(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のブレーキ操作装置は、レバー比増加の効果によって倍力装置の失陥時にも大きな制動力が得られ、安価なバックアップ装置として有用である。しかしながら、その一方で、倍力装置が正常な通常制動時にもレバー比変更機構が作動してレバー比が変化することから、通常制動時のブレーキペダルの操作感覚に違和感を与えると言う問題や、倍力装置の倍力比がレバー比の変化によって変動して非線形になるといった問題を有している。
【0005】
この発明は、ブレーキペダルレバーのレバー比が必要なときに変化して人力のみで大きなブレーキの効きを得る機能を付与しながら、倍力装置が正常に作動するときのブレーキ操作の違和感や同装置の倍力特性の変動の問題を生じさせないようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、この発明においては、倍力装置に異常が発生したときにのみレバー比変更機構によるレバー比の増幅がなされるようにした。その動作を実現するために、
支持軸を支点にして回動可能なブレーキペダルレバーと、そのブレーキペダルレバーに投入される入力fとブレーキペダルレバーの出力pとの比:p/fを変化させるレバー比変更機構とを備えるブレーキ操作装置と、前記ブレーキペダルレバーの出力pを受けて制動力を発生させるブレーキ作動装置とを有し、前記ブレーキ作動装置に、そのブレーキ作動装置が発生させる制動力を前記ブレーキペダルレバーの出力pに応じた値に増幅する倍力装置が含まれた車両用ブレーキ装置において、
前記倍力装置の作動状態が正常か否かを判定して判定結果を電気信号として出力する異常判定装置と、その異常判定装置からの信号に基づいて前記レバー比変更機構の作動可能状態と作動不可状態とを切替える切替え機構を設けた。
【0007】
この発明で言う倍力装置は、ブレーキ作動装置が発生させる制動力を、人力のみで発生させ得る制動力以上に増幅させる装置を指す。車両用ブレーキ装置の倍力装置として、ブレーキペダルレバーの出力を助勢する真空倍力装置、液圧倍力装置、或いは電動倍力装置があるが、これ等のほかに、ホイールシリンダに供給される液圧を電子制御がなされる調圧装置でマスタシリンダが発生させる液圧よりも高圧化してこれにより増幅させた制動力をブレーキ作動装置から発生させるようにするものも、この発明で言う倍力装置に含まれる。
【0008】
この車両用ブレーキ装置は、前記レバー比変更機構が、前記ブレーキペダルレバーの所
定位置に回転可能に組み付けられ、回転中心の支軸から支軸径方向に所定量離間した部位
に出力部材が連結される第1歯車と、前記ブレーキペダルレバーの回動支点の支持軸と同
軸上において固定部材に組み付けられ、前記第1歯車と係合して前記ブレーキペダルレバ
ーの回動に伴って前記第1歯車を前記支持軸回りに転動させる第2歯車とを備え、
前記切替え機構が、前記固定部材と前記第2歯車との間に設けられ、前記第2歯車を前
記固定部材から切り離して回転可能となすことで前記レバー比変更機構を作動不可状態と
なし、さらに、前記第2歯車を前記固定部材に接続することでその第2歯車の回転を阻止
して前記レバー比変更機構を作動可能状態となすように構成されたもの
にする。
【0009】
前記切替え機構は、前記固定部材に対する前記第2歯車の固定と、その固定の解除(切り離し)を電磁クラッチで行うものであってもよいが、ブレーキペダルレバーの回動支点の支持軸と同軸上に配置する軸部材を前記固定部材および前記第2歯車の一方に設けるとともに、前記軸部材を挿通する軸穴を他方に設け、前記切替え機構を、前記軸部材と前記軸穴との間に設置するコイルクラッチと、前記異常判定装置からの信号に基づいて前記コイルクラッチによる前記固定部材と前記第2歯車との接続および切り離しの状態を切替えるソレノイドと、で構成したものが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明の車両用ブレーキ装置は、倍力装置が正常か否かを判定する異常判定装置と、その異常判定装置からの信号に基づいて前記レバー比変更機構の作動可能状態と作動不可状態を切替える切替え機構を備えており、その切替え機構を利用して倍力装置が正常に作動するときには前記レバー比変更機構を作動不可状態にし、倍力装置に異常が生じたときには、前記異常判定装置からの異常判定信号に基づいて前記レバー比変更機構を作動可能状態に切替えることができる。
