特許第5796497号(P5796497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796497
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/26 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   H01M2/26 A
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-552790(P2011-552790)
(86)(22)【出願日】2011年2月2日
(86)【国際出願番号】JP2011052089
(87)【国際公開番号】WO2011096409
(87)【国際公開日】20110811
【審査請求日】2014年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2010-24714(P2010-24714)
(32)【優先日】2010年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-24713(P2010-24713)
(32)【優先日】2010年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一弥
(72)【発明者】
【氏名】十河 保宏
(72)【発明者】
【氏名】岸本 知徳
(72)【発明者】
【氏名】片山 禎弘
(72)【発明者】
【氏名】綿田 正治
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−258145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体を含む正極板と負極集電体を含む負極板とを有する発電要素を備え、前記発電要素の少なくとも一つの端面には、前記正極集電体又は前記負極集電体のいずれか一方の集電体が露出しており、露出している前記集電体が集電端子と接合される電池において、
前記集電端子には、前記発電要素の端面における内側から外側に亘って、複数の凸部が設けられており、前記凸部は、下端に開口部を有する溶接片を形成し、かつ、前記溶接片の肉厚は、前記凸部の下端側の肉厚が、前記凸部の頂点側の肉厚より厚くなるように形成され、前記発電要素の端面に露出している前記集電体は、前記複数の凸部の開口部に挿入されて、前記凸部の溶接片と溶接されていることを特徴とする電池。
【請求項2】
前記集電端子は板状部を備えており、前記板状部には、前記発電要素の端面における内側から外側に亘って、複数の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記凸部の頂点が前記板状部の下面と水平な位置、もしくは前記板状部の下面より前記発電要素側の位置に配置されていることを特徴とする請求項に記載の電池。
【請求項4】
前記溶接片の前記頂点の肉厚が0.15mm〜0.4mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記発電要素の端面における内側から外側に亘って設けられた前記複数の凸部が一つの凸部群を形成し、前記集電端子には少なくとも2つ以上の凸部群が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極集電体を含む正極板と負極集電体を含む負極板とを有する発電要素を備える電池、より詳しくは、正極板又は負極板のいずれかの集電体が発電要素の端面に露出しており、露出した集電体と集電端子とを接合する電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帯状の正極集電体の一端部を除いて正極合剤が塗工された正極板と、帯状の負極集電体の一端部を除いて負極合剤が塗工された負極板との間にセパレータを介在して、正極合剤の未塗工部と負極合剤の未塗工部とがそれぞれ巻回軸方向の両端に配置されるように巻回して形成される発電要素を備えた二次電池において、発電要素の巻回軸方向の少なくとも一方の端面に正極集電体の露出部を有し、他方の端面には負極集電体の露出部を有し、それぞれの露出部に集電端子を接合したものを外装ケースに収納するものが広く知られている。
【0003】
例えば、特許文献1や特許文献2には、発電要素の巻回中心部に集電端子を挿設して、集電体の露出部を径外方向から寄せ集めて集電端子の外側面に接合する集電構造が記載されている。
【0004】
特許文献1、2に示されたような、発電要素の端面に露出した集電体をひとつに束ねる集電構造では、発電要素の内周部又は外周部に位置する集電体の露出部を大きくする必要があり、電池内部で充放電に関与する活物質が形成されていない集電体の露出部の占有部分が大きくなるため、電池のエネルギー密度が低くなるという問題があった。
【0005】
特許文献3には、正極板及び負極板の少なくとも一方の極板の幅方向における一端である露出端が多孔質絶縁層から突出するように前記正極板と前記負極板と前記多孔質絶縁層とが配置された電極群の前記露出端を集電板(集電端子)に収容する収容部として、集電板の厚み方向に凸凹する複数の凹凸部を同心円状に配置し、その下面から見たときの凹部を収容部としたものが記載されている(段落[0066])。
そして、集電板の厚みについて、「このような各被覆部13および各収容部14は、プレス成形法により成形されることが好ましい。図2(a)および(b)に示す集電板10の場合、集電板10の厚みが0.5mmであれば、0.2mm程度突出するようにプレス成形を行えばよい。」(段落[0067])、「本実施形態においても、各被覆部13及び各収容部14は、上記実施形態1および上記第1〜上記第7の変形例と同じくプレス成形法により形成されることが好ましく、図2(b)に示す集電板100の場合、集電板100の厚みが0.8mmであれば、1mm以上突出するようにプレス成形を行えばよい。」(段落[0121])、「厚みが1mmである50mm角のアルミニウム板をプレス加工した。これにより、アルミニウム板を円盤状に成形した。と同時に、高さが1mmであり中心角θが60°である断面V字状の凹凸部を、アルミニウム板の径方向において2mm間隔で同心円状に形成した。」(段落[0163])、「同様の方法を用いて、厚みが0.6mmである銅製の負極集電板を作製した。この負極集電板では、断面V字状の凹凸部の高さは1mmであり、その中心角θは120°であった。」(段落[0165])、「厚みが0.5mmであり幅が8mmであり長さが55mmであるアルミニウム板を、プレス加工した。これにより、高さが1mmであり中心角θの角度が60°である断面V字状の凸部を集電板の長手方向に延びるように形成した。このようにして正極集電板を作製した。」(段落[0174])、「同様の方法で、厚みが0.6mmである銅製の負極集電板を作製した。この負極集電板では、断面V字状の凸部の高さは1mmであり、その中心角θは120°であった。」(段落[0175])等の記載があるが、いずれの実施形態(実施例)においても、集電板の厚みは、一定のものを使用している。
