特許第5796302号(P5796302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

特許5796302可変ノズルユニット及び可変容量型過給機
<>
  • 特許5796302-可変ノズルユニット及び可変容量型過給機 図000002
  • 特許5796302-可変ノズルユニット及び可変容量型過給機 図000003
  • 特許5796302-可変ノズルユニット及び可変容量型過給機 図000004
  • 特許5796302-可変ノズルユニット及び可変容量型過給機 図000005
  • 特許5796302-可変ノズルユニット及び可変容量型過給機 図000006
  • 特許5796302-可変ノズルユニット及び可変容量型過給機 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796302
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】可変ノズルユニット及び可変容量型過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20151001BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   F02B37/24
   F02B39/00 U
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-26167(P2011-26167)
(22)【出願日】2011年2月9日
(65)【公開番号】特開2012-163083(P2012-163083A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鬼束 和宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐二
(72)【発明者】
【氏名】平井 芳明
(72)【発明者】
【氏名】江口 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】徳江 直樹
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−332856(JP,A)
【文献】 特開2007−040251(JP,A)
【文献】 特開平01−162530(JP,A)
【文献】 特開2002−332855(JP,A)
【文献】 特開2006−258108(JP,A)
【文献】 特開2007−056791(JP,A)
【文献】 特開2009−144615(JP,A)
【文献】 特開2010−001863(JP,A)
【文献】 特開昭63−147921(JP,A)
【文献】 特開平03−185792(JP,A)
【文献】 特開2001−132464(JP,A)
【文献】 特開2002−038967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00−21/20
F02B 33/00−41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型過給機におけるタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積を可変する可変ノズルユニットにおいて、
離隔対向した状態で一体的に連結され、少なくともいずれかに複数のガイド穴が周方向に等間隔に形成された一対のベースリングと、
一対の前記ベースリングの間に周方向に等間隔に配設され、前記タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに回転可能であって、一側面が一方の前記ベースリングの対向面に摺動可能でかつ他側面が他方の前記ベースリングの対向面に摺動可能であって、少なくともいずれかの側面に一体形成されかつ対応する前記ガイド穴に回転可能に支持されるノズル軸を有した複数の可変ノズルと、
複数の前記可変ノズルを開く方向及び絞る方向へ同期して回転させる回転機構と、を具備し、
各ベースリングの対向面、各可変ノズルの一側面、及び各可変ノズルの他側面に窒化処理が施されている一方、各ガイド穴の内周面に窒化処理が施されていない、可変ノズルユニット。
【請求項2】
各可変ノズルの前記ノズル軸の外周面に窒化処理が施されている請求項1に記載の可変ノズルユニット。
【請求項3】
前記同期回転機構は、
いずれかの前記ベースリングに回転可能に設けられ、内周面がいずれかの前記ベースリングの外周面に摺動可能な駆動リングと、
前記駆動リングに等間隔に設けられた複数の接続片と、
各可変ノズルの前記ノズル軸に一体的に連結され、先端部が対応する前記接続片に係合した伝達リンクと、
前記駆動リングを回転させるアクチュエータと、を備えており
いずれかの前記ベースリングの外周面及び前記駆動リングの内周面に窒化処理が施されている請求項1又は請求項2に記載の可変ノズルユニット。
【請求項4】
複数の前記ガイド穴は、一対の前記ベースリングに複数の前記ガイド穴が周方向に等間隔にそれぞれ形成され、前記ノズル軸は、各可変ノズルの両側面にそれぞれ一体形成されている請求項1から請求項3のうちのいずれかの1項に記載の可変ノズルユニット。
【請求項5】
エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する可変容量型過給機において、
請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の可変ノズルユニットを具備している、可変容量型過給機。
【請求項6】
少なくともいずれかに複数のガイド穴が周方向に形成された一対のベースリングと、
一対の前記ベースリングの間に配設され、前記ガイド穴に回転可能に支持されるノズル軸を有した可変ノズルと、
前記可変ノズルを回転させる回転機構と、を含む可変ノズルユニットであって、
一対の前記ベースリングの対向面、前記可変ノズルの一側面、及び前記可変ノズルの他側面に窒化処理が施されている一方、前記ガイド穴の内周面に窒化処理が施されない、可変ノズルユニット。
【請求項7】
第1ガイド穴が形成された第1ノズルリングと、
第2ガイド穴が形成されており、前記第1ノズルリングに対向する第2ノズルリングと、
前記第1ノズルリングと前記第2ノズルリングの間に配設され、前記第1ノズルリング及び前記第2ノズルリングに対して摺動可能な可変ノズルと、
前記可変ノズルに形成されると共に前記第1ガイド穴及び前記第2ガイド穴に支持されたノズル軸と、を有し、
前記可変ノズルと前記第1ノズルリングにおいて互いに摺動する面、及び前記可変ノズルと前記第2ノズルリングにおいて互いに摺動する面には窒化物層が形成されている一方、前記第1ガイド穴の内周面及び前記第2ガイド穴の内周面には窒化物層が形成されていない、可変ノズルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型過給機におけるタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変する可変ノズルユニット等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可変容量型過給機のタービンに用いられる可変ノズルユニットついて種々の開発がなされている。そして、一般的な可変ノズルユニットの構成等について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
一般的な可変ノズルユニットは、タービンインペラを覆う第1ベースリングとしてのシュラウドを具備しており、シュラウドには、複数の第1ガイド穴が周方向に等間隔に形成されている。また、シュラウドには、第2ベースリングとしての間隙調整プレートが複数の連結ピンを介して対向離隔した状態で一体的に連結されており、間隙調整プレートには、複数の第2ガイド穴が周方向に等間隔に形成されている。
【0004】
シュラウドと間隙調整プレートの間には、複数の可変ノズルが周方向に等間隔に配設されており、各可変ノズルは、タービンインペラの軸心に平行な軸心周り回転可能である。また、各可変ノズルの一側面は、シュラウドの対向面に摺動可能であって、各可変ノズルの他側面は、間隙調整プレートの対向面に摺動可能である。更に、各可変ノズルの一側面には、第1ノズル軸が一体形成されており、第1ノズル軸は、シュラウドの対応する第1ガイド穴に回転可能に支持されている。同様に、各可変ノズルの他側面には、第2ノズル軸が第1ノズル軸と同心上に一体形成されており、第1ノズル軸は、間隙調整プレートの対応する第2ガイド穴に回転可能に支持されている。そして、シュラウド側の適宜位置には、複数の可変ノズルを開く方向及び絞る方向(閉じる方向)へ同期して回転させる回転機構が設けられている。
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1から特許文献3に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−144615号公報
【特許文献2】特開2006−258108号公報
【特許文献3】特開2007−40251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、可変ノズルユニットのノズルサイド間隙(具体的には、シュラウドの対向面と可変ノズルの一側面との隙間と、間隙調整プレートの対向面と可変ノズルの他側面との隙間を併せた隙間)を小さくするほど、可変容量型過給機の効率(タービン効率)を高めることが知られている。一方、可変ノズルユニットのノズルサイド間隙を小さくすると、シュラウドの対向面と可変ノズルの一側面との間の摺動抵抗、及び間隙調整プレートの対向面と可変ノズルの他側面との間の摺動抵抗が増大する。そのため、複数の可変ノズルを開く方向へ同期して回転させる時(開動作時)と絞る方向(閉じる方向)へ同期して回転させる時(絞り動作時)との間において、同じノズル開度(複数の可変ノズルの開度)におけるタービン回転速度差(タービン回転速度のヒステリシス)が生じ、可変容量型過給機の制御性能を高いレベルまで確保することが困難になる。