(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796248
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】キャリアテープ原紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20151001BHJP
D21H 11/04 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
D21H27/00 E
D21H11/04
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-506731(P2014-506731)
(86)(22)【出願日】2012年3月12日
(65)【公表番号】特表2014-512463(P2014-512463A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】CN2012072203
(87)【国際公開番号】WO2013134911
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2013年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】513268173
【氏名又は名称】ジューチャン・ジェーメ・エレクトリック・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138438
【弁理士】
【氏名又は名称】尾首 亘聰
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100161539
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 美子
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ジュンユン
【審査官】
中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−067734(JP,A)
【文献】
特開2005−112424(JP,A)
【文献】
特開2005−179797(JP,A)
【文献】
特開2005−281937(JP,A)
【文献】
特開2008−290763(JP,A)
【文献】
特開2003−054627(JP,A)
【文献】
特開2003−286698(JP,A)
【文献】
特開平03−249300(JP,A)
【文献】
特開昭62−257498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層、中層、裏層の三層から原紙を抄造し、
表層、中層及び裏層に用いる原料パルプをそれぞれ混合し、表層用パルプスラリー、中層用パルプスラリー及び裏層用パルプスラリーに砕いた後、叩解度42〜45oSR、48〜50oSR、38〜40oSRまで叩解する第(1)の叩解ステップと、
叩解済みのパルプスラリーを0.65〜0.85%濃度に調整した後、それぞれ異なった補助剤を添加し、具体的には、表層用パルプスラリーには表層用原料パルプの総重量の1〜3%の紙防水剤、3〜5%の紙力増強剤、0.3〜0.6%の接着剤を添加し、中層用パルプスラリーには中層用原料パルプの総重量の0.5〜1.5%の軟化剤と1〜3%のホットメルト接着剤を添加し、裏層パルプスラリーには裏層用原料パルプの総重量の0.5〜1%の架橋剤と0.5〜1%の接着剤を添加し、それから、それぞれのpH値を6.5〜7.5に調整し、均一に撹拌した後、25〜30℃で20〜30min放置してから、表層用紙料、中層用紙料及び裏層用紙料を得、最後に選別し、浄化してくずを除いてから、脱気する第(2)の調成ステップと、
多層抄紙法で網上に1層または複層構造を持っている表層、中層及び裏層を形成してから、表層、中層、裏層の順で上から下へと貼り合わせて、湿紙を作り、その後、乾燥させる第(3)の抄造ステップと、
第(4)のカレンダリング、巻き取りステップを含み、