【0006】
しかし、特許文献3に記載されているような凹凸部の厚みが一定の集電板(集電端子)を、発電要素の端面に露出している集電体に溶接した場合、集電体と集電板とが確実に溶接できる程度の溶接エネルギーを与えると、集電板に孔が発生し、溶接の際に発生した溶接チリがその孔を介して発電要素の内部の方に飛散して、セパレータが溶解することによる微小短絡などが起こるという問題があった。また、孔が発生した部分では集電体と集電板とが接合されていないため、結果的に、集電体と集電端子との接合強度が低下するという問題があった。特許文献3には、孔の発生を防止するために、集電板の厚みを凹凸部の箇所によって変えるという技術思想は全く示唆されていない。
【0007】
また、特許文献3には、前記露出端を前記集電板に接合する場合、各収容部が凹む方向における先端を中心とする中心角θについて、集電板がCu等の表面張力の大きな金属からなる場合には、鈍角であることが好ましく、集電板がAl等の表面張力の小さな金属からなる場合には、鋭角であることが好ましい旨が記載され(段落[0072]〜[0075])、「集電板10がAlからなる場合には、その中心角θは、溶融した金属を複数の露出端1a,1a,・・・の先端面まで流動させるためには0度に近い方が好ましいが、中心角θを小さくしすぎると複数の露出端1a,1a,・・・を収容部14内に収容させることが難しくなり、さらには、収容部14内に収容される露出端1aの本数が少なくなってしまう。そのため、その中心角θは、好ましくは30度以上90度未満であり、より好ましくは40度以上80度以下であり、例えば60度である。」(段落[0079])と記載されている。
【0008】
しかし、特許文献3に、好ましいと記載されている中心角を「30度以上90度未満」とした凹凸部を形成した集電板を発電要素の端面に露出している集電体に溶接した場合、集電体と集電板とが確実に溶接できる程度の溶接エネルギーを与えると、集電板に孔が発生し、溶接の際に発生した溶接チリがその孔を介して発電要素の内部の方に飛散して、セパレータが溶解することによる微小短絡などが起こるという問題があった。また、孔が発生した部分では集電体と集電板とが接合されていないため、結果的に、集電体と集電板との接合強度が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−231913号公報
【特許文献2】特開2009−48962号公報
【特許文献3】特開2008−258145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、高エネルギー密度を確保できる集電構造を備えており、かつ、孔が殆ど発生しない溶接を実現して信頼性の高く、発電要素と集電端子との接合強度の高い電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(1)の電池は、正極集電体を含む正極板と負極集電体を含む負極板とを有する発電要素を備え、前記発電要素の少なくとも一つの端面には、前記正極集電体又は前記負極集電体のいずれか一方の集電体が露出しており、露出している前記集電体が集電端子と接合される電池において、前記集電端子には、前記発電要素の端面における内側から外側に亘って、複数の凸部が設けられており、前記凸部は、下端に開口部を有する溶接片を形成し、かつ、前記溶接片の肉厚は、前記凸部の下端側の肉厚が、前記凸部の頂点側の肉厚より厚くなるように形成され、前記発電要素の端面に露出している前記集電体は、前記複数の凸部の開口部に挿入されて、前記凸部の溶接片と溶接されていることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記正極集電体又は前記負極集電体が露出する構成は、帯状の正極集電体40を備えた正極板4と帯状の負極集電体60を備えた負極板6との間にセパレータ8を介して巻回して形成された発電要素を備えた巻回型電池においては、帯状の正極集電体40の巻回軸方向の一端部又は帯状の負極集電体60の巻回軸方向の一端部が発電要素の巻回軸方向の端面に、つまり、図1において、31又は32のように発電要素の上部端面又は下部端面に露出している構成であるが、図14に示すように、正極板、負極板及びセパレータを積層することによって発電要素を形成した積層型電池において、発電要素の少なくとも一つの端面(右端面又は左端面)に正極集電体又は負極集電体が同様に露出している構成も含む。
そして、巻回型電池においては、発電要素の端面における内側は内周部を意味し、外側は外周部を意味する。また、積層型電池においては、巻回型電池のような内周部はないので、端面における内側から外側に亘ることは、内側を含めて、一方の外側から他方の外側に亘ることを意味する。
【0013】
原則的に、凸部の下端側の肉厚とは、図6において、凸部の下端513と頂点512の中間より下端側の平均肉厚を意味し、凸部の頂点側の肉厚とは、凸部51の下端513と頂点512の中間より頂点側の平均肉厚を意味する。一般的に、下端の肉厚513が頂点512の肉厚に比べて厚い場合は、下端513と頂点512の中間より下端側の平均肉厚は、下端513と頂点512の中間より頂点側の平均肉厚に比べて厚くなるように形成されているといえる。また、図6に示されるように、凸部の頂点512側から下端513側へと順次肉厚が厚くなるように形成されている場合だけでなく、凸部512の頂点の肉厚が薄く、下端513の肉厚が厚く、その中間の肉厚が一定のような場合も、本発明に含まれる。
【0014】
本発明(2)の電池は、正極集電体を含む正極板と負極集電体を含む負極板とを有する発電要素を備え、前記発電要素の少なくとも一つの端面には、前記正極集電体又は前記負極集電体のいずれか一方の集電体が露出しており、露出している前記集電体が集電端子と接合される電池において、前記集電端子には、前記発電要素の端面における内側から外側に亘って、複数の凸部が設けられており、前記凸部は、下端に開口部を有する溶接片を形成し、かつ、前記凸部の頂点の開口部側の角度が28°以下であり、前記発電要素の端面に露出している前記集電体は、前記複数の凸部の開口部に挿入されて、前記凸部の溶接片と溶接されていることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記凸部の頂点の開口部側の角度は、前記凸部の頂点を形成する開口部側の2辺の延長線の交点が成す角度のことである。したがって、図6に示すように、溶接片511の凸部51の開口部側の形状は、断面が逆V字状で頂点512が尖っているものだけではなく、頂点512が円弧状であっても、2辺の延長線の交点が成す頂点の角度θが28°以下であれば本発明の範囲に含まれる。さらに、溶接片の開口部側が平坦ではなく、すなわち、逆V字を形成する2辺が直線的ではなく、細かい凹凸のあるような場合には、2辺を近似する直線とした頂点の角度が28°以下であれば本発明の範囲に含まれる。