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の可変ノズルユニット等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明、可変容量型過給機におけるタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変する可変ノズルユニットにおいて、離隔対向した状態で一体的に連結され、少なくともいずれかに複数のガイド穴が周方向に等間隔に形成された一対のベースリングと、一対の前記ベースリングの間に周方向に等間隔に配設され、前記タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに回転可能であって、一側面が一方の前記ベースリングの対向面に摺動可能でかつ他側面が他方の前記ベースリングの対向面に摺動可能であって、少なくともいずれかの側面に一体形成されかつ対応する前記ガイド穴に回転可能に支持されるノズル軸を有した複数の可変ノズルと、複数の前記可変ノズルを開く方向及び絞る方向(閉じる方向)へ同期して回転させる回転機構(同期回転機構)と、を具備し、各ベースリングの対向面(一方の前記ベースリングの対向面、他方の前記ベースリングの対向面)、各可変ノズルの一側面、及び各可変ノズルの他側面に窒化処理が施されている一方、各ガイド穴の内周面に窒化処理が施されていない。
【0010】
第1の本発明によると、排気ガスの流量が少ない場合(換言すれば、エンジン回転数が低速域にある場合)には、前記回転機構によって複数の前記可変ノズルを絞る方向へ同期して回転させる。これにより、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスのガス流路面積(前記タービンインペラのスロート面積)を小さくして、排気ガスの流速を高めて、前記タービンインペラの仕事量を十分に確保する。
【0011】
また、排気ガスの流量が多い場合(換言すれば、エンジン回転数が高速域にある場合)には、前記回転機構によって複数の前記可変ノズルを開く方向へ同期して回転させる。これにより、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスのガス流路面積を大きくして、多くの排気ガスを供給する(前記可変ノズルユニットの通常の作用)。
【0012】
前記可変ノズルユニットの通常の作用の他に、各ベースリングの対向面、各可変ノズルの一側面、及び各可変ノズルの他側面に窒化処理が施されているため、各ベースリングの対向面、各可変ノズルの一側面、及び各可変ノズルの他側面の表面硬度を十分に高めることができる。これにより、一方の前記ベースリングの対向面と前記可変ノズルの一側面との間の摺動抵抗、及び他方の前記ベースリングの対向面と前記可変ノズルの他側面との間の摺動抵抗を十分に低減することができる(前記可変ノズルユニットの特有の作用)。
【0013】
第2の本発明、 エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する可変容量型過給機において、第1の本発明からなる可変ノズルユニットを具備したことを要旨とする。
【0014】
第2の本発明によると、第1の本発明による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一方の前記ベースリングの対向面と前記可変ノズルの一側面との間の摺動抵抗等を十分に低減できるため、複数の前記可変ノズルを開く方向へ同期して回転させる時(開動作時)と絞る方向へ同期して回転させる時(絞り動作時)との間で、同じノズル開度(複数の前記可変ノズルの開度)におけるタービン回転速度差(タービン回転速度のヒステリシス)を0に近づけて、前記可変容量型過給機の制御性能を高いレベルまで確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る可変ノズルユニットの特徴部分を示す図である。
図2図2は、図3における矢視部IIの拡大図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機の正断面図である。
図4図4は、図2におけるIV-IV線に沿った図であって、タービンインペラを省略してある。
図5図5は、図2におけるV-V線に沿った図であって、タービンインペラを省略してある。
図6図6(a)は、発明品において、ノズル開度に対するタービン回転速度及びヒステリシスの関係を示す図、図6(b)は、比較品において、ノズル開度に対するタービン回転速度及びヒステリシスの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図1から図5を参照して説明する。なお、図中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向をそれぞれ指している。
【0018】
図3に示すように、本発明の実施形態に係る車両用の可変容量型の可変容量型過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、可変容量型の可変容量型過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0019】
可変容量型過給機1は、ベアリングハウジング3を具備しており、ベアリングハウジング3内には、複数のラジアルベアリング5及び複数のスラストベアリング7が設けられている。また、複数のベアリング5,7には、前後方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0020】
