(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全気筒が燃料カットされているときに、所定の燃料カットリカバー条件が成立した場合、全気筒に対する燃料供給を再開し、かつ、再開後の所定期間は燃料供給量を増量して排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチに制御する請求項1に記載の内燃機関の燃料カット制御装置。
上記一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記リッチの度合いと、上記全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記リッチの度合いと、を異ならせる請求項2に記載の内燃機関の燃料カット制御装置。
上記一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際に排気の空燃比をリッチに制御する上記所定期間を、全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際に排気の空燃比をリッチに制御する上記所定期間よりも短くする請求項3に記載の内燃機関の燃料カット制御装置。
上記一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際、排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチに制御するのと同時に点火プラグの点火時期を通常の点火時期よりも所定の遅角量だけ遅角側に制御する請求項1に記載の内燃機関の燃料カット制御装置。
上記一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際、排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチに制御するのと同時に点火プラグの点火時期を通常の点火時期よりも所定の遅角量だけ遅角側に制御するとともに、
上記全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際、排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチに制御するのと同時に点火プラグの点火時期を通常の点火時期よりも所定の遅角量だけ遅角側に制御し、
上記一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記遅角量と、全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記遅角量と、を異ならせる請求項2に記載の内燃機関の燃料カット制御装置。
上記一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記遅角量を、上記全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記遅角量よりも小さくする請求項6に記載の内燃機関の燃料カット制御装置。
上記一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際、燃料供給の再開から上記リッチ制御を行うまでの間に所定のディレイ期間を設ける請求項1に記載の内燃機関の燃料カット制御装置。
上記一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記ディレイ期間を、上記全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記ディレイ期間よりも短くする請求項9に記載の内燃機関の燃料カット制御装置。
上記所定の燃料カット条件が成立するのと同時に所定の全気筒燃料カット条件が成立した場合、上記一部の気筒の燃料カットを行わずに全気筒の燃料供給をカットする請求項1〜10の何れかに記載の内燃機関の燃料カット制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るポート噴射方式の火花点火式ガソリン機関のシステム構成を示す構成図である。内燃機関10は、複数のシリンダ(ボア)11Aが設けられたシリンダブロック11と、このシリンダブロック11の上側に固定されるシリンダヘッド12とを有している。なお、この
図1では、一つの気筒のシリンダ11Aのみを描いており、実際には複数のシリンダ11Aが気筒列方向に並設されている。
【0009】
各シリンダ11Aにはピストン15が摺動可能に配設されており、各ピストン15の上方には、ペントルーフ型のシリンダヘッド12の下面との間に燃焼室13が形成されている。各燃焼室13には吸気弁16を介して吸気ポート17が接続するとともに、排気弁18を介して排気ポート19が接続し、更に、燃焼室13内の頂部中央に混合気を火花点火する点火プラグ20が配設されている。
【0010】
各気筒の吸気ポート17に接続する吸気通路21には、吸気コレクタ22の上流側に、吸気量(吸入空気量)を調整する電子制御式のスロットル弁23が設けられるとともに、各気筒の吸気ポート17へ向けて燃料を噴射する燃料噴射弁24が各気筒毎に設けられている。なお、このようなポート噴射型の構成に限らず、燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式の構成であっても良い。また、スロットル弁23の上流側には、吸気量を検出するエアフロメータ25と、吸気中の異物を捕集するエアクリーナ26と、が設けられている。