そのうち、表層用原料パルプには45〜65質量%の針葉樹硫酸塩パルプと35〜55質量の%広葉樹硫酸塩パルプを、中層用原料パルプには30〜50質量%の針葉樹硫酸塩パルプと50〜70質量%の広葉樹硫酸塩パルプを、裏層用原料パルプには20〜40質量%の針葉樹硫酸塩パルプと60〜80質量%の広葉樹硫酸塩パルプを用いることを特徴とするキャリアテープ原紙の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリアテープ原紙の製造方法において、前記紙防水剤は、アルキルケテンダイマー、ロジン系樹脂、トリパルミテートのうち少なくとも1つを使用することができ、前記紙力増強剤は、ポリアクリルアミド類、ポリアクリル酸ナトリウム、キチン、ポリアミド及びポリアミンのうち少なくとも1つを使用することができ、前記接着剤は、澱粉、変性デンプン、グアーガム及びカルボキシメチルセルロースのうち少なくとも1つを使うことができ、前記軟化剤は、ポリシロキサン第4級アンモニウム塩、ポリシロキサンリン脂質、脂肪酸アルコキシレートのうち少なくとも1つを使うことができ、前記ホットメルト接着剤は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアクリレートのうち少なくとも1つを使うことができ、前記架橋剤は、メラミン、ポリアミドポリ尿素、グリオキサール、ホウ酸ナトリウムのうち少なくとも1つを使うことができ、前記カレンダリングステップは温度100〜110℃ヒートロールを使って、原紙表面にホットプレスで表層の水封層を形成する工程を含み、そして、ヒートロールでのホットプレス前に、散水装置で1〜2g/m2の散水量で水をスプレーして、表層の湿潤層を形成させることを特徴とするキャリアテープ原紙の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のキャリアテープ原紙の製造方法において、前記調成ステップは、表層用パルプスラリーに、表層原料パルプ総量の1〜3%を占めるポリエチレングリコールと0.01〜0.03%を占める硫酸アルミニウムも添加され、前記抄造ステップは、網上に成形した1層または複層構造を持っている表層に、表層原料パルプ総量の0.5〜1%を占める澱粉と0.02〜0.5%を占めるユリア樹脂もスプレーまたは塗工され、前記抄造ステップは、網上に形成した1層または複層構造を持っている裏層に、裏層原料パルプ総量の0.5〜1%を占めるアニオン性ポリアクリルアミドと0.02〜0.5%を占める澱粉もスプレーまたは塗工されることを特徴とするキャリアテープ原紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、キャリアテープ原紙の製造方法とその製造方法から得られた原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の発展と広い応用はもはや国のエレクトロニクス産業の発展レベルの一つの重要な指標となっている。現在、受動部品、電気機械コンポーネント、オーディオコンポーネントおよび複合コンポーネントを含む様々な電子部品は全て複雑化、精密化、小型化へ進化し続けている。したがって、電子部品の包装、運輸、取り出し・実装などに用いられるキャリアテープの電子部品に対する保護作用がますます重要になっている。従来のキャリアテープは、材料によると、通常、プラスチック製のものや紙製のもの等がある。そのうち、プラスチックキャリアテープは寸法精度を保証することが困難であるし、パンチング時の面取りを排除しにくいし、しかも、プラスチックがクッション性を備えないゆえ、電子部品への機械的損傷を引き起こしかねないために、徐々に反発弾性と製造容易性に優れ、コスト低廉の紙キャリアテープで置き換えられた。しかし、原紙はプラスチックほど強くなく、かつ、紙粉も発生しやすく、紙粉が電子部品の性能に影響をおよぼすだけでなく、電子部品の取り出し・実装機械を詰まらせる恐れもあり、その上、原紙中の化学成分が電子部品の品質に影響を与えるなどの欠点もある。
【0003】
原紙中の化学成分が電子部品の品質に影響を与えることに対して、特許CN1579756A(特許文献1)は、キャリアテープ中に埋め込まれた表面実装部品の腐食を防止できるキャリアテープ材料を提供し、当該キャリアテープ材料は多層抄き構造を有し、各層が各種の原料パルプを主成分とし、表面のpH値を6.0〜8.0に調整することにより残留硫酸イオン量が500ppm未満とし、そして、原料パルプ100重量部に対して、多層材料の各層に1.0〜8.0重量部の紙力増強剤と0.1〜1.0重量部の増粘剤を配合することにより、圧縮されようとしている部分の湿紙含水率を75〜80%に調整する。
【0004】
