(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796083
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】暗色クロム系電着物
(51)【国際特許分類】
C25D 3/06 20060101AFI20151001BHJP
C25D 15/02 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
C25D3/06
C25D15/02 G
【請求項の数】21
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-537665(P2013-537665)
(86)(22)【出願日】2011年8月16日
(65)【公表番号】特表2013-541646(P2013-541646A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】US2011047856
(87)【国際公開番号】WO2012060918
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年2月17日
(31)【優先権主張番号】12/940,249
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502304286
【氏名又は名称】マクダーミッド アキューメン インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ローシャン・チャパネリ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・トゥース
(72)【発明者】
【氏名】ローデリック ディー. ヘッドマン
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー エル. ハンディー
【審査官】
向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−041092(JP,A)
【文献】
特開2005−206872(JP,A)
【文献】
特開昭54−158339(JP,A)
【文献】
特開平09−209195(JP,A)
【文献】
特開2005−126769(JP,A)
【文献】
特開昭64−025997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/00〜 7/12
C25D 15/00〜15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に暗い色相のクロムコーティングを製造する方法であって、
a)三価クロムイオンと、前記三価クロムイオンを溶液状態に維持するための錯化剤とを含む三価クロム電解質を提供し、前記電解質がコロイダルシリカの分散体を更に含む工程と、
b)前記三価クロム電解質を用いてクロムを前記基板上に電着させる工程と、
を含み、
L*a*b*表色系に従って測定された65未満のL*値を有する前記暗い色相のコーティングが前記基板上に製造される方法。
【請求項2】
シリカ分散体が、1nm〜100nmの平均粒径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリカ分散体が、10nm〜40nmの平均粒径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
電解質中のコロイダルシリカの濃度が、0.5g/L〜150g/Lである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
電解質中のコロイダルシリカの濃度が、1g/L〜20g/Lである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
三価クロム電解質が、チオシアン酸イオン、鉄イオン、又はチオシアン酸イオンと鉄イオンとの組合せを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
三価クロム電解質が、チオシアン酸イオンを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
三価クロム電解質中のチオシアン酸イオンの濃度が、0.2g/L〜5g/Lである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