【0011】
各気筒の排気ポート19が接続・集合する排気通路30には、三元触媒等の触媒31が介装されるとともに、この触媒31の上流側に、排気の空燃比を検出する酸素濃度センサ等の空燃比センサ32が設けられる。この空燃比センサ32の検出信号に基づいて、排気の空燃比を目標空燃比(理論空燃比)に維持するように燃料噴射量を増減する空燃比フィードバック制御が行われる。
【0012】
各気筒のピストン15はコネクティングロッド33を介してクランクシャフト34と連結されており、このクランクシャフト34のクランク角を検出するクランク角センサ35がシリンダブロック11に設けられている。また、シリンダブロック11には、内燃機関の振動を検知するノックセンサ36が取り付けられている。
【0013】
機関運転状態を検出する各種センサ・スイッチ類として、上述したセンサ類の他に、ウォータジャケット38内の冷却水温を検出する水温センサ37、運転者により操作されるアクセルペダルのアクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ39、及び内燃機関の起動及び停止用のイグニッションスイッチ40等が設けられている。
【0014】
制御手段としてのECU(エンジン・コントロール・ユニット)41は、各種制御処理を記憶及び実行する機能を有するマイクロコンピュータを備えるもので、上述した各種センサ・スイッチ類からの入力信号に基づいて、スロットル弁23、点火プラグ20、燃料噴射弁24等へ制御信号を出力して、その動作を制御する。
【0015】
図2は、本実施例に係る燃料カット及び燃料カットリカバー制御の流れを示すフローチャートであり。本ルーチンは、上記のECU41により記憶及び実行される。
【0016】
ステップS11では、所定の燃料カット条件が成立するか否か、つまり燃料カットを行う減速運転状態であるか否かを判定する。例えば、アクセル開度APOが0(アクセルOFF)であり、かつ、車速が一定値以上である場合に、燃料カット条件が成立していると判定する。燃料カット条件が成立していなければ本ルーチンを終了し、成立していればステップS12へ進む。
【0017】
ステップS12では、機関運転状態に基づいて、全ての気筒の燃料供給を停止する全気筒燃料カットを行うか、半分(一部)の気筒の燃料供給を停止する半気筒(一部の気筒)燃料カットを行うか否かを判定する。具体的には、車速と機関回転速度とに基づいて、全気筒燃料カットを行った場合に発生するトルク段差を推定し、このトルク段差が許容範囲内にある場合には、半気筒燃料を行わずに全気筒燃料カットへと移行する。一方、トルク段差が許容範囲を超える場合には、燃料カットの実行に伴い発生するトルク段差を抑制するように、半気筒燃料カットを行う。なお、一部気筒燃料カットにおいて燃料カットを行う気筒数は、この実施例では半分の気筒数であるが、これに限らず、他の気筒数であっても良い。
【0018】
ステップS12において、全気筒燃料カットと判定されると、ステップS17へ進み、全ての気筒の燃料供給を停止する全気筒燃料カットを実行する。一方、ステップS12において全気筒燃料カットではないと判定されると、ステップS13へ進み、半気筒燃料カットを実行する。つまり、全気筒のうちで半分(一部)の気筒にのみ燃料供給を行い、残る半分の気筒の燃料供給を停止する。
【0019】
ステップS14では、所定の燃料カットリカバー条件が成立したか否かを判定する。具体的には、アクセル開度APO等に基づいて、アクセルペダルの踏み込み操作が行われた場合(アクセルON)、燃料カットリカバー条件が成立したと判定して、ステップS15へ進む。ステップS15では、半気筒燃料カットのリカバー制御(強制リカバー)を行う。つまり、燃料供給を停止していた半分の気筒の燃料供給を強制的に再開する。なお、燃料カットリカバー条件として、上記のアクセルONの他、車速が所定値以下に低下すること等を組み合わせて用いるようにしても良い。
【0020】
ステップS14において、燃料カットリカバー条件が成立していなければ、ステップS16へ進み、半気筒燃料カットを開始してから一定時間A1(
図3参照)が経過したか否かを判定する。この一定時間A1は、この例では予め設定される一定の値であるが、燃料カット開始時における機関回転速度や車速等に応じて調整するようにしても良い。半気筒燃料カットの実行時間が一定時間A1に達すると、ステップS16からステップS17へ進み、上記の全気筒燃料カットを実行する。つまり、半気筒燃料カットの開始から一定時間A1が経過すると、燃料供給していた残りの半分の気筒の燃料供給をも停止して、全気筒燃料カットへと移行する。この際、半気筒燃料カットの実行によりある程度トルクが低下しているために、過度なトルク段差を生じることはない。
【0021】
続くステップS18では、上記のステップS14と同様に、所定の燃料カットリカバー条件が成立したか否か、つまりアクセルペダルの踏み込み操作(アクセルON)等を検出したか否かを判定する。燃料カットリカバー条件が成立している場合、ステップS18からステップS19へ進み、全気筒燃料カットの強制的なリカバー制御(強制リカバー)を行う。つまり、燃料供給を停止していた全ての気筒の燃料供給を強制的に再開する。
【0022】
上記のステップS18において、燃料カットリカバー条件が成立していない場合には、ステップS20へ進み、全気筒燃料カットの開始から所定の一定時間が経過したかを判定する。一定時間が経過すると、ステップS20からステップS21へ進み、全気筒燃料カットのリカバー制御(自然リカバー)を行う。つまり、上記の強制リカバー制御と同様に、燃料供給を停止していた全ての気筒の燃料供給を再開する。