特許CN1593910A(特許文献2)は一種のキャリアテープ材料を開示し、当該キャリアテープ材料は予期しない剥離トラブルが生じなくてヒートシールでカバーテープを接着させるだけでなく、カバーテープが剥がされるときも紙層破壊が発生しない。その技術方案としては、パルプ繊維を含む原料から作られたキャリアテープ材料に対して、表面及び裏面のすくなくとも一方に、90:10〜50:50の有効成分の質量比で、水溶性高分子及び融点80〜120℃のスチレンアクリル樹脂を含む液体を塗工することである。
【0005】
特許CN1629401A(特許文献3)、紙の厚さの変化が小さく、操作効率を低下させないキャリアテープ原紙を提供し、その技術方案は以下の通りである:原紙を酸性多層抄紙に作り、かつ中層にロジン系填料を添加し、あるいは中性多層抄紙に作り、かつ中層にアルキルケテンダイマー填料を添加し、填料の含有量は絶乾パルプの0.15〜0.75質量%である。
【0006】
これらの特許は全て材料の成分を変更することにより原紙の品質を改善することであり、キャリアテープ用原紙の表面平滑性、高い強度、中間部分の良い柔軟性、少ない物理的損傷、裏面のいい反発弾性等の性能要求を同時に配慮することができない。しかし、これらの性能はキャリアテープの正常動作及び電子部品の品質を保証することにとって極めて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】CN1579756A
【特許文献2】CN1593910A
【特許文献3】CN1629401A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は調製方法が簡単で、キャリアテープ用原紙の品質を大きく向上させることができるキャリアテープ原紙の製造方法及びその製造方法から得られた強度が高く、防水性と接着性が良好で、反発弾性が優れ、電子部品への物理的な損傷がすくない高品質の原紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術的目的は、以下の技術的解決策によって達成する:一種のキャリアテープ原紙の製造方法であり、当該キャリアテープ原紙は表層、中層、裏層の三層から抄造され、具体的に以下のステップを含む:
(1)叩解:表層、中層及び裏層に用いる原料パルプをそれぞれ混合し、表層用パルプスラリー、中層用パルプスラリー及び裏層用パルプスラリーに砕いた後、叩解度42〜45
oSR、48〜50
oSR、38〜40
oSRまで叩解する。
【0010】
(2)調成:叩解済みのパルプスラリーを0.65〜0.85%濃度に調整した後、それぞれ異なった補助材を添加し、具体的には、表層用パルプスラリーには表層用原料パルプの総重量の1〜3%の紙防水剤、3〜5%の紙力増強剤、0.3〜0.6%の接着剤を添加し、中層用パルプスラリーには中層用原料パルプの総重量の0.5〜1.5%の軟化剤と1〜3%のホットメルト接着剤を添加し、裏層パルプスラリーには裏層用原料パルプの総重量の0.5〜1%の架橋剤と0.5〜1%の接着剤を添加し、それから、それぞれのpH値を6.5〜7.5に調整し、均一に撹拌した後、25〜30℃で20〜30min放置してから、表層用紙料、中層用紙料及び裏層用紙料を得、最後に選別し、浄化してくずを除いてから、脱気する。
(3)抄造:多層抄紙法で網上に1層または複層構造を持っている表層、中層及び裏層を形成してから、表層、中層、裏層の順で上から下へと貼り合わせて、湿紙を作り、その後、通常の方法で圧縮して、乾燥させる。
(4)通常の方法でカレンダリング処理を行って、巻き取る。
【0011】
前記ステップ(1)における表層用原料パルプは以下通りの重量百分率の原料パルプを含む:針葉樹硫酸塩パルプ45〜65%、広葉樹硫酸塩パルプ35〜55%、中層用原料パルプは以下通りの重量百分率の原料パルプを含む:針葉樹硫酸塩パルプ30〜50%、広葉樹硫酸塩パルプ55〜75%、裏層用原料パルプは以下通りの重量百分率の原料パルプを含む:針葉樹硫酸塩パルプ20〜40%、広葉樹硫酸塩パルプ65〜80%。
【0012】
上記の方法で作られた原紙は坪量105〜125g/m
2の表層、坪量200〜500g/m
2の中層及び坪量165〜185g/m
2の裏層を備え、各層の性能要件に基いて、表層、中層、裏層には異なる原料パルプを用いて、異なる補助材を添加して、調成、抄造を経て形成され、作られた原紙の表層は引張強度が6.5〜8.5kN/mであり、ワックスピック法のワックスNoで表す表面強度が16〜18Aであり、耐水性が最低600sを示し、中層は柔軟度が100〜150mNであり、テーパー磨耗試験で測定した紙粉発生量が100ppm未満であり、裏層は剛性が25〜40mNであり、Scottインターナルボンドテスターで測定した層間接着強度が最低150J/m
