープ1は、幅方向の一方の端部側に、搬送用のスプロケットホールHが一定間隔で形成されている。スプロケットホールHはエンボス加工と同時に形成してもよいし、エンボス加工の前に形成してもよいし、エンボス加工の後に形成してもよい。スプロケットホールHの形成方法は、公知の穿孔方法を適用すればよい。
【0024】
本実施形態のエンボスキャリアテープ1は、上記導電シート10を加工したものであるから、APET製の基材11と導電層12との密着性が高く、剥離が防止されている。また、導電層12に含まれるバインダ樹脂はアクリル樹脂であるから、加水分解が防止されている。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、本発明の導電シートは保護層を備えていなくてもよい。
また、本発明のエンボスキャリアテープにおけるエンボス部の形状は特に制限されず、収納する電子部品の形状に応じて適宜選択され、例えば、開口部が平面視円形又は楕円形とされた有底略円筒状であってもよいし、開口部が平面視三角形、五角形、六角形等の有底多角筒状であってもよい。
また、通常はスプロケットホールが形成されるが、スプロケットホールがないものであっても構わない。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
厚さ300μmのAPETフィルム(三菱樹脂社製TH346または帝人社製FR)の片面に、グラビアコーターにより、バインダ樹脂としてのアクリル樹脂(三菱レイヨン社製ダイヤナールLR158)100質量部と、カーボンブラック(ライオン社製カーボンECP)100質量部と、酢酸プロピル80質量部と、トルエン20質量部とを含む導電性塗料を塗布し、大気圧、100℃、1分間乾燥させて導電層を形成した。これにより、導電シートを作製した。
【0027】
(実施例2、比較例1〜4)
導電性塗料に含まれる溶剤を表1に示すものに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電シートを作製した。
【0028】
(比較例5〜8)
導電性塗料に含まれるバインダ樹脂および溶剤を表1に示すものに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電シートを作製した。
【0029】
<評価>
得られた導電シートについて、溶剤含有量を下記方法により測定した。また、APETフィルムに対する導電層の密着性(以下、「密着性」と略す。)、バインダ樹脂の加水分解防止性(以下、「加水分解防止性」と略す。)、耐ブロッキング性、エンボス加工時の剥離防止性(以下、「剥離防止性」と略す。)を下記方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0030】
(溶剤含有量)
導電シートを切断して試験片を作成し、その試験片の質量を測定した。次いで、試験片を密閉容器の中に入れ、150℃、30分間放置した。これにより密閉容器内に揮発した溶剤の質量をガスクロマトグラフィにより測定した。そして、[(揮発溶剤質量)/(導電シートの質量)]×10の式より、導電シート中の溶剤含有量(単位:ppm)を求めた。
【0031】
(密着性)
導電層にJIS G 3322に準じて碁盤目を入れ、その碁盤目の上からニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)を貼着し、次いで、セロテープ(登録商標)を剥がして、導電層の剥離具合で密着性を評価した。
○:導電層の剥離が見られなかった。
×:導電層の剥離が見られた。
【0032】
(加水分解防止性)
導電シートを、温度50℃、相対湿度80%の雰囲気下、30日間放置した後、バインダ樹脂の質量平均分子量を測定した。
○:質量平均分子量の低下は見られなかった。
×:質量平均分子量の低下が見られた。
【0033】
(耐ブロッキング性)
複数の導電シートを積層し、温度40℃の環境下、7日間放置した後のブロッキング状態を観察して評価した。
○:ブロッキングは生じなかった。
×:ブロッキングが生じた。
【0034】
(エンボス加工時の剥離防止性)
導電シートをエンボス加工した際の導電層の剥離の有無を目視により観察して、下記の基準で評価した。
○:導電層の剥離は見られなかった。
×:導電層の剥離が見られた。
【0035】
【表1】
【0036】
沸点77℃以上の溶剤の含有量が本願請求項1に係る発明の範囲にある実施例1,2の導電シートは、アクリル樹脂を含む導電層をAPETフィルムに積層したものであるにもかかわらず、密着性、加水分解防止性、耐ブロッキング性、剥離防止性のいずれもが優れていた。
沸点77℃以上の溶剤の含有量が本願請求項1に係る発明の範囲より少ない比較例1,4の導電シートは、密着性、剥離防止性が不充分であった。
沸点77℃以上の溶剤の含有量が本願請求項1に係る発明の範囲を超える比較例2,3の導電シートは、耐ブロッキング性が不充分であった。
アクリル樹脂以外の樹脂をバインダ樹脂とした比較例5〜8の導電シートは、加水分解防止性が不充分であった。また、沸点77℃以上の溶剤の含有量が本願請求項1に係る発明の範囲を超える比較例8の導電シートは、耐ブロッキング性も不充分であった。
【符号の説明】
【0037】
1 エンボスキャリアテープ
10 導電シート
11 基材
12 導電層
13 保護層
図1
図2