特許第5796237号(P5796237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5796237フェノール系分子性ガラス、およびフェノール系分子ガラスを含むフォトレジスト組成物、および基板上にレジスト像を発生させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796237
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】フェノール系分子性ガラス、およびフェノール系分子ガラスを含むフォトレジスト組成物、および基板上にレジスト像を発生させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/22 20060101AFI20151001BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20151001BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20151001BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C08G8/22
   G03F7/004 501
   G03F7/004 505
   G03F7/039 601
   H01L21/30 502R
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-543609(P2013-543609)
(86)(22)【出願日】2011年11月21日
(65)【公表番号】特表2014-502646(P2014-502646A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】EP2011070579
(87)【国際公開番号】WO2012079919
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年5月28日
(31)【優先権主張番号】12/971,292
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】デ シルバ、エクミニ、アヌジャ
(72)【発明者】
【氏名】サンドバーグ、リンダ、カリン
(72)【発明者】
【氏名】スーリヤクマラン、ラトナム
(72)【発明者】
【氏名】ブレイタ、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ボツァーノ、ルイーザ、ドミニカ
(72)【発明者】
【氏名】ハインズバーグ、ウィリアム
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0026317(US,A1)
【文献】 特開平11−217385(JP,A)
【文献】 特表2012−509494(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/143357(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/060869(WO,A1)
【文献】 特開2005−099276(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/129574(WO,A1)
【文献】 特開2004−231858(JP,A)
【文献】 特開2011−028270(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0113454(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/109368(WO,A2)
【文献】 特開平10−161348(JP,A)
【文献】 特開2000−147838(JP,A)
【文献】 特開2009−244766(JP,A)
【文献】 特開2009−244769(JP,A)
【文献】 特開2011−153087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/00−16/06
G03F 7/004
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットを有する、フェノール系分子性ガラスであって、該フェノール系分子性ガラスが、下記構造式(I)のカリックス[4]レソルシナレン:
【化1】
[式中、R’は、前記少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットを含み、Rは、水素および酸に不安定な官能基からなる群から独立に選択され、かつ、XおよびYは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アラルキル、アルカリル、ハロ、シアノ、ニトロおよびカルボキシレートからなる群からそれぞれ独立に選択される。]
であり、
前記少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットが、構造式(II):
【化2】
[式中、Rは、直鎖または分枝アルキレン基、置換または非置換脂環式基、置換または非置換アリーレン基、置換または非置換ヘテロアリーレン基、置換または非置換複素環式基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、フッ素化アルキル基である。]
であり、
前記Rが、構造式(III):
【化3】
[式中、mは0から4であり、nは0または1であり、かつRはCRまたはSiR10であり、ここで、R、RおよびRは、独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アリールもしくはアリールオキシであるか、または連結してシクロアルキルもしくはシクロオキシアルキル環を形成し、かつ、R、RおよびR10は、それぞれアルキル置換基である。]
を有する酸に不安定な官能基である、フェノール系分子性ガラス。
【請求項2】
少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットを有する、フェノール系分子性ガラスを含むフォトレジスト組成物であって、該フェノール系分子性ガラスが、下記構造式(I)のカリックス[4]レソルシナレン:
【化4】
(式中、R’は、前記少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットを含み、Rは、水素および酸に不安定な官能基からなる群から独立に選択され、かつ、XおよびYは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アラルキル、アルカリル、ハロ、シアノ、ニトロおよびカルボキシレートからなる群からそれぞれ独立に選択される。)
であり、
前記少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットが、構造式(II):
【化5】
[式中、Rは、直鎖または分枝アルキレン基、置換または非置換脂環式基、置換または非置換アリーレン基、置換または非置換ヘテロアリーレン基、置換または非置換複素環式基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、フッ素化アルキル基である。]
