(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業車両は作業機を用いた作業を行うと作動油タンクが前後方向に揺れるため、作動油の油面が波立ち攪拌されて作動油内に空気が混入してしまう。気泡を含有する作動油がストレーナから吸引されると油圧ポンプ内でキャビテーションが生じ、振動及び騒音などの原因となる。また、本件発明者は、作動油タンクが前後に揺られることで油面が上下に変動し、ストレーナの上部が油面から上方に突出してしまい油面上方に存在する空気層に曝される可能性があることを見出した。このようにストレーナの上部が空気層に曝されるとストレーナは空気を吸引し、上述したような問題が同様に生じる。
【0005】
特に、油圧ポンプとして可変ピストンポンプを使用する場合、上述した問題が顕著となる。以下、詳細に説明する。まず、油圧ポンプとして可変ピストンポンプを使用する場合、可変ピストンポンプは稼動していないときも作動油に浸しておく必要がある。油圧ポンプを常に作動油に浸すために、作動油タンクは油圧ポンプよりも上方に配置される構造となる。これにより、油圧ポンプは、稼動していないときも重力によって作動油タンクから作動油が供給され、常に作動油に浸っている状態となる。しかしながら、このように作動油タンクが上方に配置されると、作業車両が作業機を用いた作業を行う際に、作動油タンクがより揺れやすくなるため、上述した問題が顕著となる。
【0006】
本発明の課題は、ストレーナ内に空気(作動油内の気泡を含む)を吸引することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のある側面に係る作業車両は、作業機と、作動油タンクとを備える。作動油タンクは、作業機を駆動するための作動油を貯留するタンク本体、タンク本体内に設置されるストレーナを有する。ストレーナは、濾材と、カバー部材とを有する。濾材は、筒状であって軸が上下方向に延びる。カバー部材は、濾材の上面を覆う上板部と、上板部の外縁部から下方に延びる筒状部を含む。筒状部は、濾材の側面と間隔をあけて濾材の側面上部を覆うとともに濾材の側面下部を露出させる。
【0008】
一般的に作動油内に混入した気泡は、作動油内を上昇して作動油の油面近傍に存在する。しかし、上述した作業車両は、濾材の上面が上板部によって覆われ、濾材の側面上部が筒状部によって覆われるため、油面近傍に存在する気泡がストレーナに吸引されることを抑制することができる。また、上板部と筒状部とを有するカバー部材によって濾材の上部が覆われるため、濾材とカバー部材との間には作動油が充填される。このように濾材とカバー部材との間には作動油が充填されているため、作動油タンクが揺れて油面が上下に変動した場合であっても、濾材が油面の上方に存在する空気層に曝されることがない。よって、油面の上下の変動に起因する空気の吸引も抑制することができる。
【0009】
また、上述したストレーナは、濾材と筒状部とが上板部を共有するため、上板部をベースとすることによって濾材と筒状部との隙間を均一に保つことが容易となる。このため、濾材と筒状部との隙間を小さくする、例えば濾材と筒状部との隙間を数mm程度とすることが可能となり、ひいてはストレーナの外径を小さくすることができる。この結果、タンク本体内にストレーナを出し入れするための開口部がタンク本体に形成されている場合、この開口部を小さくして、タンク本体の剛性を高めることができる。なお、一般的にホイールローダのタンク本体は前後寸法が小さく、また、開口部は一般的にタンク本体の上面に形成されるため、開口部が大きくなるとタンク本体の剛性に大きく影響する。このため、上述したように開口部を小さくできることは非常に有用である。
【0010】
(2)好ましくは、筒状部は、濾材の側面上部のみを覆う。この構成によれば、濾材の側面下部と作動油との間に介在するものがないため、吸引抵抗が少なくなり、濾材の側面下部から十分に作動油を吸引することができる。
【0011】
(3)好ましくは、ストレーナは、濾材の底部を支持する支持部材をさらに有し、カバー部材は、筒状部から下方に延びる複数の柱部をさらに含む。各柱部は、互いに間隔をあけて配置され、下端部が支持部材に支持される。この構成によれば、カバー部材は、柱部によって支持部材に支持されるため、耐久性が向上する。また、各柱部は、互いに間隔をあけて配置されるため、各柱部の間から濾材の側面下部を露出させることができる。
