特許第5796500号(P5796500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796500
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】コルゲートクランプ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/32 20060101AFI20151001BHJP
   F16B 2/10 20060101ALI20151001BHJP
   F16L 3/08 20060101ALI20151001BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   H02G3/32
   F16B2/10 D
   F16L3/08 Z
   B60R16/02 623C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-3051(P2012-3051)
(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-143842(P2013-143842A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆史
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−197244(JP,A)
【文献】 特開2010−283965(JP,A)
【文献】 特開平11−196522(JP,A)
【文献】 特開平11−255260(JP,A)
【文献】 実開平01−096724(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
B60R 16/02
F16B 2/10
F16L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径寸法の大きな大径部と、該大径部よりも径寸法の小さな小径部とが交互に形成されたコルゲートチューブに外嵌される開閉式の円筒状の嵌合部と、車両への取付部とを有するコルゲートクランプにおいて、
前記嵌合部の内面には、該内面の周方向に延出すると共に、該内面からの突出高さが周方向で異ならされて形成された複数の歯部が周方向に並んで突設されており、
前記歯部の前記内面からの突出方向が、前記嵌合部の閉動作時における前記内面の移動方向に傾斜されている
ことを特徴とするコルゲートクランプ。
【請求項2】
前記歯部の突出端面が先鋭形状とされている
請求項1に記載のコルゲートクランプ。
【請求項3】
前記嵌合部の内面において、開状態で分断される周方向端部以外の部位に前記歯部が形成されている
請求項1又は2に記載のコルゲートクランプ。
【請求項4】
前記複数の歯部が、前記嵌合部における前記コルゲートチューブの貫通方向の複数個所に形成されている
請求項1〜の何れか1項に記載のコルゲートクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスを挿通するコルゲートチューブを車体に固定するために用いられるコルゲートクランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車においては、バッテリからの電源を各電気部品に供給したり、センサ等やECUとの間で電気信号を伝送するために、ワイヤハーネスが車体の各所に配索されている。これらワイヤハーネスは、例えば特開2004−166403号公報(特許文献1)に記載されているように、複数本がコルゲートチューブに挿通状態で収容されている。そして、コルゲートチューブにコルゲートクランプを嵌合して組み付けると共に、コルゲートクランプが車体パネル等に取り付けられることによって、コルゲートチューブが車体に固定されるようになっている。
【0003】
ところで、コルゲートチューブは、一般に、径寸法の大きな大径部と、径寸法が小さな小径部とが交互に形成された蛇腹形状とされている。そこで、コルゲートクランプにおいてコルゲートチューブを挟む嵌合部の内面には、内面の周方向に延びる突条が形成されており、該突条を大径部と大径部の間の谷部に入り込ませることによって、コルゲートクランプがコルゲートチューブの延出方向で位置ずれしないようにされている。
【0004】
