(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに絶縁して複数の検出電極が配置され、各検出電極の配置位置と、各検出電極と入力操作体との静電容量とから、入力操作体の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルであって、
開口部を有する絶縁支持体と、
前記開口部の開口を覆うように絶縁支持体に支持され、少なくとも前記開口部上の入力操作領域が透視可能な透明体で形成された透明入力操作板と、
前記透明入力操作板に接し、前記開口部の周囲で透明入力操作板若しくは絶縁支持体に互いに絶縁して配置される複数の検出電極と、
入力操作体と複数の各検出電極間の相対電位が変動する交流検出信号を発信する発信手段と、
前記各検出電極と入力操作体間の静電容量を介して、前記各検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルを検出する信号検出手段と、
前記信号検出手段が前記各検出電極毎に検出した交流検出信号の受信レベルをもとに入力操作体と前記各検出電極の配置位置との相対距離を比較し、入力操作体の入力操作領域上の入力操作位置を検出する入力位置検出手段とを備え、
前記検出電極の前記入力操作領域に直交する上方は、前記入力操作体の上方の部分と前記検出電極とが静電結合する影響を避けるためのシールド層で覆われることを特徴とする静電容量式タッチパネル。
いずれかの検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルが、直前の受信レベルに比べて所定の閾値以上の比率で上昇した時に、入力操作体が透明入力操作板に触れるタッチ入力と判定するタッチ入力検出手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の静電容量式タッチパネル。
前記入力位置検出手段は、前記各配置方向検出電極の受信レベルを比較し、最大の受信レベルが検出された前記配置方向検出電極の配置位置から、配置方向の入力操作位置を検出することを特徴とする請求項9に記載の静電容量式タッチパネル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、従来の抵抗方式タッチパネルや静電容量式タッチパネルでは、背面側に設置されるディスプレーを見ながら入力操作体を接近させる入力操作領域に、透明材料で形成する抵抗膜や検出電極を配置するので、製造コストが上昇するとともに、透明導電体としても完全な透明体ではないので、背面側のディスプレーの視認性が劣るという問題があった。
【0009】
光学式タッチパネルによれば、このような問題は生じないが、入力操作領域の周囲に多数の発光素子と受光素子を設けるので、単に抵抗膜や検出電極を形成する構造に比べてはるかに高額であり、また、構造も複雑で大型化するので、携帯端末等の指示入力装置として用いることはできなかった。
【0010】
更に、光学式タッチパネルでは、発光素子と受光素子の配置ピッチにより、入力操作位置を検出する検出精度が定まるので、高精度に入力操作位置を検出するためには、多数の発光素子と受光素子をより挟ピッチで配置する必要があり、製造コストが上昇するとともに、検出精度を上げることに限界があった。
【0011】
また、ポインティングデバイスとして用いられるタッチパネルでは、ディスプレーに表示されたカーソル等を移動制御するための入力操作位置を検出して出力するが、いずれの検出方法のタッチパネルであっても、この入力操作位置の出力と併せて、マウスのスイッチ入力に相当する決定入力を出力することが望まれている。
【0012】
そこで、従来のタッチパネルでは、入力操作面への押し下げで応動するスイッチを別に設けて、スイッチへの押し下げ操作で決定入力を出力したり、入力操作面を入力操作体で軽く叩くタッピング操作を決定入力の入力操作と取り決め、決定入力を出力している。しかしながら、前者の方法は、スイッチを入力操作領域の周囲に別に設ける必要があり、また、後者の方法は、操作者がタッチパネル毎に取り決められた操作方法で入力操作を行わなければならず、決定入力を出力しながら入力操作位置を出力するようなドラッグ操作を行うためには、更に複雑な操作手順で入力操作を行う必要があった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、入力操作領域に透明材料で形成する抵抗体や検出電極を配置することなく、安価で視認性に優れた静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【0014】
また、全体を薄型化が可能な簡単な構成で、入力操作領域を透明入力操作板の一部に形成できる静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【0015】
また、抵抗体や検出電極が形成されていない透明入力操作板の入力操作領域に触れるだけのタッチ操作で決定入力を出力できる静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、請求項1の静電容量式タッチパネルは、互いに絶縁して複数の検出電極が配置され、各検出電極の配置位置と、各検出電極と入力操作体との静電容量とから、入力操作体の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルであって、
開口部を有する絶縁支持体と、前記開口部の開口を覆うように絶縁支持体に支持され、少なくとも前記開口部上の入力操作領域が透視可能な透明体で形成された透明入力操作板と、前記透明入力操作板に接し、前記開口部の周囲で透明入力操作板若しくは絶縁支持体に互いに絶縁して配置される複数の検出電極と、入力操作体と複数の各検出電極間の相対電位が変動する交流検出信号を発信する発信手段と、前記各検出電極と入力操作体間の静電容量を介して、前記各検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルを検出する信号検出手段と、前記信号検出手段が前記各検出電極毎に検出した交流検出信号の受信レベルをもとに入力操作体と前記各検出電極の配置位置との相対距離を比較し、入力操作体の入力操作領域上の入力操作位置を検出する入力位置検出手段とを備え
、前記検出電極の前記入力操作領域に直交する上方は、前記入力操作体の上方の部分と前記検出電極とが静電結合する影響を避けるためのシールド層で覆われることを特徴とする。
【0017】
開口部の周囲で透明入力操作板に接する検出電極と入力操作体間の静電容量Cmは、検出電極と入力操作体間の距離をd、その間の透明入力操作板若しくは透明入力操作板と空気の誘電率をε、検出電極と入力操作体との対向面積をsとして、Cm=ε・s/dで表され、交流検出信号の受信レベルは、検出電極と入力操作体間の距離dに反比例する。
