(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の受電契約者の各々が有する契約者端末と通信し、複数の前記受電契約者が消費する総消費電力を管理するとともに該総消費電力に見合う電力を電力供給者から受電して複数の前記受電契約者の各々に配電する事業者のサーバからなる電力管理装置であって、
設定された予測対象日における前記総消費電力を予測する消費電力予測部と、
該消費電力予測部により予測された前記総消費電力を示す電力予測結果が、予め設定された前記総消費電力の上限量を超えたときに前記契約者端末に向けて情報を配信する情報配信部と、
前記予測対象日における消費電力を抑えることを要求するための節電要求情報、及び、前記予測対象日に外出を促すための外出促進情報を記憶する情報記憶部と、を備え、
前記外出促進情報は、前記予測対象日に開催されるイベントの告知情報、及び、前記予測対象日に所定の店舗で利用可能な割引クーポンの表示情報であり、
前記情報配信部は、前記情報記憶部に記憶された情報のうち、前記節電要求情報を読み出して前記契約者端末に向けて前記予測対象日前に配信するとともに、前記イベントの告知情報及び前記割引クーポンの表示情報のうちのいずれかを前記情報記憶部から読み出し、前記節電要求情報が示す節電要求に対して応じる旨を回答した前記受電契約者の前記契約者端末に向けて配信し、
前記イベントの告知情報及び前記割引クーポンの表示情報のうちのどちらが前記情報配信部によって配信されるかは、前記消費電力予測部が前記予測対象日における前記総消費電力を予測する予測実行日から前記予測対象日までの期間に応じて決まることを特徴とする電力管理装置。
前記サーバは、前記電力供給者から供給される高圧電力を低圧電力に変圧して前記受電契約者に配電する前記事業者としてのアグリゲータが保有するサーバであることを特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
前記電力予測結果に基づいて前記総消費電力が前記上限量を超える時間帯を特定し、特定した該時間帯における消費電力を抑えることを要求するための前記節電要求情報を生成する節電要求情報生成部を備え、
該節電要求情報生成部により生成された前記節電要求情報は、前記情報記憶部に記憶された後に前記情報配信部により前記情報記憶部から読み出されて前記契約者端末に向けて配信されることを特徴とする請求項2に記載の電力管理装置。
複数の受電契約者が消費する総消費電力を管理するとともに該総消費電力に見合う電力を電力供給者から受電して複数の前記受電契約者の各々に配電する事業者のサーバを用いた電力管理方法であって、
前記サーバが、設定された予測対象日における前記総消費電力を予測する工程と、
前記サーバが、予測された前記総消費電力を示す電力予測結果が予め設定された前記総消費電力の上限量を超えたときに、複数の前記受電契約者の各々が有する契約者端末に向けて、前記サーバに設けられた情報記憶部に記憶された情報を配信する工程と、を有し、
前記契約者端末に向けて情報を配信する工程において、前記サーバは、前記予測対象日における消費電力を抑えることを前記受電契約者に要求するための節電要求情報を前記情報記憶部から読み出して前記契約者端末に向けて前記予測対象日前に配信するとともに、前記予測対象日に外出を促すための外出促進情報を前記情報記憶部から読み出して、前記節電要求情報が示す節電要求に対して応じる旨を回答した前記受電契約者の前記契約者端末に向けて前記外出促進情報を配信し、
前記外出促進情報は、前記予測対象日に開催されるイベントの告知情報、及び、前記予測対象日に所定の店舗で利用可能な割引クーポンの表示情報であり、
前記イベントの告知情報及び前記割引クーポンの表示情報のうちのいずれかが前記サーバによって配信され、
前記イベントの告知情報及び前記割引クーポンの表示情報のうちのどちらが配信されるかは、前記予測対象日における前記総消費電力を予測する予測実行日から前記予測対象日までの期間に応じて決まることを特徴とする電力管理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的な家庭が電気会社との間で交わす受電契約は、低圧受電の契約であり、この低圧受電の契約では通常、消費電力量に応じて電気料金が増える従量電灯方式が適用されることが多い。したがって、一般的な家庭では消費電力量(kWh)を管理対象とする反面、消費電力(kW)を管理対象とすることについては想定し難い。一方、電力会社のように電力を供給する側の者にとっては、最大消費電力(以下、デマンドとも言う)に見合う出力を確保する必要があるため、デマンドの管理が重要となってくる。
【0006】
このようにデマンド管理に対する意識が最終需要者である家庭と電力供給者との間で著しく異なるため、近年では、「アグリゲータ」と呼ばれる事業者が現れ、電力需給に関して家庭と電力供給者との間の仲介を行っている。
【0007】
具体的に説明すると、アグリゲータは、複数の家庭と低圧受電契約を交わす一方で、電力供給者とは高圧受電契約を交わしている。そして、アグリゲータは、電力供給者から受電した高圧電力を低圧電力に変換して各家庭に配電している。このような受電形態は、一括受電と呼ばれ、一括受電の下では、アグリゲータが複数の家庭の各々における消費電力の合計値、すなわち総消費電力が契約デマンドを超えないように管理している。
【0008】
以上のように一括受電の下では、実際のデマンドが契約デマンドを超えないようにアグリゲータによって管理されることとなるが、当該管理においては、前述の特許文献1に記載された装置のような電力管理装置を用いて各家庭への電力削減要求の通知を自動化することが好適である。ただし、特許文献1に記載の電力管理装置では、予測対象日のデマンドを予測し予測対象日当日に実際のデマンドを計測した上で電力削減要求を必要があり、予測対象日前に前もって各家庭に電力削減要求を通知することは困難である。一方で、電力削減要求を通知される各家庭にとっては、電力削減実行の予定日を早期に把握することが可能となれば、その日の予定を立て易くなるなど都合がよい。したがって、予測対象日のデマンドを予測し当該予測結果に応じて電力削減依頼を通知する際には、できるだけ早期に通知した方が好ましい。
【0009】
また、電力管理装置の機能については、デマンドを事前に予測しておき実際のデマンドが上限量を超えるのを未然に防ぐ機能に加え、異常事態等の発生により実際のデマンドが予測に反して契約デマンドを超えそうな場合にデマンドを抑えるための緊急対応措置を講じることも求められている。
【0010】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の受電契約者が消費する総消費電力を管理する電力管理装置及び電力管理方法として、計画的な節電依頼を実現することが可能な装置及び方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、異常事態等の発生により予測に反して総消費電力がその上限量を超えてしまう事態にも対応な電力管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明の電力管理装置によれば、複数の受電契約者の各々が有する契約者端末と通信し、複数の前記受電契約者が消費する総消費電力を管理するとともに該総消費電力に見合う電力を電力供給者から受電して複数の前記受電契約者の各々に配電する事業者のサーバからなる電力管理装置であって、設定された予測対象日における前記総消費電力を予測する消費電力予測部と、該消費電力予測部により予測された前記総消費電力を示す電力予測結果が、予め設定された前記総消費電力の上限量を超えたときに前記契約者端末に向けて情報を配信する情報配信部と、
前記予測対象日における消費電力を抑えることを要求するための節電要求情報、及び、前記予測対象日に外出を促すための外出促進情報を記憶する情報記憶部と、を備え、
前記外出促進情報は、前記予測対象日に開催されるイベントの告知情報、及び、前記予測対象日に所定の店舗で利用可能な割引クーポンの表示情報であり、前記情報配信部
は、前記情報記憶部に記憶された情報のうち、前
記節電要求情報を読み出して前記契約者端末に向けて前記予測対象日前に配信する
とともに、前記イベントの告知情報及び前記割引クーポンの表示情報のうちのいずれかを前記情報記憶部から読み出し、前記節電要求情報が示す節電要求に対して応じる旨を回答した前記受電契約者の前記契約者端末に向けて配信し、前記イベントの告知情報及び前記割引クーポンの表示情報のうちのどちらが前記情報配信部によって配信されるかは、前記消費電力予測部が前記予測対象日における前記総消費電力を予測する予測実行日から前記予測対象日までの期間に応じて決まることにより解決される。
【0012】
