特許第5796432号(P5796432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796432
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】成型体及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20151001BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20151001BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   G02B5/22
   B32B7/02 103
   G02B5/26
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-202763(P2011-202763)
(22)【出願日】2011年9月16日
(65)【公開番号】特開2012-88694(P2012-88694A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2014年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2010-211625(P2010-211625)
(32)【優先日】2010年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄二
(72)【発明者】
【氏名】合田 亘
(72)【発明者】
【氏名】長田 俊一
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−056011(JP,A)
【文献】 特開2003−004942(JP,A)
【文献】 特開2004−198617(JP,A)
【文献】 特開2001−272274(JP,A)
【文献】 特開2008−160115(JP,A)
【文献】 特表平08−502597(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/110090(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
B32B 7/02
G02B 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光反射率が15%以上のポリマー多層積層フィルムと着色層を含んだフィルムであって、50MHz〜15GHz及び40GHz〜110GHzの周波数範囲における最大電磁波損失が10db以下であり、前記着色層の一部が可視光を遮断し赤外光を透過し、前記着色層の少なくとも1つの層がペリレン系黒色顔料を含むことを特徴とするフィルムと、赤外光及び電磁波を透過する支持体とを積層されてなることを特徴とする成型体
【請求項2】
前記着色層とは反対の面側に若しくは前記着色層に重ねて前記着色層とは組成が異なる第二の着色層が積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の成型体
【請求項3】
前記フィルムが結晶性の熱可塑性樹脂からなる層(A層)と非晶性の熱可塑性樹脂からなる層(B層)とが交互にそれぞれ50層以上積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の成型体。
【請求項4】
前記フィルムと前記支持体との間に接着層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の成型体。
【請求項5】
着色層の一部が可視光を遮断し赤外光を透過する着色層において、前記着色層の一部の可視光を遮断し赤外光を透過する部分とそれ以外の部分との色差が20以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の成型体。
【請求項6】
外面に赤外光集光機能を持った基材が積層されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の成型体。
【請求項7】
外面に赤外光拡散機能を持った基材が積層されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の成型体。
【請求項8】
前記ポリマー多層積層フィルムの1050nm〜1200nmの波長範囲における赤外線平均反射率が50%以上であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の成型体。
【請求項9】
赤外線発光部を備えた赤外線遠隔操作機器の該赤外線発光部が外観上視認されないよう請求項1〜8の何れかに記載の成型体が配置された構成を有する赤外線遠隔操作機器。
【請求項10】
赤外線受光部を備えた赤外線遠隔操作機器の該赤外線受光部が外観上視認されないよう請求項1〜8の何れかに記載の成型体が配置された構成を有する赤外線遠隔操作機器。
【請求項11】
赤外線発光部と赤外線受光部を備えた小型通信機器の該赤外線受発光部と赤外線受光部が外観上視認されないよう請求項1〜8の何れかに記載の成型体が配置された構成を有する電子機器。
【請求項12】
電子機器が小型通信機器である請求項11の電子機器。
【請求項13】