【0018】
検出電極と入力操作体間の誘電率εや検出電極と入力操作体との対向面積sは、既知であり、信号検出手段が各検出電極毎に検出する交流検出信号の受信レベルViは、各検出電極と入力操作体間の距離dに反比例するので、入力位置検出手段は、各検出電極毎に検出した交流検出信号の受信レベルViから各検出電極と入力操作体間の相対距離を比較し、入力操作体の入力操作領域上の入力操作位置を検出できる。
【0019】
複数の検出電極は、絶縁支持体の開口部の周囲に配置されるので、入力操作領域を遮らず、不透明の導電材料で形成しても、入力操作領域を通して背面のディスプレーを視認できる。
また、入力操作位置を入力する入力操作体の上方の部分と検出電極との間にシールド層が介在するので、入力操作位置にある入力操作体と検出電極間の静電容量に、入力操作体の上方の部分と検出電極とが静電結合する影響がなく、入力操作体の上方の部分を入力操作位置と誤検出しない。
【0020】
請求項2の静電容量式タッチパネルは、いずれかの検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルが、直前の受信レベルに比べて所定の閾値以上の比率で上昇した時に、入力操作体が透明入力操作板に触れるタッチ入力と判定するタッチ入力検出手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
検出電極と入力操作体間には、入力操作体が透明入力操作板に触れる前の状態で、透明入力操作板と空気が介在し、入力操作体が透明入力操作板に触れると、透明入力操作板のみが介在する。透明入力操作板の比誘電率は、ほぼ1である空気の比誘電率に比べて、少なくとも数倍以上高いので、入力操作体が透明入力操作板に触れるタッチ入力があると、検出電極と入力操作体間の静電容量Cmは急激に上昇し、各検出電極に表れる受信レベルは、その直前に信号検出手段で検出される受信レベルに比べて数倍上昇する。従って、その倍率以下の所定の倍率を閾値とし、タッチ入力検出手段は、いずれかの検出電極に表れる受信レベルが閾値を越える倍率で上昇した時に、タッチ入力と判定できる。
【0022】
請求項3の静電容量式タッチパネルは、前記タッチ入力検出手段がタッチ入力と判定するまで、前記信号検出手段は、いずれか1又は2以上の特定検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルのみを検出し、前記タッチ入力検出手段がタッチ入力と判定した後、前記信号検出手段は、全ての検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルを検出し、入力位置検出手段は、前記各検出電極毎に検出した交流検出信号の受信レベルをもとに入力操作体が透明入力操作板に触れる入力操作の入力操作位置を検出することを特徴とする。
【0023】
タッチ入力検出手段がタッチ入力と判定するまでの入力操作を待機する待機中は、信号検出手段が、限られた数の特定検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルのみを検出する。操作者が入力操作体を入力操作領域に触れて入力操作を行うと、タッチ入力検出手段がタッチ入力と判定し、信号検出手段は、全ての検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルを検出し、入力位置検出手段は、全ての検出電極毎に検出した交流検出信号の受信レベルをもとに入力操作位置を検出する。
【0024】
請求項4に記載の静電容量式タッチパネルは、直交するXY方向のいずれかの方向で対向する前記開口部の両側に、それぞれ、対向方向と直交する方向に沿って一又は2以上の検出電極が配置され、前記入力位置検出手段は、前記両側に配置される検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルをもとに、入力操作体と前記開口部の両側との相対距離を比較し、XY平面に沿った入力操作領域上の前記対向方向の入力操作位置を検出することを特徴とする。
【0025】
対向方向と直交する方向に沿って配置される各検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルの総和は、概ね、各検出電極と入力操作体間の誘電率と、入力操作体に向かう各検出電極の面積の総和に比例し、各検出電極と入力操作体間の距離に反比例する。開口部の一側の各検出電極と他側の各検出電極の入力操作体との誘電率はほぼ等しく、一側の各検出電極と他側の各検出電極の対向面積比は既知であるので、一側の各検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルの総和と他側の各検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルの総和の比から、一側と他側の各検出電極が配置された開口部の対向する両側から入力操作体までの距離の比が得られる。入力操作体が入力操作領域から著しく上方に離間していなければ、入力操作体をXY平面に沿った入力操作領域へ投影させたの入力操作位置までの開口部の両側からの距離の比は、開口部の対向する両側から入力操作体までの距離の比にほぼ等しく、両側に配置される各検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルの総和の比と、既知の開口部の対向方向の距離から、入力操作領域上の対向方向の入力操作位置を検出できる。
【0026】
請求項5に記載の静電容量式タッチパネルは、前記検出電極は、Z方向に起立し、前記対向方向に面する起立面を有することを特徴とする。
【0027】
検出電極の入力操作体との対向面積が大きくなり、入力操作体との静電容量が増大するので、各検出電極に表れる受信レベルが上昇し、より精度良く対向方向の入力操作位置を検出できる。
【0028】
請求項6に記載の静電容量式タッチパネルは、前記検出電極が、透明入力操作板の端面に蒸着して形成されることを特徴とする。
【0029】
透明入力操作板の製造工程中に起立面を有する検出電極を形成できる。
【0030】
請求項7に記載の静電容量式タッチパネルは、
前記シールド層が、絶縁支持体に支持されたシールド板
であることを特徴とする。
【0031】
入力操作位置を入力する入力操作体の上方の部分と検出電極との間にシールド板が介在するので、入力操作位置にある入力操作体と検出電極間の静電容量に、入力操作体の上方の部分と検出電極とが静電結合する影響がなく、入力操作体の上方の部分を入力操作位置と誤検出しない。
【0032】
