(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導通パスの少なくとも一つは、前記ガラスコート層の厚み方向に沿って配された複数の前記金属粉が互いに接触することで形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
前記ガラスコート層の厚み方向に沿った断面において、前記導通パスを構成している前記金属粉の表面の断面形状が非直線状である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、焼結金属膜を形成する際に用いる導電性ペーストは粘度が高いため、焼結金属膜の厚みが厚くなる。例えば、特許文献1では、第1および第2の電極層(焼結金属膜)の厚みが約50μm〜90μmとなることが記載されている。
【0005】
また、外部電極を焼結金属膜で形成した場合には、導電性ペーストを焼き付ける際の焼付け温度が高い。このため、セラミック素体に含まれるセラミック成分と導電性ペースト中のガラス成分とが相互拡散し、セラミック素体と焼結金属膜との界面に反応層が形成されてしまうことがある。この反応層が形成された部分からめっき液が侵入し、セラミック素体の機械的強度が低下するといった問題や耐湿信頼性が劣化するという問題がある。さらに、焼付け温度が高いと、焼結金属膜の表面にガラス成分が析出されてガラス浮きが発生し、焼結金属膜の表面にめっき膜を形成しにくくなるという問題点もある。
【0006】
そこで、特許文献2のように、外部電極をめっき膜のみで形成する方法が提案されている。外部電極をめっき膜のみで形成した場合は、例えば導電性ペーストの焼付けにより形成された外部電極を設けた場合と比較して、外部電極厚みを薄く形成することができる。
【0007】
また、めっき液にはガラス成分が含まれないため、セラミック素体とめっき膜との界面に反応層は形成されない。よって、反応層が形成されることによる機械的強度の低下や耐湿信頼性の劣化といった問題が生じにくい。さらに、ガラス浮きの問題も生じず、めっき膜を形成し難いという問題が生じない。
【0008】
しかし、外部電極をめっきにより形成する場合、セラミック素体を直接めっき液に浸漬する必要があるため、めっき液が内部電極の露出部からセラミック素体内に浸入するという問題がある。その結果、耐湿性が低下する場合がある。
【0009】
また、外部電極をめっき膜のみで形成した場合、めっき膜とセラミック素体とは化学的に結合しておらず、物理的な結合しかしていないため、めっき膜とセラミック素体との密着性が低下するという問題がある。その結果、セラミック電子部品の使用時において、めっき膜とセラミック素体との間から水分等が進入し易くなり耐湿性が低下するという場合がある。
【0010】
本発明は、外部電極の厚みを薄く保ちつつ耐湿性に優れたセラミック電子部品を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るセラミック電子部品は、セラミック素体と、内部電極と、ガラスコート層と、電極端子とを備える。内部電極は、セラミック素体内に設けられており、端部がセラミック素体の表面に露出している。ガラスコート層は、セラミック素体の表面の内部電極が露出した部分の上を覆う。電極端子は、ガラスコート層の直上に設けられている。電極端子は、めっき膜により構成されている。ガラスコート層は、金属粉が分散したガラス媒質からなる。内部電極は、ガラスコート層を貫通しない範囲でセラミック素体の表面からガラスコート中に突出している。金属粉は、内部電極と電極端子とを電気的に接続している導通パスを形成している。
【0012】
本発明に係るセラミック電子部品のある特定の局面では、内部電極のセラミック素体の表面からの突出部の長さが、ガラスコート層の厚みの50%以下である。
【0013】
本発明に係るセラミック電子部品の別の特定の局面では、内部電極のセラミック素体の表面からの突出部の長さが、ガラスコート層の厚みの34%以下である。
【0014】
本発明に係るセラミック電子部品の他の特定の局面では、導通パスの少なくとも一つは、ガラスコート層の厚み方向に沿って配された複数の金属粉が互いに接触することで形成されている。