ベアリングハウジング3の後側には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサ11が配設されており、コンプレッサ11の具体的な構成は、次のようになる。
【0021】
ベアリングハウジング3の後側には、コンプレッサハウジング13が設けられており、コンプレッサハウジング13内には、コンプレッサインペラ15が軸心(コンプレッサインペラ15の軸心、換言すれば、ロータ軸9の軸心)周りに回転可能に設けられている。また、コンプレッサインペラ15は、ロータ軸9の後端部に一体的に連結されたコンプレッサホイール17と、コンプレッサホイール17の外周面に周方向に間隔を置いて設けられた数枚のコンプレッサブレード19とを備えている。
【0022】
コンプレッサハウジング13におけるコンプレッサインペラ15の入口側(コンプレッサハウジング13の前側)には、空気を取入れる空気取入口21が形成されており、空気取入口21は、エアクリーナ(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング13との間におけるコンプレッサインペラ15の出口側には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路23が形成されており、ディフューザ流路23は、空気取入口21に連通してある。更に、コンプレッサハウジング13の内部には、コンプレッサスクロール流路25が形成されており、コンプレッサスクロール流路25は、ディフューザ流路23に連通してある。そして、コンプレッサハウジング13の適宜位置には、圧縮された空気を排出する空気排出口27が形成されており、空気排出口27は、コンプレッサスクロール流路25に連通してあって、エンジンの吸気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0023】
ベアリングハウジング3の前側には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービン29が配設されており、タービン29の具体的な構成は、次のようになる。
【0024】
図2及び図3に示すように、ベアリングハウジング3の前側には、タービンハウジング31が設けられており、タービンハウジング31は、ベアリングハウジング3の前側に締結ボルト(図示省略)を介して設けられた第1タービンハウジング33と、第1タービンハウジング33の前側に締結ボルト(図示省略)を介して設けられた第2タービンハウジング35を備えている。また、タービンハウジング31内には、タービンインペラ37が軸心(タービンインペラ37の軸心、換言すれば、ロータ軸9の軸心)周りに回転可能に設けられており、タービンインペラ37は、ロータ軸9の前端部に一体的に形成されたタービンホイール39と、タービンホイール39の外周面に周方向に間隔を置いて設けられた複数のタービンブレード41とを備えている。なお、前述のように、タービンインペラ37は、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ15と同じ回転速度であって、タービンインペラ37の回転速度のことをタービン回転速度という。
【0025】
タービンハウジング31(第1タービンハウジング33)の適宜位置には、排気ガスを取入れるガス取入口43が形成されており、ガス取入口43は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング31(第1タービンハウジング33)の内部には、タービンスクロール流路45が形成されており、タービンスクロール流路45は、ガス取入口43に連通してある。更に、タービンハウジング31(第2タービンハウジング35)におけるタービンインペラ37の出口側(タービンハウジング31の後側)には、排気ガスを排出するガス排出口47が形成されており、ガス排出口47は、タービンスクロール流路45に連通してあって、触媒(図示省略)に接続可能である。
【0026】
タービンハウジング31内には、タービンインペラ37側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変する可変ノズルユニット49がタービンインペラ37を囲むように設けられている。そして、可変ノズルユニット49の構成は、次のようになる。
【0027】
第2タービンハウジング35の後側には、第1ベースリングとしてタービンインペラ(複数のタービンブレード41の外縁)を覆うシュラウド(シュラウドリング)51が締結ボルト(図示省略)を介して設けられており、シュラウド51には、複数の第1ガイド穴53が周方向に等間隔に形成されている。また、シュラウド51には、第2ベースリングとして間隙調整プレート55が複数の連結ピン57を介して対向離隔した状態で一体的に連結されており、間隙調整プレート55には、複数の第2ガイド穴59が周方向に等間隔に形成されている。
【0028】
シュラウド51と間隙調整プレート55の間には、複数の可変ノズル61が等間隔に配設されており、各可変ノズル61は、タービンインペラ37の軸心に平行な軸心周りに回転可能である。また、各可変ノズル61の一側面(前側面)は、シュラウド51の対向面に摺動可能であって、各可変ノズル61の他側面(後側面)は、間隙調整プレートの対向面に摺動可能である。更に、各可変ノズル61の一側面には、第1ノズル軸63が一体形成されており、第1ノズル軸63は、シュラウド51の対応する第1ガイド穴53に支持されている。同様に、各可変ノズル61の他側面には、第2ノズル軸65が第1ノズル軸63と同心上に一体形成されており、第2ノズル軸65は、間隙調整プレート55の対応する第2ガイド穴59に支持されている。