【0016】
本発明(3)の電池は、正極集電体を含む正極板と負極集電体を含む負極板とを有する発電要素を備え、前記発電要素の少なくとも一つの端面には、前記正極集電体又は前記負極集電体のいずれか一方の集電体が露出しており、露出している前記集電体が集電端子と接合される電池において、前記集電端子には、前記発電要素の端面における内側から外側に亘って、複数の凸部が設けられており、前記凸部は、下端に開口部を有する溶接片を形成し、かつ、前記溶接片の開口部側の前記凸部の頂点と下端との間には屈曲点が存在し、前記屈曲点における前記下端側の角度が、前記屈曲点における前記頂点側の角度よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
ここで、前記屈曲点における前記下端側の角度とは、開口部を挟んだ2つの溶接片のおける屈曲点より下端側に位置する2辺の延長線の交点が成す角度であり、屈曲点における前記頂点側の角度とは、開口部を挟んだ2つの溶接片における屈曲点より頂点側に位置する2辺の延長線の交点が成す角度のことである。この場合には、前記溶接片の開口部側で、かつ、前記屈曲点511aにおける頂点512側の角度θが28°以下であればよく、図6に示すように、前記屈曲点511aにおける下端513側の角度、すなわち、屈曲点511aにおける下端513側の2辺の延長線の交点が成す角度αは28°より大きいことが好ましい。また、前記屈曲点511aから下端513までが直線ではなく円弧状である場合においても、開口部510を挟んだ2つの溶接片における前記円弧状の接線の交点の成す角度が、前記屈曲点511aから頂点512側の角度より大きければ本発明の範囲に含まれる。
【0018】
本発明(4)の電池は、本発明(1)〜(3)のいずれかの電池において、さらに、前記集電端子は板状部を備えており、前記板状部には、前記発電要素の端面における内側から外側に亘って、複数の凸部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明(5)の電池は、本発明(4)の電池において、さらに、前記凸部の頂点が前記板状部の下面と水平な位置、もしくは前記板状部の下面より前記発電要素側の位置に配置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明(6)の電池は、本発明(1)〜(3)のいずれかの電池において、さらに、前記溶接片の前記頂点の肉厚が0.15mm〜0.4mmであることを特徴とする。また、前記凸部の下端の肉厚は、前記凸部の頂点の肉厚より厚くなるように形成されているが、0.4mm〜0.8mmであることが好ましい。
【0021】
本発明(7)の電池は、本発明(1)〜(3)のいずれかの電池において、さらに、前記発電要素の端面における内側から外側に亘って設けられた前記複数の凸部が一つの凸部群を形成し、前記集電端子には少なくとも2つ以上の凸部群が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明(1)の電池によれば、発電要素の端面における内側から外側に亘って露出した集電体を集電端子の複数の凸部に分割して挿入している構造は、露出した集電体を一つに束ねる構造と比較して、集電体の露出部を小さくでき、電池の充放電に関与しない集電体の占有部を小さくできるので、電池のエネルギー密度を高くすることができる。また、溶接片の肉厚は、凸部の下端側の肉厚が、頂点側の肉厚より厚くなるように形成することで、溶接時の孔空きの発生を防止することができる。溶接時の孔空きを防止できる作用については必ずしも明らかでないが、溶接片の凸部の頂点の肉厚より下端側の肉厚を厚くすることで、溶接片の凸部の頂点から下端側に向かって溶け込み空間が広くなるのに合わせて、集電端子の溶融した金属量を十分に供給できるようになり、溶接時の溶融金属量不足することがないので、溶接部の溶融した金属の全てが集電体どうしの隙間に入り込んで生じる孔や、溶接中心部が表面張力によって引っ張られて生じる孔の発生を防ぐことができたものと考えられる。
さらに、前記溶接片の下端側の肉厚を前記頂点側の肉厚より厚くなるように形成することにより、引張強度(溶接強度)が大きく信頼性の高い、内部抵抗が極めて小さい電池が得られる。
【0023】
本発明(2)の電池によれば、上記と同様に、電池の充放電に関与しない集電体の占有部を小さくできるので、電池のエネルギー密度を高くすることができる。また、前記凸部の頂点の開口部側の角度を28°以下とすることで、溶接時の孔空きの発生を防止することができるという効果を奏する。溶接時の孔空きを防止できる作用については必ずしも明らかでないが、頂点の開口部側の角度を28°以下とすることで、溶接エネルギーを照射した範囲に対して集電端子の溶融した金属量が十分供給されるため、溶接部の厚みが薄くなることがなく、溶接部の溶融した金属の全てが集電体どうしの隙間に入り込んで生じる孔や、溶接中心部が表面張力によって引っ張られて生じる孔の発生を防ぐことができたものと考えられる。
さらに、前記凸部の頂点の開口部側の角度を28°以下とすることにより、引張強度(溶接強度)が大きく信頼性の高い、内部抵抗が極めて小さい電池が得られる。
【0024】
本発明(3)の電池によれば、前記凸部の頂点の開口部側の角度を小さくした場合に、集電体を挿入する開口部を大きくすることができるので、溶接時の孔空きの発生を防止することができる等の効果に加えて、集電体を凸部の開口部に挿入し易くなり、作業性が向上する。
また、屈曲点がない場合、溶接片の先端部分の角度は、ほぼ開口部側の内角と同じ角度になるため、頂点の角度が小さすぎると、プレス形成時に溶接片の先端部分に割れが発生する場合があるが、屈曲点を設けることにより、プレス成形時の割れの発生を防止することができる。
【0025】
本発明(4)の電池によれば、前記集電端子に板状部を備えることで、板状部を発電要素の端面(集電体の露出部)に押し当てるのみの容易な作業で、全ての束ねた集電体を凸部の開口部に挿入することができる。さらに、板状部を備えることで、溶接時に集電端子の上方に飛散したスパッターが発電要素に付着することを防ぐことができるので、より不良率を低くすることができる。
【0026】
本発明(5)の電池によれば、前記凸部の頂点を板状部の下面と水平な位置、もしくは板状部の下面より発電要素側の位置に配置することで、集電体の端部を凸部の頂点付近まで挿入することができ、頂点付近の溶接片を溶接する低い溶接エネルギーで集電体と集電端子の溶接片を接合することができる。
【0027】
