特許第5796524号(P5796524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

<>
  • 特許5796524-復号装置、復号方法 図000011
  • 特許5796524-復号装置、復号方法 図000012
  • 特許5796524-復号装置、復号方法 図000013
  • 特許5796524-復号装置、復号方法 図000014
  • 特許5796524-復号装置、復号方法 図000015
  • 特許5796524-復号装置、復号方法 図000016
  • 特許5796524-復号装置、復号方法 図000017
  • 特許5796524-復号装置、復号方法 図000018
  • 特許5796524-復号装置、復号方法 図000019
  • 特許5796524-復号装置、復号方法 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796524
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】復号装置、復号方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/29 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   H03M13/29
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-73576(P2012-73576)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-207500(P2013-207500A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 亨
(72)【発明者】
【氏名】速水 淳
【審査官】 岡 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−229838(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/011059(WO,A1)
【文献】 特開平07−202722(JP,A)
【文献】 和田 知久,2次元積符号用繰り返し型デコーダ設計仕様書,Design Wave MAGAZINE,日本,CQ出版株式会社,2005年11月,pp.131-140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形符号およびパリティ符号による積符号化が情報データに対してなされた受信値を入力する入力部と、
前記入力部において入力した受信値のうち、前記線形符号に対する受信値を外部値によって更新する第1更新部と、
前記第1更新部において更新した受信値に対して、信頼度を評価してテストパターンを生成し、生成した前記テストパターンを代数復号し、代数復号の結果得られた符号語を候補として前記受信値とのメトリックを計算し、メトリックが最小である符号語を決定ベクトルとして更新し、更新した前記決定ベクトルの各要素に対して、前記決定ベクトル以外の代数復号の結果得られた符号語の中に、前記決定ベクトルの要素と符号が反転している要素を持つ符号語が存在するか否かを検索し、検索条件に合致する符号語が存在した場合、検索条件に合致した符号語のメトリック値を用いた第1の計算を行った結果を事後値とし、検索条件に合致する符号語が存在しない場合、定数を用いた第2の計算を行った結果を前記事後値とし、前記事後値から前記第1更新部で更新された受信値を減算して訂正ベクトルを導出する第1導出部と、
前記第1導出部において導出した訂正ベクトルによって、前記入力部において入力した受信値のうち、パリティ符号に対する受信値を更新する第2更新部と、
前記第2更新部において更新した受信値の各要素に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を前記外部値として導出する第2導出部と、
前記第1更新部と前記第1導出部との組合せと、前記第2更新部と前記第2導出部との組合せを所定回数にわたって交互に繰り返し実行させる制御部と、
を備え、
前記制御部による所定回数の繰り返し実行が終わると、前記第2更新部で更新した受信値と前記第2導出部で導出した外部値をもとに、前記事後値を更新させて、前記事後値を硬判定して復号結果とし、
前記第1更新部は、線形符号に対する受信値を更新する際に、前記外部値に第1の係数を乗算しており、
前記第2更新部は、パリティ符号に対する受信値を更新する際に、前記訂正ベクトルに第2の係数を乗算しており、
前記第1更新部において使用される第1の係数と、前記第2更新部において使用される第2の係数との比は、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとに設定されることを特徴とする復号装置。
【請求項2】
線形符号およびパリティ符号による積符号化が情報データに対してなされた受信値を入力する入力部と、
前記入力部において入力した受信値のうち、前記線形符号に対する受信値を外部値によって更新する第1更新部と、
前記第1更新部において更新した受信値をもとに所定の計算を行った結果を事後値とし、前記事後値をもとに訂正ベクトルを導出する第1導出部と、
前記第1導出部において導出した訂正ベクトルによって、前記入力部において入力した受信値のうち、パリティ符号に対する受信値を更新する第2更新部と、
前記第2更新部において更新した受信値の各要素に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を前記外部値として導出する第2導出部と、
前記第1更新部と前記第1導出部との組合せと、前記第2更新部と前記第2導出部との組合せを所定回数にわたって交互に繰り返し実行させる制御部と、
を備え、
前記制御部による所定回数の繰り返し実行が終わると、前記第2更新部で更新した受信値と前記第2導出部で導出した外部値をもとに、前記事後値を更新させて、前記事後値を硬判定して復号結果とし、
前記第1更新部は、線形符号に対する受信値を更新する際に、前記外部値に第1の係数を乗算しており、
前記第2更新部は、パリティ符号に対する受信値を更新する際に、前記訂正ベクトルに第2の係数を乗算しており、
前記第1更新部において使用される第1の係数と、前記第2更新部において使用される第2の係数との比は、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとに設定されることを特徴とする復号装置。
【請求項3】
線形符号およびパリティ符号による積符号化が情報データに対してなされた受信値を入力するステップと、
外部値によって、入力した受信値のうち、前記線形符号に対する受信値を更新するステップと、
更新した前記線形符号に対する受信値をもとに、訂正ベクトルを更新するステップと、
更新した前記訂正ベクトルによって、前記入力した受信値のうち、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップと、
