(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一つの回転軸、前記他の回転軸は中空の管で構成されており、前記中空の管を介して流体が前記グリップの内部を輸送されるようにしてある請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のハンドピース。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1と特許文献3に開示されているハンドピースは、第1回転軸のヘッド部側に内歯車を有し、それが第2回転軸の接続部側外歯車に噛み合う構造、所謂インターナルギアシステムを採用している。このため、歯車間の噛み合い率が十分に大きく、歯と歯の円滑な噛み合わせが得られる結果、駆動時の騒音が少ない。歯車の噛み合い率は、互いに噛み合っている2つの歯車において同時に噛み合っている歯の組数を表し、その値が大きい程、回転伝達力を負担する歯の数が多いことから、円滑な回転が得られ、歯の磨耗が少なく、各歯に作用する力が少なくなる。そのため、一般的に、歯車が常時噛み合いを維持するためには、噛み合い率が1.0以上、実際には1.2以上であることが望ましい。
【0008】
しかしながら、第2回転軸のヘッド部側と第3回転軸の接続部側は外歯車同士の噛み合いであることから、噛み合い率を大きくすることが難しい。その結果、噛み合う歯にかかる負荷(曲げ応力)が大きく、歯車の安定した噛み合わせが得られず、結果として、歯の噛み合い時に騒音が発生し、歯の磨耗が著しく、短期間の使用で歯が損傷する。
【0009】
逆に、外歯車の噛み合い率の値を大きくするために両外歯車の径を大きくすると、これら外歯車を囲うハンドピース屈曲部の外径が大きくなり、術者が把持しにくかったり、歯牙切削時に該屈曲部が患者の前歯に接触したりして歯科治療が思うように行えないという問題がある。
【0010】
特許文献2に開示されている医科歯科用ハンドピースにあっては、治療工具を所定の回転数で高速駆動させるため、第1回転軸のヘッド部側に位置する大径内歯車とこれに内接して第2回転軸の接続部側に位置する小径外歯車との歯数比が大きくなるように、大径内歯車の歯数に対して小径外歯車の歯数を小さくしている。しかし、小径外歯車の歯数が少なくなる程、両歯車間のバックラッシュが大きくなって騒音が大きくなり、1つの歯にかかる応力が大きくなり、歯の耐久性が低下する。
【0011】
特許文献4に開示されている回転速度切換装置は、回転駆動機構として遊星歯車を採用
しているため、その回転駆動機構の構成が極めて複雑である。
【0012】
したがって、本発明は、このような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、その目的とするところは、歯厚を十分に確保した状態で歯車間の噛み合い率の値を大きくでき、歯車間に安定した噛み合わせが得られ、歯車の耐久性を向上し、かつ、治療工具を高速で回転駆動できる医科歯科用ハンドピースを提供することにある。また、本発明の他の目的は、歯牙切削時に術者が使用しやすい医科歯科用ハンドピースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の医科歯科用ハンドピースは、グリップと、前記グリップの先端に設けたヘッドを備え、前記ヘッドに着脱自在に工具を装着する医科又は歯科用のハンドピースにおいて、前記ハンドピースの内部に、少なくとも一つの回転軸と、他の回転軸とを収容し、前記一つの回転軸から前記他の回転軸に回転を伝達する歯車機構を有し、前記歯車機構は、前記一つの回転軸に固定された大径の歯車と、前記他の回転軸に固定された小径の歯車を噛み合わせて構成され、前記一つの回転軸の中心軸と前記他の回転軸の中心軸が交差し、前記大径の歯車の周縁に接する仮想円筒面の内側に前記小径の歯車が実質的に内包されており、前記大径の歯車は一つの円錐角を有する一つのピッチ円錐をもって定義される歯車であり、前記小径の歯車は前記一つの円錐角よりも小さな他の円錐角を有する他のピッチ円錐をもって定義される歯車であり、前記他のピッチ円錐の頂点が前記一つの回転軸の中心軸上であって、前記一つのピッチ円錐の頂点と同じ位置にある。
