(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記廃棄物が、放射性物質によって汚染されたものであって、除染によって生じた廃棄物である、ことを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の太陽光発電方法。
【背景技術】
【0002】
我が国は地震が頻発する国として知られ、近年では、東北地方太平洋沖地震をはじめ、兵庫県南部地震、新潟県中越地震など大きな地震が発生し、そのたびに甚大な被害を被ってきた。特に今般の東日本大震災では、津波によって計り知れない被害を受けたうえ、さらに福島原子力発電所の原子炉が破損したことによって放射性物質が大量に漏れ出すという事故も発生した。
【0003】
この原発事故によって、2つの社会的問題が生じた。1つは、放射性物質の漏出に伴い、原子力発電所の周辺が立ち入り禁止の警戒区域になるなど、住民に影響する直接的な問題である。もう1つは、原子力発電に対する国民の不安が高まったという、いわば間接的な問題である。
【0004】
1つ目の問題の対策として最も効果的な手段とされているのが除染である。この除染の手法であるが、放射性物質の放射能を低減させるという除染技術はいまだ実用化には至っておらず、専ら採用されているのは放射性物質が付着した表土を剥ぎ取る除染方法である。その結果、剥ぎ取った表土、すなわち放射線に汚染された土やガレキなどの物質を含んだ汚染土の処理が、新たな問題となっている。
【0005】
今回問題となっている放射性物質はヨウ素とセシウムである。このうちヨウ素は、その半減期が8日であるために事故後時間が経過した現在では問題視されなくなったが、一方のセシウムは、その半減期が比較的長いため現在でも重要な問題として残っている。特に、セシウム137はその半減期が30年であるため、先に述べた除染後の汚染土処理の問題を深刻なものとしている。
【0006】
2つ目の問題の対策として注目されているのが再生可能エネルギーの利用である。原子力エネルギーへの過度な依存から脱却して、安全なエネルギーを積極的に利用するというものである。しかしながら、再生可能エネルギーの利用にもいくつか問題が潜んでいる。例えば、太陽光発電は従来の発電方法に比べると圧倒的に発電量が少なく、需要に応えるためには相当な受光面積が必要となるといった問題が挙げられる。
【0007】
除染によって発生する汚染土は、放射線漏れを防御して保管する必要があり、また大量に発生することから広い保管場所が必要となる。一方、太陽光発電によって所定の電力量を確保するためには大きな受光面積が必要であり、やはり広い場所の確保が必要となる。したがって、除染による汚染土の保管場所を利用して太陽光発電を行うとすれば、有効に土地を利用することができて極めて便宜である。
【0008】
ところが、特許文献1のように廃棄物処分場で太陽光発電を行う手法は提案されているものの、除染による汚染土の保管場所(一時保管や最終保管)を利用して太陽光発電を行う手法についてこれまで提案されることはなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1は、電気エネルギーの自給に加え、廃棄物処分場への雨水流入を減少させることも目的としており、いわば屋根の代用として太陽電池張設パネル(本文献では「PVパネル」としている。)を設置することを主な提案としている。このPVパネルを廃棄物処分場の上空に設置するため、支柱やフレーム等による架台構造が設置される。また特許文献1では、廃棄物埋立処分場の法面にシート状太陽電池を被覆することも提案されている。
【0011】
しかしながら、PVパネルを廃棄物処分場の上空に設置することには、いくつかの問題が挙げられる。PVパネル設置のため支柱を立てるにあたっては、これを支持するため比較的堅固な(軟弱でない)地盤が必要とされるし、そもそも架台構造にかかる材料費や施工費など相当のコストがかかる。とくに除染による汚染土の保管場所を選定する場合で考えれば、基礎地盤も選定条件に加えることは適当でない。
【0012】
また、廃棄物埋立処分場の法面にシート状太陽電池を被覆する技術について、特許文献1では詳細に記載されていないが、この技術を実用化するにあたってはいくつか技術的な問題がある。シート状太陽電池は、法面に直接敷設するか、又は法面に敷設される遮水シートに設置することとしているが、シート状太陽電池(あるいは遮水シート)は強風時にフラッタリングを起こしやすく、その結果、シートの破損、シートの剥がれや飛散、あるいはシート状太陽電池の断線などのおそれがある。
【0013】
シートのフラッタリングを防止するため、一般的には固定工が施される。
図7は、盛土法面に敷設された遮水シートSに、固定工Fを設置した状態を示す横断図である。この図に示すように固定工Fは、シート全体を押さえるため、法尻に水平方向に延設される水平梁Fhと、法勾配に沿って設置される斜方向梁Fsで構成される。これら水平梁Fhや斜方向梁Fsは、シートを押さえつつ斜面内や地面内に溝状に埋め込まれるもので、断面が数十cm×数十cmのコンクリート梁とされることが多い。もしくはコンクリート梁の代わりに例えば溝状に土質材等を盛り、その重量でシートを押さえることもある。しかしながら、このような固定工Fを設置すれば太陽電池の設置場所が制限されることとなり、受光面積を広く確保するという視点で考えると固定工Fは採用し難い。