更新した前記パリティ符号に対する受信値をもとに、外部値を更新するステップと、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップと前記訂正ベクトルを更新するステップとの組合せと、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップと前記外部値を更新するステップとの組合せを所定回数にわたって交互に繰り返し実行させるステップとを備え、
前記訂正ベクトルを更新するステップは、
更新した線形符号に対する受信値に対して、信頼度を評価してテストパターンを生成するステップと、
生成した前記テストパターンを代数復号するステップと、
前記テストパターンを代数復号した結果から得られた符号語を候補として受信値とのメトリックを計算するととともに、メトリックの最小値を探索し、メトリックが最小である符号語を決定ベクトルとして更新するステップと、
更新した前記決定ベクトルの各要素に対して、前記決定ベクトル以外に残った候補の符号語の中に、前記決定ベクトルの要素と符号が反転している要素を持つ符号語が存在するか否かを検索するステップと、
検索条件に合致する符号語が存在した場合、検索条件に合致した符号語のメトリック値を用いた第1の計算を行った結果を事後値とし、検索条件に合致する符号語が存在しない場合、定数を用いた第2の計算を行った結果を前記事後値とし、前記事後値から前記更新された受信値を減算して前記訂正ベクトルを導出するステップとを含み、
前記外部値を更新するステップでは、更新した前記パリティ符号に対する受信値の各要素に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を前記外部値として導出し
前記所定回数の繰り返し実行が終わると、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップで更新した受信値と前記外部値を更新するステップで更新した外部値をもとに、前記事後値を更新させて、前記事後値を硬判定して復号結果とし、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップは、線形符号に対する受信値を更新する際に、前記外部値に第1の係数を乗算しており、
前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップは、パリティ符号に対する受信値を更新する際に、前記訂正ベクトルに第2の係数を乗算しており、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップにおいて使用される第1の係数と、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップにおいて使用される第2の係数との比は、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとに設定されることを特徴とする復号方法。
【請求項4】
線形符号およびパリティ符号による積符号化が情報データに対してなされた受信値を入力するステップと、
外部値によって、入力した受信値のうち、前記線形符号に対する受信値を更新するステップと、
更新した前記線形符号に対する受信値をもとに所定の計算を行った結果を事後値とするとともに、前記事後値をもとに訂正ベクトルを更新するステップと、
更新した前記訂正ベクトルによって、入力した受信値のうち、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップと、
更新したパリティ符号に対する受信値の各要素に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を前記外部値として更新するステップと、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップと前記訂正ベクトルを更新するステップとの組合せと、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップと前記外部値を更新するステップとの組合せを所定回数にわたって交互に繰り返し実行させるステップと、
を備え、
前記所定回数の繰り返し実行が終わると、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップで更新した受信値と前記外部値を更新するステップで更新した外部値をもとに、前記事後値を更新させて、前記事後値を硬判定して復号結果とし、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップは、線形符号に対する受信値を更新する際に、前記外部値に第1の係数を乗算しており、
前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップは、パリティ符号に対する受信値を更新する際に、前記訂正ベクトルに第2の係数を乗算しており、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップにおいて使用される第1の係数と、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップにおいて使用される第2の係数との比は、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとに設定されることを特徴とする復号方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に積符号化された情報データを復号する復号装置、復号方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル通信システムにおける信頼度を向上するために、さまざまな符号化方式および復号方式が提案されている。一般的に、符号の訂正能力が高くなるほど、復号処理が複雑になるので、装置化が困難になる。一方、連接符号化や積符号化を使用すれば、比較的簡単な装置構成であっても、訂正能力が向上する。積符号化を使用する場合、符号化の対象となる情報データがK1×K2の行列に配置されている場合に、列方向に情報データ長K1、符号長N1、最小ハミング距離d1となるような符号化がなされる。また、行方向に情報データ長K2、符号長N2、最小ハミング距離d2となるような符号化がなされる。その結果、積符号としては、情報データ長K1×K2、符号長N1×N2、最小ハミング距離d1×d2になるので、行および列に採用した比較的短い最小ハミング距離の符号から、その積に相当する最小ハミング距離がえられる。このような積符号に対する最尤復号の複雑さを回避することも検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−202722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積符号に対する最尤復号の複雑さを回避するための復号では、行方向の復号がなされた後に列方向の復号がなされるとともに、これらの処理が繰り返される。具体的に説明すると、行方向において受信値が訂正ベクトルによって更新されてから、更新した受信値をもとに軟出力ベクトルが計算され、つづいて訂正ベクトルが更新される。更新された訂正ベクトルによって、列方向における受信値が更新されてから、更新した受信値をもとに軟出力ベクトルが計算され、つづいて訂正ベクトルが更新される。更新された訂正ベクトルは、行方向での受信値の更新に使用される。このような処理は、行方向と列方向に同一の符号が使用されていることを前提とする。しかしながら、行方向と列方向に別の符号を使用することが望まれることもある。例えば、一方に線形符号を使用し、他方にパリティ符号を使用する場合である。
