(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した特許文献1に示す発振回路では、高周波発振の際に十分な負性抵抗を確保することが難しく、その結果、安定した発振が難しい。
【0007】
具体的には、上記したような発振回路の等価回路を抵抗R
L、リアクタンスX
Lの直列モデルで表した場合、
図17に示すような回路となる。この
図17に示す等価回路において、発振が起動するためには、R
Lの値が圧電振動子の負荷時等価抵抗よりも絶対値の大きな負の値である必要があり、この負の抵抗R
Lは一般に負性抵抗と呼ばれる。高周波発振の場合、負性抵抗の絶対値が小さくなり(
図5の記号W1の曲線参照)、圧電振動子の負荷時等価抵抗よりも負性抵抗R
Lの絶対値が小さい場合、圧電振動子の不発振などの不具合を生じる。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、圧電振動子の発振を高周波で安定に行うことができる発振回路、及びそのような発振回路の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
また、上記の目的を達成するため、圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備える発振回路であって、前記発振回路部の等価回路を、負性抵抗R
LとリアクタンスX
Lとが直接接続された直列モデルで表わした場合において、前記発振回路部の一方の端子にリアクタンス素子X
Sの一方の端子が直列接続され、前記発振回路部の他方の端子と前記リアクタンス素子X
Sの他方の端子との間に抵抗R
Pが接続され、前記リアクタンス素子X
Sの他方の端子と前記抵抗R
Pの一方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う一方の圧電振動子接続用端子とされ、前記抵抗R
Pの他方の端子と前記発振回路部の他方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う他方の圧電振動子接続用端子とされ、下記式(3):
【0023】
【数5】
【0024】
(式(3)中、Gはコンダクタンス、Bはサセプタンス、R
Lは前記発振回路部の負性抵抗、X
Lは前記発振回路部のリアクタンス、X
Sは前記リアクタンス素子のリアクタンス、R
Pは前記抵抗を意味する。)で表される前記発振回路部、前記リアクタンス素子X
S、及び前記抵抗R
Pのアドミッタンスの合計のコンダクタンスGとサセプタンスBとが、下記式(2):
【0025】
【数6】
【0026】
(式(2)中のGはコンダクタンス、Bはサセプタンス、R
Lは前記発振回路部の負性抵抗を意味する。)を満た
し、前記発振回路部の前記リアクタンスXLが、容量性リアクタンスで構成され、前記リアクタンス素子XSが、容量性リアクタンス素子であることを特徴とする。
【0027】
具体的には、
図6の本発明の一実施の形態に係る発振回路の概略図に示すように、本発明の発振回路は、発振回路部EOの等価回路を、負性抵抗R
LとリアクタンスX
Lとが直接接続された直列モデルで表わした場合において、発振回路部EOの一方の端子EOAにリアクタンス素子X
Sの一方の端子が直列接続され、前記発振回路部の他方の端子EOBとリアクタンス素子X
Sの他方の端子との間に抵抗R
Pが接続されており、上記式(3)で示されるアドミッタンスの合計が、上記式(2)を満たすことで、負性抵抗を増加させることができる構成とされている。このため、本発明の他の発振回路によれば、圧電振動子の発振を高周波で安定に行うことが可能となる。
【0028】
上記構成において、前記発振回路部の前記リアクタンスX
Lが、容量性リアクタンスで構成され、前記リアクタンス素子X
Sが、容量性リアクタンス素子であってもよい。
【0029】
この場合、前記発振回路部の前記リアクタンスが誘導性リアクタンスで構成される場合、又は、前記リアクタンス素子が誘導性リアクタンス素子である場合と比べて、発振回路の製造コストを下げることができる。
【0030】
また、本発明に係る他の発振回路の製造方法は、圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備える発振回路の製造方法であって、前記発振回路部として、負性抵抗R
LとリアクタンスX
Lとを直接接続した直列モデルで表した等価回路を用い、前記発振回路部に対して、リアクタンス素子X