【0011】
これにより、倍力装置が正常なときに実施される制動ではレバー比が一定に保たれ、レバー比変化に起因する通常制動時のブレーキペダルの操作感覚の違和感や、倍力装置による倍力比がレバー比の変化によって非線形になる問題がなくなる。
【0012】
また、倍力装置に異常が生じてその倍力装置による制動力の増幅がなされない状況下で制動が行われると、レバー比変更機構が作動してレバー比が変化し、レバー比増加の効果によって人力のみで大きな制動力が得られる。従って、バックアップ装置としての機能は特許文献1のブレーキ操作装置と同様に確保される。
【0013】
倍力装置の作動状態が正常か否かを判定する異常判定装置は、制動力の電子制御機能を備えた車両用ブレーキ装置の場合、その装置が備える電子制御装置(ECU)に論理回路として組み込むことができ(予め組み込まれている異常判定回路を利用することも可)、コスト負担は小さい。
【0014】
また、レバー比変更機構は、単純構造の機械的機構でよく、前記切替え機構も、コイルクラッチや電磁クラッチを用いて構成することができる。従って、それらの機構によるコストアップも抑えられ、安価かつ安全で、正常時のブレーキペダルの操作感や倍力装置の倍力特性の安定性にも優れた車両用ブレーキ装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の車両用ブレーキ装置の実施の形態を、添付図面の
図1〜
図7に基づいて説明する。
図1及び
図2は、この発明の車両用ブレーキ装置に採用するブレーキ操作装置の一例の概要を表している。
【0017】
図示のブレーキ操作装置10は、ブレーキペダルレバー11と、出力部材12と、レバー比変更機構20と、切替え機構30(
図2参照)を組み合わせて構成されている。
図1の60は倍力装置である。この倍力装置60は、出力部材12を介して入力されるブレーキ操作力をそのブレーキ操作力に応じた値に増幅してマスタシリンダに加え、その力でマスタシリンダを作動させる。
【0018】
ブレーキペダルレバー11は、レバー部11aとペダル11bを有しており、レバー部11aの上端部が、回動支点になる支持軸13を用いて車体と一体の固定部材(例えばブラケット)14に回動可能に組み付けられる。
図1の15は、固定部材14に設けたストッパであり、ブレーキペダルレバー11は、ブレーキ操作がなされていないときには、復帰スプリング(図示せず)の力でそのストッパ15に受け止められる位置(原位置)まで戻される。
【0019】
出力部材12は、プッシュロッド12aと連結具(クレビス)12bとからなる。プッシュロッド12aは、先端部が倍力装置60の入力部に揺動可能に連結され、後端部が連結具12bを介してブレーキペダルレバー11に つながれる。
【0020】
レバー比変更機構20は、第1歯車21と、固定部材14に組み付けられる第2歯車(図示のそれはセクター歯車)22を備えている。図示の第1歯車21と第2歯車22は、どちらも平歯車であるが、この平歯車に代えてはすば歯車や、やまば歯車などの他タイプの歯車を用いることもできる。
【0021】
第1歯車21は、回転中心になる支軸23を用いてブレーキペダルレバー11の所定位置に回転可能に組み付けられ、その第1歯車21の支軸23から支軸径方向に所定量離間した部位に、出力部材12の後端部が連結軸24を用いて連結される。
【0022】
第2歯車22は、支持軸13と同軸上において固定部材14に相対回転可能に組み付けられ、さらに、後述する切替え機構30によって固定部材14に固定してその固定部材14との相対回転を止め得るように組み付けられている。
【0023】
第2歯車22と第1歯車21は、互いの歯が噛み合っている。そのために、第2歯車22が固定部材14に固定された状態でブレーキペダルレバー11が回動操作されると、第1歯車21が支軸23を中心として回転しながら第2歯車22の外周上、すなわち支持軸13回りを転動して出力部材12を押し動かす。
【0024】
このときに、レバー比(ブレーキペダルレバー11の出力pと、ペダル11bに加えられる入力fとの比:p/f)が
図4に実線で示すように変化し、そのために、ブレーキペダルレバー11のストロークが限られていても、そのストローク範囲内において人力のみで大きな制動力を発生させることができる。
【0025】
なお、レバー比変更機構20によるレバー比変化のメカニズムについては、前掲の特許文献1が詳しく述べているので、ここでの詳細説明は省く。