ところが、コルゲートチューブは、一般に、ワイヤハーネスの収容を容易とするために、延出方向に切り込みが入れられており、切り込みを開いてワイヤハーネスを収容するようにされている。そして、ワイヤハーネスを収容した後に、コルゲートチューブの外面にテープが巻回されて、切り込みが開かないようにされている。それ故、コルゲートクランプの嵌合部分にテープが巻回されていると、コルゲートクランプに設けられた突条の谷部への入り込みがテープで阻害されて、嵌合に非常に力を要するという問題があった。そこで、従来では、コルゲートチューブにおけるコルゲートクランプの嵌合部分を避けてテープを巻回することが行なわれていた。しかし、コルゲートクランプの嵌合部分の位置を測り、そこで一旦巻回を中断しなければならず、テープ巻きの作業工数が増加するという問題があった。また、コルゲートクランプの突条が入り込む谷部が全周に連続していることから、コルゲートクランプがコルゲートチューブの周方向で回転してしまい、車体への取り付け作業に手間を要するという問題もあった。
【0005】
そこで、特許文献1には、コルゲートチューブの外周面上に、コルゲートチューブの延出方向に連続して延びる凹部を設けると共に、コルゲートクランプの嵌合部に設けられたヒンジ部が嵌合部の閉状態で内方に突出して、コルゲートチューブの凹部に入り込むことにより回転を防止する構造が開示されている。しかし、このような構造では、コルゲートクランプに対応するために、コルゲートチューブも専用のものを用意しなければならず、製造コストの増加を招くという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−166403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、従来公知のコルゲートチューブに対して容易に嵌合することが出来ると共に、コルゲートチューブへの組み付け状態での回転を防止することの出来る、新規な構造のコルゲートクランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、径寸法の大きな大径部と、該大径部よりも径寸法の小さな小径部とが交互に形成されたコルゲートチューブに外嵌される開閉式の円筒状の嵌合部と、車両への取付部とを有するコルゲートクランプにおいて、前記嵌合部の内面には、該内面の周方向に延出すると共に、該内面からの突出高さが周方向で異ならされて形成された複数の歯部が周方向に並んで突設されており、前記歯部の前記内面からの突出方向が、前記嵌合部の閉動作時における前記内面の移動方向に傾斜されていることを、特徴とする。
【0009】
本発明に従う構造とされたコルゲートクランプにおいては、嵌合部の内面に突出されてコルゲートチューブの大径部間の谷部に嵌め入れられる突起が、突出高さが嵌合部の内面の周方向で異ならされて形成された複数の歯部により構成されている。従って、テープが巻回されたコルゲートチューブに対して、本発明に従うコルゲートクランプを嵌合すると、嵌合部の内面に突設された複数の歯部がテープに接触して、各歯部に押込力が集中されることにより、各歯部がテープに食い込む。従って、テープの上からでも小さな力でコルゲートクランプを容易に嵌合することが出来る。その結果、コルゲートクランプの嵌合部分を考慮することなく、コルゲートチューブの全体にテープを巻回することが出来て、テープ巻回の作業効率を向上することが出来る。さらに本態様によれば、開状態とされた嵌合部にコルゲートチューブを嵌め入れて、嵌合部を閉じる際に、歯部がコルゲートチューブの周方向に沿って移動する距離を小さくすることが出来る。これにより、歯部によるテープの引っ掻き量を低減することが出来て、歯部をテープにより効果的に食い込ませてコルゲートクランプをコルゲートチューブの周方向でより安定的に固定することが出来る。
【0010】
さらに、嵌合部の内面の周方向に並んで形成された複数の歯部がコルゲートチューブにおける大径部と大径部の間の谷部に入り込むことによって、各歯部が大径部で係止されることから、コルゲートクランプのコルゲートチューブの軸方向での位置ずれが阻止される。それと共に、各歯部がコルゲートチューブのテープに食い込むことにより、コルゲートクランプのコルゲートチューブ周方向での回転も防止することが出来る。その結果、コルゲートクランプのコルゲートチューブに対する軸方向および周方向の位置決めを同時に達成することが出来、コルゲートクランプ、延いてはコルゲートチューブの車両への組付けを容易に行なうことが出来る。