であって、
前記Rが、構造式(III):
【化6】
[式中、mは0から4であり、nは0または1であり、かつRはCRまたはSiR10であり、ここで、R、RおよびRは、独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アリールもしくはアリールオキシであるか、または連結してシクロアルキルもしくはシクロオキシアルキル環を形成し、かつ、R、RおよびR10は、それぞれアルキル置換基である。]
を有する酸に不安定な官能基である、フォトレジスト組成物。
【請求項3】
前記フォトレジスト組成物が、架橋剤を含む、請求項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項4】
顔料、増感剤、防腐剤、酸拡散制御剤、接着促進剤、コーティング助剤、可塑剤、表面改質剤または溶解抑制剤あるいはその組合せをさらに含む、請求項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項5】
基板上にレジスト像を発生させるための方法であって、
少なくとも1つのフルオロアルコール官能基を有するフェノール系分子性ガラス、光酸発生剤および溶媒を含むフォトレジスト組成物を含むフィルムで、基板をコーティングするステップと、
前記フィルムを放射線に像様暴露して、その中に潜像を形成するステップと、
前記レジスト像を塩基水溶液の現像液で現像するステップと
を含み、
該フェノール系分子性ガラスが、下記構造式(I)のカリックス[4]レソルシナレン:
【化7】
[式中、R’は、前記少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットを含み、Rは、水素および酸に不安定な官能基からなる群から独立に選択され、かつ、XおよびYは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アラルキル、アルカリル、ハロ、シアノ、ニトロおよびカルボキシレートからなる群からそれぞれ独立に選択される。]
であり、前記少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットが、構造式(II):
【化8】
[式中、Rは、直鎖または分枝アルキレン基、置換または非置換脂環式基、置換または非置換アリーレン基、置換または非置換ヘテロアリーレン基、置換または非置換複素環式基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、フッ素化アルキル基である。]
であって、
前記Rが、構造式(III):
【化9】
(式中、mは0から4であり、nは0または1であり、かつRはCRまたはSiR10であり、ここで、R、RおよびRは、独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アリールもしくはアリールオキシであるか、または連結してシクロアルキルもしくはシクロオキシアルキル環を形成し、かつ、R、RおよびR10は、それぞれアルキル置換基である。)を有する酸に不安定な官能基である、方法。
【請求項6】
前記フォトレジスト組成物が、架橋剤を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルムを放射線に像様暴露するステップの後、かつ現像するステップの前に、前記フィルムを25℃から150℃の範囲内の温度に加熱する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記放射線が、紫外線放射、X線、EUVまたは電子ビームである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
顔料、増感剤、防腐剤、酸拡散制御剤、接着促進剤、コーティング助剤、可塑剤、表面改質剤または溶解抑制剤あるいはその組合せをさらに含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子性ガラスフォトレジストに関する。
【背景技術】
【0002】
最小限界寸法は50nm未満まで収縮し続けるため、重要な性能基準、感度、解像度およびラインエッジラフネス(LER)を同時に満たすことが次第に困難になりつつある。化学増幅フォトレジストにおいて典型的に用いられるポリマーのサイズは、これらの寸法での性能に影響を及ぼし始めている。例えば、ラインエッジラフネスの大きさは、フォトレジスト中のベースポリマーの分子量と直接的に相関していると考えられている。結果として、これらの先進的な設計ルールに必要な性能問題に取り組むために、低分子量ポリマーまたは非ポリマーに基づくいくつかのフォトレジストが提案されている。
【0003】
分子性ガラスレジストは、次世代レジスト材料の潜在的候補として注目を集めている。「分子性ガラス」(MGs)と呼ばれるそのような小分子は、結晶化を阻害し、控えめなサイズにもかかわらず比較的高いガラス転移温度(Tg)を示す、構造上の特色を有する。MGsは、高純度および明確に定義された構造等の小分子の特徴的特性と、高温安定性および薄膜形成特性等のポリマーの有益な側面とを兼ね備えている。1から2nmの小さい分子サイズは、基本的な画像単位の「ピクセル」サイズを低減させる可能性があるため、高解像度パターニングを容易にすることが期待される。
【0004】
この新たなクラスのレジスト材料は、解像度、感度およびLERの観点で進歩を示している。しかしながら、MGsは、分子サイズの観点ではポリマーレジストを上回る潜在的利点を提供するが、これらの材料の合成および加工については多くの課題がある。これらの材料についての主要な問題の1つは、良質な薄膜の形成を妨げるキャスティング溶媒への低い溶解性である。もう1つの課題は、単分散材料を合成する能力である。既に公開されたシステムにおいて、分子性ガラスレジストは、平均数の酸に不安定な保護基で官能化されたコア構造を有するマトリックスからなるものであった。これらのレジスト材料は、保護基の分布を有する。クロマトグラフィベースの精製方法を使用して、分散マトリックスと比較して優れた性能を示す単分散ユニットを得た。改良された性能を示す単分散材料を得るためには、非常に冗漫な合成および精製プロセスが必要であった。もう1つの問題は、数種のMGシステムが、それらの高い溶出率のために、より希釈した現像液を必要とし、したがって、従来の現像液である0.26N水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)とは不適合なことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,189,323号
【特許文献2】米国特許第5,679,495号
【特許文献3】日本国公開特許出願(公開)第1−293339号
【特許文献4】カナダ特許第1204547号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Introduction to Microlithography, 2ndEdition, Eds. L. Thompson et al. (Washington, D.C.: American Chemical Society,1994)
【非特許文献2】Greene et al., Protective Groups inOrganic Synthesis, 2nd Ed., John Wiley & Sons, 1991
