特許第5795964号(P5795964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5795964レベル調整治具を備える板材保持装置と板材の配置調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795964
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】レベル調整治具を備える板材保持装置と板材の配置調整方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/04 20060101AFI20150928BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20150928BHJP
   B23Q 3/18 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   B23Q3/04
   F16B5/02 P
   B23Q3/18 D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-14399(P2012-14399)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2013-154408(P2013-154408A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】西留 紳也
(72)【発明者】
【氏名】稲富 新一
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−283157(JP,A)
【文献】 特開2005−169537(JP,A)
【文献】 特開2000−198037(JP,A)
【文献】 特開2011−221333(JP,A)
【文献】 特開平11−194188(JP,A)
【文献】 特開平09−033207(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202114499(CN,U)
【文献】 米国特許第05320007(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/04
B23Q 3/02
B23Q 3/18
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台と、板材を前記支持台に固定するレベル調整治具とを有する板材保持装置であって、
前記レベル調整治具は少なくとも3つあって、少なくとも1つの該レベル調整治具は他の該レベル調整治具と同一直線上にない配置で、前記支持台に固定され、
前記各レベル調整治具は、1)螺子穴Aが形成され、前記支持台に固定されるベース部材と、2)貫通孔及び螺子孔Bが形成され、前記ベース部材に取り付けられた板材受け具と、3)螺子孔Cが形成された押え板、及び、前記螺子孔Cに嵌合されて先端部が前記押え板から突出する1本の第4の螺子を有し、前記板材受け具に固定される板材押え具と、4)前記貫通孔を挿通した状態で先端部が前記螺子穴Aに嵌合され、頭部が前記板材受け具に当接する第1の螺子と、5)前記螺子孔Bに嵌合され、先端部が前記ベース部材に当接する第2の螺子とを有し、前記1本の第4の螺子の先端部と前記板材受け具によって前記板材を挟持し、
前記少なくとも3つのレベル調整治具の全部又は一部について、前記第1の螺子の先端部の前記貫通孔からの突出長及び前記第2の螺子の先端部の前記螺子孔Bからの突出長をそれぞれ調整することによって、前記支持台に対する前記板材の角度を変えることを特徴とする板材保持装置。
【請求項2】
請求項記載の板材保持装置において、前記板材押え具は、縦長のガイド孔が形成され、該ガイド孔に挿通された第3の螺子によって前記板材受け具に固定され、前記第3の螺子を緩めることで前記ガイド孔に沿って進退可能とな、前進位置にある前記板材押え具と前記板材受け具で前記板材を挟持し、該板材押え具を後退させることによって該板材を取り外し可能な状態にすることを特徴とする板材保持装置。
【請求項3】
支持台に取り付けられた凹凸面のある板材の配置を調節し、基準平面に対する該板材の凹凸面の変位を小さくする板材の配置調整方法であって、