2を示す。
【0013】
パルプ要因は紙強度に影響を及ぼす主な要因である。一般的に言えば、より長い繊維では強度が良好であり、針葉樹は広葉樹より繊維が長いので、強度が優れ、亜硫酸塩スラリーより硫酸塩スラリーのほうが強度がいい。従って、高い強度を得るために、比較的に高い含有量を持つ針葉樹硫酸塩パルプが表層用パルプスラリーとして選択された。通常、長繊維から得た紙は強度と耐折性が良好であるが、短繊維は嵩高性、厚さ、反発弾性と外観を提供する。キャリアテープを使用するときの高速動作を確保するために、キャリアテープ原紙の裏層が良好な反発弾性を有することが必要となり、したがって、短繊維即ち広葉樹硫酸塩パルプの含有量が比較的高いパルプスラリーを選んだ。長繊維の含有量が高いと、紙の強度と耐折性が良く、短繊維の含有量が高いと紙の反発弾性と嵩高性、厚さが良いけれども、キャリアテープ原紙の実際のニーズとコストを考慮に入れて、総合的に各指標を考えた結果、表層には45〜65質量%の針葉樹硫酸塩パルプと35〜55質量%の広葉樹硫酸塩パルプを含む原料パルプを、中層には30〜50質量%の針葉樹硫酸塩パルプと55〜75質量%の広葉樹硫酸塩パルプを含む原料パルプを、裏層には20〜40質量%の針葉樹硫酸塩パルプと65〜80質量%の広葉樹硫酸塩パルプを含む原料パルプを用いることが好適である。
【0014】
叩解度が低すぎると、繊維の結合力が悪いため、紙の物理的強度が低下することになり、叩解度が高すぎると、叩解時間が比較的に長く、繊維の切断力が大きい。従って、本発明の表層、中層及び裏層に用いられる原料パルプと合わせて、表層、中層及び裏層のパルプスラリーをそれぞれ42〜45
oSR、48〜50
oSR、38〜40
oSR叩解度まで叩解することが好ましい。各層の叩解度を個別に制御することは層間接着強度を高めることにも役立つ。
【0015】
また、表層の引張強度を6.5〜8.5kN/mとし、ワックスピック法のワックスNoで表す表面強度を16〜18Aとし、耐水性を最低600sとするために、表層のパルプスラリーに紙力増強剤、紙防水剤および接着剤を添加する必要がある。
【0016】
本発明によれば、好適な紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド類、ポリアクリル酸ナトリウム、キチン、ポリアミドポリアミンのうち少なくとも1つを採用することができ、そのうち、ポリアクリルアミド類はアニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミドと両性ポリアクリルアミドがあり、全部本発明の紙力増強剤として使用することができる。本発明における紙力増強剤は表面強度を高めるだけでなく、表面の毛羽立ちの部分防止と紙粉発生の抑制にも効果を発揮する。紙力増強剤の添加量は表層用原料パルプ総量の3〜5%とすると好適であり、添加量が3%未満であると、表面強度が著しく弱くなり、5%以上であると、表面強度があまり増加しなく、また、その後電子部品を汚染する恐れもある。
【0017】
高温でヒートシールするときにキャリアテープが水蒸気を生成するために、その水蒸気が原紙に浸透して当該原紙を使用しているキャリアテープ中の電子部品を腐食させるだけでなく、キャリアテープの正常動作に影響を与える場合がある。表層用原料パルプに紙防水剤を添加すると、水分の浸透を効果的に抑えることができ、その紙防水剤として、製紙によく使われた防水剤または市販品を用いることができ、本発明によれば、アルキルケテンダイマー、ロジン系樹脂、グリセロールトリパルミタートのうち少なくとも1つを使用することが好ましい。
【0018】
本発明によれば、表層用原料パルプには表層用原料パルプの総量の0.3〜0.6%を占める接着剤を使用し、この程度の量で適当な表層接着力を保証することができ、接着力が小さすぎると、接着性が低くなり、その原紙を使用したキャリアテープから電子部品を取り出すときに、カバーテープが剥がれる恐れもあり、接着力が大きすぎると、カバーテープを剥離するときに、キャリアテープが毛羽立ちし易くなり、または紙粉が発生して電子部品を汚染することになり、もっと大きすぎると、紙層が破壊されるかもしれない。
【0019】
上記の接着剤として、製紙によく使われた接着剤を使用してもいいが、本発明によれば、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、グアーガム、カルボキシメチルセルロースのうち少なくとも1つを使うことがさらに好ましい。