【非特許文献3】Ito et al., Characterization andLithographic Application of Calix[4]resorcinarene Derivatives, Chem. Mater. 20:341-356 (2008)
【非特許文献4】Reichmanis et al. (1991), Chemistryof Materials 3:395
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、このレジストプラットフォームを発展させるためには、単分散で、キャスティング溶媒に容易に可溶であり、0.26N TMAH現像液に適合し、かつ合成しやすい分子性ガラス材料を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において開示されるのは、少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットを有するフェノール系分子性ガラス、少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットを有するフェノール系分子性ガラスおよび光酸発生剤を含むフォトレジスト組成物、ならびに基板上にレジスト像を発生させるための方法である。
【0009】
したがって、本発明は、第1の態様の観点から、少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットを有するフェノール系分子性ガラスを提供する。
【0010】
フェノール系分子性ガラスは、好ましくはカリックスアレーンであり、好ましくは、構造式(I)のカリックス[4]レソルシナレン:
【化1】
[式中、R’は、少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットを含み、かつRは、水素および酸に不安定な官能基からなる群から独立に選択される]
である。
【0011】
XおよびY部分は、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アラルキル、アルカリル、ハロ、シアノ、ニトロおよびカルボキシレートからなる群から選択される。
【0012】
好ましくは、フェノール系分子性ガラスは、構造式(II)の少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニット:
【化2】
[式中、Rは、直鎖または分枝アルキレン基、置換または非置換脂環式基、置換または非置換アリーレン基、置換または非置換ヘテロアリーレン基、置換または非置換複素環式基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、フッ素化アルキル基である]
を含む。
【0013】
好ましくは、フェノール系分子性ガラスにおいて、Rは、構造式(III):
【化3】
[式中、mは0から4であり、nは0または1であり、かつRはCRまたはSiR10であり、ここで、R、RおよびRは、独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アリールもしくはアリールオキシであるか、または連結してシクロアルキルもしくはシクロオキシアルキル環を形成し、かつ、R、RおよびR10は、それぞれアルキル置換基である]
を有する酸に不安定な官能基である。
【0014】
好ましくは、フェノール系分子性ガラスにおいて、Rは水素である。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の少なくとも1つのフルオロアルコール含有ユニットを有するフェノール系分子性ガラスおよび光酸発生剤を含むフォトレジスト組成物が提供される。
【0016】
好ましくは、フォトレジスト組成物において、Rは水素であり、かつ、該フォトレジスト組成物は架橋剤をさらに含む。
【0017】
好ましくは、フォトレジスト組成物は、顔料、増感剤、防腐剤、酸拡散制御剤、接着促進剤、コーティング助剤、可塑剤、表面改質剤または溶解抑制剤あるいはその組合せをさらに含む。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、基板上にレジスト像を発生させるための方法であって、第1の態様の少なくとも1つのフルオロアルコール官能基を有するフェノール系分子性ガラス、光酸発生剤および溶媒を含むフォトレジスト組成物を含むフィルムで、基板をコーティングするステップと、フィルムを放射線に像様暴露して、その中に潜像を形成するステップと、レジスト像を塩基水溶液の現像液で現像するステップとを含む方法が提供される。
【0019】
該方法において好ましくは、Rは水素であり、フォトレジスト組成物は架橋剤をさらに含む。
【0020】
該方法において好ましくは、フィルムを放射線に像様暴露するステップの後、かつ現像するステップの前に、フィルムを25℃から150℃の範囲内の温度に加熱する。
【0021】
該方法において好ましくは、放射線は、紫外線放射、x線、EUVまたは電子ビームである。
【0022】
好ましくは、該方法は、顔料、増感剤、防腐剤、酸拡散制御剤、接着促進剤、コーティング助剤、可塑剤、表面改質剤または溶解抑制剤あるいはその組合せをさらに含む。
【0023】
本発明の技術を介して、さらなる特色および利点が実現される。本発明の他の実施形態および態様を本明細書において詳細に記述し、特許請求されている発明の一部とみなす。本発明の利点および特色についてよりよく理解するためには、記述および図面を参照されたい。
【0024】
本発明とみなされる主題は、明細書の結びの特許請求の範囲において特に指摘され、明示的に特許請求されている。本発明の実施形態の前述および他の特色および利点は、添付の図面と併せた下記の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の好ましい実施形態に従うヘキサフルオロアルコール含有分子性ガラスレジスト用の0.26N TMAH現像液中における露光後焼成(PEB)温度の関数としての248nmにおけるコントラスト曲線を図示する図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に従うヘキサフルオロアルコール含有分子性ガラスレジスト用の0.26N TMAH現像液中における露光後焼成(PEB)温度の関数としてのe−ビームコントラスト曲線を図示する図である。
図3】0.6NA 248nmステッパで本発明の好ましい実施形態に従うヘキサフルオロアルコール含有分子性ガラスレジストから焼き付けられた130nmの1:1ラインスペースパターンの走査型電子顕微鏡写真を画像で示す図である。
図4】100KeV e−ビーム露光ツールで本発明の好ましい実施形態のヘキサフルオロアルコール含有分子性ガラスフォトレジストから焼き付けられた60nmの1:1ラインスペースパターンの走査型電子顕微鏡写真を画像で示す図である。
図5】100KeV e−ビーム露光ツールで本発明の好ましい実施形態のヘキサフルオロアルコール含有分子性ガラスフォトレジストから焼き付けられた30/45nmのラインスペースパターンの走査型電子顕微鏡写真を画像で示す図である。