本発明(6)の電池によれば、溶接時の孔空きの発生を防止することができる等の効果に加えて、頂点の肉厚を0.15mm〜0.4mmにすることによって溶接エネルギーを小さくしても溶接片と集電体を溶融することができ、発熱量を小さくすることができる。したがって、集電体の露出部が小さい場合でもセパレータの溶融を防ぐことができるため、エネルギー密度の高い電池を得ることができる。
【0028】
本発明(7)の電池によれば、溶接時の孔空きの発生を防止することができる等の効果に加えて、前記集電端子に少なくとも2つ以上の凸部群を設けることで、発電要素の一端面に露出した集電体と集電端子との接合点を増加することができるので、溶接強度を高めることができる上、発電要素と正極集電体との間の抵抗を低減して、大電流での充電及び放電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る二次電池(巻回型電池)の発電要素の外観斜視図を示す。
図2】同二次電池の一部断面を含む外観斜視図であり、同二次電池の発電要素に正極集電端子及び負極集電端子を取り付けた状態を示す。
図3】同二次電池の正極集電端子の斜視図を示す。
図4】同二次電池の正極集電端子であって、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
図5】同二次電池の発電要素に正極集電端子を取り付ける状態の図を示す。
図6】同二次電池の正極集電端子であって、凸部の拡大図を示す。
図7】同二次電池の正極集電端子に正極集電体を挿入した図を示す。
図8】同二次電池の正極集電端子の変形例の斜視図を示す。
図9】同二次電池の正極集電端子の他の変形例の斜視図を示す。
図10】同二次電池の負極集電端子の斜視図を示す。
図11】同二次電池の負極集電端子であって、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
図12】本発明の他の実施形態に係る正極集電体の一例の斜視図を示す。
図13】本発明の他の実施形態に係る正極集電体及び負極集電体を発電要素に取り付ける状態の図を示す。
図14】本発明の他の実施形態に係る二次電池(積層型電池)の発電要素に正極集電端子を取り付ける状態の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る電池の一実施形態として、例えば自動車等の車両に搭載され電源として使用され得るリチウムイオン二次電池、より詳しくは、巻回して形成された発電要素と電解液とを外装ケースに収容したリチウムイオン二次電池(巻回型電池)について、図面を参酌しつつ説明する。
【0031】
図2に示すように、リチウムイオン二次電池1は、何れも帯状の正極板4及び負極板6を円筒状に巻回した発電要素3と、発電要素3を収容し得る形状の外装ケース2と、発電要素3の巻回軸方向の一端部及び他端部において正極板4及び負極板6にそれぞれ接続された正極集電端子5及び負極集電端子7とを備える。
【0032】
正極板4については、LiMO(Mは、少なくとも一種の遷移金属を表す)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物あるいはLiMePO(Meは、例えばFe、Mn、Co、Cr)で表されるオリビン構造の化合物と、アセチレンブラック等の導電性物質と、ポリフッ化ビニリデン等の結着剤とを、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤で分散混練した正極合剤41を、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、ニッケル箔等から選択される正極集電体40の帯状の一端部を除いて塗布して、正極合剤41を乾燥させることにより、帯状の一端部に正極合剤が塗工されていない合剤非形成部が設けられた正極板4が得られる。
【0033】
負極板6については、コークス類、難黒鉛化炭素、及び人造黒鉛や天然黒鉛を含むグラファイト類などの炭素材料と、ポリフッ化ビニリデン等の結着剤とを、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤とで分散混練した負極合剤61を、銅箔等からなる負極集電体60の帯状の一端部を除いて塗布し、負極合剤61を乾燥させることにより、帯状の一端部に負極合剤が塗工されていない合剤非形成部が設けられた負極板6が得られる。
【0034】
セパレータ8は、正極板4及び負極板6を物理的に隔離し、電解液を保持する役割を果たすもので、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂の微多孔質膜が用いられる。尚、電解質として固体電解質若しくはゲル状電解質を使用する場合には、セパレータが不要な場合があり得る。そして、この場合、電解質自体がセパレータとして機能する。
【0035】
正極板4の合剤非形成部と負極板6の合剤非形成部とが互いに巻回軸30方向の反対側に突出するようにして、正極板4と負極板6との間にセパレータ8を介して巻回することにより、図1に示されるように、巻回軸30方向の少なくとも一方の端面には正極集電体40が露出(31)し、他方の端面には負極集電体60が露出(32)した発電要素3が形成される。
【0036】
円筒電池に用いる正極集電端子5を図3に示す。図3に示す正極集電端子5の平面図及び側面図を図4に示す。正極集電端子5には、下端513に開口部510を有する凸部51が形成された溶接片511が設けられ、図6に示すように、凸部51の溶接片511の肉厚を、下端513側の肉厚が、頂点512側の肉厚より厚くなるように形成してある。また、凸部51の頂点512の開口部側の角度θは28°以下であることが好ましい。複数の凸部51は、発電要素3の中心部に位置する板状部50の孔52から、板状部50の外周部に亘って、厚み方向に交互に複数の凹部及び凸部51を設けることにより形成されている。正極集電端子5は、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属からなる板材を用いて構成され、好ましくはアルミニウム製である。
【0037】
正極集電端子5と発電要素3とを接合する方法を図5に示す。正極集電端子5と発電要素3とを接合する際には、発電要素3の端面に露出した集電体どうしを寄せ集めることにより、正極集電端子5に形成された凸部51と同数の集電体の束を形成して、この集電体の束を凸部51の開口部510に挿入する。凸部51は発電要素3の内周部から外周部に亘って複数形成されていることから、発電要素3の端面に露出した正極集電体の端部は、複数の凸部51の開口部510に分散して挿入される。凸部51の頂点512を含む溶接片511に対して開口部510の反対側から溶接エネルギーを与えることにより、頂点512を含む溶接片511と凸部51に挿入された正極集電体40とが相溶することで、正極集電端子5と発電要素3が接合される。
