【発明が解決しようとする課題】
【0023】
これら目的は、本発明によれば、請求項1に記載された特徴を有するマイクロフルイディック装置によって達成される。
【0024】
本発明のマイクロフルイディック分離装置により、十分な体積流量の流体を提供することができる。このために、マイクロフルイディック分離装置は、特に血液を濾過する分離手段を有し、かかる分離装置は、分離された流体を受け入れてこれを運び去る排出チャネルを有する。本発明の装置により、小さな有効毛管断面を備えた排出チャネル又は小さな開口孔からマイクロフルイディックネットワーク及び/又はチャンバを充填することができる。さらに、開示する方法を用いると、供給装置及び/又は分離装置の死空間を最小限まで減少させることができる。
【0025】
マイクロフルイディックカートリッジでは、一般に、マイクロフルイディックネットワークは、プレート状基体の状態への成形によって形成される。好ましくは、成形可能なプラスチック、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、オレフィンポリマー及びオレフィンコポリマー、例えばシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマー(COC及びCOP)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)又はポリエチレンケトン(PEEK)がネガの金型中に射出される。
【0026】
有利には、チャネル構造体は、基体上に配置されるフィルムによって封止される。
【0027】
フィルムは、プレートの片面又は両面中に成形されたチャネル及び/又はチャネル構造体を覆い、かくして、幅及び高さが数十ミクロンから数ミリメートルまでの範囲の構造を備えたマイクロフルイディックチャネル系が形成される。フィルムは、プレート状コンポーネントを部分的に又はその表面全体にわたって覆う。
【0028】
フィルムは、多層構造のものであるのが良い。具体的に言えば、フィルムは、片面又は両面にプレート状基体への取り付けのための接着剤層を備えるのが良い。接着剤層は、好ましくは、エチレン‐ビニルアセテートコポリマー(EVA)の低融点貼り合わせ層又は封止層である。変形例として、接着剤層は、アクリレート系接着剤であっても良い。
【0029】
表面及び/又はチャネル構造体は、これら表面の全て又は一部に関し表面処理及び/又は表面コーティングを施されているのが良い。実施可能な表面処理又は活性化の例としては、表面付着性を高めるためのプラズマ照射/プラズマエッチング、ガンマ線又はUV照射が挙げられる。
【0030】
検討可能な表面コーティングとしては、例えば、流体の運搬具合及び/又は水性液の流体制御を向上させるためのチャネル領域に対する親水性又は疎水性仕上げが挙げられる。
【0031】
変形例として、フィルムは、高温貼り合わせプロセス中、基体の表面に溶接される追加の封止層を更に有しても良い。
【0032】
さらに、フィルムは、貼り合わせにより直接被着されるのが良く、即ち、フィルムと基体との間の材料接合部が圧力及び熱の作用効果により封止層上に溶融なしで作られる。貼り合わせは、好ましくはアクリレート系接着剤層を用いると低温でも実施可能である。
【0033】
好ましくは、フィルムは、扁平である。しかしながら、例えば変形可能なチャンバを形成するようフィルムを局所的に付形することも可能であり又は圧力又は真空制御弁及びマイクロアクタ(microactor)を形成するためにこのフィルムを成形することも可能である。
【0034】
第1のフィルムに加えて、プレート状基体及び/又は第1のフィルム上に第2のフィルムを被着させるのが良い。第2のフィルムは、追加のマイクロフルイディック構造、例えばチャネル、チャンバ及び/又はギャップを有するのが良い。好ましくは、第2のフィルムは、バイオセンサのための構造、特に、測定手段、例えば電気接点及び/又は電位面及び/又は光学構造体、例えば光ファイバ及び/又は光反射面を有する。
【0035】
分析装置内でマイクロフルイディックカートリッジを動作させるため、例えば、所与の量の流体が供給装置中に送り込まれる。これは、例えば、側方流動試験に関し、体積が5〜50マイクロリットル、好ましくは5〜100マイクロリットルの1滴の血液であるのが良い。
【0036】
最も簡単な例では、供給装置は、充填開口部である。供給装置は、更に、追加のコンポーネントを含む場合がある。例えば、供給装置は、血液の追加を助けて充填空間を広げるために充填開口部内に配置される漏斗状インサートであっても良い。供給装置は、充填開口部を包囲し、血液の追加中、患者の指のための支持面及び/又は位置決め面として働くフィンガウェルを更に含むのが良い。
【0037】
このウェルは、好ましくは、プレート状カバー要素に設けられる。カバー要素は、この場合、供給装置を構成する。
【0038】
本発明の検体分離装置は、検体成分を分割すると共に/或いは分離すると共に/或いは濾過する手段を備えた分離装置を更に有する。
【0039】