1)螺子穴Aが形成され、前記支持台に固定されるベース部材と、2)貫通孔及び螺子孔Bが形成され、前記ベース部材に取り付けられた板材受け具と、3)螺子孔Cが形成された押え板、及び、前記螺子孔Cに嵌合されて先端部が前記押え板から突出する1本の第4の螺子を有し、前記板材受け具に固定される板材押え具と、4)前記貫通孔を挿通した状態で先端部が前記螺子穴Aに嵌合され、頭部が前記板材受け具に当接する第1の螺子と、)前記螺子孔Bに嵌合され、先端部が前記ベース部材に当接する第2の螺子とを有する少なくとも3つのレベル調整治具を、少なくとも1つの該レベル調整治具が他の該レベル調整治具と同一直線上にない配置で、前記支持台に固定し、
前記少なくとも3つのレベル調整治具の前記1本の第4の螺子の先端部と前記板材受け具によって前記板材を挟持して、該板材を前記支持台に取り付け、
前記基準平面に対する前記板材の凹凸面の変位を計測し、
前記少なくとも3つのレベル調整治具の全部又は一部について、前記第1の螺子の先端部の前記貫通孔からの突出長及び前記第2の螺子の先端部の前記螺子孔Bからの突出長をそれぞれ調整して、前記支持台に対する前記板材の角度を変え、前記基準平面に対する該板材の凹凸面の変位の最小化を図ることを特徴とする板材の配置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物である板材を所定の向きで保持するレベル調整治具を備える板材保持装置と板材の配置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ放電加工やフライス加工等において、加工精度を高水準に保つためには、被加工物を所定の向きで保持することが重要である。
被加工物が板材である場合、板材を治具によって台に固定するのが一般的であり、その具体例が特許文献1に記載されている。
そして、板材の向きが基準配置に対して許容範囲内に収まっていない場合には、シムテープを板材と台の間に挟み込むことで、板材の向きを微調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−105074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シムテープを用いる場合、板材を台から取り外してシムテープを配置した後に板材を台に取り付け、板材の向きを計測するという作業を何度も繰り返す必要があり、板材の向きの微調整に手間取るという問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、板材を支持台に固定した状態で板材の向きを調整可能なレベル調整治具を備える板材保持装置と板材の配置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
【0006】
【0007】
【0008】
前記目的に沿う第の発明に係る板材保持装置は、支持台と、板材を前記支持台に固定するレベル調整治具とを有する板材保持装置であって、前記レベル調整治具は少なくとも3つあって、少なくとも1つの該レベル調整治具は他の該レベル調整治具と同一直線上にない配置で、前記支持台に固定され、前記各レベル調整治具は、1)螺子穴Aが形成され、前記支持台に固定されるベース部材と、2)貫通孔及び螺子孔Bが形成され、前記ベース部材に取り付けられた板材受け具と、3)螺子孔Cが形成された押え板、及び、前記螺子孔Cに嵌合されて先端部が前記押え板から突出する1本の第4の螺子を有し、前記板材受け具に固定される板材押え具と、4)前記貫通孔を挿通した状態で先端部が前記螺子穴Aに嵌合され、頭部が前記板材受け具に当接する第1の螺子と、5)前記螺子孔Bに嵌合され、先端部が前記ベース部材に当接する第2の螺子とを有し、前記1本の第4の螺子の先端部と前記板材受け具によって前記板材を挟持し、前記少なくとも3つのレベル調整治具の全部又は一部について、前記第1の螺子の先端部の前記貫通孔からの突出長及び前記第2の螺子の先端部の前記螺子孔Bからの突出長をそれぞれ調整することによって、前記支持台に対する前記板材の角度を変える。
【0009】
の発明に係る板材保持装置において、前記板材押え具は、縦長のガイド孔が形成され、該ガイド孔に挿通された第3の螺子によって前記板材受け具に固定され、前記第3の螺子を緩めることで前記ガイド孔に沿って進退可能とな、前進位置にある前記板材押え具と前記板材受け具で前記板材を挟持し、該板材押え具を後退させることによって該板材を取り外し可能な状態にするのが好ましい。
【0010】
【0011】