赤外線受光部を備えた赤外線感知器の該赤外線受光部が外観上視認されないよう請求項1〜8の何れかに記載成型体が配置された構成を有する赤外線感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線透過能を有したフィルム及び成型体、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線通信は、家電製品のリモコンによる操作、携帯電話やノートパソコンによる情報伝達、3Dテレビ用シャッターメガネの操作など、様々な用途で用いられている。赤外線受発光部を保護する観点から、カバーパネルが設置されている。しかし、カバーパネルが透明である場合、赤外線受発光部が外部から視認されてしまい、意匠性に影響がある。そこで、赤外線受発光部が見えなくなるように、可視光を遮断し赤外光を透過する黒色または暗色の色素を含んだカバーパネルが用いられてきた。しかし、この方法では黒色または暗色しか用いることができないため、周囲と色が異なるとカバーパネルが目立ち、意匠性が悪くなる問題があった。
【0003】
この問題に対して、In、Sn、Zn等を島状に蒸着することによって赤外光を透過しつつ金属調の意匠性を持った赤外線透過カバーパネルが提案されている(特許文献1)。しかし、金属を蒸着する方法では可視光の反射率スペクトルは蒸着厚みと材料で決まるため、任意に制御することが難しく、自由に意匠性を施すことは困難であった。
【0004】
また、金属酸化物を蒸着した多層膜を用いて可視光の反射率スペクトルを任意に制御し、意匠性を向上させた赤外線受発光部が提案されている(特許文献2)。一般的に金属酸化物の多層膜は蒸着回数を減らすために、屈折率差の大きな物質が用いられる。しかし、屈折率差が大きくなると、多層膜中の各層それぞれの反射率スペクトルの幅が広くなる問題がある。そのため、特定の色のみを反射するような、急峻な反射率スペクトルを作り出すことは非常に困難である。
【0005】
また、携帯電話やノートパソコン等では電磁波を用いた通信も行なわれるため、カバーパネルが電磁波を透過しない場合、機器の設計や意匠性に制限が加わる。そのため、電磁波を透過するカバーパネルが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−4526号公報
【特許文献2】特開2006−165493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、かかる問題を解決するべく、意匠性の自由度が高く、可視光を遮断し、電磁波を透過する赤外線透過積層フィルム及び成型体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は次のような構成を有する。
【0009】
すなわち、可視光反射率が15%以上のポリマー多層積層フィルムと着色層を含んだフィルムであって、50MHz〜15GHz及び40GHz〜110GHzの周波数範囲における最大電磁波損失が10db以下であり、前記着色層の一部が可視光を遮断し赤外光を透過することを特徴とするフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、意匠性の自由度が高く、電磁波を透過する赤外線透過積層フィルム及び成型体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】高屈折率層の屈折率と低屈折率層の屈折率の比に対する、反射率スペクトルの幅を説明する図
図2】本発明の赤外線透過積層フィルムの使用態様の例
図3】本発明の赤外線透過積層フィルムに着色層を積層した代表的な実施形態
図4】本発明の赤外線透過積層フィルムに支持体を積層した代表的な実施形態
図5】誤作動を防止するためのポリマー多層積層フィルムの反射スペクトルを説明する図
図6】実施例1、実施例2、実施例3におけるポリマー多層積層フィルムの反射スペクトル
図7】実施例4におけるポリマー多層積層フィルムの反射スペクトル
図8】実施例10におけるポリマー多層積層フィルムの反射スペクトル
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について図面を参照しつつ詳細に述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の態様は当然本発明の範囲に含まれる。
【0013】
本発明の赤外線透過積層フィルム及び成型体は、可視光反射率が15%以上のポリマー多層積層フィルムと着色層からなるフィルムであって、50MHz〜15GHz及び40GHz〜110GHzの周波数範囲における最大電磁波損失が10db以下であり、前記着色層の一部が可視光を遮断し赤外光を透過することが必要である。
【0014】
本発明に用いるポリマー多層積層フィルムは、高分子の層を多数積層して干渉反射性を発現させるフィルムが挙げられ、例えば、特開2007−307893号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートからなる層とポリエチレンテレフタレートの共重合体からなる層とが交互にそれぞれ50層以上積層されたフィルムが例として挙げられる。本発明に用いるポリマー多層積層フィルムは、熱可塑性樹脂からなる層(A層)とA層を構成する樹脂とは異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂からなる層(B層)とが交互にそれぞれ50層以上積層されていることが好ましく、A層は結晶性、B層は非晶性の熱可塑性樹脂であることがより好ましい。光学的性質が異なるとは、屈折率が異なることをいい、それぞれの樹脂の面内方向の屈折率において異なることが望ましく、その結果該2種の樹脂層の界面において光が反射されるようになり、多層化することで干渉反射作用が表れる。
【0015】