【0026】
図1の25は、第2歯車22に設けたストッパである。このストッパ25は、ブレーキペダルレバー11の動きに第2歯車22が追従して回転するときに、支軸23に働く力p(ブレーキペダルレバー11の出力)と連結軸24に働く反力Fの偶力で第1歯車21が回転して第2歯車22上を移動するのを止める。そのために、ブレーキペダルレバー11の回動に伴って第2歯車22が回転できる状況のときには、第1歯車21と第2歯車22の相対位置が保持され、レバー比の変化が起こらない。
【0027】
第2歯車22が固定部材14に固定されて動かない状態と、固定部材14から切り離されてブレーキペダルレバー11に対する追従回転が許容される状態の切替えが、切替え機構30によってなされる。
【0028】
図2に示した切替え機構30は、コイルクラッチ31と、そのコイルクラッチ31を駆動するソレノイド32を組み合わせてなる。
【0029】
固定部材14に、支持軸13の外周に同心的に配置される軸部材(図のそれは中空軸)33を設け、その軸部材33を第2歯車22に設けた軸穴34に挿入して軸部材33と軸穴34の内面間にコイルクラッチ31を組み付け、そのコイルクラッチ31の接続状態と切り離し状態を第2歯車22に取り付けたソレノイド32で切替えるようにしている。ソレノイド32の取り付け相手は、図示の第2歯車22が望ましい。ソレノイド32を第2歯車22に取りつけることで、第2歯車22がブレーキペダルレバー11の動きに追従して回転するときにもコイルクラッチ31の他端とソレノイドの位置関係を保つことができる。
【0030】
コイルクラッチ31は、コイル31aを有する。そのコイル31aの一端を
図3に示すように第2歯車22に係止させ、そのコイル31aの他端をソレノイド32の可動子32aで周方向に押し動かすようにしている。
【0031】
コイル31aは、軸部材33の外周に締代を持って装着されており、ソレノイド32がオフのときには、そのコイル31aの締付け力によって第2歯車22が軸部材33(すなわち、固定部材14)に回転不可に固定される。また、ソレノイド32をオンにしてコイル31aの他端をソレノイド32の可動子32aで押し動かすとコイル31aが拡径して軸部材33に対する締付けが緩められ、これにより、クラッチによる連結が解かれて第2歯車22が軸部材33上で回転可能となる。
【0032】
このように、ソレノイド32をオン、オフさせることで、固定部材14に対する第2歯車22の固定と切り離し(固定の解除)の切替えを行なうことができる。
【0033】
固定部材14から切り離された第2歯車22は、ブレーキペダルレバー11の動きに追従して回転する。従って、第2歯車22が固定部材14から切り離されているときには第1歯車21と第2歯車22との間に相対位置の変化が起こらず、
図4に点線で示すように、レバー比が一定に保たれて出力部材12が押し動される。そのために、ブレーキペダルの操作感覚に違和感が生じることがなくなり、倍力装置60による倍力比の変動も起こらない。
【0034】
なお、コイルクラッチ31は、軸部材33を第2歯車22に、軸穴34を固定部材14にそれぞれ設けてその2者間に設置しても構わない。また、そのコイルクラッチに代えて軸部材33と第2歯車22間に電磁クラッチを設け、その電磁クラッチで第2歯車22と固定部材14の接続、切り離しを行なう構造でも発明の目的は達成される。
【0035】
上記ブレーキ操作装置10を用いて構成したこの発明の車両用ブレーキ装置の一例を
図5〜
図7に示す。
【0036】
図5の車両用ブレーキ装置は、ペダル11bに加えられたブレーキ操作力(入力)を所定のレバー比に基づいて増幅して出力する上記ブレーキ操作装置10と、ブレーキペダルレバー11の出力を受けて制動力を発生させるブレーキ作動装置40を有する。
【0037】
ブレーキ作動装置40は、倍力装置60と、その倍力装置60によって助勢された力で駆動されてブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ41と、そのマスタシリンダの出力をモニタする圧力センサ42と、マスタシリンダ41から供給される液圧で車両の車輪に制動力を発生させるホイールシリンダ43と、マスタシリンダ41とホイールシリンダ43との間に介在する調圧装置70と、その調圧装置70及び
