(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号送信部は送信コイルを備え、前記信号受信部は受信コイルを備え、前記信号送信部と前記信号受信部とは、前記送信コイルと前記受信コイルとの間の電磁誘導により信号伝送を行う請求項1に記載の紡機の糸検出装置。
前記信号送信部は、送信すべき元のパルス信号を各パルスの立ち上がり及び立ち下がりに対応して元のパルス信号のパルス幅より短いパルスが存在するパルス信号に変換するとともに、前記変換後のパルス信号に基づいて前記送信コイルに電流を流し、前記信号受信部は、前記受信コイルで受信したパルス信号を復号する請求項2に記載の紡機の糸検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の糸切れ検出装置は、保全時等にリングプレートを機台から取り外す場合、各制御基板間を接続している電線を取り外す作業が必要になる。接続箇所が多いため作業工数が多く、また繰り返し着脱することで接続部が損傷したり、耐久性が低下したりする可能性もある。
【0006】
特許文献2の紡績機では、センサからの信号伝送を無線で行うことは開示されている。しかし、リング精紡機のように錘数の多い紡績機において、各糸センサからの検出信号を無線で行うと、ノイズによる誤動作の虞がある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、機台にリングプレートが複数設けられた紡機において、リングプレートの取り外し時に、糸検出ユニット間の信号配線の取り外しが不要で、ノイズによる誤動作が生じ難い紡機の糸検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、機台にリングプレートが
隣接して複数
、一列に設けられた紡機の糸検出装置であって、前記各リングプレートに、錘毎に設けられた検知部を有する糸センサと、前記糸センサの検出信号に基づいて各錘の糸の状態を判断する判断部とを備えた糸検出ユニットが設けられ、前記判断部から主制御装置への糸の状態情報信号の伝送は、隣り合う前記リングプレート
の互いに対向する各端部において、一方の端部に設けられた信号送信部と
、他方の端部に設けられた信号受信部とを介して非接触で行われる。ここで、「糸の状態」とは、糸切れの有無や、甘撚りか否か等を意味する。また、主制御装置とは、紡機の全体の駆動制御を行う制御装置を意味する。
【0009】
この発明では、機台に設けられた各リングプレートに、糸検出ユニットが設けられており、各リングプレートと対応する錘の糸の状態は、錘毎に設けられた糸センサの検知部の検出信号に基づいて判断部で判断される。そして、判断部から各錘の糸の状態に関する情報が糸の状態情報信号として主制御装置に送信される。判断部から主制御装置への糸の状態情報信号の伝送は、隣り合う前記リングプレート
の互いに対向する各端部において、一方の端部に設けられた信号送信部と
、他方の端部に設けられた信号受信部とにより非接触で行われるため、隣り合うリングプレートの糸検出ユニット間を接続する信号配線が不要になる。したがって、リングプレートの取り外し時に、糸検出ユニット間の信号配線の取り外しや、コネクタの接続解除が不要になる。さらに、信号送信部と信号受信部との距離が比較的短いため、ノイズによる誤動作が生じ難い。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記信号送信部は送信コイルを備え、前記信号受信部は受信コイルを備え、前記信号送信部と前記信号受信部とは、前記送信コイルと前記受信コイルとの間の電磁誘導により信号伝送を行う。信号送信部及び信号受信部間の糸の状態情報信号の伝送を非接触で行う方法として、電磁誘導や光あるいは静電誘導等を利用する方法があるが、光や静電誘導を利用する方法は、風綿の付着等による影響を受け易い。しかし、電磁誘導を利用する方法では、光や静電誘導を利用する方法と異なり、電送部位への風綿の付着等による伝達機能の低下を避けることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記信号送信部は、送信すべき元のパルス信号を各パルスの立ち上がり及び立ち下がりに対応して元のパルス信号のパルス幅に比べて極めて短いパルスが存在するパルス信号に変換するとともに、前記変換後のパルス信号に基づいて前記送信コイルに電流を流し、前記信号受信部は、前記受信コイルで受信したパルス信号を復号する。
【0012】
