(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796124
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】エレベータ装置のトーガードアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B66B 13/28 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
B66B13/28 D
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-500480(P2014-500480)
(86)(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公表番号】特表2014-511805(P2014-511805A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】IB2011001162
(87)【国際公開番号】WO2012127269
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2013年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】フォーコネ,オレリアン
(72)【発明者】
【氏名】デラシャトル,エティエンヌ
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/110696(WO,A1)
【文献】
特開2002−302370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパネルと、
第1のパネルに対して引出し位置と引込み位置との間で第1の方向に摺動可能な第2のパネルと、を有し、第1のパネルは、第2のパネルが引込み位置に向かって移動するのに応じて、引出し位置から折りたたみ位置に向かって異なる第2の方向に移動し、
さらに、第1のパネルを引出し位置から折りたたみ位置へ向かって折りたたむ折りたたみ機構と、
第2のパネルに支持され、折りたたみ機構の折りたたみ動作を引き起こす起動装置と、を有することを特徴とするエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項2】
第2のパネルは、第1のパネルに対して入れ子式に移動可能であり、かつ第1のパネルと共に第2の方向に移動することを特徴とする請求項1に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項3】
第2のパネルは、引出し位置において垂直方向で少なくとも部分的に第1のパネルの下に支持され、引込み位置において第1のパネルと少なくとも部分的に重なることを特徴とする請求項1に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項4】
前記のパネルの下方に支持された接触片を有し、この接触片は、アセンブリが垂直方向下向きに移動するに従って、前記のパネルの下方に位置する面と接触するように設けられており、第2のパネルは、前記の接触に応じて引出し位置から引込み位置に向かって移動することを特徴とする請求項1に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項5】
第1のパネルは、第1の端部の近傍でピボット可能に支持されており、折りたたみ機構は第1のパネルの反対側の第2の端部の近傍で第1のパネルに連結されており、第1のパネルは、引出し位置と折りたたみ位置との間で移動するときに、第1の端部の近傍の回転軸を中心にピボットすることを特徴とする請求項1に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項6】
前記起動装置は、第2のパネルが第1のパネルに対して移動するに従って、折りたたみ機構の部分と接触する接触面を含み、前記の接触により、折りたたみ機構の前記部分によって第1のパネルが折りたたみ位置に向かって押されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項7】
前記接触面は、第1の方向に対して少なくとも部分的に横方向に延び、かつ第2のパネルが引込み位置に接近するのに従って折りたたみ機構の前記部分と接触するように第2のパネルの一端の近傍に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項8】
前記接触面は、第2のパネルに設けられており、前記接触面が折りたたみ機構の前記部分に接触した後に第2のパネルが引込み位置に移動し続けることを特徴とする請求項7に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項9】
