特許第5796626号(P5796626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中美▲せき▼晶製品股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特許5796626結晶シリコンインゴット鋳造に使用されるシード
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796626
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】結晶シリコンインゴット鋳造に使用されるシード
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20151001BHJP
   C30B 11/14 20060101ALI20151001BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C30B29/06 501Z
   C30B11/14
   C01B33/02 E
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-270391(P2013-270391)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-129228(P2014-129228A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2013年12月26日
(31)【優先権主張番号】101150738
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】507204660
【氏名又は名称】中美▲せき▼晶製品股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】周 鴻昇
(72)【発明者】
【氏名】姜 侑宗
(72)【発明者】
【氏名】楊 瑜民
(72)【発明者】
【氏名】蕭 明恭
(72)【発明者】
【氏名】余 文懷
(72)【発明者】
【氏名】許 松林
(72)【発明者】
【氏名】李 依晴
(72)【発明者】
【氏名】藍 崇文
(72)【発明者】
【氏名】徐 文慶
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−219336(JP,A)
【文献】 特開平10−152393(JP,A)
【文献】 特開2001−158688(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/108381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B1/00−35/00
C01B33/02
H01L31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶シリコンインゴット鋳造に使用されるシードであって、
少なくとも1つの粒子によって構成される結晶と、
該結晶の外側表面を覆うように形成される不純物拡散防止層と
該不純物拡散防止層を覆うように形成されるヘテロ核形成促進層とを備えることを特徴とするシード。
【請求項2】
前記不純物拡散防止層は、BaO、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、シリコン粉末、BaCO/TEOS混合物、BaCO/SiO混合物、SiN/TEOS混合物、SiN/SiO混合物、BaO/SiN混合物、金属塩酸化物/SiN混合物、金属塩酸化物/SiO混合物、金属塩酸化物/TEOS混合物、BaO/SiO混合物、BaO/TEOS混合物、SiC、SiO、グラファイト、AlN、BN、SiN、GaN、AlP、GaP、Alおよび金属フッ化物からなる群から選択される1つから形成されることを特徴とする請求項1に記載のシード。
【請求項3】
前記金属塩酸化物の金属元素は、Be、Mg、Sr、Ca、およびBaからなる群から選択される1つであることを特徴とする請求項2に記載のシード
【請求項4】
前記ヘテロ核形成促進層は、SiNまたはBNから形成されることを特徴とする請求項に記載のシード。
【請求項5】
前記少なくとも1つの粒子は、Si、SiC、SiO、SiNおよびグラファイトからなる群から選択される1つから形成されることを特徴とする請求項2に記載のシード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶シリコンインゴット鋳造に使用されるシードに関する。本発明は、特にそのようなシードによって形成される結晶シリコンインゴットの赤色領域および黄色領域を低減することができるシードに関する。
