特許第5796464号(P5796464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796464
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】発振回路、及び、発振回路の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20151001BHJP
   H03B 5/36 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   H03B5/32 J
   H03B5/36
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-248707(P2011-248707)
(22)【出願日】2011年11月14日
(65)【公開番号】特開2013-106190(P2013-106190A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2014年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重松 俊輔
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−048652(JP,A)
【文献】 特開2010−258782(JP,A)
【文献】 特開2005−159386(JP,A)
【文献】 特開2000−209030(JP,A)
【文献】 特開昭62−085505(JP,A)
【文献】 米国特許第6172576(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0061425(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
H03B 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備える発振回路であって、
前記発振回路部の等価回路を、負性抵抗RLとリアクタンスXLとが直接接続された直列モデルで表わした場合において、
前記発振回路部の一方の端子にリアクタンス素子XSの一方の端子が直列接続され、前記発振回路部の他方の端子と前記リアクタンス素子XSの他方の端子との間に抵抗RPが接続され、
前記リアクタンス素子XSの他方の端子と前記抵抗RPの一方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う一方の圧電振動子接続用端子とされ、
前記抵抗RPの他方の端子と前記発振回路部の他方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う他方の圧電振動子接続用端子とされ、
下記式(3):
【数5】
(式(3)中、Gはコンダクタンス、Bはサセプタンス、RLは前記発振回路部の負性抵抗、XLは前記発振回路部のリアクタンス、XSは前記リアクタンス素子のリアクタンス、RPは前記抵抗を意味する。)で表される前記発振回路部、前記リアクタンス素子XS、及び前記抵抗RPのアドミッタンスの合計のコンダクタンスGとサセプタンスBとが、下記式(2):
【数6】
(式(2)中のGはコンダクタンス、Bはサセプタンス、RLは前記発振回路部の負性抵抗を意味する。)を満たし、
前記発振回路部の前記リアクタンスXLが、容量性リアクタンスで構成され、
前記リアクタンス素子XSが、容量性リアクタンス素子であることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備える発振回路の製造方法であって、
前記発振回路部として、負性抵抗RLとリアクタンスXLとを直接接続した直列モデルで表した等価回路を用い、
前記発振回路部に対して、リアクタンス素子XSを直列に接続し、抵抗RPを並列に接続する工程において、
前記発振回路部のリアクタンスXLと前記リアクタンス素子XSの合計のリアクタンスの絶対値が、前記発振回路部のリアクタンスXLの絶対値よりも小さくなるように、前記発振回路部の一方の端子に、前記リアクタンス素子XSの一方の端子を直列接続し、次いで、下記式(3):
【数7】
(式(3)中、Gはコンダクタンス、Bはサセプタンス、RLは前記発振回路部の負性抵抗、XLは前記発振回路部のリアクタンス、XSは前記リアクタンス素子のリアクタンス、RPは前記抵抗を意味する。)で表される前記発振回路部、前記リアクタンス素子XS、及び前記抵抗RPのアドミッタンスの合計のコンダクタンスGとサセプタンスBとが、下記式(2):
【数8】
(式(2)中のGはコンダクタンス、Bはサセプタンス、RLは前記発振回路部の負性抵抗を意味する。)を満たすように、前記発振回路部の他方の端子と前記リアクタンス素子XSの他方の端子との間に前記抵抗RPを接続し、
前記発振回路部の前記リアクタンスXLが、容量性リアクタンスで構成され、
前記リアクタンス素子XSが、容量性リアクタンス素子であることを特徴とする発振回路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の周波数で励振する圧電振動子の発振回路、及び発振回路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動子の発振回路として、コルピッツ型発振回路などがよく用いられている。
【0003】