折りたたみ機構は、第1のリンクを備え、この第1のリンクは、第1のパネルとピボット可能に連結された第1の端部と、第2のリンクの第1の端部とピボット可能に連結された第2の端部と、を有し、第2のリンクは、エレベータかごの底部の近傍にピボット可能に連結されるように設けられた第2の端部を有し、第1のリンクは、前記接触面が接触する折りたたみ機構の前記部分であることを特徴とする請求項6に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項10】
第2のリンクは、該第2のリンクの第1の端部の近傍に停止部材を含み、この停止部材は、第1のリンクの第2の端部の近傍において第1のリンクと係合し、第1のパネルが引出し位置にあるときに第1のリンクと第2のリンクとの所望の整列を維持することを特徴とする請求項9に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項11】
第2のパネルは、第1のパネルが引出し位置と折りたたみ位置との間で移動するときに、第1のパネルと共にピボットすることを特徴とする請求項1に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項12】
エレベータかごの床の近傍に固定されるように設けられたブラケットを有し、このブラケットは、第1のパネルおよび第2のパネルが引出し位置にあるときに、第1のパネルおよび第2のパネルと平行でかつ整列したトーガードパネル部分を含むことを特徴とする請求項1に記載のエレベータトーガードアセンブリ。
【請求項13】
昇降路と、
昇降路内で移動可能なエレベータかごと、
エレベータかごの底部の近傍に支持された第1のトーガードパネルと、
第1のトーガードパネルに対して、引出し位置と引込み位置との間で第1の方向に摺動可能な第2のトーガードパネルと、を有し、第1のトーガードパネルは、第2のトーガードパネルが引込み位置に向かって移動するのに応じて、引出し位置から折りたたみ位置に向かって異なる第2の方向に移動し、
さらに、第1のトーガードパネルを引出し位置から折りたたみ位置へ向かって折りたたむ折りたたみ機構と、
第2のトーガードパネルに支持され、折りたたみ機構の折りたたみ動作を引き起こす起動装置と、を有することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項14】
第1のトーガードパネルと第2のトーガードパネルとは、
(i)前記のトーガードパネルが共に引出し位置にあるときに、エレベータかごの下に第1の距離にわたって延在し、
(ii)第1のトーガードパネルが引出し位置にあり、第2のトーガードパネルが少なくとも部分的に引込み位置にあるときに、エレベータかごの下により短い第2の距離にわたって延在し、
(iii)第1のトーガードパネルが折りたたみ位置にあるときに、エレベータかごの下に第3の距離にわたって延在し、第3の距離は第2の距離よりも短いことを特徴とする請求項13に記載のエレベータ装置。
【請求項15】
昇降路は、深さを有するピットを含み、第1の距離はピット深さよりも大きく、第3の距離はピット深さよりも小さいことを特徴とする請求項14に記載のエレベータ装置。
【請求項16】
第2のパネルは、第1のパネルに対して入れ子式に移動可能であり、第1のパネルは、エレベータかごに対してピボット移動可能であることを特徴とする請求項13に記載のエレベータ装置。
【請求項17】
第2のパネルは、引出し位置において垂直方向で少なくとも部分的に第1のパネルの下に支持されるとともに、引込み位置において第1のパネルと少なくとも部分的に重なり、第1のパネルが折りたたみ位置に移動するに従って、第2のパネルは第1のパネルと共に移動することを特徴とする請求項16に記載のエレベータ装置。
【請求項18】
前記のパネルの下方に支持された接触片を有し、この接触片は、エレベータかごが昇降路の底部の近傍の面に接近するときにこの面と接触するように設けられており、第2のパネルは、前記の接触に応じて引出し位置から引込み位置に向かって移動し、前記接触片は、第1のパネルが折りたたみ位置に向かって移動するに従って前記面に沿って移動することを特徴とする請求項13に記載のエレベータ装置。
【請求項19】
エレベータかごの床の近傍に固定されるように設けられた固定ブラケットを有し、この固定ブラケットは、エレベータかごの床にほぼ垂直な固定トーガードパネル部分を含み、第1および第2のトーガードパネルは、引出し位置にあるときに、固定トーガードパネル部分と平行でかつ整列していることを特徴とする請求項13に記載のエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ装置のトーガードアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータかごは、一般に、エレベータかごの下に位置するトーガードを含む。トーガードは、典型的に剛体で、約1メートルの長さを有する。トーガードには、2メートル近いものもある。よって、エレベータかごが最下乗場に位置するときに、トーガードがシャフトの底部に衝突するのを防止するためにエレベータかごの下にかなり大きいクリアランスが必要となる。
【0003】