本発明に用いるポリマー多層積層フィルムに用いる熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)などのポリオレフィン、シクロオレフィンとしては、ノルボルネン類の開環メタセシス重合,付加重合,他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらの中で、強度・耐熱性・透明性の観点から、特にポリエステルを用いることが好ましく、ポリエステルとしては芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも好ましくはテレフタル酸と2,6ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
【0016】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0017】
上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などを用いることが好ましい。
【0018】
本発明においては、1種は結晶性樹脂を用い、もう1種は非晶性樹脂を用いることが好ましいが、結晶性樹脂と非晶性樹脂を用いて作製されたシート状物を、面内方向の一軸延伸または二軸延伸を行い、必要があれば熱処理を行う。このような処理を行なうことで、結晶性樹脂層と非晶性樹脂層の屈折率の差が大きくなり、該2種の樹脂層の界面における反射率が向上する。層間密着性や、高精度で積層構造が実現しやすい観点から、前記2種類の熱可塑性樹脂は同一の基本骨格を含むことが好ましい。ここでいう基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合は、エチレンテレフタレートが基本骨格である。また別の例としては、一方の樹脂がポリエチレンの場合、エチレンが基本骨格である。
【0019】
基本骨格を同じとして、異なる光学的性質を具備させるには、共重合体を利用することが望ましい。すなわち、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合、他方の樹脂は、テレフタル酸残基および/またはエチレングリコール残基の一部を他の二価の有機基に置き換えた樹脂をもう一方の樹脂として用いるような態様である。他の成分を用いる割合(共重合量ということがある)としては、屈折率差を獲得する必要性から10%以上が好ましく、一方、層間の密着性や、熱流動特性の差が小さいため各層の厚みの精度や厚みの均一性に優れることから90%以下が好ましい。さらに好ましくは15%以上、80%以下である。前記のとおり、他の成分に置き換えることで一方の熱可塑性樹脂は結晶性、他方の熱可塑性樹脂が非晶性を示すことが望ましいことはいうまでもない。本発明に用いるポリマー多層積層フィルムにおいて積層数を増やすことは、高い光反射性能を達成できるので、100層以上とすることが望ましく、より好ましくは400層以上、さらに好ましくは800層以上である。積層数は多いほど高い反射率を実現でき、また、後述する層厚みの調整と加えて反射帯域幅を拡げることや、様々な反射スペクトルを得ることができるが、積層装置の大型化の観点から上限としては5000層程度である。
【0020】
本発明の赤外線透過積層フィルム及び成型体は、ポリマー多層積層フィルムの可視光反射率が15%以上であることが必要である。ここで可視光反射率とは波長380nmから780nmまでの範囲の光の平均反射率である。可視光反射率が15%以上であることにより、第一の着色層の色に光沢感を持たせることができる。好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上である。
【0021】
可視光反射率を調整する方法は、A層とB層の樹脂組み合わせ、積層数、層厚み分布、製膜条件(例えば延伸倍率、延伸速度、延伸温度、熱処理温度、熱処理時間)の調整等が挙げられる。
【0022】
屈折率の異なる二種の樹脂の積層フィルムの反射率スペクトルの幅は以下の式(1)〜(3)で表すことができる。
【0023】
【数1】
【0024】
ここでΔλは反射率スペクトルの幅、λは反射率スペクトルの中心波長、nは高屈折率層の屈折率、nは低屈折率層の屈折率である。600nmを反射率スペクトルの中心波長とした場合の、高屈折率層の屈折率と低屈折率層の屈折率の比n/nに対する、反射率スペクトルの幅を図1に示す。一般的にポリマー多く積層された構成では、n/nは1.3以下である。ポリマー多層は、n/nが小さくなり高屈折率層と低屈折率層の界面での反射率が低下しても、積層数を多くすることで反射率を調整することは容易である。そのため、1.2以下、さらには1.1以下であることも可能であり、下限としては積層数増加の問題から1.02である。そのため、ポリマー多層では反射率スペクトルの幅は100nmから7.6nmまでの範囲を取ることができ、さまざまな色調(例えば特定の色のみを反射する)を持つことができる。一方、無機材料多層のような蒸着等によって多層化する場合は、蒸着回数を減らしてコストを削減する観点から、n/nを大きくして高屈折率層と低屈折率層の界面での反射率を大きくしている。例えば高屈折率層としてZrO(屈折率2.04)、低屈折率層としてSiO(屈折率1.46)を用いた場合、n/nは1.4であり、反射率スペクトルの幅は130nmである。無機材料多層は高分子多層のような数十層さらには数百層以上といった積層数にすることは困難であり、n/nを小さくすることはできず、反射率スペクトルの幅は広くなり、特定の色のみを反射することは困難である。
【0025】
