(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の金属は、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、コバルト(Co)、エルビウム(Er)、スカンジウム(Sc)及びそれらの組合せからなる群から選択された金属を含む、請求項1に記載のメモリスタ。
(a)前記少なくとも1つのコンダクタンスチャネルを形成する1つ又は複数の材料が、前記少なくとも1つのコンダクタンスチャネルに対してホストとなるマトリックスを形成する1つ又は複数の材料と熱力学的平衡であることと、
(b)前記第1の電極を形成しかつ酸素とともに前記少なくとも1つのコンダクタンスチャネルを形成する前記第1の金属が、室温で所定量の酸素溶解度を有することと、
を満たすことにより、前記第1の金属及び前記第2の非金属材料を選択するステップ、
を更に含む、請求項6に記載の方法。
前記第1の金属は、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、コバルト(Co)、エルビウム(Er)、スカンジウム(Sc)及びそれらの組合せからなる群から選択された金属を含む、請求項6に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0004】
(詳細な説明)
簡略化し例示する目的で、本発明の実施形態の原理を、主にその例を参照することによって説明する。以下の説明では、実施形態が完全に理解されるために多数の特定の詳細を示している。しかしながら、当業者には、実施形態を、これらの特定の詳細に限定されずに実施することができることが明らかとなろう。他の場合では、実施形態の説明を不必要に不明瞭にしないように、既知の方法及び構造を詳細には説明していない。
【0005】
本明細書では、一対の間隔を空けて配置された電極とそれらの電極の間に位置付けられたスイッチング材料とから形成された、概して電気的に作動される装置として定義することができる、メモリスタを開示する。第1の電極及びスイッチング層は、同じタイプの金属から形成される。より詳細には、例えば、第1の電極はタンタルから形成され、スイッチング層は酸化タンタルから形成される。他の例として、第1の電極は他のタイプの金属から形成され、スイッチング層は、それらの他のタイプの金属で形成された酸化物を含む。いずれに関しても、本発明者らは、本明細書に開示するメモリスタで実施される材料の組合せが、予期せずに高耐久性スイッチング、例えば120億回のオン−オフサイクルを超えるスイッチングをもたらすことが分かった。
【0006】
さらに、少なくとも1つのコンダクタンスチャネル(conductance channel)が、メモリスタに対してエレクトロフォーミングプロセスを行う必要なしに、スイッチング層に形成されるように設計されている。代りに、少なくとも1つのコンダクタンスチャネルを形成するために使用される電圧レベルは、メモリスタをオン及びオフにするために使用される電圧レベルに類似している。さらに、本明細書に開示するメモリスタは、イオン及び空孔が孤立系内で移動する可動性イオン/空孔源を含み、非対称であり、スイッチング中のガス噴出/気泡形成を最小限にする。メモリスタが、例えば30nm未満までより小さくなり続けるに従い、チャネルのサイズを、メモリスタ自体のサイズと同等にすることができる。
【0007】
本明細書で説明するメモリスタを、複数のメモリスタから形成されたクロスバーアレイで実施することができる。一態様では、複数のメモリスタにおけるコンダクタンスチャネルを、本明細書で説明する製造プロセスを通して互いに同時に形成することができる。
【0008】
「1回のみ構成可能な」という用語は、スイッチが、電気化学酸化又は還元反応等の不可逆プロセスを介してその状態を1回のみ変化させることができることを意味し、こうしたスイッチを、例えばプログラマブルリードオンリメモリ(PROM)の基礎とすることができる。
【0009】
「再構成可能な」という用語は、スイッチが、電気化学酸化又は還元等の不可逆プロセスを介してその状態を複数回変化させることができることを意味し、言い換えれば、スイッチを、ランダムアクセスメモリ(RAM)のメモリビットのように、複数回開閉することができる。
【0010】
「構成可能な」という用語は、「1回のみ構成可能な」又は「再構成可能な」のいずれかを意味する。
【0011】
ミクロンスケール寸法は、サイズが1マイクロメートルから数マイクロメートルまでの範囲である寸法を指す。
【0012】
サブミクロンスケール寸法は、0.1ナノメートルから1マイクロメートルの範囲の寸法を指す。
【0013】