【0014】
前記歯車機構における軸角度が鈍角であることが好ましい。
【0015】
前記一つのピッチ円錐に前記他のピッチ円錐が内接していることが好適である。
【0016】
前記一つの回転軸の中心軸と前記他の回転軸の中心軸とが交差してなる軸角度をα3とし、前記一つの円錐角をδ1とし、前記他の円錐角をδ2としたとき、前記軸角度α3は、前記一つの円錐角δ1と前記他の円錐角δ2との差(δ1−δ2)の補角{=180°−(δ1−δ2)}の関係にあることが好ましい。
【0017】
前記歯車機構において、前記大径の歯車の歯面は、前記一つのピッチ円錐を構成する任意の母線の方向から見たときに凹状をしていてもよい。
【0018】
第1の回転軸と、第2の回転軸と、第3の回転軸を前記ハンドピースの内部に収容し、前記歯車機構は、前記第1の回転軸から前記第2の回転軸に回転を伝達する第1の歯車機構と、前記第2の回転軸から前記第3の回転軸に回転を伝達する第2の歯車機構とで構成され、前記第1の歯車機構において、前記第1の回転軸は前記一つの回転軸であり、前記第2の回転軸は前記他の回転軸であり、前記第2の歯車機構において、前記第2の回転軸は前記一つの回転軸であり、前記第3の回転軸は前記他の回転軸であることが好ましい。
【0019】
前記ヘッド内には、前記工具を把持するロータと一体に構成されたロータ歯車が設けられており、前記第3の回転軸には、前記ロータ歯車と噛み合う別の歯車が設けられており、前記ロータ歯車と前記別の歯車が第3の歯車機構を構成しており、前記ロータ歯車の歯数が前記別の歯車の歯数よりも多いことが好適である。また、前記一つの回転軸、前記他の回転軸は中空の管で構成されており、前記中空の管を介して流体が前記グリップの内部を輸送されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のハンドピースによれば、第1の歯車機構及び第2の歯車機構をそれぞれ構成する一対のギアは、歯厚を十分に確保することができ、それらの歯面が極めて良好に噛み合い、駆動側のギアから従動側のギアに力が効率よく伝達される。それ故、駆動時の騒音等が軽減するとともに、ギアの耐久性が向上する。したがって、強度の高いギアの設計が可能となる。これにより、歯厚を十分に確保した状態で歯車間の噛み合い率の値を大きくでき、歯車間に安定した噛み合わせが得られ、歯車の耐久性を向上し、かつ、治療工具を高速で回転駆動できる医科歯科用ハンドピースを提供できる。
【0021】
また、噛み合う2つのギアを構成している一方の歯車の外径を収容し得る最小の大きさとすることができる。したがって、グリップの外径を出来るだけ小さくすることにより、ハンドピースをしっかりと握って治療ができ、更には施術中にグリップが人体(歯科治療であれば歯牙)に触れる事態を未然に防ぐことができる。これにより、歯牙切削時に術者が使用しやすい医科歯科用ハンドピースを提供できる。
【0022】
更に、グリップで設けた2つの歯車機構で十分な増速が可能であり、ヘッド部に設けられた第3の歯車機構において、減速ができるため、同じ歯厚でヘッドの高さを小さくすることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る医科歯科用ハンドピースについて、添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、「前」、「後」及び「上流」、「下流」それらの用語を含む用語を便宜上用いるが、これらは発明の解釈を容易にするためのものであり、それらの用語によって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されるべきではない。なお、本明細書では、各構成要素の位置関係について、ハンドピースの後端側(駆動源側)を「接続部側」、ハンドピースの先端側を「ヘッド部側」という。