本発明の電力管理装置では、予測対象日における総消費電力の予測結果が上限量を超えたときに、予測対象日における消費電力を抑えることを要求するための節電要求情報を各受電契約者の契約者端末に向けて予測対象日前に配信する。このように予測対象日に節電を要求する情報を予測対象日前に配信することで、当該要求を受けた受電契約者は、節電対応のために予測対象日当日の行動や予定を決めることが容易となる。この結果、事業者は、予測対象日の総消費電力、すなわちデマンドがその上限量を超えてしまうのを計画的かつ効果的に抑制することが可能となる。
また、本発明の電力管理装置によれば、外出促進情報を通じて受電契約者の外出を促すことで、デマンドが上限量を超える時間帯における受電契約者の電力消費行動(例えば、自宅で電気機器を使用する行動)を抑えることが可能となる。この結果、デマンド全体が抑えられるようになる。
さらに、本発明の電力管理装置によれば、予測対象日に受電契約者が外出する動機付けとしてイベントの開催や割引クーポンの発行を行うことにより、予測対象日のデマンドが上限量を超える時間帯の外出を促すことが可能となる。この結果、予測対象日のデマンドを効果的に下げることが可能となり、更に、イベントやクーポンの利用先となる店舗へ効率よく集客することも可能となる。
【0013】
また、上記の構成において、前記サーバは、前記電力供給者から供給される高圧電力を低圧電力に変圧して前記受電契約者に配電する前記事業者としてのアグリゲータが保有するサーバであると、好適である。
アグリゲータが複数の受電契約者に対して「一括受電サービス」を提供しているケースでは、通常、上限量を超えないようにデマンドの調整が上記アグリゲータによってなされる。かかる状況では、節電要求を節電実行日の前日までに配信してデマンドを計画的かつ効果的に抑制する本発明の効果がより有意義に発揮されるようになる。そして、デマンドを効果的に抑制することが可能となれば、アグリゲータに高圧電力を供給する電力供給者にとっても有利となる。
【0014】
また、上記の構成において、前記電力予測結果に基づいて前記総消費電力が前記上限量を超える時間帯を特定し、特定した該時間帯における消費電力を抑えることを要求するための前記節電要求情報を生成する節電要求情報生成部を備え、該節電要求情報生成部により生成された前記節電要求情報は、前記情報記憶部に記憶された後に前記情報配信部により前記情報記憶部から読み出されて前記契約者端末に向けて配信されると、好適である。
以上の構成では、予測対象日のデマンドが上限量を超えると予測される場合に、その予測結果においてデマンドが上限量を超える時間帯を特定し、特定した時間帯での節電を受電契約者に対して要求することとなる。これにより、節電を実施する必要がある時間帯が明確となるため、受電契約者にとって、予測対象日当日の行動や予定をより決め易くなる。
【0015】
また、上記の構成において
、前記情報配信部は、前記節電要求情報生成部により生成された前記節電要求情報を前記契約者端末に向けて配信するとともに、前記節電要求情報生成部が特定した前記時間帯に外出を促すための前記外出促進情報を前記情報記憶部から読み出し、前記節電要求情報が示す節電要求に対して応じる旨を回答した前記受電契約者の前記契約者端末に向けて配信すると、より好適である
。
【0017】
また、上記の構成において、前記総消費電力の現在量を示す電力データを取得する電力データ取得部を更に備え、前記情報記憶部は、電力供給設備を保有する前記受電契約者の前記契約者端末を通じて前記電力供給設備を起動させるための制御情報を記憶しており、前記情報配信部は、前記電力データ取得部により取得された前記電力データが示す前記現在量が予め設定された管理基準量を超えたときに前記制御情報を前記情報記憶部から読み出して、前記電力供給設備を保有する前記受電契約者の前記契約者端末に向けて配信すると、好適である。
以上の構成では、実際のデマンドが管理基準量(例えば、上限量)を超えそうなときに電力供給設備を保有する受電契約者の契約者端末を通じて当該電力供給設備を起動させることにより、電力供給者からの供給電力を抑えることが可能となる。これにより、異常事態等の発生により予測に反して実際のデマンドが管理基準量を超えそうな場合にも対応することが可能となる。
【0018】
また、上記の構成において、前記総消費電力の現在量を示す電力データを取得する電力データ取得部を更に備え、前記情報記憶部は、前記受電契約者が管理する建物内で使用されている電力消費機器を制御する機能を有する前記契約者端末に対して、指定された前記電力消費機器である指定機器を強制停止させる制御を要求するための停止要求情報を記憶しており、前記情報配信部は、前記電力データ取得部により取得された前記電力データが示す前記現在量が予め設定された管理基準量を超えたときに前記停止要求情報を前記情報記憶部から読み出して、前記機能を有する前記契約者端末に向けて配信すると、好適である。
以上の構成では、実際のデマンドが管理基準量(例えば、上限量)を超えそうなときに電力消費機器を制御する機能を有する契約者端末を通じて当該電力消費機器を強制停止することにより、電力供給者からの供給電力を抑えることが可能となる。これにより、異常事態等の発生により予測に反して実際のデマンドが管理基準量を超えそうな場合にも対応することが可能となる。
【0019】
また、上記の構成において、前記節電要求情報が示す節電要求に応じて節電した前記受電契約者に対して報酬ポイントを付与するポイント付与部と、該ポイント付与部が付与した前記報酬ポイントを記憶して前記受電契約者別に管理するポイント管理部と、を更に備えると、尚一層好適である。
以上の構成では、節電要求に応じて実際に節電した受電契約者に対して節電のインセンティブとしての報酬ポイントを付与することにより、受電契約者の節電に対する動機付けが容易になり、結果としてデマンドを効果的に抑えることが可能となる。
【0020】
また、前述の課題は、本発明の電力管理方法によれば、複数の受電契約者が消費する総消費電力を管理するとともに該総消費電力に見合う電力を電力供給者から受電して複数の前記受電契約者の各々に配電する事業者のサーバを用いた電力管理方法であって、前記サーバが、設定された予測対象日における前記総消費電力を予測する工程と、前記サーバが、予測された前記総消費電力を示す電力予測結果が予め設定された前記総消費電力の上限量を超えたときに、複数の前記受電契約者の各々が有する契約者端末に向けて
、前記サーバに設けられた情報記憶部に記憶された情報を配信する工程と、を有し、
前記契約者端末に向けて情報を配信する工程
において、前記サーバは、前記予測対象日における消費電力を抑えることを前記受電契約者に要求するための節電要求情報を
前記情報記憶部から読み出して前記契約者端末に向けて前記予測対象日前に配信する
とともに、前記予測対象日に外出を促すための外出促進情報を前記情報記憶部から読み出して、前記節電要求情報が示す節電要求に対して応じる旨を回答した前記受電契約者の前記契約者端末に向けて前記外出促進情報を配信し、前記外出促進情報は、前記予測対象日に開催されるイベントの告知情報、及び、前記予測対象日に所定の店舗で利用可能な割引クーポンの表示情報であり、前記イベントの告知情報及び前記割引クーポンの表示情報のうちのいずれかが前記サーバによって配信され、前記イベントの告知情報及び前記割引クーポンの表示情報のうちのどちらが配信されるかは、前記予測対象日における前記総消費電力を予測する予測実行日から前記予測対象日までの期間に応じて決まることにより解決される。
上記の電力管理方法によれば、予測対象日のデマンドが上限量を超えると予測されたときに予測対象日に節電を要求する情報を予測対象日前に配信することで、当該要求を受けた受電契約者は、節電対応のために予測対象日当日の行動や予定を決めることが容易となる。この結果、デマンドがその上限量を超えてしまうのを計画的かつ効果的に抑制することが可能となる。
また、上記の電力管理方法によれば、外出促進情報を通じて受電契約者の外出を促すことで、デマンドが上限量を超える時間帯における受電契約者の電力消費行動(例えば、自宅で電気機器を使用する行動)を抑えることが可能となる。この結果、デマンド全体が抑えられるようになる。
さらに、上記の電力管理方法によれば、予測対象日に受電契約者が外出する動機付けとしてイベントの開催や割引クーポンの発行を行うことにより、予測対象日のデマンドが上限量を超える時間帯の外出を促すことが可能となる。この結果、予測対象日のデマンドを効果的に下げることが可能となり、更に、イベントやクーポンの利用先となる店舗へ効率よく集客することも可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電力管理装置及び電力管理方法によれば、予測対象日のデマンドが上限量を超えると予測されたときに予測対象日の節電を要求する情報を予測対象日前に配信することで、予測対象日当日の行動や予定を決めることが容易となる等、節電要求を受けた受電契約者にとって節電対応に応じ易くなる。この結果、デマンドの調整、具体的には、計画的かつ効果的なデマンドの抑制が実現されるようになる。