ミクロンスケールワイヤ及びサブミクロンスケールワイヤは、幅又は直径が0.005マイクロメートルから10マイクロメートルの寸法を有し、高さを数ナノメートルからマイクロメートルの範囲とすることができ、長さが数マイクロメートル以上である、棒状又はリボン状の導体又は半導体を指す。
【0014】
メモリスタは2次元デバイスであり、ここでは、端子間の磁束が、デバイスを通過した電荷の量の関数である。
【0015】
クロスバーは、平行なワイヤの1つの集合の各ワイヤを第1の集合と交差する平行なワイヤの第2の集合のすべての構成要素に接続することができるメモリスタのアレイである(通常、ワイヤの2つの集合は互いに垂直であるが、これは必要な条件ではない)。
【0016】
まず
図1を参照すると、一実施形態によるメモリスタ100の斜視図が示されている。メモリスタ100の範囲から逸脱することなく、
図1に示すメモリスタ100は追加の構成要素を含むことができ、本明細書に記載する構成要素のうちのいくつかを取り除く、及び/又は変更することができることが理解されるべきである。また、
図1に示す構成要素は比例尺で描かれておらず、したがって、それらの構成要素は、互いに対して
図1に示すものとは異なる相対的なサイズを有することができることも理解されるべきである。
【0017】
概して、
図1に示すメモリスタ100を、マイクロスケールで又はナノスケールで構築することができ、多種多様の電子回路におけるコンポーネントとして使用することができる。例えば、メモリスタ100を、メモリ、スイッチ、論理回路及びアナログ回路用の基礎として使用することができる。メモリ用の基礎として使用する場合、メモリスタ100を、ビットの情報、すなわち1又は0を記憶するように使用することができる。スイッチとして使用する場合、メモリスタ100を、クロスポイント(交差点)メモリにおける閉スイッチ又は開スイッチのいずれとすることもできる。論理回路として使用する場合、メモリスタ100を、フィールドプログラマブルゲートアレイに類似する論理回路におけるビットとして、又はワイヤード論理プログラマブルロジックアレイ用の基礎として採用することができる。本明細書に開示するメモリスタ100はまた、多種多様の他の用途の利用法を見つけるようにも構成される。
【0018】
図1に示すように、メモリスタ100は、第2の電極104の上方に位置付けられた第1の電極102を含む。さらに、第1の電極102は、第2の電極104に対して交差配置にあり、それにより、第1の電極102は、第2の電極104に対して実質的に垂直に配置される。第1の電極102及び第2の電極104の一方又は両方を、金属材料又は半導体材料から形成することができる。一実施形態によれば、第1の電極102は第1の金属から形成され、第2の電極104は貴金属等の第2の金属から形成され、第1の金属及び第2の金属は互いに異なっている。例として、第1の電極102は、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、コバルト(Co)、エルビウム(Er)、スカンジウム(Sc)等の金属から形成される。さらに、第2の電極104は、プラチナ(Pt)、タングステン(W)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、チタニウム(Ti)、銀(Ag)、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)等の金属から形成される。別の特定の例として、第2の電極104は、ドープされたシリコンから形成される。いずれに関しても、第1の電極102、第2の電極104及びスイッチング層110用の材料を、第1の電極102とスイッチング層110との間の接触がオーミックであり、第2の電極104とスイッチング層110との間の接触が非オーミックであるように選択することができる。第1の電極102の相対位置を、第2の電極104に対して
図1に示す形態から反転させることができる。
【0019】
メモリスタ100はまた、第1の電極102と第2の電極104との間に配置されかつそれらと直接に接触するスイッチング層110を備えている。スイッチング層110を、第1の電極102及び第2の電極104より相対的に大きくすることができることを示すように破線で示しており、したがって、スイッチング層110の一部のみを
図1に示している。他の実施形態では、スイッチング層110を、第1の電極102及び第2の電極104より相対的に小さいか又はおよそ同じ幅とすることができる。スイッチング層110は、スイッチング層110におけるコンダクタンスチャネル120の形成を促進するスイッチング材料112の組成物を含む。
【0020】