分割及び/又は分離及び/又は濾過手段は、有利には、検体液体が供給されるメンブレン又はフィルタであり、液体は、メンブレン及び/又はフィルタを通って流れ、検体成分は、フィルタ又はメンブレンによって保持される。
【0040】
フィルタを通る流れは、フィルタを通る開放流体ネットワークを形成する細孔及び/又は毛管を通って起こる。有利には、ガラス繊維、ポリスルフォン又はポリエーテルスルフォンで作られたフィルタが用いられる。
【0041】
血液検体から血漿を分離するため、好ましくは、平均孔径が....〜....ミクロンのフィルタが用いられる。有利には、フィルタが上側プレート状基体の充填開口部内に溶接される。このカバー要素は、好ましくは、フィルタ、特にメンブレンを挿入することができる凹部を充填開口部のところに有する。特に好ましくは、メンブレンは、凹部の表面、即ち取り付け面に溶接される。
【0042】
流体の流れは、メンブレン又はフィルタを通って特に垂直流れ方向に運ばれる。
【0043】
この垂直方向は、流れが特にプレート状マイクロフルイディック計量装置の基体平面に実質的に垂直であることを意味している。
【0044】
かくして、流れは、メンブレンを実質的に厚みの方向に通過する。
【0045】
メンブレン又はフィルタは、好ましくは、入口開口部とメンブレン/フィルタの下に設けられた入口チャンバ又は収集チャンバとの間で垂直方向に配置される。
【0046】
メンブレン又はフィルタは、これらの細孔又は毛管の毛管作用により、サイズが細孔又は毛管のサイズよりも大きな大径粒子を受け入れてこれを保持する。
【0047】
細孔は、それにより、保持された粒子の凝集の結果として部分的に詰まり、その結果、有効流れ断面は、分離プロセスが続いているときに減少するようになる。このことは、マイクロフルイディック装置内における流体の流量としての体積流量が減少することを意味する。
【0048】
分離装置には、分離された検体流体が流れ込む入口チャンバ又は収集チャンバが設けられる。
【0049】
入口チャンバ又は収集チャンバという用語は、分離された検体液体が分離装置を通って流れた後、特にフィルタ又はメンブレンを通って流れた後に直接流入するマイクロフルイディック装置の空間を意味している。
【0050】
この入口チャンバ又は収集チャンバは、メンブレンの真下に配置され、頂部が開口したチャネル及び/又はチャンバであるのが良く、その結果、分離された検体液体は、チャネル及び/又はチャンバにより受け入れられるようになる。
【0051】
構成の点で、頂部がメンブレン又はフィルタにより境界付けられている空間により入口チャンバ又は収集チャンバを形成することが好ましい。
【0052】
この場合、フィルタ又はメンブレンの下面は、入口チャンバ又は収集チャンバのための上側分離面を形成する。
【0053】
この実施形態では、入口チャンバの空間は、底部がプレート状基体によって境界付けられ、このプレート状基体は、収集チャンバのベースを形成する。空間の側部は、壁により形成されるのが良く且つ/或いは特に好ましくは以下に説明するように空気抜きトレンチによって包囲されるのが良い。
【0054】
入口チャンバ又は収集チャンバは、全体がメンブレン又はフィルタにより満たされるのが良い。この実施形態では、フィルタ又はメンブレンは、分離装置の一部であると共に入口又は収集チャンバの一部でもある。
【0055】
1本又は2本以上の空気抜きチャネルが入口チャンバ又は収集チャンバから延びるのが良い。さらに、分離装置の設計は、分離が実施された検体液が1本又は2本以上のチャネルによって横方向に運び去られるようなものである。
【0056】
有利には、入口チャンバと収集チャンバは、流体の流れにより溶解する試薬を収容するのが良い。
【0057】
同様に、メンブレンを試薬、例えば試薬としてのグリシン又はレクチンで浸軟させ又は含浸させるのが良く、これら試薬は、流体、特に血液の凝集を促進し、その結果、メンブレンによって保持された粒子の大きな堆積物又は塊が形成される。流体を追加すると、分離がこのようにして処理されたメンブレン中で起こり、それと同時に、第1の試薬は溶解し、第1の試薬は、生物学的及び/又は化学的及び/又は物理的性質、特に流体の粘度に影響を及ぼす。
【0058】
流体の検出反応を生じさせる第2の試薬が入口チャンバ又は収集チャンバ内に設けられるのが良い。これは、例えばラインベルク照明手段であるのが良い。
【0059】
メンブレン又はフィルタが高い固有の毛管作用を有するので、有利には、隣接の入口チャンバ又は収集チャンバ内への流体の垂直下向き流を助ける手段が設けられる。この目的のため、入口又は収集チャンバは、有利には、1つ又は2つ以上のピラー及び/又はウェブ及び/又はランプ状表面を有する。これらは、好ましくは、垂直方向に延びる1つ又は2つ以上の切り欠きを支持し又は形成することができる。
【0060】
ピラー及び/又はウェブ及び/又は傾斜面は、メンブレンがこれら構造体上に載るよう構成される。構造体の高さは、有利には、入口又は収集チャンバの深さに一致し、その深さは、好ましくは、10ミクロン〜1000ミクロン、特に50ミクロン〜500ミクロンである。