【0025】
《全体構成》
図1、
図2、及び
図3に示すように、本発明の実施の形態に係る医科歯科用ハンドピース(以下、「ハンドピース」という。)1はコントラアングル型ハンドピースである。ハンドピース1は、図の左側に表されたヘッド2と図の右側に表されたグリップ3を有する。ヘッド2は、種々の切削工具50が着脱自在に装着される部位である。グリップ3は、ハンドピース1を使用して医科治療又は歯科治療を行う術者(歯科医、歯科衛生士)に把持される逆「へ」の字形状の部位で、接続部側外筒部4と該接続部側外筒部4の先端側に連接されたヘッド部側外筒部5を有する。図示するように、接続部側外筒部4の中心軸6とヘッド部側外筒部5の中心軸8は所定の角度をもって交差している。角度α1は、両中心軸6,8の交点を通る接続部側中心軸6の延長線と、その交点からヘッド部側に伸びるヘッド部側中心軸8とのなす角の補角である。したがって、角度α1は90度以上180度未満である。ヘッド部側中心軸8とヘッド2の中心軸9(この中心軸は切削工具50の中心に一致する)のなす角度α2は約90度である。
【0026】
ヘッド2は、中空筒状のハウジング10を有する。ハウジング10の上部開口は着脱自在なキャップ11で塞がれている。ハウジング10の内側には、ヘッド中心軸9を中心に切削工具50を保持するチャック機構付のロータ12と、ロータ12を回転可能に支持するベアリング13,14が収容されている。ロータ12は、円筒形をしており、その下部外周面に、ヘッド中心軸9を中心とする円周に沿って多数の歯(ギア)を配置した傘歯車(以下、「ロータギア」という。)15が一体的に形成されている。
【0027】
ヘッド2は、ハウジング10と一体的に形成されて接続部側に向かって伸びる連結部16を備えており、この連結部16にグリップ3が着脱自在に連結されている。図示するように、連結部16とグリップ3はそれぞれ中空の筒形状をしている。具体的に、連結部16は、ヘッド部側中心軸8に沿って伸びる内腔17を有する。グリップ3は、中空部材(接続部側外筒部4とヘッド部側外筒部5)を有し、ヘッド部側外筒部5の先端側が連結部16の後端側に着脱自在に連結されており、これらヘッド部側と接続部側の中空部材の内腔20,26が連結部16の内腔17とともに、以下に説明する回転伝達機構の収容空間を形成している。
【0028】
《回転伝達機構》
回転伝達機構は、接続部側からヘッド部側に向かって順番に配置された3つの第1〜第3の回転伝達部100,200,300を有する。実施の形態では、第1の回転伝達部100と第2の回転伝達部200は、グリップ3の接続部側外筒部4とヘッド部側外筒部5の内腔20,26に固定された筒状の位置決め部23に保持されている。また、位置決め部23は、円筒状のヘッド部側位置決め部材24と、円筒状の接続部側位置決め部材25を組み合わせて構成されている。回転伝達機構には、高強度及び高硬度が得られるSUS420J2やSUS440C等のマルテンサイト系ステンレス鋼が用いられる。
【0029】
《第1の回転伝達部100》
第1の回転伝達部100は、第1の回転軸101を有する。第1の回転軸101は、グリップ3の接続部側中心軸6に沿って配置された第1のシャフト102を有する。第1のシャフト102は、2つの中空シャフト部−接続部側シャフト部103と該接続部側シャフト部103の先端側に外装されたヘッド部側シャフト部104を有する。ヘッド部側シャフト部104は、ヘッド部側位置決め部材24の内腔26に固定された軸受105に回転可能に支持されている。接続部側シャフト部103は、ヘッド部側シャフト部104の内側に挿入され、接続部側シャフト部103に対して回転不能に且つ接続部側中心軸6に沿って接続部側シャフト部103に対して相対的に移動可能に保持されている。そのために、