図6】極紫外線(EUV)マイクロ露光ツールで本発明の好ましい実施形態のヘキサフルオロアルコール含有分子性ガラスフォトレジストから焼き付けられた50nmのラインスペースパターンの走査型電子顕微鏡写真を画像で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、高解像度リソグラフィ用途のためのフルオロアルコール含有分子性ガラスレジスト材料に関する。フルオロアルコール含有分子性ガラスレジスト材料は、単分散で、キャスティング溶媒に容易に可溶であり、0.26N TMAH現像液に適合し、かつ合成しやすい。
【0027】
本発明を記述および特許請求する際、以下で定める定義に従って下記の術語を使用する。
【0028】
用語「アルキル」は、本明細書において使用される場合、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等の1から24個の炭素原子の分枝または非分枝飽和炭化水素基、およびシクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基を指す。用語「低級アルキル」は、1から6個の炭素原子、好ましくは1から4個の炭素原子のアルキル基を表し、用語「低級アルキルエステル」は、エステル官能基−C(O)O−R[ここで、Rは低級アルキルである]を指す。
【0029】
用語「アルケニル」は、本明細書において使用される場合、少なくとも1つの二重結合を含有する、典型的には1から6つの二重結合、より典型的には1または2つの二重結合を含有する2から24個の炭素原子の分枝または非分枝炭化水素基、例えば、エテニル、n−プロペニル、n−ブテニル、オクテニル、デセニル等、およびシクロペンテニル、シクロヘキセニル等のシクロアルケニル基を指す。用語「低級アルケニル」は、2から6個の炭素原子、好ましくは2から4個の炭素原子のアルケニル基を表す。
【0030】
用語「アルキニル」は、本明細書において使用される場合、少なくとも1つの三重結合を含有する2から24個の炭素原子の分枝または非分枝炭化水素基、例えば、エチニル、n−プロピニル、n−ブチニル、オクチニル、デシニル等、およびシクロペンチニル、シクロヘキシニル等のシクロアルキニル基を指す。用語「低級アルキニル」は、2から6個の炭素原子、好ましくは2から4個の炭素原子のアルキニル基を表す。
【0031】
用語「アルコキシ」は、本明細書において使用される場合、置換基−O−R[ここで、Rは、上記で定義された通りのアルキルである]を指す。用語「低級アルコキシ」は、Rが低級アルキルである、そのような基を指す。
【0032】
用語「アリール」は、本明細書において使用される場合、別段の指定がない限り、1から5個の芳香族環を含有する芳香族部分を指す。複数の芳香族環を含有するアリール基について、環は縮合または連結されていてよい。好ましい単環式芳香族置換基は、1から5個の、典型的には1から4個のハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ニトロまたは他の置換基で場合により置換されている、フェニルおよび置換フェニルである。
【0033】
用語「ハロ」は、クロロ、ブロモ、フルオロまたはヨード置換基を指すその従来の意味で使用される。用語「ハロアルキル」、「ハロアリール」(または「ハロゲン化アルキル」もしくは「ハロゲン化アリール」)は、基中の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置き換えられている、アルキルまたはアリール基をそれぞれ指す。
【0034】
用語「アルカリル」は、アルキル置換基を有するアリール基を指し、ここで、「アリール」および「アルキル」は上記で定義された通りである。
【0035】
用語「アラルキル」は、アリール置換基を有するアルキル基を指し、ここで、「アルキル」および「アリール」は上記で定義された通りである。
【0036】
用語「フッ素化」は、分子または分子セグメント中の水素原子のフッ素原子による置き換えを指し、過フッ素化部分を含む。用語「過フッ素化」は、すべての水素原子がフッ素原子で置き換えられている分子または分子セグメントを指すその従来の意味でも使用される。故に「フッ素化」メチル基は、−CHFおよび−CHFならびに「過フッ素化」メチル基、すなわち−CF(トリフルオロメチル)を包含する。用語「フルオロアルキル」は、フッ素化アルキル基を指し、用語「フルオロアルキレン」は、フッ素化アルキレン結合を指し、用語「フルオロ脂環式」は、フッ素化脂環式部分等を指す。
【0037】
用語「光発生酸」および「光酸」は、本組成物の放射線への暴露時に、すなわち、組成物中における放射線感受性の酸発生剤の結果として生成される酸を指すために、本明細書においては交換可能に使用される。
【0038】
用語「酸に不安定な」または「酸で開裂可能な」は、強酸との接触時に構造の変化を受ける分子部分、例えば、スルホン酸との接触時にカルボン酸に変換されるカルボン酸エステル、酸との接触時にヒドロキシル基に変換される炭酸エステル等を指すために、本明細書においては交換可能に使用される。本発明の文脈において「酸に不安定な」または「酸で開裂可能な」基は、「酸に不安定な官能基」とも称される。
【0039】
「任意選択の」または「場合により」は、その後に記述されている状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味するため、該記述は、その状況が起こる事例および起こらない事例を含む。例えば、語句「場合により置換されている」は、非水素置換基が存在してもしなくてもよいことを意味し、故に、該記述は、非水素置換基が存在する構造および非水素置換基が存在しない構造を含む。
【0040】
リソグラフィおよびリソグラフィ組成物の分野で使用される用語に関するさらなる情報は、Introductionto Microlithography, 2nd Edition, Eds. L. Thompson et al.(Washington, D.C.: American Chemical Society, 1994)を参照するとよい。
【0041】
一実施形態において、フルオロアルコール含有分子性ガラスレジスト材料はカリックスアレーンである。例として、カリックスアレーンは、以下の式(I)の構造を有するフルオロアルコール含有カリックス[4]レソルシナレンであってよい。
【0042】
【化4】
【0043】
一実施形態において、R’部分の少なくとも1つはフルオロアルコール官能基を含有し、かつR部分は水素または酸に不安定な官能基あるいはその両方を表す。種々のフルオロアルコール含有カリックス[4]レソルシナレンは、レゾルシノールとフルオロアルコール含有アルデヒドとの縮合生成物である。式(I)のカリックス[4]レソルシナレン中における−OR部分の対称な場所は、これらの化合物を作製するために使用されるレゾルシノール出発材料上での−OR部分の位置決めに対応することが理解されよう。
【0044】
フルオロアルコール官能基を含むR’部分は、一般式(II):
【化5】

[式中、Rは、直鎖または分枝アルキレン基、置換または非置換脂環式基、置換または非置換アリーレン基、置換または非置換ヘテロアリーレン基、置換または非置換複素環式基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、フッ素化アルキル基であり、ここで、該フッ素化アルキル基は、同じであっても異なっていてもよい]
のものである。
【0045】
適切な酸に不安定な官能基は、式(III)の構造
【化6】