【0012】
(4)ストレーナは、濾材の底部を支持する支持部材をさらに有し、筒状部は、濾材の側面全体を覆い、下部に複数の貫通孔を有する構成としてもよい。筒状部の下端部は、支持部材に支持される。この構成によれば、筒状部の下端部が支持部材に支持されるため、カバー部材の耐久性が向上する。また、筒状部は、下部に複数の貫通孔が形成されるため、貫通孔を介して濾材の側面下部を露出させることができる。
【0013】
(5)好ましくは、筒状部は、上端部に空気抜き孔を有する。この構成によれば、筒状部と濾材との間に空気が入ってしまった場合であっても、空気抜き孔からその空気を抜くことができる。
【0014】
(6)好ましくは、タンク本体内の作動油を作業機に供給するための油圧ポンプをさらに備え、タンク本体は、油圧ポンプより上方に位置する。この構成によれば、油圧ポンプは、タンク本体よりも下方に位置するため、油圧ポンプが稼働していないときであっても、重力によってタンク本体から作動油が供給されて常に作動油に浸っている状態となる。このため、稼動していないときであっても作動油に浸っている必要がある油圧ポンプ、例えば可変ピストンポンプなどを採用することができる。
【0015】
(7)好ましくは、タンク本体は、前後方向の長さが車幅方向の長さよりも短い。この構成によれば、タンク本体の前後方向の長さを短くしても、車幅方向の長さによって十分な量の作動油を貯留するための容量を確保することができる。また、前後方向の長さを短くすることによって、タンク本体が前後方向に揺れた場合であっても、油面の上下の変動を小さくすることができる。この結果、作動油が波立って攪拌されることによって生じる作動油内への気泡の混入を抑制することができる。
【0016】
(8)好ましくは、タンク本体は、車幅方向の略中央に配置される。十分な量の作動油を貯留するための容量を確保するためにタンク本体の車幅方向の長さを長くした場合、タンク本体は、車幅方向の揺れによって油面の変動が大きくなりやすい。これに対して、タンク本体を車幅方向の略中央に配置することによって、タンク本体は車幅方向の揺れが小さくなり、油面の上下の変動を抑制することができる。
【0017】
(9)好ましくは、ストレーナは、濾材とカバー部材とが一体的に交換される。この構成によれば、ストレーナの交換作業を容易にすることができる。
【0018】
(10)濾材の上面の高さは、タンク本体の内部空間の高さの半分より上に位置してもよい。この構成によれば、濾材の上下方向の長さを長くすることができ、作動油を吸引する面積を大きくすることができる。また、このように構成することで、ストレーナが油面から上方に突出しやすくなるが、上述したようにカバー部材と濾材との間に作動油が充填されるために空気の吸引を抑制することができる。
【0019】
(11)ストレーナは、支持部材と内筒部材とをさらに有してもよい。支持部材は、環状の第1ベース部と、第1ベース部の内周縁から上方に延びる第1円筒部とを含む。内筒部材は、円筒状であって側壁に複数の貫通孔が形成され、下端部が第1円筒部と嵌合する。濾材は、蛇腹状であって、内筒部材の外周面に沿って配置される。上板部は、円板状であって、下方に向かって折り曲げられる外周縁部を有する。筒状部は、外周面の上端部の少なくとも一部が上板部の外周縁部の内周面と接着する。この構成によれば、内筒部材によって濾材を支持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ストレーナ内に空気(作動油内の気泡を含む)を吸引することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るホイールローダ(作業車両の一例)の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1はホイールローダの側面図である。なお、以下の説明において、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示し、「車幅方向」と「左右方向」とは同義である。
【0023】