図2で説明した切替え機構30を制御する電子制御装置(ECU)44と、異常判定装置45と、モータ駆動回路46と、モータ駆動用の電源(バッテリ)47を有する。
【0038】
図示の倍力装置60は、モータ61を駆動源とする電動式の倍力装置である。
図5には、それを簡略化して示した。この電動式の倍力装置60は、モータ61の回転を動力伝達手段(図のそれは噛み合い歯車)62経由で定位置回転可能に設けられたブッシュ63に伝達し、そのブッシュ63を回転させる。ブッシュ63の内径には、中空ボールねじ64が、ボール65を介して螺合しており、ブッシュ63の回転によってその中空ボールねじ64に前進推力が生じる。その前進推力が出力ロッド66に加わる。
【0039】
出力ロッド66には、出力部材12経由でブレーキペダルレバー11の出力が加えられており、その力に中空ボールねじ64の前進推力が助勢力として加算され、助勢された力でマスタシリンダ41が駆動されてそのマスタシリンダがブレーキペダルレバー11に加えられる入力に応じたブレーキ液圧を発生させる。
【0040】
そのブレーキ液圧がホイールシリンダ43に供給されることで、ブレーキペダルレバー11の出力に応じた制動力が発生する。
【0041】
図示の調圧装置70は、還流式と称されるものであって、ホイールシリンダ43の液圧を流出させる減圧用電磁弁71と、ホイールシリンダ43に液圧を導入する増圧用電磁弁72と、減圧用電磁弁71経由でホイールシリンダ43から流出させたブレーキ液を一時的に取り込む低圧液溜め73と、ホイールシリンダ43から流出させたブレーキ液を汲み上げてマスタシリンダ41からホイールシリンダ43に至る液圧経路48に還流させるポンプ74と、そのポンプ74を駆動するモータ75を組み合わせた既知の装置である。
【0042】
この調圧装置70は、ABS(アンチロック制御)やESC(車両安定化制御)の制御機能を付与する目的で設けられる。この種の調圧装置を採用した車両用ブレーキ装置は、調圧装置に調圧制御の指令を出す電子制御装置44を備えており、異常判定装置45は、その電子制御装置44に論理回路としてインプットされている。
【0043】
この種の調圧装置を設けた車両用ブレーキ装置は、ブレーキペダルレバー11に加えられるブレーキ操作力や操作量を検出する荷重センサやストロークセンサ、さらには、マスタシリンダの出力液圧を検出する圧力センサ(図の42)などを有している。
【0044】
異常判定装置45は、それらのセンサから得られる入力情報信号と出力情報信号の相関が取れているか{例えば、荷重センサやストロークセンサで検知した入力に対して規定通りの出力(ブレーキ液圧)が得られているか否か}どうかをみて倍力装置60に異常があるか否かを判定する。
【0045】
この種の調圧装置を設けた車両用ブレーキ装置には、構成要素の失陥を検出する異常判定回路が組み込まれていることが多い。その場合には、その異常判定回路をそのままこの発明の異常判定装置45として利用することができる。
【0046】
このように構成した
図5の車両用ブレーキ装置は、倍力装置60が正常なときには、レバー比変更機構20の第2歯車22が切替え機構30によって固定部材14から切り離されており、その第2歯車22がブレーキペダルレバー11の動きに追従して回転する。そのために、レバー比変更機構20の第1歯車21と第2歯車22間に相対変位が起こらず、レバー比が一定に保たれる。
【0047】
また、異常判定装置45によって倍力装置60に異常があることが検知されると、レバー比変更機構20の第2歯車22が切替え機構30によって固定部材14に固定される。そのために、第1歯車21が第2歯車22上を転動し、ブレーキペダルレバー11の回動が進行するにつれてレバー比が大きくなり、人力のみで、ブレーキペダルレバー11がストローク終端に達するまでの間に大きな制動力を発生させることができる。
【0048】
なお、ブレーキペダルレバー11がストローク途中まで回動したときに異常判定装置45による倍力装置60の異常判定がなされたときには、その時点で切替え機構30によって第2歯車22が固定部材14に固定され、その後にレバー比変更機構20がレバー比を増加させる。従って、ペダルストロークとレバー比の関係は、
図5の通りになるとは限らない。
【0049】