【0015】
本発明に係るセラミック電子部品のさらに他の特定の局面では、金属粉の主成分は、内部電極に主成分として含まれる金属とは異なる。
【0016】
本発明に係るセラミック電子部品のさらに別の特定の局面では、金属粉のコア部はCuからなる。
【0017】
本発明に係るセラミック電子部品のまた他の特定の局面では、ガラスコート層の厚みが1μm〜10μmである。
【0018】
本発明に係るセラミック電子部品のまた別の特定の局面では、ガラスコート層の厚み方向に沿った断面において、導通パスを構成している金属粉の表面の断面形状が非直線状である。
【0019】
本発明に係るセラミック電子部品のさらにまた他の特定の局面では、導通パスは、相対的に細い部分と、相対的に太い部分とを、それぞれ複数有する。
【0020】
本発明に係るセラミック電子部品のさらにまた別の特定の局面では、めっき膜のガラスコート層に接した部分がCuめっき膜またはNiめっき膜により構成されている。
【0021】
本発明に係るセラミック電子部品のまたさらに他の特定の局面では、ガラスコート層におけるガラスの割合が、35体積%以上である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電極端子の厚みを薄く保ちつつ、耐湿性に優れたセラミック電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0025】
また、実施形態などにおいて参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率などが異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率などは、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0026】
図1は、本実施形態に係るセラミック電子部品の略図的斜視図である。
図2は、本実施形態に係るセラミック電子部品の略図的側面図である。
図3は、
図1の線III−IIIにおける模式的断面図である。
図4は、
図3の線IVで固まれた部分を拡大した略図的断面図である。
図5は、
図3の線Vで固まれた部分を拡大した略図的断面図である。
図6は、本実施形態において作製したセラミック電子部品のガラスコート層と第1の電極端子の模式的断面図である。
図7は、本実施形態において作製したセラミック電子部品のガラスコート層と第1の電極端子との界面部分の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。なお、
図7は、ガラスコート層の状態をわかりやすくするために、ガラスコート層のみを形成した際の写真である。
図8は、
図3の線VIII−VIIIにおける略図的断面図である。
【0027】
まず、
図1〜
図8を参照しながら、セラミック電子部品1の構成について説明する。
【0028】
図1〜
図3及び
図8に示すように、セラミック電子部品1は、セラミック素体10を備えている。セラミック素体10は、セラミック電子部品1の機能に応じた適宜のセラミック材料からなる。具体的には、セラミック電子部品1がコンデンサである場合は、セラミック素体10を誘電体セラミック材料により形成することができる。誘電体セラミック材料の具体例としては、例えば、BaTiO
3、CaTiO
3、SrTiO
3、CaZrO
3などが挙げられる。なお、セラミック素体10が誘電体セラミック材料を含む場合、セラミック素体10には、所望するセラミック電子部品1の特性に応じて、上記セラミック材料を主成分として、例えば、Mn化合物、Mg化合物、Si化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物、希土類化合物などの副成分を適宜添加してもよい。
【0029】
セラミック素体10の形状は特に限定されない。本実施形態では、セラミック素体10は、直方体状に形成されている。
図1〜
図3に示すように、セラミック素体10は、長さ方向L及び幅方向Wに沿って延びる第1及び第2の主面10a,10bを有する。セラミック素体10は、
図1、
図2及び
図8に示すように、厚み方向T及び長さ方向Lに沿って延びる第1及び第2の側面10c,10dを有する。また、