【0011】
そして、本発明に従う構造とされたコルゲートクランプは、コルゲートチューブ側に何ら特別の加工を必要としないことから、従来から広く用いられているコルゲートチューブに広く適用することが出来る。その結果、専用のコルゲートチューブを用意する必要もなく、製造コストの低減を図ることが出来る。
【0012】
なお、嵌合部の内面に形成される複数の歯部は、嵌合部の内面からの突出高さの増減により歯状に形成される突起であれば何れをも含み、側面視において台形状のものや三角形状のもの等の何れをも含む。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記歯部の突出端面が先鋭形状とされているものである。
【0014】
本態様によれば、歯部を先細形状として、コルゲートチューブに巻回されたテープに食い込み易くすることが出来る。これにより、嵌合に要する力をより軽減することが出来る。また、歯部をテープに強固に食い込ませて、コルゲートクランプのコルゲートチューブ周方向での回転をより強固に防止することが出来る。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記嵌合部の内面において、開状態で分断される周方向端部以外の部位に前記歯部が形成されているものである。
【0016】
本態様においては、嵌合部の内面において、嵌合部の開状態で分断される周方向端部には歯部が非形成とされている。嵌合部の周方向端部に歯部が形成されていると、コルゲートチューブを嵌合部に嵌め入れるに際して、該歯部がコルゲートチューブに引っ掛かり易い。そこで、本態様においては、嵌合部の周方向端部には歯部を形成しないことによって、コルゲートチューブの嵌め入れを容易に行なうことが可能とされている。
【0019】
本発明の第の態様は、前記第一〜第の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記複数の歯部が、前記嵌合部における前記コルゲートチューブの貫通方向の複数個所に形成されているものである。
【0020】
本態様によれば、歯部がコルゲートチューブの長さ方向の複数個所でコルゲートチューブのテープに食い込むことから、コルゲートクランプをコルゲートチューブにより強固に固定することが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、コルゲートクランプにおける嵌合部の内面に、該内面の周方向に延出すると共に、該内面からの突出高さが周方向で異ならされた複数の歯部を該内面の周方向に並んで突設した。これにより、複数の歯部をコルゲートチューブにおける大径部と大径部の間に嵌め入れることによって、コルゲートクランプをコルゲートチューブの長さ方向で固定することが出来る。更に、歯部をコルゲートチューブに巻回されたテープに食い込ませることによって、コルゲートクランプをコルゲートチューブの周方向でも回転を抑えて固定することが出来る。それと共に、コルゲートチューブに巻回されたテープの上からでもコルゲートクランプを固定することが出来る。コルゲートクランプの嵌合位置を意識することなくテープ巻きを行なうことが可能となって、テープ巻きの作業効率を向上することが出来る。また、コルゲートチューブには特別な加工を要することも無いことから、従来から広く用いられているコルゲートチューブを用いることが可能であり、製造コストの軽減を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一の実施形態としてのコルゲートクランプの斜視図。
図2図1に示したコルゲートクランプの正面図。
図3図1に示したコルゲートクランプにおける嵌合部内面の展開図。
図4】開口部側に設けられた歯部の拡大図。
図5】本体部側に設けられた歯部の拡大図。
図6図1に示したコルゲートクランプのコルゲートチューブへの嵌合状態を示す斜視図。
図7図6に示したコルゲートクランプおよびコルゲートチューブの要部の断面説明図。
図8図4に示した歯部の移動を説明するための説明図。
図9】本発明の第二の実施形態としてのコルゲートクランプの要部の説明図。
図10】本発明の第三の実施形態としてのコルゲートクランプの要部の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
