特許第5796142号(P5796142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧 ▶ オウトクンプ ニロスタ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許5796142-鋼板材の溶融めっき法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796142
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】鋼板材の溶融めっき法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/46 20060101AFI20151001BHJP
   C23C 2/02 20060101ALI20151001BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20151001BHJP
   C23C 2/12 20060101ALI20151001BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20151001BHJP
   C21D 1/76 20060101ALI20151001BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20151001BHJP
   C22C 38/40 20060101ALI20151001BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C21D9/46 P
   C23C2/02
   C23C2/06
   C23C2/12
   C23C2/40
   C21D9/46 Q
   C21D9/46 Z
   C21D1/76 G
   C21D1/76 F
   C22C38/00 302Z
   C22C38/40
   C22C38/58
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-555957(P2014-555957)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-509556(P2015-509556A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】EP2012075402
(87)【国際公開番号】WO2013117273
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年10月8日
(31)【優先権主張番号】102012101018.8
(32)【優先日】2012年2月8日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
(73)【特許権者】
【識別番号】503105413
【氏名又は名称】オウトクンプ ニロスタ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Outokumpu Nirosta GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】マルク ブルメナウ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ギュゼフ
(72)【発明者】
【氏名】フレッド ジンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ シェーネンベルグ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ヨアチム クラウトシック
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4791482(JP,B2)
【文献】 特表2008−523243(JP,A)
【文献】 特開2003−253413(JP,A)
【文献】 特開平02−285057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/02
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属保護めっきによる鋼板材(S)の溶融めっき法であって、
a) 少なくとも2.0重量%のNiおよび少なくとも5.0重量%のCrを含む鋼から製造され、冷間圧延または熱間圧延により得られた鋼板材(S)を用意する工程;
b) 1〜30秒以内、前記鋼板材(S)を保持温度700〜1100℃に加熱する工程であって、加熱は、−15℃〜+30℃に設定された露点TP1を有し、かつNおよび技術的に不可避な不純物のほか、任意に以下の構成成分(体積%単位):