【0005】
ここで、更新した受信値をもとに軟出力ベクトルを計算する際、受信値に対する評価とテストパターンの作成がなされる。しかしながら、受信値に対する評価と作成するテストパターンの選択によっては、符号語の候補が検索されずに繰り返し復号の効果が発揮されないことがあったり、誤訂正を発生してしまったりする。このような状況の発生を低減するために、テストパターン数を増加することが可能であるが、その結果、本来の目的である演算量削減の効果が薄れてしまう。特に、前述のごとく、一方に線形符号を使用し、他方にパリティ符号を使用する場合に、パリティ側の復号に前述の処理を適用すれば、これらの課題が顕著に現れる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、線形符号とパリティ符号とによる積符号がなされた情報データを復号する際に、演算量の増加と復号特性の悪化とを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の復号装置は、線形符号およびパリティ符号による積符号化が情報データに対してなされた受信値を入力する入力部と、
前記入力部において入力した受信値のうち、前記線形符号に対する受信値を外部値によって更新する第1更新部と、
前記第1更新部において更新した受信値に対して、信頼度を評価してテストパターンを生成し、生成した前記テストパターンを代数復号し、代数復号の結果得られた符号語を候補として前記受信値とのメトリックを計算し、メトリックが最小である符号語を決定ベクトルとして更新し、更新した前記決定ベクトルの各要素に対して、前記決定ベクトル以外の代数復号の結果得られた符号語の中に、前記決定ベクトルの要素と符号が反転している要素を持つ符号語が存在するか否かを検索し、検索条件に合致する符号語が存在した場合、検索条件に合致した符号語のメトリック値を用いた第1の計算を行った結果を事後値とし、検索条件に合致する符号語が存在しない場合、定数を用いた第2の計算を行った結果を前記事後値とし、前記事後値から前記第1更新部で更新された受信値を減算して訂正ベクトルを導出する第1導出部と、
前記第1導出部において導出した訂正ベクトルによって、前記入力部において入力した受信値のうち、パリティ符号に対する受信値を更新する第2更新部と、
前記第2更新部において更新した受信値の各要素に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を前記外部値として導出する第2導出部と、
前記第1更新部と前記第1導出部との組合せと、前記第2更新部と前記第2導出部との組合せを所定回数にわたって交互に繰り返し実行させる制御部と、
を備え、
前記制御部による所定回数の繰り返し実行が終わると、前記第2更新部で更新した受信値と前記第2導出部で導出した外部値をもとに、前記事後値を更新させて、前記事後値を硬判定して復号結果とし、
前記第1更新部は、線形符号に対する受信値を更新する際に、前記外部値に第1の係数を乗算しており、
前記第2更新部は、パリティ符号に対する受信値を更新する際に、前記訂正ベクトルに第2の係数を乗算しており、
前記第1更新部において使用される第1の係数と、前記第2更新部において使用される第2の係数との比は、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとに設定される
【0008】
この態様によると、ひとつの方向に対して、信頼度を評価してテストパターンを生成する処理を実行し、別の方向に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を導出するので、演算量の増加と復号特性の悪化とを抑制できる。この場合、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとにふたつの係数の関係が設定されているので、符号化率に適した係数を使用できる。
【0009】
本発明の別の態様もまた、復号装置である。この装置は、線形符号およびパリティ符号による積符号化が情報データに対してなされた受信値を入力する入力部と、
前記入力部において入力した受信値のうち、前記線形符号に対する受信値を外部値によって更新する第1更新部と、
前記第1更新部において更新した受信値をもとに所定の計算を行った結果を事後値とし、前記事後値をもとに訂正ベクトルを導出する第1導出部と、
前記第1導出部において導出した訂正ベクトルによって、前記入力部において入力した受信値のうち、パリティ符号に対する受信値を更新する第2更新部と、
前記第2更新部において更新した受信値の各要素に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を前記外部値として導出する第2導出部と、
前記第1更新部と前記第1導出部との組合せと、前記第2更新部と前記第2導出部との組合せを所定回数にわたって交互に繰り返し実行させる制御部と、
を備え、
前記制御部による所定回数の繰り返し実行が終わると、前記第2更新部で更新した受信値と前記第2導出部で導出した外部値をもとに、前記事後値を更新させて、前記事後値を硬判定して復号結果とし、
前記第1更新部は、線形符号に対する受信値を更新する際に、前記外部値に第1の係数を乗算しており、
前記第2更新部は、パリティ符号に対する受信値を更新する際に、前記訂正ベクトルに第2の係数を乗算しており、
前記第1更新部において使用される第1の係数と、前記第2更新部において使用される第2の係数との比は、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとに設定される
【0010】
この態様によると、ひとつの方向に対して、更新した受信値をもとに事後値を導出するとともに、事後値をもとに訂正ベクトルを導出し、別の方向に対して、更新した受信値をもとに外部値を直接導出するので、演算量の増加と復号特性の悪化とを抑制できる。この場合、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとにふたつの係数の関係が設定されているので、符号化率に適した係数を使用できる。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、復号方法である。この方法は、線形符号およびパリティ符号による積符号化が情報データに対してなされた受信値を入力するステップと、
外部値によって、入力した受信値のうち、前記線形符号に対する受信値を更新するステップと、
更新した前記線形符号に対する受信値をもとに、訂正ベクトルを更新するステップと、
更新した前記訂正ベクトルによって、前記入力した受信値のうち、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップと、
更新した前記パリティ符号に対する受信値をもとに、外部値を更新するステップと、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップと前記訂正ベクトルを更新するステップとの組合せと、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップと前記外部値を更新するステップとの組合せを所定回数にわたって交互に繰り返し実行させるステップとを備え、