電磁誘導を使った信号伝達技術の主な例としてパルストランスが挙げられるが、パルストランスと同様の信号送信を、隣り合うリングプレート上に設けられた非接触の対向したコイルで行う場合、コイル間のギャップがネックとなり高いインダクタンスが得られず、低周波伝送特性が不足する。そこで、十分なインダクタンスを得るために大きなコイルを用意するか、信号周波数を高くする必要があるが、コイルを大きくすることは装置の大きさの制約から実装が困難である。また、信号周波数を高くする場合は、使用部品への制約増加によるコストアップや通信の信頼性確保が課題となる。
【0013】
この発明では、送信すべき元のパルス信号がパルス幅の大きなパルス信号であっても、信号送信部が、送信すべき元のパルス信号を各パルスの立ち上がり及び立ち下がりに対応して元のパルス信号のパルス幅に比べて極めて短いパルスが存在するパルス信号に変換するとともに、変換後のパルス信号に基づいて送信コイルに電流を流す。そして、信号受信部は、受信コイルで受信したパルス信号を元の信号に復号する。したがって、送信コイルや受信コイルを大きくしたり、あるいは送信すべき元の信号の周波数を高くしたりしなくても、送信コイルと受信コイルとの間でパルス信号の伝送が良好に行われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機台にリングプレートが複数設けられた紡機において、リングプレートの取り外し時に、糸検出ユニット間の信号配線の取り外しが不要で、ノイズによる誤動作が生じ難い紡機の糸検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を紡機としてのリング精紡機の糸切れ検出装置に具体化した一実施形態を
図1〜
図5にしたがって説明する。
リング精紡機は、機台の左右両側にリングプレートが隣接して複数、一列に設けられている。リングプレートは、組み付け性の観点から24錘単位で分割されており、例えば、480錘の機台であれば片側にそれぞれ10個のリングプレートが設けられており、960錘の機台であれば片側にそれぞれ20個のリングプレートが設けられている。
【0017】
図1(a)に示すように、リングプレート11にはリング12が一定間隔で固定されている。
図2に示すように、各リング12のリングフランジ12a上にはトラベラ13が摺動可能に取り付けられている。
【0018】
各リングプレート11には、錘毎に設けられた糸センサ14と、糸センサ14の検出信号に基づいて各錘の糸の状態を判断する判断部としてのCPU15(
図3に図示)とを備えた糸検出ユニット16がそれぞれ設けられている。即ち、糸検出ユニット16は、24個の糸センサ14の検知部14aの検出信号をCPU15で処理して各錘の糸の状態(この実施形態では糸切れの有無)を判断する。CPU15は、リングプレート11の前側に設けられた制御基板17に設けられている。なお、リングプレート11の前側は
図1(a)における下側で、後側は
図1(a)における上側である。また、この実施形態では、制御基板17はリングプレート11に直接取り付けられずに、リングプレート11の前壁11aに固定されるとともにリングプレート11に沿って延びる収容部18a(
図3に図示)を備えた支持部材18に支持されている。
【0019】
糸センサ14は、給電を必要とせずに検出信号を出力可能な構成である。詳述すると、
図2に示すように、糸センサ14は、トラベラ13を検知する検知部14aと、検知部14aを収容するケース19とを備えている。ケース19は、検知部14aが固定された状態でリングプレート11に固定される取り付け部19aと、検知部14aや取り付け具20を覆うように取り付け部19aに固定されるカバー19bとを備えている。カバー19bは非磁性材料、例えば、ステンレスや樹脂で形成されている。糸センサ14は、特許文献1に記載されたものと同様の構成である。取り付け部19aは、リングプレート11に形成された取り付け孔11b及び取り付け部19aに形成された孔19cを貫通する取り付け具20を介してリングプレート11に取り付けられている。取り付け具20は、中心に孔が形成されたボルトで構成され、ナットと協働してケース19をリングプレート11に固定する。
【0020】
検知部14aは、磁性材料製の磁気ヨークと、円板状の永久磁石と、磁気ヨークに巻回されたピックアップコイル(いずれも図示せず)とが樹脂にてモールドされた状態に構成され、ピックアップコイルに電気的に接続されたフレキシブル配線21が延出されている。