具体的に説明すると、本発明の電力管理装置及び電力管理方法では、外出促進情報を通じて受電契約者の外出を促すことで、デマンドが上限量を超える時間帯における受電契約者の電力消費行動(例えば、自宅で電気機器を使用する行動)を抑えることが可能となる。この結果、デマンド全体が抑えられるようになる。特に、本発明の電力管理装置及び電力管理方法では、予測対象日に受電契約者が外出する動機付けとしてイベントの開催や割引クーポンの発行を行うことにより、予測対象日のデマンドが上限量を超える時間帯の外出を促すことが可能となる。この結果、予測対象日のデマンドを効果的に下げることが可能となり、更に、イベントやクーポンの利用先となる店舗へ効率よく集客することも可能となる。
また、節電に応じた受電契約者に対して報酬を付与することで、受電契約者のデマンド抑制に対する意識が高まり、より効果的なデマンド抑制を実現することが可能となる。
さらに、本発明の電力管理装置によれば、異常事態等の発生により予測に反してデマンドがその上限量を超えてしまう事態となった場合に、受電契約者側での協力(例えば、自家発電設備の起動や使用している電力消費機器の強制停止)を求めることで問題なく対応することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る電力管理装置及び電力管理方法について図面を参照しながら説明する。
<<電力管理システムの概要>>
先ず、本実施形態に係る電力管理装置を含む電力管理システム(以下、本システム)Sについて
図1を参照しながら説明する。
図1は、本システムSの概念図である。なお、
図1中、一本実線は電力供給線を示しており、二本実線は通信回線を示している。
【0024】
本システムSは、アグリゲータAGと契約した受電契約者が消費する総消費電力(以下、デマンドという)を管理するために構築され、
図1に示すように、アグリゲータAGが保有するサーバと、受電契約者が保有する契約者端末と、を主な構成要素とする。アグリゲータAGが保有するサーバと受電契約者の契約者端末とは、インターネット等の外部通信網GNを通じて互いに通信可能となっている。
【0025】
アグリゲータAGは、大手電力会社である一般電気事業者や特定規模電気事業者(PPS:Power Producer and Supplier)等の電力供給者SP1から供給される高圧電力を受電した後に低圧電力に変圧して複数の電力需要者に配電する業者である。上記の受電形式は、「一括受電」と呼ばれ、アグリゲータAGは、電力供給者SP1との間で高圧受電契約を結ぶ一方で、電力需要者との間で低圧受電契約を結ぶ。そして、低圧受電契約を結んだ者、すなわち、受電契約者を複数募り、これら複数の受電契約者を一つの事業所とみなし、電力供給者SP1から受電した高圧電力を低圧電力に変圧して各受電契約者に配電することで格安な電力を受電契約者に供給することが可能となる。
【0026】
なお、以下では、受電契約者が一般住宅、特に戸建住宅の居住者であるケースを例に挙げて説明する。つまり、以下のケースにおいて、戸建住宅(以下、単に住宅Hという)は、その居住者である受電契約者が管理する建物の一例に相当する。ただし、受電契約者については、住宅Hの居住者に限定されるものではなく、例えば店舗や商業施設の経営者、商業ビルの管理者等が含まれていることとしてもよい。さらに、住宅Hについては、戸建住宅に限定されず、マンション等の集合住宅であってもよい。
【0027】
また、
図1には、3件の住宅Hの居住者がアグリゲータAGと契約しているケースが図示されているが、受電契約者の人数については特に限定されるものではなく2人以上であればよい。さらに、以下の説明において、各住宅Hの所在地が属する地域、すなわち、受電契約者が住む地域については、同一地域(例えば、同一の市町村)であるケースを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく異なる地域であってもよい。
【0028】
各受電契約者の住宅Hでは、アグリゲータAGから受電した低圧電力が宅内の電力消費機器、具体的には家電機器1に供給され、各家電機器1にて消費される。なお、
図1では、図示の便宜上、各住宅Hに設置された家電機器1を1台としているが、実際には複数台の家電機器1が設定されていることとする。
【0029】
そして、宅内の家電機器での消費電力の合計が受電契約者の個別の消費電力に相当し、各受電契約者の個別の消費電力を契約者数の分だけ合算した電力、換言すると、アグリゲータAGが調達しなければならない電力がデマンドに相当する。すなわち、本実施形態においてデマンドとは、各受電契約者の個別の消費電力を合算して得られる仮想上のデマンドである。このようにアグリゲータAGが電力供給者SP1と受電契約者との間に入り、各受電契約者の個別の消費電力を合算したものをデマンドとして設定することで、一般的な低圧受電契約の下では意識され難いデマンドを各受電契約者に意識付けさせることが可能となる。
【0030】
特に、本ケースのようにすべての受電契約者が同一地域に在住している場合には、当該地域単位でのデマンド管理を目的とした所謂スマートシティが構築されており、このようなスマートシティにおいて受電契約者がデマンド意識を有することは上記地域内での電力の有効利用に繋がり、延いては社会全体の環境負荷削減に貢献することになる。
【0031】
また、本システムSでは、受電契約者の中に、電力供給設備としての自家発電設備2を保有する者(具体的には、
図1中、上から2番目の住宅Hに住む居住者)が存在する。この自家発電設備2を保有する受電契約者は、デマンドが過大となったときに自家発電設備2を起動して発電することによりアグリゲータAGからの受電量を削減する契約をアグリゲータAGとの間で交わしている。
なお、電力供給設備については、自家発電設備2に限定されるものではなく、例えば、蓄電池や電気自動車(EV:Electric Vehicle)等、住宅H内への供電を目的として住宅Hの敷地内に設置されるものであればよい。
【0032】
また、本システムSでは、受電契約者の中に、宅内ネットワークを通じて住宅H内の家電機器1を遠隔制御する機能を有する契約者端末(厳密には、後述のホームサーバ30)を保有する者(具体的には、
図1中、一番下の住宅Hに住む居住者)が存在する。この遠隔制御機能を備えた端末を保有する受電契約者は、デマンドが過大となったときに当該端末を通じて宅内の指定機器を強制停止させることによりアグリゲータAGからの受電量を削減する契約をアグリゲータAGとの間で交わしている。ここで、指定機器とは、宅内の家電機器1のうち、強制停止の対象として指定された機器のことである。なお、指定機器については、予め決められているものではあるが、適宜切り換え可能としてもよい。
【0033】
一方、アグリゲータAGは、デマンドに見合う電力を電力供給者SP1から調達するとともに、アグリゲータAGと電力供給者SP1との間の契約で予め設定された上限量である契約デマンドを超えないようにデマンドの管理をする。さらに、アグリゲータAGは、仮にデマンドが契約デマンドを超えてしまい電力供給者SP1からの供給電力だけではデマンドを賄いきれない場合に、電力を融通してもらう契約を電力供給者SP1とは異なる電力供給者(以下、他の電力供給者)SP2との間で交わしている。
なお、他の電力供給者SP2は、本来は受電契約者が住む地域を管轄地域として含んでいないが緊急時には当該地域に電力を供給する電力会社、あるいは、発電設備を有する施設や店舗若しくは建物であることとしてもよい。
【0034】
<<アグリゲータサーバの機能について>>
本システムSにおいて、アグリゲータAGは、複数の受電契約者が消費する総消費電力、すなわちデマンドが契約デマンドを超えないように電力管理を行っている。そして、アグリゲータAGは、上記の電力管理を自動化するための装置としてサーバ(以下、アグリゲータサーバ)10を保有している。このアグリゲータサーバ10が本発明の電力管理装置を構成しており、電力管理のために様々な処理を実行する。以下、アグリゲータサーバ10の機能について説明する。
【0035】
アグリゲータサーバ10は、先ず、各受電契約者の住宅Hにおいて消費される電力の大きさを示すデータ(以下、消費電力データ)を定期的に取得することでデマンドをモニタリングする機能を有する。
【0036】
具体的に説明すると、アグリゲータサーバ10は、住宅Hに設置されたホームサーバ30と定期的に通信し、インターネット等の外部通信網GNを通じてホームサーバ30から消費電力データを取得する。ここで、ホームサーバ30は、受電契約者が保有する契約者端末に相当し、住宅H内に設置された不図示の電力センサの測定データを取得し、当該測定データに基づいて消費電力データを生成する。
