特許第5796544号(P5796544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796544
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20151001BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M2/26 A
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-128190(P2012-128190)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-254599(P2013-254599A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】南形 厚志
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−017406(JP,A)
【文献】 特開平07−302616(JP,A)
【文献】 特開2004−253324(JP,A)
【文献】 特開2000−195539(JP,A)
【文献】 特開2010−231915(JP,A)
【文献】 特開2003−092100(JP,A)
【文献】 特開2003−163008(JP,A)
【文献】 特開平07−226197(JP,A)
【文献】 特開平08−130030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の一方の面を覆う第1セパレータ部と、
前記第1電極の他方の面を覆う第2セパレータ部と、
前記第1電極とは極性が異なる第2電極と、
が層状に重なった電極組立体を備えた蓄電装置において、
前記第1電極の一辺部に突出形成されたタブと、
前記タブに接合された導電部材と、
前記第1セパレータ部及び前記第2セパレータ部を接合する接合部と、
を備え、
前記接合部は、前記第1電極の前記一辺部よりも前記タブの突出方向の先端側であって前記一辺部に沿う方向において前記タブの隣にあり、
前記一辺部と前記タブの周縁部とによって形成され、且つ、少なくとも一部が、前記接合部の前記突出方向の位置よりも前記突出方向の基端側にある第1コーナ部と、
前記タブの周縁部において前記接合部よりも前記突出方向の先端側であって、前記第1コーナ部よりも、前記タブにおける前記一辺部に沿う方向の中央を通り且つ前記突出方向に沿うタブ中心線側に位置する第2コーナ部と、
を備えていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記第2コーナ部は、前記突出方向において前記接合部と前記各セパレータ部の周縁部との間に位置していることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第2コーナ部は、前記タブにおいて前記一辺部に沿う方向の両側にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記タブは、矩形状の前記第1電極の前記一辺部のうち、当該一辺部の中央を通過し且つ前記突出方向に沿う電極中心線に対して、前記一辺部に沿う方向の一方側に偏倚した位置にあり、
前記第2コーナ部は、前記タブの周縁部において前記電極中心線側にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記接合部は、前記各セパレータ部が溶着された溶着部であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記蓄電装置は二次電池であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、走行用モータへの供給電力を蓄える蓄電装置としての二次電池が搭載されている。二次電池は、例えば活物質層が形成されたシート状の正極及び負極がセパレータを間に挟んだ状態で層状に重なった電極組立体を備えている。また、正極の一辺部及び負極の一辺部にはそれぞれ、セパレータから突出したタブが形成されており、当該タブと導電部材とが電気的に接続されることによって、電極組立体の電力をケース外に取り出すことが可能となっている。また、例えば特許文献1には、第1電極(正極又は負極)を2枚のセパレータで挟み、この2枚のセパレータを接合することによって第1電極及び各セパレータをユニット化する構成について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−130360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、各セパレータに対する第1電極の位置ずれによって、タブと各セパレータの接合箇所とが当接し、タブの基端部に応力が付与される場合がある。