実施形態によれば、スイッチング材料112は、第1の電極102を形成するために使用されたものと同じ金属と非金属材料との組成物を含む。非金属材料は、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、燐(P)、塩素(Cl)等を含むことができる。特定の例によれば、スイッチング材料112は、タンタル及び酸素の組成物を含む。他の例によれば、スイッチング材料112は、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化エルビウム、酸化スカンジウム等の他の組成物を含む。更なる例によれば、スイッチング材料112は、二酸化チタン(TiO
2)、又は酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム等の他の酸化物種を含む。スイッチング材料112を、三元酸化物若しくは四元酸化物、又はSTO、PCMO等、他の複合酸化物から形成することもできる。スイッチング材料112を更に、窒化物及び/又は硫化物から形成することができる。
【0021】
スイッチング材料112を形成する材料の組成は、フォーミング操作中に内部にコンダクタンスチャネル120が形成される可能性がある任意の適切な材料を含むことができる。より詳細には、例えば、スイッチング材料の組成を、フォーミング操作中に酸素輸送を介して互いに反応するように選択することができる。したがって、スイッチング材料112を形成する材料の組成を、材料が互いといかに相互作用するかに基づいて選択することができる。この選択は、後により詳細に説明するように、材料の互いに対する相互作用を示す相図に含まれている情報に基づくことができる。
【0022】
図1にまた示すように、コンダクタンスチャネル120は、スイッチング層110の第1の電極102と第2の電極104との間の接合部に形成される。
図1には単一のコンダクタンスチャネル120を示しているが、スイッチング層110の接合部に複数のコンダクタンスチャネル120を形成することができる。コンダクタンスチャネル120は、スイッチング層110を通してフォーミング電圧を印加することによってもたらされるスイッチング層112の局所的な原子的改質(atomic modification)を通して形成されるように構成されている。スイッチング材料112がTaO
2を含む特定の例として、フォーミングプロセス中、TaO
2層はTa
2O
5及びTa(O)に分解する。Ta(O)相は、Ta及び酸素の固溶体であり、コンダクタンスチャネル120としての役割を果たす。Ta
2O
5相は絶縁相であり、コンダクタンスチャネル120に対してホストとなるマトリックスとしての役割を果たす。Ta(O)コンダクタンスチャネル120は、電界が印加されて、その電界の極性に応じてTa
2O
5マトリックスにおいて成長又は後退することができ、それによりオン及びオフのスイッチングをもたらす。1つ又は複数のコンダクタンスチャネル120が、還元したTaO
2−xを含む領域に生じるように構成され、これらのコンダクタンスチャネル(複数の場合もある)120は、メモリスタ100の後続するスイッチングに関与する。
【0023】
スイッチング動作中、酸素原子は、コンダクタンスチャネル(複数の場合もある)120を通して伝導される電界において移動して、コンダクタンスチャネル(複数の場合もある)120の内側のギャップ122を開放又は閉鎖するように構成されており、それを読み取ることにより、メモリスタ100がオン状態にあるか又はオフ状態にあるかを判断することができる。
【0024】
コンダクタンスチャネル(複数の場合もある)120を、本明細書ではメモリスタ100の活性領域と呼ぶ。1つの点では、コンダクタンスチャネル(複数の場合もある)120の伝導率を、第1の電極102及び第2の電極104の両端に異なるバイアスを印加することによって変更することができる。したがって、メモリスタ100を、第1の電極102及び第2の電極104の両端に印加されたバイアスに基づいて再構成可能とすることができる。しかしながら、他の例では、スイッチング層110は、1回のみ構成可能であるように形成される。
【0025】
ここで
図2を参照すると、一実施形態による、
図1に示す複数のメモリスタ100を採用するクロスバーアレイ200の斜視図が示されている。クロスバーアレイ200の範囲から逸脱することなく、
図2に示すクロスバーアレイ200は追加の構成要素を含むことができ、本明細書に記載する構成要素のうちの幾つかを取り除く、及び/又は変更することができることが理解されるべきである。
【0026】
図2に示すように、およそ平行な第1の電極102の第1の層210は、およそ平行な第2の電極104の第2の層220の上に重なる。第2の層220の第2の電極104は、第1の層210の第1の電極102に対して向きがおよそ垂直であるが、層の間の配向角を変化させることができる。2つの層210及び220は格子又はクロスバーを形成し、第2の層220の第2の電極104の各々は、第1の層210の第1の電極102のすべての上に重なり、第1の電極102及び第2の電極104のうちの2つの間の最も近い接点を表すそれぞれの接合部において、第1の層210の第1の電極102の各々と密に接触する。クロスバーアレイ200を、用途に応じて、ミクロン電極、サブミクロン電極又はナノスケール電極102、104から製造することができる。