【背景技術】
【0002】
日光を吸収する場合に、ほとんどの光電池は光起電力効果を生じる。現在、光電池はシリコンベースの材料から形成される。その大部分がシリコンベースの材料から形成される理由として、シリコンは世界で2番目にもっとも豊富であるとともに最も入手しやすい素子であることが挙げられる。さらに、シリコンは費用効率がよく、無毒で、化学的に安定しており、半導体応用に広く利用されていることが挙げられる。
【0003】
シリコンベースの光電池を形成するための結晶シリコンの3つの形態、すなわち単結晶シリコン、多重結晶または多結晶シリコン、およびアモルファスシリコンがある。チョクラルスキー法(CZ)や浮遊帯法(FZ)によって形成される場合、多重結晶または多結晶シリコンは単結晶シリコンよりはるかに高価なものではない。したがって、これは、経済関係により光電池の原料として通常使用される。
【0004】
従来、光電池用の多重結晶または多結晶シリコンは、共通の鋳造プロセスによって形成される。すなわち、鋳造プロセスによって光電池用の多重結晶または多結晶シリコンを形成することは、先行技術である。すなわち、多重結晶または多結晶シリコンの光電池は、石英ルツボのような型枠に高純度シリコンを溶融させ、続いて多重結晶シリコンインゴットまたは多結晶シリコンインゴットを形成するために制御して凝固させるように溶融シリコンを冷却することにより形成される。多重結晶シリコンインゴットまたは多結晶シリコンインゴットは、光電池の製造に使用されるウェーハの寸法と同一かこれに近い寸法の断面を有する煉瓦状に通常切断される。煉瓦は、そのようなウェーハに鋸引きされるか、あるいは切断される。上述した方法にて形成されるポリシリコンは結晶粒の集塊であり、そこから形成されるウェーハ内において、相互に対する粒子の配向は効果的に任意である。
【0005】
粒子の任意の配向により、従来の多重結晶または多結晶シリコンのいずれにおいても、生じるウェーハの表面にテクスチャを施すことは困難である。テクスチャは、光反射を低減するとともに電池表面を通した光エネルギー吸収を高めることによって光電池の効率を向上させることに使用される。付加的に、従来の多重結晶または多結晶シリコンの粒子間の境界に生じる「よじれ(kink)」は、転位のクラスタまたはラインの形態の構造的欠陥の核をなす傾向にある。これらの転位、および転移が招く不純物は、従来の多重結晶または多結晶シリコンから形成される、機能する光電池の電荷担体の迅速な組換えを惹起すると考えられる。これにより、電池の効率が低減される。そのような多重結晶または多結晶シリコンから形成される光電池は、公知の技術によって形成される単結晶シリコンにある欠陥の径方向の分布を考慮しても、単結晶シリコンから形成される同等の光電池と比較して、通常より低い効率を有する。しかしながら、従来の多重結晶または多結晶シリコンの製造が比較的単純且つ低コストである他、電池加工における欠陥不動態化が効果的であるため、多重結晶または多結晶シリコンは、光電池を製造するための、シリコンのより広く使用される形態である。
【0006】
現在、単結晶シリコンシード層を使用した指向性凝固に基づく結晶シリコンインゴットの形成が開発されている。上述したように、単結晶シリコンおよび/または双結晶シリコンブロック、あるいは単結晶状シリコンブロックの高品質なインゴットが得られ、少数キャリアの寿命は、高性能光電池の形成に使用される得られるウェーハにおいて最長となる。ここに使用されるように、用語「単結晶シリコン」は全体にわたって1つの一貫した結晶指向を有する単結晶シリコンの本体を示す。用語「双結晶シリコン」は、シリコンの本体の50重量%以上にわたる1つの一貫した結晶指向、および本体の残りの重量%の別の一貫した結晶指向を有するシリコンの本体を示す。例えば、そのような双結晶シリコンは、異なる結晶指向を有する単結晶シリコンの別の本体と隣り合う1つの結晶指向を有する単結晶シリコンの本体を備え、結晶シリコンの容積の均衡を図る。用語「単結晶状シリコン」は、本体の75重量%以上にわたる1つの一貫した結晶指向を有するシリコンの本体を示す。付加的に、従来の多重結晶シリコンは、センチメートル規模の粒径分布を有する結晶シリコンを示し、これは、シリコンの本体内に配置される複数の任意に配向される結晶を備える。用語「多結晶シリコン」は、シリコンの所定の本体内に配置される粒子がマイクロメートル級の粒径を備えるとともに複数の配向を備える結晶シリコンを示す。例えば、粒子は通常粒径がおおよそマイクロメートル未満乃至ミリメートル未満の平均であり(例えば、個別の粒子は肉眼で視認できなくてもよい)、粒子の配向は全体にわたって任意に配向される。