【0038】
溶接片511の下端513側の肉厚を、頂点512側の肉厚より厚くなるように形成することで、正極集電端子5の溶接エネルギーを照射した箇所で孔が発生することを防ぐことができる。溶接片511の下端513側の肉厚を、頂点512側の肉厚より厚くなるように形成することにより、下端513側の肉厚が頂点512側の肉厚と同じか、又は薄くなるように形成してある場合と比較して、溶接片511の溶け込むに従い溶融する金属量が多くなることから、溶融した金属の厚みが厚くなり、溶接中心部が表面張力によって引っ張られて生じる孔の発生を防ぐことができたものと考えられる。
【0039】
溶接片511の凸部51の頂点512の先端肉厚は0.10mm未満では溶融する金属が少なすぎて孔が発生する恐れがあり好ましくない。また、凸部51の頂点512の先端肉厚が0.5mmを超えると、集電端子と集電体の相溶に必要なエネルギーが大きすぎ、発生する熱量が大きくなりすぎるため、セパレータが溶けて短絡する恐れがあり、この防止のためには、集電体の露出部を大きくする必要が発生する。このため、溶接片511は、凸部51の頂点512の肉厚が0.10mm以上であり、かつ0.4mm以下が好ましく、さらに好ましくは、溶接エネルギーを小さくし集電部の露出部を小さくできるため、0.15mm以上0.3mm以下が好ましい。
溶接片511の凸部51の頂点512を上記のような肉厚とすることにより、集電体を束ねるための集電体の露出部を大きくする必要がなく、電池の充放電に関与しない集電体の占有部を小さくすることができるので、電池のエネルギー密度を高くすることができる。
【0040】
また、凸部51の頂点512の開口部側の角度を28°以下とすることで、正極集電端子5の溶接エネルギーを照射した箇所で孔が発生することを防ぐことができる。頂点512の開口部側の角度は28°〜10°が好ましく、25°〜10°がより好ましい。頂点512の開口部側の角度を28°以下とすることにより、頂点512の開口部側の角度が28°より大きい場合と比較して、溶接エネルギーを照射する範囲における溶接片511の溶融する金属量が多くなることから、溶融した金属の厚みが厚くなり、溶接中心部が表面張力によって引っ張られて生じる孔の発生を防ぐことができたものと考えられる。
【0041】
正極集電端子5の溶接片511と凸部51の開口部510に挿入された正極集電体40との溶接では、レーザ溶接、TIG溶接などのアーク溶接等の手段によって行うことができる。但し、正極合剤や負極合剤への熱影響、接合部における通電抵抗、作業性、生産性等を総合的に考慮すれば、レーザ溶接又はTIG溶接によって行うのが望ましい。
【0042】
正極集電端子5及び負極集電端子7が接合された発電要素3は、図2に示すように、外装ケース2に収容される。外装ケース2は、軸方向の一端に開口部を有する有底円筒状のケース本体20と、ケース本体20の開口部に取り付けられて開口部を塞ぐ蓋体21とを備える。外装ケース2は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼等の金属で形成される。
【0043】
発電要素3を外装ケース2に収容した後は、負極集電端子7のリード部72をケース本体20の底部に例えば抵抗溶接で接合し、正極集電端子5のリード部53に蓋体21を例えばレーザ溶接で接合し、ケース本体20内に電解液を注液した後、蓋体21の縁部とケース本体20の内面との間に絶縁性のシール材(パッキン)22を介在させるようにして蓋体21をケース本体20の開口部に装着し、最後に、ケース本体20の開口部を例えばカシメして封着し、これらの工程によって、リチウムイオン二次電池1が完成する。
【0044】
図4及び図5に示すように、正極集電端子5は板状部50を備え、板状部50に凸部51が設けられていることが好ましい。図5及び図7に示すように、正極集電体40の束を凸部51の開口部510の位置に合わせて、板状部50を発電要素3の端面(正極集電体の露出部31)に押し当てるのみの容易な作業で、全ての束ねた正極集電体40を凸部51の開口部510に挿入することができる。さらに、板状部50を備えることで、溶接時に正極集電端子5の上方に飛散したスパッターが発電要素3に付着することを防ぐことができるので、より不良率を低くすることができる。また、板状部50を備えていない正極集電体5の形態としては、凸部群54のみからなる正極集電端子と正極集電体40とを接合することもできる。この場合、溶接時に、正極集電体の露出部31の正極集電端子が取り付けられていない部分をカバー部材等で覆うことで、飛散したスパッターが発電要素3に付着することを防ぐことができる。
【0045】
図6に示すように、凸部51の頂点512は板状部50の下面50aと水平な位置、もしくは板状部50の下面50aより発電要素側に配置されていることが好ましい。頂点512を板状部50の下面50aと水平な位置、もしくは板状部50の下面50aより発電要素側に配置することで、図7に示すように、正極集電体40の端部を頂点512付近まで挿入することができ、頂点512付近の溶接片511を溶接する低い溶接エネルギーで正極集電体40と正極集電端子5の溶接片511を接合することができる。
【0046】
凸部51の頂点512の開口部510側と下端513との間の発電要素3の巻回軸に平行な方向の長さ(図6におけるbの長さ)は1.0mm以上であり、3.0mm以下であることが好ましい。前記長さが1.0mmより小さいと、正極集電体40の束の位置がずれ易くなり、正極集電体40の端部の溶接箇所が定まらないため、作業性が低下する。また、正極集電体40を凸部51に挿入すると、凸部51の下端513が集電体どうしの間に挿入されることとなる。凸部51の下端513と、集電体どうしの間に配置されたセパレータ8とが接触せず、かつ、正極集電体40の露出部の幅と小さくすると言う観点から、凸部51の頂点512の開口部510側と下端513との間の前記長さは3.0mm以下とするのが好ましい。
【0047】
正極集電端子5には、図6に示すように、溶接片511の凸部51の開口部510側の頂点512と下端513との間には屈曲点511aが存在し、屈曲点511aにおける下端513側の角度αが、屈曲点511aにおける頂点512側の角度θよりも大きくなっていることが好ましい。このように、溶接片511の屈曲点511aを設けて開口部510を大きくすることで、正極集電体40の束を凸部51の開口部510に導入し易くなり、作業性が向上する。
屈曲点511aにおける下端513側の角度、すなわち、図6に示す屈曲点511aにおける下端513側の2辺の延長線の交点が成す角度αは、60〜135°が好ましく、より好ましくは70〜110°であり、例えば、90°である。
【0048】