【0027】
図2にまた示すように、スイッチング層110は、第1の層210と第2の層220との間に延在している。本明細書において後により詳細に説明するように、それぞれのコンダクタンスチャネル120(
図1及び
図3)は、メモリスタ100のうちの複数のものにおいて熱フォーミングプロセス中に同時に形成される。
【0028】
図1及び
図2では、第1の電極102及び第2の電極104を、矩形断面を有するように示したが、第1の電極102及び/又は第2の電極104は、円形、楕円形、六角形、三角形、台形等、他の断面形状を有することができることが理解されるべきである。
【0029】
ここで
図3を参照すると、一例による、一対のメモリスタ310及び320の側断面
図300が示されている。そこに示すように、第1のメモリスタ310は、第1の電極102と第2の電極104との間の接合部に形成された「オン」コンダクタンスチャネル312を有するように示されている。コンダクタンスチャネル312は、「オン」であるものとして解釈される。なぜなら、コンダクタンスチャネル312が第1の電極102から第2の電極104まで延在するか、又はコンダクタンスチャネル120の先端と第1の電極102との間に非常に小さいギャップが形成されているためであり、したがって、第1のメモリスタ310の第1の電極102と第2の電極104との間に供給される電気エネルギーに対して比較的低い抵抗がある。
【0030】
図3にまた示すように、第2のメモリスタ320は、第2のメモリスタ320の第1の電極102と第2の電極104との間の接合部に形成された「オフ」コンダクタンスチャネル322を有するように示されている。コンダクタンスチャネル322は、「オフ」であるように解釈される。なぜなら、コンダクタンスチャネル322が第1の電極102から第2の電極104まで延在していないか、又は、コンダクタンスチャネル120の先端と第1の電極102との間に、より大きいギャップが形成されているためである。これに関して、ギャップ122は、コンダクタンスチャネル322内に存在しているように示されており、したがって、第2のメモリスタ320の第1の電極102と第2の電極104との間に供給される電気エネルギーに対し、第1のメモリスタ310の第1の電極102と第2の電極104との間の場合よりも相対的に高い抵抗がある。
【0031】
図1〜
図3に示すメモリスタ100、300は、
図1〜
図3に示すものに対して代替的な構成を有することができる。例えば、或る特定の実施形態では、スイッチング層110と第2の電極104との間に機能層(図示せず)を挿入することができ、したがって、第2の電極104は、スイッチング層110と直接接触していない場合がある。別の例として、かつ
図4A及び
図4Bに示すように、メモリスタ100、300は、
図1〜
図3に示すメモリスタ100、300と比較して、1つ又は複数の追加のスイッチング層110の間に位置付けられる1つ又は複数の中間層420を含むことができる。明示的に示さないが、
図4A及び
図4Bに示すメモリスタ400及び410のうちの任意のものを、
図2に示すクロスバーアレイ200でのメモリスタ100として実施することができる。
【0032】
図4Aに示すように、メモリスタ400は、第1の電極102、一対のスイッチング層110、一対のスイッチング層110の間に位置決めされた中間層420、及びスイッチング層110のうちの一方の上方に位置付けられた第2の電極104を含むように示されている。より詳細には、中間層420は、スイッチング層110の間に位置付けられ、スイッチング層110は第1の電極102と第2の電極104との間に位置付けられている。
図4Bに示すように、メモリスタ410は、第1の電極102と第2の電極104との間に3つの中間層420及び4つのスイッチング層110を含むように示されている。
図4Bには、特定の数の中間層420及びスイッチング層110が示されているが、メモリスタ410は、第1の電極102と第2の電極104との間に位置決めされた、任意の適度に適切な数の中間層420及びスイッチング層110を含むことができることが明確に理解されるべきである。
【0033】
一実施形態によれば、中間層(複数の場合もある)420は、第1の電極102に関して上述した金属のうちの任意のもの等の金属を含む。1つの点では、中間層(複数の場合もある)420は、概して、メモリスタ内に幾つかの金属/酸化物接点を導入することにより、メモリスタの(例えば、