図1に示すように、ホイールローダ1は、車体フレーム2、作業機3、前輪4、後輪5、キャブ6、複数の油圧ポンプ7、及び作動油タンク8を有する。このホイールローダ1は、前輪4及び後輪5が回転駆動されることにより自走可能であり、作業機3を用いて所望の作業を行う。複数の油圧ポンプ7は、例えば、作業機3に圧油を吐出する作業機用ポンプ、ステアリング(図示省略)に圧油を吐出するステアリング用ポンプ、トルクコンバータ(図示省略)に圧油を吐出するトルクコンバータ用ポンプなどを含む。なお、作業機用ポンプ及びステアリング用ポンプは、可変ピストンポンプである。また、トルクコンバータ用ポンプは定容量ポンプである。
【0024】
車体フレーム2は、フロントフレーム2a及びリアフレーム2bを有し、フロントフレーム2aとリアフレーム2bとは互いに左右方向に揺動可能に連結される。フロントフレーム2aは作業機3及び前輪4を支持し、リアフレーム2bは後輪5、キャブ6、各油圧ポンプ7、及び作動油タンク8を支持する。
【0025】
作業機3は、作業機用ポンプによって加圧された作動油によって駆動される機構であり、フロントフレーム2aの前方に配置される。作業機3は、バケット3a、ブーム3b、リフトシリンダ(図示省略)、及びバケットシリンダ3cを有する。バケット3aは、ブーム3bの先端に取り付けられる。ブーム3bは、バケット3aを持ち上げるための部材であり、フロントフレーム2aの前部に装着される。リフトシリンダは、作業機用ポンプから吐出される圧油によってブーム3bを駆動する。バケットシリンダ3cは、作業機用ポンプから吐出される圧油によってバケット3aを駆動する。
【0026】
キャブ6は、内部に運転室が設けられるとともに、各種の操作部材及び操作盤が設けられる。キャブ6の後方には、作動油タンク8が配置され、作動油タンク8の下方には複数の油圧ポンプ7が配置される。
【0027】
図2は、前方から見た作動油タンクの正面断面図である。
図2に示すように、作動油タンク8は、タンク本体81、第1及び第2仕切り板82a、82b、作動油ガイド管83、フィルタ部材84、吸引ケーシング85、及びストレーナ86を有する。作動油タンク8の車幅方向の中心軸は、ホイールローダ1の車幅方向の中心軸と概ね一致する。
【0028】
タンク本体81は、金属板によって形成される箱状の部材であり、内部に作動油を貯留する。タンク本体81内には、少なくともストレーナ86が完全に浸るだけの量の作動油が貯留され、油面の上方には空気層が存在する。特に限定されるものではないが、一般的にタンク本体81の容量の6割程度の量の作動油が、タンク本体81内に貯留される。タンク本体81は、底板81a、側板81b、81c、上板81d、前板(図示省略)、及び後板81eを有し、前後方向の長さが車幅方向の長さよりも短い。
【0029】
上板81dは、ストレーナ86を交換する際にストレーナ86の出し入れをするための開口部81fが形成され、この開口部81fを第1蓋部材81gが封鎖する。なお、開口部81fは円形状であって、ストレーナ86が出し入れできるよう、開口部81fの内径はストレーナ86の外径よりも大きい。
【0030】
第1蓋部材81gは、円板状であって、開口部81を封鎖するようボルトなどによって上板81dに取り外し可能に固定される。第1蓋部材81gは、その下面から下方に延びるストレーナロッド81hを有する。ストレーナロッド81hは、下端部に雄ネジが形成され、ストレーナ86と取り外し可能に接続する。このため、ストレーナ86はその上端部がストレーナロッド81hによって支持される。また、第1蓋部材81gを上板81dから取り外して上に持ち上げることによって、ストレーナ86をタンク本体81内から取り出すことができる。そして、古くなったストレーナ86をストレーナロッド81hから取り外し、新しいストレーナ86に交換することができる。
【0031】
第1及び第2仕切り板82a、82bは、タンク本体81の側板81b、81cに対して実質的に平行に配置され、タンク本体81の内部を車幅方向に複数(3つ)の空間に仕切る。第1及び第2仕切り板82a、82bは、前端がタンク本体81の前板に繋がり、後端がタンク本体81の後板81eに繋がる。第1仕切り板82aと第2仕切り板82bとは車幅方向に距離を隔てて配置される。第1及び第2仕切り板82a、82bはタンク本体81内の下部のみを仕切り、タンク本体81内の上部は仕切らない。すなわち、タンク本体81内の空間は上部において流体連通する。