正極集電端子5の凸部51の頂点512を溶融する方法として、TIG溶接を用いると、溶接エネルギーのパワー密度が大きくないため、スパッターが発生しにくく信頼性の高い溶接をすることができる。1溶接点当たり30m秒以下のアーク放電により凸部51の溶接片511を溶融し、凸部51の開口部510に挿入された正極集電体40と正極集電端子5の溶接片511とを接合することにより、周囲への溶接熱の影響を低減し、正極集電体の露出部31の幅の狭い電極を用いても安定した溶接が実現することができる。
【0049】
正極集電端子5には、発電要素3の内周部から外周部に亘って設けられた複数の凹部及び凸部が一つの凸部群54を形成し、図4に示すように、この凸部群54を正極集電端子5に2つ備えることで、正極集電体40と正極集電端子5との接合点を増やして、接合強度を高くすることができる。さらに、図8及び図9に示すように、凸部群54を3つ又は4つ備えることで、接合強度を高めることができる上、発電要素3と正極集電端子5との間の抵抗を低減して、大電流での充電及び放電をおこなうことができる。したがって、高率放電特性の観点から、発電要素3の一端面において、正極集電体とすくなくとも3つ以上の凸部群とが接合されていることが好ましい。
【0050】
上記では、正極集電体40と正極集電端子5との接合について説明したが、正極集電体40と正極集電端子5との接合と同様の形態にて、負極集電体60と図10及び図11に示す負極集電端子7との接合を行うことができる。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
正極活物質であるLiMnと、導電助剤であるアセチレンブラックと、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを重量比85:10:5の割合で混合し、溶剤としてN−メチルピロリドンを加えて混練分散して正極合剤を作製し、この正極合剤を正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布した。図1に示すように、塗布工程では、正極集電体40の幅52mmに対して、正極合剤41の塗布幅を48mmとし、正極集電体40の幅の一端部に正極合剤の非形成部を設けた。塗布後に、ロールプレスにより極板の厚さを152μmに調整して、3.235mAh/cmの容量を有する正極板4を作製した。
次に、負極活物質である人造黒鉛90重量%と結着剤であるポリフッ化ビニリデン10重量%とに、溶剤としてN−メチルピロリドンを加えて混練分散して負極合剤を作製し、この負極合剤を負極集電体である厚さ10μmの銅箔の両面に塗布した。図1に示すように、塗布工程では、負極集電体60の幅53mmに対して、負極合剤61の塗布幅を50mmとし、負極集電体60の幅の一端部に負極合剤の非形成部を設けた。塗布後に、ロールプレスにより極板の厚さを102μmに調整して、3.52mAh/cmの容量を有する負極板6を作製した。
【0052】
そして、正極板4の合剤非形成部と負極板6の合剤非形成部とがそれぞれ巻回軸方向で反対側に配置されるようにして、正極板4と負極板6との間にポリエチレン製微多孔膜からなる厚み25μm、幅50mmのセパレータ8を介在させて巻回することにより、発電要素3の巻回軸方向の一端面には、正極集電体40がセパレータから3mmはみ出た正極集電体の露出部31が形成され、発電要素3の巻回軸方向の他方の端面には、負極集電体60がセパレータから3mmはみ出た負極集電体の露出部32が形成された発電要素3を作製した。
【0053】
正極集電端子5において、厚み1.0mmのアルミニウム板から形状を打ち抜いて、プレス加工することによって、頂点512の肉厚及び下端513の肉厚の異なる逆V字状の開口部510を有する凸部51を3か所備えた凸部群が2つ設けられた正極集電端子5を作製した。図6に示すように、頂点512の開口部510側には逆V字にR0.2の丸みをつけて、溶接片511の開口部510側の2辺を延長した交点が成す角度(凸部51の頂点512の開口部側の角度)θを20゜とした。また、溶接片511の開口部側の頂点512と下端513との間には屈曲点511aを設けて、屈曲点511aにおける下端513側の角度(溶接片511の屈曲点511aにおける下端513側の2辺を延長した交点が成す角度α)が80°となるように凸部51を形成した。各正極集電端子5の凸部51の頂点512の肉厚及び下端513の肉厚を表1に示す。実施例1-1〜1-6においては、凸部51の頂点512側から下端513側へと順次肉厚が厚くなるように形成し、比較例1-1〜1-4においては、肉厚を一定とした。
一方、負極集電端子7において、厚み1.0mmの銅板から形状を打ち抜いて、プレス加工することによって、頂点712の肉厚及び下端713の肉厚の異なる逆V字状の開口部710を有する凸部71を3か所備えた凸部群が2つ設けられた負極集電端子7を作製した。図11(b)に示すように、頂点712の開口部側には逆V字にR0.2の丸みをつけて、溶接片711の開口部側の2辺を延長した交点が成す角度(凸部71の頂点712の開口部側の角度)θを20゜とした。また、凸部71の頂点と下端713との間の溶接片の開口部側には、正極集電端子と同様の屈曲点711aを形成した。各負極集電端子7の凸部71の頂点712の肉厚及び下端713の肉厚を表1に示す。実施例1-1〜1-6においては、凸部71の頂点712側から下端713側へと順次肉厚が厚くなるように形成し、比較例1-1〜1-4においては、肉厚を一定とした。
正極集電端子5及び負極集電端子7ともに、凸部51,71の開口部510,710の幅は下端で5.0mm、凸部の頂点512,712の開口部側と下端513、713との間の発電要素3の巻回軸30に平行な方向の長さ(図6におけるbの長さ)は2.2mmとした。
【0054】
図7のように、発電要素3の端面に露出した複数の正極集電体40を互いに寄せ集めすることにより、5から7つの正極集電体40の束を6つ(凸部3か所×2凸部群)形成した。正極集電端子5の孔52を発電要素3の巻回軸30に配置させて、正極集電体40の各束を正極集電端子5の凸部51の開口部510に分散して挿入した。一方、負極集電体60も正極集電体40と同様にして負極集電体60の6つの束を形成し、負極集電端子7のリード部72を発電要素3の巻回軸30に配置させて、負極集電体60の各束を負極集電端子7の凸部71の開口部710に分散して挿入した。
【0055】
次に、TIG溶接電源の溶接ヘッドの極性をマイナスとし、電源のプラスを集電端子に接触させ、正極集電体40と正極集電端子5との溶接時条件は表1に記載の条件で電流を通電し、負極集電体60と負極集電端子7との溶接時は、電源の極性の接続は正極と同様にして表1に記載の条件で電流を通電して溶接した。その後、発電要素3と集電端子を回転軸に平行に引っ張って強度を測定して、溶接強度とした。その値を表2に示す。TIG溶接機としては、株式会社セイワ製作所製のMAW−300を用いた。なお、TIG溶接の極性を逆転して接続しても溶接は可能であるが、溶接部の溶け代の深さが浅くなるため、好ましくは正極集電端子5及び負極集電端子7への溶接電源の極性はプラスが好ましい。また、交流のTIG溶接機でも良好な溶接が可能である。TIG溶接機としては、溶融するためのエネルギーを厳密に制御するため、少なくともアーク放電時間を1msec単位で制御することができる溶接機であることが好ましい。