エレベータ装置は、1つにはエレベータかごの底部と昇降路の底部との間に十分なクリアランスを提供するために、昇降路の底部にピットを備える。典型的な形態のピットは、典型的なトーガードに対して十分なクリアランスを提供する。しかし、最近はエレベータピットがなくなったり、寸法が減少したりしている。このような装置では、従来のトーガードのために、エレベータかごが必要なだけ低い位置まで移動することができない。
【0004】
このような事態に対処するための1つの提案は、特許文献1に示されている。この特許文献は、トーガードがエレベータかごから垂直方向下向きに延在する位置からトーガードがエレベータかごの下にほぼ水平にしまい込まれた位置へと移動可能なトーガードパネルを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6095288号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的なエレベータトーガードアセンブリは、第1のパネルを含む。第2のパネルが、引出し位置と引込み位置との間で第1のパネルに対して第1の方向に摺動可能となっている。第1のパネルは、第2のパネルが引込み位置に向かって移動するのに応じて、引出し位置から折りたたみ位置に向かって異なる第2の方向に移動する。
【0007】
上の段落と一貫する1つのアセンブリでは、第2のパネルは第1のパネルに対して入れ子式に移動可能であり、第2のパネルは第1のパネルと共に第2の方向に移動する。
【0008】
上のいずれかの段落と一貫する例示的なアセンブリでは、第2のパネルは、引出し位置において第1のパネルの下に支持されており、引出し位置および引込み位置において第1のパネルと少なくとも部分的に重なる。
【0009】
上の3段落のいずれかと一貫する例示的なアセンブリでは、第2のパネルの下に接触片が支持されている。接触片は、アセンブリが垂直方向下向きに移動するに従って、パネルの下方に位置する面に接触するように設けられている。第2のパネルは、このような接触に応じて引出し位置から引込み位置に向かって移動する。
【0010】
上の4段落のいずれかと一貫する例示的なアセンブリでは、折りたたみ機構によって、パネルが引出し位置と折りたたみ位置との間で移動することが容易となっている。起動装置が、第2のパネルに支持される。起動装置は、折りたたみ機構の折りたたみ動作を引き起こす。
【0011】
上の5段落のいずれかと一貫する例示的なアセンブリは、第1の端部の近傍でピボット可能に支持された第1のパネルを含む。折りたたみ機構は、第1のパネルの反対側の第2の端部で第1のパネルに連結されている。第1のパネルは、引出し位置と折りたたみ位置との間で移動するときに第1の端部の近傍の回転軸を中心にピボットする。
【0012】
上の6段落のいずれかと一貫する例示的なアセンブリは、起動装置に設けられた接触面を含み、この接触面は、第1のパネルに対して第2のパネルが移動するに従って折りたたみ機構の一部と接触する。接触面と折りたたみ機構とが接触すると、折りたたみ機構の部分によって第1のパネルが第1の位置に向かって押される。
【0013】
上の7段落のいずれかと一貫する例示的なアセンブリは、第2のパネルの一端の近傍で該第2のパネルに対して少なくとも部分的に横方向に延びる接触面を含む。接触面と折りたたみ機構の部分との接触は、第2のパネルが引込み位置に接近するのに従って生じる。
【0014】
上の8段落のいずれかと一貫する例示的なアセンブリは、第2のパネルに設けられた接触面を含み、第2のパネルは、接触面が折りたたみ機構の部分に接触した後で引込み位置に移動し続ける。
【0015】
上の9段落のいずれかと一貫する例示的なアセンブリは、第1のリンクを備える折りたたみ機構を含み、第1のリンクは、第1のパネルとピボット可能に連結された第1の端部を有し、かつ第2のリンクの第1の端部とピボット可能に連結されている。第2のリンクは、エレベータかごの底部の近傍にピボット可能に連結されるように設けられた第2の端部を有する。第1のリンクは、接触面と接触する折りたたみ機構の部分である。
【0016】
上の10段落のいずれかと一貫する例示的なアセンブリは、第2のリンクの第1の端部の近傍に停止部材を含む。停止部材は、第1のリンクの第2の端部の近傍で第1のリンクと係合する。停止部材は、第1のパネルが引出し位置にあるときに、第1および第2のリンクの所望の整列を維持する。
【0017】
上の11段落のいずれかと一貫する例示的なアセンブリは、第1のパネルが引出し位置と折りたたみ位置との間で移動するに従って、第1のパネルと共にピボットする第2のパネルを含む。
【0018】
上の12段落のいずれかと一貫する例示的なアセンブリは、エレベータかごの床の近傍に固定されるように設けられたブラケットを含む。ブラケットは、第1のパネルおよび第2のパネルが引出し位置にあるときに、第1のパネルおよび第2のパネルと平行でかつ整列したトーガードパネル部分を含む。
【0019】