前記訂正ベクトルを更新するステップは、
更新した線形符号に対する受信値に対して、信頼度を評価してテストパターンを生成するステップと、
生成した前記テストパターンを代数復号するステップと、
前記テストパターンを代数復号した結果から得られた符号語を候補として受信値とのメトリックを計算するととともに、メトリックの最小値を探索し、メトリックが最小である符号語を決定ベクトルとして更新するステップと、
更新した前記決定ベクトルの各要素に対して、前記決定ベクトル以外に残った候補の符号語の中に、前記決定ベクトルの要素と符号が反転している要素を持つ符号語が存在するか否かを検索するステップと、
検索条件に合致する符号語が存在した場合、検索条件に合致した符号語のメトリック値を用いた第1の計算を行った結果を事後値とし、検索条件に合致する符号語が存在しない場合、定数を用いた第2の計算を行った結果を前記事後値とし、前記事後値から前記更新された受信値を減算して前記訂正ベクトルを導出するステップとを含み、
前記外部値を更新するステップでは、更新した前記パリティ符号に対する受信値の各要素に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を前記外部値として導出し
前記所定回数の繰り返し実行が終わると、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップで更新した受信値と前記外部値を更新するステップで更新した外部値をもとに、前記事後値を更新させて、前記事後値を硬判定して復号結果とし、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップは、線形符号に対する受信値を更新する際に、前記外部値に第1の係数を乗算しており、
前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップは、パリティ符号に対する受信値を更新する際に、前記訂正ベクトルに第2の係数を乗算しており、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップにおいて使用される第1の係数と、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップにおいて使用される第2の係数との比は、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとに設定される
【0013】
本発明のさらに別の態様もまた、復号方法である。この方法は、線形符号およびパリティ符号による積符号化が情報データに対してなされた受信値を入力するステップと、
外部値によって、入力した受信値のうち、前記線形符号に対する受信値を更新するステップと、
更新した前記線形符号に対する受信値をもとに所定の計算を行った結果を事後値とするとともに、前記事後値をもとに訂正ベクトルを更新するステップと、
更新した前記訂正ベクトルによって、入力した受信値のうち、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップと、
更新したパリティ符号に対する受信値の各要素に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を前記外部値として更新するステップと、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップと前記訂正ベクトルを更新するステップとの組合せと、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップと前記外部値を更新するステップとの組合せを所定回数にわたって交互に繰り返し実行させるステップと、
を備え、
前記所定回数の繰り返し実行が終わると、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップで更新した受信値と前記外部値を更新するステップで更新した外部値をもとに、前記事後値を更新させて、前記事後値を硬判定して復号結果とし、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップは、線形符号に対する受信値を更新する際に、前記外部値に第1の係数を乗算しており、
前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップは、パリティ符号に対する受信値を更新する際に、前記訂正ベクトルに第2の係数を乗算しており、
前記線形符号に対する受信値を更新するステップにおいて使用される第1の係数と、前記パリティ符号に対する受信値を更新するステップにおいて使用される第2の係数との比は、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとに設定される
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば線形符号とパリティ符号とによる積符号がなされた情報データを復号する際に、演算量の増加と復号特性の悪化とを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
図2図1の符号化部においてなされる符号化の概要を示す図である。
図3図1の復号部の構成を示す図である。
図4図1の復号部による復号手順を示すフローチャートである。
図5図1の復号部による軟出力ベクトルの計算手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施例の比較対象となる復号手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施例と比較対象との受信特性を示す図である。
図8】本発明の実施例に係る係数と受信特性との関係を示す図である。
図9】本発明の実施例に係る係数と受信特性との別の関係を示す図である。
図10】本発明の実施例に係る係数と受信特性とのさらに別の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、行方向に線形符号化がなされ、かつ列方向にパリティ符号化がなされた情報データを復号するための復号装置に関する。ここで、パリティ符号化がなされる情報データ長は可変であるとする。本実施例に係る復号装置は、行方向の復号処理と列方向の復号処理とを交互に繰り返し実行する。行方向の復号処理において、受信値は、訂正ベクトルではなく外部値によって更新される。更新された受信値によって訂正ベクトルが更新される。列方向の復号処理において、受信値は、更新された訂正ベクトルによって更新される。更新された受信値によって外部値が更新される。ここで、外部値を更新する際に、つまりパリティ符号化がなされた情報データを処理する際に、絶対値最小の値の検索と符号の総積の演算が実行されており、受信値に対する評価とテストパターンの作成は実行されていない。
【0018】