前記目的に沿う第の発明に係る板材の配置調整方法は、支持台に取り付けられた凹凸面のある板材の配置を調節し、基準平面に対する該板材の凹凸面の変位を小さくする板材の配置調整方法であって、1)螺子穴Aが形成され、前記支持台に固定されるベース部材と、2)貫通孔及び螺子孔Bが形成され、前記ベース部材に取り付けられた板材受け具と、3)螺子孔Cが形成された押え板、及び、前記螺子孔Cに嵌合されて先端部が前記押え板から突出する1本の第4の螺子を有し、前記板材受け具に固定される板材押え具と、4)前記貫通孔を挿通した状態で先端部が前記螺子穴Aに嵌合され、頭部が前記板材受け具に当接する第1の螺子と、)前記螺子孔Bに嵌合され、先端部が前記ベース部材に当接する第2の螺子とを有する少なくとも3つのレベル調整治具を、少なくとも1つの該レベル調整治具が他の該レベル調整治具と同一直線上にない配置で、前記支持台に固定し、前記少なくとも3つのレベル調整治具の前記1本の第4の螺子の先端部と前記板材受け具によって前記板材を挟持して、該板材を前記支持台に取り付け、前記基準平面に対する前記板材の凹凸面の変位を計測し、前記少なくとも3つのレベル調整治具の全部又は一部について、前記第1の螺子の先端部の前記貫通孔からの突出長及び前記第2の螺子の先端部の前記螺子孔Bからの突出長をそれぞれ調整して、前記支持台に対する前記板材の角度を変え、前記基準平面に対する該板材の凹凸面の変位の最小化を図る。
【発明の効果】
【0012】
の発明に係る板材保持装置は、レベル調整治具の第1の螺子の先端部の貫通孔からの突出長及び第2の螺子の先端部の螺子孔Bからの突出長をそれぞれ調整して、ベース部材に対する板材受け具の角度を変えることで、板材を板材受け具に固定した状態で板材の角度調整ができ、効率的に板材の向きを調節することが可能である。
【0013】
の発明に係る板材保持装置において、板材押え具は、縦長のガイド孔が形成され、ガイド孔に挿通された第3の螺子によって板材受け具に固定され、第3の螺子を緩めることでガイド孔に沿って進退可能とな、前進位置にある板材押え具と板材受け具で板材を挟持し、板材押え具を後退させることによって板材を取り外し可能な状態にする場合、レベル調整治具から板材を取り外す際に、レベル調整治具を分割する必要がなく、レベル調整治具の部品の紛失を防止することができる。
【0014】
【0015】
の発明に係る板材保持装置、レベル調整治具が少なくとも3つあって、少なくとも1つのレベル調整治具が他のレベル調整治具と同一直線上にないので、レベル調整治具の操作のみによって支持台に対する板材の傾きをいずれの方向にも自在に変えることができ、板材の角度を容易に調整可能である。
【0016】
の発明に係る板材の配置調整方法は、少なくとも3つのレベル調整治具を、少なくとも1つのレベル調整治具が他のレベル調整治具と同一直線上にない配置で、支持台に固定し、少なくとも3つのレベル調整治具の板材受け具と板材押え具の第4の螺子の先端部によって板材を挟持して、板材を支持台に取り付け、基準平面に対する板材の凹凸面の変位を計測し、少なくとも3つのレベル調整治具の全部又は一部について、第1の螺子の先端部の貫通孔からの突出長及び第2の螺子の先端部の螺子孔Bからの突出長をそれぞれ調整して、支持台に対する板材の角度を変え、基準平面に対する板材の凹凸面の変位の最小化を図る。従って、板材を板材受け具と板材押え具に取り付けた状態で板材の支持台に対する角度を変えることができ、効率的に基準平面に対する板材の凹凸面の変位の最小化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)、(B)はそれぞれ、本発明の一実施の形態に係る板材保持装置を構成するレベル調整治具の斜視図及び平面図である。
図2】(A)、(B)はそれぞれ、同レベル調整治具の側面図及び正面図である。
図3】レベル調整治具の変形例の側面図である。
図4】レベル調整治具の変形例の斜視図である。
図5】板材保持装置によって板材を固定した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2図5に示すように、本発明の一実施の形態に係る板材保持装置69を構成するレベル調整治具10は、板材11を支持台12に固定するのに用いられ、支持台12に固定されるベース部材14と、板材11を挟持する保持部材15とを有している。
以下、詳細に説明する。
【0019】
レベル調整治具10は、図1(A)、(B)及び図2(A)、(B)に示すように、螺子穴16(螺子穴A)が形成された板状のベース部材14と、螺子17、18によってベース部材14に取り付けられた保持部材15とを備えている。
