(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マーカー菌付与装置は、オゾンガスは通過でき且つマーカー菌は通過できないフィルターにマーカー菌を保持させ、前記フィルターを前記移動手摺に付着させる請求項1に記載のマンコンベア。
前記マーカー菌付与装置によって前記移動手摺にマーカー菌が付着された後、所定時間経過しても前記判定装置によってマーカー菌の除菌完了が判定されない場合に、前記手摺除菌装置の異常を検出して外部への発報を行う発報手段と、
を更に備えた請求項1から請求項4の何れか一項に記載のマンコンベア。
前記マーカー付与装置によって前記移動手摺にマーカーが付着された後、所定時間経過しても前記判定装置によって除菌完了が判定されない場合に、前記手摺除菌装置の異常を検出して外部への発報を行う発報手段と、
を更に備えた請求項6から請求項9の何れか一項に記載のマンコンベア。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
また、以下においては、マンコンベアの一例として、上下階床間の移動の際に利用されるエスカレーターについて具体的な構成を説明し、動く歩道等の他の例については、その説明を省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるマンコンベアを示す要部側面図、
図2はその構成を示す図、
図3はこの発明の実施の形態1におけるマンコンベア用手摺除菌装置の構成を示す図である。
【0013】
図1はエスカレーターの下部乗降口を示している。
図1及び
図2において、1は乗客が上下階床間を移動する際に乗るステップ、2はステップ1の両側に設けられたデッキボード、3はデッキボード2に支持されたガラスパネル等の内側板、4はステップ1に乗降する乗客やステップ1上にいる乗客が掴むための移動手摺である。
【0014】
移動手摺4は、一般に、断面C字状を呈し、無端状に形成されている。移動手摺4は、ステップ1と同期するように駆動されており、その上側部分と乗降口における反転部分とが内側板3の縁部に沿って移動する。なお、移動手摺4の下側部分は、デッキボード2やトラス(図示せず)内を移動する。
【0015】
5はエスカレーターの制御盤、6は乗降口に立設されたポール、7はポール6に設けられた人感センサ、8はデッキボード2内に設けられた温湿度計、9は同じくデッキボード2内に設けられた手摺除菌装置である。
【0016】
制御盤5は、ステップ1や移動手摺4の走行制御等、エスカレーターの運行全体を制御する。制御盤5は、エスカレーター起動時の起動信号や、ステップ1(移動手摺4)の速度信号等を必要に応じて手摺除菌装置9に出力する。
人感センサ7は、エスカレーターの乗客の存在を、例えば乗客がステップ1に乗る前に検出する機能を有している。人感センサ7は、乗客の存在を検出すると、その検出信号を必要に応じて制御盤5や手摺除菌装置9に出力する。
【0017】
温湿度計8は、エスカレーター周囲の温度及び湿度を測定する機能を有している。なお、温湿度計8の設置場所は特に限定されるものではなく、例えば、手摺除菌装置9の近傍、制御盤5の近傍、ポール6等に温湿度計8を設置しても構わない。温湿度計8は、温度及び湿度の検出信号を、必要に応じて手摺除菌装置9に出力する。
【0018】
手摺除菌装置9は、除菌性能が高く、且つ近年手軽に使用できるようになったオゾンを用いて移動手摺4の除菌を行う機能を備えている。手摺除菌装置9は、例えば、乗降口近傍のデッキボード2(或いは、トラス)内に配置される。なお、手摺除菌装置9設置側の乗降口がエスカレーターの乗り口であれば、乗客が使用する直前の移動手摺4を除菌することができる。また、手摺除菌装置9設置側の乗降口がエスカレーターの降り口であれば、乗客が使用した直後の移動手摺4を除菌することができる。
以下に、
図3も参照し、手摺除菌装置9の構成について具体的に説明する。
【0019】
手摺除菌装置9は、処理装置10、オゾン発生器11、攪拌ファン12、排気用ポンプ13、オゾン分解触媒14、オゾン検知器15、動作制御手段16により、その要部が構成される。
【0020】
処理装置10は、例えば、所定の密閉度を有する箱状を呈しており、その内部に、オゾンによって移動手摺4の除菌を行うための処理室が形成されている。即ち、手摺除菌装置9では、この処理室内をオゾンで充満させ、その中に移動手摺4を通して除菌を行う。具体的に、本実施の形態における処理装置10には、仕切り板17によって2つの処理室18及び19が形成されており、処理室18及び19が、処理装置10の上側部分において、幅狭の連結部20で連結されている。なお、処理室18及び19は連結部20でのみ連結されており、他の部分では繋がっていない。
【0021】
また、処理装置10には、移動手摺4を処理室に通すための貫通孔21及び22が形成されている。貫通孔21は、処理装置10の一側上部に形成されており、処理室18に開口する。貫通孔22は、処理装置10の他側上部に形成されており、処理室19に開口する。貫通孔21及び22は、上記連結部20と一直線状の空間を形成しており、移動手摺4は、処理装置10内において、貫通孔21、処理室18、連結部20、処理室19、貫通孔22を順次貫通するように配置される。
【0022】
オゾン発生器11は、オゾンを発生させ、その発生させたオゾンを処理装置10の処理室内に供給する機能を有している。本実施の形態におけるオゾン発生器11は、発生させたオゾンを一方の処理室18内に供給する。なお、23は電源、24は電源23から電力の供給が行われるオゾン発生器11用の制御器である。オゾン発生器11の制御は、この制御器24を介して動作制御手段16により行われる。
【0023】
攪拌ファン12は、オゾン発生器11から供給されたオゾンを処理室内で攪拌するためのものである。攪拌ファン12は、例えば、オゾン発生器11と同様に処理室18内に設けられており、オゾン発生器11から処理室18内に供給されたオゾンを移動手摺4側に送ることができるように、オゾン発生器11に対して移動手摺4の反対側に配置される。なお、25は電源23から電力の供給が行われる攪拌ファン12用の制御器である。攪拌ファン12の制御は、この制御器25を介して動作制御手段16により行われる。