先ず、図1および図2に、本発明の第一の実施形態としてのコルゲートクランプ10を示す。コルゲートクランプ10は、合成樹脂からなる一体成形品とされており、開閉可能とされた嵌合部12と、車両への取付部14が設けられている。
【0025】
嵌合部12は、本体部16と開閉部18が薄肉板状のヒンジ部20で連結されて、開閉部18が本体部16に対してヒンジ部20を介して開閉可能とされている。本体部16は略半円筒形状とされており、開閉部18と対向する面には、嵌合部12の内面21を構成する略半円周状の本体側内面22が形成されている。本体部16は、ヒンジ部20が形成された側の端縁部が直線状に延出されており、該端縁部の延出端部には、開閉部18に向けて突出する補助係止爪24が形成されている。また、本体部16におけるヒンジ部20と反対側には、略L字形状をもって本体部16の開口側(図2中、上側)に突出する係止板部26が形成されている。係止板部26は本体部16に対して隙間を隔てて対向位置されており、係止板部26と本体部16との間には、本体部16の開口側に開口する差込孔28が形成されている。そして、係止板部26には、差込孔28側に突出する本体側係止爪30が形成されている。
【0026】
一方、開閉部18は、本体部16と等しい幅寸法を有する略半円筒形状とされており、本体部16と対向する面には、嵌合部12の内面21を構成する略半円周状の開閉側内面32が形成されている。開閉部18の周方向におけるヒンジ部20側の端部には、断面L字状の連結部34が形成されており、該連結部34の端部がヒンジ部20と連結されている。連結部34においてヒンジ部20側の端縁部には、開閉部18の内側に突出して開閉部18の幅方向に延びる補助係止突起36が形成されている。また、開閉部18において連結部34と反対側の周方向端部には、略直線状に延出された延出端部38が形成されており、該延出端部38の延出先端部には、開閉部18の外側に突出する開閉側係止爪40が形成されている。更に、延出端部38の延出基端部には、延出端部38の延出方向(図2中、左右方向)に直交して開閉部18の外側に突出する板状の操作片42が形成されている。
【0027】
このような嵌合部12は、開閉部18がヒンジ部20を介して本体部16側に回動されて、開閉部18の開閉側係止爪40が本体部16の本体側係止爪30と係合されることにより、閉状態に保持される。嵌合部12は、本体部16と開閉部18によって、閉状態において略円筒形状とされており、本体部16の本体側内面22と開閉部18の開閉側内面32によって、実質的に周方向に連続する嵌合部12の内面21が形成されている。
【0028】
図3に、嵌合部12の内面21を展開状態で示す。内面21を構成する本体側内面22と開閉側内面32には、複数の歯部44が形成されている。歯部44は、略円筒形状を有する嵌合部12の内面21の周方向(図3中、左右方向)に延出すると共に、内面21からの突出寸法が該内面21の周方向で部分的に異ならされることによって形成された、嵌合部12の内面21から嵌合部12の内方に突出する三角板形状とされている。これにより、歯部44における内面21からの突出端面46は、先鋭形状とされている。歯部44の幅寸法:wは何れも等しくされており、後述するコルゲートチューブ58(図6参照)における大径部60,60間の谷部64の幅寸法よりも小さくされている。このような歯部44の複数が、本体側内面22および開閉側内面32のそれぞれにおいて、両内面22,32の周方向(図3中、左右方向)で適当な間隔を隔てて並んで突設されている。
【0029】
本体側内面22および開閉側内面32のそれぞれにおいて、歯部44が形成される周方向位置(図3中、左右方向位置)、軸方向位置(図3中、上下方向位置)は特に限定されるものではない。本実施形態においては、本体側内面22および開閉側内面32のそれぞれにおける軸方向(図3中、上下方向)の両端部に複数の歯部44が形成されており、本体側内面22の歯部44と開閉側内面32の歯部44が、内面21の軸方向(図3中、上下方向)の両端部で、内面21の周方向(図3中、左右方向)の一直線上に位置して形成されている。更に、本体側内面22および開閉側内面32のそれぞれにおいて、軸方向の両端部に設けられた歯部44は、本体側内面22および開閉側内面32の周方向で片側に偏倚して形成されており、嵌合部12の閉状態において、内面21の軸方向で同じ側に形成された本体側内面22の歯部44と開閉側内面32の歯部44が、嵌合部12の径方向で対向位置されるようになっている。なお、開閉部18が開かれることによって、内面21は、本体側内面22の周方向の両端部45a,45bで周方向に分断される。そして、本体側内面22において、これら周方向の両端部45a,45bには歯部44が形成されておらず、本体側内面22の周方向で、両端部45a,45bを除いた位置に複数の歯部44が形成されている。
