【実施例】
【0014】
−実施例1−
図1は、実施例1に係るフローセンサ101を示す断面図である。
このフローセンサ101は、上流薄膜抵抗体1aを上面に形成すると共に上流通気孔7aを中央に穿設した上流感光性ガラス板5aと、下流薄膜抵抗体1bを上面に形成すると共に下流通気孔7bを中央に穿設した下流感光性ガラス板5bと、取入通気孔8を中央に穿設したセラミック基板6と、セラミック基板6の上面の四隅に立設され上流感光性ガラス板5aと下流感光性ガラス板5bとを保持したピン2と、取入通気孔8の出口近傍に設置された遮光板13と、取入通気孔8から流入したガス流を上流通気孔7aに導くためにセラミック基板6の上面と上流感光性ガラス板5aの下面の間をシールするシールリング17とを具備している。
【0015】
遮光板13は、孔径0.4mmの微細孔13a,13bが穿設されている金属板である。微細孔13a,13bの中心間距離は1.4mmである。微細孔13a,13bの各断面積は約0.13平方mmであり、合計断面積は約0.25平方mmである。なお、遮光板13は、金属に限らず、セラミックやIRカットフィルタのようなガラス材料などを用いてもよい。
【0016】
ガスは、取入通気孔8から入り、遮光板13の微細孔13a,13bを通り、上流通気孔7aを通り、下流通気孔7bを通って出て行く。
【0017】
図2は、フローセンサ101を示す平面図である。なお、
図1は、
図2のA−A’断面に相当する。
下流通気孔7bを跨いでいる下流薄膜抵抗体1bの部分が、ガス流により抵抗値が変化する下流薄膜抵抗体1bの部分である。
下流通気孔7bからは遮光板13が見えるが、遮光板13の微細孔13a,13bは下流通気孔7bから見えない位置にある。これは、微細孔13a,13bを通って入ってきた赤外線が、下流通気孔7bを跨いでいる下流薄膜抵抗体1bの部分に当らないようにするためである。
【0018】
図3は、下流感光性ガラス板1bを除去したフローセンサ101の状態を示す平面図である。
上流通気孔7aを跨いでいる上流薄膜抵抗体1aの部分が、ガス流により抵抗値が変化する上流薄膜抵抗体1aの部分である。
上流通気孔7aからは遮光板13が見えるが、遮光板13の微細孔13a,13bは上流通気孔7aから見えない位置にある。これは、微細孔13a,13bを通って入ってきた赤外線が、上流通気孔7aを跨いでいる上流薄膜抵抗体1aの部分に当らないようにするためである。
【0019】
図4は、下流感光性ガラス板1bおよび上流感光性ガラス板1aを除去したフローセンサ101の状態を示す平面図である。
微細孔13a,13bを有する遮光板13が、取入通気孔8の出口近傍に嵌め込まれている。
シールリング17は、取入通気孔8を取り囲んでいる。
【0020】
図5は、フローセンサ101を示す底面図である。
微細孔13a,13bを通じてはガス流により抵抗値が変化する上流薄膜抵抗体1aの部分を直視できないように、微細孔13a,13bが配置されている。これは、赤外線が、微細孔13a,13bを通じて上流通気孔7aを跨いでいる上流薄膜抵抗体1aの部分に当らないようにするためである。
【0021】
−実施例2−
図6は、実施例2に係るフローセンサ102を示す断面図である。
図7は、フローセンサ102を示す底面図である。なお、
図6は、
図7のB−B’断面に相当する。
【0022】
フローセンサ102は、実施例1のフローセンサ101における遮光板13の代わりに遮光板22を用いた以外は、実施例1のフローセンサ101と同様の構成である。
遮光板22は、孔径0.6mmの微細孔22aが穿設されている金属板である。すなわち、遮光板22は、実施例1のフローセンサ101における遮光板13の微細孔13bを省略し、微細孔13aの孔径を0.6mmに広げた構成である。微細孔22aの断面積は約0.28平方mmである。
【0023】
−実施例3−
図8は、実施例3に係る赤外線ガス分析計201を示す要部断面図である。
この赤外線ガス分析計201は、チョッパによりパルス状に赤外光を出射する光源部50と、試料ガスを流す測定セル部60と、試料ガスによる赤外線の吸収を検出する検出部70とからなっている。
【0024】