さらに、行方向の復号処理において、受信値を更新する際に、外部値に第1の係数α1が乗算されており、列方向の復号処理において、受信値を更新する際に、訂正ベクトルに第2の係数α2が乗算されている。これは、誤訂正の発生を低減するためである。前述のごとく、パリティ符号化での情報データは可変長である。その際、ふたつの係数を固定値とした場合、適切でない係数によって誤訂正の増加をまねく危険が生じる。これに対応するため、第1の係数α1と第2の係数α2との比は、線形符号化の符号化率とパリティ符号化の符号化率をもとに設定される。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、送信装置10、受信装置12を含む。また、送信装置10は、符号化部20、変調部22、送信部24を含み、受信装置12は、受信部30、復調部32、復号部34を含む。
【0020】
符号化部20は、送信すべき情報データを取得する。符号化部20は、情報データに対して積符号化を実行する。図2は、符号化部20においてなされる符号化の概要を示す。図のごとく、符号化部20は、情報データをK2行、K1列の行列に並べる。符号化部20は、線形符号化を行単位に実行することによって、第1パリティを生成するとともに、第1パリティを情報データに付加する。また、符号化部20は、パリティ符号化を列単位に実行することによって、第2パリティおよび第3パリティを生成するとともに、第1パリティが付加された情報データに、第2パリティおよび第3パリティを付加する。符号化の結果(以下、「符号化データ」という)は、図2のごとく、N2行、N1列の行列に並べられる。符号化データは、例えば、行ごとに左端から右端まで順に読み出される。その後、符号化データは、図示しないインターリーバなどによって並び替えられてもよい。以下、並び替えがなされた符号化データもまた符号化データと呼ばれる。符号化部20は、符号化データを変調部22に出力する。
【0021】
変調部22は、符号化部20から符号化データを入力する。変調部22は、符号化データを変調する。変調方式として、PSK(Phase Shift Keying)、FSK(Frequency Shift Keying)等が使用される。変調部22は、変調した符号化データを変調信号として送信部24に出力する。送信部24は、変調部22から変調信号を入力する。送信部24は、変調信号に対して、無線周波数への周波数変換および増幅を実行し、その結果(以下、「送信信号」という)をアンテナから送信する。
【0022】
受信部30は、アンテナにて、送信装置10からの送信信号を受信する。受信部30は、受信した信号に対して増幅および周波数変換を実行し、その結果(以下、「受信信号」という)を復調部32に出力する。復調部32は、受信部30から受信信号を入力する。復調部32は、受信信号を復調する。復調には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。復調部32は、復調結果(以下、「復調データ」という)を復号部34に出力する。復号部34は、復調部32から復調データを入力する。当該復調データは、積符号化、つまり線形符号化とパリティ符号化とがなされた情報データに相当する。復号部34は、復調データに対して、復号処理を繰り返し実行する。復号処理の詳細は後述する。復号部34は、復号結果、つまり情報データを出力する。
【0023】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0024】
図3は、復号部34の構成を示す。復号部34は、入力部40、繰り返し処理部42、制御部44を含む。また、繰り返し処理部42は、第1更新部46、第1導出部48、第2更新部50、第2導出部52を含む。
【0025】
入力部40は、図示しない復調部32からの復調データを入力する。復調データは、線形符号およびパリティ符号による積符号化が情報データに対してなされた受信値に相当する。具体的に説明すると、積符号化されたN2行N1列の受信値の1ブロック分が入力される。なお、N2行N1列の行列が1ブロックに相当する。ここでは、受信値の行列、硬判定の行列、訂正行列、軟出力行列を{R}、{D}、{W}、{rr}と表記する。また、受信値の行列、硬判定の行列、訂正行列、軟出力行列の各行を[Ri]、[Di]、[Wi][rri]、各列を[Rj]、[Dj]、[Wj][rrj]と表記し、これらをベクトルと呼ぶこととする。さらに、行列内のi行j列成分は、Rij、Dij、Wij、rrijを表記する。また、ベクトルは、特に符号語であるか否かに注目した場合に、「符号語」と表記することもある。入力部40は、受信値の行列を繰り返し処理部42に出力する。繰り返し処理部42は、繰り返し復号の前に、繰り返し処理回数itおよび訂正行列{W}を初期化する。
【0026】
第1更新部46は、入力部40において入力した受信値のうち、線形符号に対する受信値を外部値aによって更新する。これは、受信値の行列の行単位に受信ベクトル[R’i]を更新することに相当しており、第1更新部46は、処理の始めに行カウントiを1に初期化する。更新は、次のようになされる。
R’ik←Rik+α1it・aik
ここで、kは、1からN1の整数であり、α1は、前述の第1の係数である。
【0027】
つまり、第1更新部46は、線形符号に対する受信値を更新する際に、外部値に第1の係数α1を乗算している。なお、繰り返し処理回数のカウント値it=1の場合は、[Wi]=0であるので、受信ベクトルは、受信行列の該当する行のベクトルに一致する。この場合は、カウント値it=1を検出して更新処理を省略してもよい。また、第1更新部46は、更新した受信ベクトル[R’i]を硬判定した結果を仮の決定ベクトル[Di]として次のように更新する。
Dik←sign R’ik
これは、更新した受信ベクトル[R’i]に対する硬判定値を求めて決定ベクトル[Di]を更新することに相当する。
【0028】
第1導出部48は、更新した受信ベクトル[R’i]を硬判定した結果を仮の決定ベクトル[Di]とする。第1導出部48は、メトリックが最小となる符号語によって決定ベクトル[Di]を更新し、そのメトリックを保存する。また、第1導出部48は、決定ベクトル[Di]の各要素に対するコンカレントベクトル[Ci]を検索して軟出力ベクトル[rri]を導出する。この第1導出部48の動作を詳細に説明する。
【0029】
(1)第1導出部48は、第1更新部46において更新した受信ベクトル[R’i]に対して、信頼度を評価し、信頼度が最小のものからp個分の要素位置を決定する。信頼度の評価は、例えば受信ベクトル[R’i]の各ビットに対して、硬判定をした時に受信値が閾値(±1が期待値の場合は0)から離れていたビットほど信頼度が高いと評価し、閾値に近かったビットほど信頼度が低いと評価する。第1導出部48は、選択したp個の要素位置各々について信頼度の低い要素に該当する位置が1で、それ以外は0であるテストベクトルを信頼度の低い要素p個分について生成する。また、第1導出部48は、p個のテストベクトルの任意の2個のテストベクトルの要素ごとの排他的論理和を演算する。第1導出部48は生成したp個分のテストベクトルに新たなテストベクトルを含めたq個のテストベクトル[Ti](s=1,2,・・・,q)を生成する。なお、q=p(p+1)/2である。以下で、概念的に例を挙げて説明する。これは、実施例ではなく、説明を分かりやすくする例である。なお、説明の都合上、ハミング符号とは異なる符号を用い、p、qの値についても、適当な値を用いて説明する。