図2、
図3及び
図8に示すように、セラミック素体10は、厚み方向T及び幅方向Wに沿って延びる第1及び第2の端面10e,10fを備えている。
【0030】
なお、本明細書において、「直方体状」には、角部や稜線部が丸められた直方体が含まれるものとする。すなわち、「直方体状」の部材とは、第1及び第2の主面、第1及び第2の側面並びに第1及び第2の端面とを有する部材全般を意味する。また、主面、側面、端面の一部または全部に凹凸などを有していてもよい。
【0031】
セラミック素体10の寸法は、特に限定されないが、セラミック素体10は、セラミック素体10の厚み寸法をD
T、長さ寸法をD
L、幅寸法をD
Wとしたときに、D
T<D
W<D
L、(1/5)D
W≦D
T≦(1/2)D
W、または、D
T<0.3mmが満たされるような薄型のものであってもよい。具体的には、0.05mm≦D
T<0.3mm、0.4mm≦D
L≦1mm、0.3mm≦D
W≦0.5mmであってもよい。
【0032】
図3及び
図8に示すように、セラミック素体10の内部には、略矩形状の複数の第1及び第2の内部電極11,12が厚み方向Tに沿って等間隔に交互に配置されている。第1及び第2の内部電極11,12の端部11a,12aは、セラミック素体10の表面に露出している。具体的には、第1の内部電極11の一方側の端部11aは、セラミック素体10の第1の端面10eに露出している。第2の内部電極12の一方側の端部12aは、セラミック素体10の第2の端面10fに露出している。
【0033】
第1及び第2の内部電極11,12のそれぞれは、第1及び第2の主面10a、10bとほぼ平行である。第1及び第2の内部電極11,12は、厚み方向Tにおいて、セラミック層10gを介して、互いに対向している。
【0034】
なお、セラミック層10gの厚さは、特に限定されない。セラミック層10gの厚さは、例えば、0.5μm〜10μmとすることができる。第1及び第2の内部電極11,12のそれぞれの厚さも、特に限定されない。第1及び第2の内部電極11,12のそれぞれの厚さは、例えば、0.2μm〜2μmとすることができる。
【0035】
第1及び第2の内部電極11,12は、適宜の導電材料により構成することができる。第1及び第2の内部電極11,12は、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属や、これらの金属の一種を含む例えばAg−Pd合金などの合金により構成することができる。
【0036】
図4に示すように、セラミック素体10の表面の上には、ガラスコート層15が設けられている。ガラスコート層15は、セラミック素体10の表面の第1及び第2の内部電極11,12が露出した部分の上を覆っている。具体的には、ガラスコート層15は、セラミック素体10の第1及び第2の端面10e,10fの上と、第1及び第2の主面10a及び10bの長さ方向Lにおける両端部分の上と、第1及び第2の側面10c,10dの長さ方向Lにおける両端部分の上とに設けられている。
【0037】
図5に示すように、内部電極11,12は、ガラスコート層15を貫通しない範囲で、セラミック素体10の表面からガラスコート層15中に突出している。内部電極11,12のセラミック素体10の表面からの突出部11b、12bの長さは、ガラスコート層15の厚みの50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましく、34%以下であることがなお好ましい。突出部11b、12bの長さは、1.7μm以下であることが好ましい。
【0038】
第1及び第2の内部電極11,12がセラミック素体10の表面から突出するメカニズムとしては、以下のメカニズムが考えられる。すなわち、第1及び第2の内部電極11,12の先端にガラスコート層15に含まれる金属が集まってくることによって、第1及び第2の内部電極11,12に含まれる金属とガラスコート層15に含まれる金属粉15aが拡散し始め、第1及び第2の内部電極11,12の先端が合金化することで先端が結晶成長することにより第1及び第2の内部電極11,12がセラミック素体10の表面から突出するものと考えられる。
【0039】