本発明のフィルムは、50MHz〜15GHz及び40GHz〜110GHzの周波数範囲における最大電磁波損失が10db以下であることが必要である。携帯電話は800MHz帯、1.5GHz帯、1.9GHz帯、2.0GHz帯の電磁波を、無線LANでは2.4〜2.5GHz帯、5〜5.8GHz帯、ワイヤレスUSBでは3.1GHz〜11GHz帯を、ミリ波レーダーでは60Hz帯、76GHz帯が使用されており、その他の周波数帯においても使用又は使用予定がある。一般的に赤外線通信と電磁波通信両方を行なう機器は多数存在するため、赤外線カバーパネルが電磁波を通さない場合、赤外線カバーパネルに電磁波透過用の窓を設けるか、電磁波通信部を赤外線通信部と離れた位置に設計する必要がある。しかし、意匠性や装置設計に制限が加わるため好ましくなく、装置を小型化する場合はさらに好ましくない。本発明の赤外線透過積層フィルム及び成型体は、50MHz〜15GHz及び40GHz〜110GHzの周波数範囲における最大電磁波損失が10db以下であるため、上記の問題が発生することがないため、意匠性が高く、自由な装置設計、さらには装置の小型化に最適である。50MHz〜15GHz及び40GHz〜110GHzの周波数範囲における最大電磁波損失を10db以下にする方法は、本発明のフィルムの材料として誘電体を用いることである。
【0026】
本発明のフィルムは、着色層の一部が可視光を遮断し赤外光を透過することが必要である。可視光の吸収は目視にて赤外線受発光部が見えない程度であれば良く、好ましくは波長380nm〜780nmの範囲の光の平均透過率が50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは20%以下である。赤外光の透過は赤外線通信が行なえる程度であれば良く、好ましくは780nm〜1050nmの波長範囲の透過率が30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。このように可視光を遮断することで赤外線受発光部の外部からの視認を防止することができ、赤外光を透過することで赤外線による通信を行なうことができる。本発明のフィルムの着色層は顔料や染料のような色素を用いることができる。電磁波透過の観点から誘電性を持つものが必要であり、顔料は有機系の色素が好ましい。有機系顔料としては、アゾ系顔料、多環式系顔料、レーキ系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、アニリンブラック、アルカリブルー、フタロシアニン系顔料、シアニン系顔料が挙げられる。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、メチン系染料、縮合多環系染料、反応染料、カチオン染料が上げられる。上記の有機系顔料、染料の中でも第一の着色層としては黒色または暗色のものが好ましい。また、第一の着色層の一部は、可視光を遮断し赤外光を透過する色素であることが必要である。電磁波透過の観点から上記色素には、金属、黒鉛やカーボンブラック等の炭素系物質等、導電性の物質が含まれていないこと、または含まれている場合でも電磁波透過に影響しない程度の極微量であることが重要である。第一の着色層及び、第一の着色層の一部の可視光を遮断し赤外光を透過する層は、印刷層、ハードコート層、ポリマー層もしくは、接着層であることが好ましい。印刷層の形成方法としては、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、パッド印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷等が挙げられる。ハードコート層の形成方法としては、グラビアコート、ロールコート、リバースロールコート、ロールドクタコート、バーコート、カーテンフローコート、ダイコート、スピンコート、エアドクタコート等を用いて顔料や染料を分散させた塗剤を塗布する方法が挙げられる。ポリマー層の形成方法としては、顔料や染料を分散させたポリマーフィルムを積層する方法が挙げられ、その方法として、インサート成形や、ウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、テープラミネート法等の接着剤を用いた方法が挙げられる。接着層としては、ウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、テープラミネート法等に用いられる接着層として、顔料や染料を分散させたものを用いることや、顔料や染料を分散させたプライマー層(接着促進層)を設けること等などが挙げられる。プライマー層の形成方法として、グラビアコート、ロールコート、リバースロールコート、ロールドクタコート、バーコート、カーテンフローコート、ダイコート、スピンコート、エアドクタコート等を用いて顔料や染料を分散させた塗剤を塗布する方法が挙げられる。また、プライマー層には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等の架橋剤、シリカ粒子等の無機粒子等が含まれることが好ましい。
【0027】
なお、本発明のフィルムが積層される支持体においても赤外線や電磁波に対して透明であることが望ましいことはいうまでもない。
【0028】
本発明のフィルムは少なくとも一方の表面にプライマー層(接着促進層)、ハードコート層、易滑層、帯電防止層、反射防止層、紫外線吸収層、ガスバリア層等の機能層が設けられていても良い。
【0029】
本発明のフィルムの代表的な実施態様を図2に示す。ポリマー多層積層フィルム2に第一の着色層3が積層され、可視光を遮断し赤外光を透過する第一の着色層の一部4が、赤外線受発光部5が発する又は、受信する赤外線が通過できるように配置される。赤外線透過積層フィルム1は少なくとも、赤外線受発光部5が外部から視認されないように設置されれば良いが、赤外線受発光部5の大部分あるいは全面を覆うように設置することもできる。また、赤外線透過積層フィルム1は必ずしも平面で設置される必要はなく、曲面あるいは、より複雑な形状であって良い。可視光を遮断し赤外光を透過する第一の着色層の一部4は図2のように少なくとも1箇所は必要であるが、複数あっても良く、その面積は第一の着色層3よりも大きくても良い。さらに必要があれば、ポリマー多層積層フィルム2の第一の着色層3が積層されている面の反対側に、ハードコート層や保護フィルム層を設けて良い。