【0014】
さらに、法面にシート状太陽電池を被覆する技術には、シートの破損個所を発見し難いという問題もある。シート状太陽電池あるいは遮水シートは、フラッタリングのほかにも様々な要因で破損することがある。ところが、通常このようなシートを敷設する場合、その面積は広範となり、シートの破損個所を目視等で発見することは容易ではない。除染による汚染土を埋設した盛土法面にシートを敷設した場合を想定すると、容易ではないとはいえ破損個所を放置することはできない。
【0015】
本願発明の課題は、除染による汚染土の保管場所(一時保管や最終保管)や廃物処分場を有効活用するとともに、地盤条件によることなく、しかも低コストで、太陽光発電装置及び太陽光発電方法を提供することにある。また、シート状太陽電池を取り付けた遮水シートのフラッタリングを防止するとともに、固定工を省略できる、すなわち受光面積を広く確保し得る太陽光発電装置及び太陽光発電方法を提供することも本願発明の課題である。
【0016】
さらに、シート状太陽電池を取り付けた遮水シートの破損個所を容易に検知することのできる太陽光発電装置及び太陽光発電方法を提供することも本願発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明は、除染による汚染土の保管場所や廃物処分場といった土地を有効活用するとともに、遮水シートを盛土体に密着させる引張力として負圧を利用するという発想に基づいて行われたものである。
【0018】
本願発明の太陽光発電装置は、盛土体(その内部には廃棄物を埋設)に設置される太陽光発電装置であり、盛土体の底面に敷設される底部遮水シート、盛土体の表面を被覆する表面遮水シート、表面遮水シートに取り付けられるシート状太陽電池、空隙(盛土体と表面遮水シートの間に形成される空間)内
にある気体を吸引する吸引手段を備えている。底部遮水シートと表面遮水シートは接続処理されており、これによって一連の袋状遮水シートが形成され、その結果この袋状遮水シートの内部は密封状態(略密封状態含む)となる。また、吸引手段は、表面遮水シートに設けられた吸引口から空隙内の気体を吸引することができるものである。すなわち、
吸引手段の吸引により表面遮水シートの内外で圧力差が生じることで表面遮水シートが盛土体に密着した状態となり、つまりシート状太陽電池も表面遮水シートを介して盛土体に密着した状態となる。このように本願発明の太陽光発電装置は、盛土体に密着した状態のシート状太陽電池によって発電することのできるものである。
【0019】
本願発明の太陽光発電装置は、敷設された表面遮水シートの端部を封鎖処理することによって袋状遮水シートを形成することもできる。この結果、表面遮水シートのみで袋状遮水シートが形成され、その内部は密封又は略密封状態となり、吸引手段を用いてシート状太陽電池を盛土体に密着した状態とすることができる。この場合、底部遮水シートや一部の表面遮水シートの敷設を省くこともできる。
【0020】
放射性物質が付着した物を含む表土は、除染によって除去され除去物となって運び出される。本願発明の太陽光発電装置は、内部に除去物を埋設した盛土体に設置することもできる。
【0021】
本願発明の太陽光発電装置は、発電効率を考慮して、表面遮水シートのうち南向きとなる部分にのみシート状太陽電池を配置することもできる。
【0022】
本願発明の太陽光発電装置は、表面遮水シートの破損個所を検出できる装置とすることもできる。この場合、赤外線を利用した温度計測手段と、表面遮水シートの破損個所の検出が可能な破損個所検出手段を備えることとする。この温度計測手段は、吸引手段により吸引状態となった表面遮水シートの表面温度分布を計測できるものであり、破損個所検出手段は、温度計測手段の計測結果(表面温度分布)に基づいて表面遮水シートの破損個所を検出するものである。
【0023】
あるいは、表面遮水シート表面の破損個所を検出するため給気手段を利用することもできる。この場合、温度計測手段と破損個所検出手段に加え、空隙内に給気可能な給気手段とを備えることとする。温度計測手段は、給気手段により給気状態となった表面遮水シート周辺の周辺温度分布を計測し、破損個所検出手段は、温度計測手段の計測結果に基づいて表面遮水シートの破損個所を検出する。
【0024】
本願発明の太陽光発電方法は、盛土体に配置する太陽電池によって発電する方法であり、表面遮水シート敷設工程、密封工程、減圧工程を経て、盛土体に密着した状態のシート状太陽電池によって発電する方法である。表面遮水シート敷設工程では、表面遮水シート(あらかじめシート状太陽電池が取り付けられている)を盛土体の表面に被覆することが行われる。密封工程では、遮水シートと底部遮水シートを接続処理して一連の袋状遮水シートが形成され、袋状遮水シートの内部を密封又は略密封状態とする。減圧工程では、吸引手段を用いて空隙内の気体を吸引し、この空隙内を減圧する。なお、吸引手段で吸引する際は、表面遮水シートに設けられた吸引口を利用する。
この結果、表面遮水シートの内外で圧力差が生じることで表面遮水シートが盛土体に密着した状態となり、つまりシート状太陽電池も表面遮水シートを介して盛土体に密着した状態となる。
【0025】