【0061】
構造体の切り欠き又は構造体自体は、接触関係をなすべきメンブレンに流体力学的に接触し又はこれらの毛管作用により流体をメンブレンから運び出してチャンバのベースに導き、その結果、収集チャンバは湿潤される。代替的に又は追加的に、メンブレンは、凸構造のものであるのが良く、凸部の高さは、チャンバの深さに一致し、その結果、メンブレンは、凸部の頂部のところでチャンバのベースに当たった状態で取り付けられるようになっている。
【0062】
メンブレンの頂部がチャンバのベースと鋭角をなすので、メンブレンが湿潤されると、ここに大きな毛管力が生じ、分離された流体がメンブレンとチャンバベースとの間のギャップを通って排出されて収集チャンバに流れるようになっている。
【0063】
有利には、入口又は収集チャンバは、少なくとも部分的にトレンチによって包囲され、トレンチの深さは、チャンバの深さよりも深く、トレンチは、ベントを有し、その結果、入口又は収集チャンバ内の空気は、トレンチを通る流入流体によって押し退け可能である。充填トレンチは、好ましくは、幅が少なくとも100ミクロン、深さが少なくとも5ミクロンである。
【0064】
入口又は収集チャンバの容積は、好ましくは、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、50、100、200、500、1000マイクロリットルであり、但し、上述の値を加えることによって得られるチャンバ容積を選択することも可能である。
【0065】
上述の空気抜きトレンチは、流体の流れがトレンチ段部をオーバーフローすることができないので、流体停止部を形成する。有利には、トレンチは、排出チャネルが延びる入口又は収集チャンバを入口又は収集チャンバの出口領域まで完全に包囲し、その結果、空気を入口チャンバから一様に押し退けることができるようになっている。
【0066】
チャンバ出口と互いに隣接して位置するトレンチの端部との間の領域には、トレンチ中への流体の望ましくない流れの恐れがある。この場合、トレンチ中への流体の導入が生じないよう検体分離装置を設計することが特に有利である。
【0067】
これは、一方においては、空気抜きトレンチの端部を広幅にすることによって達成される。広幅にした結果として、空気抜きトレンチを充填する毛管段部が拡大され、このことは、空気抜きトレンチの偶発的な充填の恐れが著しく減少することを意味する。
【0068】
本発明の分離装置の構成では、分離された検体液体を入口又は収集チャンバから運び出すチャネルは、収集チャンバのベースのところに配置され、即ち、かかるチャネルは、入口チャンバのベースに設けられた凹部により形成されることが想定されている。
【0069】
排出チャネルという用語は、液体を入口チャンバから受け取ってこれをマイクロフルイディック流体ネットワーク中に運び込むことができるチャネルであることを意味している。
【0070】
排出チャネルを入口チャンバのベースに設けるという構成の利点としては、分離された検体液体が側方に位置決めされたチャネルを通って運び去られるようにするために、最初に入口チャンバを完全に充填する必要がなく、それどころか、分離された検体液体が運び去られてマイクロフルイディックカートリッジの分析領域に直接運ばれることにある。
【0071】
かくして、この構成により、分析にとって有用ではないサンプル液体の死空間の形成が回避される。これは、5〜20マイクロリットルという量の分離された血漿体積に相当するほんの僅かな量の検体、例えば10〜50マイクロリットルの1滴の血液が利用される診断用途において特に有利である。
【0072】
さらに、排出チャネルは、少なくともチャネルが空気抜きトレンチの端部の近くで延びる箇所のところで、フィルムにより流体密状態に覆われ、それにより、チャネルと空気抜きトレンチとの間の流体の望ましくない合流が阻止されるので有利である。有利には、排出チャネルは又、少なくとも部分的に、入口チャンバのところでフィルムによって覆われ、それにより、分離液体の流入領域が入口又は収集チャンバ内に得られる。
【0073】
チャネルのこの覆いは、特に有利には、舌部の形態をしており、かかる舌部は、チャネルを入口又は収集チャンバの中央まで流体密状態に閉鎖し、その結果、充填開口部の中央に導入され、メンブレンにより分離される検体液体が中央排出チャネル内に直接流入することができるようになっている。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、チャネルは、チャネルの毛管作用による湿潤を助ける手段を有する。
【0075】
これら手段は、有利には、チャンバのベースを排出チャネルのベースに連結する毛管作用の増大した切り欠きであるのが良い。
【0076】
別の変形手段として、チャンバのベースとチャネルのベースとの間に少なくとも1つのランプ(傾斜路)が設けられても良く、かかる傾斜路は、連結毛管作用を同様に有する。
【0077】
本発明を例示としての以下の実施形態によって詳細に説明する。