【0030】
本発明のフィルム及び成型体は、可視光を遮断し赤外光を透過する第一の着色層の一部が存在する部分において、赤外光透過率が20%以上であることが必要である。好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。
【0031】
本発明のフィルムは、前記着色層とは反対の面側に若しくは前記着色層に重ねて前記着色層とは組成が異なる第二の着色層が積層されることが好ましい。この第二の着色層は上述した色素の中で、赤外線や電磁波を透過するものが望ましいことは言うまでもなく、さらには、黒色又は暗色以外の色である。本発明のフィルム及び成型体はポリマー多層積層フィルムによって、様々な色調を持つことができるが、この第二の着色層を用いることで、さらに意匠性の自由度が増す。この第二の着色層は赤外光を透過することが好ましいが、例え赤外光を遮断する場合であっても、色素の濃度を調整することで可視光の少なくとも一部を遮断しつつ、赤外光を透過するのであれば使用することができる。この第二の着色層としては印刷層、ハードコート層、ポリマー層もしくは、接着層であることが好ましい。本発明の赤外線透過積層フィルムに第二の着色層を積層した代表的な実施態様を図3に示す。ポリマー多層積層フィルム7の着色層8が積層されている面の反対側の面に、第二の着色層10を積層することが好ましい。
【0032】
本発明のフィルムは、望ましく赤外光や電磁波を透過する支持体と積層されて成型体とされる。支持体と積層することにより剛性を持たせることができる。支持体としては、ガラスや樹脂が好ましい。支持体との積層方法は、接着剤にて積層する方法や、樹脂を支持体とする場合は、インサート成形が挙げられる。本発明のフィルムに支持体を積層した代表的な実施態様を図4に示す。支持体17は着色層14の外側に積層されることが好ましいが、他の実施形態では、第二の着色層16とポリマー多層積層フィルム13との間、もしくは、ポリマー多層積層フィルム13と第一の着色層14との間に積層される。
【0033】
本発明の成型体は、本発明のフィルムと望ましく赤外光や電磁波を透過する支持体との間に接着層が設けられていることが好ましい。接着層によって積層することによって、フィルム又は着色層と支持体との密着性が悪い場合においても、高い密着力を得ることができる。また、インサート成形にて発生する、支持体の収縮による成型体のそり、積層部の剥離や、印刷層流れ、積層乱れ等の問題が発生しない。
【0034】
本発明のフィルムの支持体への接着方法としては、ウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、テープラミネート法などを用いることができる。接着剤は、ウェットラミネート法であれば、酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、エチレン・酢酸ビニル共重合体系、ポリビニルアルコール、ニトリルゴム系、スチレン・ブダジエンゴム系、天然ゴム系が好ましく、ドライラミネート法は、酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系、ポリアミド系、ポリビニルアセタール、エポキシ樹脂系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレン・ブダジエンゴム系、天然ゴム系、ポリウレタン系が好ましく、ホットメルトラミネート法は、エチレン・酢酸ビニル共重合体系、ポリアミド系、テープラミネート系は、アクリル樹脂系、ゴム系、セルロース系、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリイソブチレン等が挙げられる。また、これら接着剤には、粘着性調整剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、架橋剤等を添加しても良い。なお、本発明に用いる接着剤は赤外線や電磁波に対して透明であることが望ましい。
【0035】
本発明のフィルムにおいて、着色層の一部は可視光を遮断し赤外光を透過するが、そのような場合としては、当該着色層の全部が可視光を遮断し赤外光を透過するよう構成される以外に、当該着色層の中において一部だけが可視光を遮断し赤外光を透過するよう構成される場合がある。当該着色層において、可視光を遮断し赤外光を透過する層が存在する部分とそれ以外の着色層の部分との下記式(4)で示される色差ΔEが20以下であることが好ましい。より好ましくは、15以下であり、さらに好ましくは10以下である。ΔEを20以下とすることによって意匠性が向上する。
【0036】
【数2】
【0037】
(ここで、L、a、bは着色層における可視光を遮断し赤外光を透過する部分のCIE1976色空間におけるL*,a*,b*値、L、a、bはそれ以外の当該着色層の部分のCIE1976色空間におけるL*,a*,b*値である。)