密封工程で、敷設された表面遮水シートの端部を封鎖処理し、これにより形成された袋状遮水シートの内部を密封又は略密封状態にすることもできる。この結果、表面遮水シートのみで袋状遮水シートが形成され、その内部は密封又は略密封状態となり、吸引手段を用いてシート状太陽電池を盛土体に密着した状態とすることができる。この場合、底部遮水シートや一部の表面遮水シートの敷設を省くこともできる。
【0026】
表面遮水シート敷設工程を、シート設置工程と太陽電池設置工程で構成することもできる。このシート設置工程は表面遮水シートのみを設置する工程であり、太陽電池設置工程は表面遮水シートの表面にシート状太陽電池を取り付ける工程である。すなわち、この場合の表面遮水シート敷設工程は、単体の表面遮水シート(あらかじめシート状太陽電池が取り付けられていない)を盛土体の表面に被覆し、その後にシート状太陽電池を取り付けることとなる。
【0027】
本願発明の太陽光発電方法は、内部に除去物(除染により生じたもの)を埋設した盛土体で行うこともできる。
【0028】
本願発明の太陽光発電方法は、表面遮水シートの破損個所を検出できる方法とすることもできる。この場合、温度計測工程と、破損個所検出工程を備えることとする。この温度計測工程は、赤外線を利用した温度計測手段を用いて表面遮水シートの表面温度分布を計測するものである。この計測を、空隙内の気体を吸気手段で吸気しながら行うと、遮水シートの破損個所から外気が流入するため、他との温度差が顕著に表れる。破損個所検出工程は、計測結果である表面温度分布に基づいて、表面遮水シート表面のうち破損個所を検出するものである。
【0029】
あるいは、表面遮水シート表面の破損個所を検出するため給気手段を利用することもできる。この場合、温度計測工程では、給気手段によって空隙内に給気しながら計測される。空隙内に給気しながら行うと、遮水シートの破損個所から給気された気体が流出するため、他との温度差が顕著に表れる。
【発明の効果】
【0030】
本願発明の太陽光発電装置、及び太陽光発電方法には、次のような効果がある。
(1)除染による汚染土の保管場所や廃物処分場など、これまではあまり利用されなかった土地を、発電施設として有効活用することができる。
(2)発電された電力を利用できる。具体的には、吸引手段や給気手段などへの利用、売電などが例示できる。
(3)支柱などの構造物を必要としないので、あらゆる地盤条件に設置された盛土体に利用できる。
(4)架台構造を必要としないため構造が簡易であり、装置製作のための費用、設置のための施工費が軽減される。
(5)シート状太陽電池は、軽量であるため盛土体の沈下が生じ難く、また薄膜であるため沈下が発生した場合であっても盛土の表面形状に追従しやすい。
(6)吸引手段によって遮水シートの背面側を負圧にするので、フラッタリングを防止することができ、その結果としてシートの破損、シートの剥がれや飛散、あるいはシート状太陽電池の断線を防ぐことができる。
(7)吸引手段によって遮水シートを盛土体に密着させることで、固定工を省略又は軽減することができるため、受光面積を広く確保することができる。
(8)人工衛星用太陽電池セルとして使用実績のあるCIGS系の太陽電池は、放射線に対して強い抵抗力を備えている。シート状太陽電池としてCIGS系の太陽電池を利用すれば、除染による汚染土の保管場所での利用においてさらに好適となる。
(9)赤外線を利用した温度計測手段で、表面遮水シートの表面温度分布を計測することによって、遮水シートの破損個所を容易に検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本願発明の太陽光発電装置、及び太陽光発電方法の実施形態の例を図に基づいて説明する。
【0033】
(全体概要)
図1は、本願発明の太陽光発電装置を盛土体に設置した状態を示す斜視図である。この図に示すように、盛土体の表面には表面遮水シート10が敷設されており、その表面遮水シート10の表面側(外面側)にはシート状太陽電池20が設置されている。シート状太陽電池20によって発電された電力は、後に説明する吸引手段や給気手段等に利用できるほか、線量計、漏水検知機、人感センサー、アラーム等の安全管理用の機器に利用することができる。さらに、余剰電力については売電することもできる。
【0034】
後に説明するが、盛土体の表面部は覆土と呼ばれる土や粘土で構成されており、図に示すように側面部は法面(以下、「盛土法面」という。)が形成されている。なお、盛土法面は、一般的に土羽仕上げとされる。通常、土羽仕上げされた盛土法面には凹凸が残っており、つまり、表面遮水シート10は凹凸のある盛土法面に敷設されることとなる。そのため、単に表面遮水シート10を盛土法面に敷設しただけでは、表面遮水シート10と盛土法面の間に空間(以下、「空隙」という。)が生じることとなる。
【0035】
このように空隙があると、台風などの強風時には表面遮水シート10がフラッタリングを起こしやすくなる。フラッタリングは、表面遮水シート10の破損や飛散の直接原因になるもので、可能な限り防止することが望ましい。そこで、本願発明では、空隙内にある気体を吸引して負圧とし(減圧し)、内外の圧力差を利用して表面遮水シート10を盛土法面に密着させることとした。なお、空隙内にあるのは基本的には空気であるが、他のガスである場合も考えられるので、ここでは「気体」という語を用いている。