: 1〜50%、
CO : 0.1〜2.0%、
CO: 5.0〜15.0%;
の1つまたは複数を含む加熱雰囲気(Atm1)下で行われる工程;
c) 前記加熱された鋼板材(S)を、Nおよび技術的に不可避な不純物ならびに1.0〜50.0体積%のHおよび最大1.0体積%のOからなり、かつ露点TP2が−30℃〜0℃に設定される保持雰囲気下(Atm2)、10〜120秒の保持時間、前記保持温度で保持する工程;
d) 前記鋼板材(S)を前記保持温度から430〜800℃であるストリップ入口温度に冷却する工程;
e) 前記鋼板材(S)を、前記鋼板材(S)が溶融浴(B)への進入まで不活性または還元性入口雰囲気(Atm4)下で保持される入口帯(6)を通過させ、その後前記鋼板材(S)が前記金属めっきにより溶融めっきされる溶融浴(B)を通過させる工程;
を含み、
前記加熱雰囲気(Atm1)の前記露点TP1は前記保持雰囲気(Atm2)の前記露点TP2より高く、前記露点TP2は前記入口雰囲気(Atm4)の露点TP4より高い
方法。
【請求項2】
保持温度は700〜850℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱雰囲気(Atm1)は1.0〜5.0体積%のHを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱は直接加熱される炉帯で行われ、前記加熱雰囲気(Atm1)は、NおよびHのほか、0.1〜2.0体積%のCOおよび5.0〜15.0体積%のCOを含むことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記保持雰囲気(Atm2)の前記H含有量は1.0〜5.0体積%であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記保持雰囲気(Atm2)の前記露点TP2は−30℃〜−10℃であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記保持雰囲気(Atm2)の前記O含有量は最大0.1体積%であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ストリップ入口温度への冷却(プロセス工程d))後、前記鋼板材(S)はプロセス工程d’)として、前記鋼板材(S)が過時効雰囲気(Atm3)下、前記ストリップ入口温度で1〜30秒間保持される過時効処理を受ける工程であって、前記過時効雰囲気(Atm3)はNおよび技術的に不可避な不純物のほか、任意に1〜50体積%のHを含み、かつ前記過時効雰囲気(Atm3)の露点TP3は−50℃〜−25℃に設定されること特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記過時効雰囲気(Atm3)の前記H含有量は1.0〜5.0体積%であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記露点TP1、TP2、TP3およびTP4に対し、以下の条件:
TP1>TP2>TP3≧TP4
を適用することを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記入口雰囲気(Atm4)はNおよび技術的に不可避な不純物ならびに任意に1.0〜50.0体積%のHからなり、その露点TP4は−80℃〜−25℃であることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記鋼板材(S)は前記溶融浴(B)を1〜10秒以内で通板することを特徴とする、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱雰囲気(Atm1)、前記保持雰囲気(Atm2)、前記過時効雰囲気(Atm3)または前記入口雰囲気(Atm4)の前記露点の前記設定は、いずれの場合も任意に湿った媒体の添加により行われることを特徴とする、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記鋼板材(S)が製造される前記鋼は鉄および不可避な不純物のほか(重量%):
Cr: 5.0〜30.0%
Ni: 2.0〜30.0%
Mn: ≦6.0%
Mo: ≦5.0%
Si: ≦2.0%
Cu: ≦2.0%
Ti: ≦1.0%
Nb: ≦1.0%
V: ≦0.5%
N: ≦0.2%
Al: ≦2.0%
C: ≦0.5%
を含むことを特徴とする、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属保護めっきによる鋼板材の溶融めっき法であって、鋼板材を製造する鋼は少なくとも2.0重量%のNiおよび少なくとも5.0重量%のCrを含む方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に使用する「鋼板材」という用語は、ストリップまたは薄鋼板、およびそれらから製造されるプレートおよびブランクをいう。