第1導出部48は、例えば、決定ベクトル[D]=[ 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 ]p=3 とし、信頼度評価結果で、1番目と5番目、8番目が低かったと判断したとする。その場合、第1導出部48は、例えば、テストベクトルとして、[ 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ] (1番目が1)[ 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 ] (5番目が1)[ 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 ](8番目が1)を生成する。次に第1導出部48は、例えば、[ 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 ] (1番目が1のテストベクトルと5番目が1のテストベクトルの排他的論理和)[ 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 ] (1番目が1のテストベクトルと5番目が1のテストベクトルとの排他的論理和) [ 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 ] (5番目が1のテストベクトルと8番目が1のテストベクトルの排他的論理和)をさらなるテストベクトルとして作成する。さらに、第1導出部48は、第1更新部46で更新された決定ベクトル[Di]と、生成したテストベクトル[Ti]から、次のようにq個のワード[Ui]を生成する。
【数1】
このワード[Ui]は、前述のテストパターンに相当する。
【0030】
(2)第1導出部48は、決定ベクトル[Di]およびq個のワードについて代数復号を実行する。
(3)第1導出部48は、代数復号結果から得られたq'個の符号語を決定ベクトル候補[Ci](t=1,2,・・・,q’)とする。第1導出部48は、更新された受信ベクトル[R’i]と各決定ベクトル候補[Ci]についてメトリックを計算するとともに、メトリックの最小値を探索することによってメトリックが最小である決定ベクトル候補[C]を決定ベクトル[Di]として更新する。また、第1導出部48は、その際のメトリック値を保存する。ここでは、決定ベクトル[Di]のメトリック値をMとする。
【0031】
(4)第1導出部48は、更新した決定ベクトル[Di]の各要素に対して、決定ベクトル[Di]以外に残ったq’−1個の候補ベクトルの中からコンカレント符号語を検索して要素ごとの軟出力を求める処理を実行する。第1導出部48は、要素番号カウント値kを1に初期化し、決定ベクトル[Di]の要素Dikと異なる要素を持つ符号語を検索する。つまり、第1導出部48は、候補ベクトルの符号語の中に、決定ベクトル[Di]の要素と符号が反転している要素を持つ符号語が存在するか否かを検索する。
【0032】
(5)第1導出部48は、候補ベクトルの符号語の中に、決定ベクトル[Di]の要素と符号が反転している要素を持つ符号語が存在するか否かの検索を実行する。第1導出部48は、検索結果に応じて異なる計算を実行することによって事後値ベクトル(軟出力ベクトル)[rri]を導出する。すなわち、第1導出部48は、候補ベクトルの符号語の中に、検索条件に合致する符号語が存在した場合、検索条件に合致した符号語のメトリック値を用いた第1の計算を行うことにより軟出力ベクトル[rri]を導出し、検索条件に合致する符号語が存在しない場合、定数を用いて第2の計算を行うことにより軟出力ベクトル[rri]を導出する。詳細には、第1導出部48は、候補ベクトルの符号語の中で1つの符号語が検索条件に合致した場合、検索条件に合致した符号語のメトリック値をMとし、複数の符号語が検索条件に合致した場合、先に求めた[R’i]とのメトリック値が最小のもの(コンカレントベクトル[Ci])を選択し、そのメトリック値をMとして、次のようにk番目の軟出力値rrikを更新する。
【数2】
一方、検索条件に合致する符号語が存在しない場合、第1導出部48は、定数βを用いて次のようにk番目の軟出力値rrikを更新する。
【数3】
【0033】
第1導出部48は、導出された軟出力ベクトル[rri]から更新された受信ベクトル[R’i]を減算して、訂正ベクトル[Wi]を導出し、1行分の軟入力軟出力復号が終了する。その後、第1導出部48は、行カウントiがN2であるか否かを判定することにより、行処理の終了確認を行い、行処理が完了していれば列処理へと移行し、完了していなければ、行カウントi←i+1として次の行の復号処理を実行する。列処理への移行は第2更新部50への移行に相当する。以上のように、第1導出部48は、第1更新部46において更新した受信ベクトル[R’i]をもとに事後値ベクトルとしての軟出力ベクトル[rri]を導出する。また、第1導出部48は、事後値ベクトルとしての軟出力ベクトル[rri]をもとに第2更新部50に渡す外部値としての訂正ベクトル[Wi]を導出する。
【0034】
第2更新部50は、第1導出部48において導出した訂正ベクトル[Wj]によって、入力部40において入力した受信値のうち、パリティ符号に対する受信値を更新する。これは、受信値の行列の列単位に受信ベクトル[R’j]を更新することに相当しており、第2更新部50は、処理の始めに列カウントjを1に初期化する。更新は、次のようになされる。
R’kj←Rkj+α2it・Wkj
ここで、kは、1からN2の整数であり、α2は、前述の第2の係数である。
【0035】
つまり、第2更新部50は、パリティ符号に対する受信値を更新する際に、訂正ベクトル[Wj]に第2の係数α2を乗算している。また、第2更新部50は、受信ベクトル[R’j]を硬判定した結果を、仮の決定ベクトル[Dj]として次のように更新する。
Dkj←sign R’kj
これは、更新した受信ベクトル[R’j]に対する硬判定値を求めて決定ベクトル[Dj]を更新することに相当する。
【0036】
第2導出部52は、第2更新部50において更新した受信ベクトル[R’j]の各要素に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を外部値ベクトル[aj]として導出する。外部値ベクトルのk番目の要素akjは、受信ベクトル[R’j]の要素R’gj(g=1,2,・・・,N2、g≠k)の絶対値が最小の値と、同じく受信ベクトル[R’j]の要素R’gjの符号の総積を乗じたものである。
【数4】
このように第2導出部52は、第2更新部50において更新した受信値をもとに、外部値を直接導出する。
【0037】
第2導出部52は、列処理の終了を確認し、列処理が終了していれば、繰り返し復号の終了を確認する。繰り返し処理回数itが目標回数に達していれば、軟出力行列{rr}を次のように計算する。
【数5】
最終的に、第2導出部52は、sign{rr}を出力して繰り返し復号を完了する。繰り返し処理回数itが目標回数に達していない場合には、繰り返し処理回数it←it+1として再び行処理に戻る。行処理に戻ることは、第1更新部46の処理に戻ることに相当する。列処理が完了していない場合は、j←j+1として次の列処理へと移行する。
【0038】