【0036】
空隙内の気体を吸引する具体的手段が、
図1に示す吸引手段31である。表面遮水シート10には吸引口32が設けられており、この吸引口32に吸気管33を挿入し、吸気管33を通じて吸引手段31が吸引するわけである。吸引手段31が吸引した結果、
図2に示す矢印のように空隙内の気体は外部に排出され、空隙内は負圧となる。なお、
図1の吸引口32周辺に示した矩形は、補強用のシール材であって、吸引口32ではない。当然ながら吸引口32の径は、吸気管33の径との関係で気体漏れ(エア漏れ)しないように設計される。
【0037】
ここで、シート状太陽電池20を利用する理由について説明する。盛土体は即時沈下に加え圧密沈下を起こすことから、盛土法面の形状は絶えず変化し、これに伴って表面遮水シート10もその敷設状態が変化する。シート状太陽電池20は、厚みが数μm〜数十μmであることから変形容易という特徴を備えており、表面遮水シート10の状態変化に対しても容易に追従することができる。加えて、シート状太陽電池20は軽量であることから、盛土法面に設置しても圧密沈下の促進にはならない。以上が、シート状太陽電池20を利用する理由である。
【0038】
本願発明を構成する要素ごとに詳述する前に、盛土体について説明する。
図2は、盛土体の内部構造を示す断面図である。この図に示すように、盛土体の内部には、土嚢袋等に納められた多くの廃棄物41を埋設することができる。本実施形態では、この廃棄物41が除染によって生じた除去物である場合で説明している。ここで除染とは、前記したように放射線に汚染された土やガレキなどの物質を含んだ表土を剥ぎ取ることを意味し、除去物とは剥ぎ取られた表土のことを指す。なお、ここで廃棄物41を除去物としたのは説明上の便宜であって、本願発明を実施する上では、盛土体内の廃棄物41を他の廃棄物(産業廃棄物や一般廃棄物)とすることもできる。
【0039】
図2に従って、盛土体の構成について説明する。地表面に底部遮水シート50が敷設され、その上には敷土42が載せられる。敷土42の材料には、セシウムの移動を抑制する(0.1mmの移動に300年ともいわれる)という理由から、ベントナイトが適している。敷土42の中央部には複数の廃棄物41が段積みされており、その外周には放射線漏れを防ぐためビニルシート43が被覆されている。廃棄物41はさらに覆土44で保護されている。この覆土44に利用する材料も、敷土7と同様の理由からベントナイトが適している。覆土44とビニルシート43の間に形成される階段状の空間には、詰土45が設置される。なお、敷土42、覆土44、詰土45は、すべてベントナイトとすることが望ましいが、状況に応じて、土や砂、あるいはモルタル等他の材料を用いることもできる。また、詰土45のみを砂とするなど、それぞれ別の材料を用いることもできる。
【0040】
次に
図3に従って、盛土体の外形について説明する。
図3(a)は、表面遮水シート10を設置する前の状態の盛土体の平面図であり、(b)は平面図に示す矢視A−Aの断面図、(c)は平面図に示す矢視B−Bの断面図である。なお、平面図で描いている盛土法面内の直線は、法面であることを意味するものであって、シート状太陽電池20を示すものではない。
【0041】
図3(a)に示すように盛土体の表面は、略長方形の底面と、同じく略長方形の天端面46と、4つの盛土法面で構成されている。説明の便宜上、図に示すX軸方向を長手方向、Y軸方向を幅方向と呼び、長手方向に形成される2つの盛土法面を主法面47、幅方向に形成される2つの盛土法面を端部法面48と呼ぶ。つまり、
図3(b)では主法面47を表し、
図3(c)では端部法面48を表している。なおこの図では、長手方向の盛土法面が南側に位置しており、シート状太陽電池20の設置に最も適しているためこれを「主法面47」としている。主法面47及び端部法面48は、安定勾配で盛土することが原則となるが、シート状太陽電池20を設置する場合には、受光しやすい勾配(例えば水平面から30度)で盛土することが望ましい。もちろん盛土体は、
図3に示した外形に限られるものではなく、他の外形をなすものでも構わない。
【0042】
以下、本願発明を構成する要素ごとに詳述する。
【0043】
(底部遮水シート)
底部遮水シート50は、盛土体内部から液体(おもに水分)が外部に流出するのを防ぐために敷設される。底部遮水シート50は従来から用いられている市場製品を使用することができるが、盛土体内部から流出する液体には種々の物質が含まれていることが予想されるので、物理的強度に加え耐薬品性に優れたものが望ましい。なお、後に説明する袋状遮水シートの形成方法によっては、底部遮水シート50の敷設を省略することもできる。すなわち、表面遮水シート10と底部遮水シート50を接続処理して一連の袋状遮水シートを形成する場合は、底部遮水シート50の敷設は必要であるが、表面遮水シート10の端部を封鎖処理して袋状遮水シートを形成する場合は、必ずしも底部遮水シート50の敷設は必要でない。もちろん、表面遮水シート10のみで袋状遮水シートを形成する場合であっても、底部遮水シート50を敷設することはできる。
【0044】
(表面遮水シート)