コルピッツ型発振回路の一例として、下記する特許文献1に記載の発振回路がある。
【0004】
特許文献1の発振回路は、発振用トランジスタのベースと接地(GND)間に負荷容量の一部となるコンデンサとコンデンサとの直列回路を接続し、発振用トランジスタのエミッタと接地間にエミッタ抵抗となる抵抗と抵抗との直列回路を接続し、コンデンサとコンデンサとの直列回路の接続中点と抵抗と抵抗との直列回路の接続中点とを接続している。また、発振用トランジスタのベースと接地間に圧電振動子を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−017258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した特許文献1に示す発振回路では、高周波発振の際に十分な負性抵抗を確保することが難しく、その結果、安定した発振が難しい。
【0007】
具体的には、上記したような発振回路の等価回路を抵抗RL、リアクタンスXLの直列モデルで表した場合、図17に示すような回路となる。この図17に示す等価回路において、発振が起動するためには、RLの値が圧電振動子の負荷時等価抵抗よりも絶対値の大きな負の値である必要があり、この負の抵抗RLは一般に負性抵抗と呼ばれる。高周波発振の場合、負性抵抗の絶対値が小さくなり(図5の記号W1の曲線参照)、圧電振動子の負荷時等価抵抗よりも負性抵抗RLの絶対値が小さい場合、圧電振動子の不発振などの不具合を生じる。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、圧電振動子の発振を高周波で安定に行うことができる発振回路、及びそのような発振回路の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
また、上記の目的を達成するため、圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備える発振回路であって、前記発振回路部の等価回路を、負性抵抗RLとリアクタンスXLとが直接接続された直列モデルで表わした場合において、前記発振回路部の一方の端子にリアクタンス素子XSの一方の端子が直列接続され、前記発振回路部の他方の端子と前記リアクタンス素子XSの他方の端子との間に抵抗RPが接続され、前記リアクタンス素子XSの他方の端子と前記抵抗RPの一方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う一方の圧電振動子接続用端子とされ、前記抵抗RPの他方の端子と前記発振回路部の他方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う他方の圧電振動子接続用端子とされ、下記式(3):
【0023】
【数5】
【0024】
(式(3)中、Gはコンダクタンス、Bはサセプタンス、RLは前記発振回路部の負性抵抗、XLは前記発振回路部のリアクタンス、XSは前記リアクタンス素子のリアクタンス、RPは前記抵抗を意味する。)で表される前記発振回路部、前記リアクタンス素子XS、及び前記抵抗RPのアドミッタンスの合計のコンダクタンスGとサセプタンスBとが、下記式(2):
【0025】
【数6】
【0026】
(式(2)中のGはコンダクタンス、Bはサセプタンス、RLは前記発振回路部の負性抵抗を意味する。)を満たし、前記発振回路部の前記リアクタンスXLが、容量性リアクタンスで構成され、前記リアクタンス素子XSが、容量性リアクタンス素子であることを特徴とする。
【0027】
具体的には、図6の本発明の一実施の形態に係る発振回路の概略図に示すように、本発明の発振回路は、発振回路部EOの等価回路を、負性抵抗RLとリアクタンスXLとが直接接続された直列モデルで表わした場合において、発振回路部EOの一方の端子EOAにリアクタンス素子XSの一方の端子が直列接続され、前記発振回路部の他方の端子EOBとリアクタンス素子XSの他方の端子との間に抵抗RPが接続されており、上記式(3)で示されるアドミッタンスの合計が、上記式(2)を満たすことで、負性抵抗を増加させることができる構成とされている。このため、本発明の他の発振回路によれば、圧電振動子の発振を高周波で安定に行うことが可能となる。
【0028】
上記構成において、前記発振回路部の前記リアクタンスXLが、容量性リアクタンスで構成され、前記リアクタンス素子XSが、容量性リアクタンス素子であってもよい。
【0029】
この場合、前記発振回路部の前記リアクタンスが誘導性リアクタンスで構成される場合、又は、前記リアクタンス素子が誘導性リアクタンス素子である場合と比べて、発振回路の製造コストを下げることができる。
【0030】
また、本発明に係る他の発振回路の製造方法は、圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備える発振回路の製造方法であって、前記発振回路部として、負性抵抗RLとリアクタンスXLとを直接接続した直列モデルで表した等価回路を用い、前記発振回路部に対して、リアクタンス素子XSを直列に接続し、抵抗RPを並列に接続する工程において、前記発振回路部のリアクタンスXLと前記リアクタンス素子XSの合計のリアクタンスの絶対値が、前記発振回路部のリアクタンスXLの絶対値よりも小さくなるように、前記発振回路部の一方の端子に、前記リアクタンス素子XSの一方の端子を直列接続し、次いで、下記式(3):
【0031】
【数7】
【0032】