【0007】
さらに、シリコン粒子の核形成を補助するために、単結晶または多結晶シリコンの粒子によって構成される核形成促進層を使用した指向性凝固に基づく結晶シリコンインゴットの形成が開発されている。得られた結晶シリコンインゴットは、その底部に小径のシリコン粒子を有し、且つ低密度のバルク欠陥を有し、また、高性能光電池を形成するために使用可能である。
【0008】
ルツボを使用して通常形成される結晶シリコンインゴットにおける領域であって、要件を満たさないものを「赤色領域」と呼ぶ。通常の結晶シリコンインゴットの赤色領域から形成される光電池は、低い少数キャリア寿命を有する。マイクロ波光導電減衰法(μ−PCD)のような測定方法によって得られる少数キャリア寿命マッピングにおける赤色領域は、赤色の画像を示す。赤色領域の原因は、a.ルツボから拡散される固体状態において不純物を含む領域、b.ルツボ近傍の不完全な結晶構造体の領域、c.ホウ素に富む、または酸素に富む領域、およびd.金属を含む溶融シリコンから拡散する液体状態において金属を含む結晶シードおよび核形成層を含む。通常ルツボから拡散される固体状態において不純物、特に金属不純物を含む領域は、赤色領域の主因である。結晶シリコンインゴットの赤色領域から形成される光電池の光電変換効率は大きく低下し、低減する。
【0009】
μ−PCD法のような測定方法によって得られる、少数キャリア寿命マッピングにおける黄色の画像を「黄色領域」と呼び、これも、不純物によって汚染された領域である。黄色領域の原因は、溶融シリコンによって汚染された結晶シード中の金属不純物が、最初の結晶シリコンインゴットのシード処理時に結晶シリコンインゴットの底部に戻って拡散することにあり、金属不純物の拡散経路は、粒界拡散および固体状態の拡散を含む。したがって、黄色領域の所定の部分は繊維状のパターンを示す。黄色領域は結晶シリコンインゴットのそれほど容易に得られない領域であるが、結晶シリコンインゴットの黄色領域から形成される光電池の光電変換効率はより低い。
【0010】
しかしながら、単結晶シードの層や、ルツボの底部に配置された単結晶または多結晶シリコン粒子の核形成促進層を使用して形成されるこの結晶シリコンインゴットの赤色領域は、これらの層を使用しないで形成された結晶シリコンインゴットの赤色領域より大きいか、その2倍でさえある。上述した層を使用して形成される結晶シリコンインゴットの黄色領域も、上述した層を使用しないで形成される結晶シリコンインゴットの黄色領域より大きい。その原因を検討すると、結晶シリコンインゴットの形成時において、ルツボにおける金属不純物(例、Fe、Al等)から主として構成される不純物は、溶融シリコンに溶かされ、続いて単結晶シード、あるいは単結晶または多結晶シリコン粒子に拡散する。溶融シリコンに由来するシリコン粒子が、単結晶シード、あるいは単結晶シリコン粒子または多結晶シリコン粒子において核を形成するとともに成長すると、単結晶シード、あるいは単結晶シリコン粒子または多結晶シリコン粒子中の不純物は、凝固したシリコン結晶に戻って拡散するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の一範囲は、シードによって形成される結晶シリコンインゴットの赤色領域および黄色領域を低減することができるシードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の好ましい実施例によるシードは、結晶シリコンインゴット鋳造に使用される。本発明のシードは結晶および不純物拡散防止層を備える。結晶は少なくとも1つの粒子によって構成される。不純物拡散防止層は結晶の外側表面を覆うように形成される。さらに、本発明のシードはヘテロ核形成促進層も備える。ヘテロ核形成促進層は不純物拡散防止層を覆うように形成され、シリコン粒子のヘテロ核形成を補助するためのものである。
【0013】
一実施例において、少なくとも1つの粒子は、1400℃より高い融点を有するとともに核形成を促進することができるSi、SiC、SiO、SiN、グラファイトあるいは他の材料から形成可能である。
【0014】
一実施例において、不純物拡散防止層は、BaO、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、シリコン粉末、BaCO/TEOS混合物、BaCO/SiO混合物、SiN/TEOS混合物、SiN/SiO混合物、BaO/SiN混合物、金属塩酸化物/SiN混合物、金属塩酸化物/SiO混合物、金属塩酸化物/TEOS混合物、BaO/SiO混合物、BaO/TEOS混合物、SiC、SiO、グラファイト、AlN、BN、SiN、GaN、AlP、GaP、Alおよび金属フッ化物(例、GaF等)、あるいは結晶中に溶融するシリコンにおける不純物の拡散を効果的に抑制するとともに容易に結晶の外側表面を覆うことのできる他の材料から形成される。実際の実施において、金属塩酸化物の金属元素は、Be、Mg、Sr、Ca、Ba等である。
