(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、保持孔はコネクタ部品の外形状に対応する孔形状であるに過ぎないため、コネクタ部品をしっかりと保持することは難しい。
【0008】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネス本体部にコネクタ部品をなるべくしっかりと固定でき、かつ、その脱着を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るワイヤーハーネスは、幹線部分と、前記幹線部分から分岐する分岐線部分と、前記分岐線部分の端部に取付けられたコネクタ部品とを含むワイヤーハーネス本体部と、不織部材がホットプレスされることにより形成され、前記幹線部分の少なくとも一部を覆うワイヤーハーネス取付部と、その開口からその奥側に向けて徐々に狭まる保持凹部が形成されたコネクタ保持部とを含むコネクタ固定部材とを備
え、前記保持凹部の深さ寸法は、前記コネクタ部品を保持凹部内に挿入してその先端部を前記保持凹部の内周面によって押え込んだ状態で、前記コネクタ部品の全体を覆えるように設定されている。
また、第2の態様に係るワイヤーハーネスは、幹線部分と、前記幹線部分から分岐する分岐線部分と、前記分岐線部分の端部に取付けられたコネクタ部品とを含むワイヤーハーネス本体部と、不織部材がホットプレスされることにより形成され、前記幹線部分の少なくとも一部を覆うワイヤーハーネス取付部と、その開口からその奥側に向けて徐々に狭まる保持凹部が形成されたコネクタ保持部とを含むコネクタ固定部材とを備え、前記保持凹部は、前記幹線部分の長手方向に沿った方向に開口するように形成されている。
第3の態様は、第2の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記幹線部分の一部が、前記保持凹部内に露出している。
【0010】
第4の態様は、
第1〜第3の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記保持凹部は、前記コネクタ部品の先端部より大きい開口からその奥側に向けて前記コネクタ部品を押え込み可能な大きさより小さくなるまで徐々に狭まる形状に形成されている。
【0012】
第5の態様は、第1〜
第4のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスであって、前記コネクタ部品は直方体状に形成され、前記保持凹部は、その開口からその奥側に向けて徐々に内部空間を狭める斜面形状部分を含む。
【0015】
上記課題を解決するため、
第6の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法は、(a)幹線部分と、前記幹線部分から分岐する分岐線部分と、前記分岐線部分の端部に取付けられたコネクタ部品とを含むワイヤーハーネス本体部とを準備する工程と、(b)前記幹線部分の少なくとも一部を不織部材で覆う工程と、(c)前記不織部材内に、四角錐台の外周表面形状を呈する中芯金型を配設する工程と、(d)前記幹線部分の少なくとも一部を覆う不織部材をホットプレスする工程と、(e)前記中芯金型を除去する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
第1〜第5の態様によると、保持凹部は、その開口からその奥側に向けて徐々に狭まる形状に形成されている。また、コネクタ固定部材は、不織部材がホットプレスされることにより形成されているため、コネクタ保持部はある程度の弾性を有している。このため、コネクタ部品を保持凹部に押込むことで、コネクタ部品を保持凹部内になるべくしっかりと固定でき、また、コネクタ部品を容易に脱着できる。
【0017】
第4の態様によると、コネクタ部品を保持凹部内に容易に挿入することができ、かつ、コネクタ部品を保持凹部内に奥まで押込むとコネクタ部品の先端部が保持凹部の内周面に押え込まれて保持される。
【0018】
第1の態様によると、コネクタ部品の外周全体を覆って当該コネクタ部品を十分に保護できる。
【0019】
第5の態様によると、コネクタ部品をよりしっかりと保持できる。
【0020】
第2の態様によると、分岐線部分の長さが短くても、コネクタ部品を保持凹部に容易に挿入できる。