(式(3)中、Gはコンダクタンス、Bはサセプタンス、RLは前記発振回路部の負性抵抗、XLは前記発振回路部のリアクタンス、XSは前記リアクタンス素子のリアクタンス、RPは前記抵抗を意味する。)で表される前記発振回路部、前記リアクタンス素子XS、及び前記抵抗RPのアドミッタンスの合計のコンダクタンスGとサセプタンスBとが、下記式(2):
【0033】
【数8】
【0034】
(式(2)中のGはコンダクタンス、Bはサセプタンス、RLは前記発振回路部の負性抵抗を意味する。)を満たすように、前記発振回路部の他方の端子と前記リアクタンス素子の他方の端子との間に前記抵抗RPを接続し、前記発振回路部の前記リアクタンスXLが、容量性リアクタンスで構成され、前記リアクタンス素子XSが、容量性リアクタンス素子であることを特徴とする。
【0035】
例えば、図6に示す本発明の一実施の形態に係る発振回路1においても、発振回路部EO、リアクタンス素子XS、及び、抵抗RPのインピーダンスの合計の抵抗分をRとすると、この抵抗分Rの絶対値が、発振回路部EOの負性抵抗RLの絶対値よりも大きく、負の値となる領域(即ち、R<RLとなる領域)は、図2に示すインピーダンス平面上の斜線で示す領域となる。このインピーダンス平面上の斜線で示す領域は、上記したように、アドミッタンスに変換すると、図2に示すアドミッタンス平面上の斜線で示す円内の領域、即ち、上記式(2)で示される領域の範囲内となる。よって、上記式(3)で示されるアドミッタンスのコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たすことが、発振回路部EOの負性抵抗RLよりも絶対値の大きい負性抵抗を得る(即ち、負性抵抗を増加させる)条件となる。
【0036】
そこで、本発明の他の発振回路の製造方法では、発振回路部EOのリアクタンスXLとリアクタンス素子XSの合計のリアクタンスの絶対値が、発振回路部EOのリアクタンスXLの絶対値よりも小さくなるように、発振回路部EOの一方の端子に、リアクタンス素子Xsの一方の端子を直列接続することにより、図7に示すように、インピーダンスのリアクタンス分を0に近づける(インピーダンス平面において、縦軸方向にインピーダンス値をXs移動させる)。これにより、発振回路部EOとリアクタンス素子Xsの合計のアドミッタンスは、アドミッタンス平面上において、図7に示すように、円周上のサセプタンスB=0に近い領域に位置することとなるから、さらに、発振回路部EOに対して、並列に抵抗RPを接続することにより、アドミッタンスのサセプタンスGを1/RP変化させれば(図7のアドミッタンス平面において、横軸正方向にアドミッタンス値を1/RP移動させれば)、アドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBを、上記式(2)の円内の領域に納めることができ、発振回路部EOの負性抵抗RLよりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。このように、本発明の他の発振回路の製造方法によれば、発振回路部の負性抵抗を拡大することができることから、本発明の他の発振回路の製造方法は、発振回路の負性抵抗拡大方法とも言える。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、圧電振動子の発振を高周波で安定に行うことが可能な発振回路、及びそのような発振回路の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る発振回路の構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明に係る発振回路において、発振回路部の負性抵抗を拡大する方法を説明するための説明図である。
図3図3は、実施の形態1に係る発振回路において、発振回路部の負性抵抗を拡大する方法を説明するための説明図である。
図4図4は、実施の形態1の実施例1に係る発振回路の回路図である。
図5図5は、実施例1に係る発振回路の発振回路部の高周波帯域における負性抵抗と、実施例1に係る発振回路全体の高周波帯域における負性抵抗とを示すグラフ図である。
図6図6は、本発明の実施の形態2に係る発振回路の構成の一例を示す概略図である。
図7図7は、実施の形態2に係る発振回路において、発振回路部の負性抵抗を拡大する方法を説明するための説明図である。
図8図8は、実施の形態2の実施例2に係る発振回路の回路図である。
図9図9は、実施例2に係る発振回路の発振回路部の高周波帯域における負性抵抗と、実施例2に係る発振回路全体の高周波帯域における負性抵抗とを示すグラフ図である。
図10図10は、実施の形態2に係る発振回路の構成の他の例を示す概略図である。
図11図11は、本発明の他の形態に係る発振回路の発振回路部の構成を示す回路図である。
図12図12は、本発明の他の形態に係る発振回路の発振回路部の構成を示す回路図である。
図13図13は、本発明の発振回路が適用された水晶発振回路の構成例を示す概略図である。
図14図14は、本発明の発振回路が適用された水晶発振回路の構成例を示す概略図である。
図15図15は、本発明の発振回路が適用された水晶発振回路の構成例を示す概略図である。
図16図16は、本発明の発振回路が適用された水晶発振回路の構成例を示す概略図である。