例示的なエレベータ装置は、昇降路内で移動可能なエレベータかごを含む。第1のトーガードパネルが、エレベータかごの底部の近傍に支持されている。第2のトーガードパネルが、第1のパネルに対して、引出し位置と引込み位置との間で第1の方向に移動可能である。第1のトーガードパネルは、第2のパネルが引込み位置に向かって移動するのに応じて、引出し位置から折りたたみ位置に向かって異なる第2の方向に移動する。
【0020】
上の段落と一貫する例示的な装置では、第1のトーガードパネルと第2のトーガードパネルは、トーガードパネルが共に引出し位置にあるときに、エレベータかごの下に第1の距離にわたって延在する。第1のトーガードパネルと第2のトーガードパネルは、第1のトーガードパネルが引出し位置にあり、第2のトーガードパネルが少なくとも部分的に引込み位置にあるときに、エレベータかごの下により短い第2の距離にわたって延在する。第1のトーガードパネルと第2のトーガードパネルは、第1のトーガードパネルが折りたたみ位置にあるときに、エレベータかごの下に最小の第3の距離にわたって延在する。
【0021】
上の2段落と一貫する例示的な装置では、昇降路は深さを有するピットを含む。第1の距離はピット深さよりも大きく、第3の距離はピット深さよりも小さい。
【0022】
上の3段落と一貫する例示的な装置では、第2のパネルは、第1のパネルに対して入れ子式に移動可能であり、第1のパネルは、エレベータかごに対してピボット移動可能である。
【0023】
上の4段落と一貫する例示的な装置では、第2のパネルは、引出し位置において第1のパネルの下に支持されている。第2のパネルは、引出し位置および引込み位置において少なくとも部分的に第1のパネルと重なる。第2のパネルは、第1のパネルが折りたたみ位置に移動するに従って第1のパネルと共に移動する。
【0024】
上の5段落と一貫する例示的な装置は、第2のトーガードパネルの下に支持された接触片を含む。接触片は、エレベータかごが昇降路の底部の近傍の面に接近するのに従って、上記面と接触するように設けられている。第2のパネルは、上記の接触に応じて、引出し位置から引込み位置に向かって移動する。接触片は、第1のパネルが折りたたみ位置に向かって移動するに従って上記面に沿って移動する。
【0025】
上の6段落と一貫する例示的な装置は、エレベータかごの床の近傍に固定されるように設けられた固定ブラケットを含む。固定ブラケットは、エレベータかごの床にほぼ垂直な固定トーガードパネル部分を含む。第1および第2のトーガードパネルは、引出し位置にあるときに固定トーガードパネル部分と平行でかつ整列している。
【0026】
開示された例示的な実施例の種々の特徴および利点は、以下の詳細な説明によって当業者に明らかとなる。詳細な説明に付随する図面について、以下に簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施例に従って設計されたトーガードアセンブリを含む例示的なエレベータ装置の選択された部分を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の実施例に係る例示的なトーガードアセンブリの概略透視図である。
【
図3】
図2の実施例の反対側からの概略透視図である。
【
図5】トーガードが完全な引出し位置にある例示的なトーガードアセンブリの動作を示す概略図である。
【
図6】トーガードアセンブリの一部が昇降路内の下方の面と接触する
図5の実施例の他の動作状態を示す概略図である。
【
図7】エレベータかごが
図6に比べて昇降路の底部の面のより近くに移動された
図5,
図6の実施例の他の動作状態を示す概略図である。
【
図8】起動装置が折りたたみ機構の動作を引き起こす位置における
図5〜
図7の実施例を示す概略図である。
【
図9】エレベータかごがさらに降下してさらに折りたたまれた
図5〜
図8の実施例を示す概略図である。
【
図10】トーガードアセンブリの背面および起動装置と例示的な折りたたみ機構の相互作用を示すエレベータかごの下側からの概略透視図である。
【
図11】トーガードアセンブリのパネルが引き込まれて折りたたまれた位置にある
図5〜
図10の実施例を示す説明図である。
【
図12】最大限まで引き込まれて折りたたまれた
図5〜
図11の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、エレベータ装置20の選択された部分を概略的に示している。選択された部分のみが図示されている。当業者であれば分かるように、(例えば、レール、バッファ、ガバナ、マシン、ブレーキ、駆動装置、制御装置、牽引部材などの)多くの他の構成要素がエレベータ装置に含まれる。このような構成要素は、説明を簡潔にするため、また当業者であればすでに認識しているため、図および説明から省かれている。
【0029】
エレベータかご22が、昇降路24内で移動可能である。昇降路24の底部の近傍の面26は、ピットの床または昇降路24の底部にピットを含まない例では昇降路の底面とすることができる。
【0030】
トーガードアセンブリ30がエレベータかご22に設けられており、このトーガードアセンブリ30は、なんらかの理由でかごが乗場と適切に整列する前に昇降路ドア(図示省略)が開いた場合に、エレベータかご22の底部と隣接する乗場との間の空間を覆う。トーガードアセンブリ30の存在は、どこまでエレベータかご22が降下できるかに影響する。例示的なトーガードアセンブリ30は、(