図3に示すように、フレキシブル配線21の端部にはコネクタ21aが設けられている。検知部14aの永久磁石のN極からS極に向かう磁束により、リングプレート11、リング12、磁気ヨークを通る磁気回路が形成されており、ピックアップコイルは、磁性材料製のリング12上を走行する磁性材料製のトラベラ13が磁気回路を横切ることによる電磁誘導作用によりトラベラ13の走行を検知する。
【0021】
制御基板17には各糸センサ14の検知部14aからの信号をCPU15に導くプリント配線回路(図示せず)が設けられ、そのプリント配線回路は、
図3に示すように、コネクタ21aと接合可能なコネクタ22aを備えたフレキシブル配線22に接続されている。そして、各糸センサ14の検知信号がCPU15に入力可能になっている。
【0022】
各糸検出ユニット16のCPU15は、各糸センサ14の検知信号の処理結果を主制御装置23(
図1(a)に図示)に送るようになっている。CPU15から主制御装置23への糸の状態情報信号の伝送は、隣り合うリングプレート11間に設けられた信号送信部31と信号受信部32とにより非接触で行われる。主制御装置23は、精紡機の全体の駆動制御を行う制御装置であり、予め入力された紡出条件に基づいて精紡機の各駆動部に制御信号を出力し、各錘の紡出糸の状態を各糸検出ユニット16のCPU15から入手して、精紡機が所定の紡出状態となるように各駆動部を制御する。
【0023】
図1(b)に示すように、各リングプレート11には、隣り合うリングプレート11間で糸の状態情報信号の伝送を非接触で行う信号送信部31と信号受信部32とを備えている。但し、主制御装置23から最も離れたリングプレート11は、信号送信部31のみを備えている。
【0024】
信号送信部31は、差動ドライバ33及び送信コイル34を備えており、制御部35から出力される送信すべき元のパルス信号を変換して信号受信部32へ送信する。信号受信部32は、受信コイル36、レシーバ回路37及びSRラッチ回路(セット・リセットラッチ回路)38を備えており、信号送信部31から変換されて送信されたパルス信号を受信し、受信したパルス信号を元のパルス信号に復号して、制御部35に出力する。
【0025】
送信コイル34は、リングプレート11の主制御装置23に近い側に設けられ、受信コイル36は、リングプレート11の主制御装置23から遠い側に設けられており、この実施形態では、送信コイル34が
図1(b)において、リングプレート11の右端に配置され、受信コイル36はリングプレート11の左端に配置されている。
【0026】
制御部35は、自身が装備されたリングプレート11の各糸センサ14の糸検出信号に基づく糸の状態情報信号の他に、自身が装備されたリングプレート11に隣接し、かつ主制御装置23から遠い側のリングプレート11に装備された制御部35が主制御装置23へ送信した糸の状態情報信号も主制御装置23へ送信するようになっている。そのため、主制御装置23に近いリングプレート11に装備された制御部35ほど、信号送信部31を介して送信する送信データが多くなる。なお、この実施形態では、制御部35はCPU15の一部を構成している。
【0027】
次に差動ドライバ33について説明する。差動ドライバ33は、入力端子33in及びイネーブル端子33enと、出力端子33outとを備えており、出力端子33outに送信コイル34が接続されている。制御部35から出力される送信すべき元の信号が入力端子33inに入力され、制御部35から出力される所定のパルス列で構成されるパルス信号がイネーブル端子33enに入力される。そして、イネーブル端子33enに入力されるパルス列がHighのときだけ、出力端子33outに接続された送信コイル34に、正又は負の電流が流れるようになっている。
【0028】
詳述すると、差動ドライバ33は、例えば、
図4に示すように、電源Vccにpnp型トランジスタからなる第1のトランジスタTr1のエミッタが接続され、第1のトランジスタTr1のベースがイネーブル端子33enに接続されている。第1のトランジスタTr1のコレクタは、それぞれpnp型トランジスタからなる第2のトランジスタTr2及び第3のトランジスタTr3のエミッタに接続されている。第2のトランジスタTr2のコレクタは、npn型トランジスタからなる第4のトランジスタTr4のコレクタと、出力端子33outに接続されている。第3のトランジスタTr3のコレクタは、npn型トランジスタからなる第5のトランジスタTr5のコレクタと、出力端子33outに接続されている。第4のトランジスタTr4及び第5のトランジスタTr5のエミッタはそれぞれグランドGNDに接続されている。第2のトランジスタTr2及び第4のトランジスタTr4のベースには、入力端子33inがNOTゲートを介してそれぞれ接続され、第3のトランジスタTr3及び第5のトランジスタTr5のベースには、入力端子33inがそれぞれ直接接続されている。