【0021】
第3の態様によると、保持凹部を幹線部分近くに設けることができる。これにより、分岐線部分の長さが短くても、コネクタ部品を保持凹部に容易に挿入できる。
【0022】
第6の態様によると、コネクタ部品を保持凹部内になるべくしっかりと固定でき、また、コネクタ部品を容易に脱着できるワイヤーハーネスを容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係るワイヤーハーネス10について説明する。
図1はワイヤーハーネス10を示す概略斜視図であり、
図2はワイヤーハーネス10を示す概略縦断面図である。なお、
図1及び
図2は、ワイヤーハーネス10のうちコネクタ固定部材20が設けられた部分を示している。
【0025】
このワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス本体部12と、コネクタ固定部材20とを備える。
【0026】
ワイヤーハーネス本体部12は、複数の電線12aが束ねられることにより構成されている。通常、ワイヤーハーネス本体部12は、複数の電線12aが車両における配線形態に応じて分岐しつつ束ねられている。また、各電線12aの端部には、コネクタが取付けられている。そして、本ワイヤーハーネス本体部12が車両における所定の配線形態に沿って配設された状態で、コネクタが車両における各種電気部品に接続されることで、各電気部品が本ワイヤーハーネス本体部12を介して相互に電気的に接続される。
【0027】
また、ワイヤーハーネス本体部12は、幹線部分13と分岐線部分14とを含む。幹線部分13は、通常複数の電線が束ねられた部分であるが、1本の電線のみ含む部分であってもよい。分岐線部分14は、前記幹線部分13の途中から分岐する電線12aによって構成されている。ここでは、幹線部分13から1本の電線12aが分岐している例で説明するが、幹線部分13から複数の電線12aが分岐していてもよい。また、幹線部分13は、本分岐線部分14が設けられる箇所以外で分岐していてもよい。なお、上記ワイヤーハーネス本体部12には、光ケーブル等が含まれていてもよい。
【0028】
上記分岐線部分14の端部にはコネクタ部品16が取付けられている。このコネクタ部品16は、例えば、車両に対してオプションで装備される電装品(図示省略)との接続に使用される。そのため、この電装品が用いられない場合、コネクタ部品16は、他のコネクタ(図示省略)と接続されない状態で、幹線部分13に取付固定される。そして、電装品を追加的に装備するような場合には、コネクタ部品16は、幹線部分13から取外され、当該電装品に接続されたコネクタに接続される。ここでは、コネクタ部品16は、直方体形状に形成されている。コネクタ部品16の外周には、相手側コネクタへの係止固定用のロック構造等が形成されていてもよい。
【0029】
なお、コネクタ部品16としては、上記のようなオプション用のコネクタの他、ダイオード又はヒューズ等の電気部品を組込んだコネクタ等であってもよい。これらのコネクタは、ワイヤーハーネス本体部12の配線の途中経路に、ダイオード又はヒューズ等の電気部品を実装する目的で設けられる。
【0030】
コネクタ固定部材20は、不織部材がホットプレスされることにより形成された部材であり、ワイヤーハーネス取付部22と、コネクタ保持部26とを備える。コネクタ固定部材20は、上記分岐線部分14を幹線部分13に沿って配設した状態で、コネクタ部品16が配設される箇所に形成することが好ましい。
【0031】
ここで、コネクタ固定部材20を形成するために用いられる不織部材について説明しておく。不織部材としては、加熱工程を経ることにより硬くなることが可能なものを用いることができる。このような不織部材として、基本繊維と、これと絡み合う接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、110℃〜115℃)を有する樹脂である。不織部材を基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い加工温度に加熱すると、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染込む。その後、不織部材が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織部材が加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時の成形形状に維持される。また、不織部材同士が接触している部分では、当該接触部分にも溶融した接着樹脂が染込んで固化する。これにより、不織部材同士の接触部分が接合される。