【0056】
【表1】
【0057】
集電端子と発電要素3との接合状態を確認するために、引張り試験によって溶接強度(引張強度)を調査した。表2に示すように、頂点の肉厚が0.15mm〜0.5mmで、下端の肉厚を頂点の肉厚より厚くなるように形成した実施例1-1〜1-6では、正極集電端子5及び負極集電端子7ともに10kgf以上の引張強度を有していた。
これに対して、比較例1-1〜1-4では、正極集電端子5及び負極集電端子7ともに7〜8kgfであった。
【0058】
また、接合部周辺の集電板を顕微鏡にて観察を行った結果を表2に示す。頂点の肉厚が0.15mm〜0.5mmで、下端の肉厚を頂点の肉厚より厚くなるように形成した実施例1-1〜1-6では、正極集電端子5及び負極集電端子7ともに、溶接部に孔は発生せず、溶接チリ等の付着は認められなかった。
これに対して、頂点の肉厚及び下端の肉厚がともに0.15mm、0.3mm、0.4mm、0.5mmと同一の厚さである比較例1-1〜1-4では、正極集電端子5及び負極集電端子7ともに孔が発生した。
なお、頂点の肉厚が0.5mmの比較例1-4、実施例1-6では、200A、25m秒の溶接条件では、電流不足となり、強度が出なかった(比較例1-4では、4kgf、実施例1-6では5kgfという低い値となってしまう)ので、時間を30m秒と長くした。そのために、実施例1-6では、電池への影響はないものの、セパレータ溶けが生じ始めていた。
【0059】
【表2】
【0060】
(実施例1-7及び1-8)
凸部51の頂点512の開口部側の角度を24°に変更した以外は、実施例1-1及び1-3と同様にして正極集電端子5及び負極集電端子7を接合した実施例1-7及び1-8(正極集電端子及び負極集電端子の特性は表2の実施例1-1及び1-3とそれぞれ同じ)の発電要素3を用いて、リチウムイオン二次電池を作製した。負極集電端子7がケース本体20の底部に配置されるようにケース本体20に挿入し、ケース本体20の底部と負極集電端子7のリード部72を溶接した。抵抗溶接の棒状の溶接ヘッドを正極集電端子5の孔52及び発電要素3の巻回軸部30を挿入させて、溶接ヘッドの先端部を負極集電端子7のリード部72に当接させて、負極集電端子7とケース本体の底部20との抵抗溶接を行った。
【0061】
正極集電端子5のリード部53と蓋体21とはレーザ溶接にて接合し、正極集電端子5のリード部57を折り曲げることによって蓋体21がケース本体20の開口部に配置されるようにして、ケース本体20の中にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:1の割合で混合した溶媒に、フッ素系電解質塩であるLiPFを1mol/lの濃度で溶解させた電解液を注液した後に、蓋体21とケース本体20との間にシール材を介在させて、蓋体21をケース本体20の開口部に嵌合することで、表1に記載の正極集電体及び負極集電体を備えたリチウムイオン二次電池1を作製した。
【0062】
次に、実施例1-7及び1-8のリチウムイオン二次電池の内部抵抗を交流1kHzの抵抗測定器を用いて測定した。実施例1-7及び1-8のいずれの電池も、6.5mΩ(抵抗は、1kHzにおける交流抵抗の平均値である。10個製作した時のばらつきは5%であった。ばらつきの値は、最大値と最小値との差を平均値で割った値である。)の低い抵抗値を示した。頂点の肉厚を0.15mm〜0.4mmとし、下端の肉厚を頂点の肉厚より厚くなるように形成したことで、集電端子と集電体との相溶部分が大きくなったためであると考えられる。
【0063】
(実施例2)
実施例1と同様に、正極板4及び負極板6を作製し、正極板4の合剤非形成部と負極板6の合剤非形成部とがそれぞれ巻回軸方向で反対側に配置されるようにして、正極板4と負極板6との間にポリエチレン製微多孔膜からなる厚み25μm、幅50mmのセパレータ8を介在させて巻回することにより、発電要素3の巻回軸方向の一端面には、正極集電体40がセパレータから3mmはみ出た正極集電体の露出部31が形成され、発電要素3の巻回軸方向の他方の端面には、負極集電体60がセパレータから3mmはみ出た負極集電体の露出部32が形成された発電要素3を作製した。
【0064】
正極集電端子5において、厚み1.0mmのアルミニウム板から形状を打ち抜いて、プレス加工することによって、頂点512の開口部側の角度及び頂点512の肉厚の異なる逆V字状の開口部510を有する凸部51を3か所備えた凸部群が2つ設けられた正極集電端子5を作製した。図6に示すように、頂点512の開口部510側には逆V字にR0.2の丸みをつけて、溶接片511の開口部510側の2辺を延長した交点が成す角度θを、頂点512の開口部側の角度とした。また、溶接片511の開口部側の頂点512と下端513との間には屈曲点511aを設けて、屈曲点511aにおける下端513側の角度(溶接片511の屈曲点511aにおける下端513側の2辺を延長した交点が成す角度α)が90°となるように凸部51を形成した。なお、正極集電端子5の下端部の肉厚は、0.8mmとした。実施例2-1〜2-9、比較例2-1〜2-3の各正極集電端子5について、凸部51の頂点512の開口部側の角度及び頂点512の肉厚を表3に示す。
一方、負極集電端子7において、厚み1.0mmの銅板から形状を打ち抜いて、プレス加工することによって、頂点712の開口部側の角度及び頂点712の肉厚の異なる逆V字状の開口部710を有する凸部71を3か所備えた凸部群が2つ設けられた負極集電端子7を作製した。図11(b)に示すように、頂点712の開口部側には逆V字にR0.2の丸みをつけて、溶接片711の開口部側の2辺を延長した交点が成す角度を、頂点712の開口部側の角度とした。また、溶接片711の開口部側の頂点712と下端713との間には、正極集電端子と同様の屈曲点711aを形成した。なお、負極集電端子7の下端部の肉厚は、0.8mmとした。実施例2-1〜2-9、比較例2-1〜2-3の各負極集電端子7について、凸部71の頂点712の開口部側の角度及び頂点712の肉厚を表3に示す。
正極集電端子5及び負極集電端子7ともに、凸部51,71の開口部510,710の幅は下端で5.0mm、凸部の頂点512,712の開口部側と下端513、713との間の発電要素3の巻回軸30に平行な方向の長さ(図6におけるbの長さ)は2.2mmとした。
【0065】
実施例1と同様に、正極集電体40の各束を正極集電端子5の凸部51の開口部510に分散して挿入し、負極集電体60の各束を負極集電端子7の凸部71の開口部710に分散して挿入した。
【0066】