【0029】
可変ノズルユニット49は、複数の可変ノズル61を開く方向及び絞る方向(閉じる方向)へ同期して回転させる回転機構(同期回転機構)67を備えている。
【0030】
具体的には、シュラウド51には、駆動リング69がタービンインペラ37の軸心周りに回転可能に設けられており、駆動リング69の内周面は、シュラウド51の外周面の前端側部分に摺動可能である。また、駆動リング69には、複数の矩形の同期用接続片71が取付ピン73のかしめによって周方向に等間隔に一体的に設けられており、駆動リング69の適宜位置には、矩形の駆動用接続片75が取付ピン77のかしめによって一体的に設けられている。そして、各可変ノズル61の第1ノズル軸63の先端部(前端部)には、U字形状の同期用伝達リンク79が一体的に連結されており、各同期用伝達リンク79の先端部は、対応する同期用接続片71に挟むように係合してある。更に、タービンハウジング31(第2タービンハウジング35)には、駆動軸81がタービンインペラ37の軸心に平行な軸心周りに回転可能に設けられており、駆動軸81の一端部(前端部)は、駆動軸81を回転させるステッピングモータ等のアクチュエータ(図示省略)に伝達レバー83等を介して連動連結されている。また、駆動軸81の他端部(後端部)には、U字形状の駆動用伝達リンク85が一体的に連結されており、駆動用伝達リンク85の先端部は、駆動用接続片75に挟むように係合してある。
【0031】
続いて、可変ノズルユニット49の特徴部分について説明する。
【0032】
シュラウド51の全表面のうち第1ガイド穴53の内周面を除く部位(全表面の大部分)には、窒化処理の一例として塩浴軟窒化処理(タフトライド処理)が施されており、換言すれば、塩浴軟窒化処理によって窒化物層が形成されている。また、シュラウド51の各第1ガイド穴53は、全表面が塩浴軟窒化処理済みのシュラウド51に対して機械加工を施すことによって形成されており、換言すれば、シュラウド51の各第1ガイド穴53の内周面に対しては塩浴軟窒化処理が省略されている。なお、シュラウド51の全表面の大部分に塩浴軟窒化処理が施される代わりに、シュラウド51の対向面(可変ノズル61の一側面が摺動する面)及び外周面の前端側部分(駆動リング69の内周面が摺動する面)にのみ塩浴軟窒化処理が施されるようにしても構わない。なお、図1中において、塩浴軟窒化処理を施した部位は、点ハッチング又は太線で示されている。
【0033】
間隙調整プレート55の全表面のうち第2ガイド穴59の内周面を除く部位(全表面の大部分)には、塩浴軟窒化処理が施されており、換言すれば、塩浴軟窒化処理によって窒化物層が形成されている。また、間隙調整プレート55の各第2ガイド穴59は、全表面が塩浴軟窒化処理済みの間隙調整プレート55に対して機械加工を施すことによって形成されており、換言すれば、間隙調整プレート55の各第2ガイド穴59の内周面に対して塩浴軟窒化処理が省略されている。なお、間隙調整プレート55の全表面の大部分に塩浴軟窒化処理が施される代わりに、間隙調整プレート55の対向面(可変ノズル61の他側面が摺動する面)にのみ塩浴軟窒化処理が施されるようにしても構わない。
【0034】
各可変ノズル61の全表面(第1ノズル軸63の外周面及び第2ノズル軸65の外周面を含む)には、塩浴軟窒化処理が施されており、換言すれば、塩浴軟窒化処理によって窒化物層が形成されている。なお、各可変ノズル61の全表面に塩浴軟窒化処理が施される代わりに、各可変ノズル61の一側面、各可変ノズル61の他側面、各可変ノズル61の第1ノズル軸63の外周面、及び各可変ノズル61の第2ノズル軸65の外周面にのみ塩浴軟窒化処理が施されるようにしても構わない。
【0035】
駆動リング69の全表面には、塩浴軟窒化処理が施されており、換言すれば、塩浴軟窒化処理によって窒化物層が形成されている。なお、駆動リング69の全表面に塩浴軟窒化処理が施される代わりに、駆動リング69の内周面にのみ塩浴軟窒化処理が施されるようにしても構わない。
【0036】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
ガス取入口43から取入れた排気ガスをタービンスクロール流路45を経由してタービンインペラ37の入口側から出口側(排気ガスの流れ方向から見て上流側から下流側)へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ15をタービンインペラ37と一体的に回転させることができる。これにより、空気取入口21から取入れた空気を圧縮して、ディフューザ流路23及びコンプレッサスクロール流路25を経由して空気排出口27から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給することができる。
【0038】