請求項8に記載の静電容量式タッチパネルは、前記絶縁支持体に支持される前記透明入力操作板が、入力操作領域を窓孔から上方に臨ませる機器の筐体内に配置され、前記窓孔の周囲の前記筐体の表面若しくは裏面に、
前記シールド層が形成されていることを特徴とする。
【0033】
入力操作位置を入力する入力操作体の上方の部分と検出電極との間にシールド層が介在するので、入力操作位置にある入力操作体と検出電極間の静電容量に、入力操作体の上方の部分と検出電極とが静電結合する影響がなく、入力操作体の上方の部分を入力操作位置と誤検出しない。
【0034】
請求項9に記載の静電容量式タッチパネルは、前記開口部の周囲のXY方向のいずれかの方向に沿って配置される複数の各検出電極を配置方向検出電極とし、前記入力位置検出手段は、各配置方向検出電極の受信レベルを比較して、XY平面に沿った入力操作領域上の配置方向の入力操作位置を検出することを特徴とする。
【0035】
各配置方向検出電極が同一形状で同一の向きに配置されているとすれば、入力操作体から配置方向と直交方向に配置される配置方向検出電極が、他の配置方向検出電極と比較して入力操作体との距離が最も短く、また、入力操作体との対向面積を大きくなるので、その配置方向検出電極に表れる受信レベルが最大となり、入力操作体から配置方向に離れて配置される配置方向検出電極ほど、その配置方向検出電極に表れる受信レベルは低下する。従って、各配置方向検出電極の受信レベルを比較し、最大の受信レベルが表れる配置方向の位置を入力操作領域上の入力操作位置として検出する。
【0036】
開口部の一側の配置方向に沿って配置される各検出電極を配置方向検出電極とすることにより、入力操作領域上の配置方向の入力操作位置を検出できる。
【0037】
請求項10に記載の静電容量式タッチパネルは、前記入力位置検出手段が、前記各配置方向検出電極の受信レベルを比較し、最大の受信レベルが検出された前記配置方向検出電極の配置位置から、配置方向の入力操作位置を検出することを特徴とする。
【0038】
最大の受信レベルが表れる配置方向検出電極の配置位置は、入力操作領域上の配置方向の入力操作位置と同一若しくは近接した位置であるので、各配置方向検出電極の受信レベルを比較し、最大の受信レベルが表れる配置方向検出電極の配置位置から入力操作領域上の配置方向の入力操作位置を検出する。
【0039】
請求項11に記載の静電容量式タッチパネルは、前記開口部の輪郭は、XY方向に沿った矩形状であり、XY方向のいずれかの方向で対向する前記開口部の両側にのみ、対向方向と直交する方向に沿って複数の検出電極が配置され、前記開口部の少なくとも一側に対向方向と直交する方向に沿って配置された複数の検出電極を、配置方向検出電極とすることを特徴とする。
【0040】
開口部の両側に配置する検出電極の少なくともその一側に配置される各検出電極を配置方向検出電極とするだけで、入力操作領域上のXY方向の入力操作位置を検出できる。
【発明の効果】
【0041】
請求項1の発明によれば、透明入力操作板に形成する入力操作領域に入力操作位置を検出するための透明電極や透明抵抗体を配置しないので、入力操作領域の透過率が下がらず、背面側に配置されるディスプレーが見やすい。
【0042】
複数の検出電極や検出電極を信号検出手段へ接続する引き出し線は、絶縁支持体の開口部の周囲に形成するので、汎用の不透明な導電材料を用いて安価に形成することができる。
【0043】
各検出電極と入力操作体との相対距離から入力操作位置を検出するので、指などの入力操作体を入力操作板へ接触させる入力操作に限らず、入力操作領域の上方へ入力操作体を接近させるだけの非接触の入力操作の入力操作位置も検出できる。
【0044】
請求項2の発明によれば、タッチ入力を検出するために、入力操作領域へ検出電極や検出抵抗を形成しないので、入力操作領域を通して背面側に配置されるディスプレーの視認性に優れる。
【0045】
また、入力操作領域が設定された透明入力操作板に触れるだけの操作で、タッチ入力が検出される。
【0046】
また、入力操作位置の検出に用いる信号検出手段を用いて、信号検出手段で検出する受信レベルからタッチ入力を検出できるので、検出スイッチ等のタッチ入力を検出する為の別の検出手段を設ける必要がない。
【0047】
請求項3の発明によれば、入力操作が行われていない待機中は、信号検出手段が、限られた数の特定検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルのみを検出するので、待機中の消費電力を省くことができる。
【0048】
操作者が、指などの入力操作体を透明入力操作板に触れて入力操作位置を入力する一連の入力操作の過程で、自然にその入力操作が検出されるので、待機中の動作を脱する為の別の操作を行う必要がない。
【0049】
請求項4の発明によれば、XY方向で対向する開口部の両側に検出電極を配置することにより、透明入力操作板に入力操作体を接触させる入力操作であるか、非接触の入力操作であるかにかかわらず、入力操作領域上の対向方向の入力操作位置を検出できる。
【0050】
また、各検出電極に表れる受信レベルの絶対値を比較することにより、接触入力操作と非接触入力操作を識別できるので、異なる2種類の入力操作による入力操作位置を出力できる。
【0051】
請求項5の発明によれば、検出電極に起立面を形成する簡単な加工で、入力操作位置の検出精度を上げることができる。
【0052】
請求項6の発明によれば、検出電極の折り曲げ加工や透明入力操作板への取り付け工程を設けずに、ガラス基板などの透明入力操作板の製造工程中に、起立面を有する検出電極を形成できる。
【0053】
請求項7の発明によれば、入力操作体の入力操作位置を正確に検出できる。
【0054】
請求項8の発明によれば、窓孔の周囲の筐体の表面若しくは裏面にシールド層を形成する簡単な構成で、入力操作体の入力操作位置の検出精度を上げることができる。
【0055】
請求項9の発明によれば、開口部の一方向で対向する両側に検出電極を配置するだけで、入力操作領域上のXY方向の入力操作位置を検出できる。
【0056】
請求項10の発明によれば、最大の受信レベルが表れる配置方向検出電極の配置位置から、容易に入力操作領域上の配置方向の入力操作位置を検出できる。
【0057】
請求項11の発明によれば、開口部で対向する両側に検出電極を配置するだけで、入力操作領域のXY方向の入力操作位置を検出できるので、対向方向と直交する方向の開口部の両側に検出電極を配置せず、筐体を細幅として、携帯電話機など縦長のケースに大型の入力操作領域や表示領域を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明の第1実施の形態に係る静電容量式タッチパネル(以下、タッチパネルという)1を、
図1乃至
図10を用いて説明する。タッチパネル1は、