Sを直列に接続し、抵抗R
Pを並列に接続する工程において、前記発振回路部のリアクタンスX
Lと前記リアクタンス素子X
Sの合計のリアクタンスの絶対値が、前記発振回路部のリアクタンスX
Lの絶対値よりも小さくなるように、前記発振回路部の一方の端子に、前記リアクタンス素子X
Sの一方の端子を直列接続し、次いで、下記式(3):
【0031】
【数7】
【0032】
(式(3)中、Gはコンダクタンス、Bはサセプタンス、R
Lは前記発振回路部の負性抵抗、X
Lは前記発振回路部のリアクタンス、X
Sは前記リアクタンス素子のリアクタンス、R
Pは前記抵抗を意味する。)で表される前記発振回路部、前記リアクタンス素子X
S、及び前記抵抗R
Pのアドミッタンスの合計のコンダクタンスGとサセプタンスBとが、下記式(2):
【0033】
【数8】
【0034】
(式(2)中のGはコンダクタンス、Bはサセプタンス、R
Lは前記発振回路部の負性抵抗を意味する。)を満たすように、前記発振回路部の他方の端子と前記リアクタンス素子の他方の端子との間に前記抵抗R
Pを接続
し、前記発振回路部の前記リアクタンスXLが、容量性リアクタンスで構成され、前記リアクタンス素子XSが、容量性リアクタンス素子であることを特徴とする。
【0035】
例えば、
図6に示す本発明の一実施の形態に係る発振回路1においても、発振回路部EO、リアクタンス素子X
S、及び、抵抗R
Pのインピーダンスの合計の抵抗分をRとすると、この抵抗分Rの絶対値が、発振回路部EOの負性抵抗R
Lの絶対値よりも大きく、負の値となる領域(即ち、R<R
Lとなる領域)は、
図2に示すインピーダンス平面上の斜線で示す領域となる。このインピーダンス平面上の斜線で示す領域は、上記したように、アドミッタンスに変換すると、
図2に示すアドミッタンス平面上の斜線で示す円内の領域、即ち、上記式(2)で示される領域の範囲内となる。よって、上記式(3)で示されるアドミッタンスのコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たすことが、発振回路部EOの負性抵抗R
Lよりも絶対値の大きい負性抵抗を得る(即ち、負性抵抗を増加させる)条件となる。
【0036】
そこで、本発明の他の発振回路の製造方法では、発振回路部EOのリアクタンスX
Lとリアクタンス素子X
Sの合計のリアクタンスの絶対値が、発振回路部EOのリアクタンスX
Lの絶対値よりも小さくなるように、発振回路部EOの一方の端子に、リアクタンス素子Xsの一方の端子を直列接続することにより、
図7に示すように、インピーダンスのリアクタンス分を0に近づける(インピーダンス平面において、縦軸方向にインピーダンス値をXs移動させる)。これにより、発振回路部EOとリアクタンス素子Xsの合計のアドミッタンスは、アドミッタンス平面上において、
図7に示すように、円周上のサセプタンスB=0に近い領域に位置することとなるから、さらに、発振回路部EOに対して、並列に抵抗R
Pを接続することにより、アドミッタンスのサセプタンスGを1/R
P変化させれば(
図7のアドミッタンス平面において、横軸正方向にアドミッタンス値を1/R
P移動させれば)、アドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBを、上記式(2)の円内の領域に納めることができ、発振回路部EOの負性抵抗R
Lよりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。このように、本発明の他の発振回路の製造方法によれば、発振回路部の負性抵抗を拡大することができることから、本発明の他の発振回路の製造方法は、発振回路の負性抵抗拡大方法とも言える。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、圧電振動子の発振を高周波で安定に行うことが可能な発振回路、及びそのような発振回路の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態1及び2について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態1及び2(実施例1及び2を含む)では、圧電振動子として水晶振動子を適用した場合を示す。
【0040】
<実施の形態1>