【0016】
一実施例において、ヘテロ核形成促進層は、SiNまたはBNから形成される。
先行技術から識別可能であるが、本発明のシードは、凝固されたシリコン結晶に戻って拡散する溶解シリコンにおける不純物に効果的に抵抗することができる。これにより、本発明のシードは、そのようなシードによって形成される結晶シリコンインゴットの赤色領域および黄色領域を低減することができる。
【0017】
本発明の効果および趣旨は、後述する明細書と添付の図面とによって理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】本発明の好ましい実施例によるシードを示す断面図。
図1B】本発明の好ましい実施例によるシードの変形を示す断面図。
図2A】本発明の好ましい実施例によるシードの別の変形を示す断面図。
図2B】本発明の好ましい実施例によるシードの別の変形を示す断面図。
図3A】本発明の好ましい実施例によるシードの別の変形を示す断面図。
図3B】本発明の好ましい実施例によるシードの別の変形を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1A図1B図2A図2B図3Aおよび図3Bを参照して、これらの図面は、断面図によって本発明の好ましい実施例のシード1および変形を概略的に示す。本発明のシードは結晶シリコンインゴット鋳造に使用される。
【0020】
図1A図1B図2A図2B図3Aおよび図3Bに示すように、本発明のシード1は、結晶10および不純物拡散防止層12を備える。結晶10は少なくとも1つの粒子104によって構成される。すなわち、本発明のシード1は、本質的に図1A図2A、および図3Aに示す場合のような単一の粒子104のシードである。本発明のシード1は、さらに本質的に図1B図2B、および図3Bに示す場合のような複数の粒子104のシードである。不純物拡散防止層12は結晶10の外側表面102を覆うように形成される。
【0021】
一実施例において、少なくとも1つの粒子104は、1400℃より高い融点を有するとともに核形成を促進することができるSi、SiC、SiO、SiN、グラファイトあるいは他の材料から形成可能である。
【0022】
実際の実施において、異なる材料の複数のシード1が、使用するために混合可能である。実際の実施において、本発明のシード1は、大きな寸法(すなわちセンチメートル規模)の立方体形状を有し、図2Aに示すシード1のような単一の粒子104によって構成される。本発明のシード1は、図1Aおよび図1Bに示すシード1のような小さな寸法(すなわちミリメートル規模)の球形状、あるいは図3Aおよび図3Bに示すシード1のようなミリメートル規模の不ぞろいな形状(すなわちいわゆる粒状)を有し、単一の粒子104または複数の粒子104によって構成される。
【0023】
一実施例において、結晶10の外側表面102を覆う不純物拡散防止層12には結晶シリコンインゴットの形成時にシリコン粒子において核形成部位となる粗い表面を有する。付加的に、結晶10の外側表面102を覆う不純物拡散防止層12は、結晶シリコンインゴットの形成時に、さらにその過冷却および高融点の特性によってその表面が核形成部位となる。
【0024】
一実施例において、不純物拡散防止層12は、BaO、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、シリコン粉末、BaCO/TEOS混合物、BaCO/SiO混合物、SiN/TEOS混合物、SiN/SiO混合物、BaO/SiN混合物、金属塩酸化物/SiN混合物、金属塩酸化物/SiO混合物、金属塩酸化物/TEOS混合物、BaO/SiO混合物、BaO/TEOS混合物、SiC、SiO、グラファイト、AlN、BN、SiN、GaN、AlP、GaP、Alおよび金属フッ化物(例、GaF等)、あるいは結晶10中に溶融するシリコンにおける不純物の拡散を効果的に抑制するとともに容易に結晶10の外側表面102を覆うことのできる他の材料から形成される。不純物は、その拡散経路上のシリコン粉末以外の上記材料の不純物拡散防止層12に遭遇するものとして脆弱な拡散能力を有する。したがって、不純物拡散防止層12は、結晶10に拡散する溶融シリコンにおける不純物に効果的に抵抗することができる。シリコン粉末は、Feと反応しFeSi化合物となるか、Alと反応しAlSi化合物となり、結晶10へのFeおよびAlの不純物に抵抗する。上記材料は、さらにシリコン粒子のヘテロ核形成を支援する効果を有する。