【0037】
そして、アグリゲータサーバ10は、以上のように各受電契約者のホームサーバ30と通信して消費電力データを受信し、各データが示す消費電力を合算することでデマンドを算出する。なお、デマンドのモニタリングについては、上記の方法に限定されるものではなく、例えば、電力供給者SP1から受電した高圧電力を低圧電力に変圧するためにアグリゲータが保有する変圧器(不図示)の直ぐ下流側に電力センサを設置し、当該電力センサの計測結果をデマンドとみなして定期的にモニタリングすることとしてもよい。
【0038】
次に、アグリゲータサーバ10は、過去のデマンドデータをデータベース化して蓄積しており、その過去のデマンドデータに基づいて将来のデマンド、具体的には、予測対象日として設定された日(例えば、数カ月後や翌日)のデマンドを予測する機能を有する。
【0039】
さらに、アグリゲータサーバ10は、予測したデマンドが契約デマンドを超える場合に、ホームサーバ30を通じて各受電契約者に対して予測対象日における消費電力を抑えること、すなわち節電を要求する。かかる内容について、
図2を参照しながら具体的に説明する。
図2は、アグリゲータサーバ10による通信処理に関する説明図であり、デマンドの予測結果が契約デマンドを超える場合の処理についての図である。
【0040】
アグリゲータサーバ10は、予測対象日におけるデマンドの予測結果が契約デマンドを超えると、当該予測結果を解析し、予測対象日の中でデマンドが契約デマンドを超える時間帯(以下、電力超過時間)を特定する。その後、アグリゲータサーバ10は、予測対象日の電力超過時間において消費する電力を抑えることを要求するための情報である節電要求情報を生成する。そして、アグリゲータサーバ10は、
図2に示すように、ホームサーバ30と通信して節電要求情報をホームサーバ30に向けて配信する。
【0041】
外部通信網GNを介して節電要求情報を受信したホームサーバ30側では、同ホームサーバ30に接続された不図示のモニタに、節電要求情報が示す節電要求の内容(文字列や画像)が表示され、各受電契約者は、当該内容を見て節電要求に応じるかどうかを検討する。そして、節電要求に応じることを決めた受電契約者は、ホームサーバ30を通じて節電要求に応じる旨を示す応答情報をアグリゲータサーバ10に向けて配信する。
【0042】
一方、アグリゲータサーバ10は、
図2に示すように、外部通信網GNを介してホームサーバ30から応答情報を受信する。かかる応答情報の配信・受信により、節電要求に応じる旨を回答した受電契約者とアグリゲータAGとの間で予測実施日に節電を実施する契約(以下、節電実施契約)が交わされることになる。そして、アグリゲータサーバ10は、受信した応答情報に基づいて、節電実施契約を交わした受電契約者を特定するようになる。
【0043】
なお、本実施形態では、受電契約者に対して節電を要求する都度に、換言すると、節電要求情報が配信される度に節電実施契約を交わすことになっている。すなわち、本実施形態において、節電実施契約は、節電要求単位で行われるものであり、受電契約者は、節電要求毎に節電に応じるか否かを決定することとなる。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、節電要求がある場合に当該要求に応じるか否かの契約を低圧受電契約時に合せて実施し、それ以降には原則として契約内容を変更しないこととしてもよい。
【0044】
そして、アグリゲータサーバ10は、
図2に示すように、節電要求に対して応じる旨を回答した受電契約者のホームサーバ30と通信し、予測対象日の電力超過時間に外出を促すための情報である外出促進情報を配信する。外部通信網GNを介してアグリゲータサーバ10から外出促進情報を受信したホームサーバ30側では、同ホームサーバ30に接続された不図示のモニタに、外出促進情報が示す内容(文字列や画像)が表示され、当該内容を通じて、予測対象日の電力超過時間に外出するように受電契約者の意識を刺激することが可能となる。
【0045】
以上のように、本実施形態では、外出促進情報を通じて受電契約者の外出を促すことで、デマンドが上限量を超える時間帯における受電契約者の電力消費行動(例えば、自宅で電気機器を使用する行動)を抑え、結果としてデマンド全体を抑えるようにしている。このようにアグリゲータサーバ10によるデマンド調整により、受電契約者が住む地域のデマンドをコントロールし、最終的には社会全体のデマンドを調整することが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態では、外出促進情報として、予測対象日の電力超過時間に開催されるイベントの告知情報(イベント告知情報)、及び、予測対象日に所定の店舗で利用可能な割引クーポンの表示情報(クーポン表示情報)が配信されることになっている。ここで、イベントとは、祭り、展示会、博覧会、骨董市、スポーツの大会等の行事や催し物を意味する。また、割引クーポンが利用可能な店舗は、ショッピングセンター、デパート、レストラン、映画館や遊技場等の娯楽施設等が該当する。
【0047】
以上のように本実施形態では、予測対象日に受電契約者が外出する動機付けとしてイベントの開催や割引クーポンの発行を行うこととしている。これにより、予測対象日の電力超過時間に外出することを効果的に促すことが可能となり、この結果、予測対象日のデマンドを効果的に下げることが可能となる。
【0048】
一方、外出促進情報の配信により、イベントやクーポンの利用先となる店舗へ効率よく集客することも可能となる。つまり、本システムSでは、受電契約者に節電してもらう日時に合わせてイベント開催やクーポン発行等のサービスを提供することで、節電とサービス提供双方の連携を図り、効果的なデマンド抑制及びサービス提供を実現し、双方を実施することの相乗効果を得ることが可能となる。
【0049】
なお、イベント開催やクーポン発行については、デマンド予測より前の時点で既に決定されていたものの他、デマンド予測結果に応じて新規に決定されるものも含まれる。すなわち、本実施形態では、予測対象日のデマンドが契約デマンドを超えると予測されたときに、イベント会社にイベント開催を依頼し、クーポンを発行する店舗に対してクーポンの発行を依頼することがある。かかる場合には、個々のサービス(イベント開催やクーポン発行)をデマンド調整とリンクさせて実施するので、上記のサービスを単独で実施する場合に比較して、デマンド抑制効果及びサービスの運営効率や質を向上させるとともに、サービス運営に掛かるコストを抑えることが可能となる。
【0050】
ところで、上述したデマンド予測は、当然ながら予測対象日の日前に実施される。さらに、本実施形態では、節電要求情報や外出促進情報についても予測対象日の日前に配信されることとなっている。このように予測対象日に節電を要求するための情報を予測対象日前に配信することで、当該要求を受けた受電契約者は、節電対応のために予測対象日当日の行動や予定を決めることが容易となる。さらに、本実施形態では、予測対象日の中でデマンドが契約デマンドを超える時間帯、すなわち、電力超過時間を特定した上で節電要求情報を配信するので、特定した電力超過時間内での節電を受電契約者に対して要求することになる。これにより、節電を実施する必要がある時間帯が明確となるため、受電契約者にとって予測対象日当日の行動や予定をより決め易くなる。以上の結果、アグリゲータAGは、予測対象日のデマンドが契約デマンドを超えてしまうのを計画的かつ効果的に抑制することが可能となり、延いては社会全体のデマンド抑制に寄与することとなる。
【0051】
また、アグリゲータAGが複数の受電契約者に対して「一括受電サービス」を提供しているケースでは、通常、上限量を超えないようにデマンド調整がアグリゲータAGによってなされる。かかる状況では、節電要求を節電実行日の前日までに配信してデマンドを計画的かつ効果的に抑制する効果がより有意義に発揮されるようになる。さらに、デマンドを効果的に抑制することが可能となれば、電力供給者SP1にとっても有利となる。
【0052】
以上までに説明してきたように、アグリゲータサーバ10は、予測対象日のデマンドを予測する処理(以下、デマンド予測)と、デマンドの予測結果が契約デマンドを超えた場合に受電契約者に節電を要求する処理(以下、予測デマンド対応)を実行する。これにより、予測対象日当日のデマンドが契約デマンドを超えてしまうのを未然に防ぐことが可能となる。さらに、アグリゲータサーバ10は、異常事態等の発生により予測対象日当日の実際のデマンドが予測に反して契約デマンドを超えそうな場合にデマンドを抑えるための緊急対応措置(以下、緊急対応)を講じることとしている。
【0053】
以下、緊急対応について
図3乃至5を参照しながら説明する。