図1、
図5に示すように、横長長方形の開口部21が中央に形成された長方形枠状の絶縁基板20と、開口部21の周辺に沿って絶縁基板20上に形成される多数の検出電極11、11・・と、開口部21の開口を覆うように、検出電極11を挟んで絶縁基板20上に載置される透明なガラス基板31と、検出電極11の上方を覆い、絶縁基板20に固定されるシールド板32を備えている。
【0060】
タッチパネル1の下方には、
図2に示すように、所定のカーソル、アイコンなどを表示する液晶表示素子40が積層して配置され、開口部21内の透明なガラス基板31を通して、液晶表示素子40を目視できるようになっている。本実施の形態では、開口部21で囲まれるガラス基板31の表面を、操作者が液晶表示素子40の表示を見ながら、指30を接近若しくは接触させて入力操作を行う入力操作領域Eとしている。
図6に示すように、長方形の輪郭に沿った方向を互いに直交するX方向及びY方向とし、XY平面に沿った入力操作領域E上の入力操作位置をxy位置座標で検出するため、X方向で対向する開口部21の一側の周辺に沿って多数の検出電極X01、X02・・X0nが、他側の周辺に沿って多数の検出電極X11、X12・・X1nが、Y方向で対向する開口部21の一側の周辺に沿って多数の検出電極Y01、Y02・・Y0nが、他側の周辺に沿って多数の検出電極Y11、Y12・・Y1nがそれぞれ配置されている。各検出電極11(X0、X1、Y0、Y1)は、開口部21の各周辺に沿ったX、Y方向(以下、配置方向という)に所定ピッチでむらなく配置され、これにより、入力操作領域Eのいずれの位置にをおいても、入力操作する指30が、X方向とY方向の各方向で少なくとも一組の検出電極(X0nとX1n又はY0nとY1n)に対向するようになっている。
【0061】
絶縁基板20は、プリント配線基板であり、各検出電極11(X0、X1、Y0、Y1)の平面電極11aは、それぞれプリント配線基板上の細長帯状の導電パターンで形成され、
図6に示すように、引き出し配線パターン35により、後述するマルチプレクサ12の各入力端子に接続している。
【0062】
本実施の形態では、入力操作領域Eに接近させる指30との対向面積を拡大し、指30との静電容量Cmを増大させるために、各検出電極11(X0、X1、Y0、Y1)は、
図3に示すように、絶縁基板20のスルーホール20aに挿通し、配置方向に沿って起立支持される起立電極11bを有している。起立電極11bは、その脚部がスルーホール20a内で平面電極11aから引き出される引き出し配線パターン35に半田接続されることにより、検出電極11に起立面が形成されるものであり、起立電極11bの内側の起立面が開口部21に面することにより、入力操作領域Eに接近する指30との対向面積が拡大する。
【0063】
図1、
図3に示すように、シールド板32は、起立電極11bの外側で起立するように絶縁基板20に固定され、開口部21の上方に向かって絶縁基板20と平行に折り曲げられている。折り曲げられた内端は、鉛直方向で平面電極11aより開口部21側にわずかに突出し、これにより平面電極11aと起立電極11bからなる検出電極11の鉛直方向の全体が覆われている。シールド板32は、絶縁基板20上の配線パターンを介して、後述する低圧振動電源線SGNDに接続し、振動側回路基板3上で接地されている。従って、入力操作体30が操作者の指である場合に、指から上方の操作者の一部と各検出電極11との間にシールド板32が介在し、入力操作位置を指示入力する指の部分と、各検出電極11との間の後述する静電容量Cmに指以外の部分が影響せず、静電容量Cmから指の入力操作位置を正確に検出できる。
【0064】
絶縁基板20上に載置されるガラス基板31は、
図5に示すように、絶縁基板の表面に沿って形成される平面電極11a上に配置され、その端面が、各起立電極11bの起立面に当接して、多数の起立電極11bの内側に位置決め支持される。従って、各検出電極11毎に平面検出電極11aと起立電極11bがガラス基板31の底面と端面に接し、図示するように、入力操作領域Eに指30が接近すると、指30との間に、ガラス基板31を誘電体とする静電容量Cmaと空気を誘電体とする静電容量Cmbが直列に接続された静電容量Cmが形成される。
【0065】
本実施の形態では、各検出電極11に表れる交流検出信号の受信レベルViから対向配置される各検出電極11と指30との静電容量Cmの相対比を求め、対向方向の入力操作位置を検出するものであり、以下、入力操作位置を検出する為の回路の構成を説明する。
【0066】
図7に示すように、各検出電極11を含むタッチパネル1を構成する主要回路部品は、2種類の非振動側回路基板2と振動側回路基板3に分けて搭載されている。非振動回路基板2には、接地電位とした低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCとからなる基準電源回路4が配線され、低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCC間に直流電圧Vccを印加するDC電源5が接続されている。これにより、非振動回路基板2に搭載されるインターフェース回路6等の各回路部品を基準電源回路4に接続し、DC電源5の出力電圧Vccにより駆動させている。
【0067】
また、振動側回路基板3には、低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCとからなる振動電源回路7が配線されている。低圧振動電源線SGNDは低圧基準電源線GNDと、高圧振動電源線SVCCは高圧基準電源線VCCと、それぞれコイル8、9を介して接続している。コイル8とコイル9のインダクタンスは、いずれも後述する固有周波数fの交流検出信号SGに対してハイインピーダンスとなる値に設定され、ここでは、同一のインダクタンスLのコイル8、9を用いている。
【0068】
交流検出信号SGの固有周波数fを発信する発信手段となる発振回路15は、振動側回路基板3に搭載され、二股に分岐してそれぞれ直流電圧を遮断するキャパシタンスC’のコンデンサ17、18を介して交流検出信号SGを基準電源回路4の低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCに接続している。これにより、基準電源回路4の低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCへ、固有周波数fの交流検出信号SGを同期させて出力すると、基準電源回路4の低圧基準電源線GNDが接地されて安定した電位にあるので、振動電源回路7の低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCの電位が同期して固有周波数fで変動し、両者間の電圧は、基準電源回路4と同じ直流出力電圧Vccとなる。交流検出信号SGの固有周波数fは、任意に調整することができるが、ここでは、187kHzの固有発振周波数の交流検出信号SGを出力する。