【0029】
次にレシーバ回路37について説明する。レシーバ回路37は、受信コイル36に電流が流れていない状態ではSRラッチ回路38のセットポートS及びリセットポートRに対してLow(0)の信号を出力する。レシーバ回路37は、元のパルス信号の立ち上がり時に受信コイル36に流れるパルス電流に基づいて、SRラッチ回路38のセットポートSにHigh(1)の信号を、リセットポートRにLow(0)の信号を出力する。また、元のパルス信号の立ち下がり時に受信コイル36に流れるパルス電流に基づいて、SRラッチ回路38のリセットポートRにHigh(1)の信号を、セットポートSにLow(0)の信号を出力するようになっている。
【0030】
次に、前記のように構成された糸切れ検出装置の作用を説明する。
検知部14aに内蔵された永久磁石の磁化作用により、リングプレート11、リング12及び磁気ヨークに、永久磁石のN極からS極に向かう磁束により構成される磁気回路が形成される。紡出運転時にスピンドル(図示せず)の回転に伴って管糸(図示せず)が回転すると、糸切れ状態でなければトラベラ13が管糸の回転速度に対応した速度でリングフランジ12a上を走行する。そして、トラベラ13がリングフランジ12a上を1回転するたびに1回の割合で磁気回路を横切り、検知部14aに内蔵されたピックアップコイルの両端にはトラベラ13の回転に同期したパルス電圧が現れる。また、糸切れ状態ではピックアップコイルからトラベラ13の回転に同期したパルス電圧は出力されない。
【0031】
各リングプレート11のCPU15は、24個の検知部14aからの出力信号を順次入力して、パルス電圧が出力されていれば正常紡出状態と判断し、パルス電圧が出力されなければ糸切れと判断する。各制御基板17に設けられたCPU15は、予め設定された所定時間毎に糸切れ錘の有無及び糸切れ錘の位置(錘番号)を糸の状態情報信号として、制御部35、信号送信部31及び信号受信部32を介して主制御装置23に送信する。主制御装置23はCPU15の糸の状態情報信号に基づいて各錘の紡出状態を判断する。
【0032】
主制御装置23に最も近い位置に配置されたリングプレート11上に装備されたCPU15の糸の状態情報信号以外は、その間に存在するリングプレート11上に装備された各信号受信部32、各制御部35及び各信号送信部31を介して主制御装置23に最も近い位置に配置されたリングプレート11上に装備されたCPU15に送信される。主制御装置23に最も近い位置に配置されたリングプレート11上に装備されたCPU15は、自身が装備されたリングプレート11の各糸センサ14の糸検出信号に基づく糸の状態情報信号及び送信されてきた他のCPU15の糸の状態情報信号を有線または無線により主制御装置23に送信する。
【0033】
各CPU15から制御部35に送られる糸の状態情報信号は、
図5に元の信号として図示されているように、広い幅のパルス信号である。制御部35は、糸の状態情報信号を差動ドライバ33の入力端子33inへ出力する。また、制御部35は、所謂ワンショットパルス機能を有し、糸の状態情報信号である元のパルス信号の立ち上がり及び立ち下がり毎に元のパルス信号のパルス幅より極めて短い幅のパルスを有するパルス列の信号に変換して、そのパルス列の信号を差動ドライバ33のイネーブル端子33enへ出力する。
【0034】
差動ドライバ33は、入力端子33in及びイネーブル端子33enに入力される信号に基づいて
図4に示す各トランジスタが動作する。
図5に示すように、入力端子33inに元の信号のHigh部分が入力されている状態では、第2のトランジスタTr2及び第5のトランジスタTr5がオンになり、第3のトランジスタTr3及び第4のトランジスタTr4がオフになる。しかし、元の信号の立ち上がり時あるいは立ち下がり時にしかイネーブル端子33enにパルスが入力されないため、それ以外のときは第1のトランジスタTr1はオフに保持され、送信コイル34に電流は流れない。
【0035】