図17図17は、従来例に係る発振回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態1及び2について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態1及び2(実施例1及び2を含む)では、圧電振動子として水晶振動子を適用した場合を示す。
【0040】
<実施の形態1>
本実施の形態1に係る発振回路1は、水晶振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部EOと、発振回路1の負性抵抗を増加させるためのリアクタンス素子XP及び抵抗RP
を備えている。なお、ここでいう発振回路部EOなどの本実施の形態1の発振回路1の具体例は、以下の実施例1に示す。
【0041】
本実施の形態1に係る発振回路1は、図1に示すように、負性抵抗RLとリアクタンスXLとが直接接続された直列モデルで発振回路部EOの等価回路を表わした場合において、前記発振回路部EOに対して、リアクタンス素子XPと抵抗RPとが並列に接続された構成とされている。
【0042】
また、発振回路部EOの一方の端子EOAとリアクタンス素子XPの一方の端子と抵抗RPの一方の端子との接続点が、水晶振動子との接続を行う接続用端子A(本発明でいう一方の圧電振動子接続用端子)とされている。そして、発振回路部EOの他方の端子EOBとリアクタンス素子XPの他方の端子と抵抗RPの他方の端子との接続点が、水晶振動子との接続を行う接続用端子B(本発明でいう他方の圧電振動子接続用端子)とされている。
【0043】
この本実施の形態1に係る発振回路1において、接続用端子A−B間のアドミッタンス(発振回路部EO、リアクタンス素子XP、及び、抵抗RPのアドミッタンスの合計)のコンダクタンスG及びサセプタンスBは、上記式(1)にて表わすことができる。そして、このような本実施の形態1に係る発振回路1では、上記式(1)で示すアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが上記式(2)を満たした時に、発振回路部EOの負性抵抗よりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0044】
具体的には、発振回路1において、接続用端子A−B間のインピーダンスの抵抗分(具体的には、発振回路部EO、リアクタンス素子XP、及び、抵抗RPのインピーダンスの合計の抵抗分)をRとすると、接続用端子A−B間のインピーダンスの抵抗分Rの絶対値が、発振回路部EOの負性抵抗RLの絶対値よりも大きく、負の値となる領域(即ち、R<RLとなる領域)は、図2に示すインピーダンス平面上の斜線で示す領域となる。このインピーダンス平面上の斜線で示す領域は、アドミッタンスに変換すると、図2に示すアドミッタンス平面上の斜線で示す円内の領域、即ち、上記式(2)で示される領域の範囲内となる。よって、上記式(1)で示される接続用端子A−B間のアドミッタンスのコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たすことが、発振回路部EOの負性抵抗RLよりも絶対値の大きい負性抵抗を得る(即ち、負性抵抗を増加させる)条件となる。
【0045】
つまり、本実施の形態1に係る発振回路の製造に際し、発振回路部EOとして、負性抵抗RLとリアクタンスXLとを直接接続した直列モデルで表した等価回路を用い、発振回路部EOに対して、リアクタンス素子XPと抵抗RPとを並列に接続する工程において、上記式(1)で表される発振回路部EO、リアクタンス素子XP、及び抵抗RPのアドミッタンスの合計のコンダクタンスGとサセプタンスBとが、上記式(2)を満たすように、発振回路部EOに対して、リアクタンス素子XPと抵抗RPとを並列に接続すれば、発振回路部EOの負性抵抗RLよりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0046】
より具体的には、図2に示すアドミッタンス平面において、発振回路部EOのアドミッタンスは、図3に示すように、円周上にあるので、発振回路部EOに対して並列にリアクタンス素子XPを接続することにより、アドミッタンスのサセプタンスBを−1/XP変化させ(図3のアドミッタンス平面において、縦軸方向にアドミッタンス値を−1/XP移動させ)、さらに、発振回路部EOに対して並列に抵抗RPを接続することにより、アドミッタンスのサセプタンスGを1/RP変化させて(図3のアドミッタンス平面において、横軸正方向にアドミッタンス値を1/RP移動させて)、アドミッタンスの合計が図2及び図3に示すアドミッタンス平面上の円内の領域内に納まるようにすることで、発振回路部EOの負性抵抗よりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0047】
このように、上記した本実施の形態1に係る発振回路1では、負性抵抗RLとリアクタンスXLとが直接接続された直列モデルで発振回路部EOの等価回路を表わした場合において、発振回路部EOに対して並列に、リアクタンス素子XP及び抵抗RPが接続されており、上記式(1)で示されるアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たした時、負性抵抗を増加させることができる。よって、本実施の形態1に係る発振回路1では、絶対値の大きい負性抵抗を得ることができ、圧電振動子の発振を高周波で安定に行うことができる。このため、本実施の形態1に係る発振回路1は、特に、高周波発振回路に好適である。
【0048】
次に、上記した本実施の形態1に係る発振回路1の具体例を、実施例1として図4を用いて説明する。