図3乃至5は、アグリゲータサーバ10による通信処理に関する説明図であり、実際のデマンドが契約デマンドを超える緊急時の処理についての図である。
アグリゲータサーバ10は、前述したように、各受電契約者のホームサーバ30から同受電契約者の住宅Hにおける消費電力を示す消費電力データを定期的に取得する。これにより、アグリゲータサーバ10は、デマンドの現在値をモニタリングする。そして、アグリゲータサーバ10は、デマンドの現在値が契約デマンドを超えていると判断した時、緊急対応として、
図3に示す制御処理、及び、
図4に示す停止要求処理のうち、少なくとも一方を実施する。
【0054】
制御処理について説明すると、アグリゲータサーバ10は、デマンドの現在値が契約デマンドを超えていると判断した際、
図3に示すように、自家発電設備2を保有する受電契約者のホームサーバ30に向けて制御情報を配信する。制御情報とは、自家発電設備2を保有する受電契約者のホームサーバ30を通じて自家発電設備2を起動させるための情報である。制御情報を受信したホームサーバ30は、同制御情報に従って自家発電設備2を起動すべく、自家発電設備2に対して起動信号を出力する。この信号を受信した自家発電設備2は、起動して発電を開始し、住宅H内に供給するようになる。これにより、当該自家発電設備2が設置された住宅Hに電力が供給され、この結果、アグリゲータAGからの受電量(買電量)が削減されるようになる。
【0055】
停止要求処理について説明すると、アグリゲータサーバ10は、デマンドの現在値が契約デマンドを超えていると判断した際、
図4に示すように、受電契約者のホームサーバ30のうち、遠隔制御機能を有するホームサーバ30に向けて停止要求情報を配信する。停止要求情報とは、遠隔制御機能を有するホームサーバ30に対して、同ホームサーバ30が設置された住宅H内の家電機器1の中で指定された指定機器を強制停止させる制御を要求するための情報である。停止要求情報を受信したホームサーバ30は、同停止要求情報に従って指定機器を停止すべく、指定機器に対して停止信号を出力する。この信号を受信した指定機器は、強制的に停止される。これにより、指定機器の消費分だけ住宅Hでの消費電力が削減されるようになる。
【0056】
さらに、アグリゲータサーバ10は、デマンドの現在値が契約デマンドを超えた際に上述の制御処理や停止要求処理を実行しても尚デマンドが契約デマンドを下回らない場合に、他の電力供給者SP2が保有する電力供給者側サーバ40に向けて融通要求情報を配信する。融通要求情報とは、電力供給者側サーバ40に対して、他の電力供給者SP2の送電設備3においてアグリゲータAGへの送電を開始させる電力融通制御を要求するための情報である。融通要求情報を受信した電力供給者側サーバ40は、同融通要求情報に従って電力融通処理を実行し、送電設備3に対して送電開始信号を出力する。この信号を受信した送電設備3は、アグリゲータAGに向けて高圧電力を送電するようになる。
【0057】
以上のように、アグリゲータサーバ10は、予測対象日におけるデマンドの予測結果が契約デマンドを超える場合のみならず、予測対象日当日の実際のデマンドが契約デマンドを超えた場合にも対応することで包括的なデマンド調整を実現している。さらに、本実施形態に係るアグリゲータサーバ10は、デマンドを効果的に削減するための付属機能として、デマンド調整に協力した受電契約者に対して報酬ポイントを付与し当該報酬ポイントを受電契約者毎に管理する機能を有する。
【0058】
より詳しく説明すると、本システムSにおいて、アグリゲータAGは、契約デマンドを超えないようにデマンドを調整すると、そのインセンティブとしてデマンドの削減度合いに応じた金額やギフトポイントを電力供給者SP1等から受け取る。また、アグリゲータAGは、電力供給者SP1から受け取ったインセンティブを、デマンド調整に協力した受電契約者に対して報酬ポイントとして振り分けることとしている。ここで、報酬ポイントは、換金性を有するポイントや商品やサービスと引き換え可能なギフトポイント等が該当する。また、デマンド調整に協力した受電契約者とは、予測対象日当日にアグリゲータAGからの節電要求に応じた者、緊急対応として指定機器を強制停止したホームサーバ30の保有者である。
【0059】
以上のように、アグリゲータAGが電力供給者SP1から受け取ったインセンティブをデマンド調整に協力した受電契約者に報酬ポイントとして分配することで、受電契約者の電力削減への更に意欲を高め、以てデマンド調整をより効率的に進めることが可能となる。
【0060】
<<アグリゲータサーバの構成>>
次に、アグリゲータサーバ10の構成について
図6を参照しながら説明する。
図6は、アグリゲータサーバ10についてのハードウェア構成例を示す図である。
アグリゲータサーバ10は、
図6に示すように、CPU10aと、メモリ10bと、ハードディスクドライブ(
図6ではHDDと表記)10cと、入力装置10dと、出力装置10eと、通信用インタフェース(
図6では通信用I/Fと表記)10fとを備えており、これらは、バスを介して互いに接続されている。また、アグリゲータサーバ10には、上述した機能を発揮させるためのプログラムがインストールされている。
【0061】
アグリゲータサーバ10のハードウェア構成については上述の通りであるが、以下、
図7を参照しながらアグリゲータサーバ10の構成を機能面から説明することとする。
図7は、アグリゲータサーバ10の構成を機能面から示した図である。
【0062】
アグリゲータサーバ10は、
図7に示すように、情報受信部11、電力データ取得部12、消費電力予測部13、節電要求情報生成部14、外出促進情報生成部15、制御情報生成部16、停止要求情報生成部17、融通要求情報生成部18、情報配信部19、ポイント付与部20、ポイント管理部21、及び情報記憶部22を有する。これらは、アグリゲータサーバ10が実行する各種の情報処理を担うものであり、CPU10aとメモリ10bとハードディスクドライブ10cと入力装置10dと出力装置10eと通信用インタフェース10fとインストールされたプログラムとが協働することによって構成されている。
【0063】
以下、上述したアグリゲータサーバ10の機能部11〜22の各々について説明する。
情報受信部11は、アグリゲータサーバ10と通信している端末から情報を受信してくるものである。例えば、情報受信部11は、住宅Hにおける消費電力の大きさを示す消費電力データや、節電要求情報が示す節電要求に対する応答情報を各ホームサーバ30から取得する。
【0064】
電力データ取得部12は、デマンドの現在値、換言すると、アグリゲータAGと契約した複数の受電契約者が消費する総消費電力の現在量を示す電力データを取得するものである。本実施形態の場合、デマンドの現在値は、前述したように、情報受信部11が各ホームサーバ30から取得した消費電力データから受電契約者別の消費電力を求め、これを契約者数の分だけ合算することにより算出される。かかる手順により、電力データ取得部12は、デマンドの現在値を示す電力データ(以下、デマンドデータ)を取得する。
【0065】
取得されたデマンドデータは、
図8に図示したデータファイルとして情報記憶部22に記憶され、記憶された過去のデマンドデータは、蓄積されてデータベースを蓄積する。
図8は、アグリゲータサーバ10に記憶された情報のうち、デマンドに関する情報、より具体的にはデマンドデータを示す図である。
なお、本実施形態において、各日時のデマンドは、
図8に示す通り、環境値T1、T2、T3とセットで記憶されている。ここで、環境値T1、T2、T3とは、受電契約者が住む地域の環境特性を示す指標値であって、デマンドに影響を及ぼし得る値であり、例えば、気温、湿度、天候に対して割り当てた数値等が挙げられる。なお、環境値T1、T2、T3については上記の種類や数に限定されるものではなく、種類や数が多いほど望ましい。
【0066】
消費電力予測部13は、予め設定された予測対象日のデマンドを過去のデマンドデータに基づいて予測する。具体的に説明すると、消費電力予測部13は、過去のデマンドデータから環境値T1、T2、T3及び消費電力の相関関係を示す近似式を算出する。そして、天気予報等により予測対象日当日の環境値T1、T2、T3(厳密には、環境値T1、T2、T3の予測値)が入手可能になると、消費電力予測部13は、上記の近似式を用いて予測対象日のデマンドを算出する。
【0067】
なお、上記の近似式は、多変量解析による手法に用いて特定され、具体的には環境値T1、T2、T3のデータが予測対象日のデータと近いデータを過去のデマンドデータの中から抽出し、抽出したデータと標準的なデータとに基づいて、環境値T1、T2、T3とデマンドとの相関関係を既存の手法で関数化することで得られる。また、上記の近似式は、デマンドデータの追加に伴って更新され、具体的には、ニューラルネットワークによる学習、既存の学習アルゴリズム、帰納学習等を適用することで更新される。同様に、データ抽出についてもデマンドデータの追加に応じて再実施される。