【0030】
図4に、開閉部18における開閉側内面32の周方向の一方の端部に形成された歯部44aを例に示す。開閉部18に形成された歯部44は、開閉側内面32からの突出方向:lが、開閉部18が閉操作される際の開閉側内面32の移動方向(図4中、矢印方向)に傾斜されている。具体的には、歯部44の突出方向:lは、歯部44の突出先端の内角の二等分線であり、この突出方向:lが、歯部44における開閉側内面32の周方向の中間部分から開閉側内面32に対して垂直に延びる径方向線:Rに対して開閉部18の閉動作時の回動方向に傾斜されている。より好ましくは、歯部44において、開閉部18の閉動作時の回動方向で前方に位置する前方面48と開閉側内面32が形成する外角:αが鋭角となるように、歯部44の突出方向:lが設定されている。
【0031】
一方、図5に、本体部16における本体側内面22の周方向の一方の端部に形成された歯部44bを例に示す。本体部16に形成された歯部44は、本体側内面22からの突出方向:lが、本体部16の開口方向(図5中、上方)に傾斜されている。具体的には、本体部16に形成された歯部44において、前記開閉部18に形成された歯部44と同様に定義される本体側内面22からの突出方向:lが、前記開閉側内面32におけると同様に定義される径方向線:Rに対して、本体部16の開口方向(図5中、上方)に傾斜されている。
【0032】
本体部16には、取付部14が一体形成されている。取付部14は、全体として略長手矩形の中空箱体形状とされており、本体部16における開口方向(図2中、上方)と反対側の外側に形成されている。取付部14の長手方向の一方には、開口部50が形成されている。また、取付部14の内部には、開口部50側の端部が取付部14における本体部16側の内面に連結されると共に、取付部14の長手方向で内方に延出するランス52が形成されている。そして、取付部14の内部において、ランス52を挟む両側には、取付部14における本体部16側の内面から取付部14の内方に突出すると共に、取付部14の長手方向に延びる一対の突条54,54が形成されており、これら突条54,54と取付部14の内面との間に、ランス52を挟む両側に位置してランス52と同方向に延びるスリット状の一対の差込溝56,56が形成されている。これらランス52と差込溝56,56の延出方向は、嵌合部12の軸方向に直交して設定されている。
【0033】
このような構造とされたコルゲートクランプ10は、図6に示すように、コルゲートチューブ58に嵌合部12が外嵌されることにより、コルゲートチューブ58に固定される。コルゲートチューブ58は従来から広く用いられているものが適用可能である。コルゲートチューブ58は、合成樹脂等から形成された略円筒形状とされており、外径寸法が相対的に大きくされた大径部60と、外径寸法が大径部60よりも小さくされた小径部62とが軸方向で交互に形成された蛇腹形状とされている。これにより、大径部60と大径部60の間には、径方向の内方に窪んだ谷部64が形成されている。
【0034】
コルゲートチューブ58の周方向の一箇所には、コルゲートチューブ58の軸方向の全長に亘って延びる切り込み66が形成されており、コルゲートチューブ58は、切り込み66によって周方向で分断されている。この切り込み66からコルゲートチューブ58を開くことにより、コルゲートチューブ58内に複数のワイヤハーネス68が収容可能とされている。そして、ワイヤハーネス68を収容したコルゲートチューブ58の外周面上にテープ70が巻回されて貼着されることにより、切り込み66が開かないようにされている。
【0035】