図7に示すような)I−V曲線において非線形性を生成するように動作する。中間層(複数の場合もある)420が、スイッチング層110の金属素子と同じ材料から形成される場合、中間層(複数の場合もある)420はまた、スイッチング層110用の移動ドーパント溜めとしての役割も果たす。
【0034】
ここで
図5を参照すると、一実施形態による、メモリスタ100、300を製造する方法500のフロー図が示されている。方法500の範囲から逸脱することなく、
図5に示す方法500は追加のステップを含むことができ、本明細書に記載のステップのうちのいくつかを除去及び/又は変更することができることが理解されるべきである。例えば、第1の電極102を、第2の電極104の前に設けるものとして示されているが、方法500の範囲から逸脱することなく、第2の電極104を、第1の電極102の前に設けることができることも理解されるべきである。
【0035】
ステップ502において、第1の金属から形成された少なくとも1つの第1の電極102を設ける。第1の電極(複数の場合もある)102を、化学蒸着、スパッタリング、エッチング、リソグラフィ等の任意の適切な形成プロセスによって設けることができる。さらに、方法500を、クロスバーアレイ200を形成するように実施する場合、例えば
図2に示すように、第1の電極102の第1の層210として複数の第1の電極102を設けることができる。上述したように、第1の金属は、例えばタンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、コバルト(Co)、エルビウム(Er)、スカンジウム(Sc)等を含むことができる。
【0036】
ステップ504において、第1の電極(複数の場合もある)102の上に、第1の電極102の第1の金属を含む第1の金属及び第2の非金属材料の組合せから形成されたスイッチング層110が形成される。一例によれば、スイッチング層110を形成する材料を、スパッタリング、パルスレーザ堆積、原子層堆積等を通じて同時堆積させてスイッチング層110を形成する。別の例によれば、第1の電極(複数の場合もある)102の上に材料の組成物を堆積させる前に、第1の金属材料及び第2の非金属材料を、スイッチング材料112内に散在させる。別の例によれば、第1の金属材料及び第2の非金属材料を含むスイッチング材料112を、電極(複数の場合もある)102の上で成長させる。この例では、スイッチング材料112を、例えば、気相、液相又は固相前駆体からの金属−触媒成長、化学溶液からの成長、スピンコーティング、又は固体源から蒸発した材料の高速堆積を使用することによって成長させることができる。更なる例によれば、スイッチング材料112を、純安定相からの相分解によって形成し、スイッチング材料112は、アニーリング又は局所ジュール熱による加熱によって2相に分解する。2つの相のうちの一方は導電相であり、コンダクタンスチャネル120としての役割を果たし、他方の相は、コンダクタンスチャネル120に対してホストとなるマトリックスとしての役割を果たす絶縁相である。スイッチング材料を選択する基準は、(1)コンダクタンスチャネル120を形成する材料(複数の場合もある)が、コンダクタンスチャネル120に対してホストとなるマトリックスの材料(複数の場合もある)と熱力学的平衡であり、(2)第1の電極102を形成しかつ酸素とともにコンダクタンスチャネル120を形成する第1の金属が、室温で少なくとも所定量の酸素溶解度を有する必要がある、ということである。一例では、酸素溶解度は、室温で1%を超える。
【0037】
いずれに関しても、スイッチング層110を形成する組成物に含まれる第1の金属材料及び第2の非金属材料の量を、第1の金属材料が第2の非金属材料と実質的に事前に定義されるように反応する既知の組成比に基づいて選択することができる。より詳細には、例えば、組成比を、2つの材料の組成物が比較的長期の平衡状態を有し、2つの安定相を有するように選択することができる。一例によれば、第1の金属材料及び第2の非金属材料のパーセンテージを、第1の金属材料及び第2の非金属材料の相図から選択することができる。適切な相
図600の一例を
図6に示す。
【0038】
相
図600は、種々の組成及び種々の温度でタンタル(Ta)及び酸素(O)を含む相を示している。そこに示すように、Ta(O)及び(αTa
2O
5)として列挙する2つの安定相がある。したがって、Ta(O)から形成されるコンダクションチャネル120は、マトリックスTa
2O
5と平衡している。相分解の前のスイッチング層の平均組成を、わずかな量の導電性チャネル相で大量のマトリックス相を保証するように相図において選択することができる。一例では、平均組成は67%酸素及び33%タンタルである。
【0039】