本実施の形態1に係る発振回路1は、水晶振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部EOと、発振回路1の負性抵抗を増加させるためのリアクタンス素子X
P及び抵抗R
Pと
を備えている。なお、ここでいう発振回路部EOなどの本実施の形態1の発振回路1の具体例は、以下の実施例1に示す。
【0041】
本実施の形態1に係る発振回路1は、
図1に示すように、負性抵抗R
LとリアクタンスX
Lとが直接接続された直列モデルで発振回路部EOの等価回路を表わした場合において、前記発振回路部EOに対して、リアクタンス素子X
Pと抵抗R
Pとが並列に接続された構成とされている。
【0042】
また、発振回路部EOの一方の端子EOAとリアクタンス素子X
Pの一方の端子と抵抗R
Pの一方の端子との接続点が、水晶振動子との接続を行う接続用端子A(本発明でいう一方の圧電振動子接続用端子)とされている。そして、発振回路部EOの他方の端子EOBとリアクタンス素子X
Pの他方の端子と抵抗R
Pの他方の端子との接続点が、水晶振動子との接続を行う接続用端子B(本発明でいう他方の圧電振動子接続用端子)とされている。
【0043】
この本実施の形態1に係る発振回路1において、接続用端子A−B間のアドミッタンス(発振回路部EO、リアクタンス素子X
P、及び、抵抗R
Pのアドミッタンスの合計)のコンダクタンスG及びサセプタンスBは、上記式(1)にて表わすことができる。そして、このような本実施の形態1に係る発振回路1では、上記式(1)で示すアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが上記式(2)を満たした時に、発振回路部EOの負性抵抗よりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0044】
具体的には、発振回路1において、接続用端子A−B間のインピーダンスの抵抗分(具体的には、発振回路部EO、リアクタンス素子X
P、及び、抵抗R
Pのインピーダンスの合計の抵抗分)をRとすると、接続用端子A−B間のインピーダンスの抵抗分Rの絶対値が、発振回路部EOの負性抵抗R
Lの絶対値よりも大きく、負の値となる領域(即ち、R<R
Lとなる領域)は、
図2に示すインピーダンス平面上の斜線で示す領域となる。このインピーダンス平面上の斜線で示す領域は、アドミッタンスに変換すると、
図2に示すアドミッタンス平面上の斜線で示す円内の領域、即ち、上記式(2)で示される領域の範囲内となる。よって、上記式(1)で示される接続用端子A−B間のアドミッタンスのコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たすことが、発振回路部EOの負性抵抗R
Lよりも絶対値の大きい負性抵抗を得る(即ち、負性抵抗を増加させる)条件となる。
【0045】
つまり、本実施の形態1に係る発振回路の製造に際し、発振回路部EOとして、負性抵抗R
LとリアクタンスX
Lとを直接接続した直列モデルで表した等価回路を用い、発振回路部EOに対して、リアクタンス素子X
Pと抵抗R
Pとを並列に接続する工程において、上記式(1)で表される発振回路部EO、リアクタンス素子X
P、及び抵抗R
Pのアドミッタンスの合計のコンダクタンスGとサセプタンスBとが、上記式(2)を満たすように、発振回路部EOに対して、リアクタンス素子X
Pと抵抗R
Pとを並列に接続すれば、発振回路部EOの負性抵抗R
Lよりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0046】
より具体的には、
図2に示すアドミッタンス平面において、発振回路部EOのアドミッタンスは、
図3に示すように、円周上にあるので、発振回路部EOに対して並列にリアクタンス素子X
Pを接続することにより、アドミッタンスのサセプタンスBを−1/X
P変化させ(
図3のアドミッタンス平面において、縦軸方向にアドミッタンス値を−1/X
P移動させ)、さらに、発振回路部EOに対して並列に抵抗R
Pを接続することにより、アドミッタンスのサセプタンスGを1/R
P変化させて(
図3のアドミッタンス平面において、横軸正方向にアドミッタンス値を1/R
P移動させて)、アドミッタンスの合計が
図2及び
図3に示すアドミッタンス平面上の円内の領域内に納まるようにすることで、発振回路部EOの負性抵抗よりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0047】