図6及び
図7に示すように、ガラスコート層15は、金属粉15aが分散したガラス媒質15bからなる。ガラスコート層15は、ガラス媒質15bと金属粉15aが固着されて一体化した複合膜である。ガラス媒質15bは、ガラス粉が軟化点以上で熱処理されて溶融した後、凝固して一体化されたものである。よって、ガラス媒質15bは、金属粉15a間の隙間を埋めるように存在している。ガラス媒質15bは、セラミック素体10の表面を覆っている。このガラス媒質15bにより、セラミック電子部品1の耐湿性が向上されている。なお、
図6及び
図7は、ある一断面を示す図面であり、他の断面においてはガラス媒質15bや金属粉15aの見え方が異なる。
【0040】
ガラスコート層15において、ガラス媒質15bの体積含有量は、金属粉15aの体積含有量よりも低くてもよい。ガラスコート層15におけるガラス媒質15bの割合は、35体積%以上であることが好ましく、35体積%〜75体積%であることがより好ましく、40体積%〜57.5体積%であることがさらに好ましい。ガラスコート層15におけるガラス媒質15bの割合が、35体積%未満である場合、ガラスコート層15が存在することによるセラミック電子部品1の耐湿性の向上効果が小さくなる場合がある。また、ガラスコート層15におけるガラス媒質15bの割合が、75体積%を超える場合、ガラスコート層15の直上に第1及び第2の電極端子13,14を形成することが難しくなる場合がある。ガラス媒質15bを構成するガラスは、例えば、B
2O
3及びSiO
2からなる群より選択される1種以上の網目形成酸化物と、Al
2O
3、ZnO、CuO、Li
2O、Na
2O、K
2O、MgO、CaO、BaO、ZrO
2及びTiO
2からなる群より選択される1種以上の網目修飾酸化物とを含むことが好ましい。
【0041】
ガラス媒質15bは、網目修飾酸化物として、ガラスコート層15の金属粉15aと同じ金属の酸化物を含むことが好ましい。これにより、ガラスコート層15中のガラス粉がガラスコート層15中の金属粉15aに濡れやすくなる。
【0042】
ガラス媒質15bは、SiO
2が最も多く含まれていることが好ましい。ガラス全体に占めるSiO
2の割合は35mol%以上であることが好ましい。
【0043】
ガラスコート層15において、金属粉15aは、ガラス媒質15b中に分散している。ガラスコート層15における金属粉15aの割合は、25体積%〜65体積%であることが好ましく、50体積%〜60体積%であることがより好ましい。金属粉15aは、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどの金属や、これらの金属を少なくとも1種含む合金などにより構成される。金属粉15aは、第1及び第2の内部電極11,12に主成分として含まれる金属を主成分として含まないことが好ましい。すなわち、金属粉15aの主成分が、第1及び第2の内部電極11,12の主成分と異なることが好ましい。なお、金属粉15aが、第1及び第2の内部電極11,12の主成分として含まれる金属を含む場合、その金属の割合は、金属粉15aの全体の10体積%以下であることが好ましい。また、金属粉15aのコア部はCuからなることが好ましい。
【0044】
ガラスコート層15は、導電性ペースト層が焼成されてなる、焼結金属及びガラスにより構成された焼結金属膜とは異なるものである。すなわち、ガラスコート層15では、金属粉15aの間を縫って連続したガラス媒質15bが形成されているのに対し、焼結金属膜では金属のマトリクスが形成されている。ガラスコート層15では、金属粉15aのすべてが一体に焼結されている訳ではなく、ガラス媒質15bが金属粉15aの間を繋ぐように存在しているのに対し、
図16の写真に示されるように、焼結金属膜では、ガラスは、金属粉が焼結することにより、焼結金属膜中から、焼結金属膜とセラミック素体との界面にガラス成分が押し出され、焼結金属膜とセラミック素体との界面存在する。また、
図16では確認できないが、金属粉が焼結することにより、焼結金属膜中から焼結金属膜の表面にガラスが押し出され、焼結金属膜の表面にガラスが存在する場合もある。導電性ペースト層が焼成されてなる焼結金属膜では、実質的にすべての金属粉が焼結しており、もはや焼結されていない金属粉は実質的に残存していない。