【0003】
たとえばNiは、MnまたはNと同様に、鋼のオーステナイト組織状態を比較的低い温度で安定化させる。この作用は、鋼の機械的材料特性を向上させるため計画的に使用することができる。残留オーステナイト比率を有する多相鋼は、強度と延性との組み合わせに特に優れている。Ni含有量>8重量%の完全オーステナイト鋼の品質はさらに脆性−延性遷移が起こらず、それにより低温用途が可能になる。Ni合金の完全オーステナイトはさらに、高Mn合金鋼の品質と比較して、実質的に環境による負荷を受けにくい。とりわけ、Cr合金比率をさらに有するNi鋼は、特に優れた耐薬品性および高い耐食性を特徴とする。さらにそれぞれの鋼中にMoが存在すると、このパッシベーションが支援される。それぞれの鋼合金の所望の材料強度または延性に応じて、別の元素、たとえばAl、Mn、TiおよびSiを加えてもよい。
【0004】
その特有の材料特性のため、Ni合金の鋼板材の使用には、高温用途および低温用途の分野で大きな可能性がある。そうした用途として、とりわけ車両の建設、特にサスペンション部の構造部材、化学装置の建設、プラントおよび機械の建設が挙げられる。さらにNi合金鋼を用いて、たとえば住宅建設または同種のものの装飾要素を製造することもできる。
【0005】
環境の影響に対するその顕著な抵抗性にもかかわらず、本明細書に記載したタイプのニッケル合金鋼から製造された鋼板材を特に応力を受ける部材または部品に使用する場合、別の保護めっきを施すことが、技術的に必要であるあるいは経済的である場合がある。これは、抵抗性、特に耐食性を最適化するだけでなく、それぞれの鋼板材の成形適合性または美観も向上させる。
【0006】
連続ストリップめっきは、鋼板材にこうした金属保護めっきを施す一般に確立された方法となっている。しかしながら、めっきされる鋼材のそれぞれの表面に付着する合金元素の外部酸化物の化学的不動態が、めっき結果を悪化させる。この点で重要な合金構成成分は、たとえばCr、Al、Mn、Siおよび他の酸化物形成元素である。めっきされる鋼板材の表面上の、これらの合金元素から形成された酸化物は、濡れ不良および付着不良を引き起こす。これらの不良を回避するため、連続ストリップめっきに利用可能な方法およびプラントは、特定の要件を満たさなければならない。
【0007】
特許文献1には、連続ストリッププロセスでステンレス鋼の片側および両側に電解亜鉛めっきする方法が記載されている。しかしながら、この方法は比較的コストがかかり、したがって実際に広く使用されていない。
【0008】
電解めっきに代わるより経済的なものとしては、ストリップ鋼の連続溶融めっきがある。この方法では、通路炉で再結晶焼鈍を行った後、鋼ストリップを、典型的には亜鉛、アルミニウムまたはそれらの合金に基づく金属溶融浴に短時間浸漬する。
【0009】
合金鋼の溶融めっきは、焼鈍段階において、そうした鋼中の酸素と密接な関係にある合金構成成分が鋼表面で選択的に酸化する恐れがあるため、特別な注意を要する。選択的酸化が外部で起こる場合、濡れ不良および付着欠陥を予想する必要がある。
【0010】
これらの問題を回避するため、溶融めっきで金属による保護めっきを設ける鋼板材は通常、その合金含有量を特定の最大値に限定しなければならない。これは、それぞれの鋼基材のNi含有量を含む。溶融めっきにより金属保護めっきを設ける鋼板材のNi含有量は実際、2.0重量%未満、特に最大1.0重量%に限定されるのが一般的である。この例は特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載されている。
【0011】
別の特別な例としては、Niのほか、5〜30重量%の含有量でCrも含むニッケル合金鋼の溶融めっきがある。こうしたCr合金鋼の品質は、たとえば強い還元焼鈍パラメーターによる加熱処理(いわゆる光輝焼鈍)により外部酸化物の形成を抑制しようと多くの試みがなされてきた。この考えに基づく方法は、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8および特許文献9に記載されている。
【0012】
これらの既知の方法に代わる方法として、特許文献10および特許文献11は各々、加熱中に標的化FeO層を形成(プレ酸化)し、その後の保持段階においてこの層を金属鉄(Fe)に還元することを提案している。
【0013】
さらに特許文献12の既知の方法では、めっきされる鋼板材のFeに富んだ縁端ゾーンを、オフライン作業工程でフード焼鈍によって予め調整する。次いで鋼板材を溶融めっきプラントに導入し、めっきする。
【0014】
特許文献13に引用された別の可能性として、オフラインのプレめっきがあり、鋼ストリップの表面に薄いFe層を施す(「Feフラッシュ」)。
【0015】