本発明の成型体は、外面が赤外光集光機能を持った基材と積層されることが好ましい。本発明の成型体を用いた装置にて赤外線を受光する場合、赤外線が斜め方向から入射すると、赤外線が赤外線受光部に達しないことが起こりえる。このような場合、赤外線の入射角が小さくなるような位置にて赤外線を照射せねばならず、使い勝手が悪くなる問題が発生する。そこで、赤外線の光路を垂直方向に変化させる、赤外光集光機能を持った基材と積層することで、赤外線が斜め方向から入射しても、赤外線の光路が垂直方向に変化し赤外線受光部に達することができる。この場合に必要な基材は、赤外線と電磁波を透過し、赤外線の光路を垂直方向に変化させるものであれば何でも良いが、プリズムが好ましい。また、別の問題として、赤外線受光部に達した赤外線が弱く、感度が悪くなる問題が起こりえる。このような場合、赤外線集光機能を持った基材を積層することで、赤外線受光部に達した赤外線が一点に集中するため、感度が高くなる。この場合に必要な基材は、赤外線と電磁波を透過し、赤外光を一点に集中されるものであれば何でも良いが、赤外線集光レンズが好ましい。
【0038】
本発明の成型体は外面が赤外光拡散機能を持った基材と積層されていることが好ましい。本発明の成型体を用いた装置にて赤外線を発光し、遠隔操作や通信を行なう場合、赤外線の発光方向が赤外線受光部からずれることによる操作・通信不能の問題が起こりえる。特にリモコンによる操作を行なう場合、赤外線発光部と赤外線受光部は1m以上離れていることが多く、赤外線の発光方向が僅かにずれただけで、赤外線は赤外線受光部に届かなくなる。そのため、本発明の成型体に外面が赤外光拡散機能を持った基材を積層すると、赤外線を多方向に広げて照射できるため、赤外線発光部の向きが赤外線受光部に対してずれていても、赤外線を赤外線受光部に届けることが可能となる。赤外光拡散機能を持った基材は、赤外光拡散機能を持ち、赤外線と電磁波を透過するものであれば何でも良いが、プリズムや、マトリックスと粒子からなる拡散層であり、赤外線の波長に対する屈折率がマトリックスと粒子とで異なるものが良い。
【0039】
本発明の成型体は、フィルムに具備された着色層の一部がペリレン系顔料を含むことが好ましい。一般的に黒色または暗色の色を作る場合は、複数の色素を混合させる必要がある。そのため、色素の混合ムラによって色ムラが起こる可能性がある。一方、ペリレン系顔料は可視光を均一に吸収し、赤外線透過率が高いことを特徴としており、1成分のみで良い。
【0040】
本発明のフィルムは、ポリマー多層積層フィルムの1050nm〜1200nmの波長範囲における赤外線平均反射率が50%以上であることが好ましい。本発明の成型体を用いた装置にて赤外線を受光する場合、さまざまな角度から赤外線が透過すると、他の装置から発光した赤外線が意図せずに赤外線受光部に達し、誤作動が生じることが起こりえる。波長950nmの赤外線を用いて通信を行なった場合、ポリマー多層積層フィルムの反射スペクトルが図5に示すように、1050nm〜1200nmの波長範囲における赤外線平均反射率が50%以上であると、赤外線の入射角度が20°である場合は赤外線を透過する。一方、赤外線の入射角度が大きくなるにつれて、赤外線の反射波長が低波長側にシフトしていき、入射角度60°では波長950nmの赤外線の反射率は80%であり、赤外線の透過を防ぐことができる。このように、赤外線の入射角度に制限を持たせることができ、誤作動を防止することができる。また、この場合ポリマー多層中のA層の面内屈折率はB層の面内屈折率よりも高く、A層の面直屈折率はB層の面直屈折率よりも低いことが好ましい。ここで面内屈折率とはフィルム面に平行な方向の平均屈折率であり、面直屈折率とはフィルム面に垂直な方向の屈折率のことである。A層とB層の屈折率がこのような関係を持と、図5に示すように入射角度が大きくなるにつれて反射率が増大する。そのため、入射角度20°における1050nm〜1200nmの波長範囲における赤外線平均反射率が低くても、入射角度が大きくなるにつれて赤外線平均反射率は高くなっていくため、誤作動を防止することができて、少ない積層数にて効果を発揮することができる。
【0041】
本発明の赤外線透過積層フィルム及び成型体を用いた好ましい例として、赤外線発光部または、赤外線受光部の外部からの視認を防止するように、本発明の成型体が配置された構成を有する赤外線遠隔操作機器が挙げられる。
【0042】
別の好ましい例としては、赤外線受発光部の外部からの視認を防止するように、本発明の成型体が配置された構成を有する小型通信機器などの電子機器が挙げられる。
【0043】
さらに別の好ましい例としては、赤外線受光部の外部からの視認を防止するように、本発明の成型体が配置された構成を有する赤外線感知器が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明について、実施例を用いて具体的に説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0045】
(1)可視光透過率・反射率、赤外光透過率・反射率
日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の12°正反射付属装置P/N134−0104を取り付け、入射角度φ=12度における波長250〜2600nmの絶対反射率及び透過率を測定した。測定条件:スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分で測定した。これらの結果から、以下の基準にて可視光反射率、可視光透過率、赤外線透過率、赤外線反射率とした。
【0046】
可視光反射率:ポリマー多層積層フィルムの380nmから780nmの波長範囲の反射率の平均値
可視光透過率:フィルム又は成型体の380nmから780nmの波長範囲の透過率の平均値
赤外線透過率:フィルム又は成型体の780nmから1050nmの波長範囲の透過率の平均値
可視光反射率、可視光透過率はサンプル中心を、赤外線透過率は可視光を遮断し赤外光を透過する第一の着色層の一部が存在する部分について測定を行なった。
【0047】