【0069】
固有周波数fの交流検出信号SGが基準電源回路4と振動電源回路7に流れる場合に、低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCC間及び低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCC間が近接して配線され、固有周波数fの帯域でこれらの電源線間は短絡しているとすれば、基準電源回路4と振動電源回路7は、
図8の等価回路図で示される。
【0070】
図8に示すように、振動電源回路7側の発振回路15の出力と基準電源回路4間には、並列にキャパシタンスC’のコンデンサ17、18が接続されているので、その合成キャパシタンスは、2C’であり、また、基準電源回路4と振動電源回路7間に並列に接続されるコイル8、9の合成インダクタンスは、L/2となる。これらのキャパシタとインダクタは、固有周波数fの交流検出信号SGが流れる閉回路において直列に接続され、交流検出信号SGの振幅(レベル)をVsg、コイル8、9両端の基準電源回路4と振動電源回路7間の電圧をVs、2πfで表される角速度をω(rad/sec)とすれば、
Vs=[ω
2LC’/(ω
2LC’−1)]Vsg・・・(1)式
で表される。
ここで、
図8に示す回路は、ω
2LC’=1で直列共振し、そのときの周波数f
0は、
f
0=1/[2π(LC’)
1/2]・・・(2)式
となる。
【0071】
つまり、(2)式関係から得られる共振周波数f
0を、交流検出信号SGの固有周波数fとすれば、交流検出信号SGのレベルに対して、(1)式から理論上振動電源回路7の電位が無限大で振動し、振動電源回路7に接続する各検出電極11の電位も無限大に振動させることができる。実際のタッチパネル1では、基準電源回路4と振動電源回路7のインダクタンス、浮遊容量などの影響から、(2)式から得る周波数f
0で共振せず、また、基準電源回路4と振動電源回路7に交流検出信号SGが流れる際のエネルギーロス、特にコイル8、9の内部抵抗による電力消費により、振動電源回路7は、交流検出信号SGのレベルVsgに対して有限倍率に拡大された振幅Vsで振動する。
【0072】
一方、操作者の指30がガラス基板31を介して接触する各検出電極11に大電圧を加えることはできないので、発振回路15の出力とコンデンサ17、18との間に図示しない抵抗を接続して、各検出電極11が相対的に振動する交流検出信号SGの出力レベルVsをここでは、出力レベルVsを5Vとしている。この交流検出信号SGの出力レベルVsは、交流検出信号SGの固有周波数fを共振周波数f0の近傍で調整して、低下させてもよい。
【0073】
また、交流検出信号SGの固有周波数fについても、任意の周波数とすることができるが、商用交流電源線の周囲では、入力操作体30が定電位ではなく商用交流電源の周波数のコモンモードノイズが重畳することがあるので、各検出電極11から商用交流電源の周波数と識別して固有周波数fの交流検出信号SGを検出する必要があり、商用交流電源の周波数とその高調波を除く周波数としている。
【0074】
上述の各検出電極11は、振動電源回路7の低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCのいずれかの、ここでは高圧振動電源線SVCCに接続している。全ての各検出電極11が高圧振動電源線SVCCに接続することによって、交流検出信号SGの出力レベルVsで固有周波数fで振動する一方、足下などの一部が接地している操作者の指30の電位は定電位であるので、両者の間には、交流検出信号SGの出力レベルVsの電圧が発生し、これを、固有周波数fで振動する振動電源回路7からみれば、定電位の検出電極11に対して、入力操作体である指30が交流検出信号SGの固有周波数fで振動する信号発生源となる。従って、指30が接近して指30との静電容量Cmが増大する検出電極11では、検出電極11から指30へ静電容量Cmを介して固有周波数fの交流検出信号SGがあらわれる。
【0075】
各検出電極11と指30間の静電容量Cmは、検出電極11と指30間の距離をd、真空の誘電率をε0、その間の誘電体の比誘電率をε1、指30と検出電極11の対向面積をsとすると、Cm=ε0・ε1・s/dで表される。
図5に示すように、指30がガラス基板31に触れていない状態では、指30と検出電極11の間の静電容量Cmは、上述のように、直列に接続されるガラス基板31を誘電体とする静電容量Cmaと空気を誘電体とする静電容量Cmbとからなるので、静電容量Cmは、Cma・Cmb/(Cma+Cmb)で表される。
【0076】
本実施の形態では、指30にX、Yいずれかの方向(
図5ではX方向)で対向する検出電極11
0、11
1の指30との間の静電容量Cm
0、Cm
1の相対比から対向方向の指30の入力操作位置を検出するものであるが、入力操作位置の算定を容易にするために、起立電極11bを含む全ての検出電極11を同形状としているので、対向方向の一組の検出電極11
0、11
1の指30との対向面積sは同一となっている。また、ガラス基板31の比誘電率εrは、約1の空気の比誘電率に比べて充分に高いので、指30とガラス基板31との距離が離れていなければ、検出電極11
0、11
1と指30の入力操作位置にかかわらず、静電容量Cm
0、Cm
1の相対比の算定において、両者の空気を誘電体とする静電容量Cmbは、ほぼ等しいとみなすことができる。従って、指30がガラス基板31に触れているかどうかにかかわらず、入力操作位置は、ガラス基板31を誘電体とする静電容量Cmaの比、つまり、Cm=ε0・εr・s/dから算定する静電容量Cm
0、Cm
1の相対比から検出できる。交流検出信号SGの固有周波数がfであるので、この静電容量Cmの交流検出信号に対するリアクタンスXcは、Xc=1/(2π・f・Cm)から、Xc=d/(ω・ε0・εr・s)で表される。
【0077】
図10は、検出電極11に表れる交流検出信号SGの受信レベルViを検出する信号検出回路部全体の等価回路図であり、図中、Cpは、検出電極11と低圧振動電源線SGND間の浮遊容量、rpは、検出電極11の内部抵抗値、R4は、出力抵抗の抵抗値である。 図中の等価回路図では、
i1=i2+i3 ・・・(3)式
Vs=i1/(jω・Cm)+i2/(jω・Cp) ・・・(4)式
−i2/(jω・Cp)+i3・rp+i3・R4=0 ・・・(5)式
i3・R4=Vi ・・・(6)式
の関係が成り立ち、(3)式乃至(6)式から、
Vi=[jω・Cm/{1/R4+jω(Cm+Cp)(rp/R4+1)}]・Vs ・・・(7)式