【0049】
−実施例1−
本実施例1に係る発振回路1では、図4に示すように、発振用トランジスタQ1はコレクタ接地とされている。そして、発振用トランジスタQ1のベースに、コンデンサC1(10pF)の一方の端子が接続されるとともに、抵抗R2(22kΩ)と抵抗R3(10kΩ)とからなるバイアス抵抗回路が接続されている。また、コンデンサC1の他方の端子には、コンデンサC2(10pF)が直列に接続されている。また、発振用トランジスタQ1のコレクタは電源電圧Vcc(3.3V)に接続されている。また、発振用トランジスタQ1のエミッタには、抵抗R1(330Ω)が直列接続されている。さらに、この発振用トランジスタQ1のエミッタと抵抗R1との接続点が、コンデンサC1とコンデンサC2との接続点に接続されている。
【0050】
そして、これら発振用トランジスタQ1、コンデンサC1,C2、抵抗R1,R2,R3、及び電源電圧Vccから、上記した本実施の形態1に係る発振回路部EOの等価回路が構成されている。なお、本実施例1の発振回路部EOの負性抵抗RLの値は、200MHzにおいて−230Ωである。また、本実施例1の発振回路部EOのリアクアタンスXLは、上記の通り、容量性リアクタンスであるコンデンサC1,C2で構成されている。
【0051】
この発振回路部EOの一方の接続端子EOAには、コンデンサC3(1nF)の一方の端子が直列接続され、このコンデンサC3の他方の端子と発振回路部EOの他方の接続端子EOBとの間に、図1に示すリアクタンス素子XPとしてのコイルLPが接続されている。さらに、コンデンサC3の他方の端子とコイルLPとの接続点、及び、発振回路部EOの他方の接続端子EOBとコイルLPとの接続点に図1に示す抵抗RPが接続されている。即ち、発振回路部EOの一方の接続端子EOAに、コンデンサC3(1nF)を介して、図1に示すコイルLPの一方の端子と、抵抗RPの一方の端子とが接続され、発振回路部EOの他方の接続端子EOBに、コイルLPの他方の端子と、抵抗RPの他方の端子とが接続されることにより、発振回路部EOに対して(具体的には抵抗R3に対して)、コイルLPと抵抗RPとが並列に接続されている。そして、これら発振回路部EOと、コイルLPと、抵抗RPとの両接続点が、水晶振動子を接続するための接続用端子A,Bとされている。つまり、水晶振動子は、コイルLP及び抵抗RPに対して並列に接続される。
【0052】
なお、本実施例1において、図4に示すコイルLPのインダクタンスは330nHであり、図4に示す抵抗RPの値は1kΩであり、上記式(1)で示される接続用端子A−B間のアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが上記式(2)を満たす。
【0053】
上記した本実施例1に係る発振回路1において、発振回路部EOの高周波帯域における負性抵抗と、この発振回路部EOにリアクタンス素子XPとしてのコイルLPと抵抗RPとを接続した発振回路1全体の高周波帯域における負性抵抗を測定した。その結果を図5に示す。図5に示す記号W1の曲線は本実施例1に係る発振回路1の発振回路部EOの負性抵抗の測定値を示し、記号W2の曲線は本実施例1に係る発振回路1全体の負性抵抗の測定値を示す。なお、本実施例1では、基本波形で200MHz付近の周波数帯域の負性抵抗を増加させることを目的としている。
【0054】
図5の記号W1の曲線に示されるように、発振回路部EO単独の負性抵抗は、周波数が上がるにつれて絶対値が下がっていく。これに対して、発振回路部EOにコイルLPと抵抗RPとを接続した発振回路1全体の負性抵抗は、図5の記号W2の曲線に示されるように、高周波(特に200MHz以上の周波数帯域)において絶対値が増加していることが分かる。このように、本実施例1の発振回路1によれば、200MHz以上の周波数帯域において、発振回路部EOの負性抵抗がコイルLPと抵抗RPとにより増加されるため、絶対値の大きい負性抵抗を得ることができ、水晶振動子の発振を高周波で安定に行うことができる。
【0055】
また、本実施例1に係る発振回路1では、発振回路部EOにバイポーラトランジスタが用いられているので、MOS−FETと比較して、フリッカ雑音(1/f雑音)が少なく、また高周波帯域において増幅器としてのゲインを大きくとることができる。このため、本実施例1に係る発振回路は、位相雑音性能の優れた高周波発振回路となり得る。具体的には、本実施例1に係る発振回路は、200MHz以上の高周波発振回路として好適に利用することができる。
【0056】
また、上記した実施例1では、発振回路部EOのリアクタンスXLが容量性リアクタンス(コンデンサC1,C2)で構成され、発振回路部EOに並列に接続されたリアクタンス素子XPに誘導性リアクタンス素子であるコイルLPが使用されているが、発振回路部EOのリアクタンスXLと発振回路部EOに並列に接続されるリアクタンス素子XPの組合せはこれに限定されるものではない。即ち、発振回路部EOのリアクタンスXLと発振回路部EOに並列に接続されるリアクタンス素子XPとの組合せは、容量性リアクタンスと誘導性リアクタンス素子との組合せ、誘導性リアクタンスと容量性リアクタンス素子との組合せ、容量性リアクタンスと容量性リアクタンス素子との組合せ、及び、誘導性リアクタンスと誘導性リアクタンス素子との組合せのいずれであってもよい。特に、発振回路部EOのリアクタンスXLを容量性リアクタンスで構成し、発振回路部EOに並列に接続されたリアクタンス素子XPに容量性リアクタンス素子を使用すると、発振回路の製造コストの低価格化を図ることができる。
