特許第5796663号(P5796663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796663
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】電動機用ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20151001BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20151001BHJP
   H02K 1/28 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   H02K15/03 Z
   H02K1/27 501D
   H02K1/27 501K
   H02K1/28 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-99044(P2014-99044)
(22)【出願日】2014年5月12日
(62)【分割の表示】特願2011-24550(P2011-24550)の分割
【原出願日】2011年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-143918(P2014-143918A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年5月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進
(72)【発明者】
【氏名】前田 秀
(72)【発明者】
【氏名】横山 剛
(72)【発明者】
【氏名】大浦 卓也
(72)【発明者】
【氏名】郡 智基
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−161209(JP,A)
【文献】 特開2008−042967(JP,A)
【文献】 特開2008−199890(JP,A)
【文献】 特開2007−282358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H02K 1/27
H02K 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望形状に形成した鉄心片を複数積層して積層鉄心を形成する積層工程と、
上記積層鉄心に設けられた磁石挿入穴に磁石を挿入する磁石挿入工程と、
上記積層鉄心を加熱装置によって加熱した後、該積層鉄心を樹脂充填装置に搬送し、該積層鉄心の上記磁石挿入穴に磁石固定用の溶融樹脂を充填する樹脂充填工程と、
該樹脂充填工程における上記積層鉄心の加熱による余熱を利用し、上記積層鉄心の回転軸挿入穴に回転軸を温間嵌めする回転軸組付け工程とを有し、
上記樹脂充填工程においては、上記溶融樹脂を上記磁石挿入穴に充填するための吐出口を有するゲートプレートを用い、該ゲートプレートに載置された状態の上記積層鉄心を上記加熱装置によって加熱した後、上記ゲートプレートに載置された状態の上記積層鉄心を上記樹脂充填装置に搬送することを特徴とする電動機用ロータの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機用ロータの製造方法において、上記樹脂充填工程は、積層鉄心を150℃〜200℃の温度範囲に加熱した状態で行い、上記回転軸組付け工程は、上記積層鉄心が上記樹脂充填工程の余熱によって140℃〜180℃の温度範囲にある間に行うことを特徴とする電動機用ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心と回転軸とからなる電動機用ロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機に用いる電動機用ロータにおいて、積層鉄心に回転軸を固定する方法としては、積層鉄心を加熱して回転軸挿入穴の内径を拡径し、回転軸を回転軸挿入穴に挿入した後、冷却して回転軸挿入穴の内径を縮径するという温間嵌めが多く用いられている。温間嵌めを行う際の積層鉄心を加熱する方法としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に示された加熱コイルによる電磁誘導加熱を用いる方法や、特許文献3に示された加熱された油中に積層鉄心を浸す方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−82349号公報