【0024】
排気用ポンプ13は、処理装置10の処理室内の空気を外部に排出するためのものである。排気用ポンプ13は、例えば、処理室19に接続された配管26から処理室19内の空気を吸引し、その吸引した空気を処理装置10の外部に排出する。なお、排気用ポンプ13が駆動されることによって処理室19内の空気が外部に排出されるため、排気用ポンプ13が駆動している間、処理室18及び19内は常に陰圧に保たれる。
【0025】
なお、
図3に示す構成の手摺除菌装置9では、外部の空気が貫通孔21及び22から処理室内に進入すると、その空気の大部分はオゾン発生器11においてオゾン化されることなく、処理室19から配管26を通過して外部に排出されてしまう。即ち、貫通孔21及び22から処理室内に空気が進入すると、処理室内のオゾン濃度が低下し、手摺除菌装置9の殺菌効果が低下してしまう。
【0026】
このような事態を防止するため、例えば、処理装置10の攪拌ファン12に近接する部分であって、攪拌ファン12の風上側となる部分(
図3に示すものでは、処理室18の下部)に、外部の空気を処理室内に取り込むための取込口(図示せず)を形成する。即ち、処理室内への空気の取り込みをこの取込口から行い、貫通孔21及び22から処理室内に空気が進入することを防止する。かかる構成であれば、取込口から処理室18内に取り込んだ空気をオゾン発生器11に供給してオゾンの生成を行うことができ、処理室内のオゾン濃度を高い状態に保つことが可能となる。なお、上記取込口は、排気用ポンプ13の吸引圧力に応じてその開口面積(取込口から処理室内に進入する空気量)が調整可能となるような構成であっても良い。
【0027】
オゾン分解触媒14は、オゾン発生器11で発生したオゾンがそのまま処理室の外に排出されてしまうことを防止するためのものである。例えば、オゾン分解触媒14は、処理室19と排気用ポンプ13とを接続する配管26の途中に設けられ、配管26を通過する空気中のオゾンを分解する。即ち、排気用ポンプ13によって処理室19から配管26内に吸引された空気は、このオゾン分解触媒14を通過する際にその中に含まれるオゾンが分解され、その後、排気用ポンプ13を通過して外部に排出される。なお、
図3に示すように、オゾン分解触媒14を排気用ポンプ13の前段に配置しておくことにより、排気用ポンプ13をオゾンから保護することも可能となる。
【0028】
オゾン検知器15は、所定の基準値以上のオゾンを検知する機能を有している。オゾン検知器15は、処理装置10の処理室内から漏れ出したオゾンを検知するために備えられたものであり、処理室の外部に設置される。なお、オゾン検知器15は、オゾンの有無を複数のレベルで検知できる機能を備えたものや、オゾンの濃度自体を検知できる機能を備えたもの(所謂、オゾン濃度計)であっても良い。オゾン検知器15は、例えば、所定の基準値以上のオゾン(即ち、処理室からのオゾン漏れ)を検知すると、動作制御手段16に対してその検知信号を出力する。
【0029】
動作制御手段16は、手摺除菌装置9に備えられている各構成の動作を制御する機能を有している。手摺除菌装置9には、所定のタイマ27も備えられており、動作制御手段16は、外部機器(例えば、制御盤5や人感センサ7等)からの入力信号や、タイマ27、オゾン検知器15からの入力信号等に基づいて、オゾン発生器11、攪拌ファン12、排気用ポンプ13等の各動作を適切に制御する。
【0030】
次に、
図4も参照し、上記構成を有するエスカレーター(特に、手摺除菌装置9)の動作について、具体的に説明する。
図4はこの発明の実施の形態1におけるマンコンベアの動作を示すフローチャートである。
【0031】
エスカレーターが起動されると(S101)、制御盤5によってステップ1及び移動手摺4が駆動される。エスカレーターの起動時、手摺除菌装置9ではオゾンの発生は停止されており、制御盤5から起動信号が入力されても、人感センサ7によって乗客が検出されるまでは、処理室内へのオゾンの供給は行われない(S102のNo、S103)。
【0032】
エスカレーターの起動後に人感センサ7によって乗客が検出されると(S102のYes)、人感センサ7から手摺除菌装置9に対して検出信号が入力される。手摺除菌装置9は、人感センサ7から検出信号を受信することにより、温湿度計8から現在の温度と湿度の各情報を取り込む(S104)。そして、手摺除菌装置9は、S104で取得した温度及び湿度の各情報に基づいて除菌条件を設定し、オゾンを発生させる(S105)。
【0033】
具体的に、動作制御手段16は、オゾン発生器11、攪拌ファン12、排気用ポンプ13を駆動するとともに、S104において測定された温度及び湿度に基づいて、オゾン発生器11から処理室18内に供給されるオゾンの量を調節する。この時、処理室内にオゾン濃度計を別途備えておくことにより、そのオゾン濃度計による測定濃度をフィードバックさせて、処理室内のオゾン濃度を一定に保持するような制御を行っても良い。
【0034】
なお、オゾン発生器11から処理室18内に供給されたオゾンは、攪拌ファン12によって処理室18内で移動手摺4に吹き付けられた後、排気用ポンプ13が動作することによって生じた気流に乗り、連結部20、処理室19、配管26を順次通って、オゾン分解触媒14に達する。そして、オゾン分解触媒14に到達したオゾンはオゾン分解触媒14において分解され、処理装置10の外部に排出される。なお、オゾン発生器11からオゾンが供給されている間は排気用ポンプ13が動作しているため、処理室18及び19内は常に陰圧に保たれており、オゾンが貫通孔21や22から外部に排出されることはない。
【0035】
S105においてオゾンの供給を開始すると、動作制御手段16は、タイマ27による計測時間と人感センサ7からの検出信号とに基づいて、直前の時間T1の間に、N人の乗客が検知されたか否かを判定する(S106)。なお、時間T1、及び、乗客の人数Nの各値は、記憶手段(図示せず)に予め記憶されている。
【0036】