ベース部材14は、平面視して矩形であって、左右にそれぞれ縦長の貫通孔19、20が形成され、貫通孔19を挿通する螺子21及び貫通孔20を挿通する螺子22によって支持台12に固定されている。貫通孔19、20は平行である。
本実施の形態では、螺子穴16は、ベース部材14を貫通していないが、ベース部材14を貫通するように設計することもできる。
【0020】
保持部材15は、螺子17、18によってベース部材14の中央部(貫通孔19と貫通孔20の間)に取り付けられた板材受け具23と、螺子24(第3の螺子)及び螺子25(第3の螺子)によって板材受け具23に固定された板材押え具26を備えている。
板材受け具23は、一側(後ろ側)が螺子17、18によってベース部材14の上面に固定された矩形板部27と、矩形板部27の他側(前側)に連結され、矩形板部27と一体となったL状部28を備えている。
矩形板部27は、板状に形成され、平面視して矩形状である。L状部28は、側面視してL字に形成されている。
【0021】
一側に螺子17、18が取り付けられた矩形板部27の他側には、図2(A)、(B)に示すように、貫通孔29及び螺子孔30(螺子孔B)が形成されている。
貫通孔29は、螺子17、18によって板材受け具23がベース部材14に取り付けられた状態で、螺子穴16の直上に配置される。螺子孔30は、矩形板部27を上下に貫通して形成されている。
【0022】
貫通孔29には、図1(A)、(B)及び図2(A)、(B)に示すように、上方から螺子32(第1の螺子)が挿通され、螺子32は、頭部が矩形板部27に当接し、先端部が矩形板部27から下方に突出している。矩形板部27から突出した螺子32の先端部は、螺子穴16に嵌合(螺合)されている。
螺子孔30には、上方から螺子33(第2の螺子)が嵌合され、螺子33は、先端部が矩形板部27から下方に突出し、その突出した先端部がベース部材14に当接している。
【0023】
一側に螺子17、18が取り付けられた矩形板部27の他側とベース部材14の間隔、即ちベース部材14に対する保持部材15の角度は、螺子32の先端部の貫通孔29からの突出長及び螺子33の先端部の螺子孔30からの突出長によって調整される。具体的には、矩形板部27の他側は、螺子32、33の矩形板部27からの各突出長が長くなると、ベース部材14から遠ざかり、螺子32、33の矩形板部27からの各突出長が短くなると、ベース部材14に近づく。
【0024】
なお、本実施の形態では、板材受け具23の矩形板部27とベース部材14の間に何も配置されていないが、図3に示すように、板材受け具23の矩形板部27とベース部材14の間に螺子17、18に装着されたワッシャ31を配置してもよい。
ワッシャ31を設けることによって、ベース部材14に対する板材受け具23の矩形板部27の可動領域を広くすることができる。
【0025】
板材押え具26は、縦長のガイド孔34、35が形成された押え板36と押え板36に取り付けられた螺子37(第4の螺子)を備えている。
平行配置された縦長のガイド孔34、35には、それぞれ螺子24、25が挿通され、螺子24、25は、矩形板部27に形成された、図示しない螺子穴に嵌合されている。押え板36と板材受け具23の間には、螺子24が挿通された筒材38及び螺子25が挿通された筒材39が配置され、押え板36と板材受け具23の間隔は、筒材38、39によって所定の長さに保たれている。
板材押え具26は、螺子24、25を締め付け方向に回すことで板材受け具23に固定され、螺子24、25を緩めることでガイド孔34、35に沿って進退可能な状態となる。
【0026】
押え板36には、ガイド孔34、35の間に、螺子37が嵌合される螺子孔41(螺子孔C)が形成されている(図2(B)参照)。螺子孔41は、押え板36を上下に貫通して形成され、螺子37は、先端部が押え板36から下方に突出している。
保持部材15は、板材押え具26が前進位置で螺子24、25によって板材受け具23に固定された状態で、螺子37の先端部と板材受け具23のL状部28によって板材11を挟持する。
【0027】
筒材38、39は、板材11の厚みに応じて、筒材38、39と長さの異なる筒材に代えられる。
筒材38、39が筒材38、39より短い筒材に代えられると、その筒材の長さによっては、螺子24、25の各先端部が矩形板部27から下方に突出する。ベース部材14は、矩形板部27から突出した螺子24、25の各先端部がベース部材14に干渉しないように、螺子24、25の直下位置に図示しない開口部を備えている。
【0028】
また、押え板36には、後方中央に、切欠き42が形成されている。従って、筒材38、39の代わりに筒材38、39より短い筒材が用いられて押え板36と螺子33の頭部が同じ高さ位置に配置された状態で、押え板36を後退した際に、押え板36と螺子33が干渉するのを避けることができる。
そして、筒材38、39の代わりに筒材38、39より短い筒材が用いられ、板材受け具23と螺子37の先端部が同じ高さに配置された状態で、押え板36を後退した際に、板材受け具23と螺子37が干渉するのを回避するため、板材受け具23には、上側中央に切欠き43が形成されている。
【0029】
本実施の形態では、螺子17、18、21、22、24、25、32、33、37に六角穴付きボルトを用いている。このうち、螺子32、33、37は、六角穴が同じ大きさであるので、作業者は、共通のレンチによって螺子32、33、37の回転操作を行うことができる。特に、螺子32、33は、板材11の角度調整の際に回転操作がなされるので、共通のレンチを使用できることは、板材11の角度調整作業の効率化に有効である。
【0030】
レベル調整治具には、レベル調整治具の支持台12への取り付け位置に合わせて、保持部材15と一部が異なる保持部材が選択される。
レベル調整治具10が、ベース部材14の下端部より高い位置で板材11を保持するのに対し、レベル調整治具10の変形例である、図4に示すレベル調整治具50は、板材11の下端部がベース部材14の下端部より低くなる位置で板材11を保持する。
以下、レベル調整治具50について説明する。なお、レベル調整治具10と同一の構成要素については一部の番号の記載及び詳しい説明を省略する。
【0031】
レベル調整治具50は、レベル調整治具10と比較して、板材受け具の形状と第4の螺子の長さが異なっている。
レベル調整治具50に設けられた板材受け具51は、L状部28より上下に長いL状部52を備えている。押え板36には、螺子37より長い螺子53(第4の螺子)が嵌合され、螺子53とL状部52によって板材11を挟持する。
【0032】
押え板36と板材受け具51の間には筒材がなく、押え板36は、板材受け具51に当接した状態で、螺子24、25によって、板材受け具51に固定されている。
これによって、螺子53とL状部52によって挟持された板材11は、板材11の下端部がベース部材14の下端部より低くなる位置で保たれることになる。
【0033】
レベル調整治具10、50によって板材11が固定される支持台12は、図5に示すように、台座60、61、62と台座60、62に架け渡された長尺板63を備えている。
台座60、61、62はそれぞれ、平面視して矩形であり、上面に複数の螺子穴65が形成されている。レベル調整治具10は、螺子21、22を螺子穴65に嵌合することによって台座60又は台座61あるいは台座62に固定される。ベース部材14と台座60又は台座61あるいは台座62との位置関係は、貫通孔19における螺子21の位置及び貫通孔20における螺子22の位置によって調整される。
なお、図2(A)、(B)には、レベル調整治具10を台座60に固定した状態が記載されている。
【0034】
台座61は、一側が台座60に接し、他側が台座62に接し、台座60と台座62は、平面視して平行に保たれている。
台座60、62に架け渡された長尺板63は、平面視して、台座61と平行に配置された状態で、台座60、62に固定されている。長尺板63には、複数の螺子穴66が形成され、レベル調整治具50は、螺子21、22を螺子穴66に嵌合することによって、長尺板63に固定される。
【0035】
矩形の板材11は、外周をなす4つの直線部67のうち3つの直線部67がそれぞれ、台座60に固定されたレベル調整治具10、台座61に固定されたレベル調整治具10及び台座62に固定されたレベル調整治具10によって支持されている。また、板材11の残りの1つの直線部67は、長尺板63に固定されたレベル調整治具50によって支持されている。
そして、板材11を固定する板材保持装置69が、主として支持台12及びレベル調整治具10、50によって構成されている。
【0036】
支持台12は、長尺板63の下位置が開放され、ワイヤ放電加工を行うのに適した構造を備えている。これは、板材11の下位置で移動する加工機の部位と支持台12から離れた位置にある加工機の部位とを連結するパイプや配線等の可動領域を支持台12に確保する必要があることによる。
なお、板材11には、板材11を加工するにあたって、ワイヤが挿通される複数の貫通孔68が形成されている。
【0037】