【0045】
金属粉15aは、ガラスコート層15の厚み方向Tに沿った断面において、球形ではなく、細長形状であることが好ましい。金属粉15aは、ガラスコート層15の厚み方向Tに沿った断面において、鱗片状、扁平状、針状などのフレーク状であることが好ましい。なお、細長形状とは、アスペクト比が3以上であることをいう。
【0046】
金属粉15aのアスペクト比は、3.6以上であることが好ましい。まず、セラミック電子部品1の稜線部から、
図9に示される第1の電極端子13の第3の部分13cの表面の対角を結ぶ線X−Xに向かって研磨し、
図10に示されるようにガラスコート層15の断面を露出させる。次に、
図10に示すようにこの断面を線X−Xの方向に沿って4等分し、その境界の3箇所において、ガラスコート層15を倍率5000倍、加速電圧15kVでSEM観察する。次に、それぞれの箇所におけるSEM観察において、視野30μm×30μm内に含まれる金属粉15aのすべてについて、それぞれの径を露出した断面上で測定し、その中の最大値を長径として選択する。次に、選択した金属粉15aの長径の軸と直交する軸に沿った厚みの最大値を短径として選択する。得られた長径を短径で除して、金属粉15aのアスペクト比を算出する。同様にして、
図10の矢印で示されるように、第2の電極端子14の第3の部分14c側のガラスコート層15においても、金属粉15aのアスペクト比を算出する。第1及び第2の電極端子13,14側の両方のガラスコート層15において算出した合計6つの金属粉15aのアスペクト比の平均値を本発明における金属粉15aのアスペクト比とする。なお、SEM観察において、複数の金属粉15aが、それぞれの長径の方向において接触して、1つの一体的な金属粉15aのように観察される場合、そのような複数の金属粉15aの一体化物全体の長径を1つの金属粉15aの長径とする。
【0047】
金属粉15aの平均粒子径は、0.5μm〜10μmであることが好ましい。なお、本発明において、金属粉15aの平均粒子径は、前述の方法により6つの金属粉のそれぞれの長径及び短径を測定し、それら6つの金属粉の長径と短径とをすべて合計して得られる値の平均値(12で除して得られる値)をいう。
【0048】
金属粉15aは、第1及び第2の内部電極11,12と第1及び第2の電極端子13,14とをそれぞれ電気的に接続している導通パスを形成している。導通パスの少なくとも一つは、ガラスコート層15の厚み方向Tに沿って配された複数の金属粉15aが互いに接触することで形成されている。
【0049】
ガラスコート層15の厚み方向Tの断面において、導通パスを構成している金属粉15aの表面の断面形状は、非直線状であってもよい。導通パスは、相対的に細い部分と、相対的に太い部分とを、それぞれ複数有していてもよい。
【0050】
導通パスを形成している金属粉15aの長径は、ガラスコート層15の厚み以上であることが好ましい。導通パスを形成している金属粉15aの長径は、ガラスコート層15の厚みの1.5倍以上であることがより好ましい。
【0051】
ガラスコート層15の厚みは、1μm〜10μmであることが好ましい。ガラスコート層15の厚みが1μm未満である場合、ガラスコート層15が存在することによるセラミック電子部品1の耐湿性の向上効果が小さくなる場合がある。ガラスコート層15の厚みが10μmを超える場合、ガラスコート層15に含まれるガラスの絶対量が多くなる。そうすると、第1及び第2の内部電極11,12を構成する成分が、ガラスコート層15の溶融したガラスに液相拡散しやすくなる。このような場合、第1及び第2の内部電極11,12の先端が細くなり、第1及び第2の内部電極11,12とセラミック層10gとの間に隙間が生じて、セラミック電子部品1の耐湿性が低下する場合がある。
【0052】
ガラスコート層15の厚みは、セラミック電子部品1の側面を長さ方向Lに沿って、セラミック電子部品1の中央まで断面研磨し、その断面における片側の電極端子の端面中央部に位置するガラスコート層15の厚みを光学顕微鏡を用いて観察することによって測定することができる。
【0053】