【0032】
ただし、基本繊維は、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得る繊維であればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。また、芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0033】
基本繊維と接着樹脂の組み合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点はおよそ250℃であり、接着樹脂の融点は110℃〜150℃である。このため、不織部材を110℃〜250℃の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染込む。そして、不織部材が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、上記成形形状の維持及び不織部材同士の接合を行う。
【0034】
また、ホットプレスとは、不織部材に対する加熱処理及び不織部材を型に押付けて所定形状に形成する処理を施すことをいう。加熱処理と所定形状への形成処理とは、同時に行われてもよいし、或は、連続的に別々に行われてもよい。例えば、不織部材を加熱した後、冷却により固まる前に所定の型でプレスしてもよい。この実施形態に係るコネクタ固定部材20を加工するのに適したホットプレス加工の例については後にさらに詳述する。
【0035】
ワイヤーハーネス取付部22は、幹線部分13の少なくとも一部を覆った状態で当該幹線部分13に対して取付固定されている。すなわち、上記不織部材によって幹線部分13の一部を覆った状態で当該不織部材をホットプレスすると、不織部材が幹線部分13を覆った形状で硬化すると共に内部の接着樹脂が溶融して幹線部分13の表面に固着することで、本ワイヤーハーネス取付部22がワイヤーハーネス本体部12に対して一定位置に取付固定される。ワイヤーハーネス本体部12とワイヤーハーネス取付部22とがそれらの間の両面テープによって固定されていてもよい。
【0036】
なお、ワイヤーハーネス取付部22自体は、ワイヤーハーネス本体部12を覆った状態で硬化しているため、ワイヤーハーネス本体部12の保護及びワイヤーハーネス本体部12の経路規制を行う機能をも有している。これらの機能からすると、ワイヤーハーネス取付部22が、ワイヤーハーネス本体部12のより長い部分、或は、全体を覆っていてもよい。
【0037】
コネクタ保持部26は、上記ワイヤーハーネス取付部22の外周周りの一部に一体形成された部分であり、このコネクタ保持部26に保持凹部28が形成されている。すなわち、上記ワイヤーハーネス取付部22を形成する際、その側方部分で不織部材を用いて所定のコネクタ保持部26の形状にホットプレス加工することで、本コネクタ保持部26が形成される。
【0038】
保持凹部28は、一方側に開口する有底の凹みであり、その開口28aから奥側に向けて徐々に狭まる形状に形成されている。
【0039】
より具体的には、保持凹部28は、幹線部分13の長手方向に沿った方向に開口している。換言すると、幹線部分13の長手方向の一方側に向く開口28aから、幹線部分13の長手方向の他方側に凹む有底の凹み形状に形成されている。ここでは、幹線部分13の一部が保持凹部28内に露出しており、保持凹部28の外周4方のうち、三方が不織部材によって囲まれ、残りの一方が幹線部分13の外周部によって囲まれている。もっとも、保持凹部28の外周の4方全体が不織部材によって囲まれる構成であってもよい。
【0040】