検出部70は、検出ガスを充填した前室71および後室72と、前室71と後室72とを連通する連通路73と、連通路73の途中に設置されたフローセンサ101またはフローセンサ102とを具備している。
【0025】
前室71における検出ガスの赤外線吸収と後室72における検出ガスの赤外線吸収の差によりガスの差圧を生じ、前室71から後室72への連通路73を通じたガス流が生じる。このガス流をフローセンサ101またはフローセンサ102で検出する。
【0026】
−実施例4−
図9は、本発明に係る種々のフローセンサを用いた場合のガスの差圧に対する信号強度を比較したグラフである。
横軸は、ガス流入路の最小部の断面積である。例えばフローセンサ101では微細孔13a,13bの合計断面積であり、フローセンサ102では微細孔22aの断面積であり、従来のフローセンサでは上流通気孔7aの断面積である。
aは、フローセンサ101の信号強度を示している(合計断面積約0.25平方mm)。
bは、フローセンサ102の信号強度を示している(合計断面積約0.28平方mm)。
cは、実施例2のフローセンサ102における微細孔22aの孔径を0.8mmとした場合である(断面積約0.50平方mm)。
dは、実施例1のフローセンサ101における微細13a,13bの孔径を0.6mmにした場合である(合計断面積約0.57平方mm)。
eは、実施例1のフローセンサ101における微細孔13bを省略して微細孔13aだけとした場合である(合計断面積約0.13平方mm)。
fは、遮光板を備えていない従来のフローセンサの信号強度を示している(断面積約3.2平方mm)。
ガスの差圧に対する信号強度は、a〜dでは遮光板を設けてもほとんど低下していないが、eではやや低下しているので、微細孔の合計断面積は約0.25平方mm以上にすることが好ましい。
【0027】
図10は、本発明に係る種々のフローセンサを用いた場合の赤外線に対する信号強度を比較した図である。
aは、フローセンサ101の信号強度を示している(合計断面積約0.25平方mm)。
bは、フローセンサ102の信号強度を示している(合計断面積約0.28平方mm)。
cは、実施例2のフローセンサ102における微細孔22aの孔径を0.8mmとした場合である(断面積約0.50平方mm)。
dは、実施例1のフローセンサ101における微細13a,13bの孔径を0.6mmにした場合である(合計断面積約0.57平方mm)。
eは、実施例1のフローセンサ101における微細孔13bを省略して微細孔13aだけとした場合である(合計断面積約0.13平方mm)。
fは、遮光板を備えていない従来のフローセンサの信号強度を示している(断面積約3.2平方mm)。
赤外線に対する信号強度は、a,b,eではほとんど無くなっているが、c,dではややあるので、微細孔の合計断面積は約0.50平方mm以下にすることが好ましい。
【0028】
−実施例5−
図11は、実施例5に係るフローセンサ103を示す断面図である。
図12は、フローセンサ103の底面図である。なお、
図11は、
図12のC−C’断面図に相当する。
フローセンサ103は、実施例1のフローセンサ101における遮光板13の代わりに遮光板18,19を用いたこと以外は、実施例1のフローセンサ101と同様の構成である。
【0029】
流通孔18aを穿設した遮光板18は、取入通気孔8の入口近傍に取り付けられている。
また、流通孔19aを穿設した遮光板19は、流通孔18aと流通孔19aの位置をずらせて、取入通気孔8の出口近傍に取り付けられている。これは、赤外線が、流通孔18aおよび19aを通じて上流通気孔7aを跨いでいる上流薄膜抵抗体1aの部分に当らないようにするためである。
【0030】
−実施例6−
図13は、実施例6に係るフローセンサ104を示す断面図である。
図14は、フローセンサ104の底面図である。なお、
図13は、
図14のD−D’断面図に相当する。
フローセンサ104は、実施例1のフローセンサ101における遮光板13の代わりに遮光板20,21を用いたこと以外は、実施例1のフローセンサ101と同様の構成である。
【0031】
半月状の遮光板20は、取入通気孔8の入口近傍に隙間20aを空けて取り付けられている。