そして、消費電力予測部13により予測された予測対象日のデマンドを示す予測結果(電力予測結果に相当)は、情報記憶部22に記憶される。
【0068】
節電要求情報生成部14は、消費電力予測部13により予測された予測対象日のデマンドが契約デマンドを超えた場合に節電要求情報を生成する。より具体的に説明すると、予測対象日のデマンドの予測結果が情報記憶部22に記憶されると、節電要求情報生成部14は、予測されたデマンドと契約デマンドとを対比する。そして、節電要求情報生成部14は、予測された予測対象日のデマンドが契約デマンドを超えていると判断すると、予測結果を解析して、予測対象日のうち、デマンドが契約デマンドを超える時間帯、すなわち、電力超過時間を特定する。その上で、節電要求情報生成部14は、特定した電力超過時間における消費電力を抑えることを要求するための節電要求情報を生成する。
【0069】
また、本実施形態において、節電要求情報生成部14は、受電契約者別に節電要求情報を生成する。分かり易く説明すると、節電要求情報には、各受電契約者に要求する節電量の目標量を示す情報が組み込まれており、節電要求情報生成部14は、各受電契約者の電力消費状況を考慮した上で上記の目標量を受電契約者別に決定する。
【0070】
より詳しく説明すると、節電要求情報生成部14は、節電要求情報を生成するにあたり、情報記憶部22に記憶された契約者に関する情報(以下、契約者情報)を読み出す。契約者情報は、
図9に図示したように、1日分の消費電力量の平均値(平均消費電力量)、自家発電設備2の有無、保有するホームサーバ30の遠隔制御機能の有無、節電実施契約の有無、及び、報酬ポイントを受電契約者別に収録したものである。
図9は、アグリゲータサーバ10に記憶された情報のうち、契約者情報を示す図である。
【0071】
そして、節電要求情報生成部14は、契約者情報が示す内容のうち、各受電契約者の平均消費電力量を参照し、当該平均消費電力の大きさに応じた節電量の目標量を受電契約者別に割り出す。詳しく説明すると、節電要求情報生成部14は、予測対象日のデマンドの予測結果と契約デマンドとの差分に相当する超過電力を算出し、当該超過電力を平均消費電力量の大きさに従って各受電契約者に配分する形で目標量を決定する。その後、節電要求情報生成部14は、特定した電力超過時間と割り出した節電量の目標量とを示す節電要求情報を受電契約者別に生成する。生成された節電要求情報は、情報記憶部22に記憶された後に情報配信部19によって読み出される。
【0072】
外出促進情報生成部15は、節電要求情報生成部14による節電要求情報の生成に付随する形で外出促進情報を生成する。具体的に説明すると、外出促進情報生成部15は、節電要求情報生成部14が特定した電力超過時間を示す情報を取得する一方で、
図10に示すイベント関連情報やクーポン関連情報を情報記憶部22から読み出す。
図10は、アグリゲータサーバ10に記憶された情報のうち、イベントや割引クーポンに関する情報を示す図である。
【0073】
イベント関連情報について説明すると、
図10に示すように各イベントの開催日、開催時間及び開催場所等を収録したテーブル情報であり、例えば、アグリゲータサーバ10とイベント開催者が有する通信端末(不図示)とが通信することで入手可能である。なお、イベント関連情報に収録される事項については、上記以外の事項を含むこととしてもよい。
クーポン関連情報について説明すると、
図10に示すように各割引クーポンの利用日、利用場所及び入手先であるURL情報を収録したテーブル情報であり、例えば、アグリゲータサーバ10とクーポン発行元である店舗の経営会社が保有する通信端末(不図示)とが通信することで入手可能である。なお、クーポン関連情報については、上記以外の事項を含むこととしてもよい。
【0074】
外出促進情報生成部15は、上記のイベント関連情報及びクーポン関連情報のうち、開催日時や利用日時が予測対象日の電力超過時間と重複する情報を情報記憶部22から読み出し、読み出した情報が示す内容を盛り込んだ外出促進情報を生成する。具体的に説明すると、外出促進情報生成部15は、イベント関連情報を読み出して外出促進情報を生成するときは、予測対象日の電力超過時間に開催されるイベントの告知情報、具体的には、当該イベントの開催時間及び開催場所を示すイベント告知情報を生成する。一方で、外出促進情報生成部15は、クーポン関連情報を読み出して外出促進情報を生成するときは、予測対象日の電力超過時間に利用可能な割引クーポンの表示情報、具体的には、割引クーポンのダウンロードサイトのURL情報を組み込んだクーポン表示情報を生成する。
【0075】
さらに、本実施形態では、外出促進情報生成部15は、イベント告知情報及びクーポン表示情報のいずれかを生成し、いずれの外出促進情報を生成するかについては、予測対象日のデマンドの予測を行った日(以下、予測実行日)と予測対象日との関係に応じて決まることになっている。
【0076】
より詳しく説明すると、予測実行日が予測対象日の2日以上前であれば、イベント告知情報が生成されることになっており、予測実行日から予測対象日までの期間が2日未満であれば、クーポン表示情報が生成されることとなっている。これは、予測対象日に開催されるイベントには、予測実行日の段階では企画されておらず予測実行日後に開催が決定するもの(例えば、予測対象日のデマンドが契約デマンドを超えるという予測を発端として開催が決定されるもの)が存在するため、こうした類のイベントの告知情報を提供するには、少なくとも2日以上の期間を確保しておく必要となることを考慮したものである。
【0077】
なお、本実施形態では、前述したように、イベント告知情報及びクーポン表示情報のいずれかを生成することとしたが、これに限定されるものではなく、上記2つの外出促進情報の双方を生成することとしてもよい。また、本実施形態では、予測実行日から予測対象日までの期間が2日に達するか否かで生成する外出促進情報の種類を切り替えることとしたが、かかる切り換え期間については2日以上の日数であれば任意に設定することが可能である。
【0078】
制御情報生成部16は、デマンドの現在値が予め設定された管理基準量を超えたときに、自家発電設備2を保有する受電契約者のホームサーバ30を通じて自家発電設備2を起動させるための制御情報を生成する。ここで、本実施形態において管理基準量とは、契約デマンド、つまり、アグリゲータAGと電力供給者SP1との間の契約で設定されたデマンドの上限量である。
【0079】
停止要求情報生成部17は、デマンドの現在値が予め設定された管理基準量、すなわち、契約デマンドを超えたときに、遠隔制御機能を有するホームサーバ30に対して住宅H内の指定機器を強制停止させる制御を要求するための停止要求情報を生成する。
融通要求情報生成部18は、前述した制御処理や停止要求処理を実行しても尚デマンドの現在値が契約デマンドを下回らない場合に、他の電力供給者SP2が保有する電力供給者側サーバ40に対して電力融通制御を要求するための融通要求情報を生成する。
【0080】
なお、制御情報生成部16、停止要求情報生成部17及び融通要求情報生成部18の各々によって生成された情報については、情報記憶部22に記憶された後に情報配信部19によって読み出される。
情報配信部19は、デマンド調整のためにホームサーバ30等に向けて配信すべき情報を情報記憶部22から読み出して配信する。換言すると、情報記憶部22は、情報配信部19が配信する情報を記憶している。
【0081】
具体的に説明すると、消費電力予測部13により予測された予測対象日のデマンドが契約デマンドを超えた場合、アグリゲータサーバ10では予測デマンド対応が実行され、この予測デマンド対応において、情報配信部19は、節電要求情報及び外出促進情報を情報記憶部22から読み出してホームサーバ30に向けて配信する。より詳しく説明すると、情報記憶部22には受電契約者別に生成された節電要求情報が記憶されており、情報配信部19は、各節電要求情報を情報記憶部22から読み出して、対応する受電契約者のホームサーバ30に向けて配信する。なお、本実施形態において、情報配信部19は、予測対象日の日前、厳密には、予測実行日に節電要求情報を配信する。
【0082】
節電要求情報の配信後、情報配信部19は、情報記憶部22に記憶された
図9に図示の契約者情報を読み出し、節電実施契約有りの受電契約者を特定する。ここで、節電実施契約有りの受電契約者とは、配信した節電要求情報が示す節電要求に対して応じる旨の回答をした受電契約者である。なお、契約者情報中の節電実施契約の有無については、上記の節電要求に対する応答情報を情報受信部11が各ホームサーバ30から受信すると、当該応答情報が示す内容を反映して登録・更新されることとなっている。