図1に示す)引出し位置から(
図11,
図12に示す)引き込まれて折りたたまれた位置まで移動可能であり、引き込まれて折りたたまれた位置では、トーガードアセンブリ30が
図1に示す位置に残った場合に比べてエレベータかご22が面26のより近くまで降下することが可能となる。
【0031】
図2〜
図4を参照すると、例示的なエレベータトーガードアセンブリ30は、第1のパネル32と第2のパネル34を含む。第2のパネル34は、第1のパネル32に対して、(例えば、
図2〜
図4に示す)引出し位置と(例えば、
図11,
図12に示す)引込み位置との間で第1の方向に移動可能である。この例では、第2のパネル34は、第1のパネル32に対して摺動可能でかつ入れ子式に移動可能である。また、この例では、第2のパネル34は、スロット36を含む。第1のパネル32は、スロット36に収容されるポスト38を含む。ポスト38とスロット36の端部は、第1のパネル32に対する第2のパネル34の移動範囲を定める。
【0032】
図4に最もよく示されているように、この例では、第1のパネル32は、前方プレート40、側方フランジ42および後方部分44を含む。第2のパネル34は、前方プレート50および側方フランジ52を含む。図から分かるように、前方プレート50は、第1のパネル32の前方プレート40と後方部分44の間に受け入れられる。ポスト38は、前方プレート40と後方部分44との間に間隔を提供し、第1のパネル32に対して第2のパネル34が移動可能となるように、前方プレート50の対応する部分が上記間隔に受け入れられる。この例では、側方フランジ52は、側方フランジ42の外側に支持される。
【0033】
図2〜
図4では、第2のパネル34は完全な引出し位置にある。この例では、完全な引出し位置は、第2のパネル34が垂直方向で少なくとも部分的に第1のパネル32の下に位置し、第2のパネル34の底端部54が第1のパネル32から最も遠い最下位置にあることを含む。
【0034】
例示的なトーガードアセンブリ30は、トーガードパネル58を有する固定ブラケット56を含み、トーガードパネル58は、第1のパネル32と第2のパネル34が完全な引出し位置にあるときに、これらのパネル32,34と平行でかつ整列している。固定ブラケット56は、トーガードアセンブリ30がエレベータかご22に対して所望の位置に設けられように、エレベータかご22の適切な位置に固定される。この例では、第1のパネル32は、固定ブラケット56に連結されている。
【0035】
図示の例は、折りたたみ機構60をさらに含み、第2のパネル34が引込み位置に向かって移動するのに応じて、第1のパネル32が(第2のパネル34の摺動移動方向に対して)異なる第2の方向に移動するのを容易にする。
図2,
図3,
図5から分かるように、この例の折りたたみ機構60は第1のリンク62を含む。第1のリンク62の一端64は、回転軸68で第1のパネル32にピボット可能に連結されている。第1のリンク62の反対側の端部は、回転軸70で第2のリンク72にピボット可能に連結されている。回転軸70におけるピボット式連結部は、第1のリンク62の第2の端部の近傍に位置する。第2のリンク72は、回転軸76でエレベータかご22のプラットフォーム80に固定された取付ブラケット78にピボット可能に連結されている。回転軸76におけるピボット式連結部は、第2のリンク72の第2の端部82の近傍に位置する。停止部材84が第2のリンク72に支持されており、第1のパネル32が完全な引出し位置にあるときにリンク62,72を所望の配置に維持するように第1のリンク62の面と接触する。
【0036】
例示的な停止部材84および折りたたみ機構60の関連する構成要素の特徴の1つは、トーガードアセンブリが規定の要件を満たす機械強度を有することである。例えば、図示の例は、EN81−21の要件を満たしており、これは、トーガードに直角に、5cm
2の面積にわたって矩形断面に加えられる300Nの力に応じて、永久変形を生じずに、かつ35mmを超える水平変形を生じずに、十分に耐える機械強度に関する。
【0037】
図5では、エレベータかごが昇降路24の下面26に接近している。図示の例は、第2のパネル34の下面54の下方に延在する接触片90を含む。図示の例では、接触片90はローラを含む。他の例は、摺動部材またはスケートを含む。接触片90は、エレベータかご22が十分に低い位置まで降下すると面26に接触する。
図6では、接触片90が面26に接触している。エレベータかごが下向きに移動し続けると、第2のパネル34が第1のパネル32に対して上向きに摺動する。この相対的な移動は、第1のパネル32が第2のパネル34に対して下向きに摺動すると考えることもできる。説明上、この移動は、第2のパネル34の完全な引出し位置(
図5参照)から引込み位置(
図9参照)への移動と考える。
【0038】
図7は、
図5,
図6の完全な引出し位置と(例えば、