【0020】
本発明において、中層原料パルプに軟化剤とホットメルト接着剤を添加することにより、中間層の柔らかさが100〜150mN、テーパー磨耗試験方法(JIS L 1096 8.17.3標準)による紙粉発生量が100mg未満であることを達成する。
【0021】
本発明によれば、前記の軟化剤として、ポリシロキサン第4級アンモニウム塩、ポリシロキサンリン脂質、脂肪酸アルコキシレートのうち少なくとも1つを使うことが好ましい。キャリアテープが使用されているとき、その中間部分が主な変形に耐えるので、キャリアテープ原紙の中層が一定の柔軟性をもつ必要があり、それによって、電子部品に対する物理的な損傷を低減することができる。軟化剤の添加量は中層パルプスラリーの総量の0.5〜1.5%を占めるとより適当であり、低すぎると、柔軟性が不十分で、当該原紙を使用しているキャリアテープ中の電子部品に対する物理的な損傷が大きく、高すぎると、柔軟性が過剰となり、当該原紙を使用しているキャリアテープ中の電子部品が不安定になるかもしれない。
【0022】
原紙から得られたキャリアテープ上に搭載された電子部品が紙粉の発生によって汚染されることを防止するために、中層パルプスラリーに、ホットメルト接着剤を添加することが必要であり、そのホットメルト接着剤を使用することによって、当該原紙を使用しているキャリアテープがパンチングの時に紙粉を発生し難くなる。本発明によれば、ホットメルト接着剤として、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアクリレートのうち少なくとも1つを使うことが好ましい。
【0023】
裏層パルプスラリーに架橋剤と接着剤を添加し、架橋剤が接着剤のヒドロキシル基と結合して、防水の目的を達成する。本発明によれば、前記架橋剤として、メラミン、ポリアミドポリ尿素、グリオキサール、ホウ酸ナトリウムのうち少なくとも1つを使うことが好ましい。接着剤としては、澱粉、変性デンプン、グアーガム及びカルボキシメチルセルロースから、少なくとも1つを選ぶことができ、表層パルプスラリーと同じような接着剤を用いることができるが、異なる接着剤を使用してもいい。裏層パルプスラリーにおける架橋剤と接着剤の共同作用で、裏層に一定の耐水性と反発弾性が持たせことができ、本発明によれば、裏層の剛性は25〜40mNである。
【0024】
パルプスラリー中の繊維をさらに分散させ、かつ、紙料中の不溶性不純物、フォーム等を除去して、均質な懸濁液を調製するために、本発明において、得られた表層用紙料、中層用紙料、裏層用紙料に対して、選別、浄化及び脱気処理も行なう。
【0025】
本発明は、多層抄紙法で網上に1層または複層構造を持っている表層、中層及び裏層を形成する。本発明によれば、表層と裏層の両方とも1〜3層の抄合紙で、中層が3〜7層の抄合紙であることが好ましい。本発明の多層抄紙法とは、抄紙機の網上で形成された各層の湿紙を順にフェルトに転写して、抄き合わせることであり、円網式多層抄紙機や高速多層抄紙機等を使うことができる。
【0026】
本発明によれば、前記カレンダリングステップは、温度100〜110℃ヒートロールを使って、原紙表面にホットプレスで表層の水封層を形成する工程を含むことが好ましい。ヒートロールでのホットプレスにより、パルプスラリー繊維中の一部の補助料が表層に表出して、表層の上に水封層を形成する。さらに、ヒートロールでのホットプレス前に、散水装置で1〜2g/m
2の散水量で水をスプレーして、表層の湿潤層を形成させ、撒水量が少なすぎると、表層中の補助料を表出させて、湿潤層を形成することができないが、多すぎると紙表層の補助料が滲出するために、より良い湿潤層を形成し難くなって、紙質に影響を与える。ヒートロールでのホットプレス前に、散水装置で水をスプレーすることは、表層パルプ繊維中の水溶性補助料、例えばポリアクリル酸ナトリウム、澱粉等が水とともに表層上に吸着して、補助料を含む湿潤層を形成することに役立ち、その後、ヒートロールでのホットプレス、水の蒸発を行って、水封層を形成し、それによって、表層の耐水性を更に高め、表層に強度と平滑性を持たせることができる。
【0027】
表層の封水性と表面の接着性を高め、かつ、テープを剥がすときに震えが発生しないように、本発明の別の好ましい実施形態として、前記調成ステップにおいて、表層用パルプスラリー中に、表層原料パルプ総量の1〜3%を占めるポリエチレングリコールと0.01〜0.03%を占める硫酸アルミニウムをも添加する。
【0028】