ステップ504に続き、例えば化学−機械研磨により、スイッチング層110の上面を平坦化して、相対的に平滑な面を生成することができる。
【0040】
ステップ506において、スイッチング層110の上に少なくとも1つの第2の電極104を形成する。1つ又は複数の第2の電極104を、電子ビーム蒸着、化学蒸着、スパッタリング、原子層堆積、エッチング、(インプリント)リソグラフィ等の形成プロセスを通じて設けることができる。さらに、本明細書において上記でより詳細に説明したように、第2の電極(複数の場合もある)104は、第1の電極(複数の場合もある)102及びスイッチング層110に含まれる第1の金属とは異なる材料を含む。
【0041】
ステップ508において、少なくとも1つのスイッチング層110に少なくとも1つのコンダクタンスチャネル120を形成する。一例によれば、全く初めてのスイッチング動作を通じて、少なくとも1つのコンダクタンスチャネル120を形成する。より詳細には、例えば、メモリスタ100のオン−オフ動作中に使用される電圧レベル近くの比較的低い電圧が、少なくとも1つのコンダクタンスチャネル120を形成するために使用され、第1の電極(複数の場合もある)102、スイッチング層110及び第2の電極(104)に印加されて、これによって第1の電極(複数の場合もある)102及び第2の電極(複数の場合もある)104の1つ又は複数の接合部に1つ又は複数のコンダクタンスチャネル120が形成される。上述したように、スイッチング層110に対して電圧を印加することにより、スイッチング材料112において材料の組成物の間で化学反応が発生し、それは、スイッチング層110においてコンダクタンスチャネル(複数の場合もある)120の形成をもたらすように設計されている。
【0042】
ステップ508を、第2の電極(複数の場合もある)104を設けた後に行うように説明したが、第2の電極(複数の場合もある)104を設ける前にアニーリング操作を行うことができることが理解されるべきである。さらに、
図5には明示的に示さないが、方法500は、
図4A及び
図4Bに関して上述したように、メモリスタに1つ又は複数の中間層420及び1つ又は複数の第2のスイッチング層110を設ける1つ又は複数の追加のステップを含むことができる。
【0043】
方法500を実施することにより、コンダクタンスチャネル120を形成するためにエレクトロフォーミング操作を実施する必要なしに、1つ又は複数のメモリスタ100の間のスイッチング層110にコンダクタンスチャネル120を形成することができる。方法500が、複数のメモリスタ100にコンダクタンスチャネル120を形成するように採用される場合、方法500を、メモリスタ100にコンダクタンスチャネル120を同時に形成するように実施することもできる。
【0044】
実験結果
図7は、電流対印加電圧、例えばIV曲線として提供される、上述した実施形態に従って形成されたメモリスタ100の動作特性のグラフ700を示す。x軸すなわち水平軸は、メモリスタ100、例えば第1の電極102及び/又は第2の電極104に印加された、ボルト単位のデバイス電圧を示す。y軸すなわち垂直軸は、スイッチング層110を通って流れる、アンペア単位の電流を示す。そこに示すように、グラフ700は、メモリスタ100が比較的低い抵抗状態にあるオン状態と、メモリスタ100が比較的高い抵抗状態にあるオフ状態とを示す。グラフ700はまた、コンダクタンスチャネル120のフォーミング操作中の電圧及び電流も示す。そこに示すように、コンダクタンスチャネル120を形成するために必要な電圧は、オン状態及びオフ状態に対する電圧と同等である。したがって、本明細書に開示するメモリスタは、エレクトロフォーミングが不要なメモリスタであるとみなされる。
【0045】
図8は、タンタルを含む第1の電極102、白金を含む第2の電極104、及び酸化タンタルから形成されたスイッチング層から形成されたメモリスタ100からもたらされる、最初の120億スイッチングサイクルのグラフ800を示す。そこに示すように、少なくとも最初の120億スイッチングサイクル中、オン状態に対する抵抗レベル(上部のデータ点)とオフ状態に対する抵抗レベル(下部のデータ点)との間の明確かつ繰返し可能な識別がある。これらの結果は、本明細書に開示したメモリスタ100が、種々の構成を有する以前のメモリスタと比較して、比較的高いレベルの耐久性を有していることを示す。
【0046】
本明細書に記載し例示したことは、実施形態及びその変形のうちのいくつかである。本明細書で使用した用語、説明及び図は、単に例として示されており、限定として意図されていない。当業者は、すべての用語が特に示さない限り最も広い合理的な意味が与えられている以下の特許請求の範囲(及びそれらの均等物)によって定義されるように意図されている、主題の趣旨及び範囲内で、多くの変形があり得ることを理解されよう。