図2に示すように、実施の形態では、ヘッド部側シャフト部104内に形成された貫通孔106にボール107を収容し、このボール107を接続部側シャフト部103の外周に形成されたスラスト溝(軸方向溝)108に係合している。また、ヘッド部側シャフト部104の周囲にはヘリカルスプリング109が外装されており、そのヘッド部側が軸受105に当接され、その接続部側が接続部側シャフト部104の外周突部110に当接され、接続部側シャフト部103がヘッド部側シャフト部104に対して接続部側に付勢されている。
【0030】
ヘッド部側シャフト部104の先端側は径方向外側に拡大して形成された第1フランジ部111と、該フランジ部111の外周端部をヘッド部側に伸ばして形成された第2フランジ部112を有し、該第2フランジ部112の後端側に内歯車(以下、「ドライブギア」という。)113が形成されている。
図3に詳細に示すように、ドライブギア113は、周方向に一定のピッチで形成された多数の歯114を有する。このドライブギア113、特に、歯114の構成は、後に詳細に説明する。
【0031】
《第2の回転伝達部200》
第2の回転伝達部200は、中空の管状部材からなる第2の回転軸201を有する。第2の回転軸201は、ヘッド部側位置決め部材24のヘッド部側内腔27に、ヘッド部側軸受202と接続部側軸受203を介して、回転自在に支持されている。図示するように、ヘッド部側位置決め部材24に形成されている接続部側内腔26とヘッド部側内腔27は、それらの中心軸が、同一平面(
図2の横断面)上で所定の角度α3をもって交差するように形成されている。第2の回転軸201はまた、接続部側が径方向外側に向けて拡大して大径部204が形成され、さらに、大径部204の外周に外歯車(以下、「ピニオンギア」という。)205が形成されており、また、ヘッド部側が径方向外側に向けて拡大して大径部206が形成され、さらに、大径部206のヘッド部側に傘歯車(以下、「中間ドライブギア」という。)207が形成されている。
図3に示すように、ピニオンギア205は、ヘッド部側中心軸7を中心とする円周に沿って等ピッチに配置された多数の歯208を有し、この歯208がドライブギア113の歯114と噛み合うようにしてある。また、
図4に示すように、中間ドライブギア207は、ヘッド部側中心軸7を中心とする円周に沿って等ピッチに配置された多数の歯209を有する。なお、実施の形態では、ヘッド部側軸受202と接続部側軸受203の間にヘリカルスプリング210が配置され、両軸受202,203がヘッド部側位置決め部材24に対して位置決めされている。
【0032】
《第3の回転伝達部300》
第3の回転伝達部300は、中空の管状部材からなる第3の回転軸301を有する。第3の回転軸301は、その中心軸をヘッド部側中心軸8に一致させてヘッド連結部16の内腔17に収容されており、ヘッド部側軸受302と接続部側軸受303により、ヘッド部側中心軸8を中心に回転可能に支持されている。第3の回転軸301はまた、接続部側を径方向外側に拡大して大径部304が形成され、さらに大径部304の外周に歯車(以下、「中間ドライブギア」という。)305が形成されており、ヘッド部側を径方向外側に拡大して大径部306が形成され、さらに大径部306の外周に歯車(以下、「フロントギア」という。)307が形成されている。
図4に示すように、中間ドライブギア305は、ヘッド部側中心軸8を中心とする円周に沿って等ピッチに配置された多数の歯308を有し、この歯308が中間ドライブギア207の歯209と噛み合うようにしてある。また、
図2に示すように、フロントギア307は、ヘッド部側中心軸8を中心とする円周に沿って等ピッチに配置された多数の歯309を有し、この歯309がロータギア15と噛み合うようにしてある。なお、実施の形態では、ヘッド部側軸受302と接続部側軸受303の間にヘリカルスプリング310が配置され、両軸受302,303がヘッド連結部16に対して位置決めされている。