【0025】
通常結晶シリコンインゴット鋳造を準備する際に、剥離層でルツボの内側壁を覆う。結晶シリコンインゴット鋳造時に、剥離層は、溶融シリコンへ拡散する際に多かれ少なかれ不純物に抵抗するため、結晶シリコンインゴット中の不純物濃度をいくらか低下させる。しかしながら、本発明のシード1を使用すると、不純物拡散防止層12は、結晶10に拡散する溶融シリコン中の不純物に対して効果的に抵抗することができ、結晶シリコンインゴット中の不純物濃度を大きく低下させることができる。
【0026】
実際の実施において、不純物拡散防止層12はスプレー法、ブラッシング法、堆積法、蒸発法等により結晶10の外側表面102を覆うように形成可能である。BaOによる覆いを例に取ると、結晶10の外側表面102には、最初にBa(OH)−8HOがスプレーされ、続いて、結晶10はCO雰囲気で炉において加熱されるか、外側からCOが供給され、Ba(OH)−8HOはCOと反応し、BaCOとなる。BaCOは、高温で、且つCO雰囲気中で加熱され、BaOに分解する。あるいは、結晶10の外側表面102は、高温酸化処理、高温窒化処理や、高温炭化処理によって不純物拡散防止層12を形成するように処理される。その上、不純物拡散防止層12は気圧化学蒸着(APCVD)、低圧化学蒸着(LPCVD)、原子層堆積(ALD)等によって結晶10の外側表面102を覆うように形成可能である。
【0027】
実際の実施において、金属塩酸化物の金属元素は、Be、Mg、Sr、Ca、Ba等である。
結晶シリコンインゴットの形成時に、不純物拡散防止層12上は、結晶10を尚早な溶融から保護する効果を有する。これにより、結晶シリコンインゴットの形成時間を短縮することができ、また、シード1によって構成される層の厚みを低減することができる。
【0028】
さらに、図1A図1B図2A図2B図3A、および図3Bに示すように、本発明のシード1はさらにヘテロ核形成促進層14を備える。ヘテロ核形成促進層14は不純物拡散防止層12を覆うように形成されるとともに、シリコン粒子のヘテロ核形成において機能する。
【0029】
一実施例において、ヘテロ核形成促進層14は、SiNまたはBNから形成される。実際の実施において、ヘテロ核形成促進層14を形成するように不純物拡散防止層12にSiN粉末をスプレーすることが好適である。
【0030】
一実施例において、不純物拡散防止層12を覆うヘテロ核形成促進層14は、複数のシリコン粒子のための複数の核形成部位となる粗い表面を示す。
例において、結晶シリコンインゴットAは、本発明のシード1を使用して指向性凝固工程によって形成される。結晶シリコンインゴットAの形成において使用される本発明のシード1は、不純物拡散防止層12およびヘテロ核形成促進層14によって覆われる。比較として、結晶シリコンインゴットBは従来のシードを使用して指向性凝固工程によって形成される。結晶シリコンインゴットの形成において使用されるシードは、不純物拡散防止層およびヘテロ核形成促進層の覆いを有さない。結晶シリコンインゴットAおよび結晶シリコンインゴットBの少数キャリア寿命マッピングは、μ−PCD法によって得られる。これらの少数キャリア寿命マッピングは、結晶シリコンインゴットAがその底部に40mmの厚みの赤色領域を有すること、および結晶シリコンインゴットBが、その底部に50mmの厚みの赤色領域を有することを証明する。本発明のシード1を使用して結晶シリコンインゴットの赤色領域に関する改善の大きさが、20%に達することが明白である。結晶シリコンインゴットAの黄色領域は、結晶シリコンインゴットBの黄色領域より小さい。明らかに、本発明のシード1を使用して形成される結晶シリコンインゴットは、その底部における汚染を大きく低下させるとともに、その質を高める効果を有する。
【0031】
まとめると、結晶シリコンインゴットの形成に使用される本発明のシードは、シードに拡散し、続いて凝固されたシリコン粒子に戻る溶融シリコン中の不純物に効果的に抵抗することができるものといえる。これにより、本発明のシードは、そのようなシードを使用して形成される結晶シリコンインゴットの赤色領域を低減することができる。
【0032】
上記例および説明により、本発明の特徴および趣旨が有望によく開示される。当業者は、容易に装置の多数の変形および変更がなされることを認識する一方、本発明の教示を保持する。従って、上述した開示は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるように解釈されるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B