保持凹部28は、四角錐の頂部を切り落した四角錐台の外周表面形状のうちの3つの側面に対応する部分を有しており、従って、その深さ方向に直交する方向における断面形状が四角形状を呈するように形成されている。ここでは、保持凹部28の内周面のうち幹線部分13に対向する内側側面28cは、その開口からその奥側に向けて徐々に内部空間を狭める斜面形状に形成されている。これにより、本保持凹部28内に上記直方体形状のコネクタ部品16を挿入すると、その先端部(電線12aが延出する側の反対側の部分)のうち幹線部分13とは反対側の直線状縁部が内側側面28cに対して安定して線状に接するようになっている。
【0041】
また、保持凹部28の開口28aの大きさは、コネクタ部品16の先端部の大きさより大きく形成されている。ここでは、開口28aは、コネクタ部品16の先端部の大きさより大きい方形状に形成されている。また、保持凹部28は、当該開口28aからその奥側に向けて徐々に狭まり、コネクタ部品16を押え込み可能な大きさよりも小さくなるまで狭まっている。
【0042】
ここでは、開口28aの幅寸法はコネクタ部品16の幅寸法と同一であるか又は大きく設定され、開口28aの高さ寸法H1は、コネクタ部品16の高さ寸法H3よりも大きく設定されている。従って、コネクタ部品16の先端部を開口28a内に容易に挿入できる。
【0043】
また、保持凹部28の幅方向(ワイヤーハーネス本体部12の周方向)は、保持凹部28の開口28a側から奥側に向けて同じ大きさに設定されている。また、保持凹部28の上記内側側面28cが上記のように傾斜しており、保持凹部28の高さ寸法(ワイヤーハーネス本体部12の径方向の寸法)は、開口28a側から奥側に向けて徐々に小さくなるように設定され、保持凹部28の底部28bの高さ寸法H2は、コネクタ部品16の高さ寸法H3よりも小さくなっている。従って、保持凹部28の開口28aと底部28bとの間、好ましくは、底部28bよりの箇所で、保持凹部28の高さ寸法がコネクタ部品16の高さ寸法H3と一致する。この箇所で、保持凹部28の内周面によってコネクタ部品16が幹線部分13に向けて押え込まれる。
【0044】
なお、上記実施形態では、保持凹部28の高さ寸法を、その開口28a側から奥側に向けて徐々に小さくしているが、高さ寸法と幅寸法の双方又は幅寸法のみを開口から奥側に向けて徐々に小さくしてもよい。
【0045】
また、上記保持凹部28の深さ寸法L1は、コネクタ部品16の長さ寸法L3よりも大きく設定されている。さらに、上記のように保持凹部28内にコネクタ部品16を挿入して、コネクタ部品16の先端部を保持凹部28の内側側面28cによって押え込んだ状態で、その押え込み部分と開口28aとの間の寸法L2は、コネクタ部品16の長さ寸法L3と同じ又は大きく設定されている。これにより、コネクタ部品16を保持凹部28内に挿入した状態で、コネクタ保持部26によってコネクタ部品16の全体を覆うことができる。もっとも、コネクタ部品16を保持凹部28内に挿入した状態で、コネクタ部品16の基端部が保持凹部28から部分的にはみ出ていてもよい。
【0046】
そして、上記コネクタ部品16が開口28aを通って保持凹部28内に挿入され、コネクタ部品16の先端部が幹線部分13の外周部と保持凹部28の内側側面28cとの間に配設される。この状態で、コネクタ部品16をさらに押込むと、コネクタ部品16の先端部が保持凹部28の内側側面28cに接触し、保持凹部28の内側側面28cが外方向に僅かに弾性変形する。そして、コネクタ部品16の押込み力を抜くと、保持凹部28の内側側面28cが元の形状に弾性復帰し、コネクタ部品16の先端部が、幹線部分13の外周部と保持凹部28の内側側面28cとの間に挟み込まれ、コネクタ部品16が保持凹部28内に保持される。なお、保持凹部28の内側側面28cは、不織部材をホットプレス加工した面であり、繊維同士が絡み合う表面性状を呈している。特に、後述する製造方法例により形成された例では、保持凹部28の内側側面28cは直接加熱された面ではなく、従って、多分に繊維同士が絡み合う表面性状を呈している。このため、コネクタ部品16の先端部は保持凹部28の内側側面28cに埋り込んだ状態でも保持され、内側側面28cから脱し難い。
【0047】
上記ワイヤーハーネス10の一製造例について説明する。
【0048】
まず、
図3に示すように、幹線部分13と分岐線部分14と、コネクタ部品16とを含む上記ワイヤーハーネス本体部12を準備する。ワイヤーハーネス本体部12は、他の箇所で結束されていてもよいし、結束されていなくてもよい。そして、幹線部分13のうちの一部に、不織部材50、ここでは、細長い方形シート状の不織部材50を巻いて、当該幹線部分13の一部を不織部材50で覆う。