三価クロム電解質中のチオシアン酸イオンの濃度が、0.5g/L〜3g/Lである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
クロムコーティングが、60未満のL*値を有する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
クロムコーティングが、54未満のL*値を有する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
基板が下地基板上にニッケル析出物を含み、クロムが前記ニッケル析出物上にめっきされる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
三価クロム電解質のpHが、1〜4である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
三価クロムイオンと前記三価クロムイオンを溶液状態に維持するための錯化剤とを含む水性酸性三価クロム電解質であって、コロイダルシリカの分散体を更に含む、L*a*b*表色系に従って測定された65未満のL*値を有する電着によるクロムコーティングのための水性酸性三価クロム電解質。
【請求項15】
コロイダルシリカが、1nm〜100nmの平均粒径を有するシリカ分散体である請求項14に記載の電解質。
【請求項16】
シリカ分散体が、10nm〜40nmの平均粒径を有する請求項15に記載の電解質。
【請求項17】
電解質中のコロイダルシリカの濃度が、0.5g/L〜150g/Lである請求項14に記載の電解質。
【請求項18】
電解質中のコロイダルシリカの濃度が、1g/L〜20g/Lである請求項17に記載の電解質。
【請求項19】
電解質のpHが、1〜4である請求項14に記載の電解質。
【請求項20】
電解質が、チオシアン酸イオンを更に含む請求項14に記載の電解質。
【請求項21】
電解質が、チオシアン酸イオン、鉄イオン、又はチオシアン酸イオンと鉄イオンとの組合せを更に含む請求項14に記載の電解質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に電着による暗色のクロムコーティングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロムめっきは、クロム電解液から基板上へのクロムの電着を含む電気化学的工程である。クロムめっきの二つの一般的な種類は、硬質クロムめっき及び装飾クロムめっきである。硬質クロムめっきは、典型的には磨耗を防止するために、鋼基材上へのクロムの厚いコーティングの適用を含んでおり、約10μm〜約1000μmの範囲の厚みで存在する。装飾クロムめっきは、光沢及び反射性のある表面を実現するため、並びに直下の金属の変色、腐食及び傷を保護するための少なくともいずれかの美的目的で、約0.25μm〜約1.0μmの範囲のクロムの非常に薄い層を適用し、極めて薄いが硬質のコーティングを提供する。
【0003】
装飾目的のために、クロムは、一般的にニッケルのコーティング上に適用される。クロムは、クロム層が下地のニッケル析出物に対してカソードであることにより、硬質の耐摩耗性の層、及び優れた腐食性能を提供する。従って、下地のニッケル層は、腐食電池におけるアノードとなって優先的に腐食し、クロム層を腐食されないままにする。
【0004】
装飾クロムは、従来、例えば酸化クロム(CrO
3)及び硫酸から調製された含水クロム酸浴を使用して、六価クロムを含有する電解質から電気めっきされてきた。しかしながら、三価クロムイオンに基づく電解質も開発されてきた。六価クロムは、深刻な健康及び環境上の危険性を示すため、三価クロム塩に基づく電解質を使用するための動機が生じる。これに加え、六価クロムイオン及びそれらをめっきすることが可能な溶液は、めっき浴及び洗浄水の廃棄の高コストを含む技術的限界を有している。更に、実質的に六価のクロムイオンを含有する浴からのめっきの操作は、商業上許容できない析出物を生成する可能性を高める操作上の限界を有している。
【0005】