【0033】
《組立》
このような構成を備えたハンドピース1の組立、特に第1〜第3の回転伝達部100,200,300の組み付けについて説明する。ヘッド2とグリップ3が分離されている状態で、第3の回転伝達部300がヘッド2に組み付けられ、第1の回転伝達部100と第2の回転伝達部200がグリップ3に組み付けられる。
【0034】
図2に示すように、実施の形態では、ヘッド2の連結部16は、ハウジング10と一体的に形成されたヘッド部側連結部30と、このヘッド部側連結部30の接続部側に連結される接続部側連結部31を有する。また、第3の回転軸301は、中空シャフト311と、中空シャフト311の接続部側端部とヘッド部側端部に着脱自在に連結される歯車部材で構成されており、これら歯車部材に中間ドライブギア305、フロントギア307がそれぞれ形成されている。したがって、組み付け時、例えば、接続部側連結部31の内腔(内腔17)に中空シャフト311を配置する。次に、中空シャフト311の接続部側に、接続部側軸受303を外装し、中間ドライブギア305を固定する。また、中空シャフト311のヘッド部側に、ヘリカルスプリング310、ヘッド部側軸受302を外装し、フロントギア307を固定する。次に、このようにして第3の回転軸301を固定した接続部側連結部31をヘッド部側連結部30に連結し、フロントギア311をヘッド2のロータギア15に噛み合わす。
【0035】
第1の回転伝達部100と第2の回転伝達部200は、グリップ3に装着する前に、位置決め部23に位置決めされる。そのために、第2の回転伝達部200の第2の回転軸201は中空シャフト211を有し、該中空シャフト211のヘッド部側に中間ドライブギア207が一体に形成され、該中空シャフト211の接続部側に歯車部材が着脱自在に連結され、該歯車部材にピニオンギア205が形成されている。したがって、組み付け時、位置決め部材24のヘッド部側内腔27にそのヘッド部側から接続部側軸受203、ヘリカルスプリング210、ヘッド部側軸受202を順次挿入した後、ピニオンギア205を外した中空シャフト211を挿入し、それらの部材を位置決めする。次に、位置決め部材24のヘッド部側内腔27の接続部側から突出した中空シャフト211の接続部側端部にピニオンギア205を有する歯車部材を固定する。
【0036】
一方、第1の回転伝達部100については、ヘッド部側位置決め部材24の接続部側内腔26にヘッド部側シャフト部104を配置し、第1の回転軸101のドライブギア113を、ヘッド部側位置決め部材24に位置決めされた第2の回転軸201のピニオンギア205を噛み合わせる。その後、ヘッド部側シャフト部104の周囲に軸受105を装着し、第1の回転軸101を回転可能に位置決めする。なお、第1の回転軸101のヘッド部側シャフト部104をヘッド部側位置決め部材24に位置決めする作業は、第2の回転軸201をヘッド部側位置決め部材24に位置決めする作業よりも先に行ってもよい。
【0037】
次に、ヘリカルスプリング109を外装した接続部側シャフト部103のヘッド部側をヘッド部側シャフト部104の接続部側に挿入し、接続部側シャフト部103をヘッド部側シャフト部104とともに回転可能に且つ接続部側シャフト部103をヘッド部側シャフト部104に対して軸方向に相対的に移動可能に連結する。
【0038】
最後に、接続部側位置決め部材25をヘッド部側位置決め部材24の接続部側に連結する。
【0039】
このようにして第1の回転伝達部100と第2の回転伝達部200が組み付けられた位置決め部23は、ヘッド部外筒部5にその接続部側から挿入されて位置決めされる。その後、ヘッド部側外筒部5の接続部側に接続部側外筒部5を連結し、グリップ3が完成する。
【0040】
組み立てられたグリップ3は、そのヘッド部側をヘッド連結部16の接続部側に連結する。このとき、第2の回転軸201の接続部側にある中間ドライブギア207が第3の回転軸301の接続部側にある中間ドライブギア305に噛み合わされる。