直前の時間T1の間に検知された乗客がN人よりも少ない場合(即ち、エスカレーターの乗客が少ない場合)、動作制御手段16は、処理室18及び19内のオゾン濃度を、S105で設定した値から所定値まで下げるように各機器を制御する(S106のNo、S107)。動作制御手段16は、S107において処理室18及び19内のオゾン濃度を低下させると、次に、直前の時間T1の間に人感センサ7によって乗客が検知されたか否かを判定する(S108)。そして、直前の時間T1の間に人感センサ7から検出信号を受信していればS106に進み、人感センサ7から検出信号を受信していなければS103に進む。即ち、上記制御によれば、人感センサ7によって最後の乗客が検出されてから上記時間T1が経過すると、動作制御手段16は、オゾン発生器11からのオゾンの供給を停止させる(S108のNo、S103)。
【0037】
一方、直前の時間T1の間に検知された乗客がN人以上の場合(S106のYes)、動作制御手段16は、現在のオゾン濃度が最大に設定されているか否かを判定し(S109)、最大に設定されていなければ、処理室18及び19内のオゾン濃度が一段階上がるように各機器を制御する(S110)。その後、動作制御手段16は、オゾン検知器15からの検知信号に基づいて、オゾン漏れの有無を判定し(S111)、オゾン漏れが発生していなければS106に、発生していればS103に進んで上記処理を行う。
【0038】
この発明の実施の形態1によれば、除菌性能が高く、且つ近年手軽に使用できるようになったオゾンを用いて移動手摺4の除菌を行うことができる。即ち、上記構成の手摺除菌装置9であれば、オゾン発生器11から供給されたオゾンが処理室18から連結部20、処理室19に送られる際に、そのオゾンを移動手摺4の表面(外側面・C字状の内側面)全体に満遍なく当てることができ、優れた除菌効果を発揮できる。
【0039】
また、上記構成の手摺除菌装置9であれば、オゾン発生器11から処理室内に供給されたオゾンがそのまま外部に排出されたり、オゾンが貫通孔21又は22を通って外部に排出されたりする恐れもない。更に、万一オゾン漏れが発生しても、その発生をオゾン検知器15によって直ちに検知することができ、オゾンの供給停止等、適切な動作を迅速に行うことができる。
【0040】
また、上記構成の手摺除菌装置9では、直前の所定時間内に人感センサ7によって検出された乗客数に基づき、オゾン発生器11から処理室内に供給されるオゾンの量を調節している。このため、乗客が多い時はオゾン濃度を上げて除菌効率を高めたり、また、乗客が少ない場合は無駄なオゾンの発生を防止したりする等、状況に応じた適切な運転を実現することが可能となる。
【0041】
なお、本実施の形態では、処理室19から配管26に取り込んだ空気を、オゾン分解触媒14に通過させてから外部に排出する場合について説明した。しかし、オゾンには脱臭効果があるため、手摺除菌装置9において除菌のために使用したオゾンを、エスカレーターの他の部分で脱臭用として再利用しても良い。
図5はこの発明の実施の形態1におけるマンコンベア用手摺除菌装置の他の構成を示す図であり、手摺除菌装置9の排気ガスを脱臭用として再利用する場合の構成を示したものである。
【0042】
図5に示す手摺除菌装置9は、
図3に示すものからオゾン分解触媒14を取り除いたものに相当する。即ち、
図5に示す手摺除菌装置9では、排気用ポンプ13が動作することによって処理室19から配管26内に吸引された空気は、その中に含まれるオゾンが分解されることなく、配管26を通過する。なお、排気用ポンプ13の先には更に配管26aが接続されており、処理室19から吸引されたオゾンを含む空気は、この配管26aを通って、エスカレーターの主枠内(例えば、機械室内)に、或いは、特定部位に向けてそのまま放出される。
【0043】
エスカレーターでは、硫黄を含むオイルが使用されている場合がある。かかる場合、例えば、排気用ポンプ13からオイルの使用部位まで配管26aを伸ばすことにより、オゾンを含む空気を配管26aによってオイル使用部位まで導き、その使用部位に向けてオゾン(を含む空気)を放出する。これにより、硫黄特有の臭いをオゾンによって消すことができ、乗客の不快感を和らげることが可能となる。
【0044】
実施の形態2.
本実施の形態においては、
図6乃至
図13を参照し、手摺除菌装置9の他の構成例について具体的な説明を行う。
図6はこの発明の実施の形態2におけるマンコンベア用手摺除菌装置の構成を示す図、
図7、
図8、
図10乃至
図13はこの発明の実施の形態2におけるマンコンベア用手摺除菌装置の他の構成を示す図、
図9は
図8に示すオゾン発生器の構成を示す図である。
【0045】
図6に示す手摺除菌装置9は、処理装置10、オゾン発生器11、循環用ポンプ28、オゾン分解触媒29及び30、オゾン検知器15、動作制御手段16により、その要部が構成される。
【0046】
図6において、処理装置10は、2つの処理室18及び19が、連結部20の反対側で配管31によって連結されている。処理装置10の他の部分、及びオゾン発生器11、オゾン検知器15については、実施の形態1と同様の構成及び機能を有するため、詳細な説明は省略する。
【0047】
循環用ポンプ28は、処理室内の空気を循環させるためのものである。循環用ポンプ28は、例えば、処理室18及び19間を接続する配管31に設けられ、処理室19内の空気を連結部20を介さずに処理室18へと送ることができるように構成されている。即ち、循環用ポンプ28が動作することにより、処理装置10内の空気は、処理室18、連結部20、処理室19、配管31を順次通って、再び処理室18に戻るように循環する。なお、循環用ポンプ28は、処理装置10内の空気を循環させる循環手段の一例として示したものである。上記機能を備えることができれば、循環手段として、例えばファン等の他の手段を採用しても構わない。
【0048】
オゾン分解触媒29及び30は、処理室の内部において移動手摺4の周囲を取り巻くように、貫通孔21及び22の各近傍に設置されている。オゾン分解触媒29及び30の機能及び設置目的は、上記オゾン分解触媒14と同様である。