このようなコルゲートチューブ58にコルゲートクランプ10が組み付けられる際には、嵌合部12を開いた状態で、嵌合部12の本体部16に対してコルゲートチューブ58が嵌め入れられる。その後、図2に示したように、開閉部18の操作片42が押圧されて、ヒンジ部20を中心に開閉部18が本体部16側に回動されると共に、開閉部18の延出端部38が本体部16の差込孔28に差し込まれて開閉側係止爪40が本体側係止爪30と係合されることにより、開閉部18が閉状態に維持される。なお、開閉部18の閉状態において、ヒンジ部20側に形成された補助係止爪24と補助係止突起36が係合することにより、開閉部18の閉状態がより安定的に維持されるようになっている。これにより、図6に示したように、嵌合部12の軸方向にコルゲートチューブ58が貫通した状態で、嵌合部12がコルゲートチューブ58に外嵌されて、コルゲートクランプ10がコルゲートチューブ58に固定される。そして、コルゲートクランプ10の取付部14の開口部50から、図示しない車体パネル等に設けられたブラケット72が差込溝56,56に差し込まれて、ブラケット72に貫設された係合孔74にランス52が係合されることにより、コルゲートクランプ10を介して、コルゲートチューブ58が車両に取り付けられる。
【0036】
図7に示すように、コルゲートチューブ58を嵌合した状態で、嵌合部12に形成された複数の歯部44が、コルゲートチューブ58の外周面上に巻回されたテープ70に食い込んで、コルゲートチューブ58における大径部60,60の間の谷部64内に入り込まされる。なお、歯部44は、テープ70を穿孔して食い込ませても良いし、テープ70を破らずに食い込まされても良い。また、歯部44の内面21からの突出高さは、コルゲートチューブ58の嵌合状態で小径部62に至らない程度に設定されることが好ましい。これにより、歯部44がコルゲートチューブ58の軸方向で大径部60に係止されることにより、コルゲートクランプ10のコルゲートチューブ58の軸方向での位置ずれが阻止される。また、歯部44がテープ70に食い込まされることにより、コルゲートクランプ10のコルゲートチューブ58の周方向での位置ずれが阻止される。その結果、コルゲートクランプ10をコルゲートチューブ58に対して軸方向および周方向の両方向で固定することが出来る。特に本実施形態においては、複数の歯部44が内面21の軸方向で両端部の2箇所に形成されていると共に、内面21の軸方向の同位置において本体側内面22に形成された歯部44と開閉側内面32に形成された歯部44が、コルゲートチューブ58を径方向で互いに反対側から挟むことにより、コルゲートチューブ58に対してより強固に固定することが可能とされている。
【0037】
本実施形態に従う構造とされたコルゲートクランプ10においては、嵌合部12を閉じる際の応力が各歯部44に集中されることにより、各歯部44を容易にテープ70に食い込ませることが出来、テープ70の上からでも比較的小さな力で嵌合させることが出来る。特に、歯部44が三角形状の先鋭形状とされていることにより、歯部44に効果的に応力を集中させることが出来る。その結果、コルゲートチューブ58におけるコルゲートクランプ10の嵌合部分を考慮することなく、コルゲートチューブ58の全長にテープ70を巻回することが出来て、テープ70の巻回作業の効率を向上することが出来る。また、コルゲートチューブ58には何等特別な加工を要しないことから、従来から広く用いられているコルゲートチューブ58に適用することが可能であり、製造コストの低減を図ることが出来る。
【0038】
さらに、開閉部18に形成された歯部44は、嵌合部12を閉じる際の開閉部18の回動方向に傾斜されている。これにより、歯部44がコルゲートチューブ58の周方向でテープ70を引っ掻く長さを短くすることが出来る。即ち、図8(b)に示す歯部44’のように、突出方向:l’が内面21に対して略垂直に設定されている場合には、歯部44’の頂点:P2が嵌合完了時の位置:P2’にまで移動するに際して、図中矢印で示す回動方向で前方に位置する前方面48’がテープ70と交差してテープ70を切開する切開長さ:R2が大きくなる。それ故、嵌合部12の嵌合が完了した後には、余剰切開長さ:Drを生じることとなり、歯部44’がコルゲートチューブ58の周方向で位置ずれを生じるおそれがある。これに対して、本実施形態の歯部44によれば、図8(a)に示すように、突出方向:lが回動方向に傾斜されて、前方面48が内面21から回動方向に傾斜して突出されていることから、歯部44の頂点:P1が嵌合完了時の位置:P1’に移動するまでの前方面48のコルゲートチューブ58周方向での移動量を小さくして、前方面48がテープ70を切開する切開長さ:R1を短くすることが出来る。その結果、図8(b)に示したような余剰切開長さ:Drを殆ど生じることなく歯部44をテープ70に食い込ませることが出来て、歯部44をコルゲートチューブ58周方向でより安定的に保持することが出来ると共に、テープ70の損傷を抑えることが出来る。なお、歯部44がテープ70を切開せずにテープ70に食い込む場合でも、歯部44のコルゲートチューブ58周方向の変位量が低減されることから、歯部44をより効果的にテープ70に食い込ませることが出来る。