【特許文献2】特開2007−152517号公報
【特許文献3】特開2001−87949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜特許文献3に記載された方法は、いずれの方法においても、温間嵌め専用の加熱装置が必要となり、電動機用ロータを製造する生産ライン内に温間嵌め専用の加熱装置を追加する必要がある。また、電動機用ロータの製造方法においては、温間嵌め以外の工程でも積層鉄心の加熱が行われる場合がある。例えば、積層鉄心に永久磁石を固定する樹脂充填工程と、上述の温間嵌め工程が行われる場合があり、この場合には、樹脂充填工程及び温間嵌め工程にそれぞれ加熱工程が設けられる。昨今の省エネルギー化及びコスト低減志向が高まる中においては、複数回の加熱と冷却が行われる場合の、加熱と冷却にかかる時間や、電力等のエネルギー消費量等を低減して、生産効率向上と省エネルギー化を図るための技術開発が必要である。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、生産効率を向上させると共に省エネルギー化に貢献することができる電動機用ロータの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所望形状に形成した鉄心片を複数積層して積層鉄心を形成する積層工程と、
上記積層鉄心に設けられた磁石挿入穴に磁石を挿入する磁石挿入工程と、
上記積層鉄心を加熱装置によって加熱した後、該積層鉄心を樹脂充填装置に搬送し、該積層鉄心の上記磁石挿入穴に磁石固定用の溶融樹脂を充填する樹脂充填工程と、
該樹脂充填工程における上記積層鉄心の加熱による余熱を利用し、上記積層鉄心の回転軸挿入穴に回転軸を温間嵌めする回転軸組付け工程とを有し、
上記樹脂充填工程においては、上記溶融樹脂を上記磁石挿入穴に充填するための吐出口を有するゲートプレートを用い、該ゲートプレートに載置された状態の上記積層鉄心を上記加熱装置によって加熱した後、上記ゲートプレートに載置された状態の上記積層鉄心を上記樹脂充填装置に搬送することを特徴とする電動機用ロータの製造方法にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、上記樹脂充填工程における上記積層鉄心の加熱による余熱を利用し、上記積層鉄心の回転軸挿入穴に回転軸を温間嵌めする回転軸組付け工程を有している。そのため、上記電動機用ロータの製造方法を実施する生産ラインにおいては、温間嵌めを行うために上記積層鉄心を加熱する装置を配する必要がない。そして、本来、上記樹脂充填工程及び回転軸組付け工程の2つの工程それぞれに専用の加熱工程を設ける必要があるところを、加熱工程としては上記樹脂充填工程の中の1工程とすることができる。これにより、設備費用の低減だけでなく、電動機用ロータを生産する際の加熱及び冷却時間の短縮、及び電力等のエネルギーの低減を図る事ができる。それゆえ、上記電動機用ロータの生産効率をさらに向上させるとともに、省エネルギー化を図ることができる。
【0008】
このように、本発明によれば、生産効率を向上させると共に省エネルギー化に貢献することができる電動機用ロータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1における、電動機用ロータの製造方法を実行する生産ラインを示す説明図。
図2】実施例1における、積層鉄心を示す平面図。
図3】実施例1における、ゲートプレートの平面図。
図4】実施例1において、積層鉄心をゲートプレート上に載置した状態における図3のA−A線矢視相当の断面図。
図5】実施例1において、積層鉄心をゲートプレート上に載置した状態における図3のB−B線矢視相当の部分拡大断面図。
図6】実施例1における、ゲートプレートと連結した樹脂充填装置を示す説明図。
図7】実施例1における、回転軸組付け工程を示す断面図。
図8】比較例1における、発明例の樹脂充填工程及び回転軸組付け工程の加熱及び冷却条件を示す時間−温度グラフ。
図9】比較例1における、比較例の樹脂充填工程の加熱及び冷却条件を示す時間−温度グラフ。
図10】比較例1における、比較例の回転軸組付け工程の加熱及び冷却条件を示す時間−温度グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、上記樹脂充填工程は、積層鉄心を150℃〜200℃の温度範囲に加熱した状態で行い、上記回転軸組付け工程は、上記積層鉄心が上記樹脂充填工程の余熱によって140℃〜180℃の温度範囲にある間に行うことが好ましい。この場合には、上記樹脂充填工程における樹脂充填作業及び上記回転軸組付け工程における温間嵌め作業を確実に行うことができる。