このように、上記した本実施の形態1に係る発振回路1では、負性抵抗R
LとリアクタンスX
Lとが直接接続された直列モデルで発振回路部EOの等価回路を表わした場合において、発振回路部EOに対して並列に、リアクタンス素子X
P及び抵抗R
Pが接続されており、上記式(1)で示されるアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たした時、負性抵抗を増加させることができる。よって、本実施の形態1に係る発振回路1では、絶対値の大きい負性抵抗を得ることができ、圧電振動子の発振を高周波で安定に行うことができる。このため、本実施の形態1に係る発振回路1は、特に、高周波発振回路に好適である。
【0048】
次に、上記した本実施の形態1に係る発振回路1の具体例を、実施例1として
図4を用いて説明する。
【0049】
−実施例1−
本実施例1に係る発振回路1では、
図4に示すように、発振用トランジスタQ1はコレクタ接地とされている。そして、発振用トランジスタQ1のベースに、コンデンサC1(10pF)の一方の端子が接続されるとともに、抵抗R2(22kΩ)と抵抗R3(10kΩ)とからなるバイアス抵抗回路が接続されている。また、コンデンサC1の他方の端子には、コンデンサC2(10pF)が直列に接続されている。また、発振用トランジスタQ1のコレクタは電源電圧Vcc(3.3V)に接続されている。また、発振用トランジスタQ1のエミッタには、抵抗R1(330Ω)が直列接続されている。さらに、この発振用トランジスタQ1のエミッタと抵抗R1との接続点が、コンデンサC1とコンデンサC2との接続点に接続されている。
【0050】
そして、これら発振用トランジスタQ1、コンデンサC1,C2、抵抗R1,R2,R3、及び電源電圧Vccから、上記した本実施の形態1に係る発振回路部EOの等価回路が構成されている。なお、本実施例1の発振回路部EOの負性抵抗R
Lの値は、200MHzにおいて−230Ωである。また、本実施例1の発振回路部EOのリアクアタンスX
Lは、上記の通り、容量性リアクタンスであるコンデンサC1,C2で構成されている。
【0051】
この発振回路部EOの一方の接続端子EOAには、コンデンサC3(1nF)の一方の端子が直列接続され、このコンデンサC3の他方の端子と発振回路部EOの他方の接続端子EOBとの間に、
図1に示すリアクタンス素子X
PとしてのコイルL
Pが接続されている。さらに、コンデンサC3の他方の端子とコイルL
Pとの接続点、及び、発振回路部EOの他方の接続端子EOBとコイルL
Pとの接続点に
図1に示す抵抗R
Pが接続されている。即ち、発振回路部EOの一方の接続端子EOAに、コンデンサC3(1nF)を介して、
図1に示すコイルL
Pの一方の端子と、抵抗R
Pの一方の端子とが接続され、発振回路部EOの他方の接続端子EOBに、コイルL
Pの他方の端子と、抵抗R
Pの他方の端子とが接続されることにより、発振回路部EOに対して(具体的には抵抗R3に対して)、コイルL
Pと抵抗R
Pとが並列に接続されている。そして、これら発振回路部EOと、コイルL
Pと、抵抗R
Pとの両接続点が、水晶振動子を接続するための接続用端子A,Bとされている。つまり、水晶振動子は、コイルL
P及び抵抗R
Pに対して並列に接続される。
【0052】
なお、本実施例1において、
図4に示すコイルL
Pのインダクタンスは330nHであり、
図4に示す抵抗R
Pの値は1kΩであり、上記式(1)で示される接続用端子A−B間のアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが上記式(2)を満たす。
【0053】
上記した本実施例1に係る発振回路1において、発振回路部EOの高周波帯域における負性抵抗と、この発振回路部EOにリアクタンス素子X
PとしてのコイルL
Pと抵抗R
Pとを接続した発振回路1全体の高周波帯域における負性抵抗を測定した。その結果を
図5に示す。
図5に示す記号W1の曲線は本実施例1に係る発振回路1の発振回路部EOの負性抵抗の測定値を示し、記号W2の曲線は本実施例1に係る発振回路1全体の負性抵抗の測定値を示す。なお、本実施例1では、基本波形で200MHz付近の周波数帯域の負性抵抗を増加させることを目的としている。
【0054】
図5の記号W1の曲線に示されるように、発振回路部EO単独の負性抵抗は、周波数が上がるにつれて絶対値が下がっていく。これに対して、発振回路部EOにコイルL