入射角20°、40°、60°における赤外線反射率は、日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の角度可変絶対反射装置を取り付け測定を行なった。
【0048】
(2)電磁波損失
ネットワークアナライザとして、Agilent Technologies製(PNA N5250C)を用いた。50MHz〜15GHzの電磁波損失は同軸管法を用いて測定し、40GHz〜110GHzの電磁波損失はJISR1679に記載の方法を用いて測定した。測定された50MHz〜15GHz及び40GHz〜110GHzの周波数範囲における電磁波損失の最大値を値として採用した。
【0049】
(3)色差
コニカミノルタセンシング株式会社製、分光測色計CM−3600dを用いた。測定径φ8mmのターゲットマスク(CM−A106)条件下で、SCI方式で可視光を遮断し赤外光を透過する層が存在する部分とそれ以外の当該着色層の部分それぞれについて、L*,a*,b*値を測定し、n数5の平均値を求め、前記式(4)に基づき色差を求めた。なお、白色校正板、およびゼロ校正ボックスは下記のものを用いて校正を行った。なお、測色値の計算に用いる光源はD65を選択した。
白色校正板 :CM−A103
ゼロ校正ボックス:CM−A104
(塗料A)
バインダーとして日本触媒社製IR−G205を用い、バインダー固形成分(30wt%)に対して、BASF社製Lumogen788を15wt%、日本化薬社製カヤセットRED130を15wt%混合した。
(塗料B)
バインダーとして日本触媒社製IR−G205を用い、バインダー固形成分(30wt%)に対して、日本化薬社製カヤセットRED130を15wt%、日本触媒社製TX−MX−609Kを15wt%混合した。
(塗料C)
バインダーとして日本触媒社製IR−G205を用い、バインダー固形成分(30wt%)に対して、山田化学工業社製TAP2を1wt%混合した。
(塗料D)
バインダーとして日本触媒社製IR−G205を用い、バインダー固形成分(30wt%)に対して、ペリレン系黒色顔料であるBASF社製Paliogen Black S 0084を15wt%混合した。
【0050】
参考例1)
A層を構成する結晶性の熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Aとも称する)としてポリエチレンテレフタレートを用い、またB層を構成する熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Bとも称する)としてポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分33mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた。熱可塑性樹脂AおよびBを、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=1/1.07になるように計量しながら、201層フィードブロックにて合流させて、厚み方向に交互に201層積層された積層体とした。A層が101層、B層が100層からなる厚み方向に交互に積層され、A層とB層の層厚みは380nmから780nm波長範囲の反射率スペクトルが平坦となるように設計し、それぞれ表層から反対側の表層に向かって連続的に変化するように積層した。次いで、Tダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、90℃、延伸倍率3.5倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き110℃、4.3倍横延伸した後、230℃で熱処理を施し、約5%のTDリラックスを実施し、厚み16μmのポリマー多層積層フィルムを得た。このポリマー多層積層フィルムに、黒色の着色層として、塗料Aをメタバーを用いて、フィルム中心2cm四方以外の面を10μmの層厚みで塗布し、塗料Bをメタバーを用いて、フィルム中心2cm四方の面に10μmの層厚みで塗布した。得られたフィルムはやや光沢感を持った黒色であり、赤外線及び、電磁波を十分に透過した。物性結果を表1に、ポリマー多層積層フィルムの反射率スペクトルを図6に示す。
【0051】
参考例2)
ポリマー多層積層フィルムの積層数を401層、厚みを32μmとしたこと以外は実施例1と同様の条件にてフィルムを作製した。得られたフィルムは参考例1よりもさらに光沢感を持った黒色であり、赤外線及び、電磁波を十分に透過した。物性結果を表1に、ポリマー多層積層フィルムの反射率スペクトルを図6に示す。
【0052】
参考例3)
ポリマー多層積層フィルムの積層数を851層、厚みを68μmとしたこと以外は実施例1と同様の条件にてフィルムを作製した。得られたフィルムは参考例1及び参考例2よりもさらに光沢感を持った黒色であり、赤外線及び、電磁波を十分に透過した。物性結果を表1に、ポリマー多層積層フィルムの反射率スペクトルを図6に示す。
【0053】
参考例4)
ポリマー多層積層フィルムの積層数を401層とし、厚みを31μm、430nmから480nmの範囲の可視光反射率スペクトルが急峻となるように層厚みを調整したこと以外は参考例1と同様の条件にてフィルムを作製した。得られたフィルムは光沢感を持った青色であり、赤外線及び、電磁波を十分に透過した。物性結果を表1に、ポリマー多層積層フィルムの反射率スペクトルを図7に示す。
