【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0036】
実施例1
(1)カーボン粒子(コア粒子)の製造
ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物の平均粒径7μmからなる真球樹脂粒子(「エポスターGP70」:日本触媒社製)を、不活性ガス雰囲気下1000℃で10時間焼成することで、平均粒径5μmの球状カーボン粒子を作製した。
【0037】
(2)導電性粒子の製造
(1)で得たカーボン粒子をコア粒子とし、特開2007-324138号公報の実施例1の記載に従い、コア粒子の表面に、次のようにして表面凹凸を有するメッキ層を形成し、導電性粒子を製造した。
【0038】
(2-1)無電解メッキ前処理工程
カーボン粒子10gに、水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリ脱脂、酸中和、および二塩化スズ溶液によるセンシタイジングを行った。その後、二塩化パラジウム溶液によるアクチベイチングを行う無電解メッキ前処理を施し、濾過洗浄後、粒子表面にパラジウムを付着させた基材微粒子を得た。
【0039】
(2-2)芯物質複合化工程
(2-1)で得られた基材微粒子を脱イオン水300ml中で3分間撹拌し、分散させた。しかる後、その水溶液に、芯物質として平均粒径0.05μmの金属ニッケル粒子1gを3分間かけて添加し、ニッケル粒子付着カーボン粒子を得た。
【0040】
(2-3)無電解ニッケルメッキ
(2-3-1)無電解メッキ前期工程
(2-2)で得られたニッケル粒子付着カーボン粒子を更に水1200mlで希釈し、メッキ安定剤4mlを添加した。しかる後、この水溶液に、硫酸ニッケル450g/l、次亜リン酸ナトリウム150g/l、クエン酸ナトリウム116g/l、およびメッキ安定剤6mlの混合溶液120mlを、81ml/分の添加速度で定量ポンプを通して添加した。その後、pHが安定するまで撹拌し、水素の発泡が停止するのを確認した。
【0041】
(2-3-2)無電解メッキ後期工程
次いで、更に硫酸ニッケル450g/l、次亜リン酸ナトリウム150g/l、クエン酸ナトリウム116g/l、およびメッキ安定剤35mlの混合溶液650mlを、27ml/分の添加速度で定量ポンプを通して添加した。その後、pHが安定するまで撹拌し、水素の発泡が停止するのを確認した。
【0042】
次いで、メッキ液を濾過し、濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥して、ニッケルメッキされたカーボン粒子を得た。
その後、更に、置換メッキ法により表面に金メッキを施し、表面凹凸を有する導電性微粒子を得た。
【0043】
(3)異方性導電フィルムの製造
熱硬化性バインダーとして、マイクロカプセル型アミン系硬化剤(旭化成ケミカルズ社製、商品名 ノバキュアHX3941HP)50重量部、液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名 EP828)14重量部、フェノキシ樹脂(東都化成社製、商品名YP50)35重量部、シランカップリング剤(信越化学社製、商品名 KBE403)1重量部と、(2)で得た導電性粒子とを、導電性粒子の体積比率が10%となるように混合分散させ、それをシリコーンで剥離処理されたPETフィルム上に、厚み35μmとなるように塗布し、乾燥させて異方性導電フィルムを製造した。
【0044】
(4)異方性導電接続体の製造
評価用基材としてソニーケミカル&インフォメーションデバイス社製COF(50μmピッチ、Cu8μm厚-Snメッキ、38μm厚-Sperflex基材)とソニーケミカル&インフォメーションデバイス社製PWB(50μmピッチ、Cu35μm厚-Auメッキ、FR-4基材)とを用い、(3)で作製した異方性導電フィルムを用いてこれらを接続した。この場合、まず、異方性導電フィルムを1.5mm幅にスリットしておき、これをPWBに貼り付け、その上にCOFを位置合わせして配置し、緩衝材250μm厚シリコーンラバー、1.5mm幅加熱ツールを用いて、圧着条件190℃、3MPa、10秒間で加熱加圧して異方性導電接続体を製造した。
【0045】
実施例2
芯物質複合化工程において、平均粒径0.05μmの金属ニッケル粒子の代わりに、平均粒径0.5μmの金属ニッケル粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、表面凹凸を有する導電性粒子を得た。
また、この導電性粒子を用いて実施例1と同様に、異方性導電フィルムを製造し、さらに異方性導電フィルムを用いて接続体を製造した。
【0046】
実施例3
芯物質複合化工程において、平均粒径0.05μmの金属ニッケル粒子の代わりに、平均粒径1μmの金属ニッケル粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、表面凹凸を有する導電性粒子を得た。
また、この導電性粒子を用いて実施例1と同様に、異方性導電フィルムを製造し、さらに異方性導電フィルムを用いて接続体を製造した。
【0047】
実施例4
無電解ニッケルメッキの代わりに、無電解銅メッキを行うこと以外は実施例2と同様にして、表面凹凸を有する導電性粒子を得た。
また、この導電性粒子を用いて実施例1と同様に、異方性導電フィルムを製造し、さらに異方性導電フィルムを用いて接続体を製造した。
【0048】
実施例5
無電解ニッケルメッキの代わりに、無電解パラジウムメッキを行うこと以外は実施例2と同様にして、表面凹凸を有する導電微粒子を得た。
また、この導電性粒子を用いて実施例1と同様に、異方性導電フィルムを製造し、さらに異方性導電フィルムを用いて接続体を製造した。
【0049】
比較例1
ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物の平均粒径7μmからなる真球樹脂粒子(「エポスターGP70」:日本触媒社製)を不活性ガス雰囲気下1000℃で10時間焼成することで、平均粒径5μmの球状カーボン粒子を作成し、この球状カーボン粒子の表面に特許2823799号公報に従いタールを付着させ、焼成により黒鉛化させた突起を有するカーボン粒子を作成した。
この突起を有するカーボン粒子に、無電解メッキ前処理工程、芯物質複合化工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして表面凹凸を有する導電性粒子を得た。
また、この導電性粒子を用いて実施例1と同様に、異方性導電フィルムを製造し、さらに異方性導電フィルムを用いて接続体を製造した。
【0050】
比較例2
カーボン粒子に無電解メッキ前処理工程の後、芯物質複合化工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、真球状の導電性粒子を得た。
また、この導電性粒子を用いて実施例1と同様に、異方性導電フィルムを製造し、さらに異方性導電フィルムを用いて接続体を製造した。
【0051】
比較例3
ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物の単分散の体積平均粒径5μmからなる真球粒子(「エポスターGP50」;日本触媒社製)を主粒子とし、この1質量部に、微粒子であるポリメチルメタクリレート架橋物の単分散の体積平均粒径0.5μmの真球粒子0.1質量部と、アクリル系分散媒30質量部とを添加し、超音波により混合して、主粒子に微粒子を付着させた後、100℃に加熱して融着させ、一般的な湿式外添方式により表面に突起を持った樹脂粒子を得た。
その後、芯物質複合化工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子に金属メッキを行い、表面凹凸を有する導電性粒子を得た。
また、この導電性粒子を用いて実施例1と同様に、異方性導電フィルムを製造し、さらに異方性導電フィルムを用いて接続体を製造した。
【0052】
比較例4
コア粒子としてベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物の単分散の平均粒径5μmからなる真球粒子(「エポスターGP50」;日本触媒社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、表面凹凸を有する導電性粒子を得た。
【0053】
比較例5
コア粒子として、カーボン粒子の代わりに、平均粒径5μmの金属ニッケル粒子を用いたこと以外は実施例2と同様にして、表面凹凸を有する導電性粒子を得た。
また、この導電性粒子を用いて実施例1と同様に、異方性導電フィルムを製造し、さらに異方性導電フィルムを用いて接続体を製造した。
【0054】
評価
(a)表面凹凸比、(b)コア粒子の凝集、(c)接続体の接続抵抗、(d)接続体の絶縁性、(e)接続体の粒子圧痕について次のように試験し評価した。これらの結果を表1に示す。
【0055】
(a)表面凹凸比
コア粒子及びそれを用いて製造した導電性粒子を、それぞれ走査型電子顕微鏡(倍率4000倍)を用いて画像に撮り、画像上で表面凹凸比を前述の方法により求めた。
【0056】
(b)コア粒子の凝集
実施例1、比較例1及び比較例3のコア粒子について、粒度分布計(「シースフロー電気抵抗式粒度分布計SD2000」、シスメックス社製)を用い、オリフィス径:50μm、分散液:メタノールで凝集粒子の比率を測定した。この場合、測定粒子数は約10000pcs(particle counts)であり、粒度分布が7μmより大きいものを凝集粒子とし、凝集粒子の割合によって次の基準で評価した。
○:凝集粒子10%未満
×:凝集粒子10%以上
【0057】
(c)接続体の接続抵抗
各接続体の接続抵抗を4端子法を用いて、電流1mAを流したときの接続抵抗を、接続体の製造直後と、85℃、85%RHで500hrおいた後に測定した。
【0058】
(d)接続体の絶縁性、
各接続体について、隣接端子間の絶縁抵抗を20V条件下で測定し、次の基準で評価した。
○:10
8Ω以上
△:10
7Ω以上10
8Ω未満
×:10
7Ω未満
実用上は、○評価であることが望まれる。
【0059】
(e)粒子圧痕
各接続体について、端子上に捕捉された粒子をCOF側から顕微鏡(オリンパス社製、工業用検査顕微鏡MX51)を用いて観察し、圧痕の有無により次の基準で評価した。
○:10点の観察点中、圧痕が認められる観察点が5点以上である
×:10点の観察点中、圧痕が認められる観察点が5点未満である
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果から、カーボン粒子をコア粒子とする場合に、比較例1のように、カーボン粒子に突起を設けるとコア粒子が凝集しやすくなるため、それを異方性導電材料の導電性粒子として使用すると、異方性導電材料の絶縁性が劣ること、比較例2のようにカーボン粒子に突起を設けない場合にはカーボン粒子が凝集しにくいが、突起のないカーボン粒子の表面メッキ層に表面凹凸をつけない場合には、接続抵抗が高くなること、これに対し、実施例1〜5のようにカーボン粒子に突起を設けず、表面のメッキ層に凹凸を設けると、カーボン粒子が凝集せずに異方性導電材料の絶縁性が良好であり、接続抵抗は低く、粒子圧痕が観察されて導通信頼性が高くなることがわかる。
【0062】
一方、比較例3及び4のように樹脂粒子をコア粒子とする場合には、コア粒子の凝集は起こらないものの、コア粒子が樹脂粒子であることにより帯電しやすく、帯電により凝集物が多くなるため分散性が悪くなり、絶縁性が低下すること、さらに、比較例3のように、樹脂粒子に突起を設けると粒子圧痕がでず、接続信頼性に劣ることがわかる。
【0063】
また、比較例5のように金属粒子をコア粒子とすると、それを異方性導電材料に配合した場合に、粒子の比重が大きい為に、粒子の沈降による粒子分散性が低下し、異方性導電材料の絶縁性が低下することがわかる。