Pと抵抗R
Pとを接続した発振回路1全体の負性抵抗は、
図5の記号W2の曲線に示されるように、高周波(特に200MHz以上の周波数帯域)において絶対値が増加していることが分かる。このように、本実施例1の発振回路1によれば、200MHz以上の周波数帯域において、発振回路部EOの負性抵抗がコイルL
Pと抵抗R
Pとにより増加されるため、絶対値の大きい負性抵抗を得ることができ、水晶振動子の発振を高周波で安定に行うことができる。
【0055】
また、本実施例1に係る発振回路1では、発振回路部EOにバイポーラトランジスタが用いられているので、MOS−FETと比較して、フリッカ雑音(1/f雑音)が少なく、また高周波帯域において増幅器としてのゲインを大きくとることができる。このため、本実施例1に係る発振回路は、位相雑音性能の優れた高周波発振回路となり得る。具体的には、本実施例1に係る発振回路は、200MHz以上の高周波発振回路として好適に利用することができる。
【0056】
また、上記した実施例1では、発振回路部EOのリアクタンスX
Lが容量性リアクタンス(コンデンサC1,C2)で構成され、発振回路部EOに並列に接続されたリアクタンス素子X
Pに誘導性リアクタンス素子であるコイルL
Pが使用されているが、発振回路部EOのリアクタンスX
Lと発振回路部EOに並列に接続されるリアクタンス素子X
Pの組合せはこれに限定されるものではない。即ち、発振回路部EOのリアクタンスX
Lと発振回路部EOに並列に接続されるリアクタンス素子X
Pとの組合せは、容量性リアクタンスと誘導性リアクタンス素子との組合せ、誘導性リアクタンスと容量性リアクタンス素子との組合せ、容量性リアクタンスと容量性リアクタンス素子との組合せ、及び、誘導性リアクタンスと誘導性リアクタンス素子との組合せのいずれであってもよい。特に、発振回路部EOのリアクタンスX
Lを容量性リアクタンスで構成し、発振回路部EOに並列に接続されたリアクタンス素子X
Pに容量性リアクタンス素子を使用すると、発振回路の製造コストの低価格化を図ることができる。
【0057】
<実施の形態2>
本実施の形態2に係る発振回路1は、水晶振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部EO、発振回路1の負性抵抗を増加させるためのリアクタンス素子X
S及び抵抗R
Pと
を備えている。なお、ここでいう発振回路部EOなどの本実施の形態2の発振回路1の具体例は、以下の実施例2に示す。
【0058】
本実施の形態2に係る発振回路1は、
図6に示すように、負性抵抗R
LとリアクタンスX
Lとが直接接続された直列モデルで発振回路部EOの等価回路を表わした場合に、発振回路部EOの一方の端子EOAに、リアクタンス素子X
Sの一方の端子が直列接続され、発振回路部EOの他方の端子EOBとリアクタンス素子X
Sの他方の端子との間に抵抗R
Pが接続された構成とされている。
【0059】
また、リアクタンス素子X
Sの他方の端子と抵抗R
Pの一方の端子との接続点が、水晶振動子との接続を行う接続用端子A(本発明でいう一方の圧電振動子接続用端子)とされ、抵抗R
Pの他方の端子と発振回路部EOの他方の端子EOBとの接続点が、水晶振動子との接続を行う接続用端子B(本発明でいう他方の圧電振動子接続用端子)とされている。
【0060】
本実施の形態2に係る発振回路1において、接続用端子A−B間のアドミッタンス(発振回路部EO、リアクタンス素子X
S、及び、抵抗R
Pのアドミッタンスの合計)のコンダクタンスG及びサセプタンスBは、上記式(3)にて表すことができる。
【0061】
また、本実施の形態2に係る発振回路1では、上記式(3)で示すアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが上記式(2)を満たした時に、発振回路部EOの負性抵抗よりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0062】
具体的には、上記実施の形態1において説明した通り、発振回路1において、接続用端子A−B間のインピーダンスの抵抗分(具体的には、発振回路部EO、リアクタンス素子X
S、及び、抵抗R
Pのインピーダンスの合計の抵抗分)をRとすると、接続用端子A−B間のインピーダンスの抵抗分Rの絶対値が、発振回路部EOの負性抵抗R
Lの絶対値よりも大きく、負の値となる領域(即ち、R<R
Lとなる領域)は、