【0041】
ハンドピース1の使用時、その接続部側に、モータを内蔵した駆動部(図示せず)が矢印方向から連結され、モータの駆動軸が第1の回転軸101を構成する接続部側シャフト部103の端部に連結される。このとき、接続部側シャフト部103はヘリカルスプリング109によって接続部側に付勢されているので、モータの駆動軸に確実に圧接して連結される。したがって、駆動部のモータの回転は、第1の回転軸101、第2の回転軸201、第3の回転軸301を介してロータ12に伝達され、そこに装着された切削工具50を回転する。
【0042】
モータの回転数に対する切削工具50の回転数の比率(増速率)は、複数の歯車機構を構成しているギアの歯数に依存する。実施の形態では、ドライブギア113の歯数が“23”、ピニオンギア205の歯数が“5”、中間ドライブギア207の歯数が“11”、中間ドライブギア305の歯数が“8”、フロントギア307の歯数が“11”、ロータギア15の歯数が“12”に設計されている。したがって、モータの回転数は、第1の回転軸101から第2の回転軸201に回転を伝達する第1の歯車機構(ドライブギア113とピニオンギア205)1000で増加し、さらに、第2の回転軸201から第3の回転軸301に回転を伝達する第2の歯車機構(中間ドライブギア207,305)2000で更に増加し、そして、第3の回転軸301からロータ12に回転を伝達する第3の歯車機構(フロントギア307とロータギヤ15)3000で減少し、全体として、モータの回転数は4.15倍増速される。例えば、モータの回転数が40,000rpmの場合、回転数は第1の歯車機構1000で132,000rpmに増加し、第2の歯車機構2000で185,000rpmに増加し、最後に、第3の歯車機構3000で166,000rpmに調整される。このように、第3の歯車機構3000では回転数が減少するため、この第3の歯車機構3000を構成するフロントギア307とロータギア15の受けるストレスが減少し、それらを長期間に亘って使用できる。また、フロントギア307を小径化できる結果、同じ歯厚でヘッド2の高さSを短くできる。それ故、ヘッド2の小型化が図れ、歯牙切削時において人体の奥歯に治療工具50が届かない問題を解消できる使いやすいハンドピース1を提供できる。
【0043】
以上の構成に加えて、実施の形態のハンドピース1は、ヘッド2のハウジング10の下部(切削工具50の刃先に臨む箇所)に、エアー噴出口40が形成され、そこから切削工具50の先端部近傍にエアーが噴射されるようにしてある。例えば、エアー噴出口40までのエアーの供給は、ハンドピース1の内部に形成されている空間を利用してもよいし、実施の形態のように第1〜第3の回転軸101,201,301を中空円筒部材で構成した場合、それら回転軸の内腔をエアー供給経路の少なくとも一部として利用することができる。なお、回転軸101,201,301の内腔は、ハンドピース1を洗浄するときの潤滑剤の供給経路としても使用できる。また、実施の形態のハンドピース1では、ハンドピース1の内腔にライトガイド41を配置し、切削工具50の刃先近傍に向けて光を照射するようにしてもよい。
【0044】
《歯車機構の特徴1》
第1の歯車機構1000と第2の歯車機構2000の特徴ついて説明する。先ず、
図3に示すように、第1の歯車機構1000において、第1の回転軸101の中心軸6を中心とし、且つドライブギア113の周縁に接する円筒面1001を仮想した場合、この仮想円筒面1001にピニオンギア205の歯208が実質的に内包されている。なお、「実質的に内包されている」とは、歯208が完全に仮想円筒面1001に内包されている場合だけでなく、一部の歯208の一部が僅かに仮想円筒面1001の外側に存在する場合も含む。
【0045】
同様に、