【0054】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムに、黒色の着色層として塗料Aをメタバーを用いて、フィルム中心2cm四方以外の面を10μmの層厚みで塗布し、塗料Bをメタバーを用いて、フィルム中心2cm四方の面に10μmの層厚みで塗布した。得られたフィルムは光沢感のない黒色であった。物性結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムに、厚さ8nmの銀蒸着を施し、銀蒸着面と反対側に、黒色の着色層として塗料Aをメタバーを用いて、フィルム中心2cm四方以外の面を10μmの層厚みで塗布し、塗料Bをメタバーを用いて、フィルム中心2cm四方の面に10μmの層厚みで塗布した。得られたフィルムは光沢感を持った黒色であったが、電磁波損失が大きいものであった。物性結果を表1に示す。
【0056】
参考例5)
参考例2の条件で作製したフィルムにおいて、黒色着色層とは反対側の面に、塗料Cをメタバーを用いて1μmの層厚みで塗布しフィルムを作製した。得られたフィルムは光沢感を持った緑青色であった。物性結果を表1に示す。
【0057】
参考例6)
参考例5の条件にて作製したフィルムにおいて、黒色着色層面に厚さ300μmのポリカーボネートを積層し、成型体を作製した。得られた成型体は十分な剛性を持っていた。物性結果を表1に示す。
【0058】
参考例7)
参考例6の条件にて作製した成型体において、ポリカーボネート層とは反対側の面に、表面が三角錐状の形状をもったポリカーボネート層を積層し、さらにこの成型体を赤外線受光部のカバーとして用いた。得られた赤外線受光装置は、赤外線の入射角度が大きくても感度良く反応した。物性結果を表1に示す。
【0059】
参考例8)
参考例6の条件にて作製した成型体のポリカーボネート層の反対側に、粒径50nmのシリカを1wt%分散させたポリエチレンテレフタレート層100μmを積層し、さらにこの成型体を赤外線発光部のカバーとして用いた。得られた赤外線発光装置は、赤外線の発光方向が赤外線受光部に対してずれていても操作することが可能であった。物性結果を表1に示す。
【0060】
(実施例9)
塗料Bの代わりに塗料Dを用いたこと以外は実施例5の条件にて成型体を作製した。
物性結果を表1に示す。
【0061】
(実施例10)
ポリマー多層積層フィルムの積層数を551層、厚みを58μmとし、可視光以外に1050nmから1200nmの波長範囲における赤外光を反射するように層厚みを設計したこと以外は、実施例9と同様の条件にて成型体を作製した。さらに、得られた成型体を赤外線受光部のカバーとして用いた。得られた赤外線受光装置は、赤外線の入射角度が大きくなると反応しなくなり、誤作動が起こりにくいものであった。物性結果を表1に示す。
【0062】
参考例11)
熱可塑性樹脂Bとしてポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分33mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)とポリエチレンテレフタレートをそれぞれ50wt%コンパウンドした樹脂を用いたこと以外は、参考例3と同様の条件にてフィルムを作製した。得られたフィルムは光沢感を持った黒色であり、赤外線及び、電磁波を十分に透過した。物性結果を表1に示す。
【0063】
参考例12)
参考例11の条件で作製したフィルムにおいて、黒色着色層面側にパナック社製粘着フィルムPD−S1を用いて、厚さ2mmの透明アクリル板に積層し、成型体を作製した。得られた成型体は十分な剛性を持っていた。物性結果を表1に示す。
【0064】
参考例13)
参考例1の条件で作製したフィルムにおいて、黒色着色層面側にパナック社製粘着フィルムPD−S1を用いて、厚さ2mmの透明アクリル板に積層し、成型体を作製した。得られた成型体は十分な剛性を持っていた。物性結果を表1に示す。
【0065】
参考例14)
参考例2の条件で作製したフィルムにおいて、黒色着色層面側にパナック社製粘着フィルムPD−S1を用いて、厚さ2mmの透明アクリル板に積層し、成型体を作製した。得られた成型体は十分な剛性を持っていた。物性結果を表1に示す。
【0066】
参考例15)
参考例3の条件で作製したフィルムにおいて、黒色着色層面側にパナック社製粘着フィルムPD−S1を用いて、厚さ2mmの透明アクリル板に積層し、成型体を作製した。得られた成型体は十分な剛性を持っていた。物性結果を表1に示す。
【0067】
参考例16)
参考例4の条件で作製したフィルムにおいて、黒色着色層面側にパナック社製粘着フィルムPD−S1を用いて、厚さ2mmの透明アクリル板に積層し、成型体を作製した。得られた成型体は十分な剛性を持っていた。物性結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、赤外線透過フィルム、成型体及びその製造方法に関するものである。また本発明の赤外線透過フィルム及び成型体は、赤外線受光部又は、赤外線発光部又は赤外線受発光部を有する、遠隔操作機器、小型通信機器、電子機器の部材として好適なものである。
【符号の説明】
【0070】
1:本発明の赤外線透過積層フィルムの代表的な実施形態
2:ポリマー多層積層フィルム
3:第一の着色層
4:第一の着色層の一部である可視光を吸収し赤外光を透過する着色層
5:赤外線受発光装置
6:本発明の赤外線透過積層フィルムに着色層を積層した代表的な実施形態
7:ポリマー多層積層フィルム
8:第一の着色層
9:第一の着色層の一部である可視光を吸収し赤外光を透過する着色層
10:第二の着色層
11:赤外線受発光装置
12:本発明の赤外線透過積層フィルムに支持体を積層した代表的な実施形態
13:ポリマー多層積層フィルム
14:第一の着色層
15:第一の着色層の一部である可視光を吸収し赤外光を透過する着色層
16:第二の着色層
17:支持体
18:赤外線受発光装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8