図2に示すインピーダンス平面上の斜線で示す領域となる。このインピーダンス平面上の斜線で示す領域は、アドミッタンスに変換すると、
図2に示すアドミッタンス平面上の斜線で示す円内の領域、即ち、上記式(2)で示される領域の範囲内となる。よって、発振回路部EOに対して、直列にリアクタンス素子X
Sが接続され、並列に抵抗R
Pが接続された本実施の形態2に係る発振回路1では、上記式(3)で示される接続用端子A−B間のアドミッタンスのコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たすことが、発振回路部EOの負性抵抗R
Lよりも絶対値の大きい負性抵抗を得る(即ち、負性抵抗を増加させる)条件となる。
【0063】
つまり、本実施の形態2に係る発振回路の製造に際し、発振回路部EOとして、負性抵抗R
LとリアクタンスX
Lとを直接接続した直列モデルで表した等価回路を用い、発振回路部EOに対して、リアクタンス素子X
Sを直列に接続し、抵抗R
Pを並列に接続する工程において、発振回路部EOのリアクタンスX
Lとリアクタンス素子X
Sの合計のリアクタンスの絶対値が、発振回路部EOのリアクタンスX
Lの絶対値よりも小さくなるように、発振回路部EOに対してリアクタンス素子Xsを直列接続し、次いで、上記式(3)で表される発振回路部EO、リアクタンス素子X
S、及び抵抗R
Pのアドミッタンスの合計のコンダクタンスGとサセプタンスBとが、上記式(2)を満たすように、発振回路部EOに対して、抵抗R
Pを並列に接続すれば、発振回路部EOの負性抵抗R
Lよりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0064】
具体的には、発振回路部EOのリアクタンスX
Lとリアクタンス素子X
Sの合計のリアクタンスの絶対値が、発振回路部EOのリアクタンスX
Lの絶対値よりも小さくなるように、発振回路部EOに対してリアクタンス素子Xsを直列接続することにより(具体的には、発振回路部EOの一方の端子EOAに、リアクタンス素子X
Sの一方の端子を直列接続することにより)、
図7に示すように、インピーダンスのリアクタンス分を0に近づける(インピーダンス平面において、縦軸方向にインピーダンス値をXs移動させる)。これにより、発振回路部EOとリアクタンス素子Xsの合計のアドミッタンスは、アドミッタンス平面上において、
図7に示すように、円周上のサセプタンスB=0に近い領域に位置することとなるから、さらに、発振回路部EOに対して、並列に抵抗R
Pを接続することにより(具体的には、発振回路部EOの他方の端子EOBとリアクタンス素子X
Sの他方の端子との間に抵抗R
Pを接続することにより)、アドミッタンスのサセプタンスGを1/R
P変化させれば(
図7のアドミッタンス平面において、横軸正方向にアドミッタンス値を1/R
P移動させれば)、アドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)の円内の領域に納まり、発振回路部EOの負性抵抗R
Lよりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0065】
このように、本実施の形態2に係る発振回路1では、発振回路部EOに対して直列にリアクタンス素子X
Sが接続され、そして、発振回路部EOに対して並列に抵抗R
Pが接続されており、上記式(3)で示されるアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たした時に、負性抵抗を増加させることができる。よって、本実施の形態2に係る発振回路1では、実施の形態1に係る発振回路1と同様に、絶対値の大きい負性抵抗を得ることができ、水晶振動子の発振を高周波で安定に行うことができる。このため、本実施の形態2に係る発振回路1は、特に、高周波発振回路に好適である。
【0066】
次に、上記した本実施の形態2に係る発振回路1の具体例を、実施例2として
図8を用いて説明する。
【0067】
−実施例2−
本実施例2に係る発振回路1の発振回路部EOの構成は、上記した実施例1に係る発振回路1の発振回路部EOの構成と同様の構成とされており、発振用トランジスタQ1、コンデンサC1,C2、抵抗R1,R2,R3、及び電源電圧Vccから、上記した本実施の形態2に係る発振回路部EOの等価回路が構成されている。
【0068】
即ち、本実施例2に係る発振回路では、