[式中、mは0から4であり、nは0または1であり、かつRはCRまたはSiR10であり、ここで、R、RおよびRは、独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アリールもしくはアリールオキシであり、典型的には、水素、低級アルキルもしくは低級アルコキシであるか、または連結してシクロアルキルもしくはシクロオキシアルキル環、典型的には5から12員環を形成し、かつ、R、RおよびR10は、同じであるかまたは異なっており、それぞれアルキル置換基、典型的には低級アルキル置換基である]
を有する部分を含むがこれらに限定されない。
【0046】
故に、Rは、例えば、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、ベンジルオキシメチル、シクロプロピルメチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1−メトキシエチル、1,1−ジメトキシエチル、1−エトキシエチル、1−エチルチオエチル、1,1−ジエトキシエチル、1−フェノキシエチル、1,1−ジフェノキシエチル、1−シクロプロピルエチル、1−フェニルエチル、1,1−ジフェニルエチル、t−ブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルブチル、1,1−ジメチルブチル、メチルシクロペンチル、エチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、メチルシクロオクチル、エチルシクロオクチル、メチルアダマンチル、エチルアダマンチル、トリメチルシリル、エチルジメチルシリル、ジエチルメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、トリ−t−ブチルシリル、ジメチルフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリフェニルシリル、トリメチルゲルミル、エチルジメチルゲルミル、ジエチルメチルゲルミル、トリエチルゲルミル、ジメチルイソプロピルゲルミル、メチルジイソプロピルゲルミル、トリイソプロピルゲルミル、t−ブチルジメチルゲルミル、ジ−t−ブチルメチルゲルミル、トリ−t−ブチルゲルミル、ジメチルフェニルゲルミル、メチルジフェニルゲルミル、トリフェニルゲルミル等であってよい。他の適切な酸に不安定な保護基は、関連のある文献および教科書(例えば、Greene et al., Protective Groups in Organic Synthesis, 2ndEd., John Wiley & Sons, 1991)において見ることができる。
【0047】
代表的な−OR部分を以下の式(IV)〜(IX)に示す。
【0048】
【化7】
【0049】
XおよびY部分は、同じであっても異なっていてもよく、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アラルキル、アルカリル、ハロ、シアノ、ニトロおよびカルボキシレートからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、X部分はすべて水素であり、かつY部分は、水素および低級アルキルからなる群から選択される。
【0050】
基本のカリックス[4]レソルシナレン分子は、C2VおよびC4V配置と一般に称される(本明細書においては、時折、それぞれ「ctt」および「ccc」異性体とも称される)2つの異性形態のいずれかで存在し得る。これらの異性体は、従来の技術を使用する分別結晶によって分離し得る。本発明の文脈において、カリックス[4]レソルシナレンは、構造的な単峰性を提供するように、C2VまたはC4V配置のいずれかであってよい。代替として、異性体の混合物を混和して使用してよい。
【0051】
カリックス[4]レソルシナレンは、一般に、塩酸を触媒として使用する、レゾルシノールとフルオロ含有アルデヒドとの縮合反応により、下記のスキームに従って調製できる。
【0052】
【化8】
【0053】
次いで、酸に不安定な部分を、所望の部分を有する保護されていないカリックス[4]レソルシナレンと反応させることにより、カリックス[4]レソルシナレン分子に導入することができ、その後、8個のヒドロキシル基上に酸に不安定な官能基を提供することになる。該反応は、当業者に知られている従来の手段を使用して行われ得る。例えば、t−ブトキシカルボニルメチル(t−BuOOCCH)基を有するカリックス[4]レソルシナレンを提供するために、カリックス[4]レソルシナレンを、8当量またはわずかに過剰のブロモ酢酸t−ブチルおよび炭酸カリウムと反応させてよい。同様に、t−ブトキシカルボニル(tBuOOC)基で完全に保護されたカリックス[4]レソルシナレンを提供するために、カリックス[4]レソルシナレンを、8当量またはわずかに過剰の二炭酸ジ−t−ブチルと反応させてよい。カリックス[4]レソルシナレンを製作するための種々の反応スキームが当技術分野において知られており、上記で示したものに限定することは意図されていない。例として、カリックス[4]レソルシナレンは、Ito et al., Characterization and Lithographic Application ofCalix[4]resorcinarene Derivatives, Chem. Mater. 20: 341-356 (2008)に従って調製できる。
【0054】
ポジ型用途では、本明細書におけるフォトレジスト組成物は、フルオロアルコール含有カリックス[4]レソルシナレン、光酸発生剤および溶媒を含む。ネガ型用途では、フォトレジストは、架橋剤をさらに含み得る。
【0055】
放射線への暴露時に、光酸発生剤は、ポジ型レジストの場合には酸に不安定な基を開裂する、またはネガ型レジストの場合には架橋反応をもたらすために使用される酸を発生させる。様々な光酸発生剤(本明細書においては「PAGs」とも称される)が、本発明の組成物において使用され得る。概して、適切な光酸発生剤は、高温安定性(好ましくは140℃より高い温度まで)を有するため、該発生剤は前露光処理中に分解されない。任意の適切な光酸発生剤が、本発明のフォトレジスト組成物において使用され得る。典型的な光酸発生剤は、トリフェニルスルホニウムペルフルオロメタンスルホネート(トリフェニルスルホニウムトリフレート)、トリフェニルスルホニウムペルフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムペルフルオロペンタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムペルフルオロオクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムヨージド、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムペルフルオロブタンスルホネート、2,4,6−トリメチル−フェニルジフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムペルフルオロオクタンスルホネート、ジフェニルエチルスルホニウムクロリドおよびフェナシルジメチルスルホニウムクロリド等のスルホニウム塩;ハロニウム塩、特に、ジフェニルヨードニウムペルフルオロメタンスルホネート(ジフェニルヨードニウムトリフレート)、ジフェニルヨードニウムペルフルオロブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムペルフルオロペンタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムペルフルオロオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムビス−(t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレートおよびビス−(ジ−t−ブチルフェニル)−ヨードニウムカンファニルスルホネートを含むヨードニウム塩;ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタンおよびビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン等のα,α’−ビス−スルホニル−ジアゾメタン;イミドおよびヒドロキシイミドのトリフルオロメタンスルホネートエステル、例えば、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(MDT);2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート、2,6−ジニトロベンジルp−トルエンスルホネートおよび2,4−ジニトロベンジルp−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート等のニトロベンジルスルホネートエステル;N−カンファースルホニルオキシナフタルイミドおよびN−ペンタフルオロフェニルスルホニルオキシナ−フタルイミド等のスルホニルオキシナフタルイミド;ピロガロール誘導体(例えば、ピロガロールのトリメシレート);ナフトキノン−4−ジアジド;アルキルジスルホン;米国特許第4,189,323号に記述されている通りのs−トリアジン誘導体;ならびに、t−ブチルフェニル−α−(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセテート、t−ブチル−α−(p−トルエンスルホニルオキシ)アセテートおよびN−ヒドロキシ−ナフタルイミドドデカンスルホネート(DDSN)、およびベンゾイントシレートを含む種々雑多なスルホン酸発生剤を含むがこれらに限定されない。
【0056】
他の適切な光酸発生剤は、Reichmanis et al. (1991),Chemistry of Materials 3:395およびYamachikaらの米国特許第5,679,495号において開示されている。本明細書において提供される組成物および方法と併せて有用なさらなる適切な酸発生剤は、当業者によく知られるようになるか、または関連のある文献において記述されている、あるいはその両方である。
【0057】
本明細書におけるフォトレジスト組成物は、好ましくは、およそ0.5〜10重量%の光酸発生剤および最大約94.5重量%のフルオロアルコール含有カリックス[4]レソルシナレンを含む。架橋剤が存在する場合、典型的には、全固体の約1重量%から40重量%、好ましくは約5重量%から30重量%の範囲内で存在することになる。
【0058】
本発明のフォトレジスト組成物において使用される架橋剤は、ネガフォトレジスト技術分野において知られている任意の適切な架橋剤であってよく、該架橋剤は、別の面ではフォトレジスト組成物の他の選択された成分に適合する。架橋剤は、好ましくは、発生酸の存在下でポリマー成分を架橋させるように作用する。好ましい架橋剤は、POWDERLINK(R)の商標でAmerican Cyanamid Companyから入手可能な、テトラメトキシメチルグリコルリル、メチルプロピルテトラメトキシメチルグリコルリルおよびメチルフェニルテトラメトキシメチルグリコルリル等のグリコルリル化合物である。日本国公開特許出願(公開)第1−293339号において他の適切な架橋剤が、ならびに、エーテル化アミノ樹脂(例えば、メチル化またはブチル化メラミン樹脂(それぞれN−メトキシメチル−またはN−ブトキシメチル−メラミン))、またはメチル化/ブチル化グリコルリル(例えば、カナダ特許第1204547号において見られるようなもの)も見られる。架橋剤の組合せを使用してもよい。
【0059】
顔料、増感剤、防腐剤、酸拡散制御剤、界面活性剤または消泡剤等のコーティング助剤、接着促進剤、可塑剤および溶解抑制剤、中でも表面改質剤を含む他の慣習的な添加物も、フォトレジスト組成物中に存在し得る。典型的には、すべての慣習的な添加物の合計は、レジスト配合物中に含まれる固体の20パーセント未満、好ましくは5パーセント未満を占めることになる。
【0060】
顔料を使用して、配合されたレジストおよび増感剤の光学密度を調整することができ、これにより、放射線を吸収してそれを光酸発生剤に移すことによって光酸発生剤の活性を増強することができる。例は、官能化されたベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ビフェニレン、インデン、ナフタレン、クマリン、アントラキノンおよび他の芳香族ケトン等の芳香族化合物を含む。
【0061】
様々な塩基性度の多種多様な化合物が、防腐剤および酸拡散制御添加物として使用され得る。該化合物は、脂肪族第一級、第二級および第三級アミン等の窒素化合物、ピペリジン、ピリミジン、モルホリン等の環状アミン、ピリジン、ピリミジン、プリン等の芳香族複素環、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等のイミン、グアニジン、イミド、アミド他を含み得る。ヒドロキシド、フェノレート、カルボキシレート、アリールおよびアルキルスルホネート、スルホンアミド他を含むアルコキシドの、アンモニウム、第一級、第二級、第三級および第四級アルキルおよびアリールアンモニウム塩を含む、塩基性アニオンのアンモニウム塩を使用してもよい。ピリジニウム塩、ならびにヒドロキシド、フェノレート、カルボキシレート、アリールおよびアルキルスルホネート、スルホンアミド等を含むアルコキシド等のアニオンを有する他の複素環式窒素化合物の塩を含む他のカチオン性窒素化合物を用いてもよい。界面活性剤は、コーティングの均一性を改良するために使用することができ、多種多様なイオン性および非イオン性、モノマー、オリゴマーならびにポリマー種を含む。同様に、多種多様な消泡剤を用いて、コーティングの欠陥を抑制することができる。接着促進剤を使用してもよく、ここでも、この機能を果たすために多種多様な化合物を用い得る。所望ならば、オリゴ−およびポリエチレングリコールエーテル、脂環式エステル、ならびに非酸反応性のステロイド由来材料等、多種多様なモノマー、オリゴマーおよびポリマー可塑剤を可塑剤として使用してよい。しかしながら、上記で言及した化合物のクラスも特定化合物も、包括的または限定的であること、あるいはその両方を意図されていない。当業者ならば、これらの慣習的な添加物が実施する種類の機能を行うために使用され得る広範な市販の生成物を認識するであろう。
【0062】