表面遮水シート10は、キャッピングシートともいわれ、盛土体内部からの液体流出を防ぐのに加え、雨水など外部からの液体流入を防ぐことも目的に敷設されるものであり、一般的には盛土法面全体に、すなわち天端面46、主法面47、及び端部法面48すべてに設置される。表面遮水シート10は、底部遮水シート50と同様、従来から用いられている市場製品を使用することが可能で、物理的強度に加え耐薬品性に優れたものが望ましい。とくに、シート状太陽電池20が設置される表面遮水シート10に関しては、高温になることが予想されるため熱収縮に対して抵抗力のある材料を使用することが望ましい。例えば、繊維入りの表面遮水シート10を使用すれば、熱収縮に対する抵抗力が高いので極めて好適である。
【0045】
表面遮水シート10は、敷設する面積が大きいといった理由で、複数の表面遮水シート10を敷き並べる場合がある。このとき、隣接する表面遮水シート10どうしは接続処理されることが望ましい。これはのちに説明する遮水シート内を密封状態とするためである。なおここでいう接続処理とは、内部から気体の漏出を防ぐ程度に緊密にシート間を接続する処理を意味する。接続処理の一例として、溶着が挙げられる。この溶着方法として、ローラーで自走する溶接機を用い、接合部に加圧空気を注入する二重溶着工法や、遮水シートと同質の溶接棒を押出機で溶融しながら押出し、遮水シートと一体化接合する表面溶着工法等を採用することができる。気体の漏出を防ぐことができれば、溶着のほか圧着や、あるいは接着テープを使用する方法など他の従来技術を採用することもできる。
【0046】
(シート状太陽電池)
シート状太陽電池20は、先に述べたように、軽量かつ薄膜のものが用いられる。太陽電池として一般的に用いられるのは、単結晶あるいは多結晶型シリコンを利用したものである。これらは、シリコンのインゴット(塊)をスライスしたシリコンウェハで形成され、100〜150μmと比較的肉厚である。そのため、表面遮水シート10の変形に対する追従性は他に比べると劣る。同じシリコンを利用するものでもアモルファスシリコン型と呼ばれる太陽電池は、シランガスから化学蒸着等によって作られるため、数μm〜数十μmと比較的肉薄である。
【0047】
昨今、次世代太陽電池として脚光を浴びているのが、シリコンを利用しないCIGS型と呼ばれる太陽電池である。これは、Cu、In、Ga、Al、Se、Sなどから成るもので、人工衛星などで好んで利用されている。このCIGS型の太陽電池も、アモルファスシリコン型と同様、化学蒸着等によって作られるため、数μm〜数十μmと比較的肉薄に形成することができる。さらにCIGS型の太陽電池は、アモルファスシリコン型に比べ変換効率が優れている。アモルファスシリコン型は1m
2当たりの発電量が60〜70wであるのに対して、CIGS型は1m
2当たり100〜110wの発電量がある。従って、本願発明に用いるシート状太陽電池20には、CIGS型の太陽電池が適しているといえる。もちろん、状況に応じてアモルファスシリコン型の太陽電池を利用することもできるし、種々の条件が整えば単結晶あるいは多結晶型シリコン型の太陽電池を利用することもできる。
【0048】
シート状太陽電池20は、目的に応じて種々の配置とすることができる。多くの発電量を望む場合は、天端面46、主法面47、及び端部法面48すべてにシート状太陽電池20を配置することもできるし、効率的に発電したい場合は、南向きの盛土法面(
図3(a)では下側の主法面47)のみに設置することもできる。もちろん、天端面46と主法面47に設置するなど、種々の組み合わせで配置することもできる。
【0049】
一般的に、シート状太陽電池20はロールとして出荷されるため、その製品幅は所定の幅(例えば50cm)を定形としていることが多い。そのため、盛土法面に広く配置するには、
図4に示すように、多数の太陽光電池モジュール21を配置する必要がある。なお、
図4(a)は太陽光電池モジュール21を配置した状態を示す平面図であり、
図4(b)は太陽光電池モジュール21を配置した状態を示す断面図である。
【0050】
図4(a)では、1つのブロックに9個の太陽光電池モジュール21が配され、さらに4つのブロック(合計36個の太陽光電池モジュール21)でシート状太陽電池20が構成されている。もちろん、太陽光電池モジュール21の配置数やブロック割は、必要発電量等に応じて任意に設計することができる。太陽光電池モジュール21には、それぞれプラス端子とマイナス端子が取り付けられており、隣接する太陽光電池モジュール21はプラス端子とマイナス端子が接続される。
図4(a)の左上ブロックで説明すれば、図上1番上にある太陽光電池モジュール21のマイナス端子と、2番目の太陽光電池モジュール21のプラス端子が接続され、2番目の太陽光電池モジュール21のマイナス端子と、3番目の太陽光電池モジュール21のプラス端子が接続され、以下同様の接続が繰り返される。そして、1番上にある太陽光電池モジュール21のプラス端子と、9番目の太陽光電池モジュール21のマイナス端子が、パワーコンディショナ(PC)に送られる。すなわち、
図4(a)では、4箇所(ブロック)からそれぞれプラス端子とマイナス端子がPCに送られる。
【0051】