【0032】
作動油ガイド管83は、タンク本体81内に設けられ、作業機3などからタンク本体81内に戻ってきた作動油が通る配管である。作動油ガイド管83は第1管部83aと第2管部83bを有し、第1及び第2管部83a、83bは互いにフィルタ部材84を介して接続される。
【0033】
第1管部83aは、作業機3などからタンク本体81内に戻ってきた作動油を、フィルタ部材84へと供給する。第1管部83aは、第2管部83bの後方において上下方向に延び、下端がタンク本体81の底板81aに形成される戻り口に接続され、上端がフィルタ部材84に接続される。
【0034】
第2管部83bは、上端がフィルタ部材84に接続され、下部に複数の貫通孔83cが形成される。第2管部83bは、フィルタ部材84によって濾過された作動油を貫通孔83cを介してタンク本体81内に排出する。
【0035】
フィルタ部材84は、タンク本体81に戻ってきた作動油を濾過するための部材である。フィルタ部材84は、フィルタケーシング84aと、フィルタケーシング84a内に設けられるオイルフィルタ84bとを有する。
【0036】
フィルタケーシング84aは、上面が開口する円筒状であって、側壁の上端が、タンク本体81の上板81dの下面と液密に接合する。すなわち、フィルタケーシング84aの上面は、上板81dによって画定される。フィルタケーシング84aは、側壁において第1管部83aと流体連通し、底板において第2管部83bと流体連通する。また、上板81dのうち、フィルタケーシング84a内に位置する部分に開口部が形成される。そして、この開口部を封鎖するように、第2蓋部材81jが上板81dにボルトなどによって取り外し可能に固定される。
【0037】
オイルフィルタ84bは、オイルケーシング84a内に設置される円筒状の部材であり、第1管部83aからフィルタケーシング84a内に供給される作動油を濾過する。オイルフィルタ84bを通過して濾過された作動油は、第2管部83bへと供給される。オイルフィルタ84bは、第2蓋部材81jを取り外すことによって、上板81dの開口部を介して取り出し可能である。
【0038】
吸引ケーシング85は、下面が開口する円筒状であって、側壁85aと上板85bとを有する。側壁85aの下端がタンク本体81の底板81aと液密に接合し、吸引ケーシング85の下面は底板81aによって画定される。上板85bは中央に開口部を有し、この開口部を介して吸引ケーシング85はストレーナ86と流体連通する。吸引ケーシング85は、上板85bの開口部周縁に沿って上方に突出する円筒状の挿入部85c(
図3参照)を有し、この挿入部85cがストレーナ86の下端部に挿入する。
【0039】
底板81aのうち、吸引ケーシング85内に位置する部分には、複数の吸引口(図示省略)が形成され、各吸引口には各ポンプ7から延びる吸引配管85dのいずれかが連結する。これにより、吸引ケーシング85内の作動油が各ポンプ7に吸引されて、作業機3などのアクチュエータに供給される。なお、吸引ケーシング85の内径D1は、ストレーナ86の内径D2よりも大きい。また、吸引ケーシング85は、タンク本体81内において、前後方向及び車幅方向の概ね中央に配置される。
【0040】
図3はストレーナの正面断面図であり、
図4はストレーナの正面図である。なお、
図3は、図解を容易にするため、ストレーナの右半分のみを示す。
図3及び
図4に示すように、ストレーナ86は、内筒部材86a、濾材86b、支持部材86c、及びカバー部材86dを有する。ストレーナ86は、タンク本体81内において、前後方向及び車幅方向の概ね中央に配置される。
【0041】
図3に示すように、内筒部材86aは、上面及び下面が開口する円筒状である。内筒部材86aは、複数の貫通孔86eが全体に形成される。なお、
図3では、一部の貫通孔のみを図示し、他の貫通孔は図示を省略する。内筒部材86aは、濾材86bを安定して支持できる範囲において、内筒部材86aの外側から内側へと流れる作動油をスムーズに流すよう、貫通孔86eによる開口面積は大きいほうが好ましい。
【0042】
図3及び