【0049】
また、不織部材50内に中芯金型55を配設する。中芯金型55は、上記保持凹部28の内周形状に対応する形状、より具体的には、四角錐体の頂部を切除した四角錐台の外周表面形状を呈する形状に形成されている。ここでは、中芯金型55の広い側の底面を、幹線部分13の長手方向に沿って一方向に向けた姿勢で、当該中芯金型55が幹線部分13の外周周りの一部に接するように配設される。そして、前記底面を外部に露出させるようにして、中芯金型55及び幹線部分13に上記不織部材50が巻付けられる。不織部材50を巻付ける際に、巻始め及び巻き終りの部分に両面テープが貼付けられ、上記巻付状態の仮保持が行われてもよい。
【0050】
なお、不織部材50を巻付けた後に、幹線部分13と不織部材50との間に中芯金型55を挿入してもよい。また、不織部材50を幹線部分13に複数回巻付ける場合には、不織部材50の層間に中芯金型55を配設してもよい。
【0051】
次に、ホットプレス加工を行う。ここで、ホットプレス用成形型の構成例について説明する。
図4及び
図5はホットプレス用成形型60による加工作業を示す説明図である。
【0052】
ホットプレス用成形型60は、下型62と、上型72とを備える。
【0053】
下型62は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(上面)に下型面63が形成されている。下型面63は、概略的には、底部が半円柱表面形状を呈しかつ上方に開口する溝形状に形成されている。下型面63の長手方向の長さは、コネクタ固定部材20の長さ寸法と同一かそれよりも長い程度に設定されている。下型面63は、ワイヤーハーネス本体部12における保護対象部分を車体に配設した場合の経路に応じて延びる形状に形成されている(
図4及び
図5では下型面63は、直線状であるが、曲っていてもよい)。また、下型面63の長手方向一端部の一側部には、コネクタ保持部26を形成するための凹部64が形成されている。凹部64は、コネクタ保持部26の外形状のうち外側面及び一側面に倣った形状を有する凹み形状に形成されており、その上方にも開口している。
【0054】
上型72は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(下面)に上部が半円筒表面形状を呈しかつした方に開口する溝形状の上型面73が形成されている。上型面73は、上記下型面63の上方開口を塞ぎつつ当該下型面63内に配設可能な幅に形成されている。また、上型面73は、上記下型面63の屈曲形状に応じて、経路に応じて延びる形状に形成されている。また、上型面73の長手方向一端部の一側部であって上記凹部64に対向する位置には、上型面73の側方に突出し、上記凹部64の上方開口を閉じる突部74が形成されている。突部74は、コネクタ保持部26の外形状のうち他側面に倣った形状の下向き面を有する。
【0055】
そして、この上型面73及び突部74が下型面63及び凹部64内に配置されることにより、それらの間で、コネクタ固定部材20を形成可能なスペースが形成される。なお、下型62及び上型72には、ヒーター等の加熱部が設けられている。
【0056】
上記ホットプレス用成形型60を用いてホットプレス加工を行う方法について説明する。
【0057】
すなわち、ワイヤーハーネス本体部12のうち不織部材50が巻付けられた箇所を、下型面63内に押込む。この際、中芯金型55及びそれを覆う不織部材50の部分を、凹部64内に押込む。この際、中芯金型55の配設位置が設計上の位置等よりずれた箇所にある場合でも、上記押込作業によって、中芯金型55及びそれを覆う不織部材50の部分は、幹線部分13の周方向において設計上の所定位置に配設されるように矯正される。
【0058】
この後、上型72の上型面73及び突部74を下型面63及び凹部64内に挿入し、この状態で、下型62及び上型72を加熱して、ホットプレス用成形型60内で不織部材50をホットプレスする。
【0059】
すると、不織部材50が下型62及び上型72に接触する部分を中心として加熱される。
【0060】