上記に概説したCr合金鋼の溶融めっき法は、高温アルミナイジング処理として実施される溶融めっきを必要とするが、亜鉛系保護めっきの適用を包含しないのが一般的である。Ni/Cr合金鋼の溶融めっきのための上記に説明した方法の実作業における実際の使用は、通常の合金鋼を対象とした従来方式で設計された溶融めっきプラントでは多大のコストをかけないとそうした方法を実施できないという問題により妨げられている。加えて、既知の方法の使用に伴うHの高消費、およびこうした方法に必要とされる高い焼鈍温度に起因する高い消費コストおよび維持コストも存在する。この高い消費コストおよび運転コストは、こうした方法の経済適合性および環境適合性に対する現在の需要と合わない。特に、いくつかの運転試行から、特許文献10および特許文献11に記載された手順の要領でプレ酸化を実際に管理することが困難であり、プロセスの信頼性が低いことが示されている。酸化中に厚すぎる酸化物層が形成される場合と、層厚が薄すぎる場合との両方で、それぞれの鋼基材に溶融めっきを付着しにくくする濡れ不良が直接起こる恐れがある。
【0016】
原則として、上記に概説したCr合金鋼の溶融めっきに関する既知の提案は、フェライト特殊鋼のみに関する。その結果、少しでもNi含有量がある場合、対象となる鋼合金のNi含有量は、<3.0重量%という比較的低い上限に限定される。従来技術から、Niが存在すると、溶融めっきでめっきされる鋼板材に極めて有利であり得ることが知られている。溶融めっきプラントにストリップ鋼を入れる前に施される薄いNi層で鋼ストリップ表面をプレめっき(「Niフラッシュ」)すると、酸素と密接な関係にある鋼板材の合金元素の選択的酸化が効果的に抑制され、めっき結果が持続的に改良される。溶融めっきにNiフラッシュを使用することは、たとえば特許文献14または特許文献15で推奨されている。しかしながらNiフラッシュの適用には相当な追加コストを伴う別の作業工程が必要とされるため、この手順は、実際には一般に行われていない。
【0017】
金属溶融めっきの品質を改善するには、別途Niフラッシュを適用するだけでなく、鋼合金自体のNi含有量を使用してもよい。特許文献16によれば、鋼板材の表面上にMn、AlおよびSiの酸化物が発生するのを阻害するため、めっきされる鋼板材の鋼に最大2.0重量%のNiのNi含有量を合金として加える。加えるそれぞれのNi比率は、鋼板材の他の合金元素の含有量との、および再結晶中に観察する必要がある焼鈍パラメーターとの、両方の様々な複雑な相関関係式により決定される。0.2〜5.0重量%のNiを含む鋼板材の熱亜鉛めっきに関する特許文献17も同様のアプローチに従っている。この方法も、ストリップ鋼の表面上に、それぞれのAlおよびSi含有量に応じてNi含有量を設定した縁端層を生成する。プロセス管理の際に考慮すべき関連事項としては、この方法は、必要な運転信頼性および再現性を有する大きな工業規模で実施することができないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】オーストリア特許第392 089(B)号
【特許文献2】欧州特許第2 009 128(A1)号
【特許文献3】欧州特許第1 612 288(A1)号
【特許文献4】欧州特許第2 177 641(A1)号
【特許文献5】米国特許第4,675,214号
【特許文献6】米国特許第5,066,549号
【特許文献7】米国特許第4,883,723号
【特許文献8】米国特許第5,023,113号
【特許文献9】欧州特許第0 467 749(B1)号
【特許文献10】特開平03−111546号
【特許文献11】特開平05−311380号
【特許文献12】米国特許第5,591,531号
【特許文献13】欧州特許第2 184 376(A1)号
【特許文献14】特開昭61−147865号
【特許文献15】特開昭60−262950号
【特許文献16】米国特許第7,736,449(B2)号
【特許文献17】国際公開第00/50658(A1)号
【特許文献18】欧州特許第1 857 566(A1)号
【特許文献19】欧州特許第2 055 799(A1)号
【特許文献20】欧州特許第1 693 477(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
この観点から、本発明の目的は、コスト効率的および資源効率的な形でNi合金の鋼板材の溶融めっきを行うことを可能にし、工業的実施において高い工程信頼性で使用できる方法を記載することである。
【0020】
本発明によれば、本目的は請求項1に示した方法により達成される。
【0021】
本発明による方法は、大型の熱めっき工業プラントで連続運転中の制御された大気条件下、焼鈍され、その後すぐにインラインで溶融めっきされる冷間圧延鋼板材または熱間圧延鋼板材の溶融めっきに好適である。本発明による手順は、フラッシュプレめっきまたは同種のものを必要としない。
【0022】