また、第1電極と導電部材との位置ずれによって、タブの基端部に応力が付与される場合がある。すると、タブの基端部に応力が集中し、タブが基端部から裂けるという事態が発生し得る。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、タブの裂けを抑制することができる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、第1電極と、前記第1電極の一方の面を覆う第1セパレータ部と、前記第1電極の他方の面を覆う第2セパレータ部と、前記第1電極とは極性が異なる第2電極と、が層状に重なった電極組立体を備えた蓄電装置において、前記第1電極の一辺部に突出形成されたタブと、前記タブに接合された導電部材と、前記第1セパレータ部及び前記第2セパレータ部を接合する接合部と、を備え、前記接合部は、前記第1電極の前記一辺部よりも前記タブの突出方向の先端側であって前記一辺部に沿う方向において前記タブの隣にあり、前記一辺部と前記タブの周縁部とによって形成され、且つ、少なくとも一部が、前記接合部の前記突出方向の位置よりも前記突出方向の基端側にある第1コーナ部と、前記タブの周縁部において前記接合部よりも前記突出方向の先端側であって、前記第1コーナ部よりも、前記タブにおける前記一辺部に沿う方向の中央を通り且つ前記突出方向に沿うタブ中心線側に位置する第2コーナ部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
かかる発明によれば、少なくとも一部が接合部に対して突出方向の基端側にある第1コーナ部とは別に、接合部に対して突出方向の先端側にある第2コーナ部が設けられているため、各セパレータ部に対する第1電極の位置ずれに起因する応力が第1コーナ部に付与され易く、第1電極と導電部材との位置ずれに起因する応力が第2コーナ部に付与され易くなる。これにより、1箇所に応力が集中することを回避することができ、タブが裂けることを回避することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記第2コーナ部は、前記突出方向において前記接合部と前記各セパレータ部の周縁部との間に位置していることを特徴とする。第2コーナ部が設けられている関係上、タブの第2コーナ部の基端側は、先端側と比較して幅広となっている。この点、本発明によれば、第2コーナ部が各セパレータ部の周縁部から突出しないようになっているため、タブにおける幅広部分が各セパレータ部内に収まっている。これにより、当該幅広部分が第2電極と短絡しにくい。よって、両者の短絡を抑制することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記第2コーナ部は、前記タブにおいて前記一辺部に沿う方向の両側にあることを特徴とする。かかる発明によれば、第1電極の一辺部に沿う方向、すなわちタブの幅方向の両側に第2コーナ部が形成されているため、上記幅方向おいていずれの方向から応力が付与された場合であっても、応力の分散化を図ることができる。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記タブは、矩形状の前記第1電極の前記一辺部のうち、当該一辺部の中央を通過し且つ前記突出方向に沿う電極中心線に対して、前記一辺部に沿う方向の一方側に偏倚した位置にあり、前記第2コーナ部は、前記タブの周縁部において前記電極中心線側にあることを特徴とする。かかる発明によれば、タブが矩形状の第1電極の一辺部において一方側に偏倚した位置に形成されているため、タブを把持して持ち上げた場合、タブにおいてシート中心側の周縁部に応力が付与され易い。この点、本発明によれば、タブの周縁部のうち応力が集中し易い側に第2コーナ部が形成されているため、応力の集中をより好適に抑制することができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記接合部は、前記各セパレータ部が溶着された溶着部であることを特徴とする。かかる発明によれば、各セパレータ部を接合するものとして溶着を採用したことにより、比較的簡素な処理で、所定の接合強度を有する接合部を実現することができる。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記蓄電装置は二次電池であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、タブの裂けを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】二次電池の斜視図。
図2】電極組立体の分解斜視図。
図3】二次電池の断面構造を示す模式図。