フォトレジスト組成物の残りは、溶媒で構成されている。溶媒の選択は、レジスト成分の溶解性および混和性、コーティングプロセス、ならびに安全および環境規制に限定されない多くの要因によって左右される。加えて、他のレジスト成分に対して不活性であることが望ましい。フィルムの均一なコーティングを可能にするだけでなく、塗布後焼成プロセス中における残留溶媒の有意な低減または完全除去も可能にする適正な揮発性を溶媒が有することも望ましい。例えば、先に挙げたIntroduction to Microlithography, Eds. Thompson et al.を参照されたい。溶媒は、概して、エーテル、エステル、ヒドロキシルおよびケトン含有化合物、またはこれらの化合物の混合物から選択され得る。適正な溶媒の例は、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、乳酸エチル等のラクテートエステル、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテルエステル、メチルセロソルブ、酢酸ブチル、2−エトキシエタノールおよび3−エトキシプロピオン酸エチル等のアルキレングリコールモノアルキルエステルを含む。好ましい溶媒は、乳酸エチル、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル、および乳酸エチルと3−エトキシプロピオン酸エチルとの混合物を含む。上記の溶媒リストは例証のみを目的としており、包括的とみなされるべきものではなく、溶媒の選択も本発明を何ら限定するものとみなされるべきではない。当業者であれば、任意の数の溶媒または溶媒混合物を使用し得ることを認識するであろう。
【0063】
典型的には、レジスト配合物の全質量の50%超、好ましくは80%超が、溶媒で構成されている。
【0064】
本発明は、基板上にレジスト像を発生させるための方法であって、(a)本発明のレジスト組成物を含むフィルムで基板をコーティングするステップと、(b)フィルムを放射線に像様暴露するステップと、(c)像を現像するステップとを含む方法にも関する。第1のステップは、適切な溶媒に溶解されたレジスト組成物を含むフィルムで基板をコーティングするステップを伴う。適切な基板は、シリコン含有であり、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、およびクロムコーティングした石英またはガラスを含む。レジスト組成物の堆積前に、基板を有機反射防止層でコーティングしてもしなくてもよい。好ましくは、基板の表面を、フィルムがその上に堆積する前に、標準的な手順によって清浄する。本組成物に適した溶媒は、前節において記述されている通りであり、例えば、シクロヘキサノン、乳酸エチルおよび酢酸プロピレングリコールメチルエーテルを含む。スピンもしくはスプレーコーティング、またはドクターブレーディング等の当技術分野で知られている技術を使用して、フィルムを基板上にコーティングすることができる。好ましくは、フィルムを放射線に暴露する前に、フィルムを、約25〜150℃の温度に、短期間、典型的には約1分間加熱する。乾燥したフィルムは、約20〜5000nm、好ましくは約50〜1200nmの厚さを有する。
【0065】
方法の第2のステップにおいて、x線、電子ビーム(e−ビーム)、紫外線放射または極紫外線(EUV)放射(13.4nm)によって提供され得るような活性化エネルギーにフィルムを像様暴露する。放射線は放射線感受性の光酸発生剤によって吸収されて遊離酸を発生させ、これが、ポジ型レジストの場合には、加熱により、酸で開裂可能なエステル置換基の開裂および対応する酸の形成を引き起こし、またはネガ型レジストの場合には、架橋を引き起こす。好ましくは、フィルムを放射線に暴露した後、フィルムを再度、約25〜150℃の温度に、短期間、約1分間加熱する。
【0066】
第3のステップは、適切な溶媒による像の現像を伴う。適切な溶媒は、塩基水溶液、好ましくは、業界標準の現像液テトラメチルアンモニウムヒドロキシドまたはコリン等の金属イオンがない塩基水溶液を含む。本発明のレジスト組成物は、高い放射線感受性を有し、高コントラストおよび垂直な壁を呈する像を提供する。組成物は、業界標準の現像液中でも容易に現像することができる。現像には、許容されない細線化も膨張もない。レジストは、適切な熱特性(T)、良好な接着および平坦化を有する。加えて、フルオロアルコール官能基の存在は、本発明の組成物の溶解性特徴を有意に改良した。
【0067】
本発明の組成物を使用して、集積回路チップ、マルチチップモジュール、回路基板、石英マスクまたはインプリントテンプレート等の集積回路アセンブリを作製することができる。集積回路アセンブリは、(a)本発明のレジスト組成物を含むフィルムで基板をコーティングするステップと、(b)フィルムを放射線に像様暴露して、その中に潜像を形成するステップと、(c)像を現像して基板を露出させるステップと、(d)当技術分野で知られている技術によって基板上の現像されたフィルム中に回路を形成するステップとによって基板上に形成された回路を備える。基板を露出させた後、蒸発、スパッタリング、めっき、化学蒸着またはレーザー誘起堆積等の当技術分野で知られている乾燥技術によって伝導性金属等の伝導性材料で基板をコーティングすることにより、露出部中に回路パターンを形成することができる。フィルムの表面を圧延して、あらゆる過剰の伝導性材料を除去することができる。誘電材料は、回路を作製するプロセス中に同様の手段によって堆積させることもできる。pドープまたはnドープされた回路トランジスタを作製するためのプロセスにおいて、ホウ素、リンまたはヒ素等の無機イオンを基板中に埋め込んでよい。回路を形成するための他の手段は、当業者によく知られている。本発明の組成物を使用して、フォトマスク、インプリントテンプレート等を製作することもできる。
【0068】
本発明をその好ましい具体的な実施形態と併せて記述してきたが、前述の記述およびこの後の実施例は、例証を意図するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点および修正形態は、本発明に関連する技術分野の当業者には明らかとなるであろう。
【実施例1】
【0069】
この実施例において、4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)フェニルカリックス[4]レソルシナレン(以下に示す通りの構造1)を、ヘキサフルオロアルコール含有アルデヒドとレゾルシノールとの間の酸触媒縮合反応を介して合成した。
【0070】
構造1
【化9】
【0071】
4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンズアルデヒド(5g、0.018mol)、レゾルシノール(2g、0.018mol)およびメタノール(20ml)を、撹拌子を備えた丸底フラスコに入れた。5mlの濃塩酸を混合物に室温で添加し、次いで反応混合物を70℃で18時間還流させた。反応の完了は、NMRまたはIRスペクトルを介し、アルデヒド出発材料のカルボニルピークの消失によって決定した。反応溶媒であるメタノールをロータリーエバポレータによって蒸発させ、得られた材料を脱イオン水中で数回沈殿させた。生成物をNMR分光法によって確認した。収率:4.5g(68%)。
1H-NMR (DMSO-d6): (ppm) 5.62 (s, CH, 4H),6.16 (s, ArH, 4H), 6.21 (広幅なs, ArH, 2H), 6.69 (広幅なs, ArH, 2H), 6.81 (d, ArH,8H), 7.39 (d, ArH, 8H), 8.38 (s, HFA-OH, 4H), 8.74 (d, Ar-OH, 8H).