ここで、排気ガスの流量が少ない場合(換言すれば、エンジン回転数が低速域にある場合)には、アクチュエータによって駆動軸81を一方向に回転させることにより、駆動用伝達リンク85及び複数の同期用伝達リンク79を適宜に揺動させつつ、複数の可変ノズル61を絞る方向へ同期して回転させる。これにより、タービンインペラ37側に供給される排気ガスの流路面積(タービンインペラ37のスロート面積)を小さくして、排気ガスの流速を高め、タービンインペラ37の仕事を十分に確保する。
【0039】
また、排気ガスの流量が多い場合(換言すれば、エンジン回転数が高速域にある場合)には、アクチュエータによって駆動軸81を他方向に回転させることにより、駆動用伝達リンク85及び複数の同期用伝達リンク79を適宜に揺動させつつ、複数の可変ノズル61を開く方向へ同期して回転させる。これにより、タービンインペラ37側に供給される排気ガスの流路面積を大きくして、多くの排気ガスを供給する。(可変容量型過給機1の通常の作用)。
【0040】
可変容量型過給機1の通常の作用の他に、シュラウド51の対向面、間隙調整プレート55の対向面、各可変ノズル61の一側面、各可変ノズル61の他側面、各可変ノズル61の第1ノズル軸63の外周面、及び各可変ノズル61の第2ノズル軸65の外周面にそれぞれ塩浴軟窒化処理が施されているため、シュラウド51の対向面等の表面硬度を十分に高めることができる。これにより、シュラウド51の対向面と可変ノズル61の一側面との間の摺動抵抗、間隙調整プレート55の対向面と可変ノズル61の他側面との間の摺動抵抗、各可変ノズル61の第1ノズル軸63の外周面とシュラウド51の第1ガイド穴53の内周面との間の摺動抵抗、及び各可変ノズル61の第2ノズル軸65の外周面と間隙調整プレート55の第2ガイド穴59の内周面との間の摺動抵抗を十分に低減することができる。
【0041】
また、シュラウド51の外周面の前端側部分及び駆動リング69の内周面に対してそれぞれ塩浴軟窒化処理が施されているため、シュラウド51の外周面の前端側部分及び駆動リング69の内周面の表面硬度を十分に高めることができる。これにより、シュラウド51の外周面の前端側部分と駆動リング69の内周面との間の摺動抵抗を十分に低減することができる。
【0042】
更に、シュラウド51の各第1ガイド穴53の内周面及び間隙調整プレート55の各第2ガイド穴59の内周面に対してはそれぞれ塩浴軟窒化処理が省略されているため、シュラウド51の各第1ガイド穴53及び間隙調整プレート55の各第2ガイド穴59の酸化膨張を抑えて、各可変ノズル61の作動渋りを十分に低減することができる(可変容量型過給機1の特有の作用)。
【0043】
本発明の実施形態によれば、シュラウド51の対向面と可変ノズル61の一側面との間の摺動抵抗等を十分に低減できると共に、各可変ノズル61の作動渋りを十分に低減できるため、複数の可変ノズル61を開く方向へ同期して回転させる時(開動作時)と絞る方向へ同期して回転させる時(絞り動作時)との間で、同じノズル開度(複数の可変ノズル61の開度)におけるタービン回転速度差(タービン回転速度のヒステリシス)を0に近づけて、可変容量型過給機1の制御性能を高いレベルまで確保することができる。
【0044】
更に、発明者は、本発明の効果を確認するために、本発明の実施形態に係るタービン29を発明品として試作し、可変ノズルユニット49の構成部材(シュラウド51等)に塩浴軟窒化処理を施していない点のみが本発明の実施形態に係るタービン29と異なる比較例に係るタービン(図示量略)を比較品として試作し、発明品及び比較品について実際の運転条件を模擬して性能試験を行い、その結果をまとめると、図6(a)(b)に示すようになった。即ち、比較品については、同じノズル開度におけるタービン回転速度のヒステリシスが生じるのに対して、発明品については、同じノズル開度におけるタービン回転速度のヒステリシスがほぼ0になるという、予想外の顕著な効果が確認された。
【0045】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、次のように種々の態様で実施可能である。即ち、第1ノズル軸63及び第2ノズル軸65を有した両端支持タイプの可変ノズル61を具備した可変ノズルユニット49にだけでなく、第1ノズル軸63及び第2ノズル軸65のうちのいずれかのノズル軸を有した片持ち支持タイプの可変ノズルを具備した可変ノズルユニットに適用しても構わない。また、可変ノズルユニット49の構成に用いられた塩浴軟窒化処理をガス窒化処理等の別の窒化処理に変更しても構わない。更に、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0046】
1 可変容量型過給機
3 ベアリングハウジング
9 ロータ軸
11 コンプレッサ
13 コンプレッサハウジング
15 コンプレッサインペラ
29 タービン
31 タービンハウジング
33 第1タービンハウジング
35 第2タービンハウジング
37 タービンインペラ
49 可変ノズルユニット
51 シュラウド
53 第1ガイド穴
55 間隙調整プレート
57 連結ピン
59 第2ガイド穴
61 可変ノズル
63 第1ノズル軸
65 第2ノズル軸
67 回転機構
69 駆動リング
71 同期用接続片
73 取付ピン
75 駆動用接続片
77 取付ピン
79 同期用伝達リンク
81 駆動軸
83 伝達レバー
85 駆動用伝達リンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6