【0023】
図3は、このような本実施例の制御を適用した場合の各特性値の変化を示すタイミングチャートである。時刻t1でアクセルOFF(アクセル開度APOが0)となり、車両減速状態へ移行してから所定期間Δt経過後の時点t2で、燃料カットリカバー条件が成立して、燃料カットが開始される。なお、この例では、急激なトルク変動の回避等の目的で、車両減速状態への移行時点t1から所定期間Δtの経過後t2に燃料カットを開始しているが、車両減速状態への移行時点t1の直後から燃料カットを行うようにしても良い。
【0024】
この例では、燃料カットの開始時点t2において、推定されるトルク段差が許容範囲内であるために、先ず、半気筒燃料カットが行われる。この半気筒燃料カットの実行中のある時点t3において、一定時間A1が経過する前に、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作によりアクセルONとなると、
図2のステップS14からステップS15へ進み、半気筒燃料カットからのリカバー制御が開始されて、燃料供給が再開される。なお、
図3では時刻t2からt3までの時間A1'が一定時間A1よりも長く見えるが、実際にはA1'<A1の関係となっている。
【0025】
燃料カットの実施に伴い、酸素濃度の高い空気が触媒31を通過することで、触媒31内に吸蔵される酸素ストレージ量は増加する。そこで、この半気筒燃料カットからのリカバー制御においては、触媒31内の酸素ストレージ量を低減するために、燃料噴射量を一時的に増量する第1のリッチスパイクD1が実施される。
【0026】
この第1のリッチスパイクD1は、燃料カットの終了時点、つまり燃料供給の再開時点t3から所定のディレイ期間B1が経過した時点t4から開始されて、所定の実施期間C1だけ実施されるもので、排気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側となるように、燃料供給量を目標当量比に応じた目標値よりも増量される。つまり、燃料供給の再開時点t3の直後は燃焼安定性を考慮してリッチスパイク制御を行わずに機関再始動用の燃料噴射制御を行い、燃焼が安定する所定のディレイ期間B1の経過後に、燃料供給量を増量する第1のリッチスパイクD1を開始する。
【0027】
この第1のリッチスパイクD1における燃料の増量量及び実施期間C1は、触媒31に吸蔵されている酸素ストレージ量に応じた値となるように、リカバー開始時点t3(あるいは、リッチスパイク開始時点t4)での機関回転速度に基づいて設定され、機関回転数が高いほど増量量が多く(リッチ度合いが大きく)なるように設定される。なお、後述する全気筒燃料カットからの第2のリッチスパイクD2においては、酸素ストレージ量に基づいて増量量を設定するが、この半気筒燃料カットからの第1のリッチスパイクD1においては、触媒31を通過する空気量の指標として、適合が容易な機関回転速度に基づいて燃料の増量量を設定している。
【0028】
また、この第1のリッチスパイクD1においては、後述する全気筒燃料カットからの第2のリッチスパイクD2に比して、発生するトルク段差が小さく、許容できる増量量(リッチスパイクの深さ)が大きいことから、増量量が大きく設定され、これによりリッチスパイクの実施期間C1を短くして(C1<C2)、短い時間でリカバー制御を終えることができる。更に、燃料噴射量の増量に伴うトルク段差の発生を抑制するように、第1のリッチスパイクD1の開始前に所定のディレイ期間B1が設定されるとともに、燃料の増量と同時に点火プラグ20による点火時期の遅角制御が行われる。このときの点火時期の遅角量F1は、
図3に示すように、想定されるトルク段差E1に応じて設定され、これによって、トルク段差E1を抑制・相殺することができる。
【0029】
時刻t6において、アクセルOFF(アクセル開度が0)となると、車両減速状態へ移行してから所定期間トtの経過後t7の時点で、燃料カットリカバー条件が成立して、再び燃料カットが開始される。上述した場合と同様に、この燃料カットの開始時点t7において、推定されるトルク段差が許容範囲内であるために、先ず、半気筒燃料カットが行われる。この半気筒燃料カットの実行中に、アクセルON等の燃料カットリカバー条件が成立することなく、燃料カットの開始時点t7から一定時間A1が経過すると、この時点t8で全気筒燃料カットへと移行する。このように半気筒燃料カットの開始から一定時間A1が経過すると、全気筒燃料カットへと移行することにより、燃焼安定性を確保しつつ、燃料カットに伴うトルク段差の発生を抑制することができる。
【0030】
この全気筒燃料カットの開始から一定時間A2が経過した時点t9で、
図2のステップS20からステップS21へ進み、全気筒燃料カットからのリカバー制御(自然リカバー)が開始される。このリカバー制御では、燃料カットの終了時点t9、つまり燃料供給の再開時点t9から燃焼が安定する所定のディレイ期間B2が経過した時点t10から所定の実施期間C2だけ第2のリッチスパイクD2が実施される。この第2のリッチスパイクD2では、第1のリッチスパイクD1と同様に、燃料供給量を、目標当量比に応じた目標値よりも増量して、排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチ側に制御する。この第2のリッチスパイクD2における燃料の増量量及び実施期間C2は、触媒31に吸蔵されている酸素ストレージ量に応じた値となるように、この酸素ストレージ量に基づいて設定される。つまり、この第2のリッチスパイクD2においては、触媒31内に残存する酸素ストレージ量を低減させて触媒31による所期の浄化性能を確保するために、酸素ストレージ量が多いほど増量量が多く(リッチ度合いが大きく)なるように設定される。この酸素ストレージ量は、例えば、触媒31の上流側に配置された空燃比センサ32の出力信号と排気流量とに基づいて推定可能であり、上記の排気流量は、例えばエアフロメータ25の出力信号から推定可能である。