図6に示す手摺除菌装置9では、排気用ポンプ13が備えられていないため、オゾン供給中に処理室内を陰圧に保持しておくことができない。このため、処理室内の空気は、貫通孔21及び22を通って処理装置10の外部に排出される。オゾン分解触媒29は、処理室18内の空気が貫通孔21を介して外部に排出される際に、その空気中に含まれるオゾンを分解する機能を有している。また、オゾン分解触媒30は、処理室19内の空気が貫通孔22を介して外部に排出される際に、その空気中に含まれるオゾンを分解する機能を有している。
【0049】
動作制御手段16は、外部機器(例えば、制御盤5や人感センサ7等)からの入力信号や、タイマ27、オゾン検知器15からの入力信号等に基づいて、オゾン発生器11、循環用ポンプ28等の各動作を適切に制御し、例えば、
図4に示す処理フローを実施する。
【0050】
本構成によれば、循環用ポンプ28によって処理室内の空気を適切に循環させることができ、オゾン発生器11から供給されたオゾンが処理室18から連結部20、処理室19に送られる際に、そのオゾンを移動手摺4の表面(外側面・C字状の内側面)全体に満遍なく当てることができる。このため、
図3に示した手摺除菌装置9と同様に、優れた除菌効果を発揮できる。
【0051】
図7に示す手摺除菌装置9は、
図3に示す各構成に加え、処理装置10にローラ10aが設けられている。なお、ローラ10a以外の構成については、
図5或いは
図6に示す構成が採用されていても構わない。
【0052】
実施の形態1では、処理装置10に2つの貫通孔21及び22を形成し、この貫通孔21及び22に移動手摺4を通して、移動手摺4の一部を処理室内に配置する場合について説明した。しかし、貫通孔21及び22は、処理装置10の壁面に形成した単なる孔であるため、排気用ポンプ13を駆動すると、移動手摺4と処理装置10との隙間(即ち、貫通孔21及び22)から処理室内に空気が進入してしまう。なお、貫通孔21及び22から処理室内に空気が進入すると、上述したように、処理室内のオゾン濃度が低下し、殺菌効果の低下を招来してしまう。
【0053】
そこで、
図7に示す手摺除菌装置9では、処理室への出入口にローラ10aを設置し、このローラ10aによって、移動手摺4を処理室に通すための貫通孔21a及び22aを形成している。具体的に、ローラ10aは、移動手摺4を上下から挟み込むように配置され、外周面を移動手摺4に密着させたまま、移動手摺4の移動に連動して回転するように構成されている。ローラ10aは、移動手摺4と密着する材質であって、移動手摺4の材質に影響を与えない材質、例えば、ゴム等で構成される。
【0054】
ローラ10aによって貫通孔21a及び22aの全体を形成することができれば、移動手摺4と処理装置10との隙間を完全に閉塞して、当該部分からの空気の進入を完全に防止することができる。しかし、貫通孔21a及び22aの全体を形成することができなくても、ローラ10aによって少なくともその一部を形成することができれば、当該部分からの空気の進入を大幅に低減することができ、処理室内を高いオゾン濃度に維持することが可能となる。
【0055】
なお、貫通孔21a及び22aは、移動手摺4がローラ10a間に進入することによって初めて形成されるものであっても良いし、移動手摺4が存在しない状態で、処理室内に開口するものであっても良い。
【0056】
図8に示す手摺除菌装置9では、移動手摺4が、処理室18内において、オゾン発生器11の内部を通過している。その他の構成については、
図3、
図5乃至
図7に示す何れの構成が採用されていても構わない。
【0057】
オゾン発生器11は、酸素又は空気を原料として、放電法、紫外線照射法、放射線照射法等によってオゾンを生成することができる。
例えば、放電法の一種であるコロナ放電は、空気清浄機や空調機においても使用されている。針状の電極が空中に配置された状態で高い電圧が掛けられると、その針の先端周辺に気中放電が生じ、暗くするとその電極周辺にCorona(王冠)状の光が確認される。コロナ放電は、このように局所的に放射状の強い電界が存在する場合に現れる気中放電のことであり、かかる放電を行うことによりオゾンの生成を行うことができる。
【0058】
オゾン発生器11としてこのコロナ放電を利用する場合、オゾン発生器11では、その内部に備えられた針電極11aと平板電極11bとの間に放電を行ってオゾンを発生させる。この時、処理装置10の処理室内において、針電極11aと平板電極11bとの間を通過するように移動手摺4を配置し、移動手摺4の除菌を行う。
【0059】
本出願人が実験を行ったところ、針電極11a及び平板電極11bの外側でオゾンによる除菌を行う場合よりも、針電極11a及び平板電極11b間に対象菌を配置して除菌を行う場合の方が、より高い除菌効果が得られることが確認された。このため、移動手摺4を針電極11a及び平板電極11b間に配置することにより、より優れた除菌効果を発揮することが可能となる。
【0060】
図10に示す手摺除菌装置9には、
図3に示す各構成に加え、噴霧装置32が備えられている。なお、噴霧装置32以外の構成については、
図5乃至
図8に示す何れの構成が採用されていても構わない。
【0061】
噴霧装置32は、処理装置10の処理室内に過酸化水素を噴霧する機能を有している。即ち、
図10に示す手摺除菌装置9では、噴霧装置32の噴霧ノズル33から噴霧された過酸化水素に、オゾン発生器11から供給されたオゾンを吹き付けることにより、より酸化力の高い活性種からなるヒドロキシラジカルを生成して移動手摺4の除菌を行う。噴霧ノズル33は、生成されたヒドロキシラジカルが移動手摺4の表面全体に行き渡るように、例えば、移動手摺4に向けて、或いは、オゾン発生器11のオゾン供給口に向けて過酸化水素を噴霧する。
【0062】
そして、動作制御手段16は、例えば、
図4に示す処理フローにおいてオゾン発生器11から処理室内にオゾンを供給する際に噴霧装置32を動作させ、処理室内に過酸化水素を噴霧させる。この時、動作制御手段16は、オゾン濃度の設定に合わせて過酸化水素の噴霧量を調整しても良い。例えば、動作制御手段16は、オゾン濃度の設定が高ければ噴霧量を増やし、オゾン濃度の設定が低ければ噴霧量を減らす等、噴霧装置32の動作を適宜変更させる。