図4】(a)は正極タブ及びその周辺を示す拡大図であり、(b)は1−1線断面図。
図5】別例の正極タブ及びその周辺を示す拡大図。
図6】別例の正極タブを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る蓄電装置について図1図4を用いて説明する。本蓄電装置は、車両(自動車及び産業用車両)に搭載されており、車両に搭載された走行用モータ(電動機)を駆動するのに用いられる。なお、図3においてはケース11を断面で、電極組立体14等の内部構造を正面図で示し、図2及び図4においては第1セパレータ23の一部を破断して示す。
【0016】
図1に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、リチウムイオン二次電池であり、その外郭を構成する金属製のケース11を備えている。ケース11は、四角箱状の容器12と、容器12の開口部分を塞ぐ矩形平板状の蓋13とからなる。このため、二次電池10は、その外郭が角型をなしている。
【0017】
ケース11には、電極組立体14及び電解質としての電解液(図示略)が収容されている。図2に示すように、電極組立体14は、第1電極としての正極21と第2電極としての負極22とが、電気伝導に係るイオン(リチウムイオン)が通過可能な多孔質膜で形成された各セパレータ23,24を介して交互に重なった層状をなしている。各電極21,22及び一対のセパレータ23,24はそれぞれ矩形(詳細には長方形)のシート状をなしており、互いに相似形状となっている。
【0018】
図2に示すように、正極21は、矩形状に形成された正極金属箔(例えばアルミニウム箔)21aと、当該正極金属箔21aのシート面に正極活物質が塗布されることによって形成された正極活物質層21bと、を備えている。正極活物質層21bは、正極21(正極金属箔21a)のシート面のうち、当該正極21の一辺部21cに沿い且つ一辺部21cと直交する方向に所定の幅を有する正極未塗工部21dを除いた部分に形成されている。
【0019】
負極22は、正極21よりも一回り大きく形成されており、詳細には負極22の隣り合う2辺の長さ、詳細には厚み方向と直交する各方向X,Yの長さは、正極21の隣り合う2辺の長さ、詳細には厚み方向と直交する各方向X,Yの長さよりも長く設定されている。負極22は、正極金属箔21aよりも一回り大きく形成された矩形状の負極金属箔(例えば銅箔)22aと、当該負極金属箔22aのシート面に負極活物質が塗布されることによって形成された負極活物質層22bと、を備えている。負極活物質層22bは、負極22(負極金属箔22a)のシート面のうち、当該負極22の一辺部22cに沿い且つ一辺部22cと直交する方向に所定の幅を有する負極未塗工部22dを除いた部分に形成されている。負極活物質層22bは、正極活物質層21b全体を覆うことが可能となるように、正極活物質層21bよりも大きく形成されている。
【0020】
各セパレータ23,24は、正極21及び負極22よりも一回り大きく形成されており、詳細には各セパレータ23,24の隣り合う2辺の長さ、詳細には厚み方向と直交する各方向X,Yの長さは、正極21及び負極22の各方向X,Yの長さよりも長く設定されている。つまり、各セパレータ23,24は、各電極21,22のシート面をオーバーラップして覆うことが可能な大きさに形成されている。
【0021】
電極組立体14を構成している状態において、正極活物質層21bの全体は負極活物質層22bによって覆われ、且つ、正極21及び負極22は各セパレータ23,24によって覆われている。この場合、正極活物質層21bと負極活物質層22bとが対向している領域が充放電に寄与する領域である。
【0022】
正極21の一辺部21cには、当該一辺部21cの一部が突出することによって形成された正極タブ31が設けられている。ここで、正極21の一辺部21cの中央を通過し且つ突出方向Tに沿う線をシート中心線J1(電極中心線)とすると、正極タブ31は、正極21の一辺部21cのうちシート中心線J1に対して一辺部21cの沿う方向(突出方向Tに沿う方向と直交する方向、第2方向X)の一方側に偏倚した位置に形成されている。詳細には、正極タブ31における一辺部21cに沿う方向の中央を通過し且つ突出方向Tに沿うタブ中心線K1は、シート中心線J1よりも一辺部21cの沿う方向の一方側に偏倚している。
【0023】
換言すれば、正極タブ31の第2方向Xの中央を通過し且つ第2方向Xに直交する平面が、正極21の第2方向Xの中央を通過し且つ第2方向Xに直交する平面とずれた位置に配置されているとも言える。また、シート中心線J1が正極21の重心(正極タブ31以外の部分の重心)を通過する線であることに着目すれば、正極タブ31は、正極21の重心よりも一辺部21cに沿う方向の端側に偏倚させて配置されているとも言える。