制御部44は、第1更新部46と第1導出部48との組合せと、第2更新部50と第2導出部52との組合せを所定回数にわたって交互に繰り返し実行させる。これは、行方向の処理と列方向の処理とを交互に繰り返し実行させることに相当する。つまり、制御部44は、行方向の復号を行ごとに実行させ、完了した時点で列方向の処理へと移行し、列ごとに復号を繰り返させる。制御部44は、列処理まで完了した時点で、繰り返し処理回数itを確認し、設定した回数の復号処理が完了した時点で軟出力行列{rr}を硬判定した結果を出力させて終了となる。また、制御部44は、設定した回数の復号処理が完了していなければ行処理から繰り返させる。
【0039】
以下では、ふたつの係数α1とα2について説明する。訂正ベクトルや外部値に対して係数を乗算する理由は、繰り返し処理の初期段階において事前値を低めに設定して誤訂正の危険性を低減するためである。積符号としてふたつの線形符号が使用されている場合、ふたつの係数に対して同一の値が設定されている。しかしながら、本実施例のように、線形符号とパリティ符号とが組み合わされており、特に可変長のパリティ符号に対応させた場合には、行および列での符号化率が大きく異なりうる。その際、α1およびα2の設定が固定であると、それらは適切な係数といえない。その結果、誤訂正の増加をまねく危険が生じる。これに対応するため、第1の係数α1と第2の係数α2との比は、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとに設定される。具体的には、α1とα2の関係が、行の符号化率と列の符号化率の2乗比をもとに設定される。
【数6】
【0040】
以下では、本実施例での列方向の軟出力値を検討する。軟出力値L(uk)は、通信路値Lc・Rk、事前値Ler(uk)、外部値Lec(uk)によって次のように示される。
【数7】
ここで、軟出力L(uk)に対するukは、他のukと別に示されるべきであるが、ここでは表記を簡略化するためにukのまま示す。
【0041】
Lc・Rkはukの直接の受信値であり、Lec(uk)は、ukの間接の受信値であり、すなわちパリティ計算にかかわる自分以外の受信値から得られる情報である。Ler(uk)は、行方向の復号の結果から渡された事前値である。符号要素が+1および−1の二値(+1がヌル値)で構成されるものとする。通信路状況が一定であるという条件の下では、Lcは定数値として扱うことができる。また、Ler(uk)は、行復号時に得た訂正ベクトルの要素Wkへ正規化定数α1を乗じた値である。従来、訂正ベクトル[Wk]は、決定ベクトルとコンカレントベクトルの検索を行った結果から得られるメトリック差から軟出力、つまり事後値を求めて、上記式の関係を使って外部値が導出されていた。しかしながら、本実施例のパリティ符号の場合には、以下のように外部値を求めることになる。
【0042】
1列分の符号語を、{u1,u2,・・・,uJ}(J=N2)とすると、パリティ符号を構成しているので、u1+u2+u3+・・・+u(J−1)=uJであり、例えばu1に着目すると、u1=u2+u3+・・・+uJでもある。ここで、「+」は排他的論理和を示す。これより、u2〜uJの排他的論理和の対数確率比から、u1への間接的な情報である外部値Lec(u1)が次のように導出される。
【数8】
これを一般的な形式に直せば、次のように示される。
【数9】
Lec(uk)は次のように近似される。
(Πsign(L(uj)))・min|L(uj)|
(j=1,2,・・・,J、ただしj≠k、Σは排他的論理和)
ここで、L(uj)が軟入力であると考えれば、Lec(uk)は二値±1に対する閾値0に対する尤度に相当し、前述した外部値の計算の手順に等しくなる。
【0043】
以上の構成による通信システムの動作を説明する。図4は、復号部34による復号手順を示すフローチャートである。入力部40は、受信値の行列{R}を入力する(S10)。繰り返し処理部42は、繰り返し処理回数itを1に初期化し、訂正行列{W}を初期化する(S12)。第1更新部46は、iを1に初期化する(S14)。第1更新部46は、受信ベクトル[R’i]をR’ik←Rik+α1it・aikによって更新するとともに、決定ベクトル[Di]をDik←signR’ikによって更新する(S16)。第1導出部48は、メトリック最小となる符号語探索を実行することによって決定ベクトル[Di]を更新するととともに、メトリックMiを保存し、コンカレントベクトル[Ci]を探索し、軟出力ベクトル[rri]を計算する(S18)。第1導出部48は、訂正ベクトル[Wi]をWik=rrik−R’ikによって更新する(S20)。i=N2でなければ(S22のN)、iに1を加算して(S24)、ステップ16に戻る。
【0044】
i=N2であれば(S22のY)、第2更新部50は、jを1に初期化する(S26)。第2更新部50は、受信ベクトル[R’j]をR’kj←Rkj+α2it・Wkjによって更新する(S28)。第2導出部52は、外部値ベクトル[aj]をakj←Π(sign(R’gj))・min|R’gj|によって計算する(S30)。j=N1でなければ(S32のN)、jに1を加算して(S34)、ステップ28に戻る。j=N1であり(S32のY)、it=目標回数でなければ(S36のN)、itに1を加算して(S38)、ステップ14に戻る。it=目標回数であれば(S36のY)、第2導出部52は、軟出力{rr}をrrij←R’ij+aijによって計算する(S40)。第2導出部52は、sign{rr}を出力する(S42)。
【0045】
図5は、復号部34による軟出力ベクトルの計算手順を示すフローチャートである。これは、図4のステップ18の処理に相当する。第1導出部48は、更新された受信値[R’ i]を入力するとともに、決定ベクトル[Di]も入力する(S60)。第1導出部48は、更新された受信値[R’ i]の信頼性を評価することによって、信頼性が最小の符号語からp個の要素位置を選択する(S62)。第1導出部48は、選択したp個の要素からq個のテストベクトルTを生成し、q個のワード[Ui]を[Ui]=[Ti]+[Di]によって生成する(S64)。第1導出部48は、ワード[Ui]および[Di]を代数復号し、得られたq’個の符号語を決定ベクトル候補[Ci]とする(S66)。
【0046】
第1導出部48は、更新された受信値[R’ i]と決定ベクトル候補[Ci]のメトリックMを計算し、決定ベクトル候補[Ci]の中で最小のメトリックを持つ符号語[C]を新たな決定ベクトル[D]とし、メトリックをMとする(S68)。kを1に初期化し(S76)、Dk≠Ckが存在しなければ(S72のN)、第1導出部48は、rrk←β・Dkを計算する(S74)。Dk≠Ckが存在すれば(S72のY)、第1導出部48は、M←minMを計算することによって、rrk←(M−M)/4・Dkを計算する(S76)。k=N1でなければ(S78のN)、kに1を加算して(S80)、ステップ72に戻る。k=N1であれば(S78のY)、第1導出部48は、軟出力ベクトル[rri]を出力するとともに、決定ベクトル[Di]を出力する(S82)。
【0047】
ここで、本実施例の比較対象となる繰り返し復号を説明する。比較対象に係る復号処理では、実施例における行方向の処理を列方向に対しても実行する。なお、比較対象に係る復号処理では、外部値が規定されておらず、行方向および列方向において訂正ベクトルが更新されている。図6は、本発明の実施例の比較対象となる復号手順を示すフローチャートである。ここでは、本実施例との比較を明確にするために、本実施例の入力部40、繰り返し処理部42、第1更新部46、第1導出部48、第2更新部50、第2導出部52に対応した構成が、入力部、繰り返し処理部、第1更新部、第1導出部、第2更新部、第2導出部であるとする。