本構成によれば、より除菌効果の優れた手摺除菌装置9を提供することが可能となる。
【0063】
図11に示す手摺除菌装置9には、上記噴霧装置32に替えて塗布装置34が備えられている。なお、塗布装置34以外の構成については、
図5乃至
図8に示す何れの構成が採用されていても構わない。
【0064】
塗布装置34は、処理装置10の処理室内或いは処理室の手前で、移動手摺4の表面に過酸化水素を塗布する機能を有している。なお、
図11には、処理装置10の外部に塗布装置34を設置し、処理室の手前で過酸化水素の塗布を行うものを一例として示している。塗布装置34は、例えば、過酸化水素を染み込ませた布35を移動手摺4の移動に合わせて繰り出すことにより、この布35を、処理室に進入する直前の移動手摺4の表面に接触させて過酸化水素の塗布を行う。
【0065】
図11に示す手摺除菌装置9では、過酸化水素が塗布された移動手摺4を処理室内に進入させることにより、移動手摺4の表面上の過酸化水素と処理室内のオゾンとを反応させてヒドロキシラジカルを生成し、移動手摺4の除菌を行う。
本構成によっても、より除菌効果の優れた手摺除菌装置9を提供することができる。
【0066】
図12に示す手摺除菌装置9は、処理装置10、オゾン発生器11、排気用ポンプ13、オゾン分解触媒14、オゾン検知器15、ブラシ装置36、動作制御手段16により、その要部が構成される。
【0067】
本手摺除菌装置9では、処理装置10に処理室が一つだけ形成されており、この処理室37内にオゾン発生器11と後述のブラシ装置36とが設けられている。なお、処理装置10には処理室が一つしか形成されていないため、貫通孔21及び22は双方とも処理室37に開口し、移動手摺4は、処理装置10内において、貫通孔21、処理室37、貫通孔22を順次貫通するように配置される。また、処理室37と排気用ポンプ13とを接続する配管26も処理室37に開口し、オゾン分解触媒14は、この配管26の途中に設けられている。処理装置10の他の部分、及びオゾン発生器11、排気用ポンプ13、オゾン分解触媒14、オゾン検知器15、動作制御手段16については、実施の形態1と同様の構成及び機能を有するため、詳細な説明は省略する。
【0068】
ブラシ装置36は、処理室37内で移動手摺4の表面に付着したゴミを取り除くためのものである。ブラシ装置36は、例えば、ロータ軸38に連結された三連のブラシ39を備えており、ブラシ39を移動手摺4の表面に接触させて付着したゴミを掻き落とす。また、ブラシ装置36では、定期的にロータ軸38を回転させて一部のブラシ39を休ませ、その休ませたブラシ39を洗浄液に浸して処理室37内でブラシ39の洗浄を行う。
【0069】
なお、
図12に示すブラシ装置36には、三連のブラシ39が備えられているが、これは単に一例を示したものである。ブラシ装置36は、少なくとも2つのブラシを備え、それらがゴミの掻き落としと洗浄とを周期的に移動する構成を有していれば良い。
【0070】
本構成によれば、オゾンによって移動手摺4の表面全体を除菌しながら、移動手摺4の表面に付着しているゴミをブラシ装置36によって取り除くことができる。なお、ブラシ装置36によって処理室37内に掻き落とされたゴミにもゴミが含まれているが、この菌についても、オゾン発生器11から処理室37内に供給されたオゾンによって除菌することができる。また、ブラシ39が処理室37内で定期的に洗浄されるため、ブラシ39自体を清潔に保つこともできる。なお、
図12に示すように、配管26を処理室37の上部に接続しておけば、処理室37内に落下したゴミが配管26内に進入する恐れもない。
【0071】
図13に示す手摺除菌装置9は、処理装置10、オゾン発生器11、排気用ポンプ13、オゾン分解触媒14、オゾン検知器15、ブラシ装置40、動作制御手段16により、その要部が構成される。
【0072】
本手摺除菌装置9では、処理装置10に2つの処理室41及び42が形成されており、処理室41及び42は、弁43を介して上下に連結されている。
上側の処理室41は、移動手摺4が通過するための空間を形成する。即ち、貫通孔21及び22は処理室41に開口しており、移動手摺4は、処理装置10内において、貫通孔21、処理室41、貫通孔22を順次貫通するように配置される。処理室41は、弁43を介して下側の処理室42に連結されており、弁43の設置位置が最下となるように、例えば、その底面が斜めに形成されている。
【0073】
また、処理室41には、その内部にブラシ装置40が設けられている。ブラシ装置40は、処理室41内において移動手摺4の表面に付着したゴミを取り除くためのものである。ブラシ装置40によって移動手摺4の表面から掻き落とされたゴミは、処理室41の底面を滑って弁43に達し、更に弁43を通過して下側の処理室42内に落下する。
【0074】
下側の処理室42は、オゾンによって上記ゴミに含まれる菌を除菌するための空間を形成する。即ち、オゾン発生器11は、処理室42内にオゾンを供給する。また、排気用ポンプ13に接続された配管26は、処理室42に開口するように処理装置10に接続されている。このため、排気用ポンプ13が駆動している間は処理室42が陰圧に保たれており、オゾン発生器11から処理室42内に供給されたオゾンは、処理室41に進入することなく、配管26を通ってオゾン分解触媒14で分解される。
【0075】
本構成によれば、移動手摺4の表面に付着しているゴミをブラシ装置40によって取り除き、そのゴミに含まれる菌をオゾンによって除菌することができる。なお、オゾン発生器11から供給されたオゾンは処理室41に進入することはなく、オゾンが移動手摺4に当たることはない。このため、オゾンを用いた除菌を実現し、且つ、移動手摺4をオゾンから保護することができる。
【0076】
手摺除菌装置9として本実施の形態に示す各構成を採用しても、除菌性能が高く、且つ近年手軽に使用できるようになったオゾンを用いて移動手摺4の除菌を行うことができる。なお、本実施の形態において説明しなかった事項については、実施の形態1と同様である。
【0077】
実施の形態3.