【0011】
上記樹脂充填工程における加熱温度が150℃以下の場合には、樹脂充填作業において溶融樹脂の流れ不良や成形不良等が生じるおそれがある。また、上記積層鉄心の加熱温度が200℃超の温度領域においては、樹脂の耐熱温度を超えるおそれがある。
上記回転軸組付け工程おける上記積層鉄心の温度が140℃以下の場合には、回転軸挿入穴の内径が十分に拡径せず、組付けができないおそれがある。また、上記積層鉄心の温度が180℃超の温度領域においては、上記樹脂充填工程の余熱では対応することが難しく、再加熱を行う必要が生じる。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
本発明にかかる実施例1を図1図7を用いて説明する。
本例の電動機用ロータの製造方法は、図1に示すごとく、所望形状に形成した鉄心片11を複数積層して積層鉄心10を形成する積層工程2と、積層鉄心10に設けられた磁石挿入穴13に永久磁石16を挿入する磁石挿入工程3と、積層鉄心10を加熱し磁石挿入穴13に磁石固定用の溶融樹脂14を充填する樹脂充填工程4と、該樹脂充填工程4における積層鉄心10の加熱による余熱を利用し、積層鉄心10の回転軸挿入穴12に回転軸15を温間嵌めする回転軸組付け工程5とを有している。
【0013】
以下詳説する。
本例に示す電動機用ロータの製造方法を実行する生産ラインは、順次連続して配された積層工程2を実施する装置、磁石挿入工程3を実施する装置、樹脂充填工程4を実施する装置及び回転軸組付け工程5を実施する装置とを有している。上記生産ラインにおいて、少なくとも積層工程2の末端部から回転軸組付け工程5の起端部の間には図示しない搬送レールが配されており、該搬送レール上を後述のゲートプレート6が移動可能に構成されている。
【0014】
積層工程2は、図2に示す形状の鉄心片11を帯状鋼板から連続的に打ち抜き、複数積層してかしめ固定することにより、積層鉄心10を形成する工程であり、図示しないプレス装置を用いて行う。積層鉄心10は、図2に示すごとく、回転軸15(図7)を挿入する1つの回転軸挿入穴12と永久磁石16を挿入する16個の磁石挿入穴13とが軸線方向に貫通して形成してある。回転軸挿入穴12の内周面には、凸部121が互いに対向する位置に形成してある。該凸部121は、回転軸15のキー溝(図示略)との嵌め合いのために設けられたものであり、後述のゲートプレート6との位置決めに流用される。
磁石挿入工程3を実施する装置は、積層鉄心10の磁石挿入穴13に永久磁石16を挿入する作業を自動で行う図示しない磁石挿入ロボットを備えている。
【0015】
樹脂充填工程4には、積層鉄心10を予備加熱する加熱装置(図示略)と、磁石挿入穴13に磁石固定用の溶融樹脂14を充填して熱硬化させる樹脂充填装置40(図6)とを備えている。尚、本例の溶融樹脂14は、熱硬化性樹脂を加熱して液状に状態変化させたものである。該熱硬化性樹脂は、液状状態において、加熱することにより硬化し、硬化した後は加熱しても液状にならない。
本例において用いる加熱装置は、トンネル型をなしており、その内側には電熱ヒータが設けられている。また、加熱装置内部においても、搬送レールが配してあり、積層鉄心10を載置した後述するゲートプレート6を移動可能に構成してある。
【0016】
樹脂充填装置40は、図6に示すごとく、積層鉄心10の下方に配置され磁石挿入穴13に溶融樹脂14を送出する樹脂送出型41と、積層鉄心10の上方に配置され上下方向に移動可能に構成された対向型42とを有している。
【0017】
樹脂送出型41は、図6に示すごとく、上述したように積層鉄心10を載置するパレットの役割をも果たすゲートプレート6を、型本体部410と一体化することにより構成され、ゲートプレート6は、その下面を型本体部410の上面と当接させるように連結される。同図に示すごとく、型本体部410において、ゲートプレート6が有する吐出口62と対応する位置には、該吐出口62に向けて溶融樹脂14を送り出す送出機構部411が設けてある。送出機構部411は、上下方向に配された円筒上の内筒部412と、該内筒部412内をその軸線方向に進退可能に構成されたプランジャ413とからなる。内筒部412には、図示しない溶融樹脂供給装置により、溶融樹脂を供給するように構成されており、プランジャ413を上昇させることにより、内筒部412から吐出口62に向かって溶融樹脂を送出するように構成されている。