図4に示すように、濾材86bは、上面及び下面が開口する実質的に円筒状である。濾材86bは、内周面が内筒部材86aの外周面に接触することによって内筒部材86aに支持される。
図4に示すように、濾材86bは、上下方向に延びる複数の畝部を有する蛇腹状に形成される。これにより、濾材86bは、濾過面積を大きくすることができる。なお、濾材86bの各畝部の水平方向断面は、頂点が外周側に位置する三角形状である。
【0043】
支持部材86cは、中央に開口部を有する実質的に環状の部材であって、第1部材86fと第2部材86gとを有する。なお、第1部材86fと第2部材86gとは、後述する第1ベース部86hと第2ベース部86jとが接着剤又は溶着などによって接着されることによって、一つの部材、すなわち支持部材86cとして機能する。
【0044】
第1部材86fは、環状の第1ベース部86hと、第1円筒部86iとを有する。第1円筒部86iは、第1ベース部86hの内周縁から上方に延びる。第1円筒部86iの外周面に内筒部材86aの内周面が接触する状態で、第1円筒部86iが内筒部材86aの下端に嵌合する。また、濾材86eの下端が、第1ベース部86h上に載置されることによって、第1部材86fは濾材86eの底部を支持する。
【0045】
支持部材86cの第2部材86gは、環状の第2ベース部86j、第2円筒部86k、第3円筒部86m、及び環状の鍔部86nを有する。第2円筒部86kは、第2ベース部86jの外周縁から上方に延びる。第3円筒部86mは、第2ベース部86jの内周縁から下方に延びる。鍔部86nは、第3円筒部86mの下端から内側に延びる。
【0046】
第1ベース部86hと、第3円筒部86mと、鍔部86nとによって画定される空間内にOリング86pが配置される。Oリング86pの外径は、第3円筒部86mの内径とほぼ等しい。支持部材86cの開口部は、第1円筒部86iの内周面と、鍔部86nの内周縁とによって画定される。支持部材86cの開口部に吸引ケーシング85の挿入部85cが挿入されると、第3円筒部86mと挿入部85cとによってOリング86pを径方向に圧縮させる。これによって、吸引ケーシング85とストレーナ86とが液密に接続される。ストレーナ86が吸引ケーシング85と接続された状態において、ストレーナ86と吸引ケーシング85とが流体連通する。
【0047】
カバー部材86dは、上板部86qと、筒状部86rとを有する。上板部86qは、円板状であって、濾材86bの開口する上面を塞ぐように濾材86bの上端と接着する。これによって、上板部86qは濾材86bの上面を覆う。また、上板部86qは段差部86sが形成され、段差部86sよりも外周側に位置する外周部が、段差部86sよりも内周側に位置する内周部よりも上に位置する。
【0048】
上板部86qは、下方に折れ曲がる外周縁部(外縁部の一例)86tと、中央に形成される凹部86uを有する。凹部86uの内周面には雌ネジが形成される。この凹部86uの雌ネジは、ストレーナロッド81hの下端部に形成される雄ネジと螺合することにより、ストレーナロッド81hとストレーナ86とが取り外し可能に接続される。また、ストレーナ86は、ストレーナロッド81hと接続することにより、上方への移動が規制され、吸引ケーシング85から外れることを防ぐことができる。なお、本実施形態では、凹部86uは、上板部86qの他の部分と別部材として形成するが、上板部86qの他の部分と一体的に形成することもできる。
【0049】
筒状部86rは、上面及び下面が開口する円筒状の部材であり、濾材86bの側面上部を覆う。なお、筒状部86rは、濾材86bの側面下部までは延びておらず、濾材86bの側面下部はタンク本体81内の作動油に露出する。
【0050】
筒状部86rの側面の上端部は、上板部86qの外周縁部86tの内周面と、例えばスポット溶接又は接着剤などによって接着する。これにより、筒状部86rは、上板部86qに固定される。作動油の吸引量の観点から、筒状部86rの上下方向の長さは、特に限定されるものではないが、濾材86bの上下方向の長さの約70%以下とすることが好ましく、低温時を考慮に入れると50%以下とすることがより好ましい。また、空気の吸引を防止する観点からは、筒状部86rの上下方向の長さは、特に限定されるものではないが、濾材86bの上下方向の長さの約30%以上とすることが好ましい。
【0051】