【0057】
<実施の形態2>
本実施の形態2に係る発振回路1は、水晶振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部EO、発振回路1の負性抵抗を増加させるためのリアクタンス素子XS及び抵抗RP
を備えている。なお、ここでいう発振回路部EOなどの本実施の形態2の発振回路1の具体例は、以下の実施例2に示す。
【0058】
本実施の形態2に係る発振回路1は、図6に示すように、負性抵抗RLとリアクタンスXLとが直接接続された直列モデルで発振回路部EOの等価回路を表わした場合に、発振回路部EOの一方の端子EOAに、リアクタンス素子XSの一方の端子が直列接続され、発振回路部EOの他方の端子EOBとリアクタンス素子XSの他方の端子との間に抵抗RPが接続された構成とされている。
【0059】
また、リアクタンス素子XSの他方の端子と抵抗RPの一方の端子との接続点が、水晶振動子との接続を行う接続用端子A(本発明でいう一方の圧電振動子接続用端子)とされ、抵抗RPの他方の端子と発振回路部EOの他方の端子EOBとの接続点が、水晶振動子との接続を行う接続用端子B(本発明でいう他方の圧電振動子接続用端子)とされている。
【0060】
本実施の形態2に係る発振回路1において、接続用端子A−B間のアドミッタンス(発振回路部EO、リアクタンス素子XS、及び、抵抗RPのアドミッタンスの合計)のコンダクタンスG及びサセプタンスBは、上記式(3)にて表すことができる。
【0061】
また、本実施の形態2に係る発振回路1では、上記式(3)で示すアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが上記式(2)を満たした時に、発振回路部EOの負性抵抗よりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0062】
具体的には、上記実施の形態1において説明した通り、発振回路1において、接続用端子A−B間のインピーダンスの抵抗分(具体的には、発振回路部EO、リアクタンス素子XS、及び、抵抗RPのインピーダンスの合計の抵抗分)をRとすると、接続用端子A−B間のインピーダンスの抵抗分Rの絶対値が、発振回路部EOの負性抵抗RLの絶対値よりも大きく、負の値となる領域(即ち、R<RLとなる領域)は、図2に示すインピーダンス平面上の斜線で示す領域となる。このインピーダンス平面上の斜線で示す領域は、アドミッタンスに変換すると、図2に示すアドミッタンス平面上の斜線で示す円内の領域、即ち、上記式(2)で示される領域の範囲内となる。よって、発振回路部EOに対して、直列にリアクタンス素子XSが接続され、並列に抵抗RPが接続された本実施の形態2に係る発振回路1では、上記式(3)で示される接続用端子A−B間のアドミッタンスのコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たすことが、発振回路部EOの負性抵抗RLよりも絶対値の大きい負性抵抗を得る(即ち、負性抵抗を増加させる)条件となる。
【0063】
つまり、本実施の形態2に係る発振回路の製造に際し、発振回路部EOとして、負性抵抗RLとリアクタンスXLとを直接接続した直列モデルで表した等価回路を用い、発振回路部EOに対して、リアクタンス素子XSを直列に接続し、抵抗RPを並列に接続する工程において、発振回路部EOのリアクタンスXとリアクタンス素子Xの合計のリアクタンスの絶対値が、発振回路部EOのリアクタンスXの絶対値よりも小さくなるように、発振回路部EOに対してリアクタンス素子Xsを直列接続し、次いで、上記式(3)で表される発振回路部EO、リアクタンス素子XS、及び抵抗RPのアドミッタンスの合計のコンダクタンスGとサセプタンスBとが、上記式(2)を満たすように、発振回路部EOに対して、抵抗RPを並列に接続すれば、発振回路部EOの負性抵抗RLよりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0064】
具体的には、発振回路部EOのリアクタンスXLとリアクタンス素子XSの合計のリアクタンスの絶対値が、発振回路部EOのリアクタンスXLの絶対値よりも小さくなるように、発振回路部EOに対してリアクタンス素子Xsを直列接続することにより(具体的には、発振回路部EOの一方の端子EOAに、リアクタンス素子XSの一方の端子を直列接続することにより)、図7に示すように、インピーダンスのリアクタンス分を0に近づける(インピーダンス平面において、縦軸方向にインピーダンス値をXs移動させる)。これにより、発振回路部EOとリアクタンス素子Xsの合計のアドミッタンスは、アドミッタンス平面上において、図7に示すように、円周上のサセプタンスB=0に近い領域に位置することとなるから、さらに、発振回路部EOに対して、並列に抵抗RPを接続することにより(具体的には、発振回路部EOの他方の端子EOBとリアクタンス素子XSの他方の端子との間に抵抗RPを接続することにより)、アドミッタンスのサセプタンスGを1/RP変化させれば(図7のアドミッタンス平面において、横軸正方向にアドミッタンス値を1/RP移動させれば)、アドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)の円内の領域に納まり、発振回路部EOの負性抵抗RLよりも絶対値の大きい負性抵抗を得ることが可能となる。