六価クロムに基づく電解質から得られたクロム析出物は、本質的に純粋なクロムであり、均一かつ不変の色を有している。薄い酸化物層がコーティング上に生じ、青白外観を提供する。しかしながら、より暗い色相を有するコーティングの市場の需要があり、より暗い色相を有するコーティングを製造することができる電解質を開発することが望ましい。この課題に対する部分的な解決は、三価クロムに基づく電解質からクロムコーティングを電着することにより得ることができる。しかしながら、三価クロムに基づく電解質により製造されるコーティングは、依然として一定の顧客のニーズを満たすのに十分に暗色ではなく、クロムに基づくより暗いコーティングを製造する改良された手段の要求が存在し続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、下地基板上に所望の暗い色相のコーティングを製造することができるクロム電解質を開発することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、所望の暗い色相を有するコーティングを製造することができるクロム電解質の添加剤を同定することにある。
【0008】
本発明の更に別の目的は、コロイダルシリカの分散液を、単独で又は他の添加剤と組み合わせてその中に組み込んだクロム電解質を開発することにある。
【0009】
本発明の更に別の目的は、本願明細書に記載のクロム電解質溶液を用いて所望の効果を得るために、ニッケル基板上に三価クロムをめっきする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、好ましい実施形態において、本発明は、一般的に、基板上に暗い色相の装飾クロムコーティングを製造する方法であって、
【0011】
a)三価クロムイオンと、前記三価クロムイオンを溶液状態に維持するための錯化剤とを含む三価クロム電解質を提供し、前記電解質が、所望の暗い色相を有するコーティングを基板上に製造することができる添加剤を含む工程と、
b)前記電解質を用いてクロムを前記基板上に電着させ、前記暗い色相のコーティングが前記基板上に製造される工程と、
を含む方法に関する。
【0012】
また、別の好ましい実施形態において、本発明は、一般的に、三価クロムイオンと前記三価クロムイオンを溶液状態に維持するための錯化剤とを含む水性酸性三価クロム電解質であって、該水性電解質は、暗い色相を有するコーティングを基板上に製造することができる添加剤を含み、前記添加剤は、コロイダルシリカと、チオシアン酸イオン、鉄イオン、及びチオシアン酸イオンと鉄イオンとの組合せからなる群から選択される添加剤とを含む水性酸性三価クロム電解質に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、下地基板上に暗い色相のコーティングを製造することができる三価クロム及びクロム合金電解質の開発に関する。特に、本発明は、所望の暗い色相を有するコーティングを製造することができる三価クロム電解質のための様々な添加剤の使用を対象としている。これらの添加剤は、コロイダルシリカ、チオシアン酸塩、及び共析出金属を含んでいてもよい。
【0014】
クロム電着物は、その装飾的外観、強度、及び耐食性から、長い間評価されてきた。しかしながら、広く電気めっき業界で使用されている全ての金属の中でも、クロムは、単純なクロム塩の溶液からそれを容易にめっきすることができないという点で異例である。従って、ほとんどの三価クロムめっき溶液は、クロムの錯体として存在し、電解質は、典型的には、三価クロムイオンと、三価クロムイオンを溶液状態に維持するための錯化剤とを含む。従って、クロムの錯体を用いるときの課題の一つは、安定であると同時にめっきを許容するのに十分に緩く結合した錯体を達成すること、及び、廃液の経済的な浄化を十分に許容するために洗浄水からのクロムの析出を可能にすることである。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明は、一般的に基板上に暗い色相のクロムコーティングを製造する方法に関し、該方法は、
a)三価クロムイオンと、三価クロムイオンを溶液状態に維持するための錯化剤とを含む三価クロム電解質を提供し、前記電解質が、所望の暗い色相を有するコーティングを基板上に製造することができる添加剤を更に含む工程と、
b)前記電解質を用いてクロムを前記基板上に電着させ、暗い色相のコーティングが前記下地基板上に製造される工程と、
を含む。
【0016】
また、本発明は、一般的に、三価クロムイオンと三価クロムイオンを溶液状態に維持するための錯化剤とを含む水性酸性三価クロム電解質であって、該水性電解質は、所望の暗い色相を有するコーティングを基板上に製造することができる添加剤を更に含み、前記添加剤は、コロイダルシリカと、チオシアン酸イオン、鉄イオン、及びチオシアン酸イオンと鉄イオンとの組合せからなる群から選択される添加剤とを含む、水性酸性三価クロム電解質に関する。
【0017】