元のパルス信号の立ち下がり時には、第3のトランジスタTr3及び第4のトランジスタTr4がオンになり、第2のトランジスタTr2及び第5のトランジスタTr5がオフになる。また、イネーブル端子33enにパルスが入力されて第1のトランジスタTr1がオンになる。その結果、電源Vccから電流が、第1のトランジスタTr1、第3のトランジスタTr3、送信コイル34、第4のトランジスタTr4、グランドGNDの経路で流れ、電流は送信コイル34を
図4において、下側から上側に向かって流れる。この向きの電流を負とする。したがって、
図5に示すように、送信側コイル電流は負になる。
【0036】
元のパルス信号の立ち上がり時には、第2のトランジスタTr2及び第5のトランジスタTr5がオンになり、第3のトランジスタTr3及び第4のトランジスタTr4がオフになる。また、イネーブル端子33enにパルスが入力されて第1のトランジスタTr1がオンになる。その結果、電源Vccから電流が、第1のトランジスタTr1、第2のトランジスタTr2、送信コイル34、第5のトランジスタTr5、グランドGNDの経路で流れ、電流は送信コイル34を
図4において、上側から下側に向かって流れる。即ち、送信コイル34に正の電流が流れる。
【0037】
送信コイル34にパルス電流が流れる間、電磁誘導で受信コイル36に電流が流れる。その結果、
図5に示すように、元の信号の立ち上がり時及び立ち下がり時に送信コイル34に電流がパルス的に流れ、その電流による電磁誘導によって受信コイル36にパルス的に電流が流れる状態になる。
【0038】
この実施形態では、元のパルス信号の立ち上がり時と元のパルス信号の立ち下がり時とに送信コイルに流れる電流に対応して、受信コイルに極めて短時間に電流が流れ、電流の向きは、元のパルス信号の立ち上がり時と立ち下がり時とで逆になる。そして、レシーバ回路37は、受信コイル36に接続されるとともに、受信コイル36に元のパルス信号の立ち上がり時の時点でパルス電流が流れる時に、SRラッチ回路38のセットポートにセット信号を出力し、受信コイル36に元のパルス信号の立ち下がり時の時点でパルス電流が流れる時に、SRラッチ回路38のリセットポートにリセット信号を出力する。その結果、SRラッチ回路38のQポートの出力は、元の信号の立ち上がり時にHigh(1)になり、次の立ち下がり時まではHigh(1)に保持され、次の立ち下がり時にLow(0)になる。そして、次の立ち上がり時まではLow(0)に保持される。したがって、SRラッチ回路38のQポートの出力を使用することにより、受信コイル36に流れる電流に基づいて元のパルス信号に復号することができる。
【0039】
電磁誘導を使った信号伝達技術の主な例としてパルストランスが挙げられるが、パルストランスと同様の信号送信を、隣り合うリングプレート11上に設けられた非接触の対向したコイルで行う場合、コイル間のギャップがネックとなり高いインダクタンスが得られず、パルス幅の伝送特性が不足する。そこで、十分なインダクタンスを得るために大きなコイルを用意するか、信号周波数を高くする必要があるが、コイルを大きくすることは装置の大きさの制約から実装が困難である。また、信号周波数を高くする場合は、使用部品への制約増加によるコストアップや通信の信頼性確保が課題となる。
【0040】
しかし、この実施形態では、信号送信部31の送信コイル34は、糸の状態情報信号として幅の広いパルス信号からなる元の信号をそのまま伝送するのではなく、元のパルス信号の立ち上がり時と立ち下がり時とに、極めて短いパルス幅の高周波パルスを有するパルス列に変換して送信する。そのため、コイルを大きくしたり、信号周波数を高くしたりすることなく、糸の状態情報信号を伝送することができる。
【0041】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)糸検出装置は、各リングプレート11に、錘毎に設けられた検知部14aを有する糸センサ14と、糸センサ14の検出信号に基づいて各錘の糸の状態を判断する判断部としてのCPU15とを備えた糸検出ユニット16がそれぞれ設けられている。CPU15から主制御装置23への糸の状態情報信号の伝送は、隣り合うリングプレート11間に設けられた信号送信部31と信号受信部32とを介して非接触で行われる。
【0042】
そのため、隣り合うリングプレート11の糸検出ユニット16間を接続する信号配線が不要になる。したがって、リングプレート11の取り外し時に、糸検出ユニット16間の信号配線の取り外しや、コネクタの接続解除が不要になり、そのための工数を削除することができる。また、糸検出ユニット16間の信号配線の接続、取り外しによる損傷や劣化故障の可能性がない。さらに、信号送信部31と信号受信部32との距離が比較的短いため、ノイズによる誤動作が生じ難い。