このため、本発明による方法は原則として、インラインで連続的に実施される以下のプロセス工程:
a) 鋼板材を用意する工程
b) 鋼板材を保持温度まで加熱する工程、
c) 鋼板材を保持温度で保持し、再結晶させる工程
d) 鋼板材をストリップ入口温度まで冷却する工程、および
e) 鋼板材を入口帯を通して溶融浴に送る工程
を含む。
【0023】
本発明による方法の一部として連続通路において少なくとも連続的に行われるプロセス工程a)〜e)のリストは、限定されるものではない。したがってプロセス工程a)とb)との間に、場合によっては、めっきされる鋼板材の表面を洗浄する作業工程a’)が存在してもよい。さらにそれぞれのストリップ入口温度への冷却(プロセス工程d))とそれぞれの溶融浴への進入(プロセス工程e))との間にも、過時効処理の任意のプロセス工程d’)が存在してもよい。同様に、通常、溶融浴から鋼板材が出現後、プロセス工程e’)として、そのとき鋼板材に存在する金属保護めっきの厚さの調整工程があってもよい。
【0024】
具体的には、高いNiおよびCr含有量を含む鋼板材を金属保護めっきで溶融めっきするための本発明による方法は、少なくとも以下の作業工程:
a) 少なくとも2.0重量%のNiおよび少なくとも5.0重量%のCrを含む鋼から製造され、冷間圧延または熱間圧延により得られた鋼板材を用意する工程;
b) 1〜30秒以内、鋼板材を保持温度700〜1100℃に加熱する工程であって、加熱は、−15℃〜+30℃に設定された露点TP1を有し、かつNおよび技術的に不可避な不純物のほか、任意に以下の構成成分(体積%単位):H:1〜50%、CO:0.1〜2.0%、CO:5.0〜15.0%の1つまたは複数を含む加熱雰囲気下で行われる工程;
c) 加熱された鋼板材を、Nおよび技術的に不可避な不純物ならびに1.0〜50.0体積%のHおよび最大1.0体積%のOからなり、かつその露点TP2が−30℃〜0℃に設定された保持雰囲気下、10〜120秒の保持時間保持温度で保持する工程;
d) 鋼板材を保持温度から430〜800℃になるストリップ入口温度に冷却する工程;
e) 鋼板材を、鋼板材が溶融浴への進入まで不活性または還元性入口雰囲気下で保持される入口帯を通過させ、その後鋼板材が金属被膜により溶融めっきされる溶融浴を通過させる工程;
を提供し、
加熱雰囲気の露点TP1は保持雰囲気の露点TP2より高く、露点TP2は入口雰囲気の露点TP4より高い。言い換えれば:TP1>TP2>TP4である。
【0025】
溶融浴からの出現、および溶融浴から出現した鋼板材上に存在する金属めっきの、たとえばスクレーパーノズルの使用による任意の厚さの調整の後、得られた鋼板材は、従来の方法で室温まで冷却してもよい。冷却後に任意に鋼板材の予成形(調質圧延)、パッシベーション、塗油およびコイルへの巻きを行ってもよい。必要なら巻き取りの前または後に、金属めっきに特定の特性を与えるため、さらに加熱処理を行ってもよい。
【0026】
本発明による方法の連続プロセスで連続的に行われる個々のプロセス工程は、好ましくは各プロセス工程が特定の炉帯に関連付けられた既知の通路炉において行う。
【0027】
製造される鋼板材は、圧延硬化ストリップまたは冷間もしくは熱間圧延焼鈍ストリップとして存在してもよい。本発明による方法の使用は、特に圧延硬化、冷間圧延鋼板材を出発材料として使用すると、とりわけ経済的であることが分かっている。特にこうした冷間圧延、圧延硬化鋼板材を処理する場合、保持中に再結晶を達成するため、作業工程a)の加熱中に達する保持温度が700〜1100℃、特に700〜850℃になると有利であることが分かっている。
【0028】
本発明による方法は、加熱雰囲気のH含有量が1.0〜5.0体積%である場合に最適な経済的な形で実施することができる。
【0029】
本発明は、鋼板材の表面上の酸化物形成により確認できるようになる外部移行、いわゆる「外部」酸化の大部分を十分に抑制するように、鋼板材に金属の保護層を施す溶融浴への進入の前に加熱処理を行うという着想に基づく。したがって最適には、加熱処理工程はすべて、どのような場合でも外部酸化が最小限に抑えられるか、あるいは最適には外部酸化が起こらないように、間接的に燃焼される炉内の還元雰囲気下で行う。
【0030】
鋼板材の間接加熱では、RTF型(RTF:Radiant Tube Furnace=ラジアントチューブ炉)の実施における通常の炉を使用する。この炉型では、加熱は、炉室に配置されたラジアントチューブを通して燃焼ガスを送ることで行われる。燃焼はラジアントチューブ内で行われる。このようにして燃焼ガスは炉雰囲気から隔てられる。この場合、大気の酸化構成成分が加わることを回避することができるため、標的化して、技術的に不可避な不純物以外はもっぱらNおよび意図的に加えた任意のH比率からなる加熱雰囲気を維持することができる。
【0031】