また、半月状の遮光板21は、取入通気孔8の出口近傍に、隙間20aと位置をずらせた隙間21aを空けて取り付けられている。これは、赤外線が、隙間20aおよび21aを通じて上流通気孔7aを跨いでいる上流薄膜抵抗体1aの部分に当らないようにするためである。
【0032】
−実施例7−
図15は、実施例7に係るフローセンサ105を示す断面図である。
このフローセンサ105は、上流薄膜抵抗体1aを上面に形成すると共に上流通気孔7aを中央に穿設した上流感光性ガラス板5aと、下流薄膜抵抗体1bを上面に形成すると共に下流通気孔7bを中央に穿設した下流感光性ガラス板5bと、取入通気孔8を中央に穿設したセラミック基板6と、セラミック基板6の上面の四隅に立設され上流感光性ガラス板2aと下流感光性ガラス板2bとを保持したピン2と、セラミック基板6の上面にパッド15を介して設置された遮光板14と、ガスが上流通気孔7aへ向かわずに逃げるのを防止するためのシール材16とを具備している。
【0033】
遮光板14は、金属板である。なお、遮光板14は、金属に限らず、セラミックやIRカットフィルタのようなガラス材料などを用いてもよい。
【0034】
図15に矢印で示すように、ガスは、取入通気孔8から入り、パッド15により形成された遮光板14の下の隙間から遮光板14の周囲を通り、上流感光性ガラス板2aの下面と遮光板14の上面の間の隙間を通り、上流通気孔7aを通り、下流通気孔7bを通って出て行く。
【0035】
図16は、フローセンサ105を示す平面図である。なお、
図15は、
図16のE−E’断面に相当する。
下流通気孔7bを跨いでいる下流薄膜抵抗体1bの部分が、ガス流により抵抗値が変化する下流薄膜抵抗体1bの部分である。
遮光板14で遮られて、下流通気孔7bからは取入通気孔8が見えない。
【0036】
図17は、下流感光性ガラス板1bを除去したフローセンサ105の状態を示す平面図である。
上流通気孔7aを跨いでいる上流薄膜抵抗体1aの部分が、ガス流により抵抗値が変化する上流薄膜抵抗体1aの部分である。
遮光板14で遮られて、上流通気孔7aからは取入通気孔8が見えない。
【0037】
図18は、下流感光性ガラス板1bおよび上流感光性ガラス板1aを除去したフローセンサ105の状態を示す平面図である。
遮光板14により、取入通気孔8が隠されている。
【0038】
図19は、下流感光性ガラス板1bおよび上流感光性ガラス板1aおよび遮光板14を除去したフローセンサ105の状態を示す平面図である。
遮光板14を支持するためのパッド15が4カ所に設けられている。
【0039】
図20は、フローセンサ105を示す底面図である。
取入通気孔8を通じてはガス流により抵抗値が変化する上流薄膜抵抗体1aの部分を直視できないように、遮光板14の位置とサイズが設定されている。これにより、赤外線が、取入通気孔8を通じて、上流通気孔7aを跨いでいる上流薄膜抵抗体1aの部分に当らないようになっている。
【0040】
−実施例8−
図21は、実施例8に係る赤外線ガス分析計202を示す要部断面図である。
この赤外線ガス分析計202は、チョッパによりパルス状に赤外光を出射する光源部50と、試料ガスを流す測定セル部60と、試料ガスによる赤外線の吸収を検出する検出部70とからなっている。
【0041】
検出部70は、検出ガスを充填した前室71および後室72と、前室71と後室72とを連通する連通路73と、連通路73の途中に設置されたフローセンサ100と、連通路73のガス流入口を塞ぐように前室71の底面に設置された遮光板23と、前室71の底面と遮光板23の下面の間をシールするシールリング17aとを具備している。
【0042】
前室71における検出ガスの赤外線吸収と後室72における検出ガスの赤外線吸収の差によりガスの差圧を生じ、前室71から後室72への連通路73を通じたガス流が生じる。このガス流は、遮光板23の微細孔23a,23bを通って連通路73に流れ込み、フローセンサ100で検出される。
【0043】
実施例8の赤外線ガス分析計202では、連通路73を通じてフローセンサ100に赤外線が入射するのを、遮光板23により抑制できる。このため、遮光板を備えていない従来のフローセンサ100を用いた場合でも、赤外線の影響によるノイズを十分に抑制することが出来る。