図8に示すように、発振用トランジスタQ1はコレクタ接地とされている。そして、発振用トランジスタQ1のベースに、コンデンサC1(10pF)の一方の端子が接続されるとともに、抵抗R2(22kΩ)と抵抗R3(10kΩ)とからなるバイアス抵抗回路が接続されている。また、コンデンサC1の他方の端子には、コンデンサC2(10pF)が直列に接続されている。また、発振用トランジスタQ1のコレクタは電源電圧Vcc(3.3V)に接続されている。また、発振用トランジスタQ1のエミッタには、抵抗R1(330Ω)が直列接続されている。さらに、この発振用トランジスタQ1のエミッタと抵抗R1との接続点が、コンデンサC1とコンデンサC2との接続点に接続されている。なお、本実施例2の発振回路部EOの負性抵抗R
Lの値は、200MHzにおいて−230Ωである。また、本実施例2の発振回路部EOのリアクアタンスX
Lは、上記の通り、容量性リアクタンスであるコンデンサC1,C2で構成されている。
【0069】
そして、本実施例2では、発振回路部EOの一方の接続端子EOAに、コンデンサC3(1nF)の一方の端子と
図6に示すリアクタンス素子X
SとしてのコイルL
Sの一方の端子とが直列接続され、発振回路部EOの他方の接続端子EOBとコイルL
Sの他方の端子との間に、
図6に示す抵抗R
Pが接続されて本実施例2に係る発振回路1が構成されている。つまり、本実施例2に係る発振回路1では、発振回路部EOに対して(具体的には抵抗R3に対して)、コイルL
Sが直列接続されるとともに、抵抗R
Pが並列接続されている。そして、コイルL
Sの他方の端子と抵抗R
Pの一方の端子との接続点、及び、抵抗R
Pの他方の端子と発振回路部EOの他方の接続端子EOBとの接続点が、水晶振動子を接続するための接続用端子A,Bとされている。つまり、水晶振動子は、抵抗R
Pに対して並列に接続される。
【0070】
なお、本実施例2において、
図8に示すコイルL
Sのインダクタンスは150nHであり、
図8に示す抵抗R
Pの値は330Ωであり、上記式(3)で示される接続用端子A−B間のアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たす。
【0071】
上記した本実施例2に係る発振回路1において、発振回路部EOの高周波帯域における負性抵抗と、この発振回路部EOにリアクタンス素子X
SとしてのコイルL
Sと抵抗R
Pとを接続した発振回路1全体の高周波帯域における負性抵抗とを測定した。その結果を
図9に示す。
図9に示す記号W1の曲線は本実施例2に係る発振回路1の発振回路部EOの負性抵抗の測定値を示し、記号W3の曲線は本実施例2に係る発振回路1全体の負性抵抗の測定値を示す。なお、本実施例2では、基本波形で200MHz付近の周波数帯域の負性抵抗を増加させることを目的としている。
【0072】
図9の記号W1の曲線に示されるように、発振回路部EO単独の負性抵抗は、周波数が上がるにつれて絶対値が下がっていく。これに対して、発振回路部EOにコイルL
Sと抵抗R
Pとを接続した発振回路1全体の負性抵抗は、
図9の記号W3の曲線に示されるように、200〜250MHzの周波数帯域において絶対値が増加していることが分かる。具体的には、発振回路部EOにコイルL
Pと抵抗R
Pとを接続した発振回路1全体の負性抵抗(
図9の記号W3参照)の絶対値は、200MHz付近の周波数で最大値に達し、周波数が約200MHzを超えると、絶対値が下がっていき、250MHzで発振回路部EO単独の負性抵抗(
図9の記号W1参照)とほぼ同じとなる。つまり、本実施例2の発振回路1によれば、発振回路1全体の負性抵抗の絶対値が最大値となる200MHz〜発振回路部EO単独の負性抵抗と発振回路1全体の負性抵抗とが一致する250MHzの高周波数帯域において、発振回路部EOの負性抵抗がコイルL
Pと抵抗R
Pとにより増加されて、絶対値の大きい負性抵抗を得ることができ、水晶振動子の発振を高周波で安定に行うことができる。
【0073】
また、本実施例2に係る発振回路1では、実施例1に係る発振回路1と同様に、発振回路部EOにバイポーラトランジスタが用いられているので、MOS−FETと比較して、フリッカ雑音(1/f雑音)が少なく、また高周波帯域において増幅器としてのゲインを大きくとることができる。このため、本実施例2に係る発振回路は、位相雑音性能の優れた高周波発振回路となり得る。具体的には、本実施例2に係る発振回路は、周波数範囲が200〜250MHzの高周波発振回路として好適に利用することができる。