【実施例2】
【0072】
この実施例において、実施例1の4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)フェニルカリックス[4]レソルシナレンを、フェノール性ヒドロキシルユニットにおいて、塩基触媒反応を介してtert−ブトキシカルボニル(t−BOC)基で選択的に官能化して、t−BOCで保護された4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)フェニルカリックス[4]レソルシナレン(以下に示す通りの構造2)を生成した。
【0073】
構造2
【化10】
【0074】
4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)フェニルカリックス[4]レソルシナレン(2g、0.0014mol)および4−ジメチルアミノピリジン(0.06g、0.0005mol)を、撹拌子を備えた丸底フラスコ中の25mlのアセトンに溶解した。滴下漏斗を使用して二炭酸ジ−tert−ブチル(2.39g、0.011mol)をゆっくり添加し、一定のペースで撹拌した。COガスの発生が直ちに起こって反応の進行を示し、反応混合物を室温で8時間撹拌した。溶媒を蒸発によって低減させ、アセトンを溶離液として用いるカラムクロマトグラフィによって生成物を精製した。黄色固体が取得された。生成物をNMR分光法によって確認した。収率:2.4g(80%)。
1H-NMR (DMSO-d6): (ppm) 1.14 (s, CH3, 36H),1.42 (s, CH3, 36H), 5.56 (s, CH, 4H), 6.33 (s, ArH, 4H), 6.78 (広幅なs, ArH,8H), 7.07 (d, ArH, 2H), 7.12 (d,ArH, 2H), 7.25 (d, ArH, 8H), 8.6 (s, HFA-OH, 4H).
多分散性:1.02。
【実施例3】
【0075】
この実施例において、実施例2のt−BOCで保護された4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)フェニルカリックス[4]レソルシナレンを含むフォトレジスト組成物をリソグラフィ的に評価した。レジストを、0.25gのt−BOCで保護された4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)フェニルカリックス[4]レソルシナレン(構造2)、25mgのトリフェニルスルホニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホネート(光酸発生剤)および0.75mgの有機塩基と配合し、これを5gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解した。この溶液を、0.2ミクロンのシリンジフィルタに通して濾過した。
【0076】
フォトレジスト溶液を、ブランクシリコンウェハに約500オングストローム(50nm)の厚さで、90℃の塗布後焼成温度を60秒間使用してスピンコーティングした。図1は、ASMLステッパを使用して発生させた30秒間の露光後焼成温度の関数としての0.26N TMAH現像液中における248nmでのコントラスト曲線を図示している。示されている通り、レジストは、77℃以上で露光後焼成した場合に良好なコントラストを呈した。
【0077】
図2は、30秒間の露光後焼成温度の関数としての0.26N TMAH現像液中における100keV Leica e−ビーム露光システムを使用するe−ビームコントラスト曲線を図示している。この例において、94℃の塗布後焼成温度を60秒間使用して、レジストを約750オングストローム(75nm)の厚さにコーティングした。
【0078】
ASML 248nm 0.6NAステッパで実施例2のフォトレジストを使用して焼き付けられた130nmのライン/スペースパターンの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を図3において提示する。暴露条件は、90℃で60秒間の塗布後焼成、14mJ/cmの線量での暴露、および90℃で30秒間の露光後焼成を含むものであった。
【0079】
100keV Leica e−ビーム露光システムで実施例2のフォトレジストを使用して焼き付けられた60nmのライン/スペースパターンの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を図4において提示する。暴露条件は、90℃で60秒間の塗布後焼成、75μC/cmの線量での暴露、および90℃で30秒間の露光後焼成を含むものであった。
【0080】
100keV Leica e−ビーム露光システムで実施例2のフォトレジストを使用して焼き付けられた30/45nmのライン/スペースパターンの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を図5において提示する。暴露条件は、90℃で60秒間の塗布後焼成、95μC/cmの線量での暴露、および90℃で30秒間の露光後焼成を含むものであった。
【0081】
EUVマイクロ露光ツール(MET)システムで実施例2のフォトレジストを使用して焼き付けられた50nmのライン/スペースパターンの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を図5において提示する。暴露条件は、90℃で60秒間の塗布後焼成、6mJ/cmの線量での暴露、および90℃で30秒間の露光後焼成を含むものであった。
【0082】
本明細書において使用される術語は、特定の実施形態を記述することだけを目的とし、本発明の限定を意図するものではない。本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の定めがある場合を除き、複数形も含むことが意図されている。用語「を含む(comprises)」または「を含む(comprising)」あるいはその両方は、本明細書において使用される場合、述べられている特色、整数、ステップ、操作、要素または成分あるいはその組合せの存在を明記するが、1つまたは複数の他の特色、整数、ステップ、操作、要素成分またはそれらの群あるいはその組合せの存在または追加を除外しないことがさらに理解されよう。
【0083】
以下の特許請求の範囲におけるすべての手段またはステップおよび機能要素の、対応する構造、材料および同等物は、任意の構造、材料を、または機能を実施するために、明確に特許請求されている通りの他の特許請求されている要素と併せて含むことが意図されている。本発明の記述は、例証および記述を目的として提示されたものであり、網羅的であることも開示されている形態に本発明を限定することも意図していない。多くの修正形態および変形形態が、本発明の範囲を逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。
【0084】
本発明の好ましい実施形態を記述してきたが、当業者は、現在および未来の両方において、この後の請求項の範囲内にある種々の改良および増強を為し得ることが理解されよう。これらの請求項は、最初に記述した本発明の適切な保護を維持するものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6