筒状部86rは、濾材86bの最も外周側の部位(各畝部の頂点)と間隔をあけて、濾材86bの側面上部を覆う。この間隔は、特に限定されるものではないが、2mm以上5mm以下程度とすることが好ましい。タンク本体81内に作動油が貯留する状態において、筒状部86rと濾材86bとの間の空間には作動油が充填する。また、筒状部86rと濾材86bとの間の空間に気泡が入り込んだ場合、その気泡を外部に排出するために、筒状部86rの上端部には空気抜き孔86vが形成される。
【0052】
以上のように、ストレーナ86は、濾材86bとカバー部材86dとが互いに固定されるため、ストレーナ86を交換する際は、濾材86bとカバー部材86dとが一体的に交換される。よって、ストレーナ86の交換作業を容易にすることができる。
【0053】
[特徴]
本実施形態に係るホイールローダは、次の特徴を有する。
【0054】
(1)濾材86bの上面が上板部86qによって覆われ、濾材86bの側面上部が筒状部86rによって覆われるため、油面近傍に存在する気泡がストレーナ86に吸引されることを抑制することができる。また、上板部86qと筒状部86rとを有するカバー部材86dによって濾材86bの上部が覆われるため、濾材86bとカバー部材86dとの間には作動油が充填される。このように濾材86bとカバー部材86dとの間には作動油が充填されているため、タンク本体81が揺れて油面が上下に変動した場合であっても、濾材86bが油面の上方に存在する空気層に曝されることがない。よって、油面の上下の変動に起因する空気の吸引も抑制することができる。
【0055】
(2)濾材86bの側面下部と作動油との間に介在するものがないため、吸引抵抗が少なくなり、濾材86bの側面下部から十分に作動油を吸引することができる。
【0056】
(3)筒状部86rと濾材86bとの間の空間に空気が入ってしまった場合であっても、空気抜き孔86vからその空気を抜くことができる。
【0057】
(4)各種油圧ポンプ7は、タンク本体81よりも下方に位置するため、各種油圧ポンプ7が稼働していないときであっても、重力によってタンク本体81から作動油が供給されて常に作動油に浸っている状態となる。このため、稼動していないときであっても作動油に浸っている必要がある油圧ポンプ、例えば可変ピストンポンプなどを採用することができる。
【0058】
(5)タンク本体81の前後方向の長さを短くしても、車幅方向の長さによって十分な量の作動油を貯留するための容量を確保することができる。また、前後方向の長さを短くすることによって、タンク本体81が前後方向に揺れた場合であっても、油面の上下の変動を小さくすることができる。この結果、作動油が波立って攪拌されることによって生じる作動油内への気泡の混入を抑制することができる。
【0059】
(6)十分な量の作動油を貯留するための容量を確保するため、タンク本体81の車幅方向の長さを長くしているため、タンク本体81は、車幅方向の揺れによって油面の変動が大きくなりやすい。これに対して、上記実施形態では、タンク本体81を車幅方向の略中央に配置するため、タンク本体81は車幅方向の揺れが小さくなり、油面の上下の変動を抑制することができる。
【0060】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0061】
変形例1
図5は変形例1に係るストレーナの正面図、
図6は変形例1に係るストレーナの右半分の正面断面図である。
図5に示すように、変形例1に係るストレーナ86のカバー部材86dは、筒状部86rから下方に延びる複数の柱部86wをさらに有してもよい。
図6に示すように、柱部86wは、下端が支持部材86cの第1ベース部86h上に載置されることによって支持部材86cに支持される。なお、柱部86wの下端部の外周面は、支持部材86cの第2円筒部86kの内周面と接触するように構成してもよい。これによって、柱部86wの下端部は、より安定的に支持部材86cに支持される。なお、柱部86wの下端部は、スポット溶接又は接着剤などによって支持部材86cと接着してもよい。また、変形例1において、柱部86wは、筒状部86rと一体的に形成するが、筒状部86rと別部材であってもよい。
【0062】