【0065】
このように、本実施の形態2に係る発振回路1では、発振回路部EOに対して直列にリアクタンス素子XSが接続され、そして、発振回路部EOに対して並列に抵抗RPが接続されており、上記式(3)で示されるアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たした時に、負性抵抗を増加させることができる。よって、本実施の形態2に係る発振回路1では、実施の形態1に係る発振回路1と同様に、絶対値の大きい負性抵抗を得ることができ、水晶振動子の発振を高周波で安定に行うことができる。このため、本実施の形態2に係る発振回路1は、特に、高周波発振回路に好適である。
【0066】
次に、上記した本実施の形態2に係る発振回路1の具体例を、実施例2として図8を用いて説明する。
【0067】
−実施例2−
本実施例2に係る発振回路1の発振回路部EOの構成は、上記した実施例1に係る発振回路1の発振回路部EOの構成と同様の構成とされており、発振用トランジスタQ1、コンデンサC1,C2、抵抗R1,R2,R3、及び電源電圧Vccから、上記した本実施の形態2に係る発振回路部EOの等価回路が構成されている。
【0068】
即ち、本実施例2に係る発振回路では、図8に示すように、発振用トランジスタQ1はコレクタ接地とされている。そして、発振用トランジスタQ1のベースに、コンデンサC1(10pF)の一方の端子が接続されるとともに、抵抗R2(22kΩ)と抵抗R3(10kΩ)とからなるバイアス抵抗回路が接続されている。また、コンデンサC1の他方の端子には、コンデンサC2(10pF)が直列に接続されている。また、発振用トランジスタQ1のコレクタは電源電圧Vcc(3.3V)に接続されている。また、発振用トランジスタQ1のエミッタには、抵抗R1(330Ω)が直列接続されている。さらに、この発振用トランジスタQ1のエミッタと抵抗R1との接続点が、コンデンサC1とコンデンサC2との接続点に接続されている。なお、本実施例2の発振回路部EOの負性抵抗RLの値は、200MHzにおいて−230Ωである。また、本実施例2の発振回路部EOのリアクアタンスXLは、上記の通り、容量性リアクタンスであるコンデンサC1,C2で構成されている。
【0069】
そして、本実施例2では、発振回路部EOの一方の接続端子EOAに、コンデンサC3(1nF)の一方の端子と図6に示すリアクタンス素子XSとしてのコイルLSの一方の端子とが直列接続され、発振回路部EOの他方の接続端子EOBとコイルLSの他方の端子との間に、図6に示す抵抗RPが接続されて本実施例2に係る発振回路1が構成されている。つまり、本実施例2に係る発振回路1では、発振回路部EOに対して(具体的には抵抗R3に対して)、コイルLSが直列接続されるとともに、抵抗RPが並列接続されている。そして、コイルLSの他方の端子と抵抗RPの一方の端子との接続点、及び、抵抗RPの他方の端子と発振回路部EOの他方の接続端子EOBとの接続点が、水晶振動子を接続するための接続用端子A,Bとされている。つまり、水晶振動子は、抵抗RPに対して並列に接続される。
【0070】
なお、本実施例2において、図8に示すコイルLSのインダクタンスは150nHであり、図8に示す抵抗RPの値は330Ωであり、上記式(3)で示される接続用端子A−B間のアドミッタンスの合計のコンダクタンスG及びサセプタンスBが、上記式(2)を満たす。
【0071】
上記した本実施例2に係る発振回路1において、発振回路部EOの高周波帯域における負性抵抗と、この発振回路部EOにリアクタンス素子XSとしてのコイルLSと抵抗RPとを接続した発振回路1全体の高周波帯域における負性抵抗とを測定した。その結果を図9に示す。図9に示す記号W1の曲線は本実施例2に係る発振回路1の発振回路部EOの負性抵抗の測定値を示し、記号W3の曲線は本実施例2に係る発振回路1全体の負性抵抗の測定値を示す。なお、本実施例2では、基本波形で200MHz付近の周波数帯域の負性抵抗を増加させることを目的としている。
【0072】
図9の記号W1の曲線に示されるように、発振回路部EO単独の負性抵抗は、周波数が上がるにつれて絶対値が下がっていく。これに対して、発振回路部EOにコイルLSと抵抗RPとを接続した発振回路1全体の負性抵抗は、図9の記号W3の曲線に示されるように、200〜250MHzの周波数帯域において絶対値が増加していることが分かる。具体的には、発振回路部EOにコイルLPと抵抗RPとを接続した発振回路1全体の負性抵抗(図9の記号W3参照)の絶対値は、200MHz付近の周波数で最大値に達し、周波数が約200MHzを超えると、絶対値が下がっていき、250MHzで発振回路部EO単独の負性抵抗(図9の記号W1参照)とほぼ同じとなる。つまり、本実施例2の発振回路1によれば、発振回路1全体の負性抵抗の絶対値が最大値となる200MHz〜発振回路部EO単独の負性抵抗と発振回路1全体の負性抵抗とが一致する250MHzの高周波数帯域において、発振回路部EOの負性抵抗がコイルLPと抵抗RPとにより増加されて、絶対値の大きい負性抵抗を得ることができ、水晶振動子の発振を高周波で安定に行うことができる。
【0073】
また、本実施例2に係る発振回路1では、実施例1に係る発振回路1と同様に、発振回路部EOにバイポーラトランジスタが用いられているので、MOS−FETと比較して、フリッカ雑音(1/f雑音)が少なく、また高周波帯域において増幅器としてのゲインを大きくとることができる。このため、本実施例2に係る発振回路は、位相雑音性能の優れた高周波発振回路となり得る。具体的には、本実施例2に係る発振回路は、周波数範囲が200〜250MHzの高周波発振回路として好適に利用することができる。