の関係が得られる。
【0078】
内部抵抗rpを0とし、R4がマルチプレクサ12を介して後述する積分用オペアンプA/D25に接続されるので無限大とすれば、(7)式は、
Vi=Cm/(Cp+Cm)・Vs
と置き換えられ、更に
浮遊容量Cpに比べて静電容量Cmは極めて小さいので、(7)式は、更に
Vi=(Cm/Cp)・Vs ・・・(8)式
で表される。
【0079】
上述の通り、入力操作体30と検出電極11の静電容量Cmは、Cm=ε0・εr・s/dで表されるので、これを(8)式に代入して変形すれば、
Vi={ε0・εr・s/(d・Cp)}Vs ・・・(9)式
となり、(9)式中の(ε0・εr・s/Cp)は、定数であるので、これを1/kとおけば、検出電極11に表れる交流検出信号SGの受信レベルViは、
Vi=Vs/(d・k) ・・・(10)式
で表され、指30との距離dが近い検出電極11ほど、受信レベルViが交流検出信号SGの出力レベルVsに近づく大きな値となる。ただし、指30が検出電極11に近接し、その間の静電容量Cmが浮遊容量Cpに比べて無視できない程度に大きくなった場合には(10)式を適用できず、受信レベルViは最大で出力レベルVsとなる。
【0080】
(10)式を用いれば、複数の各検出電極11に表れる交流検出信号の受信レベルViを比較して、指30と各検出電極11間の距離を比較することができ、本実施の形態では、各検出電極11(X0、X1、Y0、Y1)の配置位置と、各検出電極11(X0、X1、Y0、Y1)の受信レベルViとから、入力操作領域Eに平行なXY方向の入力操作位置(x、y)を検出する。
【0081】
この入力操作位置(x、y)を検出するために、振動側回路基板3には、アナログマルチプレクサ12、信号処理回路13、積分処理回路14、A/Dコンバータ19、MPU(マイクロプロセッサユニット)10及び発振回路15の各回路素子が搭載され、いずれも振動電源回路7の低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCに接続し、DC電源5から出力電圧Vccを受けて動作している。
【0082】
アナログマルチプレクサ12は、MPU10からの切り替え制御により、一定の周期、ここでは200msec毎に、各検出電極11を信号処理回路13へ切り換え接続し、各検出電極11に表れる交流検出信号SGを順に信号処理回路13へ出力している。すなわち、X方向で対向する検出電極X01、X02・・、X11、X12・・、Y方向で対向する検出電極Y01、Y02・・、Y11、Y12・・の順で、一走査周期内に全ての検出電極11が信号処理回路13に接続される。
【0083】
図9に示すように、信号処理回路13は、交流検出信号SGの固有周波数fを中心とする周波数帯域の信号を通過させる共振回路23と、インピーダンス変換用の増幅回路24と、これらの間に直列に接続される第1アナログスイッチASW1とからなっている。共振回路23は、アナログマルチプレクサ12を介して接続する検出電極11に表れる信号から、直流信号等の低周波成分とコモンモードノイズ等の高周波ノイズをカットし、交流検出信号SGのみを後段の増幅回路24へ出力する。増幅回路24は、入力インピーダンスが無限大に近く、出力インピーダンスが微小値であるインピーダンス変換素子で、検出電極11に表れる微弱な交流検出信号SGであっても、その出力側に接続される積分処理回路14が動作するようにしている。
【0084】
第1アナログスイッチASW1は、MPU10により開閉制御され、積分処理回路14が後述する積分動作を行っている積分動作期間(Tint)中に共振回路23と増幅回路24間を接続し、後述するオフセット調整期間(Tset)中に遮断する。これにより、オフセット調整期間(Tset)中に、交流検出信号SGが積分処理回路14に出力されないようにしている。
【0085】
積分処理回路14は、互いのアノードとカソードを接続させたクランプダイオード回路28と、信号処理回路13の出力の電位を所定の電位に引き上げるプルアップ抵抗29と、積分用オペアンプ25と、信号処理回路13の出力と積分用オペアンプ25の反転入力端子間に接続された積分用抵抗R1と、積分用オペアンプ25の反転入力端子と出力端子間に接続された積分用コンデンサC1と、積分用コンデンサC1に並列に接続され、MPU10により開閉制御される第2アナログスイッチASW2を備えている。
【0086】
クランプダイオード回路28は、信号処理回路13の出力、すなわち交流検出信号SGの電圧が、プルアップ抵抗29で引き上げられる電位を中心に、一対のダイオードの順電圧の範囲内で振動するようにクランプし、積分用抵抗R1へ出力する。
【0087】
積分用抵抗Rを介して積分用オペアンプ25の反転入力端子に入力される交流検出信号の電圧をVin、積分用オペアンプ25の出力端子から出力される電圧をVout、積分用抵抗R1の抵抗値をR、積分用コンデンサC1の容量をCとすれば、
Vout=−1/CR・∫Vindt ・・・(11)式
で表され、積分用オペアンプ25の出力端子から入力電圧Vinを積分した電圧Voutが出力される。
【0088】
第2アナログスイッチASW2は、オフセット調整期間(Tset)開始後のわずかな時間、MPU10により閉じ制御され、積分処理回路14の積分動作期間(Tint)に積分用コンデンサC1に蓄積された電荷を速やかに放電し、その直前の積分動作期間(Tint)に積分用コンデンサCに充電された充電電圧が、後述する積分処理回路14のオフセット調整期間(Tset)のオフセット動作に影響しないようにしている。
【0089】
この積分用オペアンプ25の反転入力端子と非反転入力端子間には、積分用オペアンプ25のオフセット電圧やその他の要因による直流成分の誤差があり、これらを合わせた誤差電圧をオフセット電圧Δvで表すと、(11)式は、
Vout=−1/CR・∫(Vin+Δv)dt ・・・(12)式
で表され、オフセット電圧Δvは直流成分であるので、(12)式は、
Vout=−1/CR・∫Vindt−Δv・t/CR ・・・(13)式
で表され、時間tの経過と共に、出力電圧Vout中のオフセット電圧Δvによる誤差が拡大する。
【0090】
そこで、上記オフセット電圧Δvによる影響を実質的に解消させる目的で積分処理回路14に更にフィードバック回路部を設けている。このフィードバック回路部は、
図9に示すように、帰還用オペアンプ26と、帰還用オペアンプ26の出力と積分用オペアンプ25の非反転入力端子間に接続された第3アナログスイッチASW3と、第3アナログスイッチASW3と積分用オペアンプ25の非反転入力端子間に接続され、帰還用オペアンプ26の出力電圧で充電されるホールド用コンデンサ27とから構成される。
【0091】
帰還用オペアンプ26の