三価クロムイオンと、三価クロムイオンを溶液状態に維持するための錯化剤とを含み、下地基板上にクロムコーティングを製造することができる様々な三価クロム電解質が開発されてきた。
【0018】
例えば、クロム又はクロム合金の電解質は、クロム(III)錯体と緩衝材料との水溶液を含んでいてもよく、該緩衝材料は、例えばその主題の全体が参照することにより本願明細書中に援用される米国特許第3,954,574号明細書(Gyllenspetz等)及び米国特許第4,054,494号明細書(Gyllenspetz等)に記載された錯体の配位子の一つを提供してもよい。
【0019】
前記緩衝材料は、好ましくはグリシン(NH
2CH
2COOH)のようなアミノ酸又はアミノ酸ポリマーであるペプチドである。アミノ酸は、強力な緩衝剤であるが、平衡時に、それらの窒素又は酸素原子を介した配位によりクロム(III)等の金属イオンとともに錯体を形成することもできる。従って、アミノ酸をクロム(III)錯体とともに平衡化することで、混合アミノ酸クロム(III)錯体が形成される。ギ酸塩、酢酸塩、及びホウ酸塩等を含む他の緩衝材料も使用することができる。
【0020】
クロム(III)硫酸チオシアン酸塩錯体、又はクロム(III)クロロチオシアン酸塩錯体のようなクロム(III)チオシアン酸塩錯体を使用してもよい。また、ニッケル、コバルト又は他の金属塩の溶液への添加によって、クロム及びこれらの金属の合金をめっきすることができる。
【0021】
別の実施形態では、前記三価クロム電解質は、例えばその主題の全体が参照することにより本願明細書中に援用される米国特許第4,141,803号明細書(Barclay等)及び米国特許第4,161,432号明細書(Barclay等)に記載されたものであってもよい。前記クロム電解質は、錯化剤と組み合わせた三価クロムを含む。前記溶液はまた、少なくとも六価クロムを実質的に含まない。前記クロム電解質は、臭化物、ギ酸塩(又は酢酸塩)、及び存在し得る任意のホウ酸イオンを単独のアニオン種として含んでいてもよい。典型的には、前記溶液は、実質的な六価クロムの形成を防止するのに十分な臭化物、クロムを錯化するのに有効な十分なギ酸塩、及び緩衝液として有効な十分なホウ酸塩のみを含み、カチオン含量の平衡を保つのに必要とされるアニオンの残りは、塩化物及び硫酸塩の少なくともいずれか等のより安価な種を含む。
【0022】
前記電解質は、臭化物に加え、フッ化物、又は好ましくは塩化物などのハロゲン化物イオンの他に、いくらかの硫酸イオンを前記ハロゲン化物に対して少ない割合で含有していてもよい。臭化物、並びに任意のフッ化物及び塩化物の少なくとも何れかに加えて存在してもよい任意のヨウ化物を含むハロゲン化物の総量は、ギ酸塩及び任意のホウ酸とともに本質的に溶液の総アニオン含量を提供する上で、随意的に十分であってもよい。前記電解質は、導電性塩のカチオン、及び前記アニオン種を導入するために使用される任意の塩のカチオンを含有していてもよい。任意成分としては、アンモニウムと、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、及びタングステン等の共析出可能な金属とを含む。共析出可能でない金属が随意的に存在していてもよい。界面活性剤及び消泡剤が有効かつ相溶性のある量で存在していてもよい。
【0023】
具体的なクロム電解質組成の例は上記であるが、本発明は、これらの特定のクロム電解質に限定されるものではなく、三価クロムイオンの供給源と、三価クロムイオンを溶液状態に維持することができる錯化剤とを含み、所望の暗い色相のコーティングを製造するためにコロイダルシリカ及び他の添加剤が添加されてもよい他の三価クロム電解質溶液もまた、本発明の範囲内である。
【0024】
本願明細書に記載のクロム電解質溶液は、典型的には15℃〜65℃の温度で使用される。5A/ft
2〜1000A/ft
2、好ましくは約50A/ft
2〜200A/ft
2の電流密度が採用されてもよい。
【0025】
最良の結果は浴が酸性であるときに得られ、好ましくはpHが約1〜約4である。低いpH値(2未満)では、いくらか被覆力の減少があり、pH1未満では許容できない。pHが4より大きいと、めっきの速度が不必要に遅くなる傾向がある。最適pHは、典型的には2〜3.5である。
【0026】
本明細書中に記載された組成物は、プラスチック及び非鉄基板だけでなく、より従来の鉄又はニッケル基板上に所望のコーティングを提供することができる。本発明は、銅又はその合金にも好ましく使用される。
【0027】