この後、不織部材50が冷却されると、上記下型62及び上型72間では、不織部材50、特に、その外周部が下型面63、凹部64、上型面73及び突部74の形状に応じた形状で硬化し、これにより、コネクタ固定部材20が形成される。
【0061】
この後、ワイヤーハーネス本体部12及び不織部材60がホットプレス用成形型60から取出される。そして、中芯金型55を除去すると、コネクタ保持部26に、中芯金型55の外形状に応じた保持凹部28が形成される。
【0062】
以上のように構成されたワイヤーハーネス10によると、保持凹部28は、その開口28aから奥側に向けて徐々に狭まる形状に形成されている。また、コネクタ固定部材20は、不織部材50がホットプレスされることにより形成されているため、ある程度の弾性を有している。このため、コネクタ部品16を保持凹部28内に押込むと、コネクタ部品16が保持凹部28の内側側面28cによって幹線部分13側に押付けられ、コネクタ部品16を保持凹部28内になるべくしっかりと容易に固定できる。また、コネクタ部品16を保持凹部28内から引出すことで、コネクタ部品16を容易に取外すことができる。
【0063】
また、保持凹部28は、その開口28aから奥側に向けて徐々に狭まる形状に形成されているため、たとえ、コネクタ保持部26の大きさが多少変更された場合でも、容易に対応できる。
【0064】
また、コネクタ保持部26は、不織部材50をホットプレスすることによって、ワイヤーハーネス取付部22と共に一体形成されているため、コネクタ保持部26及びコネクタ部品16が幹線部分13から位置ずれし難い。
【0065】
また、保持凹部28は、コネクタ部品16の先端部より大きい開口28aからその奥側に向けて、コネクタ部品16を押え込み可能な大きさよりも小さくなるまで徐々に狭まる形状に形成されているため、保持凹部28に対するコネクタ部品16の挿入作業を容易に行え、また、コネクタ部品16を保持凹部28の奥まで押込むことで、コネクタ部品16の先端部を押え込んで当該コネクタ部品16を容易に保持できる。
【0066】
また、保持凹部28の深さ寸法L1は、コネクタ部品16を保持凹部28内に挿入してその先端部を保持凹部28の内周面によって押え込んだ状態で、コネクタ部品16の全体を覆えるように設定されているため、コネクタ部品16が外部部品と接触し難いようにより確実に保護できる。これにより、コネクタ保持部26のより確実な保護及びコネクタ部品16と周辺部品との接触による打音抑制等が可能となる。
【0067】
また、保持凹部28は、その開口28a側から奥側に向けて徐々に内部空間を狭まる斜面形状の内側側面28cを有しているため、直方体形状のコネクタ部品16を保持凹部28内に押込むと、その内側側面28cがコネクタ部品16の先端部の直線状縁部が線で接触して当該コネクタ部品16を押え込むため、コネクタ部品16を安定した状態で押え込んで保持できる。
【0068】
また、保持凹部28は、幹線部分13の長手方向に沿って一方側に開口しているため、分岐線部分14を幹線部分13に沿わせた状態で、コネクタ部品16を保持凹部28に挿入して保持できる。このため、分岐線部分14の長さが短くても、コネクタ部品16を保持凹部28に容易に挿入できる。また、コネクタ部品16を保持凹部28に挿入した状態で、分岐線部分14を幹線部分13に沿わせて配設できるため、ワイヤーハーネス10からの分岐線部分14のはみ出し量を少なくでき、分岐線部分14と車両の周辺部品との干渉を抑制できる。
【0069】
もっとも、保持凹部28の開口が上記方向であることは必須ではなく、保持凹部の開口が、幹線部分13の周方向に沿って一方側に向くように、又は、幹線部分13の外方向に向くように形成されていてもよい。
【0070】
また、幹線部分13が保持凹部28内に露出しているため、保持凹部28は幹線部分13の直ぐ傍に設けられる。このため、分岐線部分14の長さをより短くできる。
【0071】
また、ワイヤーハーネス10は、上記のように中芯金型55を使うことで容易に製造できる。
【0072】
特に、中芯金型55を用い、当該中芯金型55及びそれを覆う不織部材50の部分を、上記ホットプレス用成形型60の凹部64内に押込むことで、幹線部分13に対するコネクタ保持部26の形成位置を、揃えやすいという利点がある。
【0073】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。