本実施の形態においては、
図14及び
図15を参照し、エスカレーター(特に、手摺除菌装置9)の他の動作例について具体的な説明を行う。なお、手摺除菌装置9については、実施の形態1及び2で示した何れの構成が採用されていても構わない。
【0078】
図14はこの発明の実施の形態3におけるマンコンベアの動作を示すフローチャートである。
エスカレーターが起動されると(S201)、制御盤5によってステップ1及び移動手摺4が駆動される。エスカレーターの起動時、手摺除菌装置9ではオゾンの発生は停止されている。そして、手摺除菌装置9では、制御盤5から起動信号が入力されることにより、動作制御手段16が、人感センサ7によって乗客が検出されたか否かの判定を行う(S202)。
【0079】
人感センサ7によって乗客が検出され、その検出信号が手摺除菌装置9に入力されると(S202のYes)、動作制御手段16は、オゾン発生器11からオゾンを発生させ、処理装置10の処理室内が所定の通常オゾン濃度となるように、処理室内をオゾンで充満させる(S203)。
【0080】
一方、人感センサ7によって乗客の存在が検出されない場合(S202のNo)、動作制御手段16は、オゾン発生器11からオゾンを発生させ、処理装置10の処理室内が上記通常オゾン濃度よりも高い所定の高オゾン濃度となるように、処理室内をオゾンで充満させる(S204)。なお、乗客検出時に
図4に示す処理フローを行う場合は、例えば、S204における高オゾン濃度を、S109において最大と認識されるオゾン濃度よりも高く設定して、オゾンの供給を行う。そして、動作制御手段16は、上記高オゾン濃度による運転を所定時間行うと、オゾン発生器11からのオゾンの供給を停止し、処理を終了する(S205)。
【0081】
このような制御を行うことにより、乗客がいない時に処理室内のオゾン濃度を高めて確実な除菌処理を行うことができる。乗客がいなければ、上記通常オゾン濃度を超えて運転を行っても、特に問題が生じる恐れはない。
なお、
図14のS202以下に示す処理フローは、所定のスケジュールに応じて開始したり、所定の動作指令が入力された際に開始したりしても良い。
【0082】
また、
図15はこの発明の実施の形態3におけるマンコンベアの他の動作を示すフローチャートである。
エスカレーターが起動されると(S301)、制御盤5においてエスカレーター(ステップ1・移動手摺4)の速度検出が行われ、その速度信号が手摺除菌装置9に入力される(S302)。手摺除菌装置9では、制御盤5から速度信号が入力されることにより、動作制御手段16が、その速度信号に基づいてオゾン発生器11等の制御を行う。
【0083】
例えば、動作制御手段16は、エスカレーターが加速中又は所定の一定速(≠0)で走行中であれば、オゾン発生器11からオゾンを発生させ、処理室内をオゾンで充満させる(S303のYes、S304)。一方、エスカレーターが減速中又は停止中であれば、動作制御手段16は、オゾン発生器11からのオゾンの供給を停止し、処理を終了する(S303のNo、S305)。
【0084】
このような制御を行うことにより、エスカレーターの速度に合わせた最適な除菌処理を行うことができるようになる。なお、本構成では、エスカレーターの速度に合わせてオゾンの供給を制御するため、人感センサ7の検出信号を手摺除菌装置9に入力する必要はない。本構成は、例えば、乗客がいない時に低速待機或いは停止待機するエスカレーターに好適である。
【0085】
なお、上記においては、エスカレーターの速度を制御盤5で検知し、制御盤5からの検知信号を手摺除菌装置9に入力する場合について説明した。しかし、これは単に一例を示したものであり、エスカレーターの速度を検出する手段(速度検出手段)として他の構成が採用されていても構わない。例えば、手摺除菌装置9の処理室内に移動手摺4の移動に連動して回転するローラ等を設置し、このローラの回転数(角度)をエンコーダで検出してエスカレーターの速度を取得しても良い。
【0086】
実施の形態4.
本実施の形態においては、
図16乃至
図21を参照し、手摺除菌装置9を備えたエスカレーターの構成例について具体的な説明を行う。なお、手摺除菌装置9については、実施の形態1及び2で示した何れの構成が採用されていても構わない。
【0087】
図16はこの発明の実施の形態4におけるマンコンベアの構成を示す要部側面図である。
図16に示すエスカレーターでは、手摺除菌装置9は、中間傾斜部(ステップ1が斜めに移動する区間)のデッキボード2(或いは、トラス)内に配置されている。手摺除菌装置9を中間傾斜部に配置した場合、例えば、手摺除菌装置9を移動手摺4に沿って移動可能に構成しておけば、移動手摺4に合わせて手摺除菌装置9を移動させながら除菌処理を行うこともできる。
【0088】
本構成によれば、移動手摺4の同じ位置にオゾンを連続して当てることができ、処理室内のオゾン濃度を低く設定しても、優れた除菌効果が期待できる。
【0089】
図17はこの発明の実施の形態4におけるマンコンベアの他の構成を示す要部側面図、
図18は
図17に示すマンコンベアの要部詳細図、
図19は
図17に示すマンコンベアのブロック構成図である。
図17乃至
図19に示すエスカレーターには、手摺除菌装置9や人感センサ7等の他、マーカー菌付与装置44、マーカー菌判定装置45、表示装置46が備えられている。なお、手摺除菌装置9はエスカレーターの中間傾斜部に設置されていても構わない。
【0090】
マーカー菌付与装置44は、オゾンによって除菌可能な所定のマーカー菌を移動手摺4の表面に付着させる機能を有している。例えば、マーカー菌付与装置44は、所定のフィルター47にCTC染色されたマーカー菌を保持させ、このフィルター47ごと移動手摺4の表面に付着させる。なお、マーカー菌を、オゾンガスは通過でき且つマーカー菌は通過できない所定の保護膜で覆った状態でフィルター47に保持させておけば、マーカー菌(フィルター47)を移動手摺4に付着させた後も、マーカー菌の飛散を防止できる。
【0091】
マーカー菌判定装置45は、マーカー菌付与装置44によって移動手摺4に付着されたマーカー菌が、手摺除菌装置9の除菌処理によって除菌されたか否かを判定する機能を有している。マーカー菌判定装置45は、例えば、発光素子48、受光素子49、判定手段50、制御手段51、発報手段52を備えており、マーカー菌の除菌状態を複数のレベルで判定する。
【0092】