図4に示すように、第2の歯車機構2000において、第2の回転軸201の中心軸6を中心とし、且つ中間ドライブギア207の周縁に接する円筒面2001を仮想した場合、この仮想円筒面2001に中間ドライブギア305の歯308が実質的に内包されている。「実質的に内包されている」とは、歯308が完全に仮想円筒面2001に内包されている場合だけでなく、一部の歯308の一部が僅かに仮想円筒面2001の外側に存在する場合も含む。
【0046】
このように、第1の歯車機構1000、第2の歯車機構2000が構成されていることにより、これら歯車機構1000,2000を内包するグリップ部分の内腔はそれぞれ、噛み合う2つの歯車を構成している一方の歯車の外径を収容し得る最小の大きさとすることができる。したがって、グリップ3の外径を出来るだけ小さくすることにより、施術中にグリップ3が人体(歯科治療であれば歯牙)に触れる事態を未然に防ぐことができる。
【0047】
《歯車機構の特徴2》
第1の歯車機構1000の別の特徴を説明する。
図5に示すように、第1の歯車機構1000を構成する一方のドライブギア113の第1のピッチ円錐120は、その頂点121が該ドライブギア113の末端側にあって、第1の回転軸101の中心軸6上にある。また、第1の歯車機構1000を構成する他方のピニオンギア205の第2のピッチ円錐220も、その頂点221が同軸(中心軸6)上にあって上記第1のピッチ円錐120の頂点121と同じ位置にある。さらに、第2のピッチ円錐220が第1のピッチ円錐120に内接しており、第2のピッチ円錐220の底円222が第1のピッチ円錐120の底円122に内接している。そして、ドライブギア113の歯面(特に、ピニオンギア205と噛み合う部分)とピニオンギア205の歯面(特に、ドライブギア113と噛み合う部分)は、頂点121,221から伸びる線の延長上に形成されている。したがって、第1の歯車機構1000を構成する2つのギア(ドライブギア113とピニオンギア205)はそれらの歯面が極めて良好に噛み合い、ドライブギア113からピニオンギア205に力が効率よく伝達される。
【0048】
なお、第1の回転軸101の中心軸6と第2の回転軸201の中心軸7の交角である軸角度α3(
図5(b)参照)は、90度以上で180度未満の範囲で設定される。実施の形態では、軸角度α3は約170度の鈍角に設定されている。なお、図示のとおり、軸角度α3は、第1のピッチ円錐120のピッチ円錐角δ1と第2のピッチ円錐220のピッチ円錐角δ2との差(δ1−δ2)の補角{=180°−(δ1−δ2)}に相当する。
【0049】
本願明細書において軸角度とは、歯車対で、両歯車の回転の向きが逆になるように一方の軸を両歯車軸の共通垂線の周りに旋回させ、両軸を平行とするか、一致させるのに要する最小の角度のことをいう。
【0050】
《歯車機構の特徴3》
図4に示すように、第2の歯車機構2000を構成する一方の中間ドライブギア207の第3のピッチ円錐230は、その頂点231が該中間ドライブギア207の接続部側にあって、第2の回転軸201の中心軸7上にある。また、第2の歯車機構2000を構成する他方の中間ドライブギア305の第4のピッチ円錐330も、その頂点331が同軸(中心軸29)上にあって上記第3のピッチ円錐230の頂点231と同じ位置にある。さらに、第4のピッチ円錐330が第3のピッチ円錐230に内接しており、第4のピッチ円錐330の底円332が第3のピッチ円錐230の底円232に内接している。そして、2つの中間ドライブギア207,305の歯面(特に、他方のドライブギアと噛み合う部分)は、頂点231,331から伸びる線の延長上に形成されている。したがって、第2の歯車機構2000を構成する2つのギア(中間ドライブギア207,305)はそれらの歯面が極めて良好に噛み合い、一方の中間ドライブギア207から他方の中間ドライブギア305に力が効率よく伝達される。
【0051】