【0018】
対向型42は、図6に示すごとく、樹脂送出型を支持するベース部44から立設させたガイドポール45を介して、積層鉄心10の上方に昇降可能に配設されている。該対向型42は、図示しない押圧機構部によって、ガイドポール45に沿って昇降可能であると共に、樹脂送出型41との間に積層鉄心10を挟持した状態で圧縮力を付与可能に構成されている。
【0019】
ゲートプレート6は、図3及び図4に示すごとく、矩形形状の平板からなり、該ゲートプレート6の上面に鉄心位置決め部64を有している。鉄心位置決め部64を積層鉄心10の内周部に収容する状態で、ゲートプレート6の上面に積層鉄心10を載置可能に構成されている。また、ゲートプレート6の下面には、装置位置決め部65を有し、樹脂送出型41の型本体部410の上面の所定位置に連結可能に構成されている。
【0020】
ゲートプレート6には、その上面に載置した積層鉄心10の磁石挿入穴13の開口部131に対面するように配置された吐出口62を設けてある。本例においては、図3に示すごとく、1つの磁石挿入穴13の開口部131に対して2つの吐出口62を設けた。吐出口62は、ゲートプレート6の下面から上面に貫通して形成されており、その内周面には、吐出方向に沿って徐々に内径が縮径された縮径部621を有している。該縮径部621と、吐出口62の軸線とがなす内角の角度は、15°〜60°の範囲内にあることが好ましい。この場合には、縮径部621において、吐出口62内に残留し硬化した樹脂を容易に分割することができる。15°未満の場合には縮径部621の効果が得られにくい。また、60°を超える場合には、吐出口62の先端部における強度が低下し、吐出口62が破損するおそれがある。
【0021】
また、ゲートプレート6の上面においては、吐出口62の周囲を突出させた突出部622が設けられている。吐出口62の内周面に設けられた縮径部621は、突出部622先端の内部において内径が最小となるように形成してある。また、突出部622の外周面は、先端に行くほど縮径するテーパ面よりなる。尚、本例では、吐出口62先端の開口径は、φ1mmとし、突出部622の突出高さは、0.5mmとした。また、縮径部621と、吐出口62の軸線とがなす内角の角度は、30°とし、ゲートプレート6の上面と、テーパ面とがなす内角の角度は、45°とした。
【0022】
また、ゲートプレート6の下面には、型本体部410と連結した際に、型本体部410が有する送出機構部411と対応する位置に、送出機構部411と吐出口62との間の流路となる樹脂流路63を形成してある。該樹脂流路63は、略円筒形の凹部からなる流入部631と、該流入部631に流入した溶融樹脂14を隣接する2つの磁石挿入穴13の開口部131に対応して形成された吐出口62に分岐する2本の凹溝である分岐部632によって構成されている。
【0023】
ゲートプレート6の上面に設けられた鉄心位置決め部64は、略円筒形状をなしており、積層鉄心10が有する回転軸挿入穴12に挿通することにより、ゲートプレート6に載置した積層鉄心10の位置決めが行われるように構成されている。鉄心位置決め部64の外周面には、積層鉄心10の回転軸挿入穴12の内周面に形成された凸部121と対応した位置に、位置決め凹溝部641が形成してある。
【0024】
ゲートプレート6の下面に設けられた装置位置決め部65は、4つの略長方形の平板からなり、型本体部410におけるゲートプレート6と当接する面の輪郭に沿って形成された4つの段部414に対応する位置にそれぞれ設けてある。
そして、ゲートプレート6と型本体部410との連結は、ゲートプレート6を相対的に上昇させた状態で、型本体部410の上方へと移動し、ゲートプレート6を相対的に下降させることにより、ゲートプレート6の下面に設けた装置位置決め部65を、型本体部410の上面に設けた段部414に嵌合させることで実施できるよう構成されている。逆に、ゲートプレート6と型本体部410との連結を解除するには、ゲートプレート6を相対的に上昇させて、装置位置決め部65と段部414との嵌合を解除することで実施できる。
【0025】
回転軸組付け工程5を実施する装置には、図7に示すごとく、積層鉄心10を把持し、回転軸15に自動で組付ける鉄心組付けロボットと、回転軸15を起立させた状態で保持する回転軸保持冶具51とが配してある。
【0026】
次に、本例における電動機用ロータの製造方法を説明する。