【0083】
そして、情報配信部19は、節電実施契約有りの受電契約者を特定した後、外出促進情報を情報記憶部22から読み出し、特定した受電契約者のホームサーバ30に向けて配信する。なお、本実施形態において、情報配信部19は、予測対象日の日前に外出促進情報を配信する。
【0084】
一方、デマンドの現在値が契約デマンドを超えた場合、アグリゲータサーバ10では緊急対応が実行され、この緊急対応において、情報配信部19は、制御情報や停止要求情報を情報記憶部22から読み出して、対応する受電契約者のホームサーバ30に向けて配信する。より詳しく説明すると、情報配信部19は、制御情報や停止要求情報が情報記憶部22に記憶されると、これをトリガーとして、情報記憶部22に記憶された契約者情報を読み出し、自家発電設備2を有する受電契約者や遠隔制御機能を備えたホームサーバ30を保有する受電契約者を特定する。なお、契約情報中の自家発電設備の有無、及び、ホームサーバ30の遠隔制御機能の有無については、例えば、低圧受電契約の契約書に記入され、当該記入事項がアグリゲータサーバ10に入力されることで登録される。
【0085】
そして、情報配信部19は、自家発電設備2を有する受電契約者を特定した場合には、制御情報を情報記憶部22から読み出し、特定した受電契約者のホームサーバ30に向けて配信する。同様に、情報配信部19は、遠隔制御機能を備えたホームサーバ30を保有する受電契約者を特定した場合には、停止要求情報を情報記憶部22から読み出し、特定した受電契約者のホームサーバ30に向けて配信する。
【0086】
さらに、制御情報や停止要求情報が配信された後にも依然としてデマンドの現在値が契約デマンドを超えている場合、情報配信部19は、融通要求情報を情報記憶部22から読み出し、他の電力供給者SP2が保有する電力供給者側サーバ40に向けて配信する。
【0087】
ポイント付与部20は、デマンド調整に協力した受電契約者に対して、消費電力削減度合いに応じた報酬ポイントを付与する。具体的に説明すると、ポイント付与部20は、予測デマンド対応において配信した節電要求情報が示す節電要求に応じて節電した受電契約者に対して、その節電度合いに応じた報酬ポイントを付与する。
【0088】
より詳しく説明すると、前述したように、節電要求情報には受電契約者毎に設定された節電量の目標量が示されている。一方で、情報受信部11は、住宅Hにおける消費電力の大きさを示す消費電力データを各ホームサーバ30から定期的に取得している。ポイント付与部20は、情報受信部11が受信した消費電力データに基づいて、節電要求情報に示された節電量の目標量が達成されたか否かを各受電契約者(厳密には、節電契約有りの受電契約者)について判定し、上記目標量を達成している受電契約者に対して所定の報酬ポイントを付与する。
【0089】
なお、ポイントの付与方法については、上述した内容に限定されるものではなく、他の方法、例えば、設定された目標量に対する実際の節電量の割合(すなわち、節電の達成度合い)を算出し、当該割合に応じた報酬ポイントを付与することとしてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、停止要求処理により住宅H内の家電機器1の中の指定機器を強制的に停止された受電契約者、すなわち、遠隔制御機能を備えアグリゲータサーバ10から停止要求情報を受信したホームサーバ30を保有した受電契約者に対しては、予測デマンド対応で得られるポイントよりも多い報酬ポイントが付与されることとなっている。
【0091】
ポイント管理部21は、ポイント付与部20が付与した報酬ポイントを記憶して受電契約者別に管理する。より具体的に説明すると、受電契約者別の報酬ポイントは、
図9に示すように契約者情報として情報記憶部22に記憶されている。そして、ポイント付与部20による付与やポイント利用等により報酬ポイントの増減があったときには、ポイント管理部21が、契約者情報中、増減があった報酬ポイントを示す情報(以下、管理ポイント情報)を変更後のポイントになるように更新する。
【0092】
<<デマンド調整方法について>>
以下では、上述した構成を有するアグリゲータサーバ10を用いてデマンドを調整する方法について説明する。
本実施形態に係るデマンド調整方法は、本発明の電力管理方法に相当し、アグリゲータサーバ10がホームサーバ30を含む通信端末と通信することにより実現される。そして、アグリゲータサーバ10がデマンド調整のために実行する処理の流れは、本実施形態に係る電力管理方法の手順を示し、上記処理中の各工程は、当該電力管理方法を構成するものである。
【0093】
アグリゲータサーバ10がデマンド調整のために実行する処理としては、前述した予測デマンド対応及び緊急対応が挙げられる。また、その付属処理として報酬ポイントの付与処理が挙げられる。以下、各処理について詳しく説明する。
【0094】
先ず、予測デマンド対応について
図11を参照しながら説明する。
図11は、アグリゲータサーバ10による予測デマンド対応の流れを示す図である。
予測デマンド対応は、
図11に示すように、アグリゲータサーバ10によるデマンド予測から始まる。より詳しく説明すると、デマンド予測をする上で必要となる予測対象日に関する情報、具体的には、予測対象日の環境値T1、T2、T3を示す情報が揃ったかどうかを確認する(S001)。そして、当該情報が揃っている場合に、アグリゲータサーバ10の消費電力予測部13が過去のデマンドデータと上記の情報とに基づいて予測対象日のデマンドを予測する(S002)。
【0095】
デマンド予測の終了後、予測結果を示す情報が情報記憶部22に記憶されるようになり、これをトリガーとしてアグリゲータサーバ10の節電要求情報生成部14が予測したデマンドと契約デマンドとを対比し、その大小関係を特定する(S003)。このとき、予測したデマンドが契約デマンドに達していない場合(S003でNo)、予測デマンド対応は、その時点で終了する。
【0096】
一方、予測したデマンドが契約デマンドを超える場合(S003でYes)、節電要求情報生成部14は、予測結果を解析して予測対象日中の電力超過時間を特定する(S004)。その後、予測対象日の電力超過時間に節電を要求する節電要求情報が節電要求情報生成部14により生成され、情報記憶部22に一時的に記憶されてから情報配信部19により読み出されて各受電契約者のホームサーバ30に向けて配信される(S005)。ここで、本実施形態では、節電要求情報の配信日が予測実行日、すなわち、予測対象日の日前となっている。
【0097】
なお、本実施形態では、前述したように、受電契約者別に節電要求情報が生成され、各節電要求情報には、対応する受電契約者の電力消費状況を加味して設定された節電量の目標量を示す情報が組み込まれている。
【0098】
節電要求情報を受信したホームサーバ30側では、同節電要求情報が示す節電要求を確認した受電契約者が当該節電要求に応じるかどうかを検討し、その検討結果に応じた入力操作が受電契約者により行われる。ホームサーバ30は、当該入力操作を受け付けると、上記の検討結果を示す応答情報をアグリゲータサーバ10に向けて配信する。アグリゲータサーバ10の情報受信部11は、外部通信網GNを通じて応答情報を各ホームサーバ30から受信する(S006)。情報受信部11は、受信した応答情報を解析し、各受電契約者について節電要求に応じするか否か(換言すると、節電実施契約を交わしたか否か)を特定し、その特定結果を契約者情報として登録する。
【0099】
その後、アグリゲータサーバ10の外出促進情報生成部15が、予測実行日から予測対象日までの期間を特定する(S007)。このとき、予測実行日から予測対象日までの期間が2日以上である場合には(S007でYes)、外出促進情報生成部15が情報記憶部22に記憶されたイベント関連情報のうち、予測対象日の電力超過時間に開催されるイベントの関連情報を読み出し、当該イベントの開催日時及び開催場所等を示す外出促進情報であるイベント告知情報を生成する。生成されたイベント告知情報は、情報記憶部22に一時的に記憶された後に情報配信部19により読み出され、節電要求に応じる旨を回答した受電契約者(すなわち、節電実施契約有りの受電契約者)のホームサーバ30に向けて配信される(S008)。なお、本実施形態において、イベント告知情報の配信日は、予測対象日の日前となっている。
【0100】
一方、予測実行日から予測対象日までの期間が2日未満である場合には(S007でNo)、外出促進情報生成部15が情報記憶部22に記憶されたクーポン関連情報のうち、予測対象日の電力超過時間に利用可能な割引クーポンの関連情報を読み出し、当該イベントのダウンロードページのURL情報等を示す外出促進情報であるクーポン表示情報を生成する。生成されたクーポン表示情報は、情報記憶部22に一時的に記憶された後に情報配信部19により読み出され、節電要求に応じる旨を回答した受電契約者(すなわち、節電実施契約有りの受電契約者)のホームサーバ30に向けて配信される。なお、本実施形態において、クーポン表示情報の配信日は、予測対象日の日前となっている。
