【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」は質量基準である。
【0043】
<実施例1>
(1)豚脂分別硬質部及び豚脂分別軟質部の調製
豚脂脱色油(ヨウ素価58.7)を、70℃に加熱して完全に溶解し、30℃で攪拌しながら24時間晶析した。晶析後、3.0MPaでフィルタープレスし、豚脂分別硬質部(E1)及び豚脂分別軟質部(B1)を得た。
【0044】
(2)ランダムエステル交換油脂の調製
豚脂を常法によりニッケル触媒を用いて硬化し、豚脂極度硬化油(ヨウ素価0.2)(A1)を作製した。
【0045】
次に、上記豚脂の極度硬化油(A1)45部と、(1)で調製した豚脂分別軟質部(ヨウ素価62.7)(B1)55部とを混合し、得られた油脂混合物(C1)を90℃で30分間、真空下で脱水を行った。次いで、ナトリウムメチラート0.3部を加え、90℃、窒素気流下で30分間ランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応を停止し水洗した。次に、常法により活性白土を用いて脱色し、次いで脱臭を行い、ランダムエステル交換油(D1)を作製した。
【0046】
(3)油脂組成物の調製
(1)で調製した豚脂分別硬質部(ヨウ素価52.1)(E1)30部と、(2)で作製したランダムエステル交換油(D1)50部と、豚脂(F1)20部とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0047】
<実施例2>
実施例1で作製した豚脂分別硬質部(E1)10部と、ランダムエステル交換油(D1)50部と、豚脂(F1)40部を混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0048】
<実施例3>
実施例1で作製した豚脂分別軟質部(B1)15部と、豚脂極度硬化油(A1)35部と、豚脂(F1)50部とを混合し、得られた油脂混合物(C2)を用いて実施例1と同様にしてランダムエステル交換反応を行って、ランダムエステル交換油(D2)を作製した。実施例1で作製した豚脂分別硬質部(E1)40部と前記ランダムエステル交換油(D2)60部とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0049】
<実施例4>
実施例1で作製した豚脂分別硬質部(E1)20部と、実施例3で作製したランダムエステル交換油(D2)60部と、豚脂(F1)20とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0050】
<実施例5>
実施例1で作製した豚脂分別硬質部(E1)5部と、実施例3で作製したランダムエステル交換油(D2)95部とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0051】
<実施例6>
実施例1で作製した豚脂分別硬質部(E1)60部と、ランダムエステル交換油(D1)30部と、豚脂(F1)10部とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0052】
<実施例7>
(1)牛脂分別硬質部及び牛脂分別軟質部の調製
牛脂脱色油(ヨウ素価49.0)を、70℃に加熱して完全に溶解し、30℃で攪拌しながら24時間晶析した。晶析後、3.0MPaでフィルタープレスし、牛脂分別硬質部(E2)及び豚脂分別軟質部(B2)を得た。
【0053】
(2)ランダムエステル交換油脂の調製
牛脂を常法によりニッケル触媒を用いて硬化し、牛脂極度硬化油(ヨウ素価0.2)(A2)を作製した。
【0054】
次に、上記牛脂の極度硬化油(A2)40部と、(1)で調製した牛脂分別軟質部(ヨウ素価53.4)(B2)60部とを混合し、得られた油脂混合物(C3)を用いて実施例1と同様にしてランダムエステル交換反応を行って、ランダムエステル交換油(D3)を作製した。
【0055】
(3)油脂組成物の調製
(1)で調製した牛脂分別硬質部(ヨウ素価44.1)(E2)10部と、(2)で作製したランダムエステル交換油(D3)60部と、牛脂(F2)30部とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0056】
<比較例1>
実施例1で作製した豚脂極度硬化油(A1)45部と、豚脂(F1)55部とを混合し、得られた油脂組成物(C4)を用いて実施例1と同様にしてランダムエステル交換油(D4)を作製した。豚脂(F1)50部と、前記ランダムエステル交換油(D4)50部とを混合し、得固形ルウ用油脂組成物を得た。
【0057】
<比較例2>
実施例1で作製した豚脂分別硬質部(E1)20部と、比較例1で作製したランダムエステル交換油(D4)50部と、豚脂(F1)30部とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を得た。
【0058】
<比較例3>
実施例3で作製したランダムエステル交換油(D2)95部と、豚脂(F1)5部とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を得た。
【0059】
<比較例4>
実施例1で作製した豚脂分別硬質部(E1)80部と、ランダムエステル交換油(D1)20部とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0060】
<比較例5>
実施例1で作製したランダムエステル交換油(D1)100を固形ルウ用油脂組成物とした。
【0061】
<比較例6>