第1の電極端子13は、ガラスコート層15の直上に設けられている。第1の電極端子13は、ガラスコート層15に形成された導通パスによって、第1の内部電極11に電気的に接続されている。第1の電極端子13は、第1の主面10aの上に形成されている第1の部分13aと、第2の主面10bの上に形成されている第2の部分13bと、第1の端面10eの上に形成されている第3の部分13cと、第1の側面10cの上に形成されている第4の部分13dと、第2の側面10dの上に形成されている第5の部分13eとを備えている。
【0054】
第2の電極端子14は、ガラスコート層15の直上に設けられている。第2の電極端子14は、ガラスコート層15に形成された導通パスによって、第2の内部電極12に電気的に接続されている。第2の電極端子14は、第1の主面10aの上に形成されている第1の部分14aと、第2の主面10bの上に形成されている第2の部分14bと、第2の端面10fの上に形成されている第3の部分14cと、第1の側面10cの上に形成されている第4の部分14dと、第2の側面10dの上に形成されている第5の部分14eとを備えている。
【0055】
第1及び第2の電極端子13,14は、めっき膜により構成される。めっき膜は、Cu、Ni、Sn、Pd、Au、Ag、Pt、Bi及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、またはこれら金属のうち少なくとも1種の金属を含む合金により構成されていることが好ましい。第1及び第2の電極端子13,14は、それぞれ1層のめっき膜のみにより構成されていてもよいし、2層以上のめっき膜により構成されていてもよい。例えば、Ni−Snの2層構造や、Cu−Ni−Snの3層構造であってもよい。なお、
図6に示すように、本実施形態において、第1及び第2の電極端子13,14は、Cuからなる第1層13p、Niからなる第2層13q、及びSnからなる第3層13rにより構成されている。
【0056】
ガラスコート層15と第1の電極端子13の合計厚みは、15μm〜25μmであることが好ましい。ガラスコート層15と第2の電極端子14との合計厚みは、15μm〜25μmであることが好ましい。
【0057】
次に、本実施形態のセラミック電子部品1の製造方法の一例について説明する。
【0058】
まず、セラミック素体10を構成するためのセラミック材料を含むセラミックグリーンシート20(
図11を参照)を用意する。次に、
図11に示すように、そのセラミックグリーンシート20の上に、導電性ペーストを塗布することにより、導電パターン21を形成する。なお、導電性ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷法などの各種印刷法により行うことができる。導電性ペーストは、導電性微粒子の他に、公知のバインダーや溶剤を含んでいてもよい。
【0059】
次に、導電パターン21が形成されていない複数枚のセラミックグリーンシート20、第1または第2の内部電極11,12に対応した形状の導電パターン21が形成されているセラミックグリーンシート20、及び導電パターン21が形成されていない複数枚のセラミックグリーンシート20をこの順番で積層し、積層方向に静水圧プレスすることにより、マザー積層体を作製する。
【0060】
次に、マザー積層体の上に、仮想のカットラインに沿ってマザー積層体をカッティングすることにより、マザー積層体から複数の生のセラミック積層体を作製する。
【0061】
なお、マザー積層体のカッティングは、ダイシングや押切により行うことができる。生のセラミック積層体に対してバレル研磨などを施し、稜線部や角部を丸めてもよい。
【0062】
次に、生のセラミック積層体の焼成を行う。この焼成工程において、第1及び第2の内部電極11,12が焼成される。焼成温度は、使用するセラミック材料や導電性ペーストの種類により適宜設定することができる。焼成温度は、例えば、900℃〜1300℃とすることができる。
【0063】