積層工程2においては、図2に示す形状の鉄心片11を帯状鋼板から連続的に打ち抜き、複数積層してかしめ固定することにより、積層鉄心10が形成される。該積層鉄心10は、積層工程2の末端部に位置する搬送始点において、ゲートプレート6上に載置される。このとき、積層鉄心10は、ゲートプレート6の上面に配された鉄心位置決め部64を回転軸挿入穴12の内周部に収容した状態で載置されており、回転軸挿入穴12の内周面に設けた凸部121と鉄心位置決め部64の外面に設けた位置決め凹溝部641とを嵌め合わせることで積層鉄心10の磁石挿入穴13とゲートプレート6の吐出口62との位置合わせが行われる。次いで、積層鉄心10を載置したゲートプレート6は、搬送レール上を移動し、磁石挿入工程3へと搬送される。尚、積層鉄心10は、樹脂充填工程4の末端部に位置する搬送終点までの間、ゲートプレート6上に載置された状態で搬送レール上を移動する。
【0027】
積層鉄心10は、図1に示す磁石挿入工程3において、上記磁石挿入ロボットにより各磁石挿入穴13に永久磁石16を挿入された後、樹脂充填工程4へと移動する。
樹脂充填工程4に配されたトンネル型の加熱装置内を通過することによって、積層鉄心10及びゲートプレート6は、150℃〜200℃の加熱温度の温度範囲に加熱され、樹脂充填装置40内へと搬送される。樹脂充填装置40内において、積層鉄心10を載置したゲートプレート6は、図6に示すごとく、型本体部410と連結される。
【0028】
積層鉄心10を載置したゲートプレート6が型本体部410上に配され、ゲートプレート6と送出型との連結が完了した後、対向型42が下降し、積層鉄心10の上面に圧縮力を付与する。これにより、積み重なるように順次配された対向型42、積層鉄心10、ゲートプレート6及び樹脂送出型41における、それぞれ当接する面を密着させる。
【0029】
次いで、図6に示す送出機構部411のプランジャ413を上昇させることにより、内筒部412において溶融した溶融樹脂14を、ゲートプレート6の樹脂流路63の流入部631へ向けて送出する。樹脂流路63に流入した溶融樹脂14は、分岐部632を介して2つの吐出口62へと送出され、積層鉄心10の磁石挿入穴13へと吐出される。このとき、プランジャ413は、磁石挿入穴13の内部に溶融樹脂14が満たされるまで上昇し続ける。そして、磁石挿入穴13の内部に溶融樹脂14が満たされた後、プランジャ413の上昇は停止するが、溶融樹脂14に対して圧力を与え続け保圧状態とする。該保圧状態を所定の時間、維持する間に溶融樹脂14が加熱され硬化する。樹脂が硬化した後、プランジャ413の位置を初期位置へ戻し樹脂充填工程4における作業が完了する。次いで、積層鉄心10は、樹脂充填工程4から回転軸組付け工程5へと搬送される。
【0030】
積層鉄心10は、回転軸組付け工程5の起端部に配された搬送終点において、鉄心組付けロボットによってゲートプレート6と分離される。このとき、吐出口62に設けた縮径部621において、硬化した樹脂が分割されるため、吐出口62にはバリが生じない。
回転軸組付け工程5においては、回転軸15を回転軸保持冶具51上に起立して配置してあり、鉄心組付けロボットによって、積層鉄心10を回転軸15へと取り付ける。このとき、積層鉄心10は、樹脂充填工程4に配した樹脂充填装置40から回転軸保持冶具51上に移動する間に140℃〜180℃の余熱温度の温度範囲に自然冷却される。この温度範囲においても、積層鉄心10の回転軸挿入穴12の内径は拡径されており、回転軸15の外径よりも大きい状態にある。そして、積層鉄心10を冷却することで回転軸挿入穴12の内径が縮径し、積層鉄心10と回転軸15とが温間嵌めにより固定される。
【0031】
次に、本例における作用効果について説明する。
本例においては、樹脂充填工程4における積層鉄心10の加熱による余熱を利用し、積層鉄心10の回転軸挿入穴12に回転軸15を温間嵌めする回転軸組付け工程5を有している。そのため、上記電動機用ロータの製造方法を実施する生産ラインにおいては、温間嵌めを行うために積層鉄心10を加熱する装置を配する必要がない。そして、本来、樹脂充填工程4及び回転軸組付け工程5の2つの工程それぞれに専用の加熱工程を設ける必要があるところを、樹脂充填工程4の1工程とすることができる。これにより、設備費用の低減だけでなく、電動機用ロータを生産する際の加熱及び冷却時間の短縮、及び電力等のエネルギーの低減を図る事ができる。それゆえ、上記電動機用ロータの生産効率をさらに向上させるとともに、省エネルギー化を図ることができる。
【0032】