【0024】
同様に、負極22の一辺部22cには、当該一辺部22cの一部が突出することによって形成された負極タブ32が設けられている。負極タブ32も、正極タブ31と同様に、その突出方向Tに沿うタブ中心線K2が負極22の中心線であるシート中心線J2よりも偏倚させた位置に形成されている。
【0025】
なお、説明の便宜上、以降の説明において、正極タブ31の突出方向Tとは、正極タブ31の基端部から先端部へ向かう一方向とし、突出方向Tに沿う方向である第1方向(短手方向)Yとは、正極タブ31の基端部から先端部へ向かう方向及びその逆方向の両方向として説明する。
【0026】
また、正極21の各方向X,Yの長さは、正極タブ31を除く長さであり、負極22の各方向X,Yの長さは負極タブ32を除く長さである。
図2に示すように、各電極21,22は、各タブ31,32の同一極性同士が層方向に列状に配置される一方、異なる極性同士が層方向に並ばないよう重なっている。詳細には、各電極21,22は、各シート中心線J1,J2が一致し、且つ当該各シート中心線J1,J2を介して一方側に正極タブ31が配置され、他方側に負極タブ32が配置されるように重なっている。そして、図1に示すように、各正極タブ31は、電極組立体14の層方向の一端側に寄せて集められており、その集められた状態で上記一端側とは反対側に向けて折り返されている。そして、各正極タブ31が重なっている箇所を溶接することにより、各正極タブ31が互いに電気的に接続されている。各負極タブ32も同様に、電極組立体14の層方向の一端側に集められた状態で他端側に向けて折り返されて溶接されている。そして、電極組立体14は、各タブ31,32が形成されている側の部位と蓋13とが対向するようにケース11内に収容されている。
【0027】
なお、これに限られず、各活物質層21b,22bが対向し且つ各セパレータ23,24によって各電極21,22が覆われていれば、各シート中心線J1,J2がずれて層状になっている態様であってもよい。
【0028】
図1に示すように、二次電池10は、ケース11外からアクセス可能な正極端子41及び負極端子42と、各端子41,42及び各タブ31,32の同一極性同士を接続する導電部材としての正極導電部材51及び負極導電部材52とを備えている。
【0029】
正極端子41は、絶縁リング53によって絶縁された状態でケース11を貫通している。正極端子41の一部はケース11外に露出しつつ、別の一部はケース11内にある。図3に示すように、正極導電部材51は、金属製の板で形成されており、一方の板面が正極タブ31と接触し、且つ他方の板面が正極端子41におけるケース11内にある端部と接触する態様で配置されている。そして、これらの各接触箇所が接合(溶接)されている。
【0030】
負極側についても同様に、負極端子42は、絶縁リング53によって絶縁された状態でケース11を貫通しており、負極導電部材52は、負極端子42及び負極タブ32の双方と接触する態様で配置され、各接触箇所が接合(溶接)されている。
【0031】
これにより、各端子41,42にアクセスすることにより、電極組立体14の電力をケース11外に取り出すことができるとともに、電極組立体14に対して電力を供給することが可能となっている。
【0032】
図2に示すように、電極組立体14は、正極21、第1セパレータ23、及び第2セパレータ24がユニット化された正極収容体60と負極22とが交互に重なることによって層状をなしている。当該正極収容体60について以下に詳細に説明する。
【0033】
正極収容体60は、各セパレータ23,24によって正極21が挟まれることによって形成されている。この場合、正極21の一方のシート面(正極活物質層21b及び正極未塗工部21d)が第1セパレータ23によって覆われ、他方のシート面が第2セパレータ24によって覆われている。
【0034】
ここで、各セパレータ23,24が正極21よりも大きく形成されているため、正極収容体60において、各セパレータ23,24の一部は正極21の周縁部21eから正極21のシート面方向の外側にはみ出している。換言すれば、各セパレータ23,24は、正極21の周縁部21eからはみ出した各はみ出し部23a,24aを備えている。各はみ出し部23a,24aは、各セパレータ23,24の外周縁に沿って形成されており、詳細には正極21において正極タブ31の突出方向Tに沿う第1方向(短手方向)Yの両側に形成されているとともに、当該突出方向Tに沿う方向と直交する第2方向(長手方向)Xの両側に形成されている。
【0035】
正極収容体60は、各セパレータ23,24を接合するものとして第1溶着部(接合部又は第1接合部)61と第2溶着部(第2接合部)62とを備えている。第1溶着部61は、各はみ出し部23a,24aを熱処理することによって形成されている。図4(b)に示すように、第1溶着部61においては、熱溶着によって各はみ出し部23a,24aの一部が一体化している。