【0039】
また、図5に示したように、本体部16に形成された歯部44は、突出方向:lが本体部16の開口方向(図5中、上方)に近づけられている。これにより、歯部44の突出方向:lがコルゲートチューブ58の本体部16への嵌め入れ方向に近づけられることから、コルゲートチューブ58を本体部16に嵌め入れるに際して、歯部44をテープ70に効果的に食い込ませることが出来る。更に、本体側内面22における周方向端部45a,45b(図2等参照)には歯部44が形成されていないことから、歯部44に阻害されることなくコルゲートチューブ58を本体部16に円滑に嵌め入れることが出来る。
【0040】
なお、歯部の具体的形状は、前記実施形態の如き形状に限定されるものではなく、コルゲートチューブの大きさや強度、テープの厚さ等を考慮して各種の形状が採用可能である。以下に、本発明に従う構造とされた歯部の異なる実施形態を幾つか例示するが、これらの例示は、本発明がこれらの態様に限定されることを示すものではない。また、以下の説明において、前記第一の実施形態と同一の部位については、図中に前記第一の実施形態と同一の符号を付することにより、説明を省略する。
【0041】
図9に、本発明の第二の実施形態としてのコルゲートクランプにおける本体側内面22と歯部76を示す。本実施形態における歯部76は、略長手矩形の板形状とされている。このようにすれば、本体側内面22の周方向での歯部76の寸法を小さくすることが出来て、コルゲートチューブ58のテープ70に食い込ませ易くすることが出来る。本実施形態から明らかなように、歯部の具体的形状は三角板形状に限定されず、矩形や台形等でも良いし、板形状にも限定されず、例えば円錐形状や角錐形状、円柱や角柱形状等でも良い。
【0042】
図10に、本発明の第三の実施形態としてのコルゲートクランプにおける本体側内面22と歯部78を示す。これら複数の歯部78は互いに等しい三角板形状とされている。また、各歯部78の突出方向:lが本体側内面22に対して略垂直に設定されている。本実施形態から明らかなように、複数の歯部は互いに同形状とされていても良いし、互いに異なる形状とされていても良い。更に、歯部の突出方向は、嵌合部の内面からの垂直方向に対して傾斜されていても良いし、傾斜されていなくとも良い。なお、図示は省略するが、開閉部に設けられる歯部についても同様であり、必ずしも突出方向が回動方向に傾斜されていなくとも良い。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、歯部の形状のみならず、歯部の数、嵌合部の内面における形成位置についても各種の態様が採用可能であって、テープへの食い込み力が比較的小さい場合には歯部の数を多くしてコルゲートチューブへの固定力を確保したり、嵌合時に歯部への応力をより集中させるために、歯部の数を少なくする等しても良い。また、前記第一の実施形態においては、嵌合部の内面の周方向で部分的に歯部が形成されていたが、内面の全周に歯部を形成しても良いし、内面の軸方向の3箇所以上に歯部を形成しても良い。
【0044】
更にまた、前記実施形態におけるヒンジ部20等の嵌合部の具体的形状や、取付部14等の車両への取付部の具体的形状はあくまでも例示であって、取り付けられる車両等に応じて各種の形状が適宜に採用可能である。また、本発明のコルゲートクランプは、必ずしもテープが巻回されたコルゲートチューブに限定して適用されるものではなく、テープが巻回されていないコルゲートチューブに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
10:コルゲートクランプ、12:嵌合部、14:取付部、21:内面、22:本体側内面、32:開閉側内面、44,76,78:歯部、45:周方向端部(嵌合部の内面)、46:突出端面、58:コルゲートチューブ、60:大径部、62:小径部、64:谷部、66:切り込み、68:ワイヤハーネス、70:テープ、72:ブラケット
図1
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図10