図5は、シート状太陽電池20で発電した電気の系統を示す電力系統図である。シート状太陽電池20で発電した電気は、ブレーカが納められた接続箱を通じて、直流から交流に変換するパワーコンディショナ(PC)に送られる。PCで交流となった電気は、直接、計測装置などの負荷に送電してもよいし、分電盤を通して負荷に送電してもよい。また、負荷に送ることなく畜電設備で畜電することもできる。なお、シート状太陽電池20での発電量が、現地で使用する発電量に不足する場合もある。あるいは、畜電設備を設置することができず、雨天時や夜間に電気が調達できない場合もある。このような場合を想定して、商用電源からの電力供給を受けることもできる。なお、
図5に示すデータ変換機は、シート状太陽電池20設置箇所の日射量を計る日射計と、気温を計る気温計から送られてくる信号をデータ変換するものである。
【0052】
シート状太陽電池20は、表面遮水シート10の表面側(外側)に取り付けられる。当然ながらシート状太陽電池20のうち受光面でない面(裏面)を、表面遮水シート10に接触させて取り付けることとなる。この取り付け方法は、強風時でもシート状太陽電池20が飛来しない程度に取りつけることができれば、種々の従来技術を採用することができる。例えば、ブチルゴムの両面に接着材が塗布されたいわゆる両面テープを用いて、シート状太陽電池20を表面遮水シート10に取り付けることができる。あるいは、シート状太陽電池20の裏面に接着剤を直接塗布して、表面遮水シート10に取り付けることもできる。
【0053】
シート状太陽電池20は、あらかじめ工場で表面遮水シート10に取り付けたうえで現地に搬入することができる。あるいは、シート状太陽電池20と表面遮水シート10をそれぞれ別に調達して、現地にて取り付け作業を行うこともできる。さらに、現地での取り付け作業は、確保したヤードで行う場合と、盛土法面に敷設した状態の表面遮水シート10上で行う場合が考えられる。工場で取り付け作業を行い、シート状太陽電池20付きの表面遮水シート10を現地に搬入する場合、現地での煩雑作業が軽減される一方で、シート状太陽電池20と表面遮水シート10を別に調達することができない。現地でヤードを確保して取り付け作業を行う場合は、作業は比較的容易にできるが所定面積のヤードを確保する必要がある。既に表面遮水シート10が盛土法面に敷設されている場合、そのうえで取り付け作業を行うほかないが、斜面上での作業となるためその作業は煩雑となる。本願発明では、これらの特徴を踏まえたうえ現地に応じた取り付け作業を選択することができる。
【0054】
(吸引手段)
前述したように、表面遮水シート10を盛土法面に密着させるため、空隙(表面遮水シート10と盛土法面の間に形成される空間)にある気体を吸引する。気体を吸引すれば空隙内は負圧状態となり、表面遮水シート10の内外で圧力差が生じるため、表面遮水シート10が盛土法面に吸着されるわけである。なお、ここで「密着」という語を使用しているが、表面遮水シート10全面が盛土法面に完全に接触している状態のみを指すわけではなく、表面遮水シート10の一部が接触していない状態(略密着)も含んでいる。さらに、「負圧」という語も、絶対真空の状態を意味するものではなく、大気圧よりも低い圧力状態を意味する。
【0055】
空隙内の気体を吸引して負圧状態にするためには、
図2に示すように、表面遮水シート10と底部遮水シート50によって内部が密封されている必要がある。ここでの「密封」という意味も、内部から気体が全く漏れ出さない状態に加え、吸引する量よりも少量の気体が漏れ出す状態(略密着の状態)が含まれる。内部を密封するため、表面遮水シート10の端部と底部遮水シート50の端部は接続処理される。この接続処理は、表面遮水シート10や底部遮水シート50で述べたのと同様、溶着等の手段を採用することができる。
【0056】
表面遮水シート10の端部と底部遮水シート50の端部が接続処理されると、表面遮水シート10と底部遮水シート50は一連の遮水シートとなり、全体でみると袋状となっている。この袋状となった一連の遮水シート(表面遮水シート10と底部遮水シート50)を、「袋状遮水シート」と呼ぶこととする。袋状遮水シートの内部は、密封(略密封含む)状態となっているので、気体漏れ(エア漏れ)することなく吸気を行うことができる。
【0057】
袋状遮水シートは、一連の遮水シート(表面遮水シート10と底部遮水シート50)によって形成する場合のほか、表面遮水シート10のみによって形成することもできる。この場合、表面遮水シート10を敷設する際にシート端部に対して封鎖処理を行う。ここで封鎖処理とは、この表面遮水シート10を密封状態(略密着の状態も含む)にすることを目的に行われるもので、表面遮水シート10の内部からの気体漏出を防ぐ程度に封鎖する処理を意味する。
【0058】
この封鎖処理の具体的手段としては、表面遮水シート10の外周端部を固定工(例えばコンクリート梁)で押さえる方法や、表面遮水シート10の外周端部を盛土法面内や地中に巻き込んで埋込む方法などが例示できる。
【0059】
なお、表面遮水シート10のみによって袋状遮水シートを形成する場合、盛土体のうちシート状太陽電池20を設置する箇所(例えば、主法面47)にのみ表面遮水シート10を敷設すればよく、底部遮水シート50の敷設、他の盛土法面(例えば、端部法面48)や天端面46での表面遮水シート10敷設は省略することができる。もちろんこの場合であっても、底部遮水シート50を敷設しても構わないし、盛土体の表面すべてに表面遮水シート10を敷設しても構わない。