また樹脂充填工程4は、積層鉄心10を上述した加熱温度の温度範囲に加熱した状態で行い、回転軸組付け工程5は、積層鉄心10が樹脂充填工程4の余熱によって上述した予熱温度の温度範囲にある間に行われる。そのため、樹脂充填工程4における樹脂充填作業及び回転軸組付け工程5における温間嵌め作業を確実に行うことができる。
【0033】
このように、本例によれば、生産効率を向上させると共に省エネルギー化に貢献することができる電動機用ロータの製造方法を提供することができる。
【0034】
さらに、本例においては、樹脂充填工程40の吐出口62の内周面に、溶融樹脂14の吐出方向に沿って徐々に内径が縮径された縮径部621を有しており、縮径部621の最小径部は、吐出口62の先端に配されている。そのため、吐出口62の内側に残留し、硬化した樹脂を縮径部621で容易に分割することができ、積層鉄心10の端面にバリが発生することを抑制することができる。
また、ゲートプレート6の上面には、吐出口62の周囲を突出させた突出部622が設けられており、該突出部622の内部に縮径部621が設けられている。そのため、吐出口62の内側に残留した樹脂が積層鉄心10側に残り、たとえ若干のバリが生じたとしても積層鉄心の端面よりも内側の範囲に収まるため、バリによる悪影響を生じない。
【0035】
このように、バリの発生を確実に防止することができるため、電動機用ロータの生産ラインにバリ除去工程を設ける必要がない。これにより、樹脂充填工程4の直後の工程に回転軸組付け工程5を配することができる。それゆえ、樹脂充填工程4の余熱を利用して、積層鉄心10と回転軸15とを温間嵌めを行う回転軸組付け工程5を比較的容易に実現することができる。
【0036】
(比較例1)
本例においては、実施例1に示す電動機用ロータの製造方法を発明例とし、樹脂充填工程4及び回転軸組付け工程5にそれぞれ専用の加熱装置を設けた場合を比較例として、加熱及び冷却に係る時間と消費されるエネルギーについて比較を行った。
図8には、発明例の樹脂充填工程4及び回転軸組付け工程5における、積層鉄心10の温度及び時間の変移を実線Aによって示す。尚、図8は縦軸に積層鉄心10の温度を示し、横軸に時間を示したグラフである。また、図9には、比較例の樹脂充填工程4における、積層鉄心10の温度及び時間の変移を実線Xによって示し、図10には、比較例の回転軸組付け工程5における積層鉄心10の温度及び時間の変移を実線Yによって示す。
【0037】
発明例においては、図8に示すごとく、樹脂充填工程4及び回転軸組付け工程5の2つの工程に対して、加熱及び冷却の回数が1回である。そのため、加熱時間A1及び冷却時間A2がかかることとなる。また、発明例においては、樹脂充填温度aに加熱するエネルギーが消費されることとなる。尚、冷却時間A2は、同図中に示すA2’から、回転軸組付け工程5における温間嵌めの作業時間tを除いた時間である。
【0038】
一方、比較例は、樹脂充填工程4及び回転軸組付け工程5において、それぞれ加熱及び冷却が行われる。そのため、図9に示すごとく、樹脂充填工程4において、加熱時間X1及び冷却時間X2がかかり、さらに図10に示すごとく、回転軸組付け工程5において、加熱時間Y1及び冷却時間Y2がかかる。また、比較例においては、発明例と同様の樹脂充填温度aに加熱するエネルギーが消費され、さらに温間嵌め温度bに加熱するエネルギーが消費される。尚、発明例における加熱時間A1と、比較例における樹脂充填工程4の加熱時間X1とは、略同一の時間を示し、発明例における冷却時間A2と、比較例における樹脂充填工程4の冷却時間X2とは、略同一の時間を示すものである。
【0039】
したがって、発明例においては、比較例に対して、回転軸組付け工程5における加熱時間Y1及び冷却時間Y2を短縮すると共に、温間嵌め温度bに加熱するために必要なエネルギー消費を低減することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 積層鉄心
11 鉄心片
12 回転軸挿入穴
121 凸部
13 磁石挿入穴
131 開口部
14 溶融樹脂
15 回転軸
16 永久磁石
2 積層工程
3 磁石挿入工程
4 樹脂充填工程
40 樹脂充填装置
41 樹脂送出型
410 型本体部
411 送出機構部
412 内筒部
413 プランジャ
414 段部
42 対向型
5 回転軸組付け工程
51 回転軸保持冶具
6 ゲートプレート
62 吐出口
621 縮径部
622 突出部
63 樹脂流路
631 流入部
632 分岐部
64 鉄心位置決め部
641 位置決め凹溝部
65 装置位置決め部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10