【0036】
図2に示すように、各溶着部61,62は、正極21を正極タブ31の突出方向Tに沿う第1方向Yから正極21を挟むように形成されている。詳細には、第1溶着部61は、各はみ出し部23a,24aにおける正極タブ31側の部位に配置されている。具体的に言えば、第1溶着部61は、正極21における正極タブ31が形成されている一辺部21cと、当該一辺部21cよりも正極タブ31の突出方向Tの先端側にある各セパレータ23,24の一辺部23b,24bとの間に配置されている。第2溶着部62は、各はみ出し部23a,24aにおける正極タブ31側とは第1方向Yの反対側に配置されている。具体的に言えば、第2溶着部62は、正極21における一辺部21cとは反対側の一辺部21fと、当該一辺部21fよりも突出方向Tと反対方向にある各セパレータ23,24の一辺部23c,24cとの間に配置されている。これにより、各セパレータ23,24に対する正極21の第1方向Y(突出方向Tに沿う方向)への移動が規制されている。
【0037】
また、第2溶着部62は、各セパレータ23,24の一辺部23c,24cに沿って所定の間隔を隔てて断続的に形成されている。一方、第1溶着部61は、突出方向Tに沿う方向と直交する第2方向Xにおいて正極タブ31の隣(詳細には両隣)に配置されている。第1溶着部61は、正極タブ31が形成されている箇所を除いて、各セパレータ23,24の一辺部23b,24bに沿って連続して形成されており、正極タブ31に近接している。この場合、正極タブ31は、第1溶着部61によって第2方向X(一辺部21cに沿う方向、突出方向Tに沿う方向と直交する方向)から挟まれている。これにより、正極21が第2方向Xに移動しようとすると、正極タブ31と、第1溶着部61の正極タブ31側の端部71とが当接し、当該移動が規制される。これにより、各セパレータ23,24に対する正極21の第2方向X(突出方向Tに沿う方向と直交する方向)への移動が規制されている。
【0038】
ここで、上記のように、各溶着部61,62によって正極21の位置ずれが規制されている状況においては、第1溶着部61と正極タブ31との当接に伴い、正極タブ31に対して応力が付与される。また、電極組立体14と正極導電部材51との位置ずれが発生した場合にも、正極タブ31に対して応力が付与される。このため、正極タブ31に応力が集中し易く、正極タブ31が裂け易くなっている。
【0039】
これに対して、本実施形態の正極タブ31は、上記応力を緩和するための構成を備えている。当該構成について以下に詳細に説明する。
図2に示すように、正極タブ31は、そのタブ中心線K1を中心として対称に形成されている。正極タブ31の周縁部80は、タブ中心線K1よりもシート中心線J1側にある第1周縁部81と、タブ中心線K1よりもシート中心線J1側にある第2周縁部82とに区分けされる。
【0040】
図4(a)に示すように、正極タブ31は正極21の一辺部21cから突出しているため、一辺部21cと、正極タブ31の周縁部80(詳細には各周縁部81,82それぞれ)とによって、第1コーナ部91(第1かど部、第1曲がり部)が2つ形成されている。第1コーナ部91は、一辺部21cと、各周縁部81,82のうち突出方向Tに延びる各基端側周縁部81a,82aとによって形成されている。第1コーナ部91は、第1溶着部61よりも突出方向Tの基端側に配置されている。
【0041】
さらに、正極タブ31の周縁部80には、第1溶着部61よりも突出方向Tの先端側、詳細には突出方向Tにおいて第1溶着部61と正極導電部材51との間に位置し、且つ第1コーナ部91よりもタブ中心線K1側に配置されている第2コーナ部92(第2かど部、第2曲がり部)が形成されている。第2コーナ部92は、各周縁部81,82双方に形成されており、各周縁部81,82においてタブ中心線K1を介して対称な位置に形成されている。
【0042】
第1周縁部81側について詳細に説明すると、第2コーナ部92は、第1周縁部81のうち突出方向Tに延びるものであって基端側周縁部81aよりもタブ中心線K1側に配置されている先端側周縁部81bと、先端側周縁部81bと基端側周縁部81aとに連続する中間周縁部81cとによって形成されている。中間周縁部81cは、正極タブ31の厚さ方向に直交し且つ突出方向Tと交差(直交)する方向、すなわち第2方向Xに延びている。
【0043】
第2周縁部82側についても同様に、第2周縁部82のうち突出方向Tに延びるものであって基端側周縁部82aよりもタブ中心線K1側に配置されている先端側周縁部82bと、先端側周縁部82bと基端側周縁部82aとに連続する中間周縁部82cとによって第2コーナ部92が形成されている。
【0044】