【0060】
図1に基づいて、空隙内の気体を吸引する具体的な手法について説明する。この図に示すように、吸引手段31には吸気管33が接続されており、吸引手段31が吸気管33を通じて空隙内の気体を吸引する。この図では吸引手段31が、天端面46に1台、主法面47に1台の計2台設置されているが、設置台数や配置については表面遮水シート10の敷設面積や吸引手段31の能力などに応じて適宜設計することができる。例えば、表面遮水シート10の敷設面積100m
2当たりに1台のブロワー(吸引手段31)の設置とすることができる。また、このブロワーの例としては、吸込と吐出が可能であり、出力が0.75kw、最大吸込(吐出)量が2.4m
3/minのものが例示できる。なお、ブロワーは吸引手段31としての一例であり、ポンプなど他の手段を用いることもできる。
【0061】
吸気管33は、塩化ビニルパイプ(VP管やVU管)など市販されている材料の使用が可能で、
図1に示すように吸引口32に挿入される枝管と、枝管どうしを連絡する主管で構成されている。したがって、吸引手段31が吸引を開始すると、枝管(吸気管33)から空隙内の気体が吸引され、主管(吸気管33)を通して吸引口32から排気される。枝管と主管は同径とすることもできるが、枝管を吸引口32の径と同等かやや大きい寸法として、主管は枝管より大きな径とすることもできる。なお、吸気管33を設けることなく吸引口32から直接吸引手段31で吸引させることもできる。この場合、吸気管33を配置する必要がない反面、設置する吸引手段31が多くなるので、現地状況やコスト面などに配慮して採用する必要がある。
【0062】
吸引手段31による吸引は、常時連続して行うこともできるし、定期的に行うこともできる。定期的に吸引を行う場合、一度の吸引作業が終了するたびに、それぞれの吸引口32に栓(キャップ)を取り付ける。吸引口32からの気体漏れを防ぎ、袋状遮水シート内部の密封状態を維持するためである。しかしながら、吸引口32に栓を取り付けたとしても、廃棄物41からガスが発生することもあるので、永続的に密封状態を維持することは難しい。したがって、定期的に吸引することが望ましい。吸引するタイミングを計るべく圧力ゲージを設置することもできる。袋状遮水シート内部の圧力を監視し、所定の閾値以上になれば吸引を行う。
【0063】
常に連続して吸引を行う場合、吸引口32に栓(キャップ)を取り付ける必要もないし、圧力監視を行う必要もない。その反面、常に電力を消費するのでランニングコストがかかる。吸引の実施を、常時とするか定期的とするかは現地状況等に応じて適宜選択することができる。なお、定期的に実施する場合であっても、台風など事前に強風を受けることが予想されるときは、継続して吸引を行うことが望ましい。
【0064】
なお、前記したように廃棄物41からはガスが発生することがあり、従来の廃棄物処分場ではガス抜きドレーンと、これに接続されたガス抜き管を設置するのが一般的である。ガス抜きドレーン(
図2では省略)は盛土体内に略鉛直方向に立設されて周囲廃棄物からのガスを導出するもので、ガス抜き管は外部にガスを排出するための排出口である。本願発明では吸引手段を設けるので、ガス排出用のガス抜きドレーンは設置するもののガス抜き管を設置する必要がなく、その分の材料費や手間を省くことができるという効果がある。
【0065】
(破損個所の検出)
一般に広範に敷設されたシート状の物は、フラッタリングによって予想外の荷重を受けると、部分的に裂けたり破れたりすることで破損することがある。本願発明の表面遮水シート10も広範に敷設されることが予想されるが、吸引手段31による吸引の効果でフラッタリングは生じにくい。しかしながら表面遮水シート10は、フラッタリングのほかにも様々な要因で破損することがある。広範に敷設された表面遮水シート10の中から破損個所を目視等で発見することは極めて困難である。そこで本願発明では、破損個所を容易に検出できる手段を備えることができることとしている。
【0066】
破損個所を検出するために用いられるのが、
図6に示すいわゆる赤外線サーモグラフィ60(赤外線を利用した温度計測手段)と呼ばれる装置である。赤外線サーモグラフィ60は、対象物が放射する赤外線エネルギーを非接触で計測する装置であり、この赤外線エネルギーを見かけの温度に変換することによって物体の表面温度を把握することができる。また、通常使用される赤外線サーモグラフィ60は、赤外線エネルギーを計測するとともに、これを温度に変換して画面(モニター)にリアルタイムで表示することができる。画面上に表示される温度は、所定の温度帯(レンジ)ごとに色彩を分けた温度分布として表現され、高温の部分が赤い色で、低温の部分が青い色で表示されることが多い。
【0067】
表面遮水シート10は密封状態が維持されており、いわば断熱状態となっていることから、表面遮水シート10の表面温度は全域にわたって略同じ温度となっているはずである。ところが、表面遮水シート10のうち破損個所があれば、そこだけ外気が侵入し熱交換が行われるため、他の部分とは異なる温度を示す。この破損個所における温度相違を利用して、破損個所を検出するわけである。すなわち、赤外線サーモグラフィ60で表面遮水シート10の表面温度を計測(温度計測)すると、色分けされた温度分布がモニターに表示され、他と異なる温度(色)を示す箇所が破損個所として検出されるのである。