発光素子48は、移動手摺4(具体的には、移動手摺4に付着されたフィルター47)に対して所定の光を照射する機能を有している。移動手摺4に付着されたフィルター47の内部のマーカー菌は、発光素子48からの光が照射されることにより、呼吸活性を有する菌が発色する。受光素子49は、この発色したマーカー菌からの光を受光し、その受光結果を判定手段50に出力する。判定手段50は、受光素子49の受光結果に基づいて、例えば、呼吸活性を有するマーカー菌の数をカウントし、検出した細菌数に応じて移動手摺4の清潔度を決定する。
【0093】
上記発光素子48及び受光素子49の各動作は、制御手段51によって制御される。また、制御手段51は、表示装置46の表示を制御する表示制御手段としての機能も有しており、判定手段50の判定結果に基づいて、表示装置46に移動手摺4の清潔度を表示させる。
【0094】
例えば、表示装置46は、赤・黄・青等の色や数値等によって移動手摺4の清潔度を複数のレベルで表示できるように構成される。制御手段51は、判定手段50の判定結果に基づいて表示装置46の表示内容を制御し、例えば、判定手段50が判定した清潔度レベルに応じた表示を行わせる。これにより、エスカレーターの乗客は、移動手摺4が清潔に保たれているか否かを表示装置46の表示を見ることによって確認でき、安心して移動手摺4を掴むことができるようになる。
【0095】
なお、制御手段51は、判定手段50によって検出された細菌数が所定値以下になった場合(移動手摺4の所定の清潔度が検出された場合)に所定の信号を出力し、マーカー菌付与装置44に、移動手摺4上のフィルター47の回収動作を行わせても良い。
【0096】
発報手段52は、手摺除菌装置9の異常を検出し、その異常を外部に発報する機能を有している。マーカー菌付与装置44から移動手摺4の表面にフィルター47が付着された場合、フィルター47内のマーカー菌は、手摺除菌装置9の除菌機能が正常であれば、一定時間経過後には全ての菌が除菌される。即ち、マーカー菌付与装置44から移動手摺4にマーカー菌が付着された後、上記一定時間が経過してもマーカー菌判定装置45によって除菌の完了が検出されない場合は、手摺除菌装置9の除菌機能に異常が発生している可能性がある。このため、発報手段52は、かかる場合に外部への異常発報を行い、例えば、表示装置46に所定の表示をさせたり、監視盤や保守会社等への通報を行ったりする。
【0097】
図20はこの発明の実施の形態4におけるマンコンベアの他の構成を示す要部側面図、
図21は
図20に示すマンコンベアのブロック構成図である。
図20及び
図21に示すエスカレーターには、手摺除菌装置9や人感センサ7等の他、マーカー付与装置53、清潔度判定装置54、表示装置46が備えられている。なお、手摺除菌装置9はエスカレーターの中間傾斜部に設置されていても構わない。
【0098】
マーカー付与装置53は、移動手摺4に付着している菌を検出するための所定のマーカーを移動手摺4に付着させる機能を有している。例えば、マーカー付与装置53は、移動手摺4に付着している菌をCTC染色するための所定のマーカーを移動手摺4の表面に塗布する。
【0099】
清潔度判定装置54は、マーカー付与装置53によって移動手摺4の表面に付着されたマーカーに基づいて、移動手摺4の除菌状態を判定する機能を有している。清潔度判定装置54は、例えば、発光素子55、受光素子56、判定手段57、制御手段58、発報手段59を備えており、移動手摺4の除菌状態を複数のレベルで判定する。
【0100】
発光素子55は、移動手摺4に対して所定の光を照射する機能を有している。マーカー付与装置53によってCTC染色された移動手摺4表面上の菌は、発光素子55からの光が照射されることにより、呼吸活性を有するものが発色する。受光素子56は、この発色した菌からの光を受光し、その受光結果を判定手段57に出力する。判定手段57は、受光素子56の受光結果に基づいて、例えば、呼吸活性を有する菌の数をカウントし、検出した細菌数に応じて移動手摺4の清潔度を決定する。
【0101】
上記発光素子55及び受光素子56の各動作は、制御手段58によって制御される。また、制御手段58は、表示装置46の表示を制御する表示制御手段としての機能も有しており、判定手段57の判定結果に基づいて、表示装置46に移動手摺4の清潔度を表示させる。なお、表示装置46が移動手摺4の清潔度を複数のレベルで表示できる構成を有する場合、制御手段58は、判定手段57が判定した清潔度レベルに応じて表示装置46の表示を変更する。
【0102】
発報手段59は、手摺除菌装置9の異常を検出し、その異常を外部に発報する機能を有している。移動手摺4に付着している菌は、手摺除菌装置9の除菌機能が正常であれば、除菌処理の開始後一定時間が経過するまでに全ての菌が除菌される。即ち、マーカー付与装置53から移動手摺4にマーカーが付着された後、上記一定時間が経過しても清潔度判定装置54によって除菌の完了が検出されない場合は、手摺除菌装置9の除菌機能に異常が発生している可能性がある。このため、発報手段59は、かかる場合に外部への異常発報を行い、例えば、表示装置46に所定の表示をさせたり、監視盤や保守会社等への通報を行ったりする。
【0103】
なお、菌をCTC染色するためのマーカー以外にも、オゾンと反応する物質であって除菌効果との相関を得ることができる物質であれば、マーカーとして利用することができる。
【0104】
例えば、インジゴ等、オゾンによって脱色される試料をマーカーとして利用し、マーカー付与装置53から所定量の試料を移動手摺4の表面に塗布する。なお、移動手摺4に塗布する試料の量は、例えば、必要殺菌CT値(濃度×時間)で脱色が完了する量に基づき決定される。そして、清潔度判定装置54は、マーカー付与装置53から移動手摺4の表面に塗布された試料の脱色状態によって、移動手摺4の除菌状態を評価(判定)し、その評価結果(移動手摺4の清潔度)を表示装置46に表示させる。また、発報手段59は、除菌処理の開始後一定時間が経過するまでに試料の脱色が完了しなければ、外部への異常発報を行う。
【0105】
なお、上記インジゴは、オゾンによって脱色され、青色から無色透明に変化する。マーカーとしてインジゴが使用されている場合、清潔度判定装置54は、例えば、600nmの吸光度を測定することにより、試料の脱色状態を正確に評価することができる。
【0106】
実施の形態5.