【0101】
イベント告知情報又はクーポン表示情報を受信したホームサーバ30側では、当該情報が示す文字列や画像が不図示のモニタに表示され、受電契約者はモニタの表示内容を通じて開催日時等を含むイベントの内容、若しくは、利用日時や利用店舗等を含む割引クーポンの内容を知るようになる。
以上までの工程が完了した時点で、予測デマンド対応が終了する。
【0102】
次に、緊急対応について
図12を参照しながら説明する。
図12は、アグリゲータサーバ10による緊急対応の流れを示す図である。
緊急対応は、アグリゲータサーバ10の電力データ取得部12により取得されたデマンドデータが示すデマンドの現在値が契約デマンドを超えたことに端を発して実行される。緊急対応では、先ず、アグリゲータサーバ10の情報配信部19が、情報記憶部22に記憶された契約者情報を読み出し、自家発電設備2を有する受電契約者、及び、遠隔制御機能を備えたホームサーバ30を保有する受電契約者を特定する(S021)。その後、自家発電設備2を保有する受電契約者のホームサーバ30を通じて自家発電設備2を起動させるための制御情報が制御情報生成部16により生成される。生成された制御情報は、情報記憶部22に一時的に記憶され、その後に情報配信部19により読み出されて上記ホームサーバ30に向けて配信される(S022)。
【0103】
制御情報を受信したホームサーバ30は、自家発電設備2に対して起動信号を出力し、この結果、自家発電設備2が起動して発電を開始する。これにより、当該自家発電設備2が設置された住宅HではアグリゲータAGからの受電量(買電量)が減少する。
【0104】
以上のようにアグリゲータAGからの受電量が削減することにより、デマンドの現在値が契約デマンド以下まで下がった場合(S0023でYes)、緊急対応が完了することになる。他方、依然としてデマンドの現在値が契約デマンドを超えた状態にある場合(S023でNo)、遠隔制御機能を有するホームサーバ30に対して住宅H内の指定機器を強制停止させる制御を要求するための停止要求情報が停止要求情報生成部17により生成される。生成された停止要求情報は、情報記憶部22に一時的に記憶され、その後に情報配信部19により読み出されて上記ホームサーバ30に向けて配信される(S024)。
【0105】
停止要求情報を受信したホームサーバ30は、宅内ネットワークを通じて停止信号を宅内の家電機器1中の指定機器に対して出力し、この結果、指定機器が強制停止するようになる。これにより、指定機器が使用されていた住宅Hでは消費電力が減少する。
【0106】
以上のように指定機器の強制停止によって消費電力が削減したことにより、デマンドの現在値が契約デマンド以下まで下がった場合(S025でYes)、緊急対応が完了することになる。他方、以上までの対応を実施しても尚デマンドの現在値が契約デマンドを超えた状態にある場合(S025でNo)、他の電力供給者SP2が保有する電力供給者側サーバ40に対して電力融通制御を要求するための融通要求情報が融通要求情報生成部18により生成される。生成された融通要求情報は、情報記憶部22に一時的に記憶され、その後に情報配信部19により読み出されて上記電力供給者側サーバ40に向けて配信される(S026)。
【0107】
融通要求情報を受信した電力供給者側サーバ40は、他の電力供給者SP2が保有する送電設備3に対して送電開始信号を出力し、この結果、送電設備3がアグリゲータAGへの送電を開始し、デマンドの現在値と契約デマンドとの差分に相当する超過電力がアグリゲータAGに供給されるようになる。
そして、以上までに説明した一連の工程が完了した時点で、緊急対応が完了する。
【0108】
最後に、上述した予測デマンド対応や緊急対応に付随する処理であるポイント付与処理について
図13を参照しながら説明する。
図13は、アグリゲータサーバ10によるポイント付与処理の流れを示す図である。
ポイント付与処理は、予測デマンド対応や緊急対応が終了した後に実行され、これらの対応の際にデマンド調整に協力してくれた受電契約者(以下、協力者)を特定するところから始まる(S041)。
【0109】
具体的に説明すると、予測デマンド対応が終了した場合には、アグリゲータサーバ10のポイント付与部20が情報記憶部22に記憶された契約者情報を読み出して、節電実施契約有りの受電契約者を特定する。一方、緊急対応が終了した場合には、ポイント付与部が契約者情報を読み出して、遠隔制御機能を備えたホームサーバ30を保有する受電契約者を特定する。以上のように特定された受電契約者(すなわち、節電実施契約有りの受電契約者及び遠隔制御機能を備えたホームサーバ30を保有する受電契約者)が協力者に該当する。なお、緊急対応時の協力者には、自家発電設備2を保有する受電契約者を含めることとしてもよい。
【0110】
その後、ポイント付与部20は、各協力者について節電目標を達したか否かを確認し(S042)、目標を達している場合には報酬ポイントを付与する(S043)。具体的に説明すると、節電実施契約有りの受電契約者については、節電要求情報に示された節電量の目標量に実際の節電量が達しているか否かを判定し、上記目標量を達成している受電契約者に対して所定の報酬ポイントを付与する。また、遠隔制御機能を備えたホームサーバ30を保有する受電契約者については、アグリゲータサーバ10から停止要求情報を受信したか否かを判定し、受信した受電契約者に対して所定の報酬ポイントを付与する。
【0111】
ポイント付与部20による報酬ポイントの付与後、アグリゲータサーバ10のポイント管理部21が、情報記憶部22に記憶された契約者情報のうち、報酬ポイントが付与された受電契約者の報酬ポイントを示す管理ポイント情報を、ポイントが付与された分だけ増えるように更新する(S044)。以上の工程S042〜S044は、すべての協力者について繰り返し実行され、すべての協力者について終了した時点でポイント付与処理が完了する。
【0112】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態では、本発明の電力管理装置及び電力管理方法について、一例を挙げて説明した。ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0113】
また、上記の実施形態では、受電契約者の外出を促すためにイベントの開催や割引クーポンの発行を行うこととした。ただし、受電契約者の外出を促す方策については、上述したケースに限定されるものではなく他の方策も考えられ、例えば、デパートやショップでの安売りサービス(タイムセール)の実施、受電契約者が在住する地域で乗り合いタクシーや乗り合いバスを運行する等の無料運送サービスの実施が挙げられる。
【0114】
また、上記の実施形態では、デマンド調整のインセンティブを報酬ポイントとしてデマンド調整に協力してくれた受電契約者に振り分けることとした。これにより、受電契約者の節電に対する動機付けが容易になり、結果としてデマンドを効果的に抑えることが可能となる。一方で、受電契約者の節電に対する動機付けについては、デマンド調整のインセンティブをデマンド調整の協力者に振り分ける方法以外にも有効な方法が考えられ、例えば、複数の受電契約者が同一のマンションに住んでいる場合には上記のインセンティブを共益費に充当することとしてもよい。
【0115】
また、上記の実施形態では、デマンドの現在値が契約デマンドを超えた際に電力供給者SP1からの供給電力だけでは賄いきれない場合に、他の電力供給者SP2から電力を融通してもらうこととした。ただし、デマンドの現在値が契約デマンドを超えた際に他の者から融通してもらうエネルギーについては、電力に限定されず、例えば熱であってもよい。
【0116】
また、上記の実施形態では、アグリゲータが保有するサーバ(アグリゲータサーバ10)と受電契約者が保有するサーバ(ホームサーバ30)とが直接通信するケースを例に挙げて説明したが、両サーバの間に中継サーバが介在していることとしてもよい。この中継サーバとしては、住宅Hの管理会社やハウスメーカが保有するサーバ、地域の電力需要を管理するために設置されたセンターサーバ等が挙げられる。
【0117】
また、上記の実施形態では、受電契約者が住宅Hに有するホームサーバ30の機能として、自家発電設備2を制御する機能や宅内の家電機器1を制御する機能を挙げたが、ホームサーバ30の機能については他にも考えられる。例えば、宅内に設置された電力センサや家電機器1と通信して宅内の電力需給バランスを監視しその結果を視覚化(見える化)する機能がホームサーバ30に搭載されていることとしてもよい。