図には示していないが、ブレーキ操作装置や倍力装置には、ブレーキペダルレバー11に操作反力を加えて操作フィーリングを作り出すストロークシミュレータを備えさせることがなされている(例えば、特2010−184699号公報参照)。そのストロークシミュレータを備えるものは、レバー比変更機構20が倍力装置の失陥などとは無関係に常時作動する構成であると、ストロークシミュレータで作り出す操作フィーリングが崩れる。従って、この発明は、ストロークシミュレータを備えるブレーキ装置においてその有用性が特に顕著に現われる。
【0050】
図5のブレーキ装置に設けた倍力装置60は、真空倍力装置や液圧倍力装置に置き換えることができる。また、電動倍力装置、真空倍力装置、液圧倍力装置は、ブレーキ操作力に助勢力を加えることでブレーキ作動装置が発生させる制動力を人力のみで発生させ得る制動力以上に増大させるが、この発明は、ホイールシリンダに供給されるブレーキ液圧を、動力駆動のポンプを有する調圧装置で調圧してブレーキ作動装置が発生させる制動力を人力のみで発生させ得る制動力以上に増大させるブレーキ装置にも好適に利用することができる。
【0051】
電子制御がなされる調圧装置を倍力装置として機能させるブレーキ装置の一例を、
図6、
図7に示す。
図6のブレーキ装置は、いわゆるバイワイヤ方式の装置であって、ブレーキペダルレバー11とレバー比変更機構20を有するブレーキ操作装置10と、ブレーキ作動装置40を有する。ブレーキ操作装置10には、ブレーキペダルレバー11の操作量を検出するストロークセンサ16を含ませている。
【0052】
また、ブレーキ作動装置40には、装置が正常な状態でブレーキペダルレバー11が操作されたときにマスタシリンダ41からの液圧供給経路を遮断するカット弁49と、そのカット弁よりも上流側でマスタシリンダ41に連通させるストロークシミュレータ50と、マスタシリンダ41とストロークシミュレータ50の接続状態を切替える電磁開閉弁51を含ませている。
【0053】
さらに、調圧装置70は、ポンプ74を有する液圧源に蓄圧器76とリリーフ弁77を含ませ、ポンプ74がリザーバ52内のブレーキ液を汲み上げてホイールシリンダ43に供給するものにしている。また、減圧用電磁弁71と増圧用電磁弁72は、リニア制御弁(比例電磁弁)を採用している。図中42
−1は、蓄圧器76の圧力を検出する圧力センサ、42
−2は、ホイールシリンダ43の液圧を検出する圧力センサ、78は、ホイールシリンダ43からの液圧排出路に配置するチェック弁である。
【0054】
電子制御装置44には、
図5と同様の異常判定装置(図示せず)が作りこまれている。このバイワイヤ式のブレーキ装置では、調圧装置70を倍力装置として働かせてブレーキ作動装置40が発生させる制動力を、人力のみで発生させ得る制動力以上に増大させることがなされている。また、調圧装置70が失陥したときには、カット弁49を開弁したままにしてマスタシリンダ41で発生させたブレーキ液圧をホイールシリンダ43に供給することがなされている。
【0055】
そのために、例えば、ポンプ74が失陥すると調圧装置70による倍力機能が発揮されない。そのような状況のときに、バックアップとして、レバー比変更機構20が作動してマスタシリンダ41で発生させるブレーキ液圧がレバー比の増大によってレバー比変更機構20の無い装置に比べて高められる。
【0056】
図7のブレーキ装置は、ブレーキ作動装置40に含ませる還流式の調圧装置70に、ポンプ74が汲み上げたブレーキ液の還流点よりも上流側において液圧経路48にチェック弁80を伴った電流制御による流量制御の可能なリニア制御弁79を設け、ポンプ74が低圧液溜め73及びマスタシリンダ41経由でリザーバ52からもブレーキ液を汲み上げられるようにしたものであって、リニア制御弁79の弁部の開度調節によって、そのリニア制御弁79の上流側と下流側に液圧差を作り出すことができる。
【0057】
この
図7のブレーキ装置も、ホイールシリンダ43に供給される液圧をリニア制御弁79で制御してマスタシリンダ41で発生させた液圧よりも大きくすることができ、調圧装置70が倍力装置の機能を有している。従って、ポンプ74の失陥などによって調圧装置70による制動力の増幅がなされないときのバックアップ装置として、レバー比変更機構20が効力を発揮する。
【0058】
そのレバー比変更機構20は、調圧装置70が正常に作動してその装置による制動力の増幅がなされるときには既述の切替え機構(
図2の30)の働きによって作動を停止し、従って、正常時にレバー比変更機構20が作動することによるブレーキ操作のフィーリングの悪化と調圧装置70の増幅特性の変動は起こらない。