本願明細書に記載の電解質溶液から電気めっきする場合、炭素アノード等の不活性アノードが典型的には使用される。白金めっきチタン、白金、酸化イリジウム被覆チタン、又は酸化タンタル被覆チタン等の他の不活性アノードを使用してもよい。可溶性クロムアノードは、六価クロムの蓄積のため一般的には不適切である。しかしながら、特定の合金めっきのためには、鉄類またはクロム/鉄アノードを使用することも可能である。
【0028】
本明細書中で記載するように、所望の暗い色相のコーティングを基板上に製造するために、様々な添加剤がクロム電解質組成物に添加される。本発明者らは、コロイダルシリカ粒子に加えて好ましくは他の添加剤の三価クロム電解液への添加が、これらの粒子が存在しない同じ電解質から得られたものよりも、実質的により暗いコーティングの製造を可能とすることを見出した。更に、上述のような他の共析出可能な金属、特に鉄の取込みによって暗いコーティングを製造するために既に最適化された電解質にシリカ粒子が添加されたときに、最も暗いコーティングが得られる。
【0029】
好ましい実施形態では、所望の暗い色相を生成することが可能な添加剤は、コロイダルシリカの分散液を含む。コロイダルシリカ溶液は、様々な粒度分布の水性分散体として得てもよい。本発明者らは、約1nm〜約100nmの平均粒径、より好ましくは約10nm〜約40nmの平均粒径を有する分散体によって良好な結果が得られることを見出した。シリカのアニオン性及びカチオン性の両方の分散液が本発明の組成物に有効であることが見出された。好適なコロイダルシリカは、Grace Davisonから入手可能なLudox(R)TM40、Akzo Nobel Chemicalsからともに入手可能なBindzil 40/130及びLevasil 200A/40%、並びにNyacol Nano Technologies Inc.から入手可能なNexsil 20を含む。クロムめっき浴中に約0.5g/L〜約150g/L、より好ましくは約1g/L〜約20g/Lの濃度範囲のシリカが有効であることが見出された。
【0030】
また、コロイダルシリカの分散体に加えて、所望の暗い色相を生成することができる添加剤は、さらに、チオシアン酸イオン、鉄イオン、又はチオシアン酸イオンと鉄イオンとの組合せを含み、最も好ましくはチオシアン酸イオンを含む。クロムめっき浴におけるチオシアン酸イオンの濃度は、好ましくは約0.2g/L〜約5g/L、より好ましくは約0.5g/L〜約3g/Lである。使用する場合、クロムめっき浴中の鉄イオンの濃度は、好ましくは0.02g/L〜2g/Lである。
【0031】
本願明細書に記載の電解質を用いたクロムの電着によって製造された暗い色相のコーティングは、L
*a
*b
*表色系に従って測定されたL
*値が、好ましくは65未満、より好ましくは60未満、最も好ましくは54未満である。
【0032】
好ましい実施形態では、基板は、下地基板上にニッケルまたは銅析出物を含み、クロムが該ニッケル又は銅析出物上にめっきされる。
【0033】
以下の非限定的な実施例は、本発明の組成物の有効性を示している。後述する全ての実施例は、マグネチックスターラー攪拌を備えたハルセル中で10ミクロンの光沢ニッケル析出物で被覆されたハルセル真ちゅう板をめっきすることによって準備された。
【0034】
クロム電解液中のシリカの有効性を実証するため、L
*a
*b
*表色系に従ってL
*値を測定することにより様々な実施例の「明度」の値を分析するためにコニカミノルタのCM2600d分光光度計を使用した。これは、添加剤の様々な組合せ(この値が大きい程、析出はより明るい)により得られた暗色化の程度を比較するために使用することができる定量値(L
*)を与える。暗さを測定するための許容可能な基準は、CIE S 014−4/E:2007/ISO11664−4 colorimetry−Part 4: CIE 1976 L
*a
*b
* Colorspaces(国際照明委員会/2008年12月1日)である。
【0035】
L
*値は試料の「明度」を表し、L
*の値は0〜100のスケールでの光反射率の割合に基づいている。L
*値が0の場合は試料が黒色であり、一方L
*値が100の場合は試料が白色である。0〜100反射率のどこかに収まる試料は、灰色の変動である。L
*値が0に近い場合、試料は暗い灰色であり、一方、L
*値が100に近い場合、試料は明るい灰色であろう。L
*値を取得するために標準的な計算が行われる。a
*は、−60を緑とし、60を赤として、試料が−60〜60スケールでどの程度緑〜赤であるかを表している。b