表層と中層の層間結合強度をさらに高め、そして、気候条件、保存時間に起因するサイズの変化が小さくなって、電子部品の取り出しを阻害しないように、本発明によれば、前記の抄造ステップにおいて、網上に形成した1層または複層構造を持っている表層には、表層原料パルプ総量の0.5〜1%を占める澱粉と0.02〜0.5%を占めるユリア樹脂をスプレーまたは塗工することも好ましい。
【0029】
本発明によれば、前記の抄造ステップにおいて、網上に形成した1層または複層構造を持っている裏層には、裏層原料パルプ総量の0.5〜1%を占めるアニオン性ポリアクリルアミドと0.02〜0.5%を占める澱粉をスプレーまたは塗工することも好ましい。それによって、中層と裏層の層間接着強度を向上させ、Scottインターナルボンドテスターで測定し層間接着強度を最低150J/m
2にすることができ、そして、裏層の強度を更に高めて、反発弾性を向上させることもできる。
【0030】
本発明によれば、前記表層と裏層の平滑度がともに最低5sであることが好ましい。
【0031】
本発明において、得られた原紙をパンチキャリアテープやエンボスキャリアテープに製造することができるが、エンボスキャリアテープが特に好ましい。
【発明の効果】
【0032】
上述したように、従来技術とくらべて、本発明は、キャリアテープ原紙の品質を向上させることができ、そして、原紙中の繊維分布構造を変え、キャリアテープが使用されるときのニーズに応じて、各層に異なる補助料を添加し、湿式成形複合法により、各層を一体にする。そのゆえ、本発明の原紙は、その原紙を使用するキャリアテープ中の電子部品に粉塵汚染、機械的損傷等悪い影響を与えないうえに、紙に対する様々な強度処理、例えば曲がり、巻取り、剥離等に耐えることもでき、しかもその表層が毛羽立たない。したがって、本発明で得られた原紙は、もっと厳しい品質要求のある電子部品のキャリアテープに適応でき、普及させるに値する。
【0033】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。当業者は本明細書を読んだ場合、必要に応じて、本実施例にいかなる変更をも加えることができるが、本発明の特許請求の範囲内にある限り、特許による保護の対象となる。
【実施例1】
【0034】
一種のキャリアテープ原紙の製造方法であり、具体的には以下のステップを含む:
(1)叩解:表層、中層及び裏層に用いる原料パルプをそれぞれ混合し、表層用パルプスラリー、中層用パルプスラリー及び裏層用パルプスラリーに砕いた後、叩解度42
oSR、48
oSR、38
oSRまで叩解し、そのうち、表層用原料パルプには45%の針葉樹硫酸塩パルプと55%広葉樹硫酸塩パルプを、中層用原料パルプには50%の針葉樹硫酸塩パルプと50%広葉樹硫酸塩パルプを、裏層用原料パルプには40%の針葉樹硫酸塩パルプと60%広葉樹硫酸塩パルプを用いる。
【0035】
(2)調成:叩解済みのパルプスラリーを0.65%濃度に調整した後、それぞれ異なった補助材を添加し、具体的には、表層用パルプスラリーには表層用原料パルプの総重量の1%の紙防水剤、3%の紙力増強剤及び0.3%の接着剤を添加し、中層用パルプスラリーには中層用原料パルプの総重量の0.5%の軟化剤と1%のホットメルト接着剤を添加し、裏層パルプスラリーには裏層用原料パルプの総重量の0.5%の架橋剤と0.5%の接着剤を添加し、それから、それぞれのpH値を6.5に調整し、均一に撹拌した後、25〜30℃で20min放置してから、表層用紙料、中層用紙料及び裏層用紙料を得、最後に選別し、浄化してくずを除いてから、脱気する。
【0036】
前記紙防水剤は、アルキルケテンダイマー、ロジン系樹脂、グリセロールトリパルミタートのうち少なくとも1つを使用することができ、紙力増強剤は、ポリアクリルアミド類、ポリアクリル酸ナトリウム、キチン、ポリアミドポリアミンのうち少なくとも1つを使用することができ、接着剤は、澱粉、変性デンプン、グアーガム及びカルボキシメチルセルロースのうち少なくとも1つを使うことができ、軟化剤は、ポリシロキサン第4級アンモニウム塩、ポリシロキサンリン脂質、脂肪酸アルコキシレートのうち少なくとも1つを使うことができ、ホットメルト接着剤は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアクリレートのうち少なくとも1つを使うことができ、架橋剤は、メラミン、ポリアミドポリ尿素、グリオキサール、ホウ酸ナトリウムのうち少なくとも1つを使うことができる。
【0037】