【0043】
(2)信号送信部31は送信コイル34を備え、信号受信部32は受信コイル36を備え、信号送信部31と信号受信部32とは、送信コイル34と受信コイル36との間の電磁誘導により信号伝送を行う。信号送信部31及び信号受信部32間の糸の状態情報信号の伝送を非接触で行う方法として、電磁誘導や光あるいは静電誘導等を利用する方法があるが、光や静電誘導を利用する方法は、風綿の付着等による影響を受け易い。しかし、電磁誘導を利用する方法では、光や静電誘導を利用する方法と異なり、電送部位への風綿の付着等による伝達機能の低下を避けることができる。
【0044】
(3)信号送信部31は、送信すべき元のパルス信号を各パルスの立ち上がり及び立ち下がりに対応して元のパルス信号のパルス幅に比べて極めて短いパルスが存在するパルス信号に変換するとともに、変換後のパルス信号に基づいて送信コイルに電流を流し、信号受信部は、受信コイルで受信したパルス信号を復号する。
【0045】
この実施形態では、送信すべき元のパルス信号がパルス幅の大きなパルス信号であっても、信号送信部31が、送信すべき元のパルス信号を各パルスの立ち上がり及び立ち下がりに対応して元のパルス信号のパルス幅に比べて極めて短いパルスが存在するパルス信号に変換するとともに、変換後のパルス信号に基づいて送信コイル34に電流を流す。そして、信号受信部32は、受信コイル36で受信したパルス信号を元の信号に復号する。したがって、送信コイル34や受信コイル36を大きくしたり、あるいは送信すべき元のパルス信号の周波数を高くしたりしなくても、送信コイル34と受信コイル36との間でパルス信号の伝送が良好に行われる。そのため、コスト、大きさの両面で実装が容易になる。また、送信コイル34を駆動する電流が流れる時間が短いため、消費電力の低減にもなる。
【0046】
(4)信号送信部31は、差動ドライバ33を有し、差動ドライバ33の入力端子33inに元のパルス信号が入力され、差動ドライバ33のイネーブル端子33enには、元のパルス信号の立ち上がり時と元のパルス信号の立ち下がり時とに対応して、元のパルス信号のパルス幅よりパルス幅が極めて短い高周波パルス信号が入力される。そして、差動ドライバ33から元のパルス信号の立ち上がり時と立ち下がり時毎に、高周波パルス信号と同じパルス幅のパルス信号が送信コイル34に出力される。その結果、送信コイル34には元のパルス信号の立ち上がり時と立ち下がり時とで逆方向に短時間電流が流れる。したがって、送信コイル34や受信コイル36を大きくしたり、あるいは送信すべき元の信号の周波数を高くしたりしなくても、送信コイル34と受信コイル36との間でパルス信号の伝送が良好に行われる。
【0047】
(5)信号受信部32は、レシーバ回路37とSRラッチ回路38とを備えている。レシーバ回路37は、受信コイル36に接続されるとともに、受信コイル36に元のパルス信号の立ち上がり時の時点でパルス電流が流れる時に、SRラッチ回路38のセットポートにセット信号を出力し、受信コイル36に元のパルス信号の立ち下がり時の時点でパルス電流が流れる時に、SRラッチ回路38のリセットポートにリセット信号を出力する。したがって、受信コイル36に流れる電流に基づいて元のパルス信号に復号することができる。
【0048】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 判断部としてのCPU15から主制御装置23への糸の状態情報信号の伝送は、隣り合うリングプレート11間に設けられた信号送信部31と信号受信部32とを介して非接触で行われる構成であればよく、送信コイル34及び受信コイル36を用いて電磁誘導を利用する構成に限らない。例えば、光通信や静電誘導あるいは一般的な無線を採用してもよい。
【0049】
○
図4で示す差動ドライバ33を構成するトランジスタはバイポーラトランジスタに限らず、例えばMOSFETを使用してもよい。
○ 信号受信部32が備える復号用のラッチ回路は、SRラッチ回路38に限らず、他のラッチ回路であってもよい。
【0050】
○ 糸検出装置は糸センサ14の検出信号に基づいて糸切れの有無のみを判断するものに限らず、糸切れの有無の他に甘撚りか否かをも判断可能なものであってもよい。甘撚りか否かの判断を行う場合は、糸センサ14からトラベラ13の回転数に対応して出力されるパルス信号の単位時間当たりのパルス数をカウントして、トラベラ13の単位時間当たりの回転数を算出する。そして、その回転数と紡出速度とから当該錘の紡出糸の撚数を演算し、設定された撚数と比較することにより甘撚りか否かの判断を行う。