したがって、たとえば利用可能なプラント技術のため、作業工程a)において直接加熱される炉帯で鋼板材を加熱する場合、この場合の加熱雰囲気は、Nおよび任意に存在するHのほか、最大でも0.1〜2.0体積%のCOおよび最大でも5.0〜15.0体積%のCOを含むように設定される。こうして、直接燃焼させる加熱ゾーンにおける加熱雰囲気は、鉄または卑金属元素の外部酸化を回避し、卑金属元素の酸化物形成が内部だけにほぼ限られるように設定される。
【0032】
したがって本発明による方法の本質的な利点は、既知の方法の一部に記載されているような標的化プレ酸化の必要がないことである。こうして本発明による方法の実施に関連する制御および調節コストは、実質的に低下する。
【0033】
加熱後の保持段階(プロセス工程b))において、本発明により加熱された鋼板材は、保持温度で10〜120秒間焼鈍する。主として保持ゾーンに存在する保持雰囲気、保持時間、保持温度および保持雰囲気の露点TP2は相互に適合しているため、保持段階の終了時に、鋼板材の構造が再結晶し、存在する可能性があるあらゆる種類の任意の外部酸化物が還元され、そうした酸化物の新たな形成が回避される。最適な作業結果はさらに、保持雰囲気のH含有量が1.0〜5.0体積%である場合に達成される。保持雰囲気の酸化力をさらに最小化するには、同時に保持雰囲気のO含有量を最大0.1体積%に限定してもよい。
【0034】
具体的には、保持温度で保持中の鋼板材の外部酸化が回避されるように、保持雰囲気の露点TP2を設定する。このため本発明によれば、露点TP2を最低−30℃、特に−30℃より高く設定する。より低い露点では、卑金属合金元素、たとえばCr、MnまたはSiが外部酸化物を形成するリスクがある。同時に、本発明による露点TP2は、鋼板材の表面上に存在する任意の酸化鉄または酸化ニッケルに対する十分な還元力を得る、あるいはそれらの発生を回避するため、最高0℃にすべきである。本発明による鋼板材の表面上のFeまたはNi酸化物の望ましくない発生は、保持ゾーン雰囲気の露点TP2を−10℃以下に設定する場合、特に確実に起こり得る。
【0035】
保持工程後、鋼ストリップの温度を冷却ゾーン内で保持温度から、ストリップ鋼材がそれぞれの溶融浴に入る、430〜800℃の範囲にあるストリップ入口温度まで冷却する。いずれの場合も選択されるストリップ入口温度は、金属保護層を施すために鋼板材が送られる溶融浴の温度と同様に、亜鉛またはアルミニウム支持体上にめっきが作られるかどうかによって決まる。
【0036】
表1は、Zn系めっき(たとえばZn、ZnAl、ZnMgまたはZnMgAlめっき)およびAl系めっき(たとえばAlZn、AlSiめっき)のそれぞれの溶融浴に鋼板材が入るストリップ入口温度の典型的な範囲、およびそれぞれの溶融浴の適切な温度範囲を示す。
【0037】
【表1】
【0038】
選択肢として、ストリップ入口温度に冷却した(プロセス工程d))後、プロセス工程d’)で鋼板材に過時効処理を行ってもよく、鋼板材を過時効雰囲気下、ストリップ入口温度で1〜30秒間保持し、過時効雰囲気はNおよび技術的に不可避な不純物のほか、任意に1〜50体積%のH、特に1〜5体積%のHを含み、過時効雰囲気の露点TP3を−50℃〜−25℃に設定する。
【0039】
冷却および任意の過時効処理の後、溶融浴釜に供給された溶融浴に鋼板材を送る。周囲大気とのどのような接触も回避するため、溶融浴釜まで延在する入口構造物を通してストリップ入口温度で、本発明により加熱処理された鋼板材を溶融浴に送る。この入口帯には、主に不活性または還元性入口雰囲気が存在する。入口雰囲気は、Nおよび技術的に不可避な不純物ならびに任意に1.0〜50.0体積%のHからなってもよく、こうして作られる入口雰囲気の露点TP4は−80℃〜−25℃である。
【0040】
一般に、鋼板材は、不活性または還元性雰囲気下、それぞれのストリップ入口温度まで本発明により冷却されるということができる。具体的には、冷却は、いずれの場合も冷却後に主に作業工程に存在する雰囲気下で行われる。過時効処理を行わない場合、すなわち鋼板材が冷却後直ちに入口帯に入り、そこから溶融浴に運ばれる場合には、これが入口雰囲気である。一方、冷却後、鋼板材に過時効処理を施す場合には、冷却は、過時効雰囲気下で行われる。
【0041】
次いで、本発明による方法で準備された鋼板材を、既知の方法で好適な溶融浴釜に満たされた溶融浴を連続通路で通過させるが、それによって実際には1〜10秒、特に2〜5秒の浸漬時間が好適であることが分かっている。溶融浴釜では、溶融浴が鋼表面を湿潤させ、ストリップ鋼の金属鉄と溶融浴との間で化学反応が起こって金属間の境界層が形成され、良好なめっき付着が確保される。
【0042】