また、正極タブ31の周縁部80には、各中間周縁部81c,82c及び各基端側周縁部81a,82aの対応するもの同士によって第3コーナ部93が形成されている。第3コーナ部93は、第1溶着部61よりも突出方向Tの先端側に形成されている。このため、各基端側周縁部81a,82aと第1溶着部61とが第2方向Xに対向している。すなわち、正極21が各セパレータ23,24に対して第2方向Xに移動した場合、第1溶着部61の端部71と各基端側周縁部81a,82aとが当接する。
【0045】
ちなみに、図4(a)に示すように、第1溶着部61の端部71は、正極タブ31に向けて凸状をなしており、正極21が第2方向Xに移動した場合、当該凸状の端部71の先端と各基端側周縁部81a,82aとが当接する。
【0046】
なお、正極タブ31の幅について着目すれば、正極タブ31は、突出方向Tの基端側に設けられ、各基端側周縁部81a,82aによって規定された幅広部31aと、突出方向Tの先端側に設けられ、各先端側周縁部81b,82bによって規定された幅狭部31bとを備えていると言える。そして、幅広部31aと幅狭部31bとの間に段差部31c(各中間周縁部81c,82c)が形成されているとも言える。この場合、幅広部31aが第1溶着部61によって挟まれている。
【0047】
各コーナ部91〜93は、面取りされた湾曲形状となっており、その曲率はそれぞれ同一に設定されている。但し、これに限られず、各コーナ部91〜93において、曲率を異ならせてもよく、例えば第1コーナ部91の曲率を、第2コーナ部92の曲率よりも小さくしてもよい。
【0048】
ここで、図4(a)に示すように、第2コーナ部92は、各はみ出し部23a,24a内に収まっている。詳細には、第2コーナ部92は、各セパレータ23,24の一辺部23b,24bよりも突出方向Tの基端側に配置されている。これにより、幅広部31a(各基端側周縁部81a,82a及び各中間周縁部81c,82c)は、各セパレータ23,24よりも面方向の内側、詳細には各セパレータ23,24の一辺部23b,24bよりも突出方向Tの基端側に配置されている。
【0049】
次に、本実施形態の作用について説明する。
正極21及び一対のセパレータ23,24からなる正極収容体60を設け、当該正極収容体60と負極22とが交互に重なる(積層する)ことによって電極組立体14が形成されている。この場合、正極収容体60を重ねることによって、自ずと各電極21,22の間に各セパレータ23,24が介在する。これにより、正極21、負極22、及び各セパレータ23,24をそれぞれ重ねる構成と比較して、積層工程の工程数の削減を図ることができる。
【0050】
また、正極21及び一対のセパレータ23,24は、各溶着部61,62によって、各セパレータ23,24に対する正極21の位置ずれが規制された状態でユニット化されている。詳細には、図2に示すように、正極21は、各溶着部61,62によって第1方向Yから挟まれているため、各セパレータ23,24に対して正極21が第1方向Yに移動した場合には、正極21と各溶着部61,62とが当接し、その移動が規制される。また、図4(a)に示すように、正極タブ31は、第1溶着部61によって第2方向Xから挟まれているため、各セパレータ23,24に対して正極21が第2方向Xに移動した場合、第1溶着部61と各基端側周縁部81a,82aとが当接し、その移動が規制されている。これにより、積層工程において、これらについて位置合わせをする必要がない分だけ、積層工程が容易になっている。
【0051】
ここで、第1溶着部61と各基端側周縁部81a,82aとが当接した場合、当接箇所を介して正極タブ31に対して応力が付与される。この場合、上記応力は、第1溶着部61よりも突出方向Tの基端側にある第1コーナ部91に優先的に付与される。また、図3に示すように、正極導電部材51と電極組立体14との位置ずれが発生した場合、正極タブ31に対して応力が付与される。当該応力は、第1溶着部61よりも突出方向Tの先端側にある第2コーナ部92に優先的に付与される。
【0052】
第2コーナ部92が各はみ出し部23a,24a内に配置されているため、幅広部31aが、各セパレータ23,24からはみ出すことなく、各はみ出し部23a,24a内に収容されている。これにより、幅広部31aが負極22と接触しにくくなっている。
【0053】
以上詳述した本実施形態によれば以下の優れた効果を奏する。
(1)第1溶着部61に対して突出方向Tの基端側に形成された第1コーナ部91とは別に、第1溶着部61に対して突出方向Tの先端側(突出方向Tにおいて第1溶着部61と正極導電部材51との間に)であって、第1コーナ部91よりも正極タブ31のタブ中心線K1側にある第2コーナ部92を設けた。これにより、各セパレータ23,24に対する正極21の位置ずれに起因する応力と、電極組立体14と正極導電部材51との位置ずれに起因する応力とを、各コーナ部91,92に分散させることができる。よって、正極タブ31の基端部にある第1コーナ部91に応力が集中し、正極タブ31が裂けるという事態を回避することができる。