【0031】
また、この第2のリッチスパイクD2においては、半気筒燃料カット用の第1のリッチスパイクD1に比して、トルク段差が大きく、許容できる増量量(リッチスパイクの深さ)が小さいことから、トルク段差を抑制するように増量量が小さく設定され、これにより、第2のリッチスパイクD2の実施期間C2は、第1のリッチスパイクD1の実施期間C1よりも長くなる。更に、この第2のリッチスパイクD2においても、上記の第1のリッチスパイクD1と同様に、燃料噴射量の増量に伴うトルク段差の発生を抑制するように、第2のリッチスパイクD2の開始前に所定のディレイ期間B2が設定されるとともに、燃料の増量と同時に点火時期の遅角制御が行われる。このときの点火時期の遅角量F2は、
図3に示すように、想定されるトルク段差E2に応じて設定され、これによって、トルク段差E2を抑制・相殺することができる。
【0032】
また、
図3の例では表れていないが、全気筒燃料カットの実施中に、アクセルペダルの踏み込み操作(アクセルON)によりリカバー条件が成立すると、
図2のステップS18からステップS19へ進み、強制的なリカバー制御(強制リカバー)が行われる。この強制的なリカバー制御においても、上述した第2のリッチスパイクD2と同様のリッチスパイクが行われ、触媒31の酸素ストレージ量に基づいて燃料増量量及び実施期間が設定される。
【0033】
なお、半気筒燃料カット用の第1のリッチスパイクD1におけるディレイ期間B1と、全気筒燃料カット用の第2のリッチスパイクD2におけるディレイ期間B2とは、この実施例では制御の簡素化のために同じ時間としているが、互いに異なる時間としても良い。
【0034】
このような本実施例の特徴的な構成及び作用効果について、以下に説明する。
【0035】
[1]所定の燃料カット条件が成立した場合、先ず一部の気筒の燃料供給をカットし、その後所定期間A1が経過したときに全気筒の燃料供給をカットすることにより、一部の気筒の燃料カットによる燃焼安定性を確保しつつ、一部の気筒の燃料カット後に全気筒燃料カットを行うことで、燃料カットに伴うトルク段差を抑制することができる。そして、一部の気筒のみ燃料カットされているときに所定の燃料カットリカバー条件が成立した場合、一部の気筒に対する燃料供給を再開し、かつ、再開後の所定期間C1は燃料供給量を増量して排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチに制御する、第1のリッチスパイクD1を行うようにしている。従って、燃料カットの実施に伴い排気通路30内に介装される触媒31内に吸蔵されている酸素ストレージ量が増加するが、本実施例では、一部の気筒に対する燃料カットの実施中に、アクセルペダルの踏み込み操作等により燃料供給が再開される場合であっても、上記の第1のリッチスパイクD1が行われることで、触媒31内の酸素ストレージ量を減少させて、所期の排気浄化性能を得ることができる。
【0036】
[2]また、全気筒が燃料カットされているときに所定の燃料カットリカバー条件が成立した場合には、全気筒に対する燃料供給を再開し、かつ、再開後の所定期間C2は燃料供給量を増量して排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチに制御する、第2のリッチスパイクD2を行うようにしている。従って、全気筒に対する燃料カットの実施中に、アクセルペダルの踏み込み操作等により燃料供給が再開される場合であっても、上記の第2のリッチスパイクD2が行われることで、触媒31内の酸素ストレージ量を減少させて、所期の排気浄化性能を得ることができる。
【0037】
[3]好ましくは、発生するトルク段差等を勘案して、一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際に実施される第1のリッチスパイクD1でのリッチの度合いと、全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際に実施される第2のリッチスパイクD2でのリッチの度合いと、を異ならせることで、トルク段差を抑えつつ、リッチスパイクの実施期間を短縮することができる。
【0038】
[4]具体的には、一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際に実施される第1のリッチスパイクD1でのリッチの度合いを、全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際に実施される第2のリッチスパイクD2でのリッチの度合いよりも大きくする。このように、発生するトルク段差の小さい一部気筒燃料カットの場合には、全気筒燃料カットの場合に比して、リッチスパイクでの燃料の増量量を大きくして、リッチ度合いを大きくすることで、リッチスパイクの実施期間C1を短くして、早期にリッチスパイクを終えることができる。
【0039】