反転入力端子は、抵抗R2を介して積分用オペアンプ25の出力に接続され、
非反転入力端子は、積分用抵抗R1の入力側に接続している。帰還用オペアンプ26の反転入力端子と出力端子間に接続された抵抗R3と抵抗R2の抵抗値は等しく、従って、帰還用オペアンプ26は、第3アナログスイッチASW3が閉じ制御されている間、積分用オペアンプ25の反転入力端子に入力される入力電圧Vinを基準電位とし、入力電圧Vinに対する積分用オペアンプ25の出力電圧Voutの差分をゲイン−1で増幅し積分用オペアンプ25の非反転入力端子へ帰還するように作用する
【0092】
MPU10により制御されるオフセット調整期間(Tset)中に、第3アナログスイッチASW3が閉じ制御されるとともに、積分用抵抗R1の入力と各検出電極11とは開制御される第1アナログスイッチASW1により遮断されるので、積分用抵抗R1の入力側には、交流検出信号SGが入力されることなく、積分用オペアンプ25の反転入力端子の電位は、一定の入力電圧Vinに保たれる。
【0093】
積分用オペアンプ25の非反転入力端子に対して反転入力端子に上記オフセット電圧Δvが生じているものとすると、Δt後にその積分値−(Vin+Δv)・Δt/CRが出力されるが、帰還用オペアンプ26により、積分用オペアンプ25の非反転入力端子にVin+(Vin+Δv)・Δt/CRが入力され、Δt/CRが1より充分に小さいので、これを繰り返すことにより、積分用オペアンプ25の出力はオフセット電圧Δvに収束して安定する。この状態で、積分用オペアンプ25の反転入力端子にオフセット電圧Δvを加えた電位は、非反転入力端子の電位に等しくなり、ホールド用コンデンサ27には、オフセット電圧Δvの影響を含めて非反転入力端子と反転入力端子間の差電圧を0とする補正電圧が充電されている。従って、オフセット調整期間(Tset)は、積分用オペアンプ25の出力Voutがオフセット電圧Δvに達して安定する充分な時間に設定し、ホールド用コンデンサ27は、積分用オペアンプ25の出力Voutが安定した際には飽和するキャパシタのコンデンサを用いる。
【0094】
オフセット調整期間(Tset)の経過後、MPU10は、第1アナログスイッチASW1を閉じ制御すると共に、第3アナログスイッチASW3を開制御して、積分動作期間(Tint)に移行する。積分動作期間(Tint)では、第1アナログスイッチASW1を閉じ制御されることにより、アナログマルチプレクサ12で選択接続した検出電極11に表れる交流検出信号SGが積分用オペアンプ25の反転入力端子に入力される。また、第3アナログスイッチASW3が開制御されるので、オフセット調整期間(Tset)中に、ホールド用コンデンサ27に充電された上記補正電圧が積分用オペアンプ25の非反転入力端子に入力され、オフセット電圧Δvを含めた積分用オペアンプ25の非反転入力端子と反転入力端子間の差電圧が0となり、積分用オペアンプ25の出力Voutに(13)式に示すオフセット電圧Δvを積分した誤差−Δv・t/CRが含まれない。
【0095】
その結果、微小な交流検出信号SGの電圧Vinのみが積分して拡大され、積分用オペアンプ25の出力Voutとして表れる。MPU10は、積分動作期間(Tint)の開始時から各積分動作期間(Tint)で同一の時間経過後であって、積分動作期間(Tint)が終了する直前の判定時t1に、判定時t1の出力Voutを後段に接続されたA/Dコンバータ19へ出力する。積分動作期間(Tint)は、CRで定まる積分用コンデンサC1の飽和時間より充分に短く、かつ交流検出信号SGの電圧Vinを、判定時t1にその積分値である積分用オペアンプ25の出力Voutから判別可能な期間に設定する。
【0096】
A/Dコンバータ19は、判定時t1の積分用オペアンプ25の出力Voutを量子化してMPU10へ出力する。
【0097】
A/Dコンバータ19から出力される量子化データは、その積分動作期間(Tint)中にアナログマルチプレクサ12が選択接続した各検出電極11に表れる交流検出信号SGの受信レベルViを表し、入力位置検出手段として作用するMPU10は、配置方向毎に検出電極11(X0、X1、Y0、Y1)に表れる受信レベルViの総和を算定し、配置方向毎の受信レベルViの総和から、指30のXY方向の入力操作位置を検出する。
【0098】
X方向で対向する一組の検出電極X0、X1間の距離をLxとし、指30が
図5に示す入力操作位置P(x)にあったとして、任意の検出電極X0nに表れる交流検出信号SGの受信レベルVi0と、検出電極X0nにX方向で対向する位置に配置された検出電極X1nに表れる交流検出信号SGの受信レベルVi1とは、(10)式からそれぞれ、
Vi0=Vs/(x・k) ・・・(14)式
Vi1=Vs/((Lx−x)・k) ・・・(15)式
で表され、両者の比Vi0/Vi1は、
Vi0/Vi1=(Lx−x)/x ・・・(16)式
で表される。
【0099】
この関係は、X方向で対向する全ての各組の検出電極X0、X1について成り立つので、一走査周期内に各検出電極X0に表れる交流検出信号SGの受信レベルViの総和をVx0、各検出電極X1に表れる交流検出信号SGの受信レベルViの総和をVx1とすれば、
Vx0/Vx1=(Lx−x)/x ・・・(17)式
であり、xについて解けば、
x=Lx・Vx1/(Vx0+Vx1) ・・・(18)式
となる。
【0100】
同様に、Y方向についても、Y方向で対向する一組の検出電極Y0、Y1間の距離をLyとすれば、任意の検出電極Y0nに表れる交流検出信号SGの受信レベルVi0と、検出電極Y0nにY方向で対向する位置に配置された検出電極Y1nに表れる交流検出信号SGの受信レベルVi1との関係は、
Vi0/Vi1=(Ly−y)/y ・・・(19)式
で表され、一走査周期内に各検出電極Y0に表れる交流検出信号SGの受信レベルViの総和をVy0、各検出電極Y1に表れる交流検出信号SGの受信レベルViの総和をVy1として、
y=Ly・Vy1/(Vy0+Vy1) ・・・(20)式
の関係が得られるので、Vx0、Vx1、Vy0、Vy1から入力操作領域E上のXY方向の入力位置(x、y)が容易に得られる。
【0101】
MPU10で検出した入力操作位置(x、y)を含む入力操作データは、直流が絶縁された信号線16を介して、非振動回路基板2に搭載されるインターフェース回路6に出力され、インターフェース回路6からUSB通信、I
2C通信等で入力操作データを利用する上位機器に出力される。
【0102】
上述の実施の形態では、各配置方向の検出電極11毎に各検出電極(X0、X1、Y0、Y1)に表れる交流検出信号SGの受信レベルViの総和(Vx0、Vx1、Vy0、Vy1)を求めて、(18)式と(20)式から入力操作位置(x、y)を検出したが、各配置方向の検出電極11のうち最大の受信レベルViが表れた検出電極11について、その受信レベルVi0と、対向して配置された検出電極11に表れる受信レベルVi1を比較し、(16)式若しくは(19)式から入力操作位置(x、y)を検出してもよい。