(3)抄造:多層抄紙法で網上に1層または複層構造を持っている表層、中層及び裏層を形成してから、表層、中層、裏層の順で上から下へと貼り合わせて、湿紙を作り、その後、通常の方法で圧縮して、乾燥させる。
【0038】
(4)通常の方法でカレンダリング処理を行って、巻き取る。
【0039】
上記の方法で作られた原紙は坪量105g/m
2の表層、坪量200g/m
2の中層及び坪量165/m
2の低層を有し、表層は引張強度が6.5kN/mであり、ワックスピック法のワックスNoで表す表面強度が16Aであり、耐水性が最低600sを示し、中層は柔軟度が100mNであり、テーパー磨耗試験で測定した紙粉発生量100ppm未満であり、裏層は剛性が25mNであり、Scottインターナルボンドテスターで測定し層間接着強度が最低150J/m
2を示す。
【実施例2】
【0040】
一種のキャリアテープ原紙の製造方法であり、具体的には以下のステップを含む:
(1)叩解:表層、中層及び裏層に用いる原料パルプをそれぞれ混合し、表層用パルプスラリー、中層用パルプスラリー及び裏層用パルプスラリーに砕いた後、叩解度45
oSR、50
oSR、40
oSRまで叩解し、そのうち、表層用原料パルプには65%の針葉樹硫酸塩パルプと35%広葉樹硫酸塩パルプを、中層用原料パルプには30%の針葉樹硫酸塩パルプと70%広葉樹硫酸塩パルプを、裏層用原料パルプには20%の針葉樹硫酸塩パルプと80%広葉樹硫酸塩パルプを用いる。
【0041】
(2)調成:叩解済みのパルプスラリーを0.85%濃度に調整した後、それぞれ異なった補助材を添加し、具体的には、表層用パルプスラリーに表層用原料パルプ総重量の3%のアルキルケテンダイマー、5%のアニオン性ポリアクリルアミド、0.6%の澱粉または変性澱粉を添加し、中層用パルプスラリーには中層用原料パルプの総重量の1.5%のポリシロキサン第4級アンモニウム塩と3%のポリエステルを添加し、裏層パルプスラリーには裏層用原料パルプの総重量の1%のメラミンと1%の澱粉または変性澱粉を添加し、それから、それぞれのpH値を7.5に調整し、均一に撹拌した後、25〜30℃で30min放置してから、表層用紙料、中層用紙料及び裏層用紙料を得、最後に選別し、浄化してくずを除いてから、脱気する。
【0042】
(3)抄造:多層抄紙法で網上に1層または複層構造を持っている表層、中層及び裏層を形成してから、表層、中層、裏層の順で上から下へと貼り合わせて、湿紙を作り、その後、通常の方法で圧縮して、乾燥させる。
【0043】
(4)散水装置を使って1m/minの速度で走行している原紙に1g/m
2の散水量で水をスプレーして、表層を湿潤させ、表層の湿潤層を形成してから、温度100〜110℃のヒートロールで原紙表面をホットプレスして、表層の水封層を形成させ、その後、通常の方法でカレンダリング処理を行って、巻き取る。
【0044】
上記の方法で作られた原紙は坪量125g/m
2の表層、坪量500g/m
2の中層及び坪量185/m
2の低層を有し、表層は引張強度が7.5kN/mであり、ワックスピック法のワックスNoで表す表面強度が18Aであり、耐水性が最低650sを示し、中層は柔軟度が150mNであり、テーパー磨耗試験で測定した紙粉発生量100ppm未満であり、裏層は剛性が40mNであり、Scottインターナルボンドテスターで測定し層間接着強度が最低150J/m
2を示し、そして、表層と裏層の平滑度が最低5sである。
【実施例3】
【0045】
一種のキャリアテープ原紙の製造方法であり、具体的には以下のステップを含む:
(1)叩解:表層、中層及び裏層に用いる原料パルプをそれぞれ混合し、表層用パルプスラリー、中層用パルプスラリー及び裏層用パルプスラリーに砕いた後、叩解度43
oSR、49
oSR、39
oSRまで叩解し、そのうち、表層用原料パルプには55%の針葉樹硫酸塩パルプと45%広葉樹硫酸塩パルプを、中層用原料パルプには40%の針葉樹硫酸塩パルプと60%広葉樹硫酸塩パルプを、裏層用原料パルプには30%の針葉樹硫酸塩パルプと70%広葉樹硫酸塩パルプを用いる。
【0046】