[5]つまり、一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際に排気の空燃比をリッチにするための所定期間、つまり第1のリッチスパイクの実施期間C1を、全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際に排気の空燃比をリッチにするための所定期間、つまり第2のリッチスパイクD2の実施期間C2よりも短くする。これにより、上記の[4]と同様、トルク段差を抑制しつつ、一部の気筒燃料カットにおけるリッチスパイクの実施期間C1を短くして、早期にリッチスパイクを終えることが可能となる。
【0040】
[6]一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際には、第1のリッチスパイクD1により排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチに制御するのと同時に、点火プラグ20の点火時期を通常の点火時期よりも所定の遅角量F1だけ遅角側に制御する。このときの点火時期の遅角量F1は、燃料供給の再開により生じるトルク段差E1を抑制するように、機関回転速度が高いほど、また触媒31の酸素ストレージ量が多いほど、更にはリッチの度合いが大きいほど、遅角量F1が大きくなるように設定される。このように、燃料供給の再開とあわせて点火時期を遅角させることにより、燃料供給の再開に伴って生じるトルク段差E1を十分に抑制することができる。
【0041】
[7]上記[6]に加えて、上記全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際、第2のリッチスパイクD2により排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチに制御するのと同時に、点火プラグ20の点火時期を通常の点火時期よりも所定の遅角量F2だけ遅角側に制御する。そして、一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記遅角量F1と、全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記遅角量F2と、を異ならせており、つまり、燃料供給の再開に伴って発生するトルク段差を適切に抑制するように、それぞれのトルク段差E1,E2を勘案して、点火時期の遅角量F1,F2を個別に設定するようにしている。これによって、一部気筒燃料カットから燃料供給を再開する際と、全気筒燃料カットから燃料供給を再開する際と、のいずれの場合であっても、個々の状況に応じて適切にトルク段差E1,E2を抑制することが可能となる。
【0042】
[8]具体的には、上記一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する場合、全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する場合に比して、発生するトルク段差が小さいことから、点火時期の遅角量F1を小さくすれば良く、逆に、全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する場合には、発生するトルク段差が大きいことから点火時期の遅角量F2を大きくすれば良い(F1<F2)。
【0043】
[9]一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際、燃料供給の再開から第1のリッチスパイクD1を開始するまでの間に、所定のディレイ期間B1を設けており、これによって、燃料カットからの燃焼供給再開時における燃焼安定性を確保し、また、急激なトルク段差の発生を抑制することができる。
【0044】
[10]上記の[9]に加えて、全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際にも、燃料供給の再開時点t9から第2のリッチスパイクの開始時点t10までの間に、所定のディレイ期間B2を設けることで、燃料カットからの燃焼供給再開時における燃焼安定性を確保するとともに、急激なトルク段差の発生を抑制することができる。
【0045】
ここで、上記の実施例では、制御の簡素化のために、一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際のディレイ期間B1の長さと、全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際のディレイ期間B2の長さと、を同じ長さに設定しているが、トルク段差をより効果的に抑制するように、互いに異なる長さに設定しても良い。
【0046】
[11]具体的には、一部気筒燃料カットからのリカバー時は発生するトルク段差が小さくなることから、一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記ディレイ期間B1を、上記全気筒が燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際の上記ディレイ期間B2よりも短くすることで、トルク段差の発生を抑制しつつ、一部の気筒のみ燃料カットされている状態から燃料供給を再開する際のディレイ期間B1の短縮化を図ることができる。
【0047】
[12]所定の燃料カット条件が成立するのと同時に所定の全気筒燃料カット条件が成立した場合、
図2のステップS12からステップS17へ進み、上記一部の気筒の燃料カットを行わずに全気筒の燃料供給をカットする。これによって、例えば、燃料カット条件が成立する直前の機関負荷が小さく、発生するトルク段差が小さい場合には、一部の気筒の燃料カットを行わずに全気筒の燃料カットを実施することによって、トルク段差を抑制しつつ早期に燃料カットを終えることが可能となる。