【0103】
また、配置方向に沿った複数の検出電極から構成される上述の4種類の検出電極(X0、X1、Y0、Y1)は、いずれか1又は2以上の検出電極11を、配置方向を長手方向とする一枚の検出電極11で構成することもでき、このように一枚の検出電極11で構成した場合には、その検出電極11の受信レベルViを、配置方向に沿った各検出電極11の受信レベルViの総和とみなし、(18)式と(20)式から入力操作位置(x、y)を検出できる。
【0104】
更に、上述のXY方向に沿って配置される4種類の検出電極X0、X1、Y0、Y1のうち、いずれか2種類の検出電極11を省略しても、入力操作領域Eへの入力操作位置(x、y)ことができる。
図11は、X方向で対向する検出電極X0、X1を省略した第2の実施の形態にかかる静電容量式タッチパネル50の平面図である。
【0105】
このタッチパネル50では、X方向に沿って配置される多数の検出電極Y0を、配置方向検出電極Y01、Y02・・Y0nとし、第1実施の形態において、検出電極Y0に対向させて配置した複数の検出電極Y11、Y12・・Y1nを単一の検出電極Y1で構成している。
図11に示すように、配置方向(X方向)に沿って配置された多数の配置方向検出電極Y0nのうち、指30から配置方向と直交する方向に配置された配置方向検出電極Y05が、指30に最も接近し、また指30との対向面積sも大きくなるので、その検出電極Y05に最大値となる受信レベルViが表れる。従って、X方向で対向する検出電極X0、X1が配置されていないタッチパネル50であっても、配置方向検出電極Y0nのうち最大値の受信レベルViが表れた配置方向検出電極Y05の配置位置からX方向の入力操作位置(x)を検出できる。このX方向の入力操作位置(x)は、最大値の受信レベルViが表れた検出電極Y05と、その周囲の配置方向検出電極Y0nに表れる受信レベルViとを比較し、より正確に検出することもできる。
【0106】
Y方向の入力操作位置(y)は、一枚の検出電極Y1の受信レベルViを、受信レベルViの総和Vy1とみなし、配置方向検出電極Y0nの受信レベルViの総和Vy0とから、(20)式を用いて検出できる。
【0107】
この第2の実施の形態にかかる静電容量式タッチパネル50によれば、X方向で対向する検出電極X0、X1を配置せずに、X方向の入力操作位置(x)を検出できるので、X方向幅を縮小できる。例えば、縦長で横幅に充分な余裕のない携帯電話機などのケースであっても、横幅方向に検出電極11を配置せずに横幅方向の入力操作位置を検出できるので、限られたケース内により大きい入力操作領域Eを有するタッチパネル50を取り付けることができる。
【0108】
図12は、2種類検出電極X0、Y1を省略した第3の実施の形態にかかる静電容量式タッチパネル51の平面図である。このタッチパネル51では、検出電極Y0をX方向を配置方向とする複数の配置方向検出電極Y01、Y02・・Y0nで、検出電極X1を、Y方向を配置方向とする複数の配置方向検出電極X11、X12・・X1nで構成している。
【0109】
図示する位置に入力操作する指30があったとすると、X方向では、検出電極Y05に表れる受信レベルViが最大となり、Y方向では、検出電極X14に表れる受信レベルViが最大となるので、それぞれの配置位置から入力操作位置(x、y)を検出できる。
【0110】
第3の実施の形態にかかる静電容量式タッチパネル51によれば、機器の筐体の隅に隙間をあけずに入力操作領域Eを臨ませたタッチパネル51を配置できる。
【0111】
上述の各実施の形態では、指30にX、Yいずれかの方向で対向する検出電極11
0、11
1の指30との間の静電容量Cm
0、Cm
1の相対比は、指30をガラス基板31上に投影させたXY平面上の入力操作位置(x、y)と対向する検出電極11
0、11
1までの対向方向の距離に反比例する比にほぼ等しいので、指30がガラス基板31に触れているかどうかにかかわらず、入力操作領域E上の入力操作位置(x、y)を検出できる。しかしながら、指30がガラス基板31に接触しない入力操作では、比誘電率が約1と低い空気を誘電体とする電容量Cmbが介在することになるので、同じ入力操作位置であっても各検出電圧11に表れる受信レベルViは、大きく低下する。従って、MPU10に入力される特定の検出電極11に表れる受信レベルViを一走査周期毎に比較し、受信レベルViが所定の閾値を越える比率で上昇したときに、指30がガラス基板31に触れるタッチ入力と、所定の閾値を越える比率で下降した時に、指30をガラス基板31から離した操作と判別でき、2種類の入力操作による入力操作位置を出力できる。
【0112】
また、特定の検出電極11に表れる受信レベルViを監視するだけで、タッチ入力を判定できるので、入力操作を待機する待機時間中は、特定の検出電極11の検出電極11に表れる受信レベルViのみを一定周期で検出する間欠検出モードとし、タッチ入力を検出した場合に、全ての回路を動作させ、入力操作位置を検出する検出モードとすることにより、待機時間中の電力消費を削減できる。
【0113】
上述の実施の形態では、各検出電極11の上方を覆うシールド板32を絶縁基板20から起立支持しているが、
図13に示すように、タッチパネル52の入力操作領域Eを窓孔42を通して外方に臨ませる機器の筐体43の内底面に接地されたシールド層44を形成し、シールド層44により検出電極11の上方を覆うようにしてもよい。また、同様の目的で、シールド層44は、筐体43の表面側に形成してもよい。
【0114】
また、上述の実施の形態で検出電極11は、絶縁基板20の表面の導電パターンで形成したり、絶縁基板20のスルーホール34に起立支持される金属プレートで形成しているが、ガラス基板等の透明入力操作板31の底面や端面に蒸着させた導電層で形成することもできる。
【0115】
更に、上述の実施の形態では、検出電極11を入力操作体30に対して交流検出信号SGの出力レベルVsで振動させ、両者の間に出力レベルVsの相対電位を発生させたが、検出電極11側を定電位として、入力操作体30の電位を交流検出信号SGの出力レベルVsで変動させてもよい。
【0116】
また、入力操作体30は、操作者が入力操作を行う指30で説明したが、操作者が握る専用入力ペンなど操作者と別の操作体であってもよい。
【0117】
また、矩形状の輪郭に形成された開口部21は、長方形の輪郭に限らず、任意の形状とすることができる。
【0118】
また、2種類に分けた非振動側回路基板2と振動側回路基板3とは、基準電源回路4と振動電源回路7が分かれて配線されていれば、1枚の回路基板としてもよい。