なお、第2の回転軸201の中心軸7と第3の回転軸301の中心軸8(ヘッド部側中心軸8)の交角である軸角度α4は、90度以上で180度未満の範囲で設定される。実施の形態では、軸角度α4は約160度の鈍角に設定されている。上述の軸角度α3と同様に、軸角度α4は、第3のピッチ円錐230のピッチ円錐角δ3と第4のピッチ円錐330のピッチ円錐角δ4との差(δ3−δ4)の補角{=180°−(δ3−δ4)}に相当する。なお、実施の形態では、第1の歯車機構1000の第1の回転軸101の中心軸6と第2の回転軸201の中心軸7の交角である軸角度α3と、第2の歯車機構2000の第2の回転軸201の中心軸7と第3の回転軸301の中心軸8(ヘッド部側中心軸8)の交角である軸角度α4を共に90度以上180度未満の鈍角に設定しているが、これに限らず、第1の歯車機構1000及び第2の歯車機構2000のうち、少なくとも一方の軸角度を90度以上180度未満の鈍角に設定することも可能である。
【0052】
《歯車機構の特徴4》
図6は第1の歯車機構1000を構成するドライブギア113を示し、特に、
図6(b)はドライブギア113のピッチ円錐120を構成している任意の母線124に沿ってヘッド部側から歯114を見た図である。この図に示すように、ピニオンギア205と噛み合うドライブギア113の歯面125、特に、ピッチ円錐120の母線124に直交する断面VI-VI方向から見て歯元126から歯先127までの部分が、内側に向かって凹状に窪んだ曲面で形成されている。これに対し、ドライブギア113と噛み合うピニオンギア205の歯面(図示せず)は、通常の歯面のように、外側に凸状に突出した曲面で形成される。なお、凸状歯面はインボリュート歯形であってもよい。
【0053】
図示しないが、同様に、第2の歯車機構2000、第3の歯車機構3000についても、それらを構成する従動側のギアの歯面を外側に凸状に突出した曲面とし、駆動側のギアの歯面をそれに対応する凹状曲面としてもよい。なお、従動側ギアの凸状歯面はインボリュート歯形であってもよい。
【0054】
凹状曲面を有する歯車と平面(非凹面、非凸面)の歯面を有する歯車のそれぞれについて、これらが凸状歯面を有する歯車と噛み合うときの各歯に加わる最大せん断応力(Von Misesによる最大せん断応力)を有限要素法で計算した。その結果、平面の歯面を有する歯に作用する最大せん断応力は、凹状曲面の歯面を有する歯に作用する最大せん断応力の約1.2倍であるという計算結果を得た。この計算結果から明らかなように、駆動側ギアの歯面を凹状とすることにより、ギアの長寿命化を達成できることが理解できる。
【0055】
以上の説明では、第1の歯車機構1000と第2の歯車機構2000は、一方のギアの中心軸と他方のギアの中心軸が交差する形態であったが、2つの歯車をそれぞれ平歯車(一方が内歯車で他方が外歯車)で構成し、両者の中心軸を平行に保った状態で噛み合わせてもよい。例えば、
図7は、中心軸6に対して平行で且つ内向きの歯114’を内周縁部に備えた内歯車からなるドライブギア113’と、ドライブギア113’の歯114’に対して外側で噛み合い可能な歯208’を有する外歯車のピニオンギア205’をそれぞれ構成し、両ギアの中心軸を平行に保ち、内歯車のドライブギア113’と外歯車のピニオンギア205’を噛み合わせた形態を示す。なお、
図7は第1の歯車機構1000の他の形態を示すが、第2の歯車機構2000も同様に構成できる。
【0056】
この場合、歯114’の歯形を特に、歯元126から歯先127までの部分が、内側に向かって凹状に窪んだ曲面で形成することが好ましい。これに対し、ドライブギア113’と噛み合うピニオンギア205’の歯面(図示せず)は、通常の歯面のように、外側に凸状に突出した曲面で形成してもよいし、インボリュート歯形であってもよい。
【0057】
以上、本発明に係るハンドピースの種々の形態を個別に説明したが、それらの形態は組み合わせることも可能であり、そのような組み合わせも本発明の技術的範囲に属するものである。