【0074】
なお、実施例2では、発振回路部EOのリアクタンスXLが容量性リアクタンス(コンデンサC1,C2)で構成され、発振回路部EOに直列に接続されたリアクタンス素子XSに誘導性リアクタンス素子であるコイルLSが使用されているが、発振回路部EOのリアクタンスXLと発振回路部EOに直列に接続されるリアクタンス素子XSの組合せはこれに限定されるものではない。即ち、発振回路部EOのリアクタンスXLと発振回路部EOに接続されるリアクタンス素子XSとの組合せは、容量性リアクタンスと誘導性リアクタンス素子との組合せ、誘導性リアクタンスと容量性リアクタンス素子との組合せ、容量性リアクタンスと容量性リアクタンス素子との組合せ、及び、誘導性リアクタンスと誘導性リアクタンス素子との組合せのいずれであってもよい。
【0075】
特に、図10に示すように、発振回路部EOのリアクタンスXLを容量性リアクタンスCLで構成し、発振回路部EOに直列に接続されたリアクタンス素子XSに容量性リアクタンス素子であるコンデンサCSを使用すると、発振回路部EOのリアクタンスXLを容量性リアクタンス(コンデンサC1,C2)で構成し、リアクタンス素子XSとして誘導性リアクタンス素子(コイルLP)を使用した図8に示す発振回路と比べて、発振回路の製造コストを下げることができる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の構成は、上記した実施の形態1及び実施例1、並びに、実施の形態2及び実施例2の構成に限定されるものではない。
【0077】
例えば、上記した実施例1及び実施例2では、水晶振動子の発振を基本波とした発振回路1を用いているが、これに限定されるものではなく、発振用トランジスタにより高調波を得る逓倍方式、もしくは水晶振動子の発振に含まれる高調波を取り出すオーバートーン方式の発振回路であってもよい。この場合、図5の記号W2及び図9の記号W3に示すような目的とする周波数以外の発振を止めることができるので、誤発振を防ぐことができる。
【0078】
上記した実施例1及び実施例2では、コレクタ接地の発振回路部EOを用いているが、これに限定されるものではない。
【0079】
例えば、発振回路部EOは、図11に示すようなエミッタ接地の発振回路部EOであってよい。この図11に示す発振回路部EOでは、発振用トランジスタQ1のベースにコンデンサC1が接続されるとともに、抵抗R2と抵抗R3とからなるバイアス抵抗回路が接続されている。また、発振用トランジスタQ1のコレクタは電源電圧Vccに接続され、その発振用トランジスタQ1のコレクタ・電源電圧Vccライン間に抵抗R1が直列接続されている。また、発振用トランジスタQ1のコレクタにはコンデンサC2が接続されている。
【0080】
また、発振回路部EOは、図12に示すようなC−MOSインバータによる発振回路部EOであってもよい。図12に示す記号Rfはフィードバッグ用抵抗であり、記号Cgはゲート用コンデンサであり、記号Cdはドレイン用コンデンサである。
【0081】
また、上記した実施の形態1及び2(実施例1及び実施例2を含む)に係る発振回路1の接続用端子A,Bには、水晶振動子が直接接続されてもよいし、他の回路を介して水晶振動子が間接的に接続されてもよい。例えば、図13に示すように発振回路1の接続用端子A,Bを水晶振動子2に直接接続して水晶発振回路3を構成してもよい。或いは、図14に示すように周波数調整制御を行う周波数制御回路4を介在させて発振回路1と水晶振動子2とを接続して水晶発振回路3を構成してもよい。或いは、図15に示すように温度補償を行う温度補償回路5を介在させて発振回路1と水晶振動子2とを接続して水晶発振回路3を構成してもよい。
【0082】
また、図16に示すように、水晶振動子2に誘導性リアクタンス素子LP2が並列接続されてもよい。この場合、誘導性リアクタンス素子LP2が水晶振動子2のC0(並列容量)をキャンセルし、周波数可変量の確保や負性抵抗のC0による低下を防ぐことが可能となる。
【0083】
さらに、図14,16に示す周波数制御回路4と、図15に示す温度補償回路5とを介在させて発振回路1と水晶振動子2とが接続されて水晶発振回路3が構成されてもよい。
【0084】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、高周波発振回路に好適である。
【符号の説明】
【0086】
1 発振回路
2 水晶振動子
3 水晶発振回路
4 周波数制御回路
5 温度補償回路
L 負性抵抗
P 抵抗
L リアクタンス
P リアクタンス素子
S リアクタンス素子
EO 発振回路部
EOA 発振回路部の接続端子
EOB 発振回路部の接続端子
A 水晶振動子用接続端子
B 水晶振動子用接続端子
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ
C3 コンデンサ
R1 抵抗
R2 抵抗
R3 抵抗
Q1 発振用トランジスタ
Vcc 電源電圧
P コイル(誘導性リアクタンス素子)
P2 コイル(誘導性リアクタンス素子)
L 容量性リアクタンス
S コンデンサ(容量性リアクタンス素子)
f フィードバッグ用抵抗
g ゲート用コンデンサ
d ドレイン用コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17