次に、実施例1と同様のTIG溶接を用い、TIG溶接電源の溶接ヘッドの極性をマイナスとし、電源のプラスを集電端子に接触させ、正極集電体40と正極集電端子5との溶接時条件は表3に記載の条件で電流を通電し、負極集電体60と負極集電端子7との溶接時は、電源の極性の接続は正極と同様にして表3に記載の条件で電流を通電して溶接した。その後、発電要素3と集電端子を回転軸に平行に引っ張って強度を測定して、溶接強度とした。その値を表4に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
集電端子と発電要素3との接合状態を確認するために、引張り試験によって溶接強度(引張強度)を調査した。表4に示すように、頂点の開口部側の角度が28°以下、頂点の肉厚が0.15〜0.4mmの実施例2-1、実施例2-2及び実施例2-4〜2-9では、正極集電端子5及び負極集電端子7ともに10kgf以上の引張強度を有しており、また、頂点の開口部側の角度が24°、頂点の肉厚が0.1mmの実施例2-3においても、正極集電体5及び負極集電体7ともに9kgfの引張強度を有していた。
これに対して、頂点の開口部側の角度が32°、頂点の肉厚が0.15mmの比較例2-1では、正極集電端子5及び負極集電端子7ともに7kgfであり、頂点の開口部側の角度が30°の場合には、頂点の肉厚が0.15mmの比較例2-2では、正極集電端子5及び負極集電端子7ともに8kgfであり、頂点の肉厚を0.3mmとした比較例2-3でも、正極集電端子5及び負極集電端子7ともに8kgfであった。
【0069】
また、接合部周辺の集電端子を顕微鏡にて観察を行った結果を表4に示す。頂点の開口部側の角度を28°以下にした実施例2-1〜2-9では、正極集電端子5及び負極集電端子7ともに、溶接部に孔は発生せず、溶接チリ等の付着は認められなかった。
これに対して、頂点の開口部側の角度が32°、頂点の肉厚が0.15mmの比較例2-1では、正極集電端子5及び負極集電端子7ともに3/5の確率で孔が発生し、溶接チリの付着が認められ、頂点の開口部側の角度が30°の場合には、頂点の肉厚が0.15mmの比較例2-2では、1/5の確率で孔が発生し、頂点の肉厚を0.3mmとした比較例2-3でも、1/5の確率で孔が発生し、溶接チリの付着が認められた。
【0070】
【表4】
【0071】
表3に記載の正極集電端子5及び負極集電端子7を接合した発電要素3を用いて、リチウムイオン二次電池を作製した。負極集電端子7がケース本体20の底部に配置されるようにケース本体20に挿入し、ケース本体20の底部と負極集電端子7のリード部72を溶接した。抵抗溶接の棒状の溶接ヘッドを正極集電端子5の孔52及び発電要素3の巻回軸部30を挿入させて、溶接ヘッドの先端部を負極集電端子7のリード部72に当接させて、負極集電端子7とケース本体の底部20との抵抗溶接を行った。
【0072】
正極集電端子5のリード部53と蓋体21とはレーザ溶接にて接合し、正極集電端子5のリード部57を折り曲げることによって蓋体21がケース本体20の開口部に配置されるようにして、ケース本体20の中にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:1の割合で混合した溶媒に、フッ素系電解質塩であるLiPFを1mol/lの濃度で溶解させた電解液を注液した後に、蓋体21とケース本体20との間にシール材を介在させて、蓋体21をケース本体20の開口部に嵌合することで、表3に記載の正極集電端子及び負極集電端子を備えたリチウムイオン二次電池1を作製した。
【0073】
次に、比較例2-1、実施例2-1〜2-3、及び実施例2-6のリチウムイオン二次電池の内部抵抗を交流1kHzの抵抗測定器を用いて測定した。各電池の内部抵抗の平均値を表5にしめす。頂点の開口部側の角度が28°を超える比較例の2-1の電池は8mΩであったの対して、頂点の開口部側の角度が28°以下の実施例2-1〜2-3、及び実施例2-6のいずれの電池も、7.0mΩ以下の低い抵抗値を示した。頂点の開口部側の角度を28°以下としたことで、集電端子と集電体との相溶部分が大きくなったためであると考えられる。なお、表5の括弧内の数値は交流抵抗の10個製作した時のばらつきの幅で、最大値と最小値との差を平均値で割った値を示す。
【0074】
【表5】
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態においては、正極集電端子5、負極集電端子7の何れもが本発明の実施形態に係るものであるが、例えば、正極集電端子5にだけ、あるいは負極集電端子7にだけ、本発明を適用するようにしてもよい。また、上記実施形態においては、発電要素3の巻回軸方向の両端にそれぞれ正極集電体の露出部31及び負極集電体の露出部32を形成させたが、一方の端面のみに集電体の露出を形成させて、本発明を適用するようにしてもよい。
【0076】
上記実施形態においては、円筒状(横断面形状が円形)の電極群3を備える円筒型電池を例として説明したが、図12に示すような端子を用いて、図13に示す横断面形状がやや偏平な形状(長円形、楕円形等)の発電要素を備える各種の筒型電池も本発明が意図するところである。
【0077】
また、上記実施形態では、正極板4と負極板6の間にセパレータ8を介在させて巻回することにより発電要素3を形成したが、本発明は、巻回によって形成された発電要素を備えた巻回型電池に限定されるものではない。図14に示すように、少なくとも一つの端面に正極集電体又は負極集電体が露出するように、正極板、負極板およびセパレータを積層することによって発電要素を形成した積層型電池の正極集電体又は負極集電体の露出部に、本発明の集電端子を適用するようにしてもよい。
【0078】
(符号の説明)
1 リチウムイオン二次電池
2 外装ケース
20 ケース本体
21 蓋体
22 シール材
3 発電要素
30 巻回軸
31 正極集電体の露出部
32 負極集電体の露出部
4 正極
40 正極集電体
41 正極合剤
5 正極集電端子
50 板状部
51 凸部
510 開口部
511 溶接片
511a 屈曲点
512 頂点
513 下端
52 孔
53 リード部
54 凸部群
6 負極
60 負極集電体
61 負極合剤
7 負極集電端子
70 板状部
71 凸部
710 開口部
711 溶接片
711a 屈曲点
712 頂点
713 下端
72 リード部
73 凸部群
8 セパレータ
【産業上の利用分野】
【0079】
本発明の電池は、リチウムイオン電池をはじめ、電極群構成材料や電解液の組成が異なる種々の電池、例えばリチウム金属やリチウム合金を負極とするリチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、あるいは電気二重層キャパシタに適用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14