【0054】
特に、異なる事象に基づく2つの応力は異なる方向となる場合がある。異なる2方向の応力が一箇所に付与されると、当該箇所にて、ねじれが発生し、正極タブ31が裂け易くなることが想定される。これに対して、本実施形態によれば、異なる事象に基づく2つの応力を、別々のコーナ部91,92にて受ける構成としたことにより、上記ねじれを好適に抑制することができる。
【0055】
(2)第2コーナ部92を、各セパレータ23,24の一辺部23b,24bよりも突出方向Tの基端側(突出方向Tと反対方向)に配置した。これにより、幅広部31aが各セパレータ23,24からはみ出していないため、幅広部31aと負極22とが短絡しにくい。よって、両者の短絡を抑制することができる。
【0056】
また、例えば幅広部31aが各セパレータ23,24からはみ出している場合、第2方向Xにおける幅広部31a及び負極タブ32間の間隔を、各タブ31,32の短絡を抑制するための最小間隔以上に設定する必要がある。これに対して、本実施形態によれば、幅広部31aが各はみ出し部23a,24a内に収まっているため、幅狭部31b及び負極タブ32間の間隔を、上記最小間隔以上に設定すればよく、段差部31cの段差寸法だけ短くすることができる。これにより、各タブ31,32を近づけて配置することができ、各タブ31,32間のデッドスペースの削減を図ることができる。
【0057】
(3)第2コーナ部92は、各周縁部81,82それぞれに形成されている。これにより、第2方向Xのいずれの方向(正極タブ31側から負極タブ32側に向かう方向、又はその逆方向)から応力が付与された場合であっても、当該応力を分散化することができる。
【0058】
(4)各セパレータ23,24を接合するものとして各溶着部61,62を設けた。ここで、溶着は比較的簡素な熱処理によって実現されるとともに、熱処理箇所を制御することによって所望の箇所に各溶着部61,62を形成することができる。これにより、正極21及び各セパレータ23,24をユニット化にするための工程を簡素なものとすることができる。
【0059】
一方、各溶着部61,62は、他の箇所と比較して弾性変形しにくいため、各セパレータ23,24に対する正極21の位置ずれに起因する応力は、第1溶着部61にて吸収されにくい。このため、正極タブ31に付与される上記応力は緩和されにくい。かかる状況において、異なる事象に基づく応力が第1コーナ部91に集中すると、第1コーナ部91に過剰な応力が付与され、第1コーナ部91から裂け易くなる。
【0060】
これに対して、本実施形態によれば、第2コーナ部92を形成することにより、異なる事象に基づく応力の分散化を図ることができることを通じて、第1コーナ部91に付与される応力を緩和することができる。これにより、各セパレータ23,24を接合するものとして溶着を採用した構成において、正極タブ31の裂けを好適に抑制することができる。
【0061】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、各基端側周縁部81a,82aが第1溶着部61と当接する構成であったが、これに限られず、第1コーナ部が第1溶着部61と当接する構成であってもよい。例えば、図5に示すように、各コーナ部101〜103が連続して形成された正極タブ100が設けられている。第1コーナ部101は、その一端(一辺部21cとの連続点)101aが第1溶着部61よりも突出方向Tの基端側にあり、他端(第2コーナ部102との連続点)101bが第1溶着部61よりも突出方向Tの先端側にある。かかる構成においても、異なる事象に基づく2つの応力の分散化を図ることができる。要は、第1コーナ部の少なくとも一部が、第1溶着部61の突出方向Tの位置よりも突出方向Tの基端側にあればよい。
【0062】
○ 実施形態では、第2コーナ部92は、各周縁部81,82それぞれに形成されていたが、これに限られない。例えば、図6に示すように、第1周縁部81側のみに第2コーナ部92を形成し、第2周縁部82側には第2コーナ部92が形成されていない正極タブ110であってもよい。この場合であっても、正極タブ110を把持した場合等に付与される応力を好適に分散することができる。詳細には、正極タブ110のタブ中心線K1がシート中心線J1(重心)に対して偏倚している構成において、正極タブ110を把持して持ち上げた場合、正極タブ110においてシート中心線J1側にある第1周縁部81側に、応力が集中し易い。この点、本別例によれば、応力が集中し易い側である第1周縁部81側に第2コーナ部92が形成されているため、応力の分散化を好適に図ることができる。
【0063】