次に、ディッピングなどの方法により、焼成後のセラミック積層体の上にガラスペーストを塗布する。次に、ガラスペーストを熱処理することでガラス粉を溶融して一体化させ、それを冷却することでガラス媒質15bを形成し、金属粉15aを固着させることにより、ガラスコート層15を形成する。ガラスコート層15の形成に用いるガラスペーストは、ガラス粉、金属粉15a、バインダー、溶剤などを含んでいる。ここで、ガラス粉は粒径が金属粉15aよりも小さいものを使用することが好ましい。熱処理温度は、ガラス粉が軟化する温度以上の温度で、かつ、金属粉が焼結しない温度であることが好ましい。熱処理温度は、例えば、600℃〜750℃であることが好ましい。熱処理温度を600℃〜750℃とすることにより、ガラスコート層15における第1及び第2の内部電極11,12の突出部11b,12bの長さが2μmを超えることを抑制することができる。熱処理温度が600℃未満である場合、ガラスが軟化しないため、セラミック素体10との接着性が低くなる場合がある。熱処理温度が750℃を超える場合、第1及び第2の内部電極11,12の突出部11b,12bの長さがガラスコート層15の厚みの35%を超えやすくなる。また、熱処理温度が750℃を超える場合、セラミック素体10とガラスコート層15との反応が始まり、ガラスコート層15がなくなる恐れがある。
【0064】
ガラスコート層15における第1及び第2の内部電極11,12の突出部11b,12bの長さが2μmを超えることを抑制する観点から、熱処理の時間(最高温度の保持時間)は5分間〜30分間とすることが好ましい。
【0065】
次に、ガラスコート層15の上にめっきを施すことにより、第1及び第2の電極端子13,14を形成する。以上のようにして、セラミック電子部品1を製造することができる。
【0066】
(実験例1)
次に、本実施形態において、実際にセラミック電子部品1のサンプルを作製した例を以下に示す。
【0067】
焼き後のセラミック素体の寸法(設計値):1.0mm×0.5mm×0.15mm
セラミック材料:BaTiO
3
焼き後のセラミック層の厚み(設計値):5μm
内部電極の材料:Ni
焼き後の内部電極の厚み(設計値):0.6μm
内部電極の合計枚数:45
焼成条件:1200℃で2時間保持
セラミック電子部品の容量:0.47μF
ガラスコート層15の厚み:5μm
セラミック電子部品の定格電圧:4V
ガラスコート層15に含まれる金属粉:Cu粉
Cu粉の平均粒子径:3μm
ガラスペースト中のガラス粉の主成分:ホウケイ酸ガラス
ガラスペースト中のガラスの軟化点:600℃
ガラス粉の平均粒子径:1μm
ガラスペーストの固形分中のCu粉末とガラス粉の比:50体積%/50体積%
熱処理の条件:680℃
めっき膜:ガラスコート層15の上に、Cu膜(厚み6μm)、Ni膜(厚み3μm)、Sn膜(厚み3μm)をこの順に形成。
【0068】
(耐湿負荷試験)
ガラスペーストの熱処理を、680℃で、それぞれ5分間、15分間、30分間、60分間、120分間保持して行い、セラミック電子部品1のサンプルを20個ずつ作製した。各サンプルについて、耐湿負荷試験を次のようにして行った。各サンプルを、共晶半田を用いてガラスエポキシ基板に実装した。その後、各サンプルを、125℃、相対湿度95%RHの高温高湿槽内にて、2V、72時間の条件で耐湿加速試験を行い、絶縁抵抗値(IR値)が、2桁以上低下したものを、耐湿性が劣化したと判断した。
【0069】
また、各サンプルのLT面をW寸の中央部まで断面研磨し、その断面における片側の端面中央部におけるセラミック素体とガラスコート層の界面部分をSEMで観察(倍率5000倍、加速電圧15kV、視野30μm×30μm)して、セラミック素体表面から突出している内部電極10枚の突出部の長さをそれぞれ測定し、平均値を算出した。このようにして、5個のサンプルについて突出部の平均値をそれぞれ求め、各平均値の平均値を算出した。耐湿負荷試験の結果を表1に示す。
【0071】
(実験例2)
ガラスコート層15の厚みを10μmにしたこと以外は、実験例1と同様にしてサンプルを作製し、実験例1と同様にして耐湿負荷試験を行った。結果を、下記の表2に示す。
【0073】