この変形例1によれば、カバー部材86dは、柱部86wによって支持部材86cに支持されるため、耐久性が向上する。また、各柱部86wは、互いに間隔をあけて配置されるため、各柱部86wの間から濾材86bの側面下部を露出させることができる。
【0063】
変形例2
図7は、変形例2に係るストレーナの正面図である。
図7に示すように、変形例2に係るカバー部材86dの筒状部86rは、濾材86bの側面全体を覆う。濾材86bの側面下部をタンク本体81内の作動油に曝すため、筒状部86rは下部全体に複数の貫通孔86xが形成される。なお、
図8では、一部の貫通孔86xのみを図示し、他の貫通孔は図示を省略する。筒状部86rの貫通孔86xが形成される下部領域は、特に限定されるものではないが、筒状部86rの上下方向の長さのうち、30%以上70%以下程度とすることが好ましく、50%以上70%以下程度とすることがより好ましい。
【0064】
図8は、変形例2に係るストレーナの右半分の正面断面図である。
図8に示すように、筒状部86rの下端部は、支持部材86cの第1ベース部86h上に載置されることによって、支持部材86cに支持される。また、筒状部86rの下端部の外周面は、支持部材86cの第2円筒部86kの内周面と接触するように構成してもよい。これによって、筒状部86rの下端部は、より安定的に支持部材86cに支持される。なお、筒状部86rの下端部は、スポット溶接又は接着剤などによって支持部材86cと接着してもよい。
【0065】
この構成によれば、筒状部86rの下端部が支持部材86cに支持されるため、カバー部材86dの耐久性が向上する。また、筒状部86rは、下部に複数の貫通孔86xが形成されるため、貫通孔86xを介して濾材86bの側面下部を露出させることができる。
【0066】
変形例3
図9は、変形例3に係る作動油タンクの正面断面図である。
図9に示すように、ストレーナ86の上面、特に濾材86bの上面は、タンク本体81の内部空間の高さの半分よりも上に位置する。この結果、濾材86bの上下方向の長さを長くすることができ、作動油を吸引する面積を大きくすることができる。また、このように構成することで、ストレーナ86が油面から上方に突出しやすくなるが、上述したようにカバー部材86dと濾材86bとの間に作動油が充填されるために空気の吸引を抑制することができる。
【0067】
変形例4
内筒部材86aは、濾材86bを内側から支持できる構造であれば、上述した実施形態の構造に限定されない。例えば、内筒部材86aは、上下方向に間隔をおいて配置される複数のリング状部材によって構成することもできる。この場合、リング状部材は、濾材86bの上端及び下端を支持するように配置されることが好ましい。また、内筒部材86aは、各リング状部材を連結するように上下方向に延びる連結部を有することが好ましい。
【0068】
変形例5
上記実施形態では、作動油タンク8は、各種油圧ポンプ7よりも上方に配置されるが、特にこれに限定されず、各種油圧ポンプ7よりも下方に配置されてもよい。例えば、作動油タンク8はキャブ6の下方に配置することができる。
【0069】
変形例6
上記実施形態では、カバー部材86dの上板部86qは、濾材86bの開口する上面を画定するように濾材86bと接着するが、特にこれに限定されない。例えば、上板部86qは、間隔をあけて濾材86bの上方に配置されてもよい。この場合、濾材86bと上板部86qとの間は作動油で満たされる。
【0070】
変形例7
濾材86bは、上面が開口していなくてもよい。この場合、変形例6において説明したように上板部86qを濾材86bと間隔をあけて配置することで、濾材86bは上面においても作動油を濾過することができる。
【0071】
変形例8
上記実施形態では、濾材86bは、内周面が内筒部材86aの外周面と接触することによって内筒部材86aに支持されるが、特にこれに限定されない。例えば、濾材86bの内周面の少なくとも一部が内筒部材86aの外周面と接着剤などによって接着することによって、濾材86bが内筒部材86aに支持されてもよい。
【0072】
変形例9
上記実施形態では、本発明をホイールローダに適用する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明は、油圧ショベル、又はブルドーザなどの他の作業車両に対しても同様に適用可能である。