【0074】
なお、実施例2では、発振回路部EOのリアクタンスX
Lが容量性リアクタンス(コンデンサC1,C2)で構成され、発振回路部EOに直列に接続されたリアクタンス素子X
Sに誘導性リアクタンス素子であるコイルL
Sが使用されているが、発振回路部EOのリアクタンスX
Lと発振回路部EOに直列に接続されるリアクタンス素子X
Sの組合せはこれに限定されるものではない。即ち、発振回路部EOのリアクタンスX
Lと発振回路部EOに接続されるリアクタンス素子X
Sとの組合せは、容量性リアクタンスと誘導性リアクタンス素子との組合せ、誘導性リアクタンスと容量性リアクタンス素子との組合せ、容量性リアクタンスと容量性リアクタンス素子との組合せ、及び、誘導性リアクタンスと誘導性リアクタンス素子との組合せのいずれであってもよい。
【0075】
特に、
図10に示すように、発振回路部EOのリアクタンスX
Lを容量性リアクタンスC
Lで構成し、発振回路部EOに直列に接続されたリアクタンス素子X
Sに容量性リアクタンス素子であるコンデンサC
Sを使用すると、発振回路部EOのリアクタンスX
Lを容量性リアクタンス(コンデンサC1,C2)で構成し、リアクタンス素子X
Sとして誘導性リアクタンス素子(コイルL
P)を使用した
図8に示す発振回路と比べて、発振回路の製造コストを下げることができる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の構成は、上記した実施の形態1及び実施例1、並びに、実施の形態2及び実施例2の構成に限定されるものではない。
【0077】
例えば、上記した実施例1及び実施例2では、水晶振動子の発振を基本波とした発振回路1を用いているが、これに限定されるものではなく、発振用トランジスタにより高調波を得る逓倍方式、もしくは水晶振動子の発振に含まれる高調波を取り出すオーバートーン方式の発振回路であってもよい。この場合、
図5の記号W2及び
図9の記号W3に示すような目的とする周波数以外の発振を止めることができるので、誤発振を防ぐことができる。
【0078】
上記した実施例1及び実施例2では、コレクタ接地の発振回路部EOを用いているが、これに限定されるものではない。
【0079】
例えば、発振回路部EOは、
図11に示すようなエミッタ接地の発振回路部EOであってよい。この
図11に示す発振回路部EOでは、発振用トランジスタQ1のベースにコンデンサC1が接続されるとともに、抵抗R2と抵抗R3とからなるバイアス抵抗回路が接続されている。また、発振用トランジスタQ1のコレクタは電源電圧Vccに接続され、その発振用トランジスタQ1のコレクタ・電源電圧Vccライン間に抵抗R1が直列接続されている。また、発振用トランジスタQ1のコレクタにはコンデンサC2が接続されている。
【0080】
また、発振回路部EOは、
図12に示すようなC−MOSインバータによる発振回路部EOであってもよい。
図12に示す記号R
fはフィードバッグ用抵抗であり、記号C
gはゲート用コンデンサであり、記号C
dはドレイン用コンデンサである。
【0081】
また、上記した実施の形態1及び2(実施例1及び実施例2を含む)に係る発振回路1の接続用端子A,Bには、水晶振動子が直接接続されてもよいし、他の回路を介して水晶振動子が間接的に接続されてもよい。例えば、
図13に示すように発振回路1の接続用端子A,Bを水晶振動子2に直接接続して水晶発振回路3を構成してもよい。或いは、
図14に示すように周波数調整制御を行う周波数制御回路4を介在させて発振回路1と水晶振動子2とを接続して水晶発振回路3を構成してもよい。或いは、
図15に示すように温度補償を行う温度補償回路5を介在させて発振回路1と水晶振動子2とを接続して水晶発振回路3を構成してもよい。
【0082】
また、
図16に示すように、水晶振動子2に誘導性リアクタンス素子L
P2が並列接続されてもよい。この場合、誘導性リアクタンス素子L
P2が水晶振動子2のC
0(並列容量)をキャンセルし、周波数可変量の確保や負性抵抗のC
0による低下を防ぐことが可能となる。
【0083】
さらに、
図14,16に示す周波数制御回路4と、
図15に示す温度補償回路5とを介在させて発振回路1と水晶振動子2とが接続されて水晶発振回路3が構成されてもよい。
【0084】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。