また、レベル調整治具10(レベル調整治具50についても同じ)では、螺子24、25に低頭ボルトが用いられ、レベル調整治具10の高さを低くする設計がなされている。これは、レベル調整治具10、50の高さが低くなると、板材11の上位置で移動する加工機の部位を、板材11に近接させることができ、ワイヤ放電加工の加工精度を上げることが可能なためである。
【0038】
台座60、61、62それぞれに固定されるレベル調整治具10の数、長尺板63に固定されるレベル調整治具50の数及び長尺板63の台座60、62への取り付け位置は、支持台12に固定される板材の大きさや形状に応じて変えられる。
例えば、板材11より幅の狭い板材を固定する場合には、台座60、62それぞれに取り付けるレベル調整治具10の数は2つにされ、長尺板63は、台座61に近づけられた位置で固定される。
但し、レベル調整治具のみを操作して、板材の傾きをいずれの向きにも調整可能とするためには、支持台12に、少なくともレベル調整治具を3つ取り付ける必要があり、更に、そのうちの少なくとも1つのレベル調整治具は、他のレベル調整治具と同一直線上に配置されていないことが必要である。
【0039】
ここで、板材11は、両方の面が平面となるように製造されているが、実際は、板材11の製造精度によって、板材11の面には凹凸が存在している(この凹凸のある面を、以下、「凹凸面」という)。
板材11のワイヤ放電加工においては、基準平面に対する板材11の凹凸面の変位の全体量(以下、単に、「板材11の凹凸面の変位」という)が小さくなるほどワイヤ放電加工の精度を高めることができるので、基準平面に対する板材11の変位の最小化は重要である。
【0040】
以下、支持台12に取り付けられた板材11の凹凸面の、基準平面に対する変位を小さくする方法について説明する。
(1)支持台12に、少なくとも3つのレベル調整治具(レベル調整治具10、50の合計が少なくとも3つであることを意味する)を、少なくとも1つのレベル調整治具が他のレベル調整治具と同一直線上にない配置で固定する。
(2)その少なくとも3つのレベル調整治具の保持部材によって板材11を挟持して、板材11を支持台12に取り付ける。
【0041】
(3)基準平面(本実施の形態では水平面)に対する板材11の凹凸面の変位を計測する。具体的には、板材11の凹凸面の複数個所において、ダイヤルゲージや非接触型の距離計測計等により板材11の凹凸面の位置を測定し、その測定された位置と基準平面の距離を演算器によって算出し、板材11の凹凸面の変位を計測する。
(4)計測された板材11の凹凸面の基準平面に対する変位を基にして、レベル調整治具の全部又は一部について、螺子32、33を回転し、螺子32の先端部の貫通孔29からの突出長及び螺子33の先端部の螺子孔30からの突出長をそれぞれ調整して、支持台12に対する板材11の角度を変える。
(5)再び、基準平面に対する板材11の角度を計測する。
(6)上記(4)と(5)を繰り返し、基準平面に対する板材11の凹凸面の変位の最小化を図る。
【0042】
そして、基準平面に対する板材11の凹凸面の変位の最小化を図った後に、板材11に対しワイヤ放電加工を行う。板材11の加工が終了すると、レベル調整治具10、50の螺子37を緩めた後に、螺子24、25を緩めて押え板36を後退させ、板材11を板材保持装置69から取り外す。このとき、螺子24、25及び押え板36は、板材受け具23に取り付けられた状態になっているので、新たな板材を支持台12に固定するまでの間に、螺子24、25や押え板36を紛失するのを回避することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、板材の加工方法は、ワイヤ放電加工に限定されず、フライス加工や旋盤加工であってもよい。
また、支持台が長尺板を備えておらず、4つの台座で構成されている場合、レベル調整治具は全て同一のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
10:レベル調整治具、11:板材、12:支持台、14:ベース部材、15:保持部材、16:螺子穴、17、18:螺子、19、20:貫通孔、21、22:螺子、23:板材受け具、24、25:螺子、26:板材押え具、27:矩形板部、28:L状部、29:貫通孔、30:螺子孔、31:ワッシャ、32:螺子、33:螺子、34、35:ガイド孔、36:押え板、37:螺子、38、39:筒材、41:螺子孔、42、43:切欠き、50:レベル調整治具、51:板材受け具、52:L状部、53:螺子、60、61、62:台座、63:長尺板、65、66:螺子穴、67:直線部、68:貫通孔、69:板材保持装置
図1
図2
図3
図4
図5