*は、−60を青とし、60を黄として、試料が−60〜60スケールでどの程度青〜黄であるかを表している。
【0036】
実施例において標準として使用されている電解質は、明るい色のクロム析出物を製造するために指定された市販の電解質(MacDermid, Inc.から入手可能なMacrome(R)CL3)である。この電解質は、その主題の全体が参照することにより本願明細書中に援用される米国特許第3,954,574号明細書(Gyllenspetz等)及び米国特許第4,054,494号明細書(Gyllenspetz等)に記載された組成に基づいている。また、上述したように、本発明者らはまた、その主題の全体が参照することにより本願明細書中に援用される米国特許第4,141,803号明細書(Barclay等)及び米国特許第4,161,432号明細書(Barclay等)に記載されたようなコロイダルシリカの電解質への添加もまた有益な結果をもたらすことを見出した。
【0037】
以下の工程条件が利用された(明示的に記載されている場合を除く):
温度:30℃
pH:2.8
時間:5分
電流:5アンペア
【0038】
析出物の明度は、全ての場合において平方デシメートル(ASD)当たり10アンペアの電流密度に対応したハルセルパネル上の点(パネルの高電流密度側から40mm)で測定した。
【実施例】
【0039】
比較例1
標準的なクロム電気めっき浴(MacDermid, Inc.から入手可能なMacrome(R)CL3)を使用してパネルをめっきした。析出物の明度を測定し、78.12のL
*値を有することが分かった。
【0040】
比較例2
標準的なクロム電気めっき浴(MacDermid, Inc.から入手可能なMacrome(R)CL3)を使用し、0.5g/Lのチオシアン酸ナトリウムを添加してパネルをめっきした。析出物の明度を測定し、67.94のL
*値を有することが分かり、チオシアン酸イオンの添加が析出物を暗くすることができることを示した。
【0041】
比較例3
標準的なクロム電気めっき浴(MacDermid, Inc.から入手可能なMacrome(R)CL3)を使用し、3g/Lのチオシアン酸ナトリウムを添加してパネルをめっきした。析出物の明度を測定し、62.4のL
*値を有することが分かった。これは、チオシアン酸塩を添加することによって得ることができる最も暗い実用上の限界を表す。高濃度チオシアン酸塩においては、被膜特性が悪影響を受け、析出工程中の硫化水素の発生が問題となる。
【0042】
実施例1
標準的なクロム電気めっき浴(MacDermid, Inc.から入手可能なMacrome(R)CL3)を使用し、20mL/LのLudox(R) TM40(平均粒径27nmのコロイダルシリカの40%懸濁液)を添加してパネルをめっきした。析出物の明度を測定し、64のL
*値を有することが分かった。これは、比較例1と比較して18%の析出物の明度の低下に該当する。
【0043】
実施例2
標準的なクロム電気めっき浴(MacDermid, Inc.から入手可能なMacrome(R)CL3)を使用し、0.5g/Lのチオシアン酸ナトリウムと20mL/LのLudox(R) TM40(平均粒径27nmのコロイダルシリカの40%懸濁液)とを添加してパネルをめっきした。析出物の明度を測定し、57.44のL
*値を有することが分かった。これは、比較例2と比較して15%の析出物の明度の低下に該当する。
【0044】
実施例3
標準的なクロム電気めっき浴(MacDermid, Inc.から入手可能なMacrome(R)CL3)を使用し、3g/Lのチオシアン酸ナトリウムと20 mL/LのLudox(R) TM40(平均粒径27nmのコロイダルシリカの40%懸濁液)とを添加してパネルをめっきした。析出物の明度を測定し、53.79のL
*値を有することが分かった。これは、比較例3と比較して14%の析出物の明度の低下に該当する。
【0045】
従って、上記の実施例及び比較例から、コロイダルシリカの添加が析出物の著しい暗色化を付与したこと、及びシリカとチオシアン酸塩との組合せが良い結果を提供したことが分かる。特に、実施例3から生じた析出物は、シリカの添加なしで実現することができたものよりも遥かに暗い外見を有し、非常に暗く、光沢があり、美容上魅力的な析出物を生じさせた。
【0046】
また、以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載の全ての本発明の一般的及び具体的な特徴、並びに文言上その間に収まる可能性のある本発明の範囲の全ての記載を包含することが意図されると理解されるべきである。