本発明により処理されるタイプの鋼板材のめっきに特に好適である溶融浴は、Znおよび不可避な不純物のほか、0.1〜60.0%、特に0.15〜0.25%のAlおよび最大0.5%のFeを含んでもよい(データはすべて重量%単位)。こうして作られる溶融浴で得られるめっきは、それぞれのAl含有量に応じて実際には「Z」めっき、「ZA」めっきまたは「AZ」めっきとして知られる。この場合の不可避な不純物は、微量のSi、Mn、Pbおよび希土類を含む。別の溶融浴組成は、Znおよび不可避な不純物のほか、0.05〜8.0%のAl、0.2〜8.0%のMg、最大2.0%のSi、最大0.1%のPb、最大0.2%のTi、最大1%のNi、最大1%のCu、最大0.3%のCo、最大0.5%のMn、最大0.2%のCr、最大0.5%のSr、最大3.0%のFe、最大0.1%のB、最大0.1%のBi、最大0.1%のCdおよび微量の希土類、Al含有量%AlとMg含有量%Mgとの比率は%Al/%Mg<1である。本明細書に記載したタイプの鋼板材のめっきに好適な溶融浴の他の組成は、たとえば特許文献18、特許文献19および特許文献20に開示されている。この種のマグネシウムを含む亜鉛系めっきは、実際には「ZM」めっきとして知られる。
【0043】
次いで、溶融めっき鋼板材を、Fe−Zn合金めっきを得るためインラインで熱処理(ガルバニーリング)する場合、Znおよび不可避な不純物のほか、0.1〜0.15重量%のAlおよび最大0.5%のFeを含む溶融浴組成が好適であることが分かっている。こうした溶融浴で得られためっきは、商業上、接頭辞「ZF」で表示される。
【0044】
不可避な微量を除いてZnを含まないAl系めっきは典型的には、Alおよび不可避な不純物のほか、最大15.0重量%のSiおよび最大5.0%のFeを含む。このタイプのめっきは、実際には「ASめっき」として知られている。
【0045】
露点TP1、TP2およびTP4を
TP1>TP2>TP4
に従い、あるいは過時効処理を行う場合には、
TP1>TP2>TP3≧TP4
に従い設定することにより、それぞれの加熱雰囲気(露点TP1)、保持雰囲気(露点TP2)、任意に存在する過時効雰囲気(露点TP3)および入口雰囲気(露点TP4)の酸化力は、いずれの場合もそれぞれのプロセス工程において存在する鋼ストリップ温度に最適に適合される。加熱中に維持される加熱雰囲気を高い露点TP1にすると、卑金属合金元素の内部酸化物の最初の形成が増加する。その後の高い保持温度での保持においては、鋼表面上で最適な還元結果を達成し、FeおよびNiの酸化を防止するため、露点TP2を下げることにより保持雰囲気の酸化力を低下させる。
【0046】
任意に実行される過時効処理中に維持される雰囲気の露点TP3をさらに下げると、酸化力がさらに低下する。これには、過時効処理において主に存在する低いストリップ温度およびその短い時間のため、この前に形成された可能性がある任意の外部酸化物を過時効工程自体またはその後の作業工程でもはや還元できないという環境を考慮に入れる。同じ理由により、入口に主に存在する入口雰囲気の露点TP4も過時効雰囲気の露点TP3以下に設定し、したがって保持雰囲気の露点TP2より低い。
【0047】
条件TP1>TP2>TP3≧TP4を守ため実際の実施では、先行する作業工程で維持された雰囲気による、より乾燥した雰囲気の汚染がすべて回避されなければならない。これは、20〜100Paへの圧力低下を設定し、使用する通路炉の長さにわたりストリップ進行方向と逆に維持すれば、容易に達成することができる。この結果、通路炉を通り持続的に鋼板材の進行方向と逆に方向付けられ、いずれの場合も先行するプロセス工程において維持された雰囲気とより乾燥した雰囲気を混合するガス流が得られる。
【0048】
通路炉を通して鋼板材の進行方向と逆に方向付けられた当該ガス流は、たとえば供給するガス体積流、流速および圧力低下の制御により調節することができる。流速および圧力低下は、典型的には炉の最初の部分に位置するガス抽出装置の吸引力をそれぞれの条件に適合させることで操作することができる。たとえば炉内部に狭窄部を設けることにより、局所的に流速をさらに高めてもよい。
【0049】
本発明による方法に重要な露点TP1〜TP4の制御および設定には、特に露点TP1およびTP2の制御時、加熱雰囲気および保持雰囲気の標的化加湿が必要とされる。このため、それぞれの雰囲気(加熱雰囲気、保持雰囲気、入口雰囲気または過時効雰囲気)に湿った媒体を導入してもよい。これは一般に、酸化媒体の添加により達成され、酸化媒体は水蒸気、湿ったNもしくはH、加湿されたNおよびHもしくはNおよびOの混合物、またはOであってもよい。これは通常、加湿される炉帯ごとに1つの供給ラインを介して加えられ、供給ラインは、調節しやすいように不活性ガス供給から分離されている。
【0050】
本発明による溶融めっきされた鋼板材は、その機械的数値および表面特性のため、薄板金属部材への単段または多段の冷間もしくは熱間成形に理想的に好適である。したがって特に自動車車両構造用、および設備、機械または家電機器の組み立てにおける高温および低温用途の部材は、本発明により得られた鋼板材から製造することができる。本発明により製造された鋼板材は、優れた成形能ならびに熱性および腐食性の環境による負荷に対する高い抵抗性を有する。したがって本発明により溶融めっきされた鋼板材を使用すると、軽量化の可能性を最大限利用できるだけでなく、本発明により製造された鋼板材から形成される製品の寿命も延長する。