実施例1で作製した豚脂分別硬質部(E1)60部と、ランダムエステル交換油(D1)20部と豚脂(F1)20部を混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0062】
<比較例7>
実施例7で作製したランダムエステル交換油(D4)60部と、牛脂(F2)40部を混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0063】
<比較例8>
(1)ランダムエステル交換油脂の調製
実施例7で作製した牛脂の極度硬化油(A2)40部と、牛脂(F2)60部とを混合し、得られた油脂混合物(C5)を用いて実施例1と同様にしてランダムエステル交換反応を行って、ランダムエステル交換油(D5)を作製した。
【0064】
(2)油脂組成物の調製
実施例7で作製した牛脂分別硬質部(E2)10部と、(1)で作製したランダムエステル交換油(D5)60部と、牛脂(F2)30部とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0065】
<比較例9>
比較例8で作製したランダムエステル交換油(D5)60部と、牛脂(F2)40部とを混合し、固形ルウ用油脂組成物を作製した。
【0066】
<特性評価>
下記表1に、上記実施例1〜7、比較例1〜9におけるランダムエステル交換油の原料油脂配合と、トランス脂肪酸含量と、SFC(固体脂含量)とを示した。
【0067】
【表1】
【0068】
また、下記表2、3に、上記実施例1〜7、比較例1〜9で得られた固形ルウ用油脂組成物の原料油脂配合と、トランス脂肪酸含量と、SFC(固体脂含量)とを示した。
【0069】
なお、表中のSFC(固体脂含量)とは、所定の温度(表中に示された温度)における固体脂含量(質量%)のことである。SFC(固体脂含量)は、IUPAC法2.150a Solid Content determination in Fats by NMRに準じて測定した。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
<試験例>
(1)カレールウの調製
実施例1〜7、比較例1〜9で得られた固形ルウ用油脂組成物300部、小麦粉300部、糖類50部、食塩30部、カレー粉200部、調味ペースト30部を平鍋にとり、120℃で30分間混合した後、品温が60℃になるまで冷却した。次に、ポリプロピレン製のトレーにルウを流し入れ、−10℃、−5℃、0℃、5℃、10℃、15℃の各温度帯で30分間保持し、その後20℃で一晩保持して固化した。
【0073】
(2)カレールウの固化性試験
上記(1)で調製した各カレールウを切断し、断面を肉眼観察して固形物の沈殿状態を評価した。得られた結果を下記表4,5に示す。なお、固形物の沈殿状態は、下記基準によって評価した。
◎:固形分の沈殿が全くなし
○:固形分の沈殿がわずかにあり
△:固形分の沈殿が少しあり
×:固形分の沈殿が多い
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
(3)カレールウのブルーミング、スナップ性、溶解性
上記(1)の5℃30分の冷却条件で調製したカレールウについて、ブルーミング、スナップ性、溶解性を評価した。得られた結果を下記表6,7に示す。
【0077】
なお、それぞれの評価基準は、下記の通りである。
(ブルーミング)
◎:ブルーミングが全くなし
○:ブルーミングがわずかにあり
△:ブルーミングが少しあり
×:ブルーミングが多数あり
(スナップ性)
固形ルウを、20℃に調温した後、手での折りやすさを下記基準で評価した。
◎:とても良い
○:良い
△:やや悪い
×:悪い
(溶解性)
◎:お湯(60℃)への溶解性がとても良い
○:お湯(60℃)への溶解性が良い
△:お湯(60℃)への溶解性がやや悪い
×:お湯(60℃)への溶解性が悪い
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
表4〜7に示したように、実施例1〜7の油脂組成物を用いて作製したルウは、動物油脂の分別軟質部と動物油脂極度硬化油を一定の割合以上含有する油脂組成物を、ランダムエステル交換してランダムエステル交換油脂(D1,D2,D3)を作製し、前記ランダムエステル交換油脂(D1,D2,D3)と動物油脂を分別処理して作製した動物油脂の分別硬質部(E1,E2)を一定の割合以上含有する油脂組成物からなるため、固化性がとても良く、ブルーミング防止効果やスナップ性に優れるものであり、60℃のお湯への溶解性がとても良いものとなった。
【0081】
これに対して、動物油脂の極度硬化油と動物油脂とを混合し、ランダムエステル交換してランダムエステル交換油脂(D4, D5)を作製し、前記ランダムエステル交換油脂(D4, D5)を含む油脂組成物を用いて作製した比較例1、比較例2、比較例8、比較例9のルウは、60℃のお湯への溶解性が悪かった。
【0082】
また、動物油脂の分別硬質部を含有しない油脂組成物を用いて作製した比較例1、比較例3、比較例5、比較例7、比較例9のルウは固化性が悪く、スナップ性も劣るものとなった。
動物油脂の分別硬質部を一定の割合以上含む油脂組成物を用いて作製した比較例2、比較例4、比較例6、比較例8のルウは固化性に優れるが、硬質部が60質量%よりも多く含まれる比較例4はブルーミング防止効果が劣るものとなった。
ランダムエステル交換油を一定の割合以上含む油脂組成物を用いて作製した比較例1、比較例2、比較例3、比較例5、比較例8、比較例9はブルーミング防止効果に優れるが、ランダムエステル交換油脂の割合が30質量%よりも低い油脂組成物を用いた比較例4、比較例6のルウはブルーミング防止効果が劣るものとなった。