○ 各タブ31,32をそれぞれ、各電極21,22のシート中心線J1,J2に近づけてもよい。例えば各電極21,22を重ねた場合に、段差部31cの段差寸法(第2方向Xの長さ)以下の間隔で、正極タブ31の幅狭部31bと負極タブ32とが離間するように各タブ31,32の位置を設定してもよい。この場合であっても、幅広部31aは、各セパレータ23,24内に収まっているため、各タブ31,32が短絡しにくい。これにより、各タブ31,32間のデッドスペースの縮小化を図ることができる。
【0064】
○ 実施形態では、正極21を挟むものとして、別体に形成された一対のセパレータ23,24を採用したが、これに限られず、一体のセパレータを折り曲げ、その中に正極21を収容するものを採用してもよい。この場合、一体のセパレータの折り曲げ部が接合部として機能する。要は、第1セパレータ部及び第2セパレータ部は一体であっても別体であってもよい。
【0065】
○ 実施形態では、突出方向Tに沿う方向と直交する第2方向Xから正極タブ31を挟むように、第2方向Xにおける正極タブ31の両隣に第1溶着部61が形成されていたが、これに限られず、いずれか一方側の隣に第1溶着部61が形成されている構成としてもよい。この場合、他方側への移動を規制するための規制部を別途設けるとよい。
【0066】
○ 実施形態では、第1溶着部61は、正極タブ31が介在する箇所を除いて連続的に形成され、第2溶着部62は断続的に形成されていたが、これに限られず、逆であってもよい。また、第1方向Yだけでなく、正極21における第2方向Xの両側に接合部としての溶着部を設けてもよい。
【0067】
○ 実施形態では、各セパレータ23,24を接合するものとして溶着を採用したが、接合態様はこれに限られず、任意である。例えば両面テープで貼り付ける構成としてもよく、接着剤で埋める構成としてもよく、縫合によって接合する構成としてもよい。
【0068】
○ 実施形態では、各セパレータ23,24で覆う(包む)ものとして正極21を採用したが、これに限られず、負極22を採用してもよい。この場合、負極タブ32の形状を、正極タブ31の形状にするとよい。
【0069】
○ 実施形態では、正極21、負極22及び各セパレータ23,24は長方形状に形成されていたが、これに限られず、正方形状に形成されていてもよい。また、矩形状に限られず、例えば四角形状以外の多角形状に形成されていてもよく、楕円状に形成されていてもよい。
【0070】
○ 実施形態では、負極22は各セパレータ23,24よりも一回り小さく形成されていたが、これに限られず、両者を同一形状としてもよい。
○ 実施形態では、二次電池10はリチウムイオン二次電池であったが、これに限られず、ニッケル水素等の他の二次電池であってもよい。要は、正極活物質層と負極活物質層との間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであればよい。
【0071】
○ 実施形態では、二次電池10は車両に搭載されている構成としたが、これに限られず、他の装置に搭載される構成としてもよい。
○ 実施形態では、第2接合部としての第2溶着部62を設けたが、これに限られず、第2溶着部62を省略してもよい。但し、上述した各コーナ部91,92と第1溶着部61との位置関係が規定されている点、すなわち各溶着部61,62によって正極21の第1方向Yの移動が規制されている点に着目すれば、第2溶着部62を設ける方がよい。
【0072】
○ 本発明を、電気二重層コンデンサ等の他の蓄電装置に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記接合部は第1接合部であり、前記第1接合部とは別に設けられ、前記第1接合部とは前記タブの突出方向に沿う方向の反対側にあって、前記第1接合部と協働して前記第1電極を挟む第2接合部を備えていることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の蓄電装置。
【0073】
(ロ)前記接合部は、前記タブを前記一辺部に沿う方向から挟むものであることを特徴とする請求項1〜6及び技術的思想(イ)のうちいずれか一項に記載の蓄電装置。
【符号の説明】
【0074】
10…二次電池(蓄電装置)、14…電極組立体、21…正極(第1電極)、22…負極(第2電極)、23…第1セパレータ、24…第2セパレータ、23b,24b…各セパレータの一辺部(周縁部)、31…正極タブ、51…正極導電部材、61…第1溶着部(接合部又は第1接合部)、62…第2溶着部(第2接合部)、80…正極タブの周縁部、91…第1コーナ部、92…第2コーナ部、J1…シート中心線(電極中心線)、K1…タブ中心線(正極タブの中心線)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6