【0051】
○ 給電を必要とせずに検出信号を出力可能な糸センサ14の構成は、例えば、検知部14aを、磁性材料製の磁気ヨークと、磁気ヨークに巻回されたピックアップコイルとが樹脂にてモールドされた構成とし、トラベラ13を永久磁石製としてもよい。この場合、トラベラ13がリングフランジ12a上を走行するのに伴うピックアップコイルとの距離の変化による電磁誘導作用による検出信号の変化から、CPU15は糸切れの有無や甘撚りか否かの判断を行う。
【0052】
○ 糸センサ14は、給電を必要とせずに検出信号を出力可能な構成に限らず、給電を必要とするものであってもよい。例えば、投受光型の光センサを用いた構成や、静電誘導型のセンサであってもよい。
【0053】
○ 判断部としてのCPU15と、制御部35とをそれぞれ別に設けてもよい。
○ 糸センサ14はリング12毎に設けられる構成に限らず、錘毎に設けられた検知部14aを有する構成であればよい。例えば、2個の検知部14aを備えた糸センサ14を2個のリング12に対して1個の割合で設けたり、糸センサ14として検知部14aを3個以上備えた構成を採用して、3個以上のリング12に対して1個の割合で設けたりしてもよい。
【0054】
○ 支持部材18を設けずに、制御基板17をリングプレート11の前壁11aに形成したねじ孔に螺合するねじやボルトで直接取り付けたり、リングプレート11の前壁11aに形成した孔を貫通するねじやボルト及びナットで直接取り付けたりしてもよい。
【0055】
○ 1個のリングプレート11に設けられるリング12の数は24個に限らず、24個より多くても少なくてもよい。
○ 1個のリングプレート11に設けられた糸センサ14の全ての検知部14aの検知信号を1個の制御基板17に設けられた1個のCPU15で処理する代わりに、複数の制御基板17に設けられた複数のCPU15で処理する構成にしてもよい。
【0056】
○ 各糸センサ14に対応するCPU15では、糸の状態を判断せずに糸の状態を示す情報を取り込み送る機能にとどめ、別に設置した制御装置又は紡績機の制御機能に取り込んで糸切れなど糸の状態を判断しても良い。
【0057】
○ 糸センサ14は取り付け部19aと、取り付け部19a及び検知部14aを覆うカバー19bとを備える構成に限らない。例えば、カバー19bを設けずに、検知部14aと取り付け部とが一体に形成された構成としてもよい。
【0058】
○ リングプレート11は断面逆U字状に限らず、例えば、断面クランク形状として、糸センサ14をリングプレート11の後壁に取り付ける構成としてもよい。
○ 各リングプレート11上のCPU15や制御部35への電力の伝送は非接触電力伝送で行っても、電線を用いた電力伝送で行ってもよい。電力の伝送が電線を使用する場合は、リングプレート11の取り外し時に、電線の取り外し及びそのコネクタの切り離しが必要になるが、非接触電力伝送が使用されている場合は、リングプレート11の取り外し時に、信号配線及び電線の取り外し及びそのコネクタの切り離しが不要になる。
【0059】
○ 発明が適用される紡機はリング精紡機に限定されるものではなく、機台にリングプレート11が複数設けられた紡機であればよく、例えば、リング撚糸機に本発明を適用してもよい。
【0060】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項3に記載の発明において、前記信号送信部は、差動ドライバを有し、前記差動ドライバの入力端子に前記元のパルス信号が入力され、前記差動ドライバのイネーブル端子には前記元のパルス信号のパルス幅より小さな高周波パルス信号が、前記元のパルス信号の立ち上がり時と前記元のパルス信号の立ち下がり時とに入力され、前記差動ドライバから前記元のパルス信号の立ち上がり時と前記元のパルス信号の立ち下がり時とに対応して前記高周波パルス信号と同じパルス幅のパルス信号が前記送信コイルに出力される。
【0061】
(2)請求項3又は前記技術的思想(1)に記載の発明において、前記信号受信部は、レシーバ回路とSRラッチ回路とを備え、前記レシーバ回路は、前記受信コイルに接続されるとともに、前記受信コイルに元のパルス信号の立ち上がり時と立ち下がり時とのいずれか一方の時点でパルス電流が流れる時に、前記SRラッチ回路のセットポートにセット信号を出力し、他方の時点でパルス電流が流れる時に、前記SRラッチ回路のリセットポートにリセット信号を出力する。