以上説明したように、本実施形態では、セラミック素体10の第1及び第2の内部電極11,12が露出した部分の上をガラスコート層15が覆っている。内部電極11,12は、ガラスコート層15を貫通しない範囲でセラミック素体10の表面からガラスコート層15中に突出している。このため、第1及び第2の内部電極11,12の露出部からセラミック素体10内に水分が浸入しにくい。従って、本実施形態に係るセラミック電子部品1は、耐湿性に優れる。表1及び表2に示す結果から、より優れた耐湿性を実現する観点からは、突出部11b、12bの長さのガラスコート層15の厚みに対する比((突出部11b、12bの長さ)/(ガラスコート層15の厚み))が50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましく、34%以下であることがなお好ましいことが分かる。
【0074】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。但し、以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0075】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係るセラミック電子部品の略図的斜視図である。
【0076】
上記第1の実施形態では、第1及び第2の側面10c,10d上に、第1及び第2の電極端子13,14及びガラスコート層15が形成されている例について説明した。但し、
図12に示すように、第1及び第2の電極端子13,14及びガラスコート層15が、第1及び第2の側面10c,10d上に実質的に形成されていなくてもよい。
【0077】
第2の実施形態に係るセラミック電子部品は、例えば、次のようにして製造することができる。上述の第1の実施形態に係るセラミック電子部品1の製造方法と同様にして、マザー積層体22(
図13を参照)を得る。次に、本実施形態においては、
図13に示すように、マザー積層体22の上に、第1及び第2の電極端子13,14の第1及び第2の部分13a,13b,14a,14bを構成している部分に対応した形状の導電パターン23を、スクリーン印刷法などの適宜の印刷法により形成する。次に、マザー積層体22の上に、仮想のカットラインCLに沿ってマザー積層体22をカッティングすることにより、マザー積層体22から複数の生のセラミック積層体を作製する。
【0078】
次に、生のセラミック積層体の焼成を行う。次に、セラミック積層体の両端面にガラスペーストを塗布する。次に、ガラスペーストを熱処理することにより、第1及び第2の電極端子13,14の第3の部分13c,14cを構成している部分に対応した形状のガラスコート層15を形成する。次に、ガラスコート層15の上にめっきを施すことにより、第1及び第2の電極端子13,14を形成する。このようにして、第2の実施形態に係るセラミック電子部品を製造することができる。
【0079】
なお、第1及び第2の電極端子13,14の第1及び第2の部分13a,13b,14a,14bに形成される導電パターン23と、第1及び第2の電極端子13,14の第3の部分13c,14cに塗布されるガラスペーストは、金属の種類が異なっていたり、無機フィラーの種類が異なっている。例えば、導電パターン23はNiとセラミック素体10に含まれるセラミック材料と同じ種類のセラミックからなる共材を含む。
【0080】
(第3の実施形態)
図14は、第3の実施形態に係るセラミック電子部品の略図的断面図である。
【0081】
上記第1の実施形態では、第1及び第2の電極端子13,14及びガラスコート層15のそれぞれが、第1及び第2の主面10a,10bの両方の上に形成されている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。第1及び第2の電極端子13,14及びガラスコート層15のそれぞれは、セラミック素体10の表面のいずれかの部分の上に形成されていればよい。
【0082】
例えば、
図14に示すように、第1及び第2の電極端子13,14及びガラスコート層15のそれぞれを、第1及び第2の主面10a,10bのうちの第2の主面10bの上にのみ形成してもよい。
【0083】
(第4の実施形態)
図15は、第4の実施形態に係るセラミック電子部品の略図的斜視図である。
【0084】
上記第1の実施形態では、セラミック素体10の厚み寸法をDT、長さ寸法をDL、幅寸法をDWとしたときに、DT<DW<DLである例について説明した。但し、
図15に示すように、DW≦DT<DLであってもよい。