図9に示された)完全な引込み位置とのほぼ中間にある第2のパネル34を概略的に示している。エレベータかご22が降下し続けると、第2のパネル34は引込み位置に向かって第1のパネル32に対して移動し続ける。
【0039】
図8に示すように、第2のパネル34に支持された起動装置(instigator)92が、折りたたみ機構60の第1のリンク62の一部と接触する。この例では、このような接触は第2のパネル34が完全な引込み位置に到達する前に起こる。エレベータかごが降下し続けると、(
図8,
図9を比較すると分かるように)起動装置92と第1のリンク62との接触によって折りたたみ機構が折れ曲がり始める。折りたたみ機構60の折れ曲がり動作により、第1のパネル32が(例えば、
図5〜
図8に示す)引出し位置から折りたたみ位置に向かって押される。この例では、折りたたみ位置は、(例えば、
図11に示すように)第1のパネル32が、プラットフォーム80に対して傾斜した角度でエレベータかごの下にあるか、または(例えば、
図12に示すように)プラットフォーム80に対してほぼ水平な位置を含む。エレベータかごが降下し続けると、第1のパネル32が折りたたみ位置に向かって移動し続けるに従って、接触片90は面26に沿って移動する。
【0040】
この例では、第1のパネル32の一端は、回転軸94で固定ブラケット56にピボット可能に連結されている。この例の第1のパネル32は、引出し位置と折りたたみ位置との間で移動するに従って回転軸94を中心にピボットする。また、この例では、第1のパネル32が引出し位置と折りたたみ位置との間で移動するときに、第2のパネル34は第1のパネル32と共に移動する。
【0041】
図10は、起動装置92の例示的な形態を示している。この例では、起動装置92は、第2のパネル34に支持されたブラケットを含む。エレベータかご22の引き続きの降下に応じて第1のパネル32に対して第2のパネル34が垂直かつ入れ子式に動くに従って、起動装置92の接触面96が第1のリンク62の一部と接触する。
【0042】
図11は、完全に折りたたまれた位置における一例を示しており、プラットフォーム80が昇降路内で面26に対して所望の最下位置に到達している。一例では、
図11に示す配置は、エレベータかごの床がエレベータかごによってサービスを受ける最下乗場に対応する位置にあるように、プラットフォーム80を十分な位置に位置づける。
図11から分かるように、第1のパネル32および第2のパネル34は、プラットフォーム80に対して傾斜した角度となっている。
【0043】
図6に示す位置では、第1のパネル32と第2のパネル34は、エレベータかごのプラットフォーム80の下で第1の距離D1にわたって延在する。第2のパネル34が第1のパネル32に対して完全な引込み位置に接近している
図8に示す位置では、第1のパネル32と第2のパネル34は、プラットフォーム80の下でより短い第2の距離D2にわたって延在する。例えば、
図11に示す位置では、第1のパネル32と第2のパネル34は、プラットフォーム80の下で第3のさらに短い距離D3にわたって延在する。一例では、距離D3は、約280ミリである。図示の配置は、エレベータ装置において種々のピット深さに対応することができる。加えて、図示の配置は、ピットを含まないエレベータ装置で有用である。
【0044】
図12は、第1のパネル32と第2のパネル34がプラットフォーム80に実質的に平行なトーガードアセンブリ30の位置を示している。これにより、第1のパネル32と第2のパネル34は、プラットフォームの下で第4の最小距離D4にわたって延在する。この状況は、一例では、エレベータかごがエレベータかごの下方にあるバッファを圧縮する位置まで十分に降下し、エレベータかごが面26に対して絶対的な最下位置にある場合に生じる。完全な折りたたみ位置が必ず
図12の配置に対応するように、トーガードアセンブリ30を構成することができる。また、完全な折りたたみ位置が
図11に示す配置に対応するように、トーガードアセンブリ30を構成することもできる。当業者であれば、特定の状況における必要性を満たすために、完全な引出し位置および完全な折りたたみ位置でどのように構成要素を配置すべきかこの説明から分かるであろう。
【0045】
開示された例は、エレベータかごに対して移動可能な2つ以上のパネルを有する独自のトーガードアセンブリを提供する。図示の例は、エレベータかごに対してピボット移動可能または折りたたみ可能な第1のパネルを含む。第2のパネルが、第1のパネルに対して摺動式または入れ子式に移動可能である。加えて、第1のパネルの移動は、第2のパネルが第1のパネルに対して引込み位置に向かって移動するのに応じて起こる。これにより、ピット深さが浅い場合やピットが存在しない場合にも、エレベータかごが昇降路内で移動することを可能とするトーガードアセンブリの独自の配置が提供される。
【0046】
上述の説明は例示的なものであり、限定的なものではない。開示された実施例の変形や改良は当業者に明らかであり、必ずしも本発明の本質から逸脱するものではない。本発明に与えられる法的保護の範囲は、以下の請求項の検討によってのみ判断できる。