上記各実施の形態においては、移動手摺4を除菌するための装置(手摺除菌装置9)がエスカレーターの現場に予め据え付けられている場合について説明した。本実施の形態では、エスカレーターの保守員等が各現場に持ち込んで移動手摺4の除菌処理を行うことができる携帯型(可搬型)の装置について具体的な説明を行う。
【0107】
図22はこの発明の実施の形態5におけるマンコンベア用手摺除菌装置の構成を示す図、
図23は
図22に示すマンコンベア用手摺除菌装置の底面図である。
図22及び
図23に示す手摺除菌装置60は、上記手摺除菌装置9と同様に、除菌性能が高く、且つ近年手軽に使用できるようになったオゾンを用いて移動手摺4を除菌する機能を備えている。この可搬型の手摺除菌装置60は、例えば、処理装置61、オゾン発生器62、攪拌ファン63、シール材64、動作制御手段(図示せず)により、その要部が構成されている。
【0108】
処理装置61は、例えば、上部に把手65が設けられ、その内部に、下方に開口する処理室66が形成されている。上記開口は、移動手摺4の幅よりも僅かに狭い幅の長方形状を呈しており、この開口を形成する処理装置61の縁部全体にシール材64が設けられている。
【0109】
オゾン発生器62及び攪拌ファン63は、上記オゾン発生器11及び攪拌ファン12と同様の機能を有している。即ち、オゾン発生器62は、処理室66内にオゾンを供給する機能を、攪拌ファン63は、オゾン発生器62から処理室66内に供給されたオゾンを処理室66内で攪拌させる機能を有している。オゾン発生器62及び攪拌ファン63の動作は、例えば、ON/OFF釦等の入力信号に基づいて、動作制御手段によって制御される。
【0110】
上記構成の手摺除菌装置60を使用する場合、エスカレーターの保守員は、把手65を持って処理装置61(装置全体)を持ち上げ、処理装置61の下面に形成された上記開口が移動手摺4によって塞がれるように、処理装置61を移動手摺4に載せる。そして、保守員は、その状態で処理装置61を移動手摺4に押し付けることにより、シール材64を移動手摺4の上面に密着させて、処理室66を所定の密閉状態で外気から遮断する。即ち、この状態で処理室66内をオゾンで充満させることにより、上記開口を介して処理室66に面する移動手摺4の表面を除菌することができる。
【0111】
なお、移動手摺4はステップ1と同期して移動するため、例えば、処理装置61の上記縁部にローラを回動自在に固定し、このローラの表面にシール材64を設けても良い。かかる構成であれば、ローラの表面に設けられたシール材64が移動手摺4に押し付けられると、移動手摺4の移動に連動してローラが回転し、処理室66の密閉状態を確保しまま除菌処理を行うことができる。
【0112】
図24はこの発明の実施の形態5におけるマンコンベア用手摺除菌装置の他の構成を示す図である。
図24に示す手摺除菌装置60には、
図22に示す各構成に加え、処理室66内に加湿器67が備えられている。
【0113】
加湿器67は、処理室66内を加湿する機能を有している。オゾンによる除菌効果は、湿度が上がると高くなる。このため、動作制御手段は、例えば、オゾン発生器62からオゾンの供給を行う際に加湿器67も動作させ、処理室66内の加湿を行う。
本構成によれば、より除菌効果の優れた手摺除菌装置9を提供することが可能となる。
【0114】
図25はこの発明の実施の形態5におけるマンコンベア用手摺除菌装置の他の構成を示す図である。
図25に示す手摺除菌装置60には、
図22に示す各構成に加え、処理室66内に殺菌灯68が備えられている。
【0115】
殺菌灯68は、処理室66内に所定の波長の光を照射する機能を有している。殺菌灯68は、例えば、254nmの波長の光を処理室66内に照射することにより、この光によって、オゾン発生器62から供給されたオゾンを分解し、処理室66内に酸素原子を生成させる(O
3⇒O
2+O)。
本構成によれば、より酸化力の高い酸素原子(O)を用いて移動手摺4の除菌を行うことができ、優れた除菌効果が期待できる。
【0116】
図26はこの発明の実施の形態5におけるマンコンベア用手摺除菌装置の他の構成を示す図である。
図26に示す手摺除菌装置60には、
図22に示す各構成に加え、処理室66内に塗布装置69が備えられている。
【0117】
塗布装置69は、処理室66内において移動手摺4の表面に過酸化水素を塗布する機能を有している。塗布装置69は、例えば、過酸化水素を貯蔵するタンク70と、処理室66内に回動自在に設けられた塗布ローラ71とにより構成される。塗布ローラ71は、例えば、その外周部分がスポンジ状を呈しており、上部がタンク70内の過酸化水素に浸されるように配置される。そして、塗布ローラ71は、シール材64が移動手摺4の表面に密着された際にその下部が移動手摺4に接触し、移動手摺4の移動とともに回転しながら過酸化水素を移動手摺4の表面に塗布する。
【0118】
本構成によれば、移動手摺4に塗布された過酸化水素とオゾン発生器62からのオゾンとを反応させて、処理室66内で酸化力の高いヒドロキシラジカルを生成し、移動手摺4の除菌を行うことできる。なお、塗布装置69に替えて噴霧装置(図示せず)を設置し、この噴霧装置から処理室66内に過酸化水素を噴霧して、ヒドロキシラジカルを生成しても良い、
【0119】
図27はこの発明の実施の形態5におけるマンコンベア用手摺除菌装置の他の構成を示す図である。
図27に示す手摺除菌装置60には、
図22に示す各構成に加え、処理室66の外部にマーカー菌判定装置72が備えられている。
【0120】
マーカー菌判定装置72は、マーカー菌判定装置45と同様の機能を有しており、所定の方法によって移動手摺4に付着された所定のマーカー菌が、手摺除菌装置60の除菌処理によって除菌されたか否かを判定する。マーカー菌判定装置72は、発光素子73、受光素子74、判定手段、制御手段(共に図示せず)を備えており、マーカー菌の除菌状態を複数のレベルで判定する。そして、制御手段は、判定手段によって移動手摺4が所定の清潔な状態であることが判定されると、オゾン発生器62からのオゾンの供給を停止させて除菌処理を終了させる。
なお、発光素子73等、上記各構成の他の機能については、マーカー菌判定装置45と同様である。
【0121】
図28はこの発明の実施の形態5におけるマンコンベア用手摺除菌装置の他の構成を示す図である。
図28に示す手摺除菌装置60には、
図22に示す各構成に加え、処理室66内にマーカー菌付与装置75と上記マーカー菌判定装置72とが備えられている。
【0122】
マーカー菌付与装置75は、マーカー菌付与装置44と同様の機能を有しており、オゾンによって除菌可能な所定のマーカー菌を移動手摺4の表面に付着させる。マーカー菌付与装置75は、例えば、CTC染色させたマーカー菌を移動手摺4の表面に付着させることにより、マーカー菌判定装置72に、呼吸活性を有するマーカー菌の検出を行わせる。
【0123】
なお、本実施の形態では、処理装置61に、下方に開口する処理室66が形成されたものについて具体的な説明を行った。しかし、処理装置については、上記構成の他、
図3に示す構成、即ち移動手摺4を処理室に貫通させる構成を採用しても構わない。かかる場合、手摺除菌装置60の処理装置に、除菌を行うための処理室とこの処理室に開口する2つの貫通孔とを形成し、移動手摺4を、一方の貫通孔、処理室、他方の貫通孔に順次貫通するように配置した状態で、オゾン発生器62から処理室内にオゾンを供給する。
【0124】
かかる場合、処理装置の一部を他部に対して着脱或いは変位可能(例えば、開閉自在)に構成しておく。そして、保守員は、エスカレーターの設置現場において、処理装置の一部を他部から取り外す或いは他部に対して変位させ、移動手摺4を処理室と貫通孔とに対して適切に配置し、処理室内にオゾンを供給して移動手摺4の除菌処理を行う。
かかる構成によっても、上記と同様の効果を奏することができる。