【0068】
図6(a)は、吸引手段31によって吸引しながら赤外線サーモグラフィ60で破損個所を検出する状況を説明するモデル図であり、
図6(b)は、給気手段によって給気しながら赤外線サーモグラフィ60で破損個所を検出する状況を説明するモデル図である。
【0069】
図6(a)のように、吸引された状態(吸引状態)の表面遮水シート10を赤外線サーモグラフィ60で計測すると、破損個所における温度相違がさらに顕著に表れる。すなわち、吸引することによって破損個所には外気が流れ込み、他の部分(破損していない箇所)とは異なる温度状態となるわけである。このとき、設置されたすべての吸引手段31で吸引しながら温度計測することもできるが、一部の吸引手段31だけで吸引しながら温度計測することもできる。これは、およそ破損個所が想定できる場合や、計測範囲をブロック分けして段階的に計測する場合などに適している。
【0070】
図6(b)のように、給気手段(図示しない)によって表面遮水シート10に給気しながら温度計測することもできる。この給気手段は、吸込と吐出が可能なブロワーを採用するなど吸引手段31と併用することもできるし、吸引手段31とは別に用意することもできる。給気手段も、吸引手段31と同様に吸引口32を使用して給気する。
【0071】
給気された状態(給気状態)の表面遮水シート10を赤外線サーモグラフィ60で計測すると、破損個所における温度相違がさらに顕著に表れる。すなわち、給気することによって送風された空気が破損個所から流れ出し、他の部分(破損していない箇所)とは異なる温度状態となるわけである。このように流出空気の温度を計測することから、給気状態で温度計測する場合(
図6(a)のケース)は表面遮水シート10の表面温度を計測するのに対して、給気状態の場合(
図6(b)のケース)は表面遮水シート10の周辺温度を計測することとなる。
【0072】
給気手段によって給気する際に、外気とは明らかに異なる温度の空気(例えば熱風や冷風)を送風すると、破損個所における温度相違がより顕著に表れる。熱風を給気すれば破損個所では周辺よりも高温(赤に近い色)を示し、冷風を給気すれば逆に、破損個所で低温(青に近い色)を示す。なお、設置されたすべての給気手段で給気しながら温度計測することもできるが、一部の給気手段だけで給気しながら温度計測することもできる。これは、およそ破損個所が想定できる場合や、計測範囲をブロック分けして段階的に計測する場合などに適している。
【0073】
赤外線サーモグラフィ60は、計測した結果がモニター表示されるので、人によってその場で破損個所を検出することができる。あるいは、表面遮水シート10の全域を監視できるように複数の赤外線サーモグラフィ60(あるいは首ふり可能な赤外線サーモグラフィ60)を配置し、その計測結果を電子計算機(コンピュータ)にデータ転送させることもできる。これによれば、離れた場所で遠隔監視できるうえに、このコンピュータを破損個所検出手段として利用すれば、破損個所の自動検出が可能となる。すなわち、あらかじめ温度差の閾値を設定しておき、計測結果である温度分布に基づいて異常個所を抽出し、これを破損個所として検出させるわけである。
【0074】
(施工手順)
本願発明の太陽光発電方法の施工手順の一例を示す。
現地測量を行い、盛土体が設置される計画位置を地表面上にマーキングする。このマーキングをもとに底部遮水シート50を敷設していく。このとき必要に応じて、隣接する底部遮水シート50どうしを接続処理していく。
底部遮水シート50の上に、敷土42、廃棄物41、ビニルシート43、詰土45、覆土44を設置し、盛土体が構築される。
あらかじめシート状太陽電池20が取り付けられた表面遮水シート10を、盛土法面に被覆する(表面遮水シート敷設工程)。あるいは、先に表面遮水シート10のみを盛土法面に設置(シート設置工程)し、その後、表面遮水シート10の表面にシート状太陽電池20を取り付ける(太陽電池設置工程)。
次に、表面遮水シート10と底部遮水シート50を接続処理して一連の袋状遮水シートを形成し、袋状遮水シートの内部を密封状態とする(密封工程)。あるいは、表面遮水シート10の端部に対して封鎖処理を行うことで袋状遮水シートを形成し、袋状遮水シートの内部を密封状態とすることもできる。
密封状態となった袋状遮水シート10内を吸引手段31によって吸引し、空隙内を減圧する(減圧工程)。この減圧工程は、引き続き連続して行うこともできるが、定期的あるいは台風時など緊急時に行うようにすることもできる。
上記手順によって太陽光発電装置が形成されるので、以降、太陽光発電を行う。
なお、使用中に表面遮水シート10の一部が破損することも考えられるので、定期的に破損調査を実施する。この場合、赤外線サーモグラフィ60(赤外線を利用した温度計測手段)で温度計測することによって破損個所を検出することができる。
具体的には、吸引手段31で吸引しながら、表面遮水シート10の表面温度分布を赤外線サーモグラフィ60で計測する(温度計測工程)。なお、吸引手段31で吸引することに代えて、給気手段で給気しながら温度計測することもできる。
次いで、表面遮水シート10の表面温度分布に基づいて目視により表面遮水シート10の破損個所を検出する(破損個所検出工程)。