【0051】
本発明により処理される鋼板材を製造する鋼は典型的には、鉄および不可避な不純物のほか(重量%)、Cr:5.0〜30.0%、Ni:2.0〜30.0%、Mn:≦6.0%、Mo:≦5.0%、Si:≦2.0%、Cu:≦2.0%、Ti:≦1.0%、Nb:≦1.0%、V:≦0.5%、N:≦0.2%、Al:≦2.0%、C:≦0.5%を含む。
【0052】
本発明について、例示的な実施形態を参照しながら以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明による方法を実施するように適合された炉帯を有する通路炉を含む溶融めっきプラントの概略図
【発明を実施するための形態】
【0054】
図は、本発明による方法を実施するように適合された炉帯2、3、4、5、6を有する通路炉1を含む溶融めっきプラントの概略を示す。
【0055】
溶融めっきされる薄鋼板材Sは間断なく連続して炉帯2〜6を進行方向Fに通過する。鋼板材Sは最初に炉帯2に入り、加熱雰囲気Atm1下で20秒の加熱時間、保持温度T1に加熱される。
【0056】
次いで炉帯2の後、鋼板材Sは炉帯3を通過し、そこで保持雰囲気Atm2下、45秒間保持温度T1で保持される。
【0057】
炉帯3の後には炉帯4があり、そこで鋼板材Sは10秒以内ストリップ入口温度T2まで冷却される。冷却は、炉帯4の後の炉帯5に主に存在する過時効雰囲気Atm3下で行う。
【0058】
炉帯5では、鋼板材Sを過時効雰囲気Atm3下、ストリップ入口温度T2で20秒間過時効処理に供する。
【0059】
炉帯5の後、鋼板材Sは、溶融浴釜7に満たされた溶融浴Bへの自由端を有し、開口している入口として形成された炉帯6に入る。炉帯6では、鋼板材Sは入口雰囲気Atm4下、ストリップ入口温度T2で保持される。
【0060】
炉帯6を介して溶融浴Bに送られた鋼板材は、そこで溶融浴B内に位置する反転ローラにより既知の方法で方向転換し、次いでスクレーパー装置(ここには図示せず)を通過し、溶融浴Bから出現した鋼板材S上に存在する金属めっきの厚さが調整され、最後に、それ自体既知の方法で、冷却部を介して巻取装置(やはりここには図示せず)に案内され、コイルに巻き取られる。
【0061】
溶融めっきプラントAで金属の保護めっきが設けられる鋼板材Sは典型的には、圧延硬化状態の冷間圧延鋼ストリップである。
【0062】
合金構成成分を重量%を単位として表2に示した、3つの異なる鋼S1〜S3による18の実験V1〜V18では、冷間圧延ストリップ鋼を製造し、次いでこれを圧延硬化状態で溶融めっきプラントAに送り込んだ。
【0063】
【表2】
【0064】
表3は、実験V1〜V18ごとに、炉帯2で達する保持温度T1、炉帯2に主に存在する加熱雰囲気Atm1の組成、加熱雰囲気Atm1の露点TP1設定、炉帯3に主に存在する保持雰囲気Atm2の組成、保持雰囲気Atm2のそれぞれの露点TP2、炉帯4の冷却後に達するストリップ入口温度、炉帯5に主に存在する過時効雰囲気Atm3の組成、過時効雰囲気Atm3の露点TP3、入口として形成された炉帯6に主に存在する入口雰囲気Atm4の組成、入口雰囲気Atm4の露点TP4、溶融浴Bの温度T3および溶融浴Bの組成を示す。
【0065】
炉帯2〜6に主に存在する雰囲気Atm1〜Atm4の間に圧力の低下を設定することにより、通路炉1において進行方向Fと逆に流れるガス流Gが維持され、これにより、鋼板材Sが以前に通過したより湿った雰囲気Atm1、Atm2、Atm3による、それぞれより乾燥した雰囲気Atm2、Atm3、Atm4の汚染が防止される。
【0066】
表4は、実験V1〜V18の結果を評価する。本発明に適合せず、露点TP1、TP2、TP3、TP4の設定が本発明による規定TP1>TP2>TP3≧TP4に従わず、該当する場合、さらに本発明の要件からの逸脱を示した例示的な実施形態4、5、6、11、12、18と、露点TP1およびTP2の1つが本発明により事前に設定された範囲外にある例示的な実施形態15および17とは、不満足なめっき結果のみを示したことは明らかである。一方、本発明による方法で行われた実験は各々、最適なめっき結果を示した。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【符号の説明】
【0069】
1 通路炉
2 通路炉1の炉帯(加熱ゾーン)
3 通路炉1の炉帯(保持ゾーン)
4 通路炉1の炉帯(冷却ゾーン)
5 通路炉1の炉帯(過時効ゾーン)
6 通路炉1の炉帯(入口)
7 溶融浴釜
A 溶融めっきプラント
B 溶融浴
F 進行方向
G ガス流
S 鋼板材(冷間圧延、圧延硬化ストリップ鋼)
図1