(2)調成:叩解済みのパルプスラリーを0.7%濃度に調整した後、それぞれ異なった補助材を添加し、具体的には、表層用パルプスラリーには表層用原料パルプの総重量の2%のロジン系樹脂とグリセロールトリパルミタート(ロジン系樹脂とグリセロールトリパルミタートの重量比は1:1である)、4%のポリアクリル酸ナトリウムとキチン(両者の重量比は2:1である)、0.4%の澱粉とグアーガム(両者の重量比は2:1である)、1〜3%のポリエチレングリコール、0.01〜0.03%の硫酸アルミニウムを添加し、中層用パルプスラリーには中層用原料パルプの総重量の1%のポリシロキサンリン脂質と脂肪酸アルコキシレート(両者の重量比は1:1である)、2%のポリウレタンとポリビニルアルコール(両者の重量比は1:2である)を添加し、裏層パルプスラリーには裏層用原料パルプの総重量の0.7%のポリアミドポリ尿素とグリオキサール(両者の重量比は1.5:1である)、0.7%の変性澱粉とカルボキシメチルセルロース(両者の重量比は2.5:1である)を添加し、それから、それぞれのpH値を7.0に調整し、均一に撹拌した後、25〜30℃で25min放置してから、表層用紙料、中層用紙料及び裏層用紙料を得、最後に選別し、浄化してくずを除いてから、脱気する。
【0047】
(3)抄造:多層抄紙法で網上に1層または複層構造を持っている表層、中層及び裏層を形成し、そして、網上に成形した1層または複層構造を持っている表層には、表層原料パルプ総量の0.5〜1%を占める澱粉と0.02〜0.5%を占めるユリア樹脂をスプレーまたは塗工し、網上に成形した1層または複層構造を持っている裏層には、裏層原料パルプ総量の0.5〜1%を占めるアニオン性ポリアクリルアミドと0.02〜0.5%を占める澱粉をスプレーまたは塗工してから、表層、中層、裏層の順で上から下へと貼り合わせて、湿紙を作り、その後、通常の方法で圧縮して、乾燥させる。
【0048】
(4)通常の方法でカレンダリング処理を行って、巻き取る。
【0049】
上記の方法で作られた原紙は坪量115g/m
2の表層、坪量250g/m
2の中層及び坪量170/m
2の低層を有し、表層は1層の抄合紙であり、引張強度が8.5kN/mであり、ワックスピック法のワックスNoで表す表面強度が17Aであり、耐水性が最低620sを示し、中層は3層の抄合紙であり、柔軟度が130mNであり、テーパー磨耗試験で測定した紙粉発生量が100ppm未満を示し、裏層は1層の抄合紙であり、剛性が30mNであり、Scottインターナルボンドテスターで測定し層間接着強度が最低150J/m
2を示す。
【実施例4】
【0050】
実施例3と違って、ステップ(4)において、散水装置を使って1.5m/minの速度で走行している原紙に2g/m
2の散水量で水をスプレーして、表層を湿潤させ、表層の湿潤層を形成させてから、温度100〜110℃のヒートロールで原紙表面をホットプレスして、表層の水封層を形成させ、その後、通常の方法でカレンダリング処理を行って、巻き取る。
【0051】
上記の方法で作られた原紙は坪量125g/m
2の表層、坪量350g/m
2の中層及び坪量185/m
2の低層を有し、表層は3層の抄合紙であり、引張強度が8.8kN/mであり、ワックスピック法のワックスNoで表す表面強度が17Aであり、耐水性が最低650sを示し、中層は7層の抄合紙であり、柔軟度が130mNであり、テーパー磨耗試験で測定した紙粉発生量が100ppm未満を示し、裏層は1層の抄合紙であり、剛性が30mNであり、Scottインターナルボンドテスターで測定し層間接着強度が最低150J/m
2を示し、かつ、表層と裏層の平滑度が最低5sである。
【実施例5】
【0052】
実施例3と違って、ステップ(4)において、散水装置を使って1.2m/minの速度で走行している原紙に1.5g/m
2の散水量で水をスプレーして、表層を湿潤させ、表層の湿潤層を形成させてから、温度100〜110℃のヒートロールで原紙表面をホットプレスして、表層の水封層を形成させ、その後、通常の方法でカレンダリング処理を行って、巻き取る。
【0053】
上記の方法で作られた原紙は坪量120g/m
2の表層、坪量320g/m
2の中層及び坪量170/m
2の低層を有し、表層は2層の抄合紙であり、引張強度が8.6kN/mであり、ワックスピック法のワックスNoで表す表面強度が18Aであり、耐水性が最低650sを示し、中層は5層の抄合紙であり、柔軟度が130mNであり、テーパー磨耗試験で測定した紙粉発生量が100ppm未満を示し、裏層は2層の抄合紙であり、剛性が30mNであり、Scottインターナルボンドテスターで測定し層間接着強度が最低150J/m
2を示し、かつ、表層と裏層の平滑度が最低5sである。
【0054】
実施例3と違って、その表層が2層の抄合紙で、坪量115g/m
2であり、中層が5層の抄合紙で、坪量500g/m
2であり、裏層が2層の抄合紙で、坪量170g/m
2である。
【0055】
実施例1〜5から得られた原紙の物理的指標を次の表に示す:
【0056】
本発明に記載されない詳細は、すべで当業者に公知の技術である。