【0048】
入力部は、受信値の行列{R}を入力する(S100)。繰り返し処理部は、繰り返し処理回数itを1に初期化し、訂正行列{W}を初期化する(S102)。第1更新部は、iを1に初期化する(S104)。第1更新部46は、受信ベクトル[R’i]をR’ik←Rik+α1・Wikによって更新するとともに、[Di]をDik←signR’ikによって更新する(S106)。第1導出部48は、メトリック最小となる符号語探索を実行することによって決定ベクトル[Di]を更新するととともに、メトリックMiを保存し、コンカレントベクトル[Ci]を探索し、軟出力ベクトル[rri]を計算する(S108)。第1導出部48は、訂正ベクトル[Wi]をWik=rrik−R’ikによって更新する(S110)。i=N2でなければ(S112のN)、iに1を加算して(S114)、ステップ106に戻る。
【0049】
i=N2であれば(S112のY)、第2更新部50は、jを1に初期化する(S116)。第2更新部50は、受信ベクトル[R’j]をR’kj←Rkj+α2・Wkjによって更新するとともに、決定ベクトル[Dj]をDkj←signR’kjによって更新する(S118)。第2導出部52は、メトリック最小となる符号語探索を実行することによって[Dj]を更新するととともに、メトリックMjを保存し、コンカレントベクトル[Cj]を探索し、軟出力ベクトル[rrj]を計算する(S120)。第2導出部52は、訂正ベクトル[Wj]をWkj=rrkj−R’kjによって更新する(S122)。j=N1でなければ(S124のN)、jに1を加算して(S126)、ステップ118に戻る。j=N1であり(S124のY)、it=目標回数でなければ(S128のN)、itに1を加算して(S130)、ステップ104に戻る。it=目標回数であれば(S128のY)、第2導出部52は、sign{rr}を出力する(S132)。
【0050】
これまで説明した本実施例の効果をシミュレーション結果をもとに説明する。ここでは、線形符号として、Hamming(17,12,3)符号を使用し(K1=12、N1=17)、パリティ符号として、単純パリティ(K2=3、N2=4)を使用するものとする。前述のごとく、列方向の復号を実行する際に、受信ベクトルの評価は行わず、すべてのビットについて1ビット反転を行って、総当り方式で決定ベクトル[D]を検索した。図7は、本発明の実施例と比較対象との受信特性を示す。本実施例の方が、同一Eb/Noに対するエラーレートが比較対象よりも低くなっている。比較対象は、しきい値の設定によって符号化候補検索の範囲を絞り、その結果演算量を削減している。そのため、比較対象において総当りを実行した場合、演算量が大幅に増加する。しかしながら、本実施例は、比較対象ほど演算量を増加させることなく、同等以上の性能を確保できる。
【0051】
第2の係数α2の違いによる受信特性の違いをシミュレーション結果をもとに説明する。ここでは、次の条件を使用した。
Type1:Hamming(16,11,4)(K1=11,N1=16)、単純パリティ(K2=7、N2=8)
Type2:Hamming(16,11,4)(K1=11,N1=16)、単純パリティ(K2=1、N2=2)
Type3:Hamming(17,12,3)(K1=12,N1=17)、単純パリティ(K2=3、N2=4)
また、α1={0.2, 0.5, 0.9, 1.0}とし、上述の数6でα2を算出するときのα1の係数は、Type1において0.62、Type2において1.9、Type3において0.89とした。これらは、符号化率の2乗比から導出した。
【0052】
図8は、本発明の実施例に係る係数と受信特性との関係を示す。これは、Type1の場合のシミュレーション結果に相当する。図9は、本発明の実施例に係る係数と受信特性との別の関係を示す。これは、Type2の場合のシミュレーション結果に相当する。図10は、本発明の実施例に係る係数と受信特性とのさらに別の関係を示す。これは、Type3の場合のシミュレーション結果に相当する。図8図9を比較すると、線形符号は共通でも係数の最適値は異なっている。そのため、係数は、単純に符号化方式によらない。また、図8図10を比較すると、線形符号が異なっていても、符号化率の2乗比で求めた係数を演算することによって、差異は小さくなっている。さらに、いずれのTypeにおいても、符号化率の2乗比で導出した係数を演算することによって、受信特性が得られている。
【0053】
本発明の実施例によれば、ひとつの方向に対して、信頼度を評価してテストパターンを生成する処理を実行し、別の方向に対して、自身を除いた符号の総積と自身を除いた絶対値の最小値との積を導出するので、可変長のパリティ符号が別の方向に使用されている場合に、信頼度を評価してテストパターンを生成することを回避できる。また、可変長のパリティ符号が別の方向に使用されている場合に、信頼度を評価してテストパターンを生成することが回避されるので、演算量の増加と復号特性の悪化とを抑制できる。
【0054】
また、ふたつの方向で処理を変えるので、線形符号化とパリティ符号化が組み合わされている積符号化に対しても復号を実行できる。また、ひとつの方向に対して、更新した受信値をもとに事後値を導出するとともに、事後値をもとに訂正ベクトルを導出し、別の方向に対して、更新した受信値をもとに外部値を直接導出するので、演算量の増加と復号特性の悪化とを抑制できる。また、線形符号の符号化率とパリティ符号の符号化率とをもとにふたつの係数の関係が設定されているので、符号化率に適した係数を使用できる。また、符号化率に適した係数が使用されるので、符号長を自由に設定できる。
【0055】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0056】
本発明の実施例において、行方向に線形符号化が使用され、列方向にパリティ符号化が使用されている。しかしながらこれに限らず例えば、列方向に線形符号化が使用され、行方向にパリティ符号化が使用されていてもよい。その際、第1更新部46と第1導出部48の組合せと、第2更新部50と第2導出部52との組合せとの順序が逆になる。本変形例によれば、積符号の構成の自由度を向上できる。
【0057】
本発明の実施例において、通信システムは無線通信システムを前提としているので、送信装置10および受信装置12は、無線通信装置に含まれる。しかしながらこれに限らず例えば、通信システムは有線通信システムを前提としてもよい。その際、送信装置10および受信装置12は、有線通信装置に含まれる。本変形例によれば、本発明をさまざまな装置に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
10 送信装置、 12 受信装置、 20 符号化部、 22 変調部、 24 送信部、 30 受信部、 32 復調部、 34 復号部、 40 入力部、 42 繰り返し処理部、 44 制御部、 46 第1更新部、 48